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平成16年度
実践研究報告書
研究主題
「視覚教材パワーポイントを利用した授業改善について」
実践研究員
寒河江
美和
(新潟県立新発田南高等学校教諭)
本研究は、工業・建築分野の鉄筋コンクリート構造の教科指導で、教科書と板書
が中心の授業では理解し辛い内容について、情報機器を導入し視覚に訴えることで
生徒の理解を促し、授業の改善を図るものである。
キーワード:建築・建築構造・鉄筋コンクリート・構造形式・視覚
1
実践研究のテーマについて
科目「建築構造」の目標は、学習指導要領にも示されているように、建築物の構造およ
び建築材料に関する基礎的な知識と技術を向上させ、活用する能力と態度を育てることに
ある。科目の性質上、本校だけでなく建築を学ぶ生徒にとって専門科目のうち最初に学習
する科目となることが多い。従来、本科目は教科書や図を板書したり補助プリントなどを
配布したりなどの授業を展開してきたように思う。しかし、構造などの詳細は非常に理解
し辛い内容が多く板書などにも限界がある。近年、学校の情報機器の整備発達に伴い映像
を利用した授業を実施することが可能となった。従来の授業スタイルを見直し、視覚に訴
えることで生徒の建築に対する理解を深めることが重要としてこのテーマを設定した。
2
研究の日程
第1回
実践研究
平成16年7月5日(月)
県立教育センター
趣旨説明、研究計画の立案
第2回
実践研究
平成16年9月29日(水)
県立教育センター
研究授業指導計画案」の検討
第3回
実践研究
平成16年11月1日(月)
新潟県立新発田南高等学校
研究授業の実施、協議検討
3
研究内容
(1)実践授業について単元と目標
「単元」
鉄筋コンクリート構造の特徴と構造形式
「目標」
学校などの公共建築物をはじめ多くの建築物は鉄筋コンクリート構造で造られてい
る。これまで学習してきた木構造のように単一の材料で成り立っているのと違い、鉄筋
とコンクリートが一体となった複合材料で構成されているため、まず鉄筋とコンクリー
トのそれぞれの特徴を理解させる。
また、鉄筋コンクリートの構造形式にはラーメン構造、壁式構造、シェル構造などが
-1-
あり、建築物の用途により異なる。本授業ではラーメン構造の身近な具体例をスライド
を使って説明し、理解を深めることを目標とする。
(2)学習指導計画について
本校では科目「建築構造」を1年次3単位で学習する。1年次で学習する専門科目は
他 に 「 情 報 技 術 基 礎 」、「 工 業 技 術 基 礎 」、「 建 築 設 計 製 図 」 が あ る 。 先 に 述 べ た よ う に
建築専門科目の基礎となる授業として重要である。また建築設計製図とのつながりも考
慮しながら授業を実施している。
本研究では第3章の「鉄筋コンクリート構造」を実施することにした。
表1に鉄筋コンクリート構造の指導計画を示す。
表1
指導計画
時数:全22時間(3時間/週)
時
限
構造の特徴と構造形式
単
1.構造の特徴
元
2.構造形式
(2)
鉄筋
(1)
コンクリート(7)
1.鉄筋の形状・寸法
2.鉄筋の品質・表示
1.コンクリートのあらまし
3.骨材
2.セメントと練り混ぜ水
4.フレッシュコンクリート
5.硬化後のコンクリート
7.混和剤
6.コンクリートの調合
8.レディーミクストコンクリート
9.いろいろなコンクリート
10.セメント製品とコ
ンクリート製品
基礎
(1)
主体構造
壁式構造
(7)
(3)
1.地盤
2.基礎の形状
1.主体構造のあらまし
3.設計上の注意点
2.配筋
1.壁式鉄筋コンクリート構造
2.壁式プレキャストコンクリート構造
3.補強コンクリートブロック構造
プレストレストコンクリ
ート構造
(1)
(3)指導の構想
建 築 構 造 の 科 目 の 構 成 は 第 1 章 「 建 築 構 造 の あ ら ま し 」、 第 2 章 「 木 構 造 」、 第 3 章
「 鉄 筋 コ ン ク リ ー ト 構 造 」、 第 4 章 「 鋼 構 造 」 の 4 つ に 分 け ら れ て い る 。
建築構造の指導目標として次の3点をあげる。
① 鉄筋コンクリート構造の構造材料となる鉄筋とコンクリートの特質と、この構造
の特徴・利点・欠点を理解させる。
② ラーメン構造を基本とした基礎・柱・梁・壁の構成や鉄筋の配筋、また、仕上げ
の種類とその特徴について理解させる。
③ 壁式構造やプレストレストコンクリート構造についても構造の特徴やなりたちに
ついて理解させる。
第1章で建築構造の基礎的、基本的ななりたちを学び第2章以降に入っていく。指導
目標の①を基本として各部材の配置の原則や一般的な断面形について理解を深めるよう
にし、科目「建築設計製図」の授業において自ら建築物を計画し設計ができるための力
となるようつなげていきたい。
-2-
(4)指導の方法
説明を黒板を使わず映像を通して行うことにする。プロジェクターを使用しスクリー
ンで映像を映し出す。編集ソフトはパワーポイントを使用した。映像は実際の建築物の
写真、建築物の断面図、各部の詳細図など教科書に掲載されていないものを多く用意し
た。ただ映像を写すだけでなく図の拡大やペイント機能を用いてスライドへ書き込みを
行いながら説明し、要点は文章を簡潔にして提示する。
また、学習プリントを配布して要点を書き込めるようにする。
(5)指導の実際
単元「鉄筋コンクリート構造の特徴と構造形式」の学習指導案を表2に示す。
授業で使用したパワーポイントのスライドの一部を資料1に示す。
生徒に配布した学習プリントを資料2に示す。
表2
学習指導案(単元)
教 科 名
建築構造
単 元 名
構造の特徴と構造形式
実施日時
平成16年11月1日(月)第2時限
場
新発田南高等学校
所
対象生徒
学習段階
視聴覚室
建築科1年生(41名)
指
導
内
容・学
習
活
動
【復習】
指導上の留意点
・スクリーン上に構
・ これ まで科目「 工業基礎」において材料実習を経 造の写真と断図面を
験 した 。コンクリ ートの材料構成には何が含まれて 表示し回答しやすい
導
入
( 10 分)
いるかを復習する。
ようにする。
【本時の内容】
・学習プリントを配
・ 鉄筋 コンクリー ト構造の材料である鉄とコンクリ 布し考えを記入でき
ー トの 特徴(長所 ・短所)と構造形式にはどのよう るようにする。
なものがあるかを学習することを説明する。
【鉄とコンクリートの特徴について】
・スクリーン上に柱
・導入時に記入した鉄とコンクリートの特徴の中か と 梁の図 を写し配筋
ら強さ(圧縮力、引張力)について学習する。構造 の 様子が 分かりやす
展
開
( 40 分)
部材の梁に外力が作用した時どのように変形するの い ように し、強さに
か映像を通して学習する。
ついて詳細図を用い
【部材名称】
て説明する。また、
・映像の図を見ながら柱、梁の配筋図からその名称 実 際の梁 の構造模型
とそれら意味を学習する。
を用意し部材を確認
・学習プリントに名称とそれらの働きを記入する。 させる。
・柱、梁の配筋の名
称や働きについて説
明する。
-3-
【鉄筋コンクリート構造の特徴】
・各構造形式を使用
【構造形式】
している代表的な建
・ラーメン構造、壁式構造、フラットスラブ構造、 築 物を例 にしながら
シ ェ ル 構 造 な ど を 映 像 を 通 し な が ら 特 徴 を 学 習 す 説明を行う。またデ
る。
ジタルカメラで撮影
・映像を見ながら学習プリントの図も参考にする。 し た 校 内 の 柱 や 梁 の
映像も利用すること
で理解を深める。
まとめ
【まとめ】
・授業のポイントを
・本授業のポイントを説明する。
しっかりと把握でき
①鉄筋コンクリート構造の特徴
るよう繰り返し説明
②鉄筋コンクリート構造の構造形式
する。
以上の2点について簡潔に要点を説明し確認する。
(5分)
【次回の連絡】
・ 鉄筋 コンクリー ト構造に使用される「鉄筋」につ
いて学習することを伝える。
【アンケート】
・本時の感想なども含めた質問事項に答える。
資料1
プレゼンテーション例
2.鉄筋コンクリート構造は?
建 築 構 造
補強された
コンクリート
(Reinforced
(Reinforced C oncrete)
oncrete)
→ 鉄とコンクリートで構成されている。
「鉄筋コンクリート構造」
それぞれの特徴
は何だろう?
それぞれの特徴は何だろう?
構造の特徴・構造形式
„
図1
„
鉄筋
コンクリートの特徴は?
鉄の特徴は?
図2
„
3 .鉄筋コンクリートの建築物の断面
は
鉄筋コンクリートの建築物の断面は
どうなっているの?
コンクリート
・強い(圧縮力)
・熱に強い
・重い
・さびない
・引張力に弱い
・強い(引張力)
・熱に弱い
・さびる
・圧縮力に弱い
„
図3
図4
-4-
・主筋→曲げの力に抵抗するために入れる鉄筋
・あばら筋→梁の受けるせん断力に対する鉄筋
・帯筋→柱の受けるせん断力に対する鉄筋
・かぶり厚さ→鉄筋に対するコンクリートの被覆の厚さ
(この間隔が保持されていることで鉄筋を火災の熱
から守り、錆を防ぐことができる。)
・あき(空き)→鉄筋表面間の距離
(この間隔が保持されていることでコンクリートに
含まれる砂利が鉄筋間を通ることができる。)
梁の配筋の様子
柱の配筋の様子
図5
図6
・ 耐火的 ⇒燃えない。コンクリートは熱を蓄える力が大きいので火災が
あってもコンクリートがすぐに高温にならない。鉄筋を火災の
温度から保護をするために耐火構造の建物ができる。
~特徴として~
・ 耐久的 ⇒鉄筋の酸化を防ぐ。 コンクリートはアルカリ性 なので鉄筋
„
„
„
„
„
„
の酸化による錆を防ぐ。
耐震性に優れている。
耐震性に優れている。
耐火性、耐久性に富む。
耐火性、耐久性に富む 。
自由な形の構造物が可能である。
自由な形の構造物が可能 である。
柱、梁の断面寸法が大きい 。
工 事 期 間 が長い。
が長い 。
解体が困難である。
解体が困難である。
などがあげられる。
・ 耐震的 ⇒構造物または構造部材の変形のしにくさを表す剛性が高い。
・ 自由な形 ⇒ 型枠を組むことで曲面 にも対応できる。
・ 断面寸法が大きい ⇒柱の間隔、階高などによって決定される。
・ 工事期間が長い ⇒コンクリートを一定の期間、養生させる必要な
どがある。
・ 解体が困難 ⇒コンクリート片には鉄筋なども含まれており解体後の
廃棄についても手間がかかる。
図7
図8
ラーメン構造って何?
構造形式には
①
②
③
④
ラーメン構造
壁式構造
フラットスラブ構造
シェル構造
„
„
„
などがある。
図9
柱と梁で構成されてい
柱と梁で構成されてい
る 構造形式。
柱と柱の間(スパンとい
う。)をとばしやすい。
部屋の内側に柱や梁
の形が出てしまう。
図10
梁は柱と柱の間に架け渡す
梁
梁には大梁と小梁がある
部屋の中に柱や梁の
大梁=柱の頭部どうしをつなぐ
形が出てきている様子
柱
小梁=大梁の間に架ける
柱
が分かる。
①柱の配置は碁盤目状に規則正しく入れる。
②断面的には通し柱として入れる。
建築科施工実習室
図11
図12
-5-
壁式構造って何?
„
„
壁、床だけで構成され
ている構造形式。
柱や梁が部屋の内側
に出てこないので室内
を有効に使える。
柱や梁を使わないで壁と
スラブでできている。
図13
図14
1. コンクリート構造物は
いつ頃から建築されたのか?
いつ頃から建築されたのか?
フラットスラブ構造って何?
„
„
„
①何年ごろ?
梁を用いないで鉄筋コ
ンクリートスラブが梁を
兼ねるもの。
柱と床スラブで構成さ
れている構造である。
倉庫、駐車場などの建
物に適している。
②どこの国で?
図15
図16
パンテオン(イタリア・ローマ)
コロッセオ(イタリア・ローマ)
„
„
紀元前80年頃に完成の円形競技場。左図の中央
紀元前80年頃に完成の円形競技場。左図の中央
下にたくさんの部屋があり、そこに猛獣や剣闘士が
控えていた。当時はその上に板を張られて(舞台)
剣闘士などの戦いが行われていた。
紀元前25年に創建。その後、火災にあい
120年頃
紀元前25年に創建。その後、火災にあい120年頃
に再建された教会である。
に再建された教会である。
図17
※
図18
画像は以下のサイトより掲載許可認証済みである。
① 財団法人資産評価システム研究センター
http://www.recpas.or.jp/
② デジタルカメラで綴る旅の思い出写真館
http://www.joyphoto.com/japanease/
-6-
(6)授業を終えて(アンケート結果より)
研究授業には学校長をはじめ教頭、建築科教諭、および他学科教諭から参観をしてい
ただいた。授業の最後にアンケート用紙を配布し生徒から率直な感想を得ることができ
た 。 ま た 、 参 観 者 か ら も 感 想 や 意 見 を い た だ い た 。( ア ン ケ ー ト 集 計 結 果 を 表 3 、 表 4
に 示 す 。) 本 授 業 は 通 常 、 自 教 室 で あ る が 、 ス ク リ ー ン お よ び プ ロ ジ ェ ク タ ー を 使 用 す
ることから視聴覚教室で実施した。教室移動ということで集合時間が心配になったが全
員遅刻せずに集まっていた。しかし普通教室と違い、部屋が広いことや隣との席の間隔
が近いため集中力に欠けやすい点があった。
資料3のアンケート結果から今までにプロジェクターを使用した授業を経験 してい
る生徒は約31%いることが分かった。またこのような授業形式に興味、関心を持った
生徒も多かったようだ。しかし、初めてこの単元を学習する時間としては授業の進むペ
ー ス が 早 か っ た よ う に 思 う 。 こ れ ま で の 黒 板 を 使 っ た 授 業 で は 「 説 明 を 聞 く 」、「 板 書
を 見 る 」、「 ノ ー ト に 写 す 」 な ど の 過 程 が 普 通 で あ る が 本 授 業 で は そ の タ イ ミ ン グ を 取
ることがなかなかできなかった。
全体を通してプロジェクターを使った授業は生徒の視覚に訴え、興味・関心をひく上
で効果的であると思った。
表3
アンケート集計結果(対象:生徒)
(
)内の数は回答者数を表す。
〔Ⅰ〕この授業は楽しかったですか。
評価
回答者数
①
そう思う。
8
②
どちらかというとそう思う
③
どちらかともいえない
8
④
あまりそう思わない
2
⑤
全くそう思わない
0
23
回答の理由
・資料がスライドを通してたくさん見ることができる。
・いつもと違う雰囲気の授業で良かった。
・あまりいつもと変わらない。
〔Ⅱ〕パソコンソフトを使っての授業は学習の役に立つと思いますか。
評価
回答者数
回答の理由
①
そう思う
24
・実際の建築物を見ることができる。
②
どちらかというとそう思う
10
・スライドを使っているから具体的に分かる。
③
どちらかともいえない。
4
・ノートをとるのが大変である。
④
あまりそう思わない
3
・ノートをあまりとらなくなる。
⑤
全くそう思わない
0
〔Ⅲ〕このような授業(パソコンソフトを使用)をこれまでに受けたことがありますか。
評価
回答者数
①
ある
13
②
ない
28
〔Ⅳ〕このような授業をもっと取り入れるべきだと思いますか。
評価
回答者数
回答の理由
①
そう思う
20
・図が多い授業に取り入れてほしい。
②
どちらかというとそう思う
12
・スライドの方が図がきれいでどんな形なのかがよく
③
どちらかともいえない
8
分かる。
④
あまりそう思わない
0
・たまに良いと思う。
⑤
全くそう思わない
1
・移動教室なので大変だった。
-7-
〔Ⅴ〕この授業の内容で理解できたことは何ですか。
・鉄筋コンクリート構造のしくみを理解できたと思う
〔Ⅵ〕この授業の内容で分からなかったことは何ですか。
・授業の進み具合が早いので各部分の名称などを覚えられない。
〔Ⅶ〕感想を書いてください。
・映像が大きくて分かりやすい。
・たまにこのような授業があってもいいと思う。
・映像があると具体的に分かるので覚えやすい。
・またこのような授業を受けてみたい、もっと授業に取り入れるべきだと思った。
・映像を使っての授業はいつもと違って良かった。
・ノートを取る時間がもう少し欲しい。
・ノートが取りにくい。
・授業形式は良かったが映像は眠気を誘うと思う。
・座席が後ろだと字が見えにくいので書き込みが遅くなってしまった。
表4:参観教諭からの感想
・実際の鉄筋梁の模型を見本にしたのが分かりやすかった。
・実習室の写真を映像に取り入れており身近に感じられていたと思う。
・スライドを流すだけでなくペイント機能を用いて部材などにポイントしたり書き込みを入れた点がよ
かった。
・生徒との質疑のやりとり(対話)の時間がもっとあった方がよい。
・構造形式の実例も用意すると分かりやすい。
・映像の授業は集中力を持続させるのが難しい。
-8-
資料2
建築構造学習プリント
(鉄筋コンクリート構造①)
NO
NAME
(3)部材の目的を答えよ。
<柱>
①帯筋
②主筋
<梁>
①主筋
図1鉄筋コンクリート造(ラーメン構造)
②あばら筋
図2
柱・梁配筋図
(4)鉄筋コンクリート構造の特徴は?
・
1.鉄筋コンクリート構造の施工方法
① 土工
② 躯体工事
③ 防水工事
④ 仕上げ工事⑤ 設備工事⑥ 外構工事
・
・鉄筋工事
躯体工事
・
・型枠工事
・
・コンクリート工事
2.鉄筋コンクリート構造の特徴
・
(1)鉄筋の長所・短所
・
・
3.構造形式
① ラーメン構造
・
・
(2)コンクリートの長所・短所
・
② 壁式構造
・
・
・
③ フラットスラブ構造
④シェル構造
-9-
4
まとめと考察
本研究は、教科指導上で教科書と板書中心の授業では理解し辛い内容について情報機器
を導入し視覚に訴えることでこれまでの授業を見直し、改善を図ることを目的として試み
たものである。アンケート結果からこれまでにスライドを利用した授業を経験した生徒は
思ったよりも多かった。また経験のない生徒も含めこのような授業に対し非常に興味・関
心が高いことが分かった。しかし実践授業やアンケートの率直な感想などから検討しなけ
ればならない点も多い。このことから以下のような改善点が考えられる。
①
時間配分について
実際に授業で利用したスライドは25枚であった。枚数が多かったためかスライド
1枚あたりの表示する時間が短かった。また、学習プリントへの書き込みをする時間
が 少 な く 「 説 明 を 聞 く 」、「 書 き 込 み を す る 」 な ど の 時 間 の 確 保 を 取 る 必 要 が あ る 。
②
学習効果について
アンケート結果からも分かるようにスライドを通すことで具体的で分かりやすいと
回答している生徒が多い。図を活用する機会の多い授業には効果的であると考えられ
る。しかしスライドを見るだけの授業となりやすい問題点が残る。そこで、生徒が積
極的に授業に参加できるような授業スタイルを作ることにする。例えば単元時間を増
やし、生徒もパソコンなどを使い構造などを調べて理解の向上をはかる。
5
おわりに
パワーポイントによるスライドを利用した授業は予想以上に生徒の視覚に入っていくこ
とができた。教科書だけでは理解し辛い内容を情報機器を使用することで詳細な専門の内
容を生徒に伝えることが可能である。
建築は非常に幅広い分野から構成されている。本研究授業の科目「建築構造」だけでな
く他の科目においても授業内容に合わせて使用していくことが必要であり、特に導入段階
で単元の目的を明確にする上で効果的である。
しかし、このような形態の授業を増やしていくためには、授業内容を明確にし、教材研
究からスライド作成時間などの下準備が必要不可欠であると考える。
今後も授業に情報機器を導入し、まとめでも述べたような生徒自身も授業に参加できる
ような形態をつくり、一層の学習効果向上につなげていきたいと思う。
6
謝辞
実践研究という貴重な機会をいただきましたことに深く感謝申し上げます。
また、実施にあたり新発田南高等学校渡辺憲校長、淺川啓一教頭、永井弘志教頭にはご
指導・助言を頂き感謝申し上げます。
この実施研究の計画立案、研究討議、報告者の作成等、全般にわたりご指導頂きました
新潟県立教育センター教育支援課小林恭太指導主事に深く感謝申し上げます。
7
参考文献
( 1 ) 青 山 博 之 他 :「 新 建 築 学 大 系 4 1
コンクリート系構造の設計」彰国社
( 2 ) 廣 瀬 幸 男 他 :「 絵 と き 建 築 材 料 」 オ ー ム 社
( 3 ) 佐 藤 芳 夫 他 :「 図 解 建 築 工 事 の 進 め 方 鉄 筋 コ ン ク リ ー ト 造 」 市 ヶ 谷 出 版 社
(4)大 和
竹 史 :「 鉄 筋 コ ン ク リ ー ト 構 造 」 共 立 出 版 社
( 5 ) 青 木 博 文 他 :「 建 築 構 造 」 実 教 出 版 社
( 6 ) 鈴 木 博 之 他 :「 図 説 年 表 西 洋 建 築 の 様 式 」 彰 国 社
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