DOWNSTREAM No.27(要約版) PDF:132KB

DOWNSTREAM No.27
日本語版・要約編
DOWNSTREAM No.27本編
p.3-5
p. 5
p.5
p. 6-9
p.9
p10-11
p.12-17
p. 18-22
p.22
p.23
p.24
p.27
お客様からのご要望に対応するエンジニアリング業務
ISPPP `98のお知らせ
BIOEUROPE 98のお知らせ
新しいタンパク質精製の世界標準
First Meeting on Plasma Product Biotechnologyのお知らせ
新しい中間精製工程向けのSTREAMLINEカラム
遺伝子治療のベクターとしてのプラスミドおよびウィルスの大規模精製
工業生産クロマトグラフィーにおける伝染性海綿状脳症因子の不活性化
Conference on Affinity Chromatography学会報告
世界初のrHSAの製造工場に当社のBioProcess Systemが採用される
世界初のアンチセンス医薬品
遺伝子治療におけるベクターに関する国際学会の報告
Established procedure
p. 3-5
Custom-Designed Solutions Expanded
Engineering Operation
お客様からのご要望に対応するエンジニ
アリング活動
CHROMAFLOWカラムやSTREAMLINEシステ
ムのような新しく、革新的な製品群に対するお客
様からの要望が急速に高まってきています。この
市場の拡大はお客様の試験製造や開発製造段階に
おいて、より新しく、大型の製造設備が求められ
ている事を意味しています。これらの新しい製造
設備の開発は、増大する傾向にある「お客様から
の要望に対応したエンジニアリング」に対する回
答でもあります。
これら大型のクロマトグラフィーシステムやカラ
ム市場の拡大の要因として多くのバイオ医薬品が
基礎研究段階から医薬開発の段階に到達してきて
いる事があげられます。多くの医薬品製造企業が
現在では試験製造の段階から本格的な医薬品製造
の段階に進んでおり、
「お客様からの要望に対応し
たエンジニアリング」がますます求められていま
す。
エンジニアリング部門ではどのようにして様々な
お客様からの要求を実現するのでしょうか。私ど
のもこの部門はすでに世界中に700台以上のシステ
ムや5000基以上のカラムの納入した経験を持ちま
す。これらの経験をもとにお客様からの特別な注
文に対応する、カスタムデザインのシステムやカ
ラムの確固たる開発方法が確立されています。ご
注文いただいたシステムのお引き渡しには広範囲
の品質管理や機能試験が含まれます。システムの
納期はご注文いただいてから6ヶ月ですが、ご注文
いただいたシステムの仕様により異なります。
Multi−Discipline Expertise
お客様との最初のコンタクトは私どものセールス
スペシャリストがお伺いさせていただきます。つ
ぎにウプサラで私どものプロジェクトリーダーが任
命されます。プロジェクトリーダーはエンジニア
とともにお客様の必要とする仕様を調査し、お客
様の要求された仕様に最適のシステムが設計され
ます。十分なシステムに関する説明のあと最終的
にシステムの仕様が決定され、システム仕様書が
作成されます。
点でシステムは機能試験や最終調製などのためウ
プサラに運ばれます。注文されたお客様はこの期
間にウプサラを訪問し、システムが正しく仕様ど
おりに作られているか査察を行なっていただけま
す。さらにシステムは搬入、設置のさいにも仕様
どおりに機能するか保証するため試験されます。
カラムも同様に製造段階から品質管理と契約業者
への査察が行なわれています。製品のお届け後、
当社では「Fast Trak Service」として機器の操作
方法トレーニングサービスも承っております。
Column Packing studies
当社では、機器の機能試験の中では様々なカラム
およびゲル担体の充填方法の試験も行なっており
ます。これらの試験はカラム及びゲル担体が最高
の性能を発揮を保証するために行われます。製品
の性能向上のための充填方法に関する試験は常に
続けられております。詳しくは前回の
downstream
26をご覧ください。
Fast Trak Assistance
当社では生産スケールのクロマトグラフィーにお
けるシステム、カラム、ゲル担体のサポートとし
て「Fast Trak」サービスを行なっております。各
種トレーニングコースに加えてご購入いただいた
Choice of materials
システムに使用される材質は主に高い品質を持つ システムの据付時適格性確認、運転操作適格性確
316Lステンレススチールが使用されていますが、 認の必要文書の提供も行なっております。さらに
高濃度の塩溶液や特殊な溶液を使用する場合には バリデーションサポートファイルやレギュラトリー
ポリプロピレンやハステロイ、
PVDFなども使用さ サポートファイルをご用意し皆様のバリデーショ
Close to customer
お客様からの特別な注文に対応する製造設備の製 れます。今日ではシステムの60%が高い化学耐性 ン作業をサポートしております。
品の開発はお客様との協同作業を伴います。様々 をもち、コストパフォーマンスの高いポリプロピ
Complete solution
なお客様からの要望に対応するためには、まず初 レンが主に使用されています。
お客様からいただいたご要望への対応は私どもに
めにお客様のアプリケーションが要求するものが
とって楽しい挑戦です。我々は最新の設備を揃え
Specialist Assembly
何であるのかを理解し、それを実現させるための
適切なハードウェアに翻訳することが必要です。 システムやカラムの組み立ては通常、限定された る事で、世界中のお客様からの増え続けるご要望
そのためには深い機械工学と材料化学の知識を要 当社の契約業者にて行われます。当社のプロジェ にお答えしております。私どものスペシャリスト
クトリーダーはこの組立て期間中に契約業者への はお客様の問題解決のために幅広い知識とサポー
求されます。
査察を行い品質の保証を確かなものとします。シ トをご提供します。
ステムの機械的、電気的な組み立てが終了した時
DOWNSTREAM No. 27
p.5
Announcement
お知らせ
ISPPP `98
18th International Symposium of Separation and
Analysis of Proteins , Peptides , and
Polynucleotides. 1-4 November 1998,
Hotel Hilton , Vienna , Austria
p. 6-9
ÄKTAFPLC the new standard in protein
purification
新しいタンパク質精製の世界標準
クロマトグラフィーシステムであるÄKTAシリー
ズに新しく Ä K T AF P L Cが加わりました。この
ÄKTAFPLCは、いままでのÄKTAと共通している
いくつかのシステムからなり、UNICORNソフト
ウエアで操作することができます。
ÄKTAFPLCは、ÄKTAシリーズにおいて革新的な
FPLCシステムとして開発されました。そして、こ
れはラボスケールでのµg∼mgのタンパク精製に向
いています。UNCORNはWindows NTに対応した
V e r 3 . 0 に な り ま し た。 Ä K T A F P L C は
biocompatibleであり、すべての水系のクロマトグ
ラフィーモードに対応します。大きさは3 8 0×
480×470mmで非常にコンパクトであり、実験台
においてもスペースをとりません。クロマトチャン
バーなどに入れて使用することも可能です。
Reliable
システムの心臓部は、信頼できるポンプ技術から
成り立っています。ポンプP-920は、FPLCシステ
ムで使われていたP-500ポンプを発展させたもので
す。これは、正確で再現性のあるパルスのない送
液と精密なグラジエントをつくります。高濃度の
塩も使用でき、20ml/minまでの送液が可能です。
Easy to learn and use
クロマトグラフィーはいろいろな応用例の中のい
ろいろなサイエンティストに道具として使用され
p.9
First Meeting on Plasma Product
Biotechnology
1999/3/27-30
Daydream Island Conference Center,
Queensland, Australia
お知らせ
p.10-11
STREAMLINE100
mid-range expansion
新しい中間精製工程向けの
STREAMLINEカラム
このシンポジウムではタンパク質、ペプチド、核
酸やその他の生体成分の分離方法および分析方法
に関する討論が行なわれます。また最近のゲノミ
クスやプロテオミクスによる新しい分離精製方法
の試みについても討論されます。クロマトグラフ
ィーや電気泳動,さらにバリデーションやPCRに関
する話題などさまざまなテーマについて講演、ポ
スター発表、ワークショップ、展示会などが行わ
れます。詳しいプログラムについは事務局までお
問い合わせください。
ます。道具は、簡単に学べて簡単に使用できなけ
ればなりません。システムをコントロールする
UNICORNソフトウエアは、メソッドのテンプレ
ート、カラムの情報やシステムセットアップの情
報などがすでにプログラムされていますので、適
切なクロマトモード、テンプレートプログラム、
カラム、システムセットアップを選んでいただけ
れば、あとは"run"ボタンを押すだけです。必要
ならば、Adviserというコンサルタント機能もあり
ます。ÄKTAFPLCの中にはできる限りのクロマト
グラフィーに関する技術や知識が入っています。
これは、ユーザーが時間をかけてクロマトグラフ
ィーの熟練者にならなくとも、熟練者と同じ結果
を出すことができるということです。
Convenient and flexible
システムは非常に小さくコンパクトなデザインで
す。また、いろいろなアプリケーションや研究室
の要求に応えるため、いろいろなシステム構成が
できるようにいくつかのバルブ、サンプルポンプ、
エアーセンサー、カラムなどを自由に設置するこ
とができます。これらのアクセサリーは、ゲート
ラックに簡単に取り付けることができ、アクセサ
リーが多ければゲートラックを開いて使用するこ
ともできます。長いカラムを使用するときは、こ
のゲートラックを伸ばすこともできます。
New UNICORN Windows NT
新しいUNICORN Ver 3.0は、Windows NT対応に
なりました。このソフトウエアは、GMP/GLPの
要求に対応するため、ユーザーの networkingや
multi-taskingの要求に応えるため特別にデザイン
されました。Windows NTは、UNICORNにとっ
て新しいOSです。このOSはネットワーク機能が充
実しているので、ネットワークを使用して他の
第1回Plasma Product Biotechnology会議は、リコ
ンビナント血漿製品のような血漿分画技術の最近
の状況や、製品の安全性やプロセスの経済性のよ
うな血漿製品のデベロップメントや製造に関連し
たこれらの必要性についてフォーカスします。
プログラムはインフォーマルなディスカッションを
行うために口演とポスター発表が組まれています。
演者は、アルブミン、イムノグロブリン、凝固因
子、fibrin sealant、その他治療用の製品、病原体
の除去と不活化、規制について討論します。
からパイロットスケールやスモールスケールのため
25, 50, 100, 200mmの直径のカラムを揃えています。
実生産スケールのための大きなサイズのカラムは、
カスタムデザインで対応できます。この新しいサイ
ズのカラムが加わることで、
STREAMLINEのスケ
ーラビリティは新たなステップに入りました。
Ideal for pilot-scale
吸着流動床を利用するSTREAMLINEは、培養槽
から直接目的分子をキャプチャリングすることでア
ップストリーム工程とダウンストリーム工程を親密
なものにしています。
この新しい原理のカラムに対する興味が深まるにつ
れ、いろいろなサイズのカラムが要求されるように
なりました。そして、この要求に応えるために
STREAMLINE 100が発売されます。
STREAMLINEシリーズは、method development
STREAMLINE100は、パイロットスケール、特
に流速が16∼31L/hで培養容量が5∼100Lのアプ
リケーションに適しています。カラムは950mmガ
ラスチューブで、内径は100mmです。操作は水圧
駆動式で、簡単に操作することができ、必要なら
ば溶出時にpacked bedモードにすることができま
す。推薦沈降ベッド高は10∼30cm(0.8∼2Lゲル
容量に相当 ) 。S T R E A M L I N E1 0 0 は全ての
STREAMLINEゲルを使用するためのカラムです。
BIOEUROPE 98
Bioseparation and Bioprocessing of Biological
Molecules
7-8 September 1998
Queens College University of Cambridge
England
この3日間の国際会議ではバイオ医薬品の製造工
程に関する最新の話題や遺伝子治療、当局による
規制事項、生産工程の経済性など様々な講演が予
定されています。詳しい大会の内容については主
催者に直接お問い合わせください。
UNICORNコンピュータからも作業の進行などを
チェックすることができます。これによりシステム
と一緒に低温室に長時間いる必要がなくなり、ま
た、いくつかのシステムを同時にコントロールす
ることも可能になりました。UNICORNはÄKTA
シリーズに
共通に使用されているので、一貫した仕事のやり
方が行えます。アプリケーションがルーチンのモ
ノクローナル抗体の精製、新しいレセプターの精
製、ラージスケールでの使用であろうとインター
フェースは同じです。この一貫性は、運転者教育
の手間や使い初めのエラーのリスクを減少し、ラ
ボから生産スケールへのスケールアップを容易に
します。
Application areas for ÄKTA
弊社のラボと他研究機関の専門家との共同研究で、
characterization studies、structure and function
studies、optimization of methodを含むいくつかの
アプリケーションがテストされました。上記3つの
アプリケーションについて、ÄKTAFPLCの広範囲
な応用例を本文中で紹介しています。さらに詳し
い内容については、それぞれのアプリケーション
ノートを参照してください。
ÄKTAFPLC and proteomics
ネイティブまたはリコンビナント由来の生物物質
をハンドリングするためにデザインされた
ÄKTAFPLCは、伝統あるFPLCに続いて、さらなる
時代を築き上げていきます。
今日注目されているproteomicsやヒトゲノムプロ
ジェクトから新たに発見される数多くのタンパク
質について、ÄKTAFPLCはタンパク精製のスタン
ダードとして確立していきます。
加えて、参加者はメルボルンにありますCSL社を
訪問します。CSL社は、世界で一番大きなクロマ
トグラフィーでのアルブミンプラントを持っていま
す。
コンタクト先は本文中にあります。
Arrests target molecule
STREAMLINEの拡張モードでは、タンパク質の
ような目的物質は、事前に希釈や澄明化をするこ
となく1回のアプライでクルードな原料から直接キ
ャプチャリングすることが可能です。方法の原理
は全てのサイズのSTREAMLINEで同じです。カ
ラムボトムには独特のディストリビューターがあ
ります。バッファーがカラムボトムから流れてく
ると、ゲルはそれぞれが密度分布を持っているの
で押し上げられ、安定した流動床を形成します。
目的物は、この流動床で吸着し、それ以外の粒子
やデブリスはカラムを素通りしていきます。目的
分子はpacked modeで溶出され、部分的に精製さ
れます。
DOWNSTREAM No. 27
Hygienic design
全てのSTREAMLINEカラムのように、このサイズ
のカラムは高水準のハイジーンが要求される環境
での使用のためにデザインされました。材質は、
ホウケイ酸ガラス、電解研磨されたステンレスス
チール、ポリプロピレン、EPDMで、これらはバ
イオ医薬品製造で用いられる溶液で使用すること
ができます。STREAMLINE 200でのサイニタイ
p.12-17
Towards Large-scale purification of
plasmid DNA and a Viral Vector intended
for human gene therapy
遺伝子治療のベクターとしてのプラスミ
ドおよびウィルスの大規模精製
遺伝子レベルでの疾患を治療するための「遺伝子
治療」法による研究が行なわれています。この遺
伝子治療のためには安全に効率よく特定の遺伝子
を目的の細胞に導入しなければならず、現在いく
つかの導入方法が検討されています。遺伝子治療
を実現可能で有効な治療方法として確立するため
には遺伝子を運ぶベクターの大量精製方法の検討
が重要になります。今回はベクターとしてのプラ
スミドやウィルスの精製方法の検討を行ないまし
た。
Purification of plasmid DNA
プラスミドは現在多くの研究室で分離精製されて
p.18-22
Methods of inactivation of Transmissible
Spongiform
Encephalopalopathies as applied to
production chromatography process
工業生産クロマトグラフィーにおける伝
染性海綿状脳症因子の不活性化
伝達性海綿状脳症 (Transmissible Spongiform
Encephalopayhy:以下TSE)として知られる病気に
は、クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)や致死性
家族性不眠症(FFI)、ゲルストマン・シュトロイス
ラー症候群(GSS)といったヒトの伝染性病気が含
まれます。よく研究されているヒツジのスクレイ
ピーなどもTSEの一種です。1990年代まではTSE
は大きな関心を寄せられていませんでしたが、英
国の狂牛病パニックをきっかけに人々はこれらの
病気に関心を寄せるようになり、最近の知見から
牛 海 綿 状 脳 症 (Bovine Spongiform
Encephalopathy: 以下BSE)は人体に入ってくるこ
とが示唆されています。
これらの病気の発現であると一般的に信じられて
いるプリオンタンパク質は、構造変化によりプロ
テアーゼ耐性が強くなり、難溶解性になることが
発病のマーカーとなっています。
TSE発現因子は耐性が非常に強く、オートクレー
ブや極端なpHでの処理、界面活性剤や高温での処
理、もしくはこれらの処理の組合わせによる通常
のウィルスやバクテリアの不活化方法では完全に
不活化することはできません。
欧州連合(EU)やFDAがウシもしくはヒト由来の物
質を含んでいる医薬品を禁止するといった最近の
動向により、世界中の医薬品会社はTSE発現因子
の不活化方法の開発を試みていますが、耐性が強
いことや評価のためのバイオアッセイに時間がか
かることから順調には進んでいません。禁止内容
は、動物由来の製品だけでなく、動物組織からの
物質を利用した組換え製品、動物の血清存在下で
培養した細胞を用いた製品、安定化剤として動物
由来のもの(例えばアルブミン)を使用した製品に
も及んでいます。
ゼーションで行われているように、カラムデザイ
ンは0.5M NaOHでサニタイゼーションできるよう
になっています。
この新しいカラムは、マニュアルやオートマティ
ックのSTREAMLINEシステムを使用することも
できますし、お手持ちのシステムを使用すること
もできます。全てのEU Machine Directivesに適合
しており、CEマークがついています。
このほか本文では、STREAMLINEカラムによる
プロセスデベロップメント、データファイル、ア
プリケーションが紹介されています。
このSTREAMLINEカラムについてのさらに詳し
い情報や注文に関することはSTREAMLINEデー
タファイルかアマシャムファルマシアバイオテク
㈱までお問い合わせください。
いますが、それらの多くは市販されている精製キ
ットを使用しています。遺伝子治療の目的で使用
できる不純物を含まない大量のプラスミドを得る
ための精製工程を開発しなければなりません。プ
ラスミドDNAは宿主の大腸菌から精製されます
が、ここではRNA、染色体DNA、エンドトキシン
といった不純物をいかに効率良く除去するかが重
要となります。今回遺伝子治療で使用できる純度
のプラスミドを得るため3つの精製工程が使われま
した。精製工程は塩化セシウムによる沈殿、 Q
Sepharose XLイオン交換担体による回収、および
SOURCE 15Qイオン交換担体による最終精製は3
つからなり、精製されたプラスミドの純度は
99.4%で表1に示されるようにRNA、染色体DNA、
エンドトキシンは含まれていませんでした。この
精製方法は非常に迅速であり2つのクロマトグラフ
ィー操作は3時間で終了します。すべての精製工程
も1日で終了します。
押さえられており、導入された遺伝子の転写産物
を生産します。PRP Gencell社ではSOURCE15Q
を使用したイオン交換クロマトグラフィーによる
アデノウィルス5型の一段階精製法を開発しまし
た。精製方法はÄKTAexplorer 100を用いて条件
の至適化が行われ、最終的にはFineLINE 200カラ
ムをつかってカラム体積1mlから2.5リットルまで
スケールアップが行なわれました。SOURCE15Q
イオン交換体の持つ高い性能のため一段階の精製
工程のみで遺伝子治療の目的に使用できるアデノ
ウイルスの大量精製が可能となりました。
SOURCE15Qイオン交換体は感染性のあるウィル
ス粒子と非感染性ウィルス粒子の分離も可能で、
精製された最終画分からは非感染性ウィルス粒子
は検出されませんでした。このクロマトグラフィ
ー工程も3時時間以内に終了し、定置洗浄を含む
全行程も2日間で終了できます。
Purification of a viral vector
今後も超えなければならない多くの倫理的、技術
的問題点がありますが、遺伝子治療法の可能性は
研究を進展させる大きな原動力となるでしょう。
現在最も一般的に遺伝子治療のベクターとして研
究されているのが弱毒化または修飾されたウィル
スです。修飾されたウィルスは患者の中で増殖は
この論文の目的は、これまで報告されてきた化学
的、物理的不活化方法を比較することと可能性の
ある方法について医薬品会社に評価してもらうこ
とにあります。完全にTSE発現因子を不活化する
方法はないという前提ですが、効果的な方法もい
くつかありました。実験は実際の条件下で行われ
なければなりません。また、評価するバイオアッ
セイ法は、使用するTSE株に特異的な方法でなけ
ればなりません。例えば、BSEは齧歯動物がかか
るヒツジのスクレイピーの不活化方法では異なる
耐性をみせるであろうといことです。
不活性化の化学的方法
表1はTSE感染力の不活化に利用される化学薬剤
のリストです。一般的に有機化合物はTSEを量的
に減少させるのに効果的ですが、多くの医薬品製
造設備に使用することが難しいです。例えば水飽
和フェノールは病原体を殺すのには効果が期待で
きますが、このような危険物質を使用するのは実
用的ではありません。その他のフェノール化合物
も同様の効果を示します。ある特定の組織に用い
られるホルムアルデヒドとの組合わせは、一般的
にTSE発現因子の不活化には効果がありません。
その他の化学物質もTSEの力価を減少させる効果
の度合いがいろいろ異なります。例えばカオトロ
ピック化合物(グアニジン)は高濃度でTSE感染力
をいくらか不活化しますが、界面活性剤(SDS, Nラウリルサルコシン)は顕著な効果ありません。高
濃度の酸は効果があることが証明されていますが、
濃度が低くなると効果も減少します。水酸化ナト
リウムは、多くの場合ウィルス病原体の優れたサ
ニタイゼーション溶液とされ、クロマトグラフィ
ー担体を含む多くの洗浄方法に適合しています。
しかしTSEに関してはその効果についての報告に
若干の相違があります。一般的に1∼2M濃度の水
酸化ナトリウムは、TSE感染力を低下させるとい
う報告がありますが、他の様々な化学薬剤も含め
て完全に感染因子を除去したケースはありません。
実際、表1に示したように実験ごとにその結果は異
なっています。
不活性化の物理的方法
表2には、感染因子の不活化に用いられた物理的
方法がまとめてあります。プロセス溶液に直接用
Enormous potential
いた実験例はありませんが、このうちのいくつか
はクロマトグラフィー担体や工程の装置に適用す
ることができます。
γ線照射はヒト由来のTSE不活化には効果があり
ませんでした。同様に、様々な波長でのUV照射
も効果がありませんでした。しかし、TSEの照射
実験においては時間やサンプル量、浸透性などの
パラメーターについての解釈が非常に困難である
ことを考慮にいれなければなりません。
ウィルスやバクテリアの病原体に関してオートク
レーブは効果的でしたが、TSE発現因子に関して
はあまり明確でありません。TSE発現因子を完全
に死滅させるオートクレーブ技術はありませんが、
135℃で1時間以上のオートクレーブは感染力を5
オーダー以上不活化するのに効果的です。
脳のホモジネートを短時間煮沸することは、不活
化が3オーダー以下であることが示されました。医
薬品を製造するプロセス段階に適応できる選択肢
ではありませんが、360℃1時間で物質を灰にする
こと、もしくは物質を焼却することは、TSE発現
因子を不活化する方法として効果的です。
クロマトグラフィー担体の事情
不純物を含んだ物質が担体に接触し、一般的に何
らかのタンパク質が担体に残るとされています。
このため、化学的もしくは物理的方法でTSEをあ
るレベルまで不活化することは有用です。
表1の化学物質のうち、NaOHはもっとも一般的に
工程の洗浄液として用いられている物質で、ある
一定時間内であればシリカ以外の担体は2 M
NaOHまで耐性があります。同様に7Mグアニジン
塩酸や3Mグアニジン-チオシアネート、メタノー
ル/水酸化ナトリウムは利用できますが、これらは
大スケールでの利用は困難です。表にあるその他
の化学薬剤の大半は、担体をいためるか、操作に
危険が伴います。
ナトリウム次亜塩素酸は工場スケールでNaOHの
代替えになります。文献中では、塩素濃度が適
正に保たれれば、ナトリウム次亜塩素酸は T S E
の不活化薬剤として非常に効果的です。適正に
操作され、温度上昇がなければ、次亜塩素酸は
熱くなったN a O Hと同程度の危険性になります。
しかしながら、工程の装置は次亜塩素酸の腐食
性に耐えられるものに換えなければなりませんし、
DOWNSTREAM No. 27
塩化物の濃度が適正に維持されるように塩素濃度
を厳密にモニタリングする必要があります。
表にある物理的方法の多くは、工場の現場で行う
のは困難です。例えば、効果的な照射を行うため
には十分なエネルギーレベルが必要となり、カラ
ム内でもバッチ内でもクロマトグラフィー担体に
とっては厳しい条件です。不活化に効果的な条件
を保持するためには極度の条件を要しますが、加
熱は利用可能な方法です。妥協案は、物理的方法
(例えば加熱)と化学的方法(例えばNaOH)を組合わ
せることでしょう。加熱するにしろ、方法を組合
わせるにしろ、担体は適用される方法に耐性でな
ければなりません。
もちろん、担体を製造する工程自体は、TSEのな
い状態であることを証明する必要があります。
p.22
Conference on Affinity Chromatography
sponsored by the IBC group.
San Diego, California USA,
April 16-17, 1998
その他
さらに、潜在的に伝染性のある物質の物理的状態
を包括することも大切です。例えば、TSE発現因
子が表面で「乾燥」すると、不活化はさらに困難
になります。それゆえ、適正なGMPの方法を用い
て洗浄されるまで、表面を乾燥させないでおくこ
とが推奨されます。
異なるタイプの病気では、不活化処理に対してそ
れぞれ耐性が異なる可能性があるので、評価の際
には、的確なTSE発現因子を選択することが重要
です。
表にある実験は、病原体の不活化を行うのに理想
的な状況で実施されているということも考慮に入
れておかなければなりません。つまり、これらの
実験は、簡単な脳のホモジネートや簡単なシステ
ムで精製された病原体を用いて行われているとい
うことです。もしプロセス溶液に他のタンパク質
が含まれていて、それが伝染性因子を安定化させ
るようなものであれば、実験の結果はまた違った
ものになるでしょう。それゆえにいかなるTSE除
去/不活化もバリデーションやベリフィケーション
を必要とします。
まとめ
多くのクロマトグラフィー担体は、表にある処理
方法に耐えられませんが、いくつか実現可能なも
のもあります。ゴールに到達するための効果的な
方法を決定するには、担体製造者と医薬品製造者
とのあいだの共同作業が必要です。
この会議の全体的なテーマは、初期精製工程とし
てアフィニティークロマトグラフィーの手法を見
直すことでした。シングルステップによる精製が
できることの優位性、リガンドのリークという非
優位性について、深い議論が繰り広げられました。
会議の主な内容は、新しいアフィニティークロマ
トグラフィー担体の開発とProtein Aを用いたモノ
クローナル抗体の精製の大きく2つに分かれまし
た。
1998年3月23日付でアマシャム ファルマシア バイ
オテク(株)と(株)ミドリ十字(現吉富製薬(株))は、
世界初のrHSA工場に当社の精製装置が採用され
たことを発表しました。この採用には、新しい技
術であるSTREAMLINEと充填作業を極端に短縮
することのできるChromaFlowカラムが含まれてい
ます。
このrHSAは、2000年に“アルフレック"という商
品名で上市される予定です。製造規模として1年間
に約12トンを製造できるもので、北海道千歳市に
建設中です。設備の建設は、(株)新潟鉄工所が担
当します。
学会報告
p.23
Amersham Pharmacia Biotech chosen to
supply equipment for recombinant
human serum albumin production
世界初のrHSAの製造工場に当社の
BioProcess System が採用される
p.24
Press Release
First NDA for an antisense drug ; filling
triggers significant milestone payment
IsisとCIBA Vision 社が、4月8日付で米国FDAに “Fomivirsen"はフェーズIIIを終了しました。これ
新薬承認申請を提出したと発表しました。この新 によって、CIBA VisionはIsis に20M 米国ドルを
薬は、エイズにおけるCMV(サイトメガウィルス) 支払することになりました。
による網膜炎治療に使用するもので
“Fomivirsen"と呼ばれています。この感染症は、
ときとして視力を失うことがあります。現在、
世界初のアンチセンス医薬品
p.24
New Books
新刊のご案内
p.15
International conference on vectors for
gene therapy : design production and
regulation
March 12-14 , Brussels , Belgium
遺伝子治療におけるベクターに関する
国際学会の報告
「Protein Purification」 の第2版が刊行されまし
た。
現在、タンパク質分離の分野が1990年代に確実に
進歩していますが、この中で切り離すことのでき
ないクロマトグラフィーと電気泳動の両分野にま
米国FDAと欧州ECの協賛で遺伝子治療における
ベクターに関する国際学会が、ベルギーのブリュ
ッセルで行われました。
今回の参加者は、約250名で主にベクターのデザ
イン、クリニカルグレードのプロダクション、臨
床試験、などが討論されました。
特に、新しい遺伝子治療のためのベクター開発、
遺伝子治療事業に関する欧州と米国の現状比較、
遺伝子治療における特許関係、大型スケールにお
たがって、その理論からアプリケーションに至る
までを広くわかりやすく解説したものになってい
ます。
けるウイルスコンタミネーションのモデルケース、
ベクターの製造施設に関する問題などの発表があ
り、またポスターセッションでは、ベクターの開
発のみならずプラスミドやガン治療に関する報告
など広範囲にわたり発表がありました。
内容に関するお問い合わせは、
アマシャムファルマシアバイオテク(株)
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