第4章 利用の可能性 4−1 スラグ発生量と道路路盤材としての需要の対比 焼却灰溶融スラグと需要の対比については、実際どの程度路盤材に混合材料として混ぜ られるのかということになってくる。しかし、安全性、品質これらのことをクリアーする 段階での混合でなければ使用できない。これらのことをを実証するため、C−40 を使用し、 あらかじめ適当な配合比を決め、試験をおこなったものを表4−1に示す。 表4−1 路盤材としての配合試験1) 配合比 1 100 配合区分 C−40 焼却灰溶融スラグ 合成粒 度(%) 2 3 4 5 75 50 25 25 50 75 100 100 96.8 97.6 68.4 76.3 43.8 57.2 31.3 45.6 18.9 31.3 5.3 5.8 3.1 2.7 2.2 2.4 2.185 2.128 78 53 100 98.4 84.2 70.5 59.9 43.7 6.3 2.3 2.6 2.017 40 100 99.2 92.1 83.8 74.1 56 6.7 1.9 6.5 1.861 34 0 ア ス ファル ト舗装要綱基準 0 下層路盤 上層路盤 100 53 (mm) 37.5 31.5 19 9.5 4.75 2.36 0.425 0.075 最適含水比(%) 最大乾燥密度(g/cm3) 修正CBR(%) 100 95〜100 55〜85 − 15〜45 5〜30 100 97.1 88.4 68.4 7.2 1.4 11 1.704 20 20以上 100 95〜100 60〜90 − 30〜65 20〜50 10〜30 2〜10 80以上 下層路盤用材料粒度としては、一般に粒度範囲は限定していないものの締固めのしやす さ等を考えると、M−30 の粒度範囲が望ましいと考え、この範囲でスラグの使用量ができ るだけ多くなる配合として、C−40 と焼却灰溶融スラグの比率を 50:50 とする。また、 上層路盤としてはどの範囲でも修正CBRが満足していないが、粒度などがM−30 に最も 近い配合として、C−40 と焼却灰溶融スラグの比率を 75:25 として考える。 このことから平成 8 年度、9 年度に関しては道路路盤材を今回の規定で配合したとき表4− 2のようになる。 表4−2 路盤材の混合材として混ぜられる量とスラグ発生量の比較 (t) スラグ発生量 上層路盤量 下層路盤量 の25% の50% 合計 8年度 9年度 996 1,274 1,621 1,972 2,617 3,246 16 6,347 6,716 平成 8 年度の道路路盤材としての需要 > 平成 8 年度のスラグの発生量 平成 9 年度の道路路盤材としての需要 > 平成 9 年度のスラグの発生量 このことから、一般廃棄物を焼却した後に出る焼却灰溶融スラグは道路路盤材としての 利用が可能であることがわかる。現在、それほど実用という点ではまだ試験的ではあるが いろいろな都道府県で扱われはじめている。 次に各市町村での道路路盤材の使用量とスラグ発生量と比較する。道路路盤材量は配合 別に需要量を算出しスラグ発生量と比較する事にする。スラグ 25%というのはC−40:ス ラグが 75:25 で混ぜられている事を表す。この時、上層路盤については東京都などではス ラグを用いていないため下層路盤のみの需要に対してのみスラグとの比較をする。その結 果を次の表4−3に示す。 表4−3 市町村名 大津市 志賀町 彦根市 近江八幡市 草津市 守山市 栗東町 新旭町 米原町 近江町 山東町 長浜市 びわ町 虎姫町 湖北町 浅井町 伊吹町 高月町 能登川町 安土町 五個荘町 八日市市 竜王町 蒲生町 日野町 永源寺町 配合別のスラグの推定需要量 推定需要量(t ) スラグ25% スラグ50% スラグ75% 1758 3515 825 1649 988 1976 287 573 1574 3148 318 636 1296 2591 46 92 210 421 199 398 184 368 717 1433 741 1481 70 139 187 373 391 783 304 607 88 176 483 965 293 586 193 386 471 942 153 306 191 381 598 1195 60 120 17 スラグ発生量(t ) 5273 2474 2963 860 4722 953 3887 137 631 597 552 2150 2222 209 560 1174 911 264 1448 879 579 1413 460 572 1793 180 スラグ100% 7031 3299 3951 1147 6296 1271 5183 183 841 796 736 2867 2963 279 747 1565 1215 352 1930 1172 772 1885 613 762 2390 240 15834 833 6347 3632 4619 2944 3343 917 454 264 249 2994 148 321 168 240 119 225 707 333 345 1895 366 706 626 150 マキノ町 今津町 安曇川町 朽木村 高島町 石部町 甲西町 水口町 土山町 甲賀町 甲南町 信楽町 多賀町 甲良町 豊郷町 秦荘町 愛知川町 湖東町 愛東町 中主町 野洲町 余呉町 木之本町 西浅井町 合計 0 142 430 21 42 453 603 700 54 678 122 180 685 46 120 521 49 230 34 50 176 124 363 93 18539 0 284 861 42 84 906 1207 1400 109 1355 243 360 1369 91 241 1042 99 459 68 100 353 247 727 187 37077 0 427 1291 63 126 1359 1810 2100 163 2033 365 540 2054 137 361 1563 148 689 103 149 529 371 1090 280 55616 0 569 1721 84 168 1812 2414 2800 217 2710 487 720 2738 183 481 2085 198 919 137 199 705 495 1454 374 74155 387 580 515 105 224 383 1720 1409 397 216 499 889 224 248 236 174 291 166 82 663 1665 188 397 270 60707 以上の結果からもし仮に滋賀県において 100%焼却灰溶融スラグを有効利用することに なれば現状では需要を満たす事が少しできないというだけその外の場合においては有効で あるということがこの表からわかる。現状において 100%頼るということは、考えにくいた めこの結果は、かなり期待できる結果である。これは、東京都などが実際の混合率が 5%ぐ らいであることから 100%は難しいのではと考えたため。しかし、ごみの総量から出るスラ グを完全に使用するということになると約 80%以上での混合率でのみでしか利用しないと いけないことになる。 4−2 安全面などの質からみたとき 路盤は道路舗装の一部であり、表層からの荷重を支持し分散させ路床に伝える重要な役 割を果たしている。 溶融スラグを路盤材として利用する場合、各種試験を行う。現在、焼却灰溶融スラグに 関する規格、基準というものがないため、道路用砕石としての規格、JIS A5001,5015 に 定められている項目及び規格値をクリアーしていることを使用条件としている。 18 東京都の試験結果の例をあげてみると、路盤材として利用する場合、強度の問題が一番 の問題である。試験結果から表乾比重、吸水率に関しては道路用砕石の基準値を満足して いたのだが、すりへり減量等の強度的項目が不足していた。試験結果を表4−4に示す。 表4−4 試験結果2) 材料名称 比重 見掛比重 表乾比重 かさ比重 吸水率(%) すりへり減量(%) 修正CBR(%) Sスラグ Tスラグ 砕石基準値 2.816 2.697 2.45以上 2.738 2.655 2.694 2.629 1.6 0.97 3.0以下 79.1 − 40以下 20 − 20以上 Sスラグ:表面溶融炉によるスラグ Tスラグ:電気溶融炉によるスラグ スラグについて単体での利用については少し問題点が挙げられる。この程度のものなら ば、適当な安定処理または他の材料と混合する事によって補えるだろう。 年間約2億トンの需要が見込まれる路盤材に1%でも利用すれば約200万トンの利用 となるため、これから先、不可欠なリサイクル方法の一つになる。 4−3 手続き、制度上の問題からみたとき 彦根市における現在の道路路盤材としての焼却灰溶融スラグの混合路盤材は使われては いない。しかし、道路路盤材として扱う路盤材に関しては、再生ものつまりRC−30、40 の使用を強く推し進めている。このことは図4−1、4−2に示す。 19 8年度 0% 22% RC−40 RC−30 C−30 78% 図4−1 9年度 17% 1% RC−40 RC−30 C−30 82% 図4−2 彦根市においてはっきりわかったことはあまり焼却灰溶融スラグのことは知られていな かった。そこで、これから先どのような段階をふんで利用にまで進んでいくのかを実際に 焼却灰の減容化・資源化利用に研究しおこなっている都市を例に考えていく。このことは、 広く社会の各分野に調査の目を向け、顕在的分野のみならず、潜在的分野における焼却灰 溶融スラグの活用について調査研究することが大切となる。 これから調べていく上で、平成 8 年に実施された調査によると、平成 7 年度の焼却灰溶 融スラグの発生量は約 10 万 t で、そのうちの 1/4 にあたる約 2.5 万 t が有効利用されてい る。主な有効利用用途としては、埋戻し材、下層路盤、アスファルト骨材、セメント原料、 インターロッキングブロックなどがあげられている。 20 4−3−1 調査内容2) (1)再生利用部門の調査 ①利用方法・製品化方法(市販材料を含めて) ②利用規格、基準 ③市場価格 ④流通経路 ⑤需要性 ⑥焼却灰溶融スラグを利用した場合の特徴、問題点 ⑦その他 また、利用用途に関しては、以下の様なものが考えられる。 ①道路部門:路盤材、アスファルト骨材、インターロッキングブロック、コンクリー ト平板 ②建築部門:セメント材料、レンガ、タイル、ロックウール ③建設部門:コンクリート骨材、人口土壌、サンドブラスト、フューム管 ④海浜部門:人口砂浜、防波堤材料 ⑤海運部門:船舶バラスト ⑥園芸部門:植木鉢、鉢植え物の土壌 (2)焼却灰溶融スラグの作成及び溶出、強度試験 (1)の中から可能性のある用途について、その対象に絞って、処理センターか排出さ れた焼却灰溶融スラグを作成する。 (用途に応じて下記から選択) ①溶出試験:環境庁告示 13 号及び環境庁告示 46 号に基づき、溶出試験を実施する。 ②物理・力学的試験:比重、単位容積質量、吸水率、すりへり減量、修正 CBR、一軸 圧縮強さ、水浸膨張比、洗い損失量、粒度の物理的・力学的試験を実施する。 (3)焼却灰溶融スラグの利用品作成 利用用途の概要と利用状況及びスラグの強度試験調査結果から、技術面、経済性、安 全性等を考えた上で、利用用途をさらに選定し、焼却灰溶融スラグを用いた利用品を 作成する。 (4)フィールド調査 利用品の供用性について検討する。 (5)利用品の市場性及び継続性等の調査 利用品の利用状況、市場価格、需要量を調査し、その市場性と継続性について検討す る。 4−3−2 流通経路、市場価格、需要性の調査2) 平成6年度の骨材の需要量が 8.5 億tに対し道路用骨材として 2.9 億tが使われている。 一般に、道路用骨材として用いられるものには、砕石、砂利、砂などがあげられる。市場 21 価格においては全国でかなりの価格差がある。そこで、それらの流通経路を調べ市場価格 差の原因をしらべる。 ・砂利、砂の流通経路 生産業者と建設業者の間で直接取引きが行われる場合と販売業者(建材店)、商社などが媒 介する場合がある。 ・砕石の流通経路 一般的には砕石生産業者と建設業者の直接取引きであり、流通量の多い大都市圏では、 販売業者が媒介することもある。輸送方法では、ダンプトラックが 9 割以上を占める。 実際の滋賀県におけるクラッシャラント(下層路盤材)、粒度調整砕石(上層路盤材)、再生 クラッシャラン(下層路盤材)、再生粒度調整砕石(上層路盤材)の市場価格を表4−5に示す。 表4−5道路路盤材の価格 (円/m3) クラッシャラン・粒度調整砕石3) クラッシャラン 粒度調整砕石 40〜0mm 30〜0mm 40〜0mm 30〜0mm 25〜0mm 大津市 彦根市 長浜市 2,800 2,650 2,600 2,800 2,650 2,600 2,900 2,850 2,750 2,900 2,850 2,750 2,900 2,850 2,750 道路路盤材の価格 再生クラッシャラン・再生粒度調整砕石3)(円/m3) 品種 滋賀 大津市 再生クラッシャラン 2,000 再生粒度調整砕石 − 彦根市 − − 長浜市 − − 彦根市における道路路盤材の仕入先としては県内でまかなっていて、他府県からの運搬 はほとんどない。しかし、工事の現場への距離などで一定の業者からだけではなく路盤材 を使用することがある。価格を見てもわかるように再生路盤材のほうがかなり格安である また、環境への負荷を考えた場合、市が再生路盤材を進めていることが納得できる。しか し、再生路盤材には再生というだけあって実際あってはならない物が混じっていたりして いて非常に扱いにくいそうである。価格が安く、環境への負荷が少ないかも知れないが、 必要以上の、工事作業がおこなわれているのも事実である。そんな、砕石の生産量はバブ ル崩壊後減少傾向にある。全国レベルではあるが表4−6に示す。 22 表4−6 全国砕石生産量4) 単位:千t 平成6年 平成7年 424,287 410,325 139,521 129,005 24,799 24,065 合計 クラッシャラン 粒度調整砕石 4−3−3 焼却灰溶融スラグ各種試験 焼却灰溶融スラグの有効性について、また安全基準に達しているかを以下の試験をもと に調査する。 (1)物質収支 焼却灰を溶融したときの物質収支を調べる。 (2)スラグの溶出試験 スラグの無害性を確認するための溶出試験を行う。スラグを資源として利用するため の溶出基準は規定されていないため、埋立基準及び土壌環境基準をもとに基準を満足 しているかを確認する。 (3)スラグの材料試験 ①物理特性 a.比重試験:一般の土は、自然界の風化作用を絶えず受けている。よって風化に対 して抵抗力の高い鉱物が土を構成する。土は普通 2.6〜2.7 程度の比重 である。 b.吸水率試験:吸水率とは試料の間隙が絶対乾燥状態から表面乾燥飽水状態になる までに吸収する水量をいい、質量に対して百分率で示す。一般に硬 岩の吸収率は 10%以下である。 c.粒度試験:粗骨材、細骨材と粒度の違いについて測定する。 d.液性・塑性限界試験 e.単位容積重量及び実績率:試料を円筒形の容器の中に所定の方法で突き固めて入 れた時の単位体積当たりの質量をいう。絶乾状態であ ること。この体積と容器との比を実績量という。一般 的な骨材の単位容積重量及び実績率を表4−7に示す。 表4−7 普通骨材 軽量骨材 一般的な単位容積重量及び実績率 細骨材 粗骨材 細骨材 粗骨材 単位容積重量(kgf /l ) 実績率(%) 1.500〜1.850 53〜73 1.550〜2.000 45〜70 0.800〜1.200 48〜72 0.650〜0.900 50〜70 23 ②力学特性 a.締固め試験:土は広範囲の粒径からなっていて、粗粒子は土粒子のかみあわせで 説明され、細粒子は電気的な力で説明されている。土全体で考える と密度が大きくなれば、強度も大きくなるということである。よっ て締固めの条件を一定にし、突固めることによって一般に最大の乾 燥密度が得られる含水比を知ることができ、これによって乾燥密度 の境界を知ることができる。 b.修正CBR試験:路盤材料の評価や選定のために用いるCBRを求めるための試 験。修正CBRとは現場で期待されるCBRのことである。 CBR= 締固めた試料に貫入棒を 2.5mm 貫入するのに要した荷重(kg/cm2) 標準荷重 70(kg/cm2) (5mm 貫入の場合は 105kg/cm2) c.すりへり試験:この試験は、すりへり抵抗を要求される材料に使用可能かを調べ るために行う。試料と共に重さ 5000±25gの鋼球を円筒内に 12 個入れ、毎分 30〜33 回の回転数で 500 回転させ、1.7mm ふるい 通過した試料の質量の全質量に対する割合を調べる。 4−3−4 選定 これまでの調査、各種の試験結果をもとに道路路盤材の選定を行う。選定を行う上で ①スラグの種類(冷却方法) ②技術的問題 ③経済性 ④需給性(需給バランス) ⑤流通経路の検討及び可能性 ⑥規格・基準の検討 ⑦製品としての付加価値・PR 効果 などがあげられ、それらを総合的に判断し選定を行うことになる。 ここまで選定について考えてきたのだが、実際、彦根市においてではあるが、民間の業 者においてどのような風に選定されているのかを聞いてみると意外な返答が返ってきた。 私自身この研究をはじめとき、路盤材などのついては、業者による選定が当たり前である と思っていたのであるが、実際はそうではなかった。完璧に決められたプランの中での作 業のみが業者に課せられ、その決められた工事をどれだけ安く行えるかということが業者 には求められていたのである。工事プランは市または専門のコンサルタント業者によって きめられ、もし仮に、焼却灰溶融スラグを使いたい場合でも私道でも無理だろうとのこと だった。自宅の車庫の路盤に混ぜる事ぐらいであれば可能かも知れないともいわれた。 24 また、焼却灰溶融スラグの利用や再生路盤材の利用も県単位で、全く考え方が違い。滋 賀県の現在の道路路盤材はRC−40 が支流でC−40 の天然の物と比べると非常に扱いにく いとの事だった。 参考文献 1)川崎市 ごみ焼却灰溶融スラグ等の有効利用用途調査 報告書、pp47-65、川崎市 生活 環境局、平成 9 年度 2)焼却灰溶融スラグの有効利用マニュアル、70、東京都清掃局ごみ減量総合対策室、平 成 9 年度 3)積算資料 12 月号 通巻 933 号、pp78−85、財団法人 経済調査会、1998 4)砕石統計年報、121 社団法人 通産統計協会 通産産業大臣官房調査統計部、1998 25
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