施設園芸へのヒートポンプ適用に関する研究 背景と目的 農林⽔産業では、価格変動のリスクが大きく、経営予 測が⽴てにくい⽯油依存からの脱却が大きな課題となっ ています。ヒートポンプは、エネルギーの使⽤量が多い 施設園芸分野で脱⽯油の有⼒な省エネツールと位置づけ られ、国の施策でもその普及を図っています。しかし、 暖房期間が⻑い東北は⽯油価格変動の影響を受けやすい ものの、多雪寒冷地という気象条件であるがゆえに、ヒ ートポンプの導入が進んでいないのが現状です。 そこで、ヒートポンプ導入効果の評価や導入におけ る課題抽出のため、実際の栽培施設(図 1)に計測機器 を設置させていただいて、ヒートポンプの利⽤状況の 実態調査を⾏っています。 ハイブリッド暖房 ⼀般にヒートポンプを暖房に利⽤する場合、経済性 の面から、暖房のすべてをヒートポンプだけで賄うの ではなく、ヒートポンプを暖房のベースとして最大暖 房負荷の半分程度を賄い、外気温が下がりヒートポン プだけでは温度を確保できなくなったときは⽯油暖房 で補うハイブリッド方式が採⽤されています(図 2)。 図 1 計測施設(約 5,300 ㎡の大型ユリ栽培ハウス) 上:栽培の様子 下:ヒートポンプ室内機(上)と石油暖房機(下) 調査の概要 岩手県盛岡市のユリ栽培施設において、環境として 温度と湿度を、エネルギーとしてヒートポンプの電⼒ 使⽤量と⽯油暖房機の重油使⽤量を計測しました。 その結果、多雪寒冷地のハイブリッド暖房における暖 房機器の稼動パターンやヒートポンプの特性を把握し (図 3) 、重油使⽤量の削減効果が得られることを確認し ました。また、ヒートポンプの冷房利⽤により、夏の高 温期に品質向上効果が期待できることもわかりました。 外気温(℃) ハウス内設定温度 ヒートポンプ 石油暖房 ヒートポンプ能力限界 1 夕方 3 5 7 石油暖房運転時間帯 ヒートポンプ運転時間帯 9 朝 図 3 実際に計測した外気温と暖房機器の稼働 パターン(ハウス設定温度は 15℃) ヒートポンプ 重油暖房機 図 2 ハイブリッド暖房の運転パターン ヒートポンプをベースに運転し、ヒートポンプだけでは温 度を確保できなくなると重油暖房機が稼動する。 38 研究開発レポート 2015 担当 : お客さま提案部 研究開発センター
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