アンケートにみる顔の美醜観

アンケートにみる顔の美醜観
「おしゃれ白書 1991 〜 2000」より
かわいい顔が主流
10 年、基本的な変化なし
2000 年の若い層の
大きい口と長い睫毛が好き
には注目
2001 年 1 月 31 日
ポーラ文化研究所
村澤博人 / 阿保真由美
東京都品川区東五反田5−24−10 テラサキ第3ビル2Ｆ
te l.03 ‑5795 ‑0 941
1
Ⅰ . 目的
「おしゃれ白書 2000」における顔の好き嫌いとその理由に関する調査データを分析して、現代女性の美
醜観を明らかにする。
Ⅱ . 調査概要
「おしゃれ白書 2000」はポーラ文化研究所が 1979 年以来継続している調査で、３年毎に実施してい
る。概要は以下の通りとなる。
調査地域：首都圏３０キロ圏内
調査対象者：上記エリア内に居住する 15 歳からから 64 歳までの女性、910 人
サンプルデザイン（単位：人）
15 〜 18 歳（高校生）
70
19 〜 23 歳（学生）
70
19 〜 23 歳（社会人）
70
24 〜 29 歳（未婚）
70
24 〜 29 歳（既婚）
70
30 〜 34 歳（未婚）
70
30 〜 34 歳（既婚）
70
35 〜 39 歳
70
40 〜 44 歳
70
45 〜 49 歳
70
50 〜 54 歳
70
55 〜 59 歳
70
60 〜 64 歳
70
調査対象抽出法：エリアサンプリング法
調査方法：戸別訪問面接聴取法および留置法の併用
調査期間：2000 年６月
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Ⅲ . 調査結果
質問「自分の顔のなかで一番気に入っているところはどこですか、どんな点が気に入って
いるのですか。自分の顔のなかでで一番イヤなところはどこですか、どんな点がイヤなのです
か。以下に自由にお書きください。
気に入っているところ（
イ
ヤ
な
と
こ
）その理由（
ろ（
）
）その理由（
）
Ⅲ ‑1. 気に入った（好き）ところ、イヤな（嫌いな）ところ――「好き」の半数以上が目。
気に入ったところ、すなわち「好き」なところとイヤなところ、すなわち「嫌い」なところを集計すると、
グラフのようになる。好きなところでは「目」に圧倒的な支持があり、54％であったのに対して、嫌いなとこ
顎 2%
輪郭 3%
唇 3%
歯
2%
ほか
4%
まつ毛
4%
眉 5%
肌 5%
目
54%
鼻
7%
口
11%
回答者数
599/910人
自分の顔で好きなところ 2000
ろは鼻が１位で 29％、２位の目は 19%、３位の口が 11％と大差がない結果であった。
好きなところを回答した人数と嫌いなところを回答した人数は調査対象の 910 人中、それぞれ 599 人、735
ほくろ1%
ほか
1%
歯 3% 顔
2% 唇
2%
顎 3%
額 2%
頬 4%
鼻
29%
輪郭
6%
トラブル 6%
肌
6%
目
18%
眉
7%
口
10%
回答者数
735/910人
自分の顔で嫌いなところ 2000
人であった。パーセントに直すと、66％、81％で、嫌いなところをあげた人のほうが多かった。
3
Ⅲ ‑2. 気に入った（好き）ところ、それぞれの理由
気に入ったところ、すなわち「好き」な理由をまとめてみた。
a) 目が好きな理由――大きくて二重！
目が好きな理由
口が好きな理由
黒目が大きい2%
かわいい2%
やさしい2%
ほか
15%
きれい2%
大きい
25%
形が良い
ほどよい大きさ
2%
ほか
25%
小さい
43%
化粧映えする
3%
唇が薄い
二重
24%
まつげが長い
3%
パッチリ
くっきり
9%
はっきり
6%
3%
きりっとしまっている
6%
形が
良い
7%
ちょうどよい
大きさ
7%
形が好き
9%
「大きい」
「二重」がそれぞれ 25％、24％とほぼ同率で、両方で約半数を占める。第３位は「ぱっちり・くっ
きり」という評価。
「二重で大きい（その結果として、ぱっちり・くっきり・はっきり）」ことが好まれる条件
となった。
b) 口が好きな理由――小さいが一番
「小さい」43％と圧倒的に支持されている。続いて「形が好き」９％、「形がよい」７％、「ちょうどよい大
きさ」７％、「きりっとしまっている」6％の順となる。
c) 鼻が好きな理由――高くて鼻筋が通る
肌が好きな理由
鼻が好きな理由
愛敬がある
だんご
5%
ほか
11%
ほか
19%
高い
27%
バランスがよい
7%
ツヤ・
ハリがある
8%
ほめら
れる
9%
高からず
低からず
11%
白い・色白
29%
鼻筋が
通っている
16%
きめが細かい
8%
白いと
いわれる
11%
形がよい
14%
しわがない
14%
きれい
11%
「高い」が一番で 27％、「鼻筋が通っている」16％、
「形がよい」14％、
「高からず低からず」11％、と続く。
d) 肌が好きな理由――色白でしわがない
「白い・色白」が１位で29％、「しわがない」が 14％、「きれい」11％、
「白いといわれる」と続く。ここでは
自己評価の「白い・色白」と他者評価の「白いといわれる」を分けているが、基準はどちらも白いをよいとし
ており、同じである。
4
睫毛が好きな理由
眉が好きな理由
ほか
ちょうど 3%
よい濃さ
10%
はっきり
している
10%
カールし
ている
19%
形が整っている
49%
描かなくても良い
28%
長い
81%
e) 眉が好きな理由――形が整っているから
「形が整っている」が49％でほぼ半数を占め、
「描かなくてもよい」２8%、
「はっきりしている」10％、
「ちょ
うどよい濃さ」10％と続く。
f) 睫毛が好きな理由――長くてカールしているから
二つの理由に集約される。「長い」81％と「カールしている」19% である。
Ⅲ ‑3. イヤな（嫌いな）ところ、それぞれの理由
好きな理由同様、嫌いな理由も個別にまとめてみた。
鼻が嫌いな理由
目が嫌いな理由
毛穴黒ずむ
脂っぽい
ほか
9%
形が嫌い
あぐらをかく
小鼻が大きい
上を向く
目つき・印象
が悪い
2%
一重
22%
睫毛が短い2%
3%
毛穴が目立つ
5%
ほか
18%
低い
41%
つり目2%
垂れ目4%
形が悪い
6%
丸い
6%
小さい
19%
きれいな二重
でない
3%
だんご
10%
左右不揃い5%
大きい
11%
はれぼったい
7%
奥二重
8%
細い
8%
a) 鼻が嫌いな理由――低いから
「低い」からが41％で圧倒的に支持が多く、ずっと下がって「（鼻翼が張って）大きい」11％、
「だんご（鼻）」
10％、「丸い」「形が悪い」６％、「毛穴が目立つ」５％と続く。
b) 目が嫌いな理由――一重で小さいから
「一重」22％、
「小さい」19%、が２大理由で、後は 8% の「細い」
「奥二重」、続いて「はれぼったい」７％、
「左右不揃い」５％と順となる。
5
眉が嫌いな理由
口が嫌いな理由
20代以下
25%
30代以上
ほか
19%
大きい
23%
抜きすぎて
薄い
5%
ホクロが嫌い 4%
形が嫌い 5%
太くて濃い
5%
小さい
11%
への字 7%
左右が違う
7%
20代以下
30代以上
歯列や噛合せが悪い
9%
薄い
17%
形がうまく
つくれない
17%
ゲジゲジ眉
5%
厚い
15%
形が悪い 7%
ほか
19%
濃い
9%
太い
16%
78%
22%
c) 口が嫌いな理由――大きくて唇が厚いから
「大きい」が 23％でトップを占め、「厚い」が 15％、「小さい」が 11％、「歯列や噛合せが悪い」９％、「へ
の字」７％、
「形が悪い」７％と続く。
「大きい」と「小さい」の相反する理由が挙げられたので、念のために
年齢分布の違いを見ると、「大きい」は 30 代以上、「小さい」は 20 代以下に支持が多いことがわかった。
d) 眉が嫌いな理由――手入れがたいへん
「薄い」「形がうまく作れない」「太い」が 17％、17％、16％とほぼ同率で、ベストスリーを占める。さら
肌が嫌いな理由
ほか
20%
ほかトラブルの理由
シミ
22%
クマ
20%
ほか
32%
脂っぽい
5%
シミ・ソバ
カスがある
13%
ニキビ
13%
しわ
5%
ホクロ
5%
ソバカス
7%
くすみ
8%
ヒフのたるみ
5%
毛穴
8%
シワ・小ジワ
5%
毛穴が目立つ
5%
老けて見える
10%
黒ずみ
10%
吹出物 7%
に「濃い」９％、「左右が違う」７％と続く。まとまった傾向よりは個人差が多く見られる。
e) 肌が嫌いな理由――シミ・ニキビ・毛穴が目立つなど
「シミ」が 22％でトップ。「ニキビがある」13％、以下「毛穴が目立つ」「（肌の）くすみ」「吹出物」「ソバ
カス」と８〜７％レベルで連なる。
f) 他トラブルが嫌いな理由
ここには直接部位などを明記せず、
「クマ」20％とか「シミ・ソバカスがある」13％と回答したものをまと
めている。「老けて見える」
「黒ずんでいる」が 10％。さまざまな回答があるために、
「ほか」が 32％となる。
6
輪郭（顔の形）を嫌う理由
g) 輪郭（顔の形）が嫌いな理由
全体で５％の支持だが、
「ぽっちゃり・丸い・
ふっくらしている」が 28％、「大きい」「（顎の
骨が）張っている」24％、「骨が出ている」８
％などの理由で顔の輪郭を嫌っている。
ほか
16%
ほお骨が出ている
8%
張っている
24%
ぽっちゃり・丸い・
ふっくらしている
28%
大きい
24%
Ⅳ . 考察
Ⅳ ‑1. 好きところ、嫌いなところ――一極集中型と分散型
好きなところは「目」が 54％と過半数を越えていた。それに対して嫌いなところの１位の「鼻」と２位の
「目」と３位の口が合計されて過半数を占める結果であった。言い換えると、好きは一極集中型であるのに対
して、嫌いは分散型といえる。したがって、目をほめると（もちろん理由の結果に示されているような二重で
大きいと異なる場合除く）、かなりの確率で喜ばれることになる。
Ⅳ ‑2. 部位別理想像
すでにお気づきの通り、好きな理由と嫌いな理由は裏表の関係が多い。そこでここでは部位別に理想像を考
察した。
a) 理想的な目とは――現代では、大きい＆二重！
目は「大きい」
「二重」でほぼ半分を占める。嫌いはそれぞれに対抗する言葉、すなわち「一重」「小さい」
が２大理由である。形態的には「大きい」「二重」ならば、印象は第３位の「ぱっちり・くっきり」という評
価になる。
b) 理想的な口とは――小さいが一番だが、ヤングでは大きい口もいい
口に関しては好きと嫌いの結果を合わせると、二つの価値観があることが理解できる。この点は経年的な変
化の心でも触れるが、全体の理想は「小さい」ことが不可欠で、その結果、「形が好き」
「形がよい」「ちょう
どよい大きさ」「きりっとしまっている」と感じているようだ。。
サブの理想は嫌いの「小さい」11％に表われている。年齢分布の違いを見ると、
「大きいから嫌いという人」
は 30 代以上、
「小さいから嫌いという人」は20 代以下に多いことから、20代までのヤングのなかには「大き
い口」を理想とする人がある程度いることがわかる。
c) 理想的な鼻とは――高くて鼻筋が通って細い
理想的な鼻の形は「高い」
「鼻筋が通っている」が「（鼻翼が張って）大きい」あるいは鼻翼を含めた鼻の下
部が「丸」くて「だんご（鼻）」はよくないとされるようだ。適度に高くてすらっとして正面から見て細いの
が理想のようだ。
d) 理想的な肌とは――色白で透き通る
「白い・色白」が第一条件。「シミ」「ニキビ」
「しわ」「（肌の）くすみ」「吹出物」
「ソバカス」があったり、
「毛穴が目立つ」ことは嫌われる。白く透き通るような肌が理想のようである。
7
e) 理想的な眉とは――形が整っているから
眉に関しては手入れをしなくてもよいほどきれいに「形が整っている」のが理想のようだ。
「描かなくても
よい」
「形がうまく作れない」などの意見を聴くと、眉を描くことは容易ではない様子が窺われる。化粧する
前の眉の状態が人さまざまで、ある形にするのには人によっては濃かったり、あるいは薄かったりと多様な
意見がでているように見える。
f)理想的なまつ毛とは――長くてカールしているから
目が好きという理由のなかに「まつ毛が長い」が３％出てきたが、目ではなく、まつ毛が好きという意見
が単独で４％あった。「長」くてさらに「カールして」いれば、理想といえそうだ。
f) そのほか
以上のほか、直接部位などを明記していない項目を集めた。つまり部位などを明記せず、
「クマ」があると
か、「老けて見える」というような回答である。
「クマ」
「シミ・ソバカスがある」
「老けて見える」「黒ずんでいる」などなど、一言で言えば、加齢や健康
でないことによって起こる現象であろう。その意味で、肌の白さ志向にも共通しようが、若い肌を理想とし
ているようである。
g) 理想的な輪郭（顔の形）とは――小さい顔
支持率が低いため、述べていなかったが「輪郭が好き」の理由には「すっきりしている」「面長」
「小さく
て卵形」などの意見が散見している。嫌いな理由と合わせると、
「小さい顔」が理想として読み取れる。全体
に「丸くてふっくらした」だけでなく、
「（骨が）張っている・出ている」印象が大きく見せていると思われ
ているようだ。
Ⅳ ‑ ３ . 現代女性が抱く美貌観――かわいい顔が主流……浜崎あゆみさん
以上の部分部分を重ね合わせると、今回調査した女性たちが描く理想的な顔が以下のように浮かび上がっ
てくる。
目は「大きく二重」で「ぱっちり・くっきり」
口は小さくて整っている（ヤングでは大きい口もいい）
鼻は高くて鼻筋が通って細い
肌は色白で透き通っていて
眉は適度な濃さで形が整っている
まつ毛は長くてカールしている
若い肌を理想としているようである。
小さめのすっきりした顔
ヤング層の大きい口を除くと、「かわいい」顔立ちである。そのかわいさは「りかちゃん人形」や「ジェ
ニー」、あるいは少女コミックに登場する顔に通じるものであろう。この点はこれから述べる 1991年以来の
調査で変わっていない点である。言い換えると、
「かわいらしい」顔を理想のイメージに描き、そのイメージ
を基準に自分の顔の好き嫌いを述べている、という調査結果である。
昨年来、人気のある浜崎あゆみさんの顔は以上の条件を満たしているといえよう。
Ⅳ ‑ ４ . 美貌観の経年変化
この調査は 1991 年から継続している項目であるために、過去との比較をしてみた。グラフを見ていただ
くとおわかりのように、上位はこの 10年でほとんど変化がない。３位以下で、数値的な変化は小さいが、順
番の変化が見られるので、その変化を抜き出すと次のようになる。
8
額 1%
ほか
7%
肌 3%
顔 5%
額 2%
ほか
9%
頬 4%
眉
6%
鼻
26%
肌 4%
鼻
6%
口 8%
目
52%
口
7%
唇 8%
目
19%
眉
10%
唇
13%
回答者数
669人/1000人
自分の顔で好きなところ 91
顔
10%
回答者数
804人/1000人
自分の顔で嫌いなところ 91
歯 2%
額 1%
頬 2%
ほか
6%
顔、顔全体 4%
鼻 4%
ほか
3%
顎
3%
額 2%
唇
眉 3%
8%
肌
6%
唇
6%
目
52%
鼻
31%
口
9%
眉
9%
顔・顔全体
・輪郭 10%
口
12%
目
16%
肌
11%
回答者数
783人/1050人
回答者数
546人/1050人
自分の顔で好きなところ 94
まつ毛
2%
眉
6%
顔
輪郭
鼻 4%
6%
自分の顔で嫌いなところ 94
顎 2%
ほか
6%
頬 2%
ほか
額 2% 7%
歯 3%
鼻
27%
唇 3%
眉 7%
目
52%
肌
6%
口・口もと
7%
唇
8%
口
10%
回答者数
962人/1150人
自分の顔で嫌いなところ 97
ほくろ1%
ほか
1%
歯 3%
顔
2% 唇
2%
顎 3%
額 2%
顎 2%
唇 3%
肌
15%
回答者数
631人/1150人
自分の顔で好きなところ 97
輪郭 3%
目・
目もと
17%
顔・輪
郭 8%
歯
2%
ほか
4%
まつ毛
4%
頬 4%
鼻
29%
輪郭
6%
眉 5%
肌 5%
目
54%
トラブル 6%
鼻
7%
肌
6%
口
11%
目
18%
眉
7%
回答者数
599/910人
口
10%
回答者数
735/910人
自分の顔で嫌いなところ 2000
自分の顔で好きなところ 2000
過去 10 年間の顔の好き嫌いの変化
9
前ページのグラフを見比べると、好きなところでは、
・第１位の目は 50 数％とほとんど変化ない。
・２位以下６位までは
1991 唇、口、鼻、眉、顔
1994 口、眉、唇、肌、鼻、顔
1997 口、唇、肌、眉、鼻
2000 口、鼻、肌、眉、まつ毛
となる。口と唇は別に分類しているが、一緒にすると、年代順に20％、18％、18％、14％と減少傾向にある。
嫌いなところでは、
・第１位２位が鼻と目で 30％前後、16 〜 19％の値である。
・３位以下６位までは
1991 顔、眉、唇、口
1994 肌、顔、口、眉、
1997 肌、顔、口、眉
2000 口、眉、肌、トラブル、顔・輪郭
となる。好きと同様に口と唇を一緒に見ると、16％、12％、10％、13％、多少減少気味である。
このように多少の上下はあるが、全体としてみた美貌観は大きくは変わっていないことが推測できる。そこ
で、さらにそれぞれの理由のレベルを検討してみた。
「目が二重で大きい」のがよいとする傾向は、1991年来まったくと言っていいほど変わっていない。鼻につ
いても同様で、「高い」のがよく「低い」とか「大きい」「毛穴が目立つ」のはよくないとされている。顔も
1991 年でも「小さい」方を好み、「大きい」「丸」いのを嫌う傾向は 2000 年においても変わらない。
その一方、眉や口に関しては好みの変化が見られる。眉は時代の流行に影響される一方、口に対しても世代
間の違いが明白になった。
たとえば眉は 1991 年は「太い」「はっきりしている」「濃い」ほうがよく、
「薄い」のはよくないとされた。
1980 年代の太い眉の流行がまだ残っていたことがわかる。1994 年もほぼ同じ傾向であったが、1997 年にな
ると、「濃い」は明確に上位に表われず、「形が良い」
「整っている」のがよく、
「眉が薄い」「「形がよくない」
「「太い」のはよくないとされるようになる。2000 年には前述のように、
「形が整っている」ことが最大で、
「描
かなくてもよい」「はっきりしている」
「ちょうどよい濃さ」がよく、
「薄い」「太い」「濃い」とか「形がうま
く作れない」から嫌いとなり、10 年前とは好みが違うことが窺える。
また、1991 年ではたった３人（0.4％）しか「まつ毛を好き」とあげなかったのに対して、2000 年には４
％と増えている点は特記すべきことだろう。若い人を中心にマスカラなどが流行していることにも通じる変化
である。
すでに述べたように口に対しても 10年前の、口は「小さい」方がよく、
「大きい」はよくないという伝統的
に小さいものを好む傾向が強かった時代から、若い人を中心に大きな口もよいとする価値観の台頭が見られる
ことにも注目をしたい。
Ⅳ ‑ ５ . 好きな理由と嫌いな理由の表現の分析結果――好きは主観的印象的、嫌いは具体的表現が多い
好きなところの理由で書かれた言葉と嫌いなところの理由で書かれた言葉を比較してみた。
書かれた言葉は大きく形態、すなわち大きさや形や色などの形状や状態を直接述べた言葉と、
「はっきり」と
か「ととのっている」とか「ほどよい大きさ」というような印象を表現する言葉とに分類できる。前者がどち
らかというと客観的な情報に対して、後者は主観的な印象評価の傾向が強く、主観的ゆえに読んだ人がその状
態を具体的にイメージすることは容易ではない、と言える。
10
今回の好き嫌いの理由を述べた言葉を以下にまとめ、形状や状態を述べた言葉は下線で、印象表現した言葉
は斜体にして表示した。
目好き「大きい」
「二重」「パッチリくっきりぱっちり」
「はっきり」「まつげが長い」
「化粧映えする」「形が
良い・ほどよい大きさ」「きれい」「やさしい」「かわいい」「黒目が大きい」
目嫌い「一重」「小さい」
「細い」「奥二重」
「はれぼったい」「左右不揃い」
「きれいな二重でない」「垂れ目」
「つり目」「睫毛が短い」「目つきが悪い・印象が悪い」
口好き「小さい」「形が好き」「形が良い」「大きさがちょうど良い」「きりっとしまっている」「唇が薄い」
口嫌い「大きい」「厚い」
「小さい」「歯列や噛合せが悪い」
「への字」「形が悪い」
「形が嫌い」「ホクロが嫌」
眉好き「形が整っている」「描かなくても良い」「はっきりしている・すっきり」「濃さがちょうど良い」
眉嫌い「薄い」
「形がうまく作れない」
「太い」
「濃い」
「左右が違う」
「太くて濃い」
「ゲジ眉」
「手入れをしす
ぎ」
「睫毛」「長い」「カールしている」
鼻好き「高い」
「鼻筋が通っている」「形がよい」
「高からず低からず」「ほめられる」
「バランスがよい」「愛
敬がある・だんご」
鼻嫌い「低い」
「大きい」
「だんご」
「丸い」
「型が悪い」
「毛穴が目立」
「上を向い」
「あぐらをかいている小鼻
が大きい」「形が嫌い」「脂っぽい」「毛穴黒ずむ」
肌好き「白い・色白」
「しわがない」「きれい」
「人に白いといわれる」「きめが細かい」
「ツヤ・ハリがある」
肌嫌い「シミ」「ニキビ」「毛穴」「くすみ」「吹き出物」「ソバカス」「ホクロ」「しわ」「脂っぽい」
全体的には、好きな理由には印象表現した言葉（斜体）が多く、嫌いな理由には形状や状態を述べた言葉
（下線）が多い傾向にある。どうも好きな理由は抽象的で個人的な表現がしばしば見られるのに対して、嫌い
な理由は具体的で客観的な表現が多い傾向にある、と言えるのではないだろうか。
11

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