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CALLプラットフォームとしてのWebCTの利用について

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CALLプラットフォームとしてのWebCTの利用について
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杉 森 直 樹
Ⅰ.はじめに
Ⅱ.CALLの発達と類型
1.コンピュータ技術の発達とCALL
2.CALLの3つの類型
3.CALLが備えるべき機能
Ⅲ.e-Learningの標準化の流れとWebCT
Ⅳ.WebCTについて
Ⅴ.WebCT上での英語学習コースの構築
1.WebCT上での授業用Webページ作成方法
2.授業用WebCTサイトの開発
Ⅵ.結論
Ⅶ.おわりに
Ⅰ.はじめに
立命館大学では、平成14年度より学内のオンラインe-Learningシステムとして全学的規模で
WebCT(Web Course Tools)が導入された。学内ではこれによってシラバスの配布、電子掲示
板(BBS)や電子メールといったコミュニケーションツールの提供が一元的に行われており、
授業においてもWebCTの持つ様々な学習支援システムを利用できる環境が実現されている。
本稿は、英語教育におけるCALL(Computer-Assisted Language Learning)の類型論的観点から、
WebCTの持つ機能や特徴、利便性等を検証すると共に、このような統合型e-Learningシステム
がどのような形で英語教育に利用可能であるかを考察するものである。また、後半では、著者
が政策科学部の1回生対象の授業用に開発したWebCT上の英語学習システムについて、その
開発と運用方法を述べるものである。
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政策科学10−3,Mar.2003
Ⅱ.CALLの発達と類型
1960年代に開始されたとされるCALLの歴史はすでに40年ほどになるが、その間に、CALLの
性格や語学教育の中における位置付けは、それを取り巻く学習理論の変遷やコンピュータ技術
の発達等の要因によって変化してきている。本章では、コンピュータ技術の発達とCALLとの
関連を述べると共に、CALLの類型をそのスタイルから3つに分類してそれらの特徴について
の考察を行う。
1.コンピュータ技術の発達とCALL
CALLの発達は、当然のことながらコンピュータ技術の発達に大きく影響されてきている。
歴史的には、大きく分けて3つのコンピュータ技術がCALLの発達に影響を与えている。最初
の技術は、「パーソナルコンピュータ」である。1960年代はまだパーソナルコンピュータが実
用化されておらず、メインフレームと呼ばれる巨大なコンピュータを端末から操作するという
利用形態が一般的であり、だれもがコンピュータを利用できる環境は実現されていなかった。
1970年代以降パーソナルコンピュータが普及し始め、語学教育においてもコンピュータが利用
できる環境が整い、学習者が個々にコンピュータを利用して語学学習を行うことのできる環境
が実現した。二番目の技術は「マルチメディア」である。外国語学習にとって重要な要素であ
る音声情報をコンピュータで扱う技術は、Apple社のMacintoshコンピュータが先進的に取り入
れていたが、1990年代になって多くのパーソナルコンピュータでも音声や動画といったマルチ
メディアが利用できるようになり、多くの語学学習用のCD-ROM教材が開発されることとなっ
た。三番目の技術は「コンピュータ・ネットワーク」である。1990年代の中頃にインターネッ
トが一般にも普及し始め、パーソナルコンピュータも、それまでのスタンドアロンでの利用形
態からネットワークを介して相互に接続して利用する形が一般的となった。これにより、英語
圏外の国からでもauthenticな英語に直接触れることができる環境が実現されただけでなく、電
子メールやWWW(World Wide Web)といったグローバル規模でのコミュニケーションのプラ
ットフォームが利用可能になり、外国語学習の環境を大きく変えることとなった。更に、ネッ
トワークの普及はCMI(Computer-Managed Instruction)の面にも影響を与えることとなった。
教室でのコンピュータの利用形態がスタンドアロンであった時代には、個々の学習者の学習状
況をリアルタイムでモニターしたり、クラス全体の学習履歴や成績を一斉に回収記録すること
は困難であった。しかしながら、ネットワークベースのCALLでは、このような機能は比較的
簡単に実現することが可能であり、それによって学習評価の方法も総括的評価(Summative
evaluation)だけでなく、形成的評価(Formative evaluation)を取り入れることが容易にでき
るようになり、学習者からの提出課題を収集しておくポートフォリオ評価なども取り入れるこ
とが可能になっている。
2.CALLの3つの類型
歴史的に見て、これまでに多くのCALLシステムやコースウェアが開発されてきたが、それ
らは、そのベースとなっている学習理論や外国語教授法によって次の3つに大別することがで
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CALLプラットフォームとしてのWebCTの利用について(杉森)
きる。
(1)Drill-and-Practice CALL
歴史的に見て最も古くからあるタイプで、語彙学習、文法学習、読解演習などでドリル型の
演習を行わせるものである。理論的には行動主義心理学とALH(Audio-Lingual Habit Theory)
に基づいている。このタイプのCALLはTutorial型やDrill型が代表的で、コンピュータが問題を
出題し、学習者は問題ドリルの練習を機械的に繰り返すという古典的なものであり、K R
(Knowledge of Results)情報の即時フィードバック、プログラム学習、個別学習等の特徴があ
る。主なものとしては、University of IllinoisのPLATOやBrigham Young UniversityのTICCITがあ
る。そのベースとなる学習理論に対する批判が行われるようになると共に、このタイプの
C A L L にもその効果に対する疑問が投げかけられることもあったが、現在でもこのタイプの
CALLは数多く存在し、CALLやCAIといえばこのタイプのソフトウェアが連想されることが多
い。
(2)Communicative CALL
1970年代になり、認知主義心理学の理論や構成主義(Constructivism)、外国語教育における
Communicative Approachが提唱されるようになると、CALLのタイプも変化することとなり、
Communicative CALL(Underwood, 1984)と呼ばれるものが登場するようになる。このタイプ
のCALLは、Simulationの形でコミュニケーション演習を行わせるものが多く、外国語学習を目
的としたものでは、MITのAthena Language Learning Projectで開発されたDans le Quartier St.
GervaisやA la Rencontre de Philippeがある。このタイプのCALLでは機械的にドリルを行わせ
ることはあまりせず、学習者にタスクや仮想的な場面・状況を与え、そこで外国語を使用して
コミュニケーション演習を行わせる構成となっている。しかしながら、このタイプのCALLで
も基本的にはコンピュータ相手に学習を進めるという形は変わらず、現実世界に近い形の学習
空間や真にインタラクティブなコミュニケーション環境を実現するには、ICALL(Intelligent
CALL)や音声認識技術の実用化など、技術的に解決しなければならない問題があり、コンピ
ュータは語学学習において周辺的な役割しか果たせないという指摘もなされている(Kenning
& Kenning, 1990)。
(3)Collaborative CALL
近年のインターネットの普及によりグローバル規模でのコミュニケーション環境が実現され
ているが、このようなコンピュータ・ネットワークを介して学習者間のコミュニケーション演
習や協調学習を行わせるタイプのCALLがCollaborative CALLである。このタイプは理論的には
Vygotskyらの社会的構成主義(Social Constructivism)とCommunicative ApproachのCooperative
Language Learningに基づいており、学習者が社会との関わりにおいて自ら知識を構築してい
くことに主眼が置かれている。このタイプのCALLは、コンピュータ・ネットワークを利用し
てCMC(Computer-Mediated Communication)を学習者間で行わせることや、CSCL(ComputerSupported Collaborative Learning:コンピュータ支援協調学習)などを行わせるもので、Drilland-PracticeやSimulationなどの様に、コンピュータを相手に学習を行うというスタイルを取る
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のではなく、コンピュータを通じて学習者同士でインタラクションを行わせるため、より現実
に近い学習環境を提供することが可能となる。例としては、MOO(Multi-user dungeon Object
Oriented)に加えて、電子メール、電子掲示板(BBS)、チャット、Video Conferencing(テレ
ビ会議)などの形でCMCを行わせるものが挙げられる。また、学習者と教師との間のCMCや
学習者間での情報の共有、Peer tutoringにより学習者同士で教え合うことや、学習コミュニテ
ィーの構築等も可能になり、「Drill-and-PracticeやSimulationで個別学習」という古典的スタイ
ルの持つ問題点(Crook, 1994)を解決することが可能となっている。このように、たとえ文字
ベースのものであってもネットワークを介して多くの相手と英語でのコミュニケーション演習
を行うことが出来る環境の実現は、従来型のCALLでは実現するのが難しく、Collaborative
CALLの導入によって初めて実現されるもので、コミュニケーション能力の養成を重視する近
年の英語教育にも大きなインパクトを与えている。
表1.CALLの3つの類型
CALLの類型
Drill-and-Practice CALL
Communicative CALL
Collaborative CALL
行動主義
認知主義・構成主義
社会的構成主義
ALH
Communicative Approach
Drill
Tutorial
Simulation
Game
学習理論
外国語教授理論
CALLによる学習形態
Communicative
Approach/Cooperative
Language Learning
CSCL
CMC
上記の3つのCALLのタイプにはそれぞれに長所や短所があり、どれが最も適切であるかは、
学習環境や学習目標、対象となる学習者等によって異なる。従って、これらのタイプを包括的
に実現できるような統合型CALLが理想的であり、利用する側が各々の環境や学習目標に応じ
てカスタマイズして利用できる形が望ましいと言えるであろう。例えば、英語学習を開始して
間もない導入時期においては、基本的な文法事項や語彙をDrill-and-Practice型で学習させるこ
とも必要であろうし、やがて英語力が高まるにつれてコミュニケーション型のCALLを取り入
れるということも必要になってくるであろう。また、CALLの利用形態に関しても、個別学習
だけでなく、通常の対面授業と併用する形での利用や、グループで利用させる形態など多様な
利用形態を導入すべきであると考えられる。
3.CALLが備えるべき機能
C A L L 授業においては、学習を継続させるための動機付けは重要な問題である。最近では
CALLを導入する教育機関が増えてきているが、やはりDrill-and-Practiceのコースウェアを利用
し、個別学習に重点をおいている場合が少なくないようである。マルチメディアを取り入れた
教材も豊富であるが、Drill-and-Practice型やTutorial型の単調で一方的な個別学習では学習者の
興味が持続せず、学習に対する動機付けの面で問題点があることも指摘されている(吉田他,
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CALLプラットフォームとしてのWebCTの利用について(杉森)
2001; Sugimori, 2001)。この問題に対する有効な対応策として注目されているのが、ネットワ
ーク上での学習コミュニティーの形成である。個別学習を行わせる場合、特に学力の低い学習
者は孤立した状況が原因となって学習動機を維持することが難しくなりがちである。従って、
メーリングリストや掲示板等を利用して教師やクラスメートが支援を行ったり、何らかの形で
コミュニケーションや情報の共有を行ったりすることが重要であるといえる。実際に、e Learningにおいて学習者間や学習者と教師との間でコミュニケーションや支援を促進すること
が有効であるという報告も行われている(Harasim,1999; 山本, 2002)。このような点を考慮す
れば、CALLを効果的に運用するには、Drill-and-PracticeやSimulationの機能だけでなく、ネッ
トワークベースのCMC機能やCMI機能も装備している必要があると言え、それを使う教師にも
FacilitatorやMentorとしての新たな役割が生じてくると言えるであろう。
今後のCALLシステムの備えるべき機能を検討すると、KR情報提示機能、個別学習機能、自
動採点機能や、最近では当然となったマルチメディア機能、インターネット接続などに加えて、
学習・授業支援機能面では次のような機能を備えることが必要であると考えられる。
¡
多様なカリキュラムや学習(出題)形態への対応機能(D & P、CSCL、Simulation)
¡
教材の一斉配布・回収(提出)機能
¡
ネットワークを利用した学習モニター・学習履歴記録機能
¡
教材作成支援機能(テンプレート、ウィザード)
¡
CMC機能(BBS、電子メール、メーリングリスト、チャット、TV会議等)
¡
対面授業支援機能(電子黒板、教材データベース、教材提示システム)
Ⅲ.e-Learningの標準化の流れとWebCT
近年のIT技術の実用化に伴い、教育界においても様々な分野でコンピュータの利用が進めら
れてきており、一般にe-Learningと呼ばれている。そのベースになっているのは、インター/イ
ントラネットというコンピュータネットワークとマルチメディアである。現在、これらのコン
ピュータ技術をベースとして多様な学習/教育システムが開発・利用されている。しかしなが
ら、これらのシステムは、基本的には、パーソナルコンピュータとインター/イントラネット
というプラットフォームを利用することにおいて共通しているものの、システムの構造、問題
の出題形式や成績記録機能、インターフェイス、コンテンツの開発や組込方法、システムの管
理方法等は、それぞれに異なっているという問題が存在し、汎用性の面で問題があることも事
実である。
個々の学習システムによってその仕様が大幅に異なることは、運用面において好ましいこと
ではなく、可能な場合は教育システムを共通仕様のプラットフォーム上に構築する必要がある
といえる。例えば、ある学部で開発されたWebベースの学習システムを別の学部のサイトに移
植しようとすると、場合によっては教材部分だけでなく管理運用用のWebアプリケーションプ
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ログラム全体の移植が必要となることも起こりうる。更に、移植先のサイトですでに別の学習
システムが使われている場合には、異なる学習プラットフォームが競合することになり、教員、
学習者の両方にとって混乱の原因となりうる。また、個々の教員が独自のプラットフォームで
学習システムを構築した場合、その教材はその教員しか利用できず、担当教員が変更になった
場合は、新しく担当になった教員に引き継ぐことが難しい。また、複数の異なったプラットフ
ォームが同一組織内に混在するという事態は、管理運用コストの面からも非効率的であり、教
員や学習者に対するガイダンス、サポート等も煩雑になる。
このような問題点を解決するため、e-Learningのシステムを構築する際に、システムの仕様
を統一した上で、各学習システムに共通の機能(プラットフォーム)とそれぞれに固有のコン
テンツとに分離するという考え方が提案されている。このような形態をとれば、教材を作成す
る際には、コンテンツ部分だけを作成すればよいし、教材を移植する場合でも元のコンテンツ
を共通のプラットフォームに載せ替えるだけで簡単に行うことができる。教材の構造をプラッ
トフォームとコンテンツという二重構造にした場合、両者間のインターフェイスや送受信する
データの構造を共通のものに規定しなければならないという問題が生ずるが、一旦それに準拠
して教材を作成してしまえば、それらを共通プラットフォーム上で自由に組み合わせて利用す
ることができるようになるという利点がある。また、利用者に対するガイダンスやサポートも
統一され、開発者と利用者の両方にとって利便性が高まることとなる。そこで、最近ではこれ
らのe-Learningプラットフォームの「標準化」の動きが北米の大学を中心にして出てきている。
Webベースのe-Learningの標準化規格として代表的なものには、Advanced Distributed Learning
Initiative(ADL)によって2000年1月に提唱されたSCORM(Shareable Content Object
Reference Model)や、IMS(Instructional Management Systems)Global Learning Consortiumの
IMS Content Migration UtilityやQTI(Question and Test Interoperability)がある。日本において
は、ALIC(Advanced Learning Infrastructure Consortium:先進学習基盤協議会)がこの標準化
の作業に積極的に携わっている。WebCTもこの流れに沿うものであり、IMS、SCORMをサポ
ートしている。
また、Web上にインタラクティブな機能を持つe-Learningサイトを実現しようとする場合、
正誤問題、多肢選択問題、穴埋め問題等の演習問題の表示と正誤判定及び採点を行う演習出題
採点機能、学習時間、解答までの時間、個々の学習者の得点などをログとして格納し、管理者
が一覧データとして管理することなどができる高度な学習履歴管理機能等が必要となる。また、
前述したように、最近のCALLは、Drill-and-Practiceの単純な学習活動を行わせるものだけでな
く、掲示板やチャットといったCMCを行わせるものや、CSCLなどを実現するものなど、複雑
なシステムを要求するものも増えてきている。この様な機能を備えた学習システムをWebサイ
ト上に構築するためには、HTMLに加えて、専門的知識を必要とするCGI(Common Gateway
Interface)、ASP(Active Server Pages)、JavaScript、Flash、Java等のプログラミングの知識や
Webサーバに関する知識が必要となり、コンピュータにそれほど詳しくない一般の教員にとっ
ては敷居が高いものとなっている。これらの機能を備える学習システムを個々の教育機関や教
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CALLプラットフォームとしてのWebCTの利用について(杉森)
員が開発することは困難であり、セキュリティー面でも問題がある。そのような意味でも、今
後WebCTの様にシステムを標準化してテンプレートを装備し、教材やコースウェアの開発を
行いやすくすることは、e-Learningの普及にとっても必要なことであると言えるであろう。
Ⅳ.WebCTについて
WebCTは、1995年にカナダのUniversity of British Columbia(UBC)のMurray Goldberg 氏を
中心に開発された、Webを用いたコース(講義)の設計・開発・管理を行うための統合型eLearning システムであり、北米ではカナダの教育機関で210校、アメリカでは1658校で導入さ
れており50%以上のシェアを持つとされている。また、全世界においても84カ国で導入され、
日本でも17校が導入済みである(2002年6月現在)。日本語版のWebCTは、名古屋大学の梶田
助教授を中心に開発が行われ、現在は株式会社エミットジャパンが商品化している。WebCT
が動作するサーバOS としては、SUN Sparc Solaris、RedHat Linux、Microsoft Windows 2000に
対応しており、PC側のWebブラウザは、Netscape NavigatorとMicrosoft Internet Explorerに対
応している。
WebCTは、単なるe-Learning用のコースウェア作成システムというだけでなく、大学(教職
員や学生)内のコミュニケーションシステムとしての機能も備えており、キャンパスポータル
としての役割も果たすことができる。また、WebCTには教材作成支援機能が備えられており、
これを用いれば、コンピュータにそれほど詳しくない教員でもWebベースの教材を比較的簡単
に作成することが可能で、その操作方法やインターフェイスは統一されているため、教員間や
学部間で教材やデータの共有を行うことが可能となり、教材開発においても効率化を図ること
ができる。
WebCTは主な機能として次のようなものを持っている。
¡
シラバス提示機能
¡
課題出題・回収機能
¡
講義ノート作成機能
¡
教材提示機能
¡
小テスト(クイズ)出題機能(自動採点+成績管理可)
¡
成績管理機能
¡
学生管理データベース機能
¡
アクセス制限機能
¡
電子掲示板機能
¡
電子メール機能
¡
リアルタイムチャット機能
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¡
オンラインホワイトボード(電子黒板)機能
¡
グループ学習(CSCL)機能
これらの機能を持つWebCTを、従来のコースウェアと比較した場合、その特徴として次の様
なものが挙げられる。
(1)完全なWebベースのコースウェア
WebCTでは、コースの作成や管理、受講等は全て汎用のWebブラウザで実行可能であるので、
インター/イントラネットに接続可能な環境であれば、いつでもどこからでもログインして学
習を行うことが可能で、遠隔教育にも対応可能である。
(2)多様な授業形態に対応
WebCTは、個別学習だけでなく、通常の一斉対面講義においても、講義ノートのデータベ
ース作成やレポート提出に利用できるなど通常の授業を補完するものとしても利用可能であ
る。また、グループ学習、協調学習などの学習形態にも対応させることができる。
(3)機能のモジュール化
教員は、WebCTが提供する多様な機能のうち、自分の授業に必要と思われる機能だけを選
んで利用することができ、講義資料や小テスト、グループ学習ツールなどを装備したオンライ
ン授業や、講義概要と掲示板のみの通常授業など、個々の教員が授業形態に合わせて独自の使
い方をすることが可能である。
(4)e-Learning標準化への対応
コンテンツの相互運用性(他のシステムでのコンテンツの利用)を考慮しており,WebCT
のコースコンテンツをIMS(Instructional Management Systems)標準に準拠した標準フォーマ
ットに変換できるだけでなく,IMS標準フォーマットのコースをWebCTでも使用することが可
能となっており、e-Learningの標準化の流れに対応している。
(5)問題作成支援機能の装備
前述したように、特別なプログラミング言語を知らなくても、用意されているテンプレート
やウィザードに従って問題を入力していくだけで、テスト問題をWebベースで作成することが
できる。これにより、多くの教員がこのシステムを比較的容易に利用することが可能になり、
e-Learningを導入しやすくなっている。
WebCTは語学学習用に特化されたe-Learningシステムではないが、音声や画像などのマルチ
メディアが扱え、コミュニケーション機能も充実している。また、上記の様な豊富な機能を備
えていることなどを総合的に考慮すれば、4技能の演習やコミュニケーション演習など英語教
育におけるCALLプラットフォームとして十分に効果的に利用できる可能性を持っていると考
えられる。これらのことをふまえ、次章ではWebCT上で著者が開発した英語授業用のコース
コンテンツについて述べ、WebCTの持つ機能をどのように利用して教材開発を行ったかにつ
いての解説を行う。
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Ⅴ.WebCT上での英語学習コースの構築
WebCTでは利用者各自にmyWebCTという個人用のホームページが用意されており、教員の
場合、そこに教材やテスト問題を構築していくことになる。立命館大学の場合、教員各自の
myWebCTのページにはその教員が担当する授業毎に専用のサブページがそれぞれ用意されて
おり(図1)、その授業を履修している学生の名簿等もあらかじめ大学側から準備されている。
教員が授業用に構築した教材やテストは、その授業を履修している学生のmyWebCTのページ
にも表示させることができる。WebCT上で実現することのできる学習支援機能の主なものは、
「シラバス」、「講義レジュメ」、「電子掲示板」、「小テスト」、「電子メール」、「チャット」であ
る。
「シラバス」は講義概要や参考図書等の掲示をするための機能であり、「講義レジュメ」は
授業で用いる資料を電子的に配布するための機能である。「電子掲示板」は授業の参加者が意
見や質問、解答などを書き込んだり、他の人が書き込んだ内容を読んでコメントを書いたりす
ることのできる機能で、参加者間での情報の共有や公開型コミュニケーションを行うために用
いる。「小テスト」は、多肢選択問題やレポート提出などが電子的に可能になる機能であり、
英語の授業においてはコアとなる機能である。「電子メール」は、WebCT内で利用可能な電子
メールを実現しており、非同期型のコミュニケーションツールを提供している。「チャット」
は、学生同士や学生と教員の間で同期型(リアルタイム)の文字によるコミュニケーションを
実現するための機能である。
WebCTには、これらのような学習活動を電子的に支援する機能が備えられており、それぞ
れの機能は担当教員側で細かな設定をすることが可能である。
図1.WebCTの授業用ホームページ
1.WebCT上での授業用Webページ作成方法
WebCT上で授業用のWebページを作成するには、教員はWebブラウザによってWebCTにログ
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インした後、Designer Optionにモードを変更する。「小テスト」の問題作成を行う場合は、最
初に個々の小問を作成して、それらをquestion databaseに保存する(図2)。その場合、問題
形式毎にテンプレートが用意されており、「多肢選択」、「マッチング」、「計算問題」、「ショー
トアンサー」、「パラグラフ記述」から選ぶこととなる。「パラグラフ記述」を除いては自動採
図2.小テスト(Quiz)の問題データベース画面
点機能が付いており、出題形式の設定変更等も可能である。小問が作成されると、次に
quiz/surveyを作成する。この段階でquestion databaseの中からそれぞれのquizに小問を割り当
て、各問の配点やKR情報表示の有無等の設定を行う。作成したquizはコース(授業)のペー
ジに登録され、学生側のmyWebCTのページにも表示できるようになる。個々のquiz/surveyは
アクセス開始時期や解答時間等の制限をかけることができ、何回まで繰り返して解答可能にす
るかということなども細かく設定できる。また、学生が解答したり提出したものの採点は問題
毎に結果を一覧で見ることができるので、個々の学生の成績を細かに診断し、学習状況を的確
に把握するのに有効である。
2.授業用WebCTサイトの開発
今回WebCT上に授業用のページを作成したのは、「英語6」の授業においてである。この授
業は、政策科学部の1回生を対象としたもので、主に音声英語のリスニングや会話演習を行わ
せるクラスである。この授業のテキストは、南雲堂から出版されているリスニング教材の
Topic Listening(杉森他、2001)を使用している。授業で行う主な演習内容は次の様なもの
となっており、これらの演習をWebCTを用いて行うことができるようにシステムの開発を行
った。
(1)会話演習
この演習は、各レッスンのトピックに関連した英語の質問が数個用意されており、それに対
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CALLプラットフォームとしてのWebCTの利用について(杉森)
して英語で答えるという形のものである。WebCTを用いない従来のLL教室での授業では、こ
の演習は隣りの学生同士2人でペアになり、交互に質問をする側と答える側とになってopenendで会話演習を進めていく形で演習を行わせていた。WebCTを利用した演習では、これらの
会話演習後に自分の答えた内容を要約して短いエッセイを書かせて電子メールで提出させる課
題を加えた。口頭演習だけでは、学生が答えた内容は消滅してしまって残らないが、この様な
演習を加えることにより、学生は自分が答えた内容を再構築してまとめる演習を行うことがで
き、教師も個々の学生の解答の内容を確認することが可能になる。
(2)語彙演習
リスニング教材中に出てくるキーワードを確認させるもので、単語をその定義や同義語と英
英でマッチングさせる形式で単語テストを作成した。WebCTに装備されている小テスト機能
のマッチング形式を利用したもので、学生が解答したものは自動採点されて本人にフィードバ
ックされ、教員側にも成績記録が残る設定になっている。
(3)リスニング演習
一定の長さのパッセージやダイアログを聞いて、その内容に関するTrue or Falseの問題に答
えさせると共に、パッセージ全体のDictationや空所補充の演習を行わせる内容となっている
(図3、図4)。リスニング用の音声は、MP3形式でデジタル化され、サーバー上に置かれてい
るので、学生は、聞き取れない部分を何度でもくり返して聞くことが可能になっている。これ
らの演習も小テスト機能を利用して実現し、学生の解答は自動採点されて教員側に記録が残る
ようになっており、学生側にも採点結果が提示される。
図3.正誤問題の解答画面
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図4.リスニング問題
(4)ショートレポート
Topic Listeningでは各レッスン毎に「Sports」、「Fashion」、「Hobby」などのトピックが決め
られており、それに関連する表現を学習する構成になっている。WebCTを利用するにあたり、
トピックに関連する情報をインターネット上で検索させ、学生各自が興味を持ったものについ
てショートレポートを書かせる演習を電子掲示板を利用して実現した。例えば、Lesson 6では
「映画」がトピックとなっているが、このレッスンでは、Hollywood.com 1)やInternet Movie
Database2)等のWebサイトへ行き、そこで自分の気に入った映画や俳優を英文で紹介する課題
が設定されている。
これらの課題は、基本的には一定時間内で個別学習で行わせることにしているが、授業スタ
イルとしては全面的な個別学習の形をとらずに、一斉授業の形でも授業を行ったり、掲示板で
自分以外の学生が書いた内容を読む時間を設定したりして、クラス内のコミュニケーションを
持つ工夫を考えている。
Ⅵ.結論
これまで述べてきたように、WebCTはCALL授業を支援する様々な機能を実現しており、統
合型のe-learningシステムとして大きな可能性を持っているといえる。また、これはCollaborative
CALLのシステム全体に当てはまることであるが、コンピュータ相手の演習ではなく、実際に
人間の相手が存在するコミュニケーション演習を行うことのできる機能を実現した意味は大き
く、EFLの環境におけるコミュニケーション能力の養成に大きく寄与するものであると言える
であろう。また、WebCTは、機能面でもよく考慮されたシステムで、同種のe-Learningシステ
−80−
CALLプラットフォームとしてのWebCTの利用について(杉森)
ムであるBlackboard 3)よりも多くの点で優れているとされている(Siekmann, 2001; Hazari,
1998)。それらに加えて、WebCTは一般的なWebブラウザを用いて利用できるという汎用性の
高いシステムであるので、学生は授業中に終えられなかった課題や宿題等も、自宅からインタ
ーネットにアクセスして学習を行うことが可能であるし、教員も自宅で問題の作成や課題のチ
ェック等を行うことができるという利点があるので、将来、遠隔授業が実施された場合におい
てもそれに対応することが可能である。また、クラス内でのコミュニケーションを促進するツ
ールが豊富に備わっており、それらを適切に利用することによりCALL授業にありがちな単調
作業からくる授業に対する興味や動機付けの低下の危険性を減らすことが期待できる。前述し
たように、WebCTで開発した教材は、これを用いる他の授業への移植も容易であり、教材開
発の効率を高めることもできる。立命館大学のように大規模校で統一カリキュラムを組んでい
るような場合においては、このような標準化された統一プラットフォームを導入することは、
多くの面において利点があると言えるであろう。
しかしながら、問題点や改良を要すると思われる点があることも事実である。まず、
WebCTは語学学習用に特化されているわけではないので、英語の授業で使おうとすると不十
分な部分も見受けられる。例えば、小テスト出題機能は、音声ファイルや動画ファイルを同一
ページ内で直接サポートしていない(静止画像はサポートしている)。従って、リスニング問
題などは、音声ファイルをContent Module内に置いたり、別のWebページ上に置くなどして、
そこからリンクを貼るという形で出題せざるを得ない。また、小テストの出題形式もテンプレ
ートの種類が豊富とは言えず、空所補充問題などは出題に工夫を必要とする場合もある。また、
学生が解答作業を行う際の画面の構成も、機能的には類似のものを提供するQ u i a 4 ) やH o t
potatoes 5)に比べると文字中心のもので素っ気ない印象を与えている。問題作成に関しては、
問題の外部からのインポート機能は付いているが、基本的には問題作成はテンプレート上で既
定のメニュー等から選んで作成することになる。このあたり、問題ページのスクリプトを直接
書き込む機能がもう少し親切に設計されていれば、より細かな設定やカスタマイズが教員側で
可能になるであろうし、問題作成の効率も高めることができると思われる。今後、より多くの
教員が積極的にWebCTを利用するようになるためには、実際に授業に導入して活用している
教員を中心としたユーザーグループの形成や、導入例の紹介、マニュアルの充実等が課題とな
ると言えるであろう。外国語学習用CALLとしては、辞書機能や音声認識機能などが装備され
れば、更に多様な演習が可能となるであろうし、日本の情報インフラの一つとして欠かすこと
のできないi-Mode等の携帯端末への対応を行えば、教員や学生にとってより身近なシステムと
なり、利用の度合いも飛躍的に向上するものと思われる。
Ⅶ.おわりに
WebCTが装備している機能は、基本的にはperlやC言語によるCGIとJava Scriptで実現されて
いる。従って、コンピュータに詳しい教員であれば同類のシステムをサーバ上に自分で構築す
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ることができる。また、WebCTが持つ個々の機能(小テスト、掲示板、チャット、電子メー
ル等)は、それぞれインターネットで用いられている汎用のものを使用しても実現することが
できる。しかしながら、コンピュータに詳しくない教員でもこの様なインタラクティブな機能
を備えたWebベースの学習システムが一元的に構築できることの利点や、e-Learningプラット
フォーム標準化の意義、実現できる機能の豊富さ、セキュリティー対策等を考慮すると、
WebCT導入の利点は大いにあると言えるであろう。
WebCT導入の効果については現在分析中であるが、導入して約2ヶ月後に行われた授業評
価アンケート(大学の統一フォーマットによる実施)の結果によると、同一クラス、同一テキ
ストでWebCTの導入前と導入後の回答を比較すると、「予習や復習への取り組み」、「授業の理
解度」、「授業への満足度」の項目において、評価の数値が向上しており、これらの項目におい
てWebCTの導入が効果をもたらしている可能性が示唆されている。また、視聴覚教材の積極
的な利用を評価する項目に関しても数値の向上が見られており、学生がWebCTの導入を好意
的に受け入れていることが示されている。今後、授業での学生の学習活動の分析や学習効果の
測定、コミュニケーション機能の効果測定などを行う予定であり、他の授業においても必要に
応じてWebCTを導入する予定である。
注
1)Hollywood.com http://www.hollywood.com/
2)The Internet Movie Database http://www.imdb.com/
3)Blackboard http://www.blackboard.com/
4)Quia Web http://www.quia.com/web/index.html
5)Hot Potatoes http://web.uvic.ca/hrd/hotpot/
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