水際線施設整備方針作成の薦め

水際線施設整備方針作成の薦め
(水際線施設整備方針作成の手引き)
ウォーターフロント開発協会
水際線施設整備ガイドライン研究委員会
(平成 18 年 1 月 24 日版、ver.5)
目次
はじめに
第1章
総
論
1. 水際線施設整備方針作成の薦め及びその目的
2. 水際線施設整備方針の内容。
3. 水際線施設整備方針の位置づけ
4. 水際線施設整備方針作成の手引き目的
5. 水際線施設整備方針作成の手引きの構成
第2章
水際線施設整備の基本的考え方
1.
水際空間の企画及び計画
1.1
基本理念
1.2
地域経済を支える水域の役割重視
1.3
水面の保全
1.4
水際空間の魅力
1.5
地域アイデンティティの共有
1.6
長期の取り組み
1.7
地元市町村の参画
1.8
住民参加
1.9
環境保全と活用
1.10 防災機能
1.11 財務的継続可能性
1.12 水域の積極的な活用
1.13 海との間のパブリックアクセス
1.14 パブリックアクセス及びオープンスペース
1.15 ビジュアルアクセス及び風通し
1.16 通年利用・誰でも利用
1
1.17 街区設計ガイドライン及び景観
1.18 関連計画や法制度との調整
2.
水際空間の整備
2.1 官民の役割分担と PFI 制度の活用
2.2 エリアマネージメント
3.水際空間の利用及び維持・運営
3.1
イベントの継続的実施
3.2
公共施設管理運営の民間委託
第3章
整備方針各論
1. 基本理念
2. 整備対象範囲
(水域、陸域の対象範囲。
)
3. 対象地域の特性
4. 整備地区が目指すコンセプト
5. 水域及び陸域の利用計画
6. 交通等基本インフラの現況及び整備・維持の計画
7. 既存施設の保全、活用の方針
8. 整備地区周辺の制約条件等
9. 官民の役割分担、協働の方針
10.街区設計、景観に関する細目
11.整備方針に対する代替案の提案の範囲と手続き
12.参考資料
(関連法、条例。港湾計画、都市計画、景観計画等。公的支援制度)
付属資料
○港湾法施行規則
○特区制度における公有水面埋立法の取り扱い
○海岸法
○都市計画区域内における臨港地区に関する運用指針
○ボストンの臨港地区に適用される市街設計ガイドライン
○「みなとみらい21地区街並み景観ガイドライン」
横浜市港湾局臨海事業部事業計画課
○構造改革特別区域基本方針
2
はじめに
他の先進国の場合も同様であるが、わが国においても歴史的な港町において、船舶の
大型化や産業構造の変化に伴う貨物の種類・ 荷姿の変化により、港の役割が変わって
きた。その結果、港町の水際空間の中に遊休化し環境悪化が進んでいるところが見受け
られるようになっている。
一方で、社会が成熟して来るに伴い安全・安心・ゆとりが求められるようになる。歴
史的港湾空間は遊休化に伴う環境悪化のため、市民から疎んじられてはいるが、都市中
心部に近く、良質な市民の憩いの場として整備できる高いポテンシャルを有していると
ころが多い。門司港レトロ地区など一部でこのポテンシャルを活用できているところは
あるが、総じて未整備のまま放置されているところが多い。競争によって効率的な社会
を目指そうとするわが国の現在のトレンドの中で、都市についても例外ではない。各都
市は自らの工夫と努力によって活路を切り開くことを求められている。このときポテン
シャルの高い水際空間を持っている港湾都市は、港湾の大小にかかわらずその活用が都
市の魅力を左右する大きな要素になることは間違いない。
このような観点から、活用が十分でない水際空間の活用を推進することにいくらかで
も寄与できたらと考え、水際空間整備方針の作成・公表を提案し、研究会を設置して指
針作成の手引きを起草した。ここで対象とする水際空間整備は、狭義の港湾行政の範疇
に入らない課題も含んでおり、この種のものとしては初めての試みである。そのため、
関係者にとっては、それぞれの立場から異なる意見があるものと考えている。従って、
限られたメンバーで検討し起草されたこの指針は、今後の議論のために準備された素案
と考えており、官民それぞれの立場から事務局までご意見をお寄せいただけたら幸いで
ある。そして広くご議論を頂き、結果として社会的に認知された指針となり少しでも活
用されれば、研究会メンバー一同の最大の喜びである。
第1章
総
論
1.水際線施設整備方針作成の薦め及びその目的
水際を賑わい空間として整備運営するとき、民間の力抜きには考えられない。しかし
一方で、この水際は都市にとって限られた空間資源であり、多額の公的投資を積み重ね
て維持してきた貴重な水域があって始めて価値があるものである。そのためこの空間は、
単純に民間企業の市場経済原理に基づく活用に委ねて良いというものではない。当然の
こととして水域陸域の利用に対して規制が必要になる。この空間は市民共有の貴重な財
産であるから、これを活用するに当たっては、市民の福祉向上が最大になるよう配慮す
る必要がある。
3
ところが、水域陸域の利用規制は民間にとってわかり難い場合がある。この原因とし
て公共側の水際利用方針が必ずしも明確に表明されていないことがある。港湾を持つ都
市や港湾管理者などの公共側による水域陸域を含む水際空間活用の明確な方針が示さ
れる必要がある。この方針の範囲内で民間事業者に経済原理に基づく活動を行ってもら
うことになる。
公共による水際空間の整備方針が明確になっていないと、ポテンシャルを有する特定
の地区について、民間による的確な事業構想を構築することが出来ない。バブルの時期
には、民間側は独断を交えて多くの構想を策定した。しかし、民間の構想が示されて初
めて、必ずしも公共側の方針と合致しないことが明らかになり、それらの構想は実現さ
れず消えていった。この過程で、官民とも少なからぬ消耗を余儀なくされている。
今後、バブル崩壊後の長い不況もようやく出口が見えて来て、正常な経済状態を回復
し、各種の投資活動が始動するものと思われる。しかし、バブル時期のような放漫な行
動はありえないので、水際空間の整備についても民間が効率よく構想を練られるような
環境整備が必要である。そのために、最も大切なことの一つが公共による整備方針の明
確な提示であると考える。
公共による水際空間の整備方針を定めるにあたっては、水際の特性を理解しそれを十
二分に反映したものにしなければならない。
・ 水域及びそれに接している水際は、限られた資源である。水際でなければ成り立た
ない機能を優先し、また、市民の福祉を極大化するように活用する。
・ 水際は、生態系が豊富で豊かな自然との接点である。一方で物流・工業等の産業活
動が盛んな空間も存在する。環境の保全には特段の配慮が必要である。
・ 海洋と陸域の継ぎ目であるため、防災上重要な空間である。防災機能に配慮する。
・ 市民が水際及び水域に出来るだけ近く接することが出来るよう配慮する。
・ 民間企業が能力を存分に発揮できるよう配慮する。
水際空間の整備は、港湾施設の整備が中心である従来の港湾行政の範囲内では収まら
ない課題も含んでいる。物流や臨海工業などの狭義の港湾機能は、むしろ周辺の都市機
能とは分離しておいたほうが効率的な側面を持っていた。しかし、賑わいの空間、憩い
の空間として整備しようとすると、それは周辺の都市と無縁ではありえない。これまで
の水際空間整備の中には、周辺都市との連携が不十分なため初期の思惑通りの効果を発
揮できていない事例が見受けられる。水際に整備される賑わい・憩いの空間は、周辺都
市と緊密な連携を保っておくことが要求される。そして、水際空間の整備に必要な行政
手段も、港湾行政の範囲内では十分に整っているとはいえない。現状でも臨港地区にお
ける用途規制の法的手段は、建築基準法によっている。しかし、水際空間の整備を進め
る上で、空間管理を実効あるものとするためには、必ずしも法的強制力がなくてはなら
ないと言うものでもない。空間整備に参画する官民すべての事業者が、具体的な内容ま
で合意した整備の方向を共有することが出来れば可能であると考える。
4
ただし、水際の賑わい空間整備は、都市行政と良好で緊密な連携が不可欠な作業とな
ることだけは間違いない。例えば、門司港レトロ地区や横浜みなとみらい21の整備に
おいては港湾部門と都市部門の良好な連携関係が機能しているといえる。
そこで、水際空間を民間の参加を得て整備しようとするとき、港湾管理者は是非当該
水際をどのような地区にしようと考えているのか明確に表明することを薦める。ここで
は、この公共側の考え方を取りまとめたものを「水際線施設整備方針」(以下整備方針
という)と呼ぶこととする。
この整備方針の目的は、公共サイドが対象水際空間の整備に関する公共側の考え方を
明確にし、民間事業者がこれを理解することによって、対象水際空間でどのような事業
が可能かはっきりし、適切な事業構想を容易に構築することが出来るようにすることに
ある。そして公共、民間事業者両方による無駄な作業を省くことが出来る。
水際空間の活用分野として、水面の運輸機能を活用した物流空間や臨海工業用地整備
の分野がある。これらの分野については、港湾管理者の主たる業務として、従来から取
り組んできているし、現在も日常業務の中心を占めている。各港湾はこの分野の開発保
全の方針は明らかにされているので、あえて物流や臨海工業機能を主題として新たに方
針を定めて明らかにする必要はない。ここで言う整備方針の主題として対象とする分野
は、水面のレクリエーションや景観価値を活用した生活系、賑わい系の整備を対象とす
る。ただし、一つの港湾の中の特定の区域の問題であるから、景観、環境、周辺交通そ
の他隣接する地区における物流や工業活動の影響は免れないので、当然制約条件として
配慮して行くことになる。しかし、港の物流や工業機能に不必要な制約を加えることを
したのでは、本末転倒になるので注意を要する。
整備方針は、港湾管理者が民間事業者に向けて発する意思表示である。作成者は港湾
管理者である。
2. 水際線施設整備方針の内容
整備方針には、少なくとも以下に示す内容について記述して置く必要がある。
(1)基本理念
(2)整備対象範囲
(水域、陸域の対象範囲。
)
(3)対象地域の特性。
(4)整備地区が目指すコンセプト
(5)水域及び陸域の利用計画
(6)基本インフラに関する公共による整備と維持の計画
(7)既存施設の保全、活用の方針
(8)整備地区周辺の制約条件等
(9)官民の役割分担、協働の方針
(10) 街区設計、景観に関する細目
5
(11)整備方針に対する代替案の提案の範囲と手続き
(12)参考資料
関連法、規則、条例。港湾計画、都市計画、景観計画等
公的支援制度
3.水際線施設整備方針の位置づけ
水際線整備方針は、特定の水際空間について港湾管理者として当該水際空間をどのよ
うなものとしたいと考えているかを表明するものである。その内容は、全国共通の事項
も含まれるし、当該水際空間固有の事項も含まれる。水際空間の基本的な土地利用計画、
水域の利用計画は、当該水際が存在する港湾の港湾計画によって定められる。したがっ
て、港湾計画が水際線施設整備方針の上位計画であり、水際線施設整備方針は港湾計画
に定められた土地利用計画・水域利用計画の範囲内でより詳細で具体的な内容のものと
なる。
平成 16 年 3 月取りまとめた「水際線施設の一体整備ガイドライン」
(以下本省ガイド
ラインと言う)の中で、国土交通省港湾局は、港湾管理者においては本ガイドラインを
水際空間の開発企画を行う上で参考として活用することとし、全国各地の個別事業にお
いては、それぞれの立地条件、環境条件等に基づき、港湾管理者(海岸管理者)
・民間
事業者間の合意の下に、詳細が決められるとしている。したがって整備方針は、本省ガ
イドラインの個別地区版の性格を持つ。ただし、民間事業者との間の合意の下で決めら
れる詳細部分は残るとしても、個別の立地条件・環境条件等を踏まえて、本省ガイドラ
イン以上に港湾管理者の方針を示すことの出来る事項は多いので、かかる事項について
は出来るだけ詳細に記述されることとなる。また、本省のガイドラインは、主に東京臨
海地域内の豊洲・晴海地区をモデル地区とし臨海部における都市再生の推進方策につい
てとりまとめたものであるが、ここで言う整備方針は、都市再生事業に限らず全国のあ
らゆる水辺において活用がなされることを考える。
6
××港港湾計画
△△港港湾計画
本省ガイドライ
作成の手引き
××港水際線施設整備方針
△△港水際線施設整備方針
○ 共通事項
○ 共通事項
○ 個別事項
○ 個別事項
個別事業計画
個別事業計画
個別事業計画
個別事業計画
整備方針は、対象地区において何らかの事業を検討したいと考える民間事業者が、事
業の可能性を検討したり、具体的に事業の企画をするときに、事業の前提条件とするこ
とができるものである。すなわち、港湾管理者が、民間事業者に向けて作成するもので
ある。
4.水際線施設整備方針作成の手引きの目的
先に民間の力を借りて水際空間の整備をしようとするときには、公共側が整備方針を
明確に示すことが大切であることを説明し、その作成を推奨した。この整備方針は整備
しようとする水際空間毎に固有の方針となる。しかし、整備方針を作成することが必要
であると言う提案をするだけでは、その内容が精粗まちまちになり、活用する側から見
ると決して使い易いものとはいえない上に、整備方針を作成する側にとっても何か雛形
になるものがあれば作業が容易になる。そのため、水際線施設整備方針作成の手引き(以
下作成の手引きと言う)を準備することが出来れば、各港湾ごとに作成される整備方針
の内容が統一され使い勝手が良くなるばかりでなく、整備方針の作成が容易になり整備
方針の作成を促進する効果があると考える。
したがって、この作成の手引きを準備する目的は、整備方針の精度のばらつきを少な
くし、整備方針の作成を容易にすることにある。
5.整備方針作成の手引きの構成
整備方針作成の手引きは、これ以降 2 部構成とする。第 2 章水際線施設の基本的考え
方として、水際線施設整備において留意すべき事項について解説する。この内容は、直
7
接整備方針に記述されることはないものが多くなるが、少なくとも整備方針を準備する
に当たり念頭においておかなければならない重要な事柄である。本省ガイドラインと性
格の似た部分である。本省ガイドラインは、都市再生事業を念頭おいているので、これ
を一般化することを中心として、より幅広く解説したものである。
第 3 章各論として、整備指針に記述すべき各項目ごとに解説する。各論は対象がない
と具体的記述は出来ないが、可能な限り事例またはモデル表現を取り入れて、記述すべ
き内容について解説する。各論で取り扱う事項が、港湾管理者の地域整備の誘導方向を
意思表示する整備方針の核となる部分である。
8
第2章
水際線施設整備の基本的考え方
1.水際空間の企画及び計画
1.1 基本理念
○公有水面は、国民共有の資源であり、その活用による便益は、全ての市民が享受す
る権限を有する。水際空間の整備に当たっては、公有水面が持っている資質を最大
限に引き出し、地域の振興と地元住民の福祉を極大化すように活用する。
公有水面が、国民共有の資源であることについて、わが国ではあまり明確に直接的な
表現はなされてはいない。しかし、公有水面埋立法による埋立免許条件や、公有水面の
占用許可の条件が厳しい背景にはこの思想がある。米国ではこの事が明確に表現されて
いる。
○公共信託主義(public trust doctrine)
米国のウォーターフロント開発に関する計画等の中に、水面に関して公共信託主義と
言う言葉が使われる。(例えば、バーリントン、バーモント州)ウエブ上の辞書
[dictionary.law.com]では public trust doctrine について次のように定義している。
n. 航行可能な水面の下の土地は、公共の利益のために信託を受けて政府が所有権を持
っていると言う考え方。したがって、水面下の土地のいかなる活用又は売買も公共の利
益にかなったものでなくてはならない。それにも拘らず、どう見ても公共の利益が守ら
れているかどうか疑わしい海底油田開発、埋立、水際線開発などの活用が多くなされて
来た。
○ボストンゾーニングコードでは、市街地のウォーターフロントをハーバーパーク地域
に指定し、その規制の目的を次のように述べている。
第42A-1条目的、目標および対象
この条項の目的は、対象地区の総合的なゾーニング計画基準を設定するためのもので
ある。この条項およびハーバーパーク地域計画の目標と対象は、ハーバーパーク地区の
不適切な土地および水面利用を防止することである。すなわち、
・ボストンの沿岸のバランスの取れた発展を図ること。
・ウォーターフロントを公共の資源として活用し、その活用と便益が最も多くの市民に
及ぶようにすること。
・港湾区域の中で、海岸とオープンスペースを保全すること。
・ウォーターフロントへのパブリックアクセスの確保を図ること。
・隣接地区と整合を取りつつ住宅および複合的な商業利用を図ること。
・水域に依存し、または水域と関連のある商業活動の経済的発展を図ること。
・産業に利用しているウォーターフロントと水面に依存している土地利用を保護するこ
と。
9
・水上公共交通の活用を図ること。
・そして統合された活動や土地利用および港湾と背後都市との物理的な連携を図るよう
な土地利用を進めること。
○サンフランシスコ港湾委員会の土地利用方針の中に次のような項目がある。
・再活性化された港湾。新規投資は、ウォーターフロントを再活性化して就労機会、所
得、人々の心地よさ、その他港、市、及び州の便益を増やすような内容に集中する。
・活動及び利用者の普遍性。港湾の土地は、すべてのサンフランシスコ市民及び来訪者
に対し幅広くわくわくする海事、商業、娯楽、市民のためのオープンスペース活用その
他のウォーターフロント活動メニューを受け入れられるものでなければならない。
○バーリントンのウォーターフロント再開発ガイディングプリンシプルでは、次のよう
に述べている。
・このウォーターフロントは、全バーリントン市民の究極の資源である。
1.2
地域経済そして市民生活を支える水域の役割重視
公有水面を含む水際空間は、地域の社会基盤として市民生活に必要不可欠な役割があ
る。運輸交通、水産、エネルギー供給基地、防災関連施設、廃棄物処理、終末排水などがこ
れに相当する。水際空間の整備に当たっては、これらの役割を優先的に機能させる。
島国であるわが国は、経済活動にともなる海外とのやり取りは水際空間を使って行な
われている。卑近な例としてわが国の食料自給率は40%であるから、水際空間のこの
機能がなければ、人口の 60%は生きていけないことになる。港湾都市の経済的基盤の
重要な要素の一つは、海事関連産業であり、これらの産業は水域と水際に依存している。
水際を賑わい空間として整備する場合でも、水際に依存している産業には優先的に水際
線を割り当て保護しなければならない。賑わい空間の整備のため地域経済そして市民生
活を支えている産業に不必要な制約を加えるようなことのないよう十分配慮する必要
がある。
1.3
水面の保全
水面は、陸地化する事は容易であるが、水面に戻すことは困難を伴う。また水面を陸
地化しても、もとの水際空間は内陸化し、水面は遠くなると共に減少するだけであり水
際空間は増加しない。水際空間の開発に当たっては、費用対効果を十分検討し、出来る
だけ水面は保全し、ありのままで活用するように努める。
わが国の水際空間の整備に際し、埋立による水面の土地化が行われる事例が非常に多
い。水面価値の過小評価と土地の過大評価のためと考えられる。水際空間の整備に際し
ては、水域の価値を正しく評価することが大切である。
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1.4
水際空間の魅力
○ 水際空間には、内陸部にはない臨海部特有の魅力として、以下の特性が挙げられる。
・水際空間でしか行うことのできない多様なレジャー活動
・過密な都市における開放的な水辺景観
・時代に応じて変遷してきた水際空間の歴史・文化
・多様な生態系
・新鮮で清浄な大気
○ 水際空間は、内陸にはない魅力があることは事実であるが、反面欠点もある。欠点
は欠点として十分認識した上で土地利用及び事業計画を策定することが肝要である。
(水際空間の魅力)
水際空間は、海と陸が出会う場であり、陸上生活者である我々にとって「海」という
別世界に触れる最前線にある空間である。そのような立地条件から、内陸部にはない次
のような魅力がある。
・ 海水浴やウィンドサーフィン、船遊び等、水際空間でしか行うことの出来ない多様
な海洋レジャー活動を行うことができること。
・ 過密な都市の景観に開放的な視点を提供し、水面に反射する建造物の全貌を見せた
り、幻想的な夜景を見せるなど、都市空間にとって貴重なオープンスペースであること。
・ 中世以前においては漁業や交易の拠点であり、同時に舟遊び等のレジャー活動の舞
台でもあった。近代においては殖産工業の拠点であり、かつ異国との窓口として、異文
化との出会いや旅人の旅立ちが交錯する交流空間であった。戦後の高度経済成長期にお
いては造船、鉄鋼、化学、エネルギー産業等が立地する工業地帯であった。このように
水際空間は時代毎に様々な役割で活用されてきており、時代に応じた歴史・文化を持っ
ていること。
・ 環境負荷のない海面上を流れてくる大気は、汚れのない清浄な大気である。
(水際空間の欠点)
水際空間は、模式的には周辺空間の半分は水面であり、幾何学的にマーケットは半分しか
ない。このことは、集客する上で不利となる。また、寒冷地などの立地条件や事業内容によ
って、事業環境が天候の影響を受け易かったり、季節変動が大きいことも欠点となる。この
ような欠点を軽視せず、事業が安定的に継続できるよう慎重な計画が必要である。
1.5 地域アイデンティティの共有
○ 水際空間を活かした整備対象地域は、歴史的・文化的背景を考慮し検討することが
望ましい。
○ 計画の立案にあたっては、事業者、港湾(海岸)管理者、地元自治体に加えて利用
者となる地元住民が水際空間の「地域アイデンティティ」を確立し共有することが
11
重要である。
(水際空間の形態的特性と地域アイデンティティ)
都心に近い臨海部は一つの水面を取り囲むような水際空間を持つことが多く、その際
には、同じ水面に面する水際線の一体的な地域アイデンティティの共有が特に重要であ
る。また、地域アイデンティティの共有により、地域が長期的な展望をもち、地域の文
化という恒久的な価値を地域にもたらす効果も考えられる。
そのため、地域アイデンティティを確立するためには、経済活動を含む日常の持つ文
化性、地域の歴史、人々のその地域から喚起されるイメージ等を盛り込むことが必要と
なる。
水際空間の地域アイデンティティの一例として、水際空間が各々の時代で持ってい
た多様な歴史的・文化的背景を活用することが考えられる。その際、地域のシンボルと
して水際空間の歴史的・文化的資源(市場、倉庫、貨物線鉄橋、クレーン等荷役機械、
歴史的船舶、造船ドック等)を保存・活用すること、地域の産業活動の歴史や海洋文化
を発信する場を設けることも考えられる。
地元にゆかりのある芸術家の作品等を活用するのも一方である。
1.6
長期の取り組み
○水際空間の整備・利用は長期的視点で進めることが大切である。整備に 10 年、20 年
を要することも覚悟する必要がある場合も少なくない。
水際空間の整備には時間がかかるのが通例であるから、長期計画を前提として取り組
む。拙速は慎む。ボストンの再開発計画は、当初から 30 年計画と呼んでいた。そのた
め、全体計画が完成しなくても利用が可能な計画が必要である。カナダのセントジョー
ンでは、水際のプロムナードと多少のオープンスペースから整備を始めている。パブリ
ックアクセスとしてのプロムナードは、必ずしもボードウォークなどの投資をする必要
はない。ありのままの状態で、街灯とベンチ及び落水した場合の救命梯子ぐらいあれば
よいと考えることが大切である。
ビューポイントにおける東屋と説明版があればもっと良い。時間をかけて、民間事業
者等の進出を待つなど機能の充実を図って行く。
1.7
地元市町村の参画
水際に生活系、賑わい系の空間を整備しようとするときの整備の方針を定めるにあた
っては、地元市町村の考え方が十分に反映されたものとなるような手続きを経るよう配
慮する。港湾管理者は港湾の管理上支障のない限り地元市町村の考え方を尊重する必要
がある。
水際の生活系、賑わい系の整備は、港湾インフラの活用である点港湾行政ではあるが、
12
その都市の性格を形作る都市行政の重要な一部でもある。また、水際における生活系、
賑わい系の空間の整備は、アクセスの観点から背後都市と無関係に整備することは出来
ない。背後都市と一体的、或いは背後都市と緊密な連携の下整備する必要がある。した
がって、特に港湾管理者が港湾背後の都市と異なる場合には、都市の考え方を取り入れ
る仕組みは重要である。背後の都市が港湾管理者である場合においても、都市部局の考
え方を十分に取り入れなければならない点は同じである。この場合地元市町村を都市部
局と読み替える。
市町村の考え方を反映させる方法には次の 2 つが考えられる。第1に港湾管理者が原
案を作製した場合、地元市町村の意見を聞く。第 2 には、地元市町村は自ら整備方針を
策定して港湾管理者に提案する。
1.8
住民参加
水際線施設整備方針の策定並びに運用にあたっては、主役は市民であることを忘れず
市民の意見を十分に取り込む仕組みを組み込んでおくことが肝要である。
住民参加の基本は、住民に示す原案は変更可能な柔軟性を持った段階のものであるこ
とである。ただし、柔軟性のある段階ではあっても、具体的である必要がある。専門家
でない一般住民が、構想の評価をするためには抽象的では難しい。
住民意見の聴取の仕方は種々ある。①ウエブページに公表して自由に意見を受け付け
る方法。しかし、この方法は利害関係者の中にウエブページになじみのない人もいるか
もしれないので、この方法は万全とはいえない。②構想を公開し、資料の閲覧または広
く配布して、自由に意見を求めるいわゆる PI の一般的手法。③最も標準的な方法は、
関連のある地域や、団体に出向いて説明会を開催し、意見を求める方法である。この方
法は、提案された意見を検討し受け入れるほうが良いと判断される意見は取り入れて原
案を修正し、受け入れられない意見についてはその理由を取りまとめて再度説明会を持
つということを繰り返す、いわゆるキャッチボールをすることである。説明会の回数は
決めておかない。住民の賛同が得られやすい計画は一回ですむかもしれないし、問題の
ある計画は、相当な時間を要することもある。最低1回は住民に説明し意見を聴取する
必要がある。
条件によっては、地元関係者の複数の代表を含めた協議会を形成するのが効率的な場
合もある。
1.9
環境の保全と活用
○水際は生態系が豊富である。水際空間活用のメニューの一つとして、児童の学習の場
として活用することも考えられる。
○水域の価値は水質に左右される。都市部の水域は環境負荷に晒され易い。環境の保全
13
には細心の注意を払う必要がある。
○整備対象水際が再開発の場合、土地の利用履歴によって土壌汚染の可能性もあるので
注意が必要である。
学習用に、古い護岸の一部を利用して人工磯を整備することも考えられる。また、人
工海浜の整備に適した条件が整っている場合は、良好な環境の創造・維持の観点から人
工海浜を整備することは推奨される。人工海浜は水質浄化機能があり、砕波帯ではオゾ
ンを発生する。魚稚魚、貝類、海草等を育み、自然を保全する。
港湾の一部でも賑わい空間を整備しようとする場合には、水質は全体の問題であるか
ら、良質な水質を保全するため、対象水域に限らず港湾全体を対象にして水質の保全体
制を見直す必要がある。
1.10 防災機能の確保
○水際空間は、高潮や津波、越波などの災害から都市空間を防護するラインでもあるこ
とから海岸保全施設の防災機能を損なわないように計画することが求められる。
○非常時に水上交通を円滑に活用するため、水際空間にオープンスペースを設けるこ
と、常時より水上交通の活用を図ることが望ましい。その際、非常時における地方自
治体等の優先利用を担保する等の工夫が必要である。
○一方で、防災機能と親水性の調和を図る工夫も重要である。
(防災機能の確保)
水際空間の利用施設の計画にあたって、例えば工作物(桟橋・係留施設)を海岸保全区域
内に設置する場合、海岸保全施設を損傷したり、安全性・防護機能に悪影響を与えないこと
が必要である。
阪神大震災において有効性が確認された水上交通による震災時における緊急物資・人員
輸送を円滑に行うためにも、水際空間に非常時にも救助船が着岸できるスロープ、緊急物
資の仮置き、避難者のためのオープンスペースを確保すること、常時より水上交通の活用
を図ることが望ましい。その際、民間が所有・管理する港湾施設であっても、非常時にお
いては地方自治体が優先的な利用を担保する等の工夫が必要である。
防災機能と水際の親水性については調和を図る必要がある。津波や高潮は予報すること
ができる。水際際の賑わい施設はある程度の物損の覚悟と親水性を優先し、防潮ラインの
外側に整備する考え方もがあっても良い。名古屋港のジェティイーストは防潮壁の外側で
レストランを営業している。
ボルティモアインナーハーバーでも親水性をより重視していると思われる。そのためハ
リケーンの襲来時にはウォーターフロントは浸水している。
14
なお、親水性や眺望と防災機能とは相反する性格の場合が多い。可能であれば人工海
浜や潜堤など親水性や眺望に対し比較的影響が小さくて防災機能を備えた施設の導入
を考慮するのが望ましい。
1.11 財務的継続可能性
○水際における賑わい空間の整備には、民間の能力を活用する。
○公共インフラの整備に関しては、過大投資にならぬよう注意し、維持管理等公的部門
の財政負担が継続可能な範囲とすることが大切である。
賑わい空間の整備には民間の参画は不可欠である。賑わい空間には客に来てもらわなけれ
ばならない。市民が魅力を感じる演出やサービスを提供する業務は民間が適している。その
ため、公共の役割としては、民間事業者が思う存分能力を発揮できるような環境を整備する
ことである。
水辺のプロムナードその他のパブリックアクセスやオープンスペースは、公共による
先行投資が必要であるが、将来の維持管理経費も考えて公的部門の財政負担が過大にな
らないよう注意する。プロムナードは、経費をかけなくともむしろ歴史的な施設をその
まま活用する事により雰囲気の良い空間となることもある。街灯とベンチ及び落水した
場合の救命梯子ぐらいあればよいぐらいの考え方が必要である。ビューポイントにおけ
る東屋と説明版があればもっと良い。
15
1.12 水域の積極的な活用
○水域は可能な限り市民に開放し、市民がレジャーその他の目的で水域を活用できる
ようにする。
海では海水浴やウィンドサーフィン、船遊び、釣り等、水際空間でしか行うことの出
来ない多様な海洋レジャー活動を行うことができる。そして、基本理念で述べたように
海面は市民のものであり、市民は誰でも利用する権利を持っている。したがって、市民
のための水際線施設整備を考えるにあたっては、可能な限り水域をこれらの海洋レジャ
ーのために活用するようにする必要がある。
水域等の空間に余裕があり、利用者が見込める場合マリーナ等のプレジャーボートのため
の施設を整備するのが良い。レンタルボート用施設、カヌー、カヤック用施設は、それ
ほどの投資を必要としないので市民の水域への出口として、地区の魅力付けに効果的で
ある。十分な需要が見込まれる場合には、レストラン船、屋形船等のための施設も検討
するのが良い。
また、海浜はウインドサーフィンやディンギヨットの出入り口になるばかりでなく、
様々な文化活動に活用できる。ウォーターフロント独特の優れた景観により、訪れる人
に癒し効果があると共に、散策、ジョギング等の場として体力増強にも寄与する。
水面を活用するためには、水域占用許可を取得しなければならない場合が普通である。
水域占用許可は、港湾管理者の権限である。港湾管理条例に基づいて許可する。
水域専用の事例(埋立浚渫協会第 4 研究部会資料から)
16
17
1.13 海からのアクセス
○整備対象区域の水際線には、出来るだけプレジャーボート等が接岸できるビジターバ
ースを設けて、海への及び海からのパブリックアクセスを確保する。
先の 1.12 において、水際空間の魅力の要素として、海面は多様なレクレーションの
フィールドを提供してくれること、そして、市民が海上に容易に出られるよう海浜を含
めた各種施設の整備が必要であることを述べた。
陸域から海上に容易に出られるよう配慮することは重要であるが、今後各所のウォー
ターフロント施設やマリンレジャー施設とのネットワークを考えたとき、海上から対象
地区に気楽に上陸できるよう配慮することも同時に重要になる。そのためビジターバー
スを準備することが特に推奨される。
長崎港出島地区の事例を以下に挙げる。
最 大 収 容 隻 数
−
35ft級24隻
陸
電
施
設
−
100V30A(プラグ形状
給
水
施
設
−
あり
ク ラ ブ ハ ウ ス
−
あり
NEMA
L5−30メス)
☆利用料金
船の大きさに関係なく入港してか
らカウント
2100 円(税込)/24
時間
☆利用期間
最大7日間(1週間)
☆利用方法
『長崎出島ハーバー』の利用には
事前登録が必要。
『長崎出島ハーバー利用艇登録申込書』に記入の上、『船舶検査証』『船舶検査手帳』
『艇長の海技免状』のコピーを添えて郵送またはFAX・e−mailで登録申込む。
登録後、門扉開閉用カードキーを発行する。
登録後利用の前に『長崎出島ハーバー入出港(予約)届』に必要項目を記入の上郵送
またはFAX、e−mailにて予約する。
また、登録済の方は携帯i−modeでも入出港(予約)申込出来る。 確認の上カ
ードキーによって時間外でも自由に門扉の開閉が出来る。
18
長崎港計画平面図
横浜港 MM21 のぷかりさん橋で
試験的に一般開放したが、利用率
はあまり高くなかった。しかし、
これには理由がある。MM21 の場
合、デッキシューズ・短パン姿で
上陸しても楽しめる施設が近く
にないという設置環境によるも
のではないかと管理者は分析し
ている。したがって陸上施設との
関連にも配慮する必要はある。
19
横浜港港湾計画図(ぷかりさん橋付近)
1.14 パブリックアクセス及びオープンスペースの確保
○ 水際空間のもつ魅力を誰もが共有できるよう、水際空間に対するパブリックアクセ
スを確保すると共に、水辺にオープンスペースを確保する。
水際空間の施設配置計画にはまず、内部陸域からの接近の容易性が重要である。その
ために、交通結節点(駅・駐車場等)から水際空間へのアプローチを確保することが重
要である。
また、物理的なアクセス手段の充実だけでなく、周辺道路や公共輸送機関等からの水辺
の視認性(視覚的アクセス)が確保されるとともに、空間の一体性に配慮した交通結節点
から水際空間までの演出が図られるよう留意する。
また、他の水域の利用上支障がない限り水辺はプロムナード等により一般の通行が可能
な空間を確保することが重要である。
上島ら(※1)によると、水辺との一体性を確保する拠点としての水際の「滞留空間」
の幅員は最大25m、滞留空間を含む水際空間のオープンスペースの幅員は人が動作を識
別できる距離である150m以内としており、水際空間の魅力を引き出すためにはこの範
囲に滞留空間、オープンスペースを収めることが望ましい。
また、奥田ら(※2)により、水際部緑地においてベンチや芝生園地での滞留時間が非
常に長く、そこでの行動も多様であることが確認されていることから、眺望を楽しむ、あ
るいは水際独特の環境を感受しながら食事を楽しむ等、水際空間の魅力を有効に活用する
ためには、水際空間にベンチや芝生園地等を適切に配置する必要がある。
20
横内(※4)によると、水際のプロムナードは内陸市街地とは異なる特性を示す。片側
が水域である場合、最も良好なイメージをかもし出す側面の建物の高さHとプロムナード
の幅員Dの関係はD/Hは 0.6 であるという。
(水際空間の回遊性を高めること)
各地区において空間の魅力向上が図られた場合にそれを結ぶ連続したプロムナード
の整備により回遊性を確保することが、水際空間の相乗的な魅力向上に資することとな
る。水際空間を利用者が飽きることなく自由に行き来できるためには、連続性を確保す
ること、人間の飽きの来ない歩行距離の限界(500m∼600m)(※3)等に配慮し、そ
れに応じて適切な休息施設等を設けること、水際線や水際空間の形態、水際施設の機能
に多様性を持たせる等、水際空間の持つ多様な魅力を視覚的に楽しめるよう工夫するこ
とが望ましい。
(誰もがわかるサイン(標識)の配置)
水際空間への入り口及び内部において、官民が協力して統一的、かつ適切なサイン(標
識)計画(※5)に基づいた万人に分かりやすい誘導や、地域の歴史や文化に関する情報を
提供することが重要である。
※1上島顕司、善見政和、齋藤潮:港技研資料 No.940 都市と水辺の一体性を確保した水
際空間の構成原理とデザイン,運輸省港湾技術研究所,1999
※2奥田薫、小林亨、村田利治:港技研資料 No.877 人の動的形態からみた水際部緑地の
空間特性
運輸省港湾技術研究所,1997
※3横内憲久、ウォータフロント計画研究会:ウォーターフロントの計画ノート,共立出
版,1994
※4横内徳久:ウォーターフロント開発No.20
ウォーターフロントのプロムナード
を考える
※5サイン計画とは、一般の市民がわかりやすく目当ての施設に到着できるよう、道路
や交差点、
1.15
駐車場等に設置する標識の配置計画である。
ビジュアルアクセス及び風通し
○水面は、視野に入るだけで人の心を癒す力を持っている。水際の建築物その他の工作
物の形状や配置に配慮し、可能な限り遠方から水面へのビジュアルアクセスを確保す
る。
○また、水面を渡ってくる大気は新鮮で清らかである。排気ガスや廃熱で汚れた市街地
の大気を清める効果を発揮させるため、可能な限り風の通り道を確保する。
水際沿いの植栽は、視界を妨げない樹種を選ぶ必要がある。好まれない工場の遮断緑
地のように、水面への視界を完全に遮っている事例さえある。この事例では、動線を 2
層とし、人の動線を車の動線から分離して 2 階に上げてあるから地表からの視界は必要
ないとの説明かもしれないが、水際空間の活用はそのようなものではない。先の例では、
21
地表における車の交通量も、人の動線
と分離しなければならないほどではな
い。劇場の 2 階席がステージとの一体
感が薄れるのと同様、水際の人の動線は可能な限
り地表に配置するのが良い。
右の横浜港山下公園や
ニースの海岸通のように、
水面へのビジュアルアク
セスを確保するのが良い。
建物の配置が好ましく
ない残念な事例として博
多の大博通りを挙げるこ
とが出来る。駅前から伸び
ている大博通りの先には、国際旅客ターミナルがある。しかし、通りは建物にぶつかり、
水面への視界が遮断されている。
1.16 通年利用、誰もが利用
水際空間の整備に当たっては、可能な限り老若男女または所得階層の如何にかかわらず
楽しめる機能を導入する。また、いずれの季節、時間帯においても楽しめる機能を導入
する。
この事に関する表現の事例を以下に示す。
○サンフランシスコの港湾委員会の土地利用計画では基本方針の中に次のような項目
22
がある。
・活動及び利用者の普遍性。港湾の土地は、すべてのサンフランシスコ市民及び来訪者
に対し幅広くわくわくする海事、商業、娯楽、市民的、オープンスペース活用その他の
ウォーターフロント活動メニューを受け入れられるものでなければならない。
○バーリントンのウォーターフロント再開発ガイディングプリンシプル
・バーリントンには四季がある。このウォーターフロント開発は四季を通じて活用し楽
しめるようなものとする。
1.17 関連計画や法制度との調整
○ 水際空間を、多様な活動の場として整備するに当たり、関連する計画や法制度との
調整が必要になる場合がある。
○ これらの計画及び法制度との調整に当たっては、必要に応じて、分区条例に基づく
特認規定や特区制度を活用することも可能である。
水際空間を、多様な活動の場として再整備するにあたって、例えば以下のような手続
きが想定される。
(港湾計画の変更)
港湾において新たな港湾施設の配置計画、土地利用や水域利用の変更を行う場合、港湾計
画の変更を行う必要がある。ただし、例えば以下のようなケースについては港湾計画の軽易
な変更で対応することができる。
・一定の水域をマリンスポーツ等のために優先的に活用することとし、レクリエーション水
域として指定する場合
・直轄工事の対象としない係留施設を位置づける場合
・面積20ha未満の一団の土地利用の用途変更をする場合
(埋立免許の変更)
埋立てにより造成しようとしている水際空間の用途、護岸断面形状を変更する際には、埋
立免許の変更手続きが必要である。埋立面積・埋立汀線が増加する場合には、新規に埋立免
許手続きが必要となる。なお、その手続きには、数ヶ月程度を要する。
(分区条例に基づく特認規定)
分区条例において原則として認められていない構築物の建設を許容しようとする場合に
おいて、港湾管理者は、建設しようとする構築物が港湾の管理運営上支障ないことについて
確認を行う必要がある。その際に、そもそも港湾として必要不可欠な施設であるが、構築物
を建設することにより、港湾の利用増進に繋がる、市民のためになる等の判断を行うのであ
れば、分区条例で認めていない構築物の建設であっても、分区条例に基づく特認規定を活用
も可能ではないかと考えている。また、一時的又は暫定的なものではなく恒久的なものであ
り、かつ港湾として必要ない地域であると判断する場合には、臨港地区を解除することで対
応することになる。
23
(特区制度の活用)
水際空間のうち、埋立により造成した土地は、埋立竣工認可の告示後10年間は埋立免許を
受けた土地利用を変更する際には港湾管理者の許可が必要となるが、特区に位置づけられた
場合には、条件が整っていれば地利用転換の制限を緩和することができる。巻末参考資料の
「特区制度における公有水面埋立法の取り扱い」を参照。
1.18
街区設計ガイドライン及び景観
○水際空間の魅力の根源は、水面にある。水際空間の土地利用計画に当たっては水面を
取り込んだ景観設計を重視する。その中に夜間の景観も含まれる。
○地域アイデンティティに基づく統一された街並み設計をすることが重要である。当該
空間の形成に参加するすべての事業者が協力して、統一された良好な街並みを形成す
るためには、街区設計ガイドラインを準備するのが効果的である。
○また、可能であれば景観法に基づく「景観計画区域」に指定し、景観計画を策定する
のが良い。
景観法の目的と基本理念は次の通りである。
(目的)
第一条
この法律は、我が国の都市、農山漁村等における良好な景観の形成を促進する
ため、景観計画の策定その他の施策を総合的に講ずることにより、美しく風格のある国
土の形成、潤いのある豊かな生活環境の創造及び個性的で活力ある地域社会の実現を図
り、もって国民生活の向上並びに国民経済及び地域社会の健全な発展に寄与することを
目的とする。
(基本理念)
第二条
良好な景観は、美しく風格のある国土の形成と潤いのある豊かな生活環境の創
造に不可欠なものであることにかんがみ、国民共通の資産として、現在及び将来の国民
がその恵沢を享受できるよう、その整備及び保全が図られなければならない。
2
良好な景観は、地域の自然、歴史、文化等と人々の生活、経済活動等との調和によ
り形成されるものであることにかんがみ、適正な制限の下にこれらが調和した土地利用
がなされること等を通じて、その整備及び保全が図られなければならない。
3
良好な景観は、地域の固有の特性と密接に関連するものであることにかんがみ、地
域住民の意向を踏まえ、それぞれの地域の個性及び特色の伸長に資するよう、その多様
な形成が図られなければならない。
4
良好な景観は、観光その他の地域間の交流の促進に大きな役割を担うものであるこ
とにかんがみ、地域の活性化に資するよう、地方公共団体、事業者及び住民により、そ
の形成に向けて一体的な取組がなされなければならない。
5
良好な景観の形成は、現にある良好な景観を保全することのみならず、新たに良好
な景観を創出することを含むものであることを旨として、行われなければならない。
24
横浜市港湾局臨海事業部計画課が作成しているみなとみらい21新港地区「街並み景
観ガイドライン」の概要を付属資料に紹介する。
2.水際空間の整備
2.1
官民の役割分担と PFI 制度の活用
賑わい空間の整備は、集客、接客サービスなど民間事業の範疇に属する業務が中心と
なる。しかし、個別施設の整備にとどまらず、広がりを持った地区の面的な整備である
から、公共インフラの整備が必要となる。これらのインフラまで民間に期待することは
現実的でない。官民の適切な分担が必要になる。このとき民間事業と公共インフラの整
備の間には、空間的、時間的な連携が保たれるよう配慮することが重要である。
官民が緊密な連携の下役割分担をしながら空間整備を進める場合、公共側は自らの考
え方を明確に意思表示する一方で、民間事業者の意見を十分に聞き入れる仕組みが必要
である。官民が役割分担しながら空間整備を進める方法は、各種試みられている。PFI
手法の発祥の地英国では、公共事業に関して民間に主導権を与え過ぎることによる弊害
も顕在化しているようで、公共の役割がみなをされる方向にある。米国で取り入れられ
ている RFP と言う手法は、官民協働の代表的な手法である。官民役割分担の一種の契
約に近い。ここで提案している整備方針は、RFP に近い仕組みを念頭においている。
特に、地方自治体の財政が窮屈な昨今、時間的な整合性を保つことが難しくなる場合
が考えられる。このとき PFI 制度を活用して公共の担当すべき部分を民間に肩代わり
してもらう方法が効果的な場合がある。
①PFIの目的
PFI(Private Finance Initiative)とは、従来公共部門によって行なわれてきた
社会資本形成の分野に民間事業者の資金、経営能力及び技術的能力を導入して行う公共
事業手法であり、市場原理を働かせることにより、公共施設の設計、建設、管理運営が
効率化することが期待されている。
平成11年度には「民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律
(PFI法)」及び「基本方針」が定められ、PFI事業を進めるにあたっての基本的
考え方や具体的実施にあたっての留意事項が示された。
また、国がPFI事業を実施する上での実務上の指針となる「PFI事業実施プロセス
に関するガイドライン」、「PFI事業におけるリスク分担等に関するガイドライン」
及び「VFMに関するガイドライン」が内閣府民間資金等活用事業推進室(PFI推進
室)から示されており、国以外の者が実施するPFI事業においても参考となる。
[PFI推進室ホームページ
http://www8.cao.go.jp/pfi/
]
②PFIの支援措置
・資金調達
日本政策投資銀行等による融資
PFIにより施設の建設、維持管理及び運営等を行う
25
事業に対する日本政策投資銀行等の政策金融機関による低利融資
金
利:政策金利Ⅲ
融資比率:50%以内
財投(政策金利Ⅲ)
自己資金
50%
50%
上記の他に、補助対象施設を整備する場合は補助金交付を受けられる場合がある。ただ
し、BOT方式に関しては、以下の点について、個別プロジェクトごとに審査を行う必
要がある。
①長期安定的に公共施設等を管理・運営できるか
②最終的にその公共施設等が公共に移転されることが担保されているか
③補助金等適正化法の適用条件(目的外使用の制限、財産処分の制限等)をPFI
事業者が了承するか
・税制特例措置
特別土地保有税:PFI法に伴い整備される事業の用に供される土地について特別土
地保有税を非課税とする。
これらの一般的な支援制度のほか、プレジャーボートの係留・保管施設等の PFI 事業に
関しては、個別の支援制度がある。
2.2 エリアマネージメント
ある程度の広がりを持ち、複数の事業者が参加して地域を統一の取れたコンセプトの
下に整備するためには、建築基準法等の法による管理だけでは不十分である。1.18で
述べた景観ガイドラインのような細目について確実に実行していくための仕組みが必
要である。この役割を港湾管理者が自らになうことが出来れば、それも一法であるが、
一般的には難しい。エリアマネージメントを目的とした株式会社横浜みなとみらい 21
のような組織を設けるのも有効な方法もある。
株式会社横浜みなとみらい 21 の概要は以下の通りである。
社
名:株式会社横浜みなとみらい 21
資本金:11億円
出資者:横浜市、神奈川県、独立行政法人都市再生機構、地権者、地元経済界
事業内容:・業務機能誘致業務
・街づくり調整、推進業務
・電波障害対策、緑化推進、リサイクル推進
・地区内施設整備の調整
・街づくりのための各種調査・検討
・広報・PR 事業
・公共施設等の管理業務
26
そしてMM21では、すべての地権者が参加して「みなとみらい21街づくり基本協定」
を締結している。協定書冒頭の社長挨拶には次のような文書が含まれている。
“MM21は、広大なエリアにおいて、多様な用途をもつ都心を長期にわたって開発する
事業であります。 このような事業においてこの協定では、地区にふさわしい街づくり
について地権者の間で自主的なルールを定め、共通な価値観を共有して調和のとれた街
づくりを進めて行くことを目標とし、質の高い、活気のある、快適な街を維持して行こ
うとしています。 また、いくつかある都心部の大規模開発において、このように地権
者が自主的に締結した協定はきわめて特長的なことと言えます。”
そのほかにも参考になる事例があるので紹介する。
カナダ東部の小さな港町セントジョーンでは最近水際空間整備に着手している。推進
体制が興味深く、参考になる面もあるので付属資料に概要を紹介する。
有名なボルティモアのインナーハーバー再開発事業でも、エリアマネージメント的な
業務を担当する組織を活用している。ポイントは、この組織は投資をしたり、資産を持
ったりすることはしない。1965年、中心市街地チャールズセンターの再開発を進め
るために設立してあったチャールズセンター管理会社を、チャ−ルズセンターインナー
ハーバー管理会社に改組しインナーハーバーの再開発に当たらしめた。再開発対象地は
市有地であり、この会社は基本的には市有地の管理活用の任務を委嘱されていたもので
ある。そのため計画策定から、進出企業の誘致、賃借契約交渉などの業務を担当してい
る。
3.水際空間の利用及び維持管理
3.1
イベントの継続的実施
水際空間の持つ魅力を長期間に渡って維持、向上させていくためには、開発利益を還
元して集客力を高めるためのイベントやパフォーマンスを支える運営組織が有効であ
る。
(参考事例:水際空間の魅力を継続的に創出する仕組みの事例)
27
・ボルティモアの事例
インナーハーバーを含めたボルチモア市全体の活性化と振興を図るため、イベントや
催しごとの企画・運営を一手に担当する「ボルチモア振興・芸術事務所」という組織を
持っている。この事務所は、ボルチモア振興事務所と市役所の芸術・文化部門を統合し
て出来た準公共的なNPOであり、管理費と人件費(職員数約30 名)は市が支出している
が、イベントの開催費に関しては事業者の寄付でまかなっている。
・東京臨海副都心の事例
東京臨海副都心では、イベントの企画・実施を担当する組織として「臨海副都心まち
づくり協議会」を作っている。この協議会はイベントだけでなく地区内の事業者にとっ
て例えばバスの運行など共通の利便業務も担当している。組織の概要は以下の通りある。
名
称
創立目的
臨海副都心まちづくり協議会
臨海副都心において、総合的で質の高い都市環境を創出し、これを永続
的に発展させるため、開発に伴う諸課題について東京都とのパートナー
シップの下に開発事業者が共同で対処していくことを目的とする。
構
成
まちづくり部会、及び電波障害対策部会にて構成
会
員
両部会の正会員と特別会員44社(平成17年1月現在)
財
源
両部会正会員による通常会費、及び特別会費にて運営
主な事業内容 ・良好な都市環境を形成するための相互の調整、及びこのために必要な
自主的ルールの制定並びに実施運営。
・電波障害に関する調査、及び対策の実施
・まちづくりに関する共通事項についての調査・研究。
・まちづくり催事の企画、及び実施。
具体例 : 無料巡回バス幹事
会、二つの自由の像設置委員会
・域外との諸問題に関する渉外事務。
・その他目的達成に必要となる事項。
・門司港レトロ倶楽部
門司港レトロ倶楽部は、門司港レトロ地区の観光振興と地域の活性化を、地元・民間・
観光協会・行政が連携し、一体となって推進することを目的に、平成7年 12 月に設立
され、門司港レトロで行われるイベントの企画・運営、PR 活動などを行っている。
参加団体
地 元
民間団体
行 政
・門司まちづくり21世紀の会
・JR門司港駅
・北九州市経済文化局
・門司みなと商店街振興組合
・NTT西日本北九州支店
門司港レトロ室
・門司の躍進を考える会
・北九州商工会議所
・北九州市港湾局物流
・門司港バナナの叩き売り保存
・北九州活性化協議会
振興課
会
・門司港開発⑭
・北九州市教育委員会
28
・まちづくり活性化もじ
・門司港郵便局
・門司の景観を考える女性の会
・九州電力門司営業所
・門司みなとまち倶楽部
・出光美術館(門司)
・門司文化団体連合会
・北九州コンベンションビューロー
・北九州市門司区役所
・北九州市観光協会
・門司地区タクシー協会
3.2
公共施設管理運営の民間委託
公共施設であっても、市民に快適に利用してもらうためには制約が多く堅苦しい公的
管理ではなく、運営に当たりサービス精神が必要な場合もある。このような場合、指定
管理者制度(地方自治法第244条の2第3項)を活用する方法がある。
従来、地方公共団体、地方公共団体が出資する団体、公共的団体に限定されていた公の
施設の管理を指定管理者(議会の議決を受けたその他の団体:以下同じ)も行うことがで
きる。指定管理者が行うことのできる業務の範囲は施設の使用許可、料金の収受、警備、
清掃、保守点検等である。(公権力の行使は含まれない。)なお、指定管理者に行わせる
業務の範囲は条例により明確に定める必要がある。
29
第3章
整備方針各論
1.基本理念
1.1
一般
ここでは、港湾管理者が当該水際空間を整備するにあたっての基本的な考え方を記述
する。一般的には、市民が憩える美しい都市空間を整備し、都市イメージの向上と地域
活性化を図ることなどとなる。そのほか第2章で解説した誰でも通年利用が可能な空間
とすることや、長期的な視点で取り組むことなども基本理念になり得る。国土形成計画
の考え方である都市連携を受けて、時間距離 1 時間程度の近隣内陸都市もマーケットと
して考えるとか、国際交流拠点機能を考えるなど。
1.2
地域アイデンティティの明確化
整備対象地域のアイデンティティを明確にすることが効果的である。
対象地域の経済活動を含む日常の持つ文化性、地域の歴史、人々のその地域から喚起
されるイメージ等を考慮し、整備対象地域のアイデンティティを明確にする。水際空間
の地域アイデンティティ活用の例として、水際空間が各々の時代で持っていた多様な歴
史的・文化的背景を活用することが考えられる。その際、地域のシンボルとして水際空
間の歴史的・文化的資源(市場、倉庫、貨物線鉄橋、クレーン等荷役機械、歴史的船舶、
造船ドック等)を保存・活用すること、地域の産業活動の歴史や海洋文化を発信する場
を設けることも考えられる。
地域アイデンティティを明確にして開発効果を挙げている典型的な例は、門司港レト
ロ地域である。
2.対象範囲
2.1
整備対象範囲。
空間的な範囲は、水域及び水域と一体的に活用される陸域とする。陸域として臨港地
区は対象の重要な部分ではあるが、臨港地区に限らない。一般的には港湾計画時に計画
対象に含まれる地域とする。具体的な事例では、先の一般的な対象範囲の中で、土地の
所有形態や利用状況を勘案して、整備の対象となり得る範囲を指定することとなる。
対象範囲は、図示する。
3. 対象地区の特性
3.1
背後都市の特性について
文化・芸術分野の特記事項、特産物、産業構造など。
行政区域を越えた背後圏の経済指標。
3.2
港湾の特性
30
港湾機能の性格。港湾の自然条件。地域における現在の役割や今後の整備保全の方向
について。
3.3
対象地区の特性
歴史的にどのような役割を果たしてきたか。対象地区が現在港湾全体の中でどのよう
な位置づけになっているか。
4. 整備地区が目指すコンセプト
港湾管理者側で考えている整備の方向を記述する。賑わい空間を創出すると言うこと
以外に具体的な構想を持たない場合は、それでも良い。民間による裁量の範囲を大きく
残していることになる。
5. 水域及び陸域の利用計画
この部分は、本方針の中心的部分となる。臨港地区指定がある場合には、整備を目指
している土地利用に合致した分区としておかなければならない。対象地区内のロットご
とに、構想している導入機能がある場合には、具体的に表明する。必ずしも拘らない部
分いついては、後の11.整備方針に対する代替案の提案の範囲及びその手続き。の項
で明記する。
水域は、積極的に活用する方針を打ち出すことが肝要。そして公共の利益に反しない
必要な水域占用許可は弾力的に与える方針が必要である。
6. 交通等基本インフラの現況及び整備・維持の計画
公共インフラを、公共がいつどこまで整備するか。その維持管理は、誰が行なうかを
明らかにする。特に整備対象区域の外側で対象地域へのアクセスは民間事業者にとって
関心の高い項目となるので、明確にして置く必要がある。
7. 既存施設の保全、活用の方針
歴史的倉庫や防波堤など地域アイデンティティを確立する上で効果のある施設があ
り、これを活用する方向で考えている場合は、そのことを明示する。
8. 整備地区周辺の制約条件等
例えば、高潮防護ラインを確保しなければならないとか、対象水域に隣接して養殖漁
場があり、水域活用に制約があるなど。交通量の多い航路が存在するなども制約となる。
9. 官民の役割分担、協働の方針
個別の公共インフラについて、公共がいつまでにどのようなものを整備するか。特定
の公共施設ごとに PFI による民間の進出を期待すること、特定の公共施設は、指定管
31
理者制度を活用する方針であることなど。その他の収益施設は民間の事業を期待するな
ど。
10.街区設計、景観に関する細目
ビジュアルアクセスの確保。水際建築の高さ制限。公告の制限など。
11.整備方針に対する代替案の提案の範囲及びその手続き
12.参考資料
港湾計画、港湾管理条例、都市計画など
32
付属資料
○港湾法施行規則
○特区制度における公有水面埋立法の取り扱い
○海岸法
○港湾区域内の水域の占用許可の運用について
○水域占用の事例
○都市計画区域内における臨港地区に関する運用指針
○ボストンの臨港地区に適用される市街設計ガイドライン
○「みなとみらい21地区街並み景観ガイドライン」
横浜市港湾局臨海事業部事業計画課
○「みなとみらい21街づくり基本協定」協定書目次
○
カナダセントジョーンのマネージメント体制
33
○港湾法施行規則
(港湾計画の軽易な変更)
第一条の二
法第三条の三第四項の国土交通省令で定める軽易な変更は、当該港湾計画
についての港湾法施行令(昭和二十六年政令第四号。以下「令」という。)第一条の
四第三号から第五号までに掲げる事項のうち次に掲げるもの以外のものに係る変更
とする
一
第十五条の六第一項及び第二項に掲げる施設(規模又は配置の変更により当該施設
となるものを含む。)に関する事項の追加、削除又は当該施設の規模若しくは配置に
関する事項の変更
二
第十五条の六第一項第三号に掲げる係留施設の用に供する荷さばき施設及び保管
施設の敷地の面積が三ヘクタール以上増減することとなる規模に関する事項の変更
及び当該係留施設の用に供する主要な荷役機械に関する事項の追加、削除又は主要な
荷役機械の種類若しくは配置に関する事項の変更
三
面積二十ヘクタール以上の一団の土地の造成に関する事項の追加、削除又は主要な
荷役機械の種類若しくは配置に関する事項の変更
四
面積二十ヘクタール以上の一団の土地利用に関する事項の追加、削除又は主要な荷
役機械の種類若しくは配置に関する事項の変更
五
第十五条の六第一項及び第二項に掲げる施設(利用形態の変更により第十五条の六
第一項第三号に掲げる係留施設となるものを含む。)の利用形態に関する事項の変更
六
港湾計画の基本的な事項に関する基準を定める省令(昭和四十九年運輸省令第三十
五号)第十六条及び第二十二条に規定する事項の内、第十五条の六第一項及び第二項
に規定する港湾施設に係るものの追加、削除又は変更
○特区制度における公有水面埋立法の取り扱い
公有水面埋立法第 27 条 1 項において、埋立て完了の告示より 10 年間は、埋立地の所
有権の移転、地上権等の設定もしくは賃貸借他の使用及び収益を目的とする権利を設定
しようとするときには、当該都道府県知事の許可を受けなくてはならない、という土地
処分の制限期間が設定されている。
また、同法 29 条において、埋立完了の告示の日から 10 年以内に埋立地を異なる用途
に供しようとするときには都道府県知事の許可を受けることとされている。
これに対して埋立時に予定していた土地利用用途とは異なる利用を希望する企業か
らの立地の関心や、許可基準にある用途区分が細分化しているために企業ニーズに適合
しない用地となるケースがあることから埋立地の効率的な利用促進を望む構造改革特
区提案が寄せられ、次のような措置を実施している。(平成 15 年 4 月より構造改革特
別区域計画(特区計画)の認定開始)
①横浜港:公有水面埋立地の用途変更等の制限期間(10 年)を 5 年に短縮
34
②大阪港りんくうタウン地区:公有水面埋立地における用途変更等の柔軟化
③岡山県水島港:公有水面埋立地における用途変更等の柔軟化、同用途区分の柔軟化
○構造改革特別区域基本方針
特定事業の名称:
措置区分:
特定埋立地に係る所有権移転制限期間等短縮事業
法律
特例措置を講ずべき法令等の名称及び条項: 公有水面埋立法第27条第1項、第29条第1
項
特例措置を講ずべき法令等の現行規定: 埋立地は、免許どおりの処分、土地利用がな
されるよう担保する必要があり、安易な権利の移転・設定、用途変更は認められるもの
ではないことから、造成後にやむを得ず権利の移転・設定、用途変更を行う場合には、
利権化及び乱開発の防止の観点から埋立地の適正な利用を確保するため、公有水面埋立
法第27条第1項及び第29条第1項の規定により竣功認可の告示後10年間は、免許
権者(都道府県知事又は港湾管理者)の許可を受けなければならない。
特例措置の内容: 地方公共団体が、その設定する構造改革特別区域における経済的社
会的条件の変化に伴い当該構造改革特別区域内の港湾における公有水面の埋立てに係
る公有水面埋立法第22条第2項に規定する竣功認可の告示がされている埋立地(以下「特
定埋立地」という。)の全部又は一部が現に相当期間にわたり同法第11条若しくは第13
条の2第2項の規定により告示された用途に供されておらず、又は将来にわたり当該用途
に供される見込みがないと認められることからその有効かつ適切な利用を促進する必
要があると認めて内閣総理大臣の認定を申請し、その認定を受けたときは、当該認定の
日以後は、当該特定埋立地の全部について、同法第27条第1項中「10年間」とあるのは
「5年間」と、同法第29条第1項中「10年内」とあるのは「5年内」とする。
同意の要件:
特になし
特例措置に伴い必要となる手続き:
特になし
○海岸法
(海岸保全区域について)
第三条 都道府県知事は、海水又は地盤の変動による被害から海岸を防護するため海
岸保全施設の設置その他第二章に規定する管理を行う必要があると認めるときは、防護
すべき海岸に係る一定の区域を海岸保全区域として指定することができる。
(以下略)
(海岸保全区域の占用について)
第七条 海岸管理者以外の者が海岸保全区域(公共海岸の土地に限る。
)内において、
海岸保全施設以外の施設又は工作物(以下次条、第九条及び十二条において「他の施設
等」という)を設けて当該海岸保全区域を占用しようとするときは、主務省令で定める
ところにより、海岸管理者の許可を受けなければならない。
2
海岸管理者は、前項の規定による許可の申請があった場合において、その申請に
係る事項が海岸の防護に著しい支障を及ぼすおそれがあると認めるときは、これを許可
してはならない。
35
(海岸保全区域における行為の制限について)
第八条 海岸保全区域内において、次に掲げる行為をしようとする者は、主務省令で
定めるところにより、海岸管理者の許可を受けなければならない。
(以下略)
一(略)
二 水面又は公共海岸の土地以外の土地において、他の施設等を新設し、又は改築する
こと。
三(略)
2
海岸管理者は、前項の規定による許可の申請があった場合において、その申請に係
る事項が
海岸の防護に著しい支障を及ぼすおそれがあると認めるときは、これを許可してはなら
ない。
○港湾区域内の水域の占用許可の運用について
〔平成 2 年 7 月 20 日
港管 2441 号
港湾管理者宛
運輸省港湾局長通知
港湾区域内の水域の占用許可の運用について
最近におけるウォーターフロント開発等の動きに対応し、マリーナを核としたレクリ
エーシヨン関係事業のほか、ホテル、レストラン及び駐車場等の事業を、水域を占用す
ることにより行おうとする案件が発生してきていることに鑑み、港湾法(昭和二十五年
法待第二盲十八号)第三十七条第一項に規定する港湾区域内の水域占用許可を行うにあ
たっては、下記の点に留意することとし、これにより水域の適切な利用を図るとともに、
総合的港湾空間の創造に資することとされたい。
なお、貴都道府県内の市町村管理に係る地方港湾の港湾管理者の長には、貴職よりこ
の旨周知方お願いする。
記
1.許可期間
許可期間については、占用案件の性格等に応じ、最長十年間(更新可能)まで認めて
差し支えない。
これに伴い、当該占用水域の公有水面としての性格を損なわないため、許可にあたっ
ては、次の条件を付すこと。
①公益上必要があると認める場合は、許可の取消しができること。
②.許可を取り消した場合、又は許可期間の終了した場合には、直ちに当該水域を現状
に回復させること。
2.許可対象水域
許可対象水域については、占用案件等の性格に応じ、占用物件の周囲の水域も含めて
差し支えない。
3.許可にあたっての配慮事項
水域の計画的利用を図る観点から、占用案件の許可にあたっては、周辺の土地利用計
画等を勘案し、その配置が適切なものとなるよう配慮されたい。
36
37
○
水域占用の事例
38
○都市計画区域内における臨港地区に関する運用指針
港管
港計
第 2236 号
第 196 号
93 号
建設省都計発
第
建設省住街発
第 235 号
平成 12 年 12 月 28 日
各港湾管理者の長
運輸省港湾局長
建設省都市局長
建設省住宅局長
都市計画区域内における臨港地区に関する運用指針について(通知)
都市計画区域内における臨港地区の指定、変更等については、「都市計画区域内にお
ける臨港地区の指定、
変更等の推進について」
(平成 4 年 6 月 29 日付け港管第 1933 号、
建設省都計発第 107 号、運輸港湾局管理課長、建設省都市局都市計画課長通達)及び
「臨港地区及び分区条例の運用について」
(平成 9 年 3 月 31 日付け港管第 964 号港計
第 45 号、建設省都計発第 42 号、建設省住街発第 57 号、運輸省港湾局管理課長、運輸
省港湾局計画課長、建設省都市局都市計画課長、建設省住宅局市街地建築課長通達)に
基づき、その円滑な推進にご尽力いただいているところである。
今般、地方分権一括法の施行及び「都市計画運用指針」
(同日付け建設省都市局長通知)
の発出に伴い、下記の 3 通達を廃止したうえで、従来どおり港湾行政都市行政及び建築
行政の円滑な調整に資するよう、国の関与のあり方等に配慮して文言上の整理を行い、
地方自治法第 245 条の 4 に規定する技術的助言として別紙のとおり「都市計画区域内
における臨港地区に関する運用指針」をあらためて定めたので参考とされたい。
また、貴管下関係市町村及び市町村管理に係る地方港湾の港湾管理者に対してこの旨
周知方お願いする。
記
1.
「都市計画区域内における臨港地区の指定、変官等の推進について」
(平成 4 年 6 月
29 日付け港管第 1933 号、建設省都計発第 107 号、運輸省港湾局管璽課長、建設省都
市局都市計画課長通達)
2.「臨港地区及び分区条例の運用について」
(平成 9 年 3 月 31 日付け港管第 964 号、
港計第 45 号、建設省都計発第 42 号、建設省住街発第 57 号、運輸省港湾局管理課長、
運輸省港湾局計画課長、建設省都市局部市計画課長、建設省住宅局市街地建築課長通達)
3.
「港湾における都市施設の都市計画決定について」
(昭和 47 年 6 月 19 日付け港管第
39
1669 号、建設省都計第 49 号、運輸省港湾局長、建設省都市局長通達)
40
(別紙)
都市計画区域内における臨港地区に関する運用指針
1)趣旨
臨港地区は、港湾を管理運営するため定める地区であり、港湾区域を地先水面とする
地域で、港湾施設のほか、海事関係官公署、臨海工業等港湾を管理運営する上で必要な
施設が立地する地域及び将来これらの施設のために供せられる地城である。
臨港地区においては、特定の機能に特化している地区として、その機能を全うするた
め、用途地域及び特別用途地区による用途規制を適用除外とし、港湾管理者が臨港地区
内の分区による構築物の規制を行うという措置がとられてきたところである。
ところが、臨薄地区内において,従来から港湾の管理運営上必要と考えていた施設に
加え、近年、ニーズの変化に伴い、港湾の管理運営上必要な新たな施設や港湾機能と一
般的都市機能とが複合する施設の立地が求められる例が見られる。
このようなニーズの変化に的確に対応していくため、個別の事情を勘案しながら、必
要な範囲で、港湾行政及び都市行政上の規制を、適宜、重層的に適用することにより、
臨港地区の指定、分区条例案等について相互に円滑な調整に努めることが望ましい。
一方、長年月の間に、港湾機能の沖合展開等により、一部には、臨港地区としての性
格が低減したり、消失し、むしろ一般的都市機能の地域となったり、同機能が支配的と
なっている地域も見られることや、臨港地区に含めることが必要な地域について、いま
だその指定が進んでいない地域も見られることにかんがみ、このような地域についても、
臨港地区の指定又は変更を迅速に進めるほか、港湾行政及び都市行政の間で円滑な調整
に努めることが望ましい。
2)基本的な考え方
①臨港地区及び地区計面等の取扱の考え方
このため次表の区分に従い、適宜、港湾行政および都市行政上の規制を重層的に
適用することが望ましい。
41
区分
港湾行政上の規制
都市行政上の規制
用途地域及び特別用途地域(以下
港
0レベル
なし
湾
Ⅰレベル
臨港地区による届出・勧告等(分 用途地域等という。)による建築
的
規制及び必要に応じ地区計画又
区を定めない。)
↑
は再開発地区計画(以下地区計画
↓
等という。
)による建築規制
都
Ⅱレベル
市
的
臨港地区による届出・勧告等及 必要に応じ地区計画等による建
び分区条例による用途規制
Ⅲレベル
築規制
なし
(注)0 レベル:臨港地区以外の一般的土地利用規制を行う区域
Ⅰレベル:港湾を一体的に管理運営する必要撞から臨港地区に含める必要がある
が、相当程度の一般的都市機能を有する土地利用に対応して、分区を
定めず、用途地域等による建築規制によることとし、必要に応じて、
地区計画等による建築規制を行う区域
Ⅱレベレ:臨港地区で、一部に一般的都市機能が含まれることに対応して、分区
条例による港湾の管理運営に必要な用途規制を行うが、必要に応じて
地区計画等による建築規制を併せて行う区域
Ⅲレベル:臨港地区で分区条例による用途規制を行う区域
上記の取扱いに従い、臨港地区の指定又は変更について、都市計画決定権者からの申
出があれば、港湾管理者は協議を受けることが望ましく、臨港地区内の地区計画等の都
市計画の決定又は変更について、港湾管理者からの申出があれば、都市計画決定権者は
協畿を受けることが望ましい。
②
臨港地区の範囲及び指定の考え方
(1)臨港地区は、港湾を管理運営するため定める地区であり、港湾の機能を十分に確
保し、その利用の増進を図る観点から、港湾施設を整備し、適正に維持管理するために
必要な一体弛牢区域及び港湾の開発、利用並びに保全に著しく支障を与える行為を規制
する必要のある区域が指定されるべきである。
その際、臨港地区内の行為については港湾法に基づき届出義務を課す等土地所有者等
に権利制限を課すことになることから、その区域は当該港湾の管理運営上必要不可欠な
範囲とすべきである。
(2)具体的には、臨港地区は、港湾法(昭和 25 年法律第 218 号)第 3 条の 3 第 1 項
に規定する港湾計画において港湾を有効かつ適切に利用することができるよう土地利
用の区分が定められた場合には、これを踏まえて港湾の適切な管理運営が図られるよう
定められるべきものであることに留意すべきである。この場合、港湾計画において定め
42
られた土地利用の区分のうち、ふ頭用地、港湾関連用地、危険物取扱施設用地、緑地(港
湾の環境の整備のための施設の用地に限る。)
、廃薬物処理施設用地、交通機能用地(臨
港交通施設の用地に限る。)
、工業用地(原料又製品の一部の輸送を海上運送又は港湾運
送に依存する製造事業又はその関連事業を営む工場等の用地に限る。)とされている区
域を中心として臨港地区の範囲を検討し、交流拠点用地、レクリエーション施設用地と
されている区域は必要な範囲、都市機能用地等の上記以外の用地は特に必要な最小限の
範囲が、臨港地区に含まれるよう検討することが考えられこと。
(3)また、臨港地区は、都市計画法(昭和 43 年法律第 100 号)第 13 条第 1 項に規定
するところにより、土地の自然的条件や土地利用の動向を勘案して港湾の利便が増進さ
れるとともに他め都市機能の利便の増進等が図られるよう、他の都市計画と一体的かつ
総合に定められた地域地区であることにも留意すべきである。
(4)臨港地区については、土地利用の現況及び動向、立地施設についての情報の的確
な把握等に努めるとともに、上記 2)①に示す臨港地区の指定又は変更に係る都市計画
決定権者からの申し出、臨港地区の地区計画等の都市計画の決定又は変更に係る港湾管
理者からの申出を的確に運用し、土地利用の動向を踏まえた的確な指定又は変更を行う
ことが望ましい。
また、臨港担区は、港湾の理運営のための観点にとどまらず、まちづくりの観点にも
十分に配慮し決定される必要があることから、臨港地区に関する都市計画について、都
市計画法第 23 条第 4 項の規定に基づき、港湾管理者がそのための案を申し出るにあた
っては、以下のことに十分留意することが望ましい。
臨港地区の案を港湾管理者が作成するにあたっては、あらかじめ港湾管理者以外の臨
港地区に係る関係地方公共団体に協議し、その上で、都市計画決定権者に臨港地区の案
を申し出ること。また、この協議の過程においても、港湾管理者は都市計画決定権者と
十分な連格調整を図ること。ただし、この協儀は、港湾管理者が行うものであり、都市
計画法第 18 条第 1 項の規定による都道府県知事の関係市町村に対する意見聴取とは別
に行われるものであること。
なお、これは、港湾管理者の申し出た臨港地区の案ついて、都市計画決定権者の判断、
都市計画地方審議会の付幾等の手続を通じて変更されることを妨げるものではないこ
と。
③
土地利用の区分(レベル)に応じた臨港地区の指定・変要の考え方
2)①の表に示された0レベル、Ⅰレベル、Ⅱレべる及びⅢレベルの運用については、
次のように取り扱うことが望ましい。
港湾管理者及び都市計画決定権者は、これを踏まえ、十分に調整を図りながら土地利
用の区分(レベル)を明らかにし、臨港地区制度の的確な連用を図ることが望ましい。
(1)0レベル
ア)臨港地区以外の一般的な市街地と同様な土地利用が行われる区域は、
43
原則として 0 レベルとすること。
特に、住宅が立地する等一般市民の生活が営まれている区域について
は、0 レベルとすることが適当であること。
イ)次のような施設であって都市全体の機能分担の機能分担の観点から立地を判
断すべきものが立地する場合は、港湾行政と都市行政の円滑な調整に配慮
しながら、港湾を一体的に管理運営する必要性から臨港地区に含める必
要がある場合はⅠレベルとし、その他の場合は 0 レベルとすること。
a
一般市民の利用に供される商業施設、宿泊施設、娯楽施設、教養施設、
運動施設等
b
交通・物流関連以外の業種の業務施設
ウ)0 レベルに該当する区域で現に臨港地区が指定されている場合には、臨港
地区を解除する土と。
(2)Ⅰレベル
ア)都市計画区域内における臨港地区及び分区の指定、変更等に関する港湾行政と都
市行政の円滑な推進を図るために、Ⅰレベルを積極的に活用すること。
イ)1 レベルは、港湾を一体的に管理運営する必要性から臨港地区に含める必要があ
るが相当程庚の一般的都市機能を有する区域であり、その適用に当たっては、以下
の点についても十分留意するものとすること。
a 港湾管理者等が埋め立て又は造成した土地で、港湾管理者が維持管理する道路、
緑地等の港湾施設に囲まれた相当程度の一般的都市樹能を有する土地利用が行
われる区域は、その規模及び形状を勘案して、これらの港湾施設の適正な維持管
理を行うため必要な場合には、一体的にⅠレベルとする。
b
臨港交通施設、係留施設等の港湾施設に隣接する区域であて、港湾施設の維持
管理に影響を及ぼす恐れの強い相当程度の一般的都市機能を有する土地利用が
行われる区域(例えば、臨港交通施設に隣接して大規模の国際会議場、ホテル等
が立地し、この施設利用車両が臨港道路の利用に影響を及ぼす場合)は、港湾施
設の適正な維持管理を行うために必要な場合には、一体的に l レベルとする。
ウ)1 レベルに該当する区域については、港湾行政と都市行政の円滑な調整に配慮し
ながら、分区が定められている場合は分区を解除し、臨港地区が指定されていない
場合は臨薄地区に指定すること。
(3)Ⅱレベル
ア)港湾の管理運営上必要な区域で0レベル及びⅠレベルに絨当しないもののうち、
一部に一般的都市機能か含まれている土地の区域については、Ⅱレベルとするこ
と。
イ)Ⅱレベルに該当する区域は、一部の一般的都市機能を有する土地利用が行われ
る区域を含めて、一体的に臨港地区を指定するとともに分区を定めること。
44
ウ)Ⅱレベルに該当する区域においては、一部に一般的都市機能が含まれることか
ら、地域の実情に応じて的確な分区条例(港湾法第 40 条第 1 項の挽定により港
湾管理者としての地方公共団体が定める条例をいう。以下同じ。)が制定される
必要があること。
なお、Ⅱレベルを想定した分区条例は、将来の土地利用の計画を路まえ、不適
切な施設が集積することのないよう定めることが望ましく、現に相当程度の一般
的都市機能を有する土地利用が行われるようになった場合にはレベルの区分を
見直すことが必要になることに留音すること。
(4)Ⅲレベル
ア)0 レベル、Ⅰレベル及びⅡレベルのいずれにも該当しない区域は、Ⅲレベルと
すること。
イ)Ⅲレベルに該当する区域は、臨港地区を指定するとともに分区を定めること。
④分区条例について
港地区内の分区における構築物の制限については分区条例に基づき行っていると
ころあるが、分区条例の制定等に当たっては次の事項に留意することが望しい。
(1)分区条例の制定に当たっての基本的な考え方
分区条例において定める構築物の用途に関する制限は、国民の財産権に係る重大
な制限であり、その内容に関しては国民の誤解を招かないよう客観的かつ合理的
な表現とすることが重要であること。
この際、港湾の管理運営上支障の生じる新たな用途の構築物が立地することの
ないよう分区ごとに立地が許容きれる構築物を限定的に列挙する方式が望まし
く、また、将来の運用に当たって疑義が生じることのないよう、許容される構築
物は、詳細かつ明確に示ざれる必要があること。このため、分区条例の制定に当
たっては関係部局の間で十分に連格調整を図るべきこと。
なお、分区条例に特定の地区の許容構築物を列挙する方法は、一分区内に異な
った分区を設けることになり好ましくないこと。
(2)各分区において立地を許容する構築物
Ⅲレベルに該当するものとして臨港地区が指定された区域を想定して、分区の目
的に照らして許容される構築物は別表中ⅠからⅨまでに掲げるものが考えられ
ること。
分区条例を定やる地方公共体は、次の事項に留意しつつ別表を参考にして、ま
た、指定されている分区が二以上の混合的性格を有することもありうることから
当該分区の性格や当該港湾の事情を考慮して、実情に応じた条例が定められるよ
う配慮すること。
ア)別表中に「市長が指定する」という字句を使用しているが、この運用は港湾法第
45
39 条第 1 項に規定する各分区の目的に照らして適正な範囲内で行われる必要が
あると。また、条例を定めるに当たっては、別表に例示されている事業、施設以
外のものについても明示することを妨げるものではなく、むしろ具体的に明示す
ることが望ましいこと。さらに、市長の指定に委任した場合にもできるだけ具体
的に個々の事業、官公署等を明示する必要があること。(この湯合の市長とは、
港湾管理者の長(港務局にあっては委員会の長)のうちから市長を例にとったも
のである。以下同じ。
)
イ)別表中に掲げる構築物の中には、各分区の目的を実現する上で直接的な役割を果
たすものと間接的な役割を果たすものが含まれているが、間接的な役割を果たす
施設で都市に一般的に立地する用途を許容する内容の分区条例を定めた場合に、
これらの施設が集積した場合には、レベルの区分が速やかに見直されるべきであ
ること。このため、分区条例案を作成する地方公共団体の港湾担当部局は、立地
を許容する構築物の範囲等についてあらかじや都市計画担当部局と十分に調整
を行うこと。
ウ)条例の制定に当たっては「ただし、市長が公益上やむを得ないと認めて許可した
ものを除く。
」旨の規定を設けることを妨げるものではないこと。
(3)分区条例の改正に当たっての留音事項
既に条例が定められている分区について、条例を改正する際には次のような点に留
意すること。
ア)従来の分区条例を基準とした場合、時間の経渦に伴って追加すべき施設、削除す
べき施設、より詳細に要件を示すべき施設の見直しを行うこと。
イ)港湾法第 39 粂第 1 項に規定する各分区の目的を実現し、港湾の利便の増進を図
るために必要な施設等で広く都市内に立地するものを掲げる場合には、港湾機能
の構築物に特定するために必要な眼定を付すことが考えられること。
(4)建築確認等との関係
建築基準法に基づく確認の際、制限構築物の範囲について疑義を生じさせないよう、
分区条例案を作成する地方公共団体の港湾担当部局は建築担当部局と十分に調
整を行うとともに、条例の施行後にも蜜接な連携を図ること。また、建築主事の
置かれている地方公共団体と港湾管理者である地方公共団体とが同一でない場
合にも、事務に支障の起きないよう関係者間の連携を密にすること。
3)配慮すべき事項
港湾法(昭和 25 年法律第 218 号)第 2 条第 3 項に規定する港湾区域若しくは同条第
4 項に規定する臨港地区内における施設または同条第 6 項の規定により国土交通大臣が
46
認定した港湾施設にかかる都市計画の決定については、以下のとおり取扱うことが望ま
しい。
港湾法第 2 条第 3 項に規定する港湾施設(他の法令の規定により設置又は管理される
ものを除く。
)及び同第 6 項の規定により国土交通大臣が認定した港湾施設については、
当該施設にかかる都市計画の決定を行なおうとする場合には、あらかじめ都市計画決定
権者は港湾管理者に協額すること。
47
別表
Ⅰ
商港区を対象とした条例において許容される構築物
1
港湾法第 2 条第 5 項第 2 号から第 10 号の 2 まで及び第 12 号に掲げる港湾施設
(危
険物置場、貯油施設及びセメントサイロを除く。
)
2
海上運送事業、港湾運送事業、倉庫業、道路運送事業、貨物運送取扱事業、貿易
関連業その他市長が指定する事業を行う者の事務所
3
港湾の旅客又は貨物に関連する事業者の利便の用に供するための銀行の支店、保
険業の店舗
4
荷捌き施設又は保管施設に付属する卸売展示施設及び流通加工施設並びにこれ
らの付帯施設
5
港湾その他の海事に関する理解の増進を図るための会議場施設、展示施設、研修
施設その他の共同利用施設
6
港湾の利用の高度化を図るための情報処理施設、電気通信施設その他市長の指定
するこれらに類する施設
7
港湾の流通槻能の高度化を図るためのトラックターミナル、卸売市場その他の流
通業務施設
8
空港施設
9
港湾関係者のための休泊所、診療所その他市長が指定する福利厚生施設
10 税関、地方整備局、地方運輸局、海上保安官署、警察署、入国管理事務所、検疫
所、消防署その他市長が指定する官公署の事務所
11 港湾の旅客又は貨物に関連する事業者の利便の用に供するための旅館、ホテル、
日用品の販売を主たる目的とする店舗、船用品販売店、飲食店その他市長が指定
する便益施設
12
Ⅱ
港湾の旅客又は貨物に関連する事業者の利便の用に供するガソリンスタンド
工業港区を対象とした条例において許容される構築物
1
港湾法第 2 粂第 5 項第 2 号から第 6 号まで、第 8 号から第 10 号の 2 まで及び第
12 号に掲げる港湾施設
2
原料又は製品の一部の輸送を海上輸送又は港湾運送に依存する製造事業又はその
関連事業を営む工場並びにこれらの事業の用に供する情報処理施設及び電気通
信施設並びにこれらの附帯施設
3
前号の工場に附属する研究施設及びその附帯施設
4
前 2 号の施設に従事する者のための休泊所、診療所その他市長が指定する福利厚
生施設
5
税関、地方整備局、地方運輸局、海上保安官署、警察署、消防署その他市長が指
定する官公署の事務所
48
6
第 2 号及び第 3 号の施設に従事する者の利便の用に供するための日用品の販売を
主たる目的とする店舗、飲食店その他の市長が指定する便益施設
Ⅲ
特殊物資港区を対象とした条例において評容され構築物
1
港湾法第 2 条第 5 項第 2 号から第 10 号の 2 まで及び第 12 号に掲げる港湾施設
(上
屋及び食糧サイロを除く。
)
2
海上運送事業、港湾運送事業、倉庫業、道賭運送事業、貨物運送取扱事業その他
市長が指定する事業を行う者の事務所
3
地方整備局、地方運輸局、海上保安官署、替察署、消防署その他市長が指定する
官公署の事務所
Ⅳ
銑道連絡港区を対象とした条例において許容される樽築物
1
港湾法第 2 条第 5 項第 2 号、第 4 号、第 5 号及び第 8 号の 2 から第 10 号の 2 ま
でに掲げる港湾施設
2
鉄道連絡船のためのけい留施設
3
前各号に指定するものを除き、鉄道業務に必要な建築物その他の構築物
V
漁港区を対象とした条例において許容される構轟物
1
港湾法第 2 条第 5 項第 2 号、第 4 号、第 5 号及び第 9 号から第 10 号の 2 までに
掲げる港湾施設.
2
漁船のためのけい留施設、燃料補給施設、給水施設及び給氷施設
3
漁船の修理施設、造船施設及びその附帯施設
4
魚舎、魚干場その他水産物の処理に必要な施設
5
冷蔵倉庫、冷凍倉庫その他水産物保管のための施設
6
製氷工場及び冷凍工場その他の水産物加工工場並びにこれらの附帯施設
7
網干湯、網倉庫その他漁具の補修又は保管に必要な施設
8
漁業関係者のための休泊所、診療所その他市長が指定する福利厚生施設
9
漁業会社、漁業組合その他市長が指定するす団体及び業者の事務所
10
警察署、消防署、その他市長が指定する官公零の事琴所
11
漁業関係者の利便の用に供するための日用品の販売を主たる目的とする店舗、飲
食店その他市長が指定する便益施設
Ⅵ
1
バンカー港区を対象とした条例において許容される構築物
港湾法第 2 条第 5 項第 2 号から第 5 号まで及び第 8 号の 2 から第 10 号の 2 まで
に掲げる港湾施設
2
貯炭場、貯油施設その他の燃料保管施設
3
給炭業者、給油業者その他の燃料洪給業者の事務所
4
税関、地方整備局、地方運輸局、警察著、消防署その他市長が指定する官公署の
事務所
49
Ⅶ
保安港区を対象とした条例において許容される構築物
1
港湾法第 2 条第 5 項第 2 号から 6 号まで及び第 8 号の 2 から第 10 号の 2 までに
掲げる港湾施設
2
危険物置場、危険物倉庫及び貯油施設
3
消火施設その他の危険防止施設
4
給油業者及び危険物を取り扱う業者の事務所
5
警察署、消防著その他市長が指定する官公署の事務所
Ⅷ
1
マリーナ港区を対象とした条例において許容される構築物
港湾法第 2 条第 5 項第 2 号から第 5 号まで及び第 7 号から第 10 号の 2 までに掲
げる港湾施設
2
スポーツ又はレクリエーションの用に供するヨット、モーターボート、釣り船、
遊覧船等(以下「レクリエーション用船舶」という。)のための用具倉庫及び船
舶上架施設
3
レクリエーション用船舶の利用者のための集会所、クラブ事務所、スポーツ、レ
クリエーション施設その他市長が指定する福利厚生施設
4
海上保安官署、警察署、消防署その他市長が指定する官公署の事務所
5
レクリエーション用船舶の利用者の利便の用に供するための旅館、ホテル、
・店舗、
飲食店その他市長が指定する便益施設
Ⅸ
1
修景厚生港区を対象とした条例において許容される棉築物
港湾法第 2 条第 5 項第 2 号から第 5 号まで及び第 8 号の 2 から第 10 号の 2 まで
に掲げる港湾撼設
2
’
港湾その他の海事に関する理解の増進を図るための図書館、博物館、水族館、展
示施設、公会堂、展望施設その他市長が指定するこれらに類する施設
3
港湾関係者のためのスポーツ・レクリエーション施設その他市長が指定する福利
厚生施設
4
海上保安官署、警察署、消防署ぞの他市長が指定する官公署の事務所
5
港湾関係者のための休泊所、店舗、飲食店その他市長が指定する便益施設
○ボストンの臨港地区に適用される市街設計ガイドライン
ボストンの臨港地区に相当するハーバーパーク地区に適用される市街設計ガイドラ
インを、都市計画法に相当するゾーニングコードの中に定めている。以下にそれを紹介
する。
第42A−8条
市街設計ガイドライン
50
この第42A-8 条は、本条が対象とするハーバーパーク地区における市街設計のガイド
ラインを定める。
1.新規開発と再開発に当たっては、市街地水辺の伝統的な形式、高さ、容積を踏襲し
なければならない。
2.建物と空間は、視野と歩行者動線を水面に向けるものでなくてはならない。
3.桟橋上の建築物は桟橋の幾何学形状を補強するように配置し、水辺に近い建物は水
辺に連続壁を作るようなことが無いように容積制限される。
4.内陸の建築物は、街路の形式を補強し、視界と通路を確保することにより水辺に平
行な連続壁を作らないように配置する。特に横断方向の街路は要注意。
5.建築物は、開けた海に向かって視界と通路を確保し、桟橋の終端のパブリックアク
セスやオープンスペースからの視界を確保するように配置する。
視界上にまたがるアーチ状通路は、アーチは幅40フィート、トップの高さ40フィート
以上あって、景観設計がなされ、視界を妨げない方向に配置され、設計されている場合
には、このガイドラインに反しているとは考えない。
6.地域内の建築物は、水辺に向かって徐々に高さを低くしていく。
7.桟橋先端の空地や建物は、公衆を水辺に誘うために水面への視野が開けアメニティ
豊かな空間を提供するものでなくてはならない。
8.建物の配置は、市内の大気を良質に保つ効果のある海からの空気の流れを助長する
ものでなくてはならない。
9.空地、建物の入り口、商店の間口、ショーウインドウ、テラス、庭、アーケード、
およびこれに類する施設は、歩行者がウォーターフロントに近づき楽しむ事を助ける構
造に設計しなければならない。歩道に面したところに入り口も窓もないのっぺらぼうの
壁を設けることは、設計上可能な限り避けなければならない。
10.ファサード、壁材および詳細設計は、伝統的なボストンにおけるウォーターフロ
ント整備の形を尊重したものでなくてはならない。
11.セットバック、角の処理その他の設計を工夫して建物が圧迫感を与えないようにす
べきであり、建物の装飾は都市およびウォーターフロントの全体としてのデザインと整
合性の取れたものが推奨される。
12.ビルの屋根は、屋根の構造および屋上に設けられるペントハウスが視覚的に目立た
ないようにすべきであり、ペントハウスは人が利用する設計としてはならない。
13.企画されるプロジェクトでは、以下の対策を施すことにより、歩行者のための環境
の質を高めるようにすべきである。(a)ウォーターフロントに繋がる歩道を整備し、
必要がある場合には大量交通機関とウォーターフロントを結ぶ歩道を設ける。(b)歩
行者の活動とパブリックアートのための空間を設ける。(c)歩行者空間およびウォー
ターフロント環境を良くするため、ベンチ、彫刻等の小物、照明を配置し、景観設計に
気を配る。
(d)歩行経路を工夫し、車による移動よりも歩行による移動をし易くする。
51
(e)その他ウォーターフロントおよびボストン港に近づきやすくする工夫をする。
(f)プロジェクト区域内の歩行空間の適切な維持管理体制を持つ。
14.上記の対策の他、プロジェクトの設計においては、ハーバーパークの中における対
象地区の位置の特性に配慮すべきである。例えば、港の開けた眺望とか既存の歴史的な
構造物を補強活用するとか。新たな開発は、ハーバーパーク地区計画で設定されている
設計ガイドラインと整合が取れていなければならない。(1996年5月9日改定)
○「みなとみらい21地区街並み景観ガイドライン」横浜市港湾局臨海事業部事業計画
課
■策定の趣旨
新港地区は、横浜市の都心臨海部の再整備を目的とする「みなとみらい 21 地区」の
中にあっても、わが国初の近代的埠頭として建設され、隣接する関内地区の「みなとま
ち界隈」を形成してきた歴史性を継承した、特色ある市街地の形成を目指す。
このガイドラインは、新港地区(象の鼻地区については別に定める)の街づくりに参
加するすべての事業者が協力して、良好な術並みを形成して行くための基本的な考え方
を示したものである。
この「街並み景観ガイドライン」により、新港地区を新しい時代の都心にふさわしい
「楽しく」
「優しく」
「美しい」空間として形成して行きたいと考えている。
● 新港地区の個性と街づくりの考え方
■
地区の個性
新港地区は都心臨海部の中でも独自の豊かな個性を持っています。
①
近代港湾発祥の地としての歴史性
:みなとまちらしい風景
:歴史資産とその活用
:背後の関内市街地からの術並みの連担性
②
“島”としての個性
:独自の領域性、橋によるアプローチ
:水辺の開放感、「海」が介在する風景
③
みなとみらい21中央地区と関内・山下地区の結節点
:開港以来の市街地(関内)と新しい市術地(みなとみらい 21)の結節点
:臨港パークから山下公園へのウォーターフロントの拘遊動線の中心
④
都心臨海部の回遊ゾーンの中心点
:多様な利用者、市民と遠来の観光客によるにぎわい
:多様なアフターコンベンションの提供
:赤レンガ倉庫、ワールドポーターズ、多彩な緑地等の魅力的な施設
■
街づくりの基本的な考え方
52
地区の個性をベースとして、次のような街づくりを進めます。
①
街の“楽しさ”を実現する。
21 世紀の横浜港を支える港湾関連施設や、貿易振興や国際交流に貢献する施設、
歴史性や静穏な内水面を活かした市民と港を結ぶ緑地等を整備し、にぎわいと楽しさ
あふれる街づくりを進めます。
②
街の“やさしさ”を実現する。
人々がゆったりと心地よく回遊できるよう、広幅員で段差の少ない歩道や水際線を
巡るプロムナード等を整備するとともに、わかりやすい誘導サインの設置など、人に
優しい術づくりを進めます。
③
街の”美しさ“を実現する。
みなとの情景を演出し、歴史と景観に配慮した魅力あふれる美しい街並み空間を形
成します。
■
基盤整備
街づくりの基盤整備は、次のように計画しています。
①
道路計画
中央部を走る臨港幹線道路と地区内道路により、周辺地域との円滑な接続を図ると
ともに、街区形成が適切に行えるよう配置しています。
:臨港幹線道路(新港∼山内間・延長 2.2km)を整備します。
:地区内道路(延長 2.8km)を整備します。
②
緑地計画・歩行者ネットワーク
新港地区の総面積約 41ha のうち、37%にあたる約 15ha を水際線に面する緑地と
して確保しています。
桜木町駅からの歩行者動線となる「汽車道」のほか、赤レンガパーク(6.9ha)、
新港パーク(1.7ha)、運河パーク(1.0ha)などを配置し、それぞれを水際線プ
ロムナードで結ぶとともに、みなとみらい 21 中央地区の臨港パ←クから山下公園に
つながるウォーターフロントに、緑の歩行者ネットワークを形成します。
③
その他の輸送計画
バス路線を確保するほか、水上交通の検討も進めています。
④
シーブルー計画
シーブルー事業により、周辺海域の底質を改善し、水質の浄化と生態系の回復を進
めています。
■
街並み形成の要素
新港地区には、次のような街並み形成の要素(資源)があります。
*空間の骨格
:空間形成の 4 つの軸
・万国橋軸・汽車道軸・水際線プロムナード軸・象の鼻、パシフィコ軸
53
:個性的な 6 つの水面
・大岡川河口水域・郵船プール・新港パ−ク前面・象の鼻水面
・赤レンがパ−ク前面・新港突堤間スリップ
:遺された歴史資産
・赤レンが倉庫・ハンマーヘッドクレーン
・岸壁、護岸、舗石、鉄道レール、プラットフォーム等
:水際の緑
・赤レンガパ−ク・新港パ−ク・運河パ−ク等
*街に活動する多様な人々
:働く人々、観光客、市民の訪れ
*多様なアクセスルート
:3 つの橋
・万国橋・新港橋・国際橋
:汽車道
:海からのアクセス
*変化に喜んだ風景
:海を見る
:海を介して街を見る
:歴史を見る
:船を見る
■
空間形成の基本方針
街並み形成の要素をもとに街並み空間の目標を立て、魅力にあふれる街づくりを展開
します。
<みなとの情景の演出>
:みなとまちらしさを持ったゆったりとした街並みを目指します。
:多様な水辺への接点を持ち、海や船の見える風景を演出します。
:「島」としてのまとまりを持った街並みを目指します。
<歴史の継承>
:「赤レンガ倉庫」に象徴される歴史性を意識したデザインを展開します。
:関内、馬車道、日本大通り、みなとみらい 21 中央地区との関連性を意識したデザイ
ンを展開します。
<ヒューマンスケール>
:通りに沿った建物の高さを抑制します。
:建物低層部ににぎわい施設を設け、楽しく回遊できるネットワ}クを形成します。
:外壁後退により、シンボル空間、通景空間を確保します。
:水際に沿って広場を設け、海との密接な係わりを生み出します。
54
■
空間形成の基本方針と誘導の方向性
空間形成の基本方針
《みなとの情景の演出》
誘導の方向
*建物高さに関する事項
:建物高さの誘導
・ゆったりとした術並み
・海や船の見える風景
*空地の確保に関する事項
:水際線に沿った広場の確保
・
「島」としての領域感
:通景空間の確保
《歴史の縦承》
・赤レンガヘのこだわり
*荷並み形成に関する事項
:外壁後退
・周辺市街地とのつながり
:建物低層部の機能、形態誘導
《ヒューマンスケール》
・適切な建物スケール感
*建物のスケール感、デザインに関す事項
・低層部のにぎわい施設設置
:建物のスケール感の誘導
・シンボル空間、通景空間の確保
:素材、色調等の誘導
・海への接点
*その他の景観形成要素
:屋外広告物
:屋上、駐車場・駐輪施設
:夜間景観
:暫定土地利用
■
建物高さに関する事項
◎基本目標
・ゆったりとした街並みを実現するために、建物高さを抑制した街並みを目指す。
・建物高さは中央地区と同様に内陸から海に向かって徐々に低減させ、街の奥深くまで
海が感じられるように配慮する。
・水際に面する部分は、建物高さを低くし、海辺の開放感を演出する。
・特定の街路(軸)沿いでは、建物の最高高さとともに軒高も誘導し、より印象的な街
並みを創りだす。
◎誘導指針
①建物の最高高さ
・臨遵幹線道路から関内地区側は、建物最高高さを 31m とする。
:ただし、用途上やむをえず、景観形成上も適切である場合には、高さの限度を
45m とすることができる。
・臨港幹線道路から海側については、建物最高高さを 20m とする。
:ただし、用途上やむをえず、景覿形成上も適切である場合には、高さの限度を
31m とすることができる。
・両突堤内については、建物最高高さを 20m とする。
②
水際に面する部分の高さ
55
・水際に面する街区の開発では、海辺の開放感を演出するため、建物高さを低く抑え
る。
:水際線プロムナード境界から奥行き 10m の範囲の建物高さ 10m
③
万国橋軸の軒高とデザインの誘導
・新港 3 号線(万国橋通り)沿いの街区では、万国橋抽に面する建物軒高を 20m 程
度に統一する。
■
空間確保に関する事項
◎基本目標
・水際線に沿った街区では、水際に広場空間を確保し、ゆったりとした街の雰囲気を
つくり出す。
・歴史的または景観的な通景空間を確保するために、適切な空地の確保を誘導する。
◎誘導指針
①
水際線に沿った広場の確保
・水際線に沿った街区では、プロムナードと一体となった広場を設ける。
②通景空間の確保
・歴史的な軸(汽車道軸)に沿って通景空間を設ける。
:汽車道軸から赤レンガ倉庫へのビスタ空間
・中央地区から赤レンガ倉庫や大さん橋が望めるよう、各街区内で適切な空間確保を
行う。
■
街並み形成に関する事項
◎基本目標
・骨格となる街路沿いは、外壁後退により風格ある都市軸の形成を目指す。
・街の活気を生み、また調和のとれた街並みを形成するために、建物の低層部の機能
や形態および外構について誘導する。
◎誘導指針
①外壁後退
・新港 3 号線(万国橋通り)に沿った両側の街区では、5m の外壁後退(セットバッ
ク)を行う。
:並木は、4 列植栽により緑豊かな街路空間を形成する。
②低層部の機能・形態
・建物の低層部においては、街に活気を生み出すための機能的、形態的配慮を行う。
:低層部における市民利用機能の導入(アクティビティフロア)
:コロネードの設置などによるセミパブリック空間の充実
③外構整備
・敷地内の外構整備においては、道路等の公共空間と調和するよう配慮する。
:街路樹と調和のとれた樹木による植栽
56
:歩道の舗装材と調和のとれた素材と舗装パターン
・垣または柵の設置については、管理上必要最小限の範囲とし、開放性のある生け垣
やフェンス等により景覿に配慮する。
■建物のスケール感・デザインに関する事項
◎基本目標
・中層を主体とした建物による街並み形成を目指して、建物のスケール感をヒューマン
なものとなるよう誘導する。
・まとまりを持った街の雰囲気を目指し、建物外壁の素材・色調を誘導する。
◎誘導指針
①建物の分節化
・建物のスケール感を小さく抑えて、全体にヒューマンなスケールの術並みを形成する。
:全体のバランスを考慮しながら、建物の分節化を誘導する。
②建物の素材・色調
・地区の歴史性を縦承し、また周辺市街地と調和した街並みを形成するため、建物の素
材・色調を誘導する。
:レンガを基調とした素材・色調の選択
:風格、みなとまち界隈を演出する素材・色調の選択
■
その他の景観形成要素:屋外広告物に関する事項
◎基本目標
・屋外広告物の氾濫による街並み景観の混乱を防止するよう誘導します。
・建物の外壁等に設置されるビルサインについても、景観形成に留意するよう誘導しま
す。
◎誘導指針
①屋外広告物の誘導
・屋外広告物の氾濫を抑制し、質の高い街並み空間を実現する。
:壁面利用の広告物の規模限定
:屋上や屋根上部への広告物の設置禁止
:低層部(2 階まで)以外の袖看板の禁止
:通行の障害となるような独立型看板の禁止
:建物高層部(3 階以上)の窓ガラスを利用した広告物の設置禁止
②建物サインの誘導
・建物の外壁等に設置するサイン(ビルサイン)については、術並みの景観形成に資す
るよう誘導する。
:ビルサインの種類の限定(企業、建物所有者、建物、施設名称に限定)
:ビルサインの設置位置、大きさ等の制限
:ビルサインの色彩、照明方法等の誘導
57
上記の誘導に関しては、原則としてみなとみらい 21 中央地区の協定等を準用する。
■
その他の景観形成要素:屋上デザインおよび駐車場・駐輪施設に関する事項
◎基本目標
・ 周辺の高層建物から見下ろされる建物屋上のデザインについては、きめ細かい配慮
をします。
・ 駐車場、駐輪施設の位置、形態等について、街のたたずまいと調和したあり方を誘
導します。
◎誘導指針
①
屋上デザインの誘導
・屋上に構造物等を設置する場合は、修景的配慮を行う。
:機繊設備等の露出の禁止
・屋上は、積極的に緑化するなどデザイン的配慮を行う。
②
駐車場の誘導
・敷地内に付置義務等による必要な台数の駐車場を確保する。
・道路に応じて、駐車場へのアクセスを制限する.
:交通処理上やむをえない場合を除き、新港 3 号線(万国橋通り)および臨港幹線
道路側道からの駐車場アクセスは制限する。
・駐車場の形態についての誘導を行う。
:青空駐車場を設置する場合には緑化等により充分な修景的配慮を行う。
:立体駐車場は、壁面の色、デザイン、外周縁化等に配慮する。
③
駐輪施設の誘導
・敷地内には、景観に配慮し、充分な来訪者用および従業員用の駐輪場を設置する。
■ その他の景観形成要素:夜間景観の演出等の関する事項
◎基本目標
・夜間の街のにぎわいと楽しさ、美しさを実現するため、安全性を確保するとともに魅
力的な夜間景観の演出を誘導します。
◎誘導指針
①
安全性の確保
・敷地内には、道路照明と調和のとれた灯具を設置し、安全な照度を確保する。
②
夜間景観の演出
・海からの眺望、周辺の高層建物から見下ろされる景観に配慮し、魅力的な夜間景観の
演出を行う。
:水際の広場や通景空間、建物低層部のセミパブリック空間の演出
:赤レンガ倉庫等、ランドマークとなる建物のライトアップ
■ その他の景観形成要素:暫定土地利用の場合の準用
◎基本目標
58
・暫定的な土地利用を行う場合にも、この指針の趣旨を尊重します。
・この指針に規定する誘導項目については、暫定土地利用にあっても準用します。
■ 道路のデザイン
みなとの情景を演出し、人に優しい街を実現するために、すべての人が快適に目的
地に到達できるような道路空間を整備します。
<植
栽>
歩道には原則として連続植栽帯を設けます。
・低木:ツツジ等の花木により、季節感を演出します。
・高木:街路の性格に応じて、ユリノキ、イチョウ、クスを配置します。
幹線街路:周辺地区とのつながりに配慮し、臨港幹線(側道)にはクスを、新
港 3 号線(万国橋通り)にはイチョウを配置します。
地区内街路:新港ふ頭にゆかりのあるユリノキを基本樹木として、
「島」とし
てのまとまった緑の環境を演出します。
<照
明>
幅員が広い街路は、原則として車道照明と歩道照明を分離して設置します。
・車道照明:みなとみらい 21 地区としての整合を図るため、中央地区と同型のハイウ
ェイ灯を設置します。
・歩道照明:地区の個性を演出するために、かつて新港ふ頭で使われていた照明をモチ
ーフに新たにデザインした照明を設置します。
<歩道舗装>
術路の性格に応じた舗装材料を用います。
・幹線街路:周辺地区とのつながりに配慮し、臨港幹線(側道)は石と擬石平板ブロッ
ク、新港 3 号線(万国橋通り)はレンガで舗装します。
・地区内街路:
「島」としてのまとまりを意識し、シンプルな土系平板ブロックで舗装
します。
■ 街並み形成の手続
このガイドラインは、新港地区の街づくりに参加するすべての事業者が協力して、良
好な街並みを形成して行くための基本的な考え方をまとめたものです。
街区を開発しようとする方は、確認申請等各種の法的な手続きを行う前に、港湾局臨
海事業部事業計画課を窓口として関係官庁及び横浜市の関連局区、専門家等で組織する
「新港地区街並み景観調整会議」と協議を行うようお願いします。また着手後、協議内
容の変更を行う場合には、再協議をお願いします。
○
「みなとみらい21街づくり基本協定」協定書目次
協定書は、ウエブサイ(http://www.minatomirai21.com/development/pdf/agreement.pdf)
からダウンロードできる。以下に目次だけ紹介する。
59
目
次
はじめに・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・04
第1条基本協定の趣旨・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・05
1.基本協定の目的
2.基本協定の位置づけ
第2条協定の締結・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・05
1.協定の締結
2.効力の承継
第3条協定の変更及び廃止・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・05
第4条協定の区域・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・05
第5条街づくりの基本方針・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・06
1.街づくりのテーマ
2.土地利用イメージ
3.街づくりの基本的要素
・都心住宅
・水と緑
・スカイライン・街並・ビスタ
・コモンスペース
・アクティビティフロア
・色調・広告物
・駐車場・駐輪場
第6条建物用途・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・08
1.建物用途
2.都心住
第7条建築物等の基準・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・08
1.最小敷地規模
2.スカイライン
3.ペデストリアンネットワーク
4.外壁後退
5.駐車場
6.広告物
第8条都市管理項目・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・10
1.都市システムの利用
2.高度情報化への対応
3.都市防災等への配慮
4.バリアフリー社会への配慮
60
5.環境への配慮
6.周辺市街地への配慮
7.リサイクル社会への対応
8.交通円滑化への対応
9.その他
第9条住宅の場合の特例・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・11
第10条協定の運営・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・11
1.協議会の設置
2.協議会の役割
3.協議会の事務局
第11条協議会への届出・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・11
1.街づくり行為の届出
2.土地の所有者等の届出
第12条暫定土地利用・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・11
第13条協定の有効期間等・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・11
MM21 では、上記基本協定の下に各種「基準」「細則」「指針」及びガイドラインが制
定されている。その名称だけ次に挙げる。
・建築物色彩計画規準
・ペデストリアンデッキ設置指針
・ペデストリアンウェイの位置の取り扱いについて
・駐車場共同利用化に関する指針・
・ビルサイン計画規準、および同解説・
・独立広告物設置規準、および同解説
・防災細則
・暫定土地利用規準
・敷地分割に関する指針
・街づくり基本協定ガイドプラン
・ストリートファニチュアイントロダクション、および同ガイドプラン
・光のガイドプラン
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カナダセントジョーンのマネージメント体制
セントジョーン市は、カナダ東部のブランズウィック州最大の都市で、モントリオー
ル及びニューヨークから1000km前後のところに位置する。グレーターセントジョーンの
人口は12.5万人、50km圏内の人口は18万人、二時間圏内は40万人の人口である。セント
ジョーン市では、市街地に隣接した港湾を含む臨海部の整備と再開発に取り組み始め
たところである。両側の隣接地を含めると対象水際線は10kmに近い。
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1999年にウォーターフロント戦略計画という基本計画を策定した。ウォーターフロン
トの現状分析から港湾機能についてまで整理し、開発に当たっての基本方針を設定して
いる。内容は臨海部を24の地区に分けてそれぞれ整備項目を列挙している。この計画は、
セントジョーン開発公社がコンサルタントからなるチームに作らせた。計画策定に当た
っては官民の利害関係者及び市民との協議をできるだけ繰り返した。計画は、9章から
なる93ペーの報告書に纏められている。そして2001年1月15日市議会において、計画の
実施に向けたセントジョーンウォーターフロント開発事務局が設立された。今年5月、
最初のプロジェクトして、中心市街地沿いの水際線における緑道とオープンスペースの
実施計画について、公募提案の中から採用案を決定し、現在整備財源の募集中である。
1.2 体制
ウォーターフロント開発に特化した業務を担当する事務局は、3年分の出資金を財源
として活動している。出資者とその割合は、1カナダドル100円とし、
・セントジョーン市
28万円、
・セントジョーン開発公社
7.5百万円、
・アップタウンセントジョーン株式会社4.5百万円、
・セントジョーン企業局
4.5百万円、
・セントジョーン商工会
4.5百万円、
・セントジョーン港務局
4.5百万円
計53.5百万円でスタートしている。出資団体は、全て公的性格を持った団体であるり、
市が50%以上出資していることになる。この組織は、投資をする組織ではない。専従者
をおいて基本計画を実現するために必要な準備と各種調整業務を担当し、セントジョー
ン開発公社の実施部門と市議会を補佐する役割である。
事務局には、市長をはじめ各出資団体の長並びに市とセントジョーン開発公社からそ
れぞれもう1名ずつの7名からなる委員会を設置している。この委員会のもとに10の専
門部会を設けて、それぞれ細部を担当している。
・芸術、文化、遺産
・コーストガード跡地問題
・臨港緑道
・ランティック製糖工場跡地問題
・マスタープラン
・広報、ホームページ
・パートリッジ島活用計画
・小型船施設
・観光
・ウォーター通り(臨港道路)交通問題
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