15周年特別企画競合資金難業績不振しがらみすべて打破！起業家歩みを進めれば壁にぶつかるのが起業家人生。それを乗り越え続けなければ生き残れないのがビジネスの世界。そんなデットレースに勝ち残ったわずかな勝利者たち、その背後には壮絶な物語が必ずある。その物語はまた新たな挑戦者たちを鼓舞するだろう。起業家100人の難局突破物語をとくとご覧あれ。 010 【第１部】経営難打ち勝った辣腕経営者24人の成功秘話 027 【第２部】裸一貫からのし上がる豪腕社長46人の立身出世伝 071 【第３部】業界の常識覆した異端児30人の逆転ストーリー 9　Business Chance 2009.10 Business Chance 2009.10　8 【第１部】経営難打ち勝った人がどれだけいるだろうか。第１部では「成長の壁」「業績不振」「経営破綻」と会社経営の危機を乗り越え、成長企業築いた経営者の成功秘話を紹介する。不況の今こそ身にしみる成功への処方箋となるはずだ。不況に勝つ逆境の寵児支持を受け、急速に店舗を拡大している。現在、全国１８４ヵ所に出店しているが、今期中に１９８店舗にまで拡大する方針だという。下田社長は高校卒業後、玩具卸会社勤務を経て、玩具店を開業したが、総合スーパーに客を取られ失敗。自転車店へ業態変更をした。自転車店は幸い、下田社長の性に合っていた。玩具店は品揃えで勝負が決まったが、自転車店は確かな技術・知識と接客で売上を伸ばせるビジネスだったからだ。いつしか下田社長の自転車店は街の人気店になっていた。自転車店へ転換してから年目に２店舗目を出店する。今度は競技用自転車などを扱うプロショップにした。この頃、総合スーパーの自転車売り場の猛攻が街の多くの自転車店の経営を圧迫していた。価格競争を挑まれたら、勝てるはずもない。下田社長は価格をさほど気にしないマニア・プロ向け自転車に活路を見いだしたのだ。自身もレーサーチームを率いるなどして業界の有名人に。２店舗目も瞬く間に繁盛店となった。自転車経営を始めて年目。下田社長はこれまで常に強大な敵であった総合スーパーに挑むべく、 10 「ピンチはチャンスだ」と意気込む者がいる。威勢は良くてもそれを実現できる辣腕経営者人の成功秘話 24 不況に勝つ逆境の寵児……p11 001 あさひ 002 ディー・エヌ・エー 003 カクヤス 004 セプテーニ・ホールディングス 005 ディップ 006 ムジャキフーズ 007 フェイスホールディングス 008 JNC 車専門店「サイクルスペースあさひ」を展開。店内には一般車から子供向け、スポーツ車など８００台～１０００台の自転車が陳列されている。店舗ではパンク修理やスポークの交換など、自転車のメンテナンスサービスも行われている。総合スーパーの自転車売り場を上回る品数の多さと、街の自転車店のような豊富な知識・スキルを持ったスタッフによる接客・アフターサービスが消費者の下田進社長あさひ 1948年生まれ。高校卒業後、玩具卸会社に勤務を経て、家業の旭玩具製作所を共同経営。 1970年代初めに自転車販売を始める。1975 年に取締役就任。1992年に代表取締役に就任（現任）。同年、社名もあさひに変更。企業DATA●設立：1975年●所在地：大阪府大阪市●売上高：216億4200万円●事業内容：大規模自転車専門チェーンを全国展開。経営破綻からの生還者……p21 019 大創産業 020 八百八町 021 テンポスバスターズ 022 希望大地経営 023 バイデザイン 024 イントランス自身の考えを具現化した自転車店を大阪寝屋川に出店する。店舗面積１００坪で品揃えは７００台～８００台。今日の「サイクルスペース　あさひ」の原型となった店舗である。「自転車店を経営していく中で気付いたのが、自転車は自動車と同じように購入時の商品選択から購入後の整備点検まで責任を持って販売者が取り組むべきビジネスだということです。低価格という優位性はあるものの、アフターサービスと自転車に対する知識・技術の欠如が総合スーパーの弱点だと考えました。大量仕入れで価格を下げ、さらに専門家が接客とアフターメンテナンスも行う大型店を作れば、総合スーパーに打ち勝てると思ったのが『サイクルスペースあさひ』の始まりです」不振からV字回復成功者……p17 009 日本サブウェイ 010 フューチャーベンチャーキャピタル 011 オークセール 012 森八 013 銀座テーラー 014 電鍍工業 015 ヌマニウコーポレーション 016 ワットマン 017 HYシステム 018 きちり 18 １９６０年代後半に総合スーパーが登場して、商店街の小売店は次々と姿を消していった。生き残った数少ない店舗は今でも不振に喘いでいる。そうした中で総合スーパーの弱点を徹底的に突く戦略で業績を拡大。終には東証１部上場まで果たした“ 街の自転車屋のオヤジ ” がいる。あさひの下田進社長だ。同社は都市近郊のロードサイドを中心に１００坪以上の大型自転 001 年間の自転車店経営で見えた強敵総合スーパーの弱点 18 Business Chance 2009.10　10 11　Business Chance 2009.10 起業家100人の難局突破物語全部打破！競合資金難業績不振しがらみた成功企業が存在した。同社は展開する２つの事業で二番手、三番手の地位に甘んじることとなった。モバオク運営からわかったモバイルネットユーザーの特性ったのを良しとせず、果敢に新市場へと挑んだからこそ、同社の今日があるのだ。南場社長は大手コンサルティングファーム、マッキンゼー・アンド・カンパニー・インク・ジャパンを経て、１９９９年３月にディその影さえ踏めなかった “目の上のたんこぶ” １四半期は売上９億８３００万円を計上。こちらも順調な成長を遂げている。携帯電話インターネット市場で圧倒的な存在感を示す同社だが、かつて主軸としていたＰＣ向けのネットオークション、ＥＣモールでは先行参入企業の後に続く、２番手、３番手の存在だった。南場社長が２度の挑戦で“次点”にな人を数えるまでに成長していた。パソコンのインターネットで多くの消費者を抱えているサービスは、ポータルサイト、ＳＮＳ、オンラインゲーム、それに同社が展開するショッピングの４分野。携帯電話インターネットの窓口はキャリア各社が握っており、ポータルサイトで高シェアを獲得するのは難しい。そこで同社は残された２分野、ＳＮＳとゲームを組み合わせたサービスで携帯電話インターネット市場の席巻を目指す。現在の同社の代名詞、「モバゲータウン」を２００６年２月に開始したのだ。南場社長は「モバオク」を展開していく中で、携帯電話インターネットユーザーの１つの特性に着目していた。その特性とは、パソコンインターネットに比べ、頻繁なコミュニケーションを好むユーザーが携帯電話インターネットの世界には多いということである。「『モバオク』では出品者に商品に関する質問をすると早ければ３分もかからず返事があります。商品の購入、出品の頻度は低いけど、他のユーザーとのコミュニケーションは積極的に取る方も多く存在します。そうした携帯電話ユーザーの特性を踏まえると、コミュニー・エヌ・エーを設立。その年の月にネットオークションサイト「ビッダーズ」を開設した。出品者への住所確認を行うなどの独自サービスを展開して徐々にユーザーを獲得。順調にシェアを伸ばしたが、先行してネットオークションを手がけるヤフーの影も踏めなかった。『ビッダーズ』が出品有料だったのに対し、ヤフーはその資本力を生かして出品無料で展開。知名度、集客力、システムの充実度で太刀打ちできない上に価格でも大差を付けられていた。ヤフーに次ぐ位置は確保したものの、広告宣伝費やシステム開発費が負担となって創業から４期連続で赤字が続いた。２００２年にＥＣモール事業を開始して、ようやく黒字化に成功する。オークションユーザーがＥＣモールも併用することで、ユーザーが同社へと落とす金額が格段に向上したのだ。しかし、ＥＣモール事業にも楽天という確固とし二度の“次点”を良しとせず “三度目の正直”で掴んだトップの座今やコミュニティーサイト「モバゲータウン」で携帯電話インターネット市場を独走するディー・エヌ・エーの南場智子社長も、過去の２度の挑戦ではいずれも“次点” に甘んじていた。「モバゲータウン」は今や押しも押されもせぬモバイルコンテンツ市場のトップサイトだ。同サイトの月間ページビュー約１７５億に比して、「ｍｉｘｉモバイル」は約１０９億、ヤフーモバイル版は約億。ＰＣインターネット成功サイトのモバイル参入組に対しても圧倒的な差を付けている。もう１つの同社運営携帯電話サイトの代表格、オークションサイト「モバオク」も今第南場智子社長「ＥＣモール事業で成功を掴んだ頃２００年頃から、ネットオークションを携帯電話サイトで展開することを模索しはじめました。私自身が携帯電話ネットユーザーでもあったことから、気軽にどこでも利用できる携帯電話インターネットいずれ普及すると確信していたのです。ＩＴ業界の意識はまだ携帯電話に向いてなかった。だからこそ、素早く参入するべきだと考えていました」２００３年になると、携帯電話キャリア各社が、定額で携帯電話インターネットが利用できる“パケ放題“サービスを開始。携帯電話でインターネットを利用する習慣が徐々に広まっていった。２００４年、同社は満を持して携帯電話向けオークションサイト「モバオク」を開始する。ヤフー、楽天といったＰＣインターネットに存在した“目の上のたんこぶ”は携帯電話インターネットの世界にはまだいない。同社は着々と地歩を固めていく。「パソコンのネットオークションでヤフーに差をつけられた４つの要素、集客力、知名度、システム、価格のうち、システムは１年半の準備期間があったので他社より先行しており、また価格も開始当初は出品無料で展開したので、資本力で当社に劣る競合に対して優位性を保つことができました。集客力と知名度はアフィリエイト広告に集中的に資金を投下することでカバーする戦略を取りました」携帯電話で気軽にオークションを楽しめる同サイトは代前半の女性を中心に順調にユーザーを獲得。開始から１年３ヵ月後には商品出品を有料に。この頃、「モバオク」は既にユーザー数１７０万ティサイトとゲームを組み合わせたサービスが普及しないはずがないと予測しました」同社は「モバゲータウン」開始にあたり、特に他のユーザーと活発にコミュニケーションを取る “話好きな” 「モバオク」ユーザー約１０００人への告知活動を徹底した。必ず彼ら、彼女ら自身がサービスを利用しながら、友人達へ「モバゲータウン」を宣伝して回るはずだと予想したのだ。この目論見は見事にあたり、「モバゲータウン」はスタート時から快進撃を見せる。開始２ヵ月で会員万人を突破。その後も順調にユーザーは増加し続け、現在では１４００万人を超える会員を抱え、１日に約６億ページビューを叩き出すまでに伸張した。２度の“小成功”に慢心せずに “大成功”を掴んだ南場社長だが、これで満足したわけではない。既に海外進出という新たな挑戦を始めているのだ。２００６年にＤｅＮＡ北京を設立、２００８年には米国で「モバゲータウン」に似たコンセプトの携帯電話サイト（モバミングル）」「 MobaMingle を開設するなど、ここ数年で着々と海外進出を果たしている。 11 21 58 Business Chance 2009.10　12 13　Business Chance 2009.10 1962年生まれ。津田塾大学卒業。1986年、マッキンゼー・アンド・カンパニー・インク・ジャパン入社。1996年にパートナーに就任。 1999年にマッキンゼーを退職し、ディー・エヌ・エーを設立。企業DATA●設立年：1999年●所在地：東京都渋谷区●売上高：376億700万円●事業内容●携帯向けのゲーム・コミュニケーションサイト「モバゲータウン」が主力。不況に勝つ逆境の寵児 20 002 ディー・エヌ・エー「カクヤスは潰れる」同業の揶揄はねのけ７５０億円企業創る『酒が、新規参入企業との競争にさらされることで過酷な値段の叩き合いを余儀なくされた。同社も一時は低価格路線に走り、安さを強みに取引店数を１０００店以上に増やし、売上を一気に伸ばすことに成功。だがこのまま価格で戦っても、先細りは目に見えている。そこで佐藤社長は大きな賭けに出た。「宅配サービスで差別化しようと決断しました。それまで酒は１ケースからそれも前日の夜までに注文しなければ当日店に配達されない。業界の当たり前のすべて逆をやってやろうと思ったのです」（佐藤順一社長）そこで佐藤社長は冒頭のサービスを打ち出した。たった１本のビールにかかる配達コストを考えると簡単にできるとは言い難いが、飲食店が求めるのは「当日注文・当日配達」だった。これに応えない手はない。「飲食店は天候や宴会によって仕入れ本数を変えたいのが本音だったようです。多くの飲食店が利用してくれました」手ごたえを感じた同氏は店舗数の増加に踏み切った。店舗あった店舗を１００店舗まで増やし、３年かけて区中に店を構えた。ついに都内どこでも配達できるようになった。だが、同業者は採算の取れないサービスなのに店舗数を増やしている同社を『カクヤスは潰れる』と噂していた。実際１００店舗中店舗は赤字。「社員にすら出店を取りやめるように諭されました」と振り返る。財務内容が悪化し、ついには銀行からの融資もストップ。追い込まれた同氏の救いは消費者の声だった。顧客数は増加の一途をたどっており、これを武器に銀行を説得し、再び融資を取り付けた。顧客数が増加することでスケールメリットによって収益性も向上していった。『カクヤスは潰れる』と揶揄していた他社は、いつしか『カクヤスにしかできない』と言うようになったという。 004 います」（七村会長）たというのが成長に繋がったのだと思に合わせたビジネスモデルに転換でき「変化を受け入れる土壌があり、時流がインターネット広告代理店事業だ。３０７億円（連結売上高）その約８割がりで伸長。２００８年９月期の売上に参入した。それ以来、売上は右肩上断した七村会長は２０００年、同事業業を提案。先々の見込みも充分だと判業マンはインターネット広告代理店事ろ」と指示。６カ月後、そのトップ営七村守会長はそんな彼に「６カ月間時間を与えるから、新規事業を考えみい」という告白だった。Ｍ発送代行の営業に飽きたから辞めた当時トップ営業マンだった社員の「Ｄ現在の主軸、インターネット代理店事業を始めるきっかけとなったのは、主軸を転換。事業拡大を遂げてきた。まさに七変化。成長の壁に当たるごとーネット広告代理店事業と主幹事業もーシング、ＤＭ発送代行事業、インタジネスから始まり、採用活動アウトソ社名のセプテーニはラテン語で“７つ”という意味だが、同社は求人誌ビ社員の「飽きた」の一言が急成長遂げるきっかけに七村守社長「コンテンツの中で、派遣会社の情報へのアクセスが群を抜いて多かったのです。会社情報にここまで反響があるなら、仕事情報を掲載してみてはどうかと思ったのです」すぐさま派遣会社に営業し、パソナなど多数の派遣会社と仕事情報の掲載で契約がまとまった。これが「はたらこねっと」の前身だ。時は年、インターネット時代が到来していた。端末に掲載している情報をネットで展開するチャンスだと考えた同氏は、再び開発資金集めに奔走する。そんな時ナスダックを日本に誘致して新しいベンチャーを沢山誕生させる発表を目にした。「綿密な事業計画書を用意して、説明会に参加し、１０００名以上もの人の前でプレゼンしました」こうして年、インターネットによる人材派遣の求人情報サイトとして「はたらこねっと」が誕生した。既に仕事情報は業界最大、情報量で右に出るものはなかった。そこからは現在に至る成長街道を突っ走ってきたのだ。 “どん底”を経験した男ひと筋の光見出し難局突破 Business Chance 2009.10　14 15　Business Chance 2009.10 企業DATA● 設立：1990 年●所在地：東京都新宿区 ●売上高：307億円●事業内容：ネット広告代理、販促支援やコンテンツ配信展開する子会社群が傘下に。 00 28 ると行動力とアイデアが買われた。だがここでも課題が立ちふさがった。ＩＢＭは、端末の開発費、コンテンツ収集についてを同氏が行うという要求を突き出したのだ。どうにか掲載企業獲得に成功し自動車メーカー、旅行会社、人材派遣会社の情報が一気に掲載されたが同氏はこれで満足はしなかった。企業DATA●設立：1997年●所在地：東京都港区●売上高115億円セプテーニ・ホールディングス 98 23 1966年生まれ。愛知県出身。大学卒業後、地産に入社、ゴルフサービス会社などを経て、起業準備に入る。97年3月ディップ株式会社を設立し、2004年東証マザーズに上場を果たす。１本から２時間以内に無料で配達します』絶対にうまくいかないと業界から冷めた目で見られ、事実赤字が続くも消費者の声に応え続けることで店舗数１５０、年商７５０億円をたたき出す企業に成長させたのがカクヤスの佐藤順一社長だ。「街の酒屋」を「１大酒類販売チェーン」に変貌させた佐藤社長は３代目。市場が縮小しはじめていた。就任４年目には細川内閣が酒類免許規制の緩和を発表。それまで規制に守られていた酒店だった人 6 企業DATA●設立：1982年●所在地：東京都豊島区●酒類・食品の業務用卸、酒類量販チェーン「なんでも酒やカクヤス」の経営、飲食店向通信販売「ミクリード」の運営でマクドナルドさんの１００円ハンバーガーに助けてもらいましたよ」そんな時、テレビ番組でパソナの南部代表とソフトバンクの孫社長が起業家支援を始めたことを知り事業計画を送るとパソナの支援を得て保証協会から融資を受けることができた。やっとの思いで端末営業を始めた同氏は、訪問先で「ＩＢＭが同じ話を持ってきた」と耳にする。ピンチにも思えるがこれが後のチャンスにつながる。大企業が目をつけるほどこのビジネスには将来性がある。すぐにＩＢＭの門を叩き、話を持ちかけ冨田英揮CEO 1959年生まれ。東京都出身。立教大学附属中学・高校を経て1981年筑波大学経済学部卒業。同年家業である業務用酒販店のカクヤス本店(現カクヤス)入社。1993年代表取締役社長に就任し、年商750億円を創り上げる。材派遣の求人情報サイト「はたらこねっと」やアルバイトの求人情報サイト「バイトルドットコム」を運営するディップの冨田英揮ＣＥＯは、苦労の末道を開いてきた。同社の設立は年。年東証マザーズに上場し、前期（年月期）は年商１１５億円を突破。冨田氏は現在の主力事業である求人情報サービスに行き着くまでにいくつもの事業を手掛けている。英会話スクール、無料カタログ送付サービス … どれもすぐにうまくは行かなかったが、壁にぶつかった時に歩みを止めないことでいつも突破口を見出してきたのだ。父が経営した赤字の英会話スクールを建て直し独立した同氏は無料カタログ送付サービスを思いつく。「素晴らしいアイデアだから成功するに違いない」と、多くの企業に事業計画を持ち込んだが、個人に資金を出してくれる企業はなく、ゴルフ場のキャディなどのアルバイトをしながら食いつないだ。妻に子供２人の家族人、畳の部屋でギリギリの生活を余儀なくされた。「電車代を浮かすために移動はほとんどが徒歩。当時はデフレ絶頂不況に勝つ逆境の寵児ディップ社長 2 カクヤス 04 08 4 57 005 003 佐藤順一 97 不振だった既存事業の中から新規事業のヒントを見出したのがオークセールの福島誠司社長だ。同氏は2000年にオークションサイトを立ち上げるもうまくいかなかった。赤字を垂れ流しながらも細々運営をしていた頃、同氏はあることに気が付く。それはユーザーの入札価格と市場価格に大きな隔たりがあるということ。ネットの世界では世の中のブームや話題に対して過敏に購入希望価格が変動することがわかった。そこで同氏はこの入落札価格情報を用いた商品の卸事業を考案した。データに基づいた売れ筋商材を提供するのだ。これがヒットし同社は急成長を果たしたのだ。 17　Business Chance 2009.10 010 006 田代隼朗ムジャキフーズ社長 1986年、賃貸不動産の管理業で独立。89年にラーメンチェーン展開を開始。97年に外食部門を分社化してムジャキフーズを設立した。企業DATA●設立：1986年●所在地：東京都渋谷区●売上高：37億6000万円●事業内容：飲食店の運営、独立支援制度を展開。デモ機作り顧客の元訪ね地道に取引社数拡大 008 J NC 船原新社長企業DATA● 設立：2003 年●所在地：東京都新宿区売り上げ高：12億5000万円●内容：各種映像機器を利用した監視システムの開発・販売・サポートほか「日本の防犯意識を高めたい」と防犯カメラの普及に努めるのがＪＮＣ船原新社長だ。防犯カメラの輸入や、商品開発をし、コンビニなどの小売店や老人ホームなどに販売。現在3000 社が導入している。これまでの防犯カメラとは一線を画しており、高精度だと顧客から好評だ。今でこそ導入実績もあり、順調に事業を拡大する同社だが、商品が売れるまでには苦労した。「どんな商品でも同じだと思われていたため導入されませんでした。デモ機を作りコンビニエンスストア１軒１軒を訪ね商品を試してもらうことから始めました」この方法で取引社数を拡大していったのである。経営、人事コンサルティングのフェイスホールディングス・小倉広社長は売上の壁にぶつかりあることに気づいた。自分たちがプロであるにもかかわらず自社の人材教育に手抜きがあるのではないかということだ。「お客様の組織、人材が成長するのに自分たちはなぜ成長しないんだと問い直しました」危機感を感じた同社は企業理念から人事制度まで一新させた。新制度を制定する際には全社員参加で喧々諤々決めた。また、クライアントにも導入している50項目の評価制度でどの顧客よりも自分たちが総合点で一位になることを義務付けた。その他にも社内報への注力や営業手法の転換で業績は上向きに転じている。 007 フェイスホールディングス小倉広社長企業DATA●設立：2003年 ●所在地：東京都港区●事業内容：研修プログラムの企画・販売・運営、経営コンサルティング Business Chance 2009.10　16 不況に勝つ逆境の寵児不採算事業から見つけた商売の種で急成長 97 プロフェッショナルの驕りに気づき組織コンサル会社が人事制度を一新企業DATA● 設立：2000 年●所在地：東京都中央区 ●事業内容：入札会サイト「オークセール」運営などベ社員の言葉から生まれた “独立支援制度”で事業拡大福島誠司社長ンチャーキャピタル事業で大証ヘラクレスに上場するフューチャーベンチャーキャピタルの川分陽二社長は、創業してすぐ壁にぶち当たった。「前職の経験がありましたから自信はありました。しかし、実際は厳しかったですね」と語る通り、一号ファンドで10億円集める予定が実際は２億5000万円しか集まらなかった。１期目の決算は当初出資をしていた会社の1社が潰れて大赤字。7000万円の損失を出した。しかも信頼していた創業メンバーの裏切りがあったりとまさに泣きっ面に蜂状態だった。しかし、神様は見放さなかった。何とか問題に対処しながら２号目のファンドでは国から５億円の出資を得ることができたフューチャーベンチャーキャピタルのだ。厳しい状況川分陽二社長にありながらも二京都大学法学部卒業後、住友銀行（現・三井住友銀行）を経て日本アセアン投資の手、三の手を打（現・日本アジア投資）に入社。98年、フューチャーベンチャーキャピタルを設立。っていたことで浮企業DATA●設立：1998年●所在地：京上のきっかけをつ都市中京区●売上高：7億5500万円●事業内容：ベンチャーキャピタル業務かむことができた。実績あるも創業すぐにピンチ二の手三の手奏功し乗り切る 011 オークセール頭の言葉が社員から浴びせかけられたのだ。実際にその社員に店を任せると売上が向上した。現場のことは現場に一任するのが最適だと考えを改め、直営展開を取り止めた。年外食部門を分社化し同社を設立。社員として修行後、審査を通過すれば業務委託契約で店舗の運営任せる“トラスト方式”を導入し、店舗展開加速に成功している。「国ごとに食材原価も人件費も変わります。日本は地代家賃と人件費が世界と比較しても高い。それに見合うオペレーションに変える必要がある」アメリカ本社とは業務オペレーションには手を加えられない約束だった。しかし、伊藤社長は何度も説得し、意見調整を行った。その結果、店舗は小型化し、利益率が向上。すると複数出店するオーナーが増え、全体の店舗数が増加したのだ。海外経験生かし改革断行５年連続店舗増のＶ字回復「社企業DATA●会社名：日本サブウェイ●所在地：東京都港区●設立：1994年●事業内容：サンドイッチチェーン本部 93 長は飲食業界の人間ではない。私に任せてくれれば売上を上げます」ムジャキフーズの田代隼朗社長が　“トラスト方式”という独立支援制度を導入したのは社員の一言がきっかけだった。不動産業から事業を興した田代社長は、多角化で始めた飲食店が４号店にまで拡大した時に売上の壁にぶち当たった。そんな時に冒 1982年、明治大学卒業後サントリー入社。海外事業部に転籍。12年間にわたり海外で飲食事業の最前線に立つ。98年日本サブウェイに出向。2003年10月に社長就任。不振からV字回復成功者社長世日本サブウェイ界最大のサンドイッチチェーン「ＳＵＢＷＡＹ」の国内展開を手がける日本サブウェイは、見事なＶ字回復を遂げている。その陣頭指揮を執ったのが親会社のサントリーから送られてきた伊藤彰社長だ。店まで落ち込んでいた店舗数を５年連続増加に転換させ１５０店舗を超える規模に拡大させた。変革の第一歩は店舗パッケージを見直したこと。この改革時に海外での赴任経験が役立った。 009 伊藤彰ブル期、投資に失敗し倒産の危機が迫った。とともに、利益率の拡大にもつながったのだ。「家電量販店時代と比べ経常利益が2倍になりました」と語る。倒辣腕女社長の経営再建はドサ回り営業からスタート企業DATA●設立：創業1946年●所在地：東京都中央区●事業内容：テーラー事業、技術者養成教育事業、美容事業、不動産事業などを展開。に出て、顧客と接すると言うことから始まったのだ。ット店を出店。他にも先行し業態転換する企業にヒアリ多た。事業転換を行う２年前にハードオフに加盟しパイロ産の危機に瀕していた老舗和菓子店を見事再建させたのが、森八（中宮紀伊子女将だ。今年で創業３８４年を迎える同社は１９９５年、バブル期の過剰投資が原因で約億円の債務を抱え、倒産危機に瀕していた。そんな時に同氏は取締役に就任し、再建を辣腕を振るっていく。同氏はのれんにあぐらをかいている社員に対して意識改革を徹底。また、「女性は不浄」として女将でも入れなかった工場に入り、工場長と膝を突き合わせて生産計画の見直しを行った。「それまで大量に生産をして保管額の負債を抱えた銀座テーラーを見事立て直したのが、鰐渕美恵子社長だ。同氏が行った経営改革は多岐に渡るが、まず始めに行ったのは、自身がドサ周りで仕事を受注してくるということだった。同氏が経営責任を負う夫、前社長をサポートする形で経営の現場に飛び込んだのは歳のとき。専業主婦からの転身だった。「専業主婦でしたから、何かやらなくてはと思っても何をやれば良いのか分からない。だから、とにかく仕事を取ってこようと思ったのです」毎月、受注３００万円をノルマと課し、娘の学校の名簿を頼りに「銀座テーラーの社長婦人」というプライドをかなぐり捨てて営業活動を行った。そこから、同氏は婦人服の受注開始、名刺デザインの変更といったアイデアを得る。セカンドブランドの導入、男性美容室事業の開始 … ｅｔｃ。後に様々な経営改革を実行に移す同氏だが、その基礎は自身が営業一線する。経営破たんの危機乗り越え　フランチャイズ加盟で再起需要の高まりが追い風となり集客に成功する企業DATA ● 会社名：ワットマン●所在地：横浜市旭区●設立： 1978年 ● 売上高：29億 9500万円（08年3月期）ド、69店舗を展開この鮮やかな事業転換の裏には綿密な下準備があっしていたが、不要な在庫を抱えないように売り切り体制に切り替えたのです。また、お客様に対しても店頭に商品を積んで売るのではなく、注文を受けてから店の奥で包装して売るという方法に変えました」社内の「東京の人に金沢のことが分かるはずもない」という声を押さえながら行ったこうした取り組みが奏功して、同社は２００４年、当初の計画より年前倒しで債務返済の完了に成功した。自社の持つ技術力を勉強した同氏は突破口を見出す。それはターゲット企業の拡大だった。「それまで売上の割を時計の加工で占められていましたが拡大しようと考えたのです」製造業と顧客を結ぶマッチングサイトに登録したという。また数多くの展示会に足を運び、出展ブースに逆営業をかけた。「製造業で女性、しかも肩書きは代表。驚かれましたが熱意を伝えることができました。」３年後、見事黒字転換を果たし、年商６億円まで回復。１００年続く会社を目指す。不振からV字回復成功者 1949年生まれ。甲南大学卒業。万国博覧会国際連合館VIPコンパニオン経験後、1973 年に結婚。主婦業を経て、2000年、同社３代目代表取締役社長に就任。み、フランチャイズ加盟を決断。リサイクル清水一郷社長オフ」など５ブラン期）と激減したものの黒字転換に成功した。 2 Business Chance 2009.10　18 19　Business Chance 2009.10 社長沼生進社長は事業転換すべく既存店をたたワットマンードオフ」「ブック 44 て救いの手となったのは「フ銀座テーラー中心に家電量販店40店舗を展開していたがバ 016 ャイジーとして「ハ転換を矢継ぎ早に行った。売上は22億8000万円（07年3月「１００年続く企業を創る」父の会社をＶ字回復させた女社長父 40 013 鰐渕美恵子かつて北関東をングを行い、シミュレーションを詳細に練っていたのだ。ョンのメガフランチ鎖、デンコードーへの営業譲渡、リユース事業への業態ポレーションだ。同社にとっ円を稼ぎ出し、一時は50店に迫る店舗数を誇現在ハードオフコーポレーシそして、04年５月からわずか３カ月で不採算店舗の閉事再生したのがヌマニウコーットマンの清水一郷社長は最盛期に売上500億ランチャイズ加盟」だ。ェーンとの競争で勝ち残るのは難しいと判断したからだ。んしかけたが、見ワった家電量販店を捨てる決断をした。大手チ 23 企業DATA● 設立：1945 年●所在地：栃木県下野市 ●事業内容：「ハードオフ」「ブックオフ」経営企業DATA●設立：創業1625年●所在地：石川県金沢市●事業内容：日本三大銘菓のひとつである「長生殿」など和菓子の製造・販売。企業DATA●設立：1958年●所在地：埼玉県大宮市●売上高：6億9000万円●事業内容：時計・楽器・医療機器などのメッキ加工を抱え一度は破た 1951年生まれ。森八18代目当主、中宮嘉裕氏（現社長）と結婚し金沢へ。1995年に取締役に就任して、森八再建に着手。2004年に再建を完了。 8 1967年生まれ。東京都出身。上智大学卒業後、DJなどを経て2000年3月、代表取締役に就任。沼生進社長女将社長億円もの債務超過森八日本電鍍工業 015 012 中宮紀伊子暖簾に胡座かく社員に意識改革を徹底 014 伊藤麻美ヌマニウコーポレーション売上500億円の家電量販店を捨てＦＣ活用し鮮やかに業態転換成功 60 が創業した会社の業績をＶ字回復させたのは娘だった。日本電鍍工業伊藤麻美社長は年の代表就任以来再建に奔走する。１９５８年に創業した同社は貴金属のメッキ加工を手掛ける。父の死後経営を他人に任せていたが徐々に経営不振に陥り億円あった売り上げが４億円まで落ち込んだ。そのころ伊藤社長は大学卒業後ラジオＤＪを経てアメリカ留学していたが義母から受けた一本の電話が運命を変えた。「会社の財務内容が悪化し、家も抵当に入ったという知らせでした。帰国し会社を継ぐことに決めたのです」（伊藤麻美社長） 00 1 長を遂げた。なマニュアルで指導しても誰も喜んではくれませ「復活？再挑戦？そんな風に考えたことは一度もん。今までの成功を否定して反対を行くからこそ、ないですよ。自分自身、常に前進してきたつもりそこから新しいものが生まれるのです」でいます。失敗というのは常に明日への糧ですかつぼ八時代とは異なり、ゆっくりと着実にファらね」ンを増やしながら同社は成長しているのだ。八百八町が展開する店舗では「つぼ八」での経不振からV字回復成功者とができないのです。今は“個”の時代。画一的 “一発屋”脱却し安定収益モデル築くきっかけは地元の郷土料理だった屋」などの居酒屋を約80店舗展開するまでに成監化を図れます。しかし、それでは人間を育てるこ Business Chance 2009.10　20 21　Business Chance 2009.10 年月ヘラクレスグロースに上場を果たしたきちり。デザイナーズマンション風の居酒屋を上場までの道のりは平たんではなかった。平川昌紀社長は脱サラし、モスフードサービスに加盟した同氏は半年間で安定した利益を出せるようになり、加盟から年後には独自ブランドを出店した。坪ほどの店舗は大繁盛しすぐに多店舗展開したが苦労はここから始まる。三日間は満席だったものの、ぱったりと客が来なくなってしまったのだ。「成功した理由も分からず調子に乗ってしまったのが原因です。当時店に顔を出すこともなく現場のことが分からなかったのです」倒産を覚悟し、必死に自らビラを配り、失った客を取り戻していった。他店の収益で持ちこたえ半年後には繁盛店に返り咲いたのだ。翌年、同社を設立。現在では関東中心に「ひもの平川昌紀社長「従業員の指導にマニュアルを使えば、質の均一きちり任せているのだ。けてきた商社と衝突して、「つぼ八」の社長を解任。講演などで地方に訪れる機会が多い同氏は、郷土料理にヒントを得たという。「１道１都２府県、どこにでもおいしい食材があります。それを売りにする飲食店を作れば安定的な収益モデルを作れるとひらめいたのです」生産者を訪ね歩きパイプを太くした同氏は年銀座にきりたんぽ鍋専門店「なまはげ」を開店した。訪れる顧客は代などが多く、通い詰めるのだという。リピーター獲得のため来店した顧客から名刺を集め、ＤＭ送付をするなど、積極的な営業活動が効果を上げている。ＦＣ展開、屋号拡大を進め、上場も視野に入れる。すね」でも、自由なのである。スタッフの考えに獄レストラン「アルカトラズ」などエンターテイメントレストランの先駆者として知られるエイチワイシステム。１期目で１億５０００万円の売り上げを叩きだし、さまざまなメディア露出で話題をさらった安田久社長は当時をこう振り返る。「大きな花火を打ち上げたような感覚。このまま軌道に乗ると信じて疑っていなかった」（安田久社長）りました！」でも「いらっしゃい！今日は暑いでを創業。店舗数日本一のチェーンにまで育て上げ 1962年、秋田県男鹿市生まれ。アルバイトをした飲食店をきっかけに飲食業界へ。 1997年同社設立、社長に就任。かれた。同社の成功に続けと資本力のある他社の追随が後を絶たず、一気に顧客を奪われてしまったのだ。「お客様には運営会社がどこかなんて関係ないから、似たような店ならどこでもいいんだと痛感しました」年間で億円と、順調に伸ばしていた売り上げも伸び悩み、このままでは経営不振に陥ってしまうと考えた同氏は安定した収益を確保するための策を必死に考えた。同氏はかつて北海道で居酒屋チェーン「つぼ八」しかしその考えはすぐに打ち砕ルであろう。しかし、その中身は「お待ちしてお 018 ない。例えば、来店客に挨拶するのは当然のルーっている。八百八町の石井誠二社長だ。 1969年生まれ。大阪府出身。甲南大額卒業後リゾート開発会社に個人加盟 98年吉利設立。企業DATA●設立：●所在地：大阪市中央区●売上高：●事業内容：「Casual Dining KICHIRI」経営ほか 6 30 かつての居酒屋業界に君臨した男が再挑戦を図石井誠二社長た人物である。しかし、1988年に経営支援を受 07 同社の店舗にはルールはあるが、マニュアルは験が存分に生かされている。その一つが「つぼ八」八百八町 HYシステム経営破綻からの生還者国内外３０００店舗を展開する１００円ショップ「ダイソー」。巨大流通チェーンを一代で築き上げた大創産業の矢野博丈社長は大学卒業後、妻の実家のハマチの養殖業を手伝うものの、３年後に倒産。夜逃げ同然で東京に出て、百科事典のセールスマンとなったが、口下手だった同氏は全く売れなかったという挫折体験を持っている。結局、転職を余儀なくされ、ちり紙交換業を得て、百円均一ショップに至るのだが、この営業下手、口下手が品揃えの豊富さで競合を圧倒する「ダイソー」に繋がるのだから商売は面白い。「ワシはしゃべれんけん、いっぱい商品を置くことで商品にしゃべってもらおうと思ったんですわ。店中に商品が溢れていたら客に話しかけなくても、勝手に客が商品を探して動いてくれます」口下手から生まれた「ダイ・ソー」の圧倒的な陳列数は、現在に置いても同社が他社の追随を許さない大きな要因になっている。矢野博丈社長脱サラのフランチャイジー独自ブランドで上場果たすの急速な成長を支えた“マニュアル”への決別だ。失敗は明日への糧再び挑む居酒屋日本一企業DATA● 設立：1988 年●所在地：東京都大田区 ● 事業内容：「ひもの屋」などの居酒屋や飲食店を展開。 43 020 企業DATA●設立：2006年●所在地：東京都港区●年商：17.5億円●事業内容：郷土料理店「なまはげ」など17店舗経営　ほか大創産業 50 企業DATA●設立：1977年●所在地：広島県東広島市●売上高：3412億円●事業内容ザ・ダイソーのチェーン展開社長 10 019 04 1943年生まれ。中央大学卒業後、ハマチ養殖業で失敗。その地、教材販売、ちり紙交換他数々の職を転々とし、1972年妻と共に移動販売事業を開始。1977年に同社設立。 017 安田久 5 “夜逃げ”から船出した起業家人生一代で巨大流通チェーン築く喜多洲山会長設立。不動産業界で事業を行うには人脈やコネがものを言うにもかかわらず、前職のネッ 1947年静岡県生まれ。静岡大学卒業後、東芝テック入社。トップセールスマンになるも上司との確執から退社。食器洗浄機メーカーを経て、83年に共同精工（現KyoDo）設立。 97年にテンポスバスターズ設立。2002年にジャスダック上場。企業DATA●設立：1997年●所在地：東京都大田区●売上高：112億8400万円(09年４月期) 事業内容　中古厨房機器の販売など 1 1953年生まれ。小売業の三代目として 75年に家業に就く。負債30億円を抱え、破綻の危機に陥ったが、それを自力で再生させる。その経験を元に2005年より事業再生士の活動を開始する。企業DATA●設立：2005年●所在地：大阪市北区●事業内容：事業再生コンサルティング客開拓を行った。しかし、それが逆に人脈の大切さを知るきっかけとなり、これまで以上にネットワークを強化し、急成長の礎を築き上げたのだった。「全培った不良債権処理のノウハウを元に会社を Business Chance 2009.10　22 23　Business Chance 2009.10 森下篤史社長テンポスバスターズ第一コーポレーション倒産をものともせず、体験を世の中のために生かそうと喜多会長は事業再生士の道を選んだのだ。１年ほど前から始めていた中古厨房機器販売のテンポスバスターズが３月日放送のテレビの情報番組で紹介されたのだ。すると次の日には日本全国から顧客が殺到。月１００万円の利益が出ればいい方だった店舗が日商１１００万円を記録。３月中だけでも３０００万円を売り上げた。本体も順調起業意欲の強かった上島社長は勤めていた社になっていた。そして、年の年末にはとうとう行き詰って冒頭の破産宣言を社員を集めてやることになる。「１月末には不渡りを出すから年が明けても会社に出てこなくていいよと社員に伝えました。しかし、全部で人いた社員のうち人ほどが出社してきたんですよ」社員とともに破産への道を進む中、１月日に朗報が入った。中小企業金融公庫が２７００万円融資してくれるというのだ。何とか首の皮一枚つながったがまだ危険な状況は続く。しかし、社員が大幅に減り、財務体質がよくなっていたことに加え、危機感持った社員の奮起で業績も上向いてきた。一度の失敗にめげず液晶テレビの可能性に賭けるで中古厨房機器販売の４月、５月も売上げ順調で気づくと億円が森下氏の手元にあったという。運がよかったと言ってしまえばそれまでだが、中古厨房機器がヒットするまでにはそれ相応の努力があった。他社が野ざらしで販売しているのを同社は屋根をつけ管理状態を良くした。さらに一番大きかったのが価格の明瞭表示を行ったこと。他社は価格を明示せず買いに来た顧客の腹を探りながら料金を決めていたのだ。同社は他者の価格帯をリサーチし、最低水準の値付けを行ない「安さ日本一」をうたった。この取り組みがテレビで紹介され、業界中から熱い視線が注がれたのだ。まっている。かすかな追い風が感じられるようになった時に突然、神風が吹く。企業DATA● 設立：1998 年●所在地：東京都渋谷区 ●売上高：37億7680万円 ●事業内容：プリンシパルインベストメント事業、ソリューション事業 023 トワークに頼らず自らの力のみでゼロから顧 26 自らの破綻経験を生かし事業再生士の道を切り開く業家人生は以前働いていた会社の倒産から始社員を集めて破産宣言をした半年後には現金が１億円手元にあった。何があるかわからないよね、人生は」中古厨房機器販売を行うテンポスバスターズの創業者・森下篤史会長は、経営破たん寸前から大逆転を遂げた経験を持つ。森下氏は食器洗浄機の販売会社・共同精工（現ＫｙｏＤｏ）を立ち上げて独立。順調に業績を拡大していくも商品寿命の長い食器洗浄機を販売していくうちに売り先がどんどんなくなっていくことに気づいた。その時には社員は１００人超。そこで森下氏は新規事業に次々手を出す。生ゴミ処理機、英会話学校、回転ずし、外国人向けゲストハウスの運営など始めるもことごとく失敗。営業力はあるのだが商品やサービスの開発能力が著しく低かったのだ。年商億円、利益も１億円出ており、無借金経営だったその会社は９カ月で８０００万円の赤字を出す会社長を退任することに。その２年後、飯塚社長は同社を設立するのである。「周囲からは諌められました。『また独立しなくても良いじゃあないか』とね。しかし、液晶テレビが確実に将来普及するのは間違いないという自信がありましたアキアでは液晶モニタを搭載したパソコンが売れたのだから、次はテレビだと考えていたのです」場を果たしたイントランス上島規男社長の起 70 30 20 021 不動産再生事業で急成長し東証マザーズ上 98 破産宣言の半年後、手元に現金１億円大逆転巻き起こした“運”と“努力” 社長 200 024 上島規男社長イントランス格バイデザイン経営破綻からの生還者 1949年生まれ。明治大学卒業後、米国の電子機器販売チェーン、タンディ・ラジオシャック（現・ラジオシャック）を経て、デルコンピューターへ入社。95年にパソコンメーカー、アキアを設立。01年にアキアを退社。 03年に同社を設立。企業DATA●所在地：東京都中央区●設立： 2003年●事業内容：液晶テレビの製造・販売安薄型テレビで急成長を遂げたバイ・デザインの飯塚克美社長は同社設立以前に会社経営を失敗した経験を持つ。デルコンピューター日本法人の社長を退任した後、パソコンメーカー、アキアを設立。液晶モニタ付きの省スペースパソコンや高性能ノートパソコンなど次々と最先端の技術を取り入れた製品を発売。急速にパソコンユーザーの支持を集めていった。年商は設立２期目で１００億円を突破。その後も順調に事業を拡大していった。しかし、製品に不具合が見つかり、不良在庫を大量に抱えてしまうなどの不運が重なり、 022 飯塚克美社以上の事業再生を手がける喜望大地経営の喜多洲山会長が、現在の事業を営む進むきっかけとなったのは、自身の経営する企業が破綻寸前に追い込まれたことだった。家業であった小売業の３代目として経営者になった喜多会長は、年商１億円の企業を28年かけて業界２位の年商41億円にまで拡大した。しかし、急拡大の無理がたたり、負債30億円を抱える破産寸前の状態にまで追い込まれてしまった。「私は必死に情報を集め、勉強し、リスケジュール、リストラ、会社分割、Ｍ＆Ａとあらゆる手を駆使し、倒産の危機を乗り越え、事業再生に成功したのです」結局、小売業の会社は売却してしまったが、この身希望大地経営をもって味わった働く会社の倒産から始まった無手勝流の起業家人生 11 Special Interview 元ライブドア社長意欲のある若者が減っています。最近は安定志向の学生も多いようです。堀江　安定志向で大きな企業に勤めたって全然安全じゃないでしょう。例えば数年前まで人材ビジネスがこんなになるなんて誰が予想できました。あれだけ有望だと言われた企業でも危ないところがいくらでもありますよ。しかも企業の中にいると自分の力ではどうにもならないことが多い。人に自分の運命を委ねる方が怖くてしょうがないと思うけどね。 ―具体的にはどんなビジネスが面白いと思いますか。堀江　何でもいいと思いますけどね。お金のかからないビジネスを年。普通に考えれば月に行って年もしたら火星に行って、そしてアンドロメダ星雲ぐらい行きそうなもんじゃないですか。しかし、実際はぜんぜんできてない。年たった今でようやく火星レベルじゃないですか。おかしいなと思って調べてみたらそれができない理由があった。 ―理由とは何ですか。堀江　簡単に言うとロケットは軍事目的の国家事業だったということなんですよね。冷戦が終結し、その役目を終え、今では公共事業として国がやっていますけれどアメリカももともとは大量に採用した人材をそのままにしておけないから取り組んでいる側面もあった。だからコストを削減しようなんて発想もないし、技術的にはロシアがソユーズを開発してからたいした進歩はしていないんですよ。 ―それでもロシアで民間人が宇宙旅行をしましたね。堀江そう、今では宇宙は金さえあればいけるんです。つまり、普通の人が宇宙旅行できない単純な理由はお金がないことだけ。つまり、ロケットを大量生産し、コストを下げれば誰でも宇宙旅行ができる。電化製品と同じですよ。数百万円で宇宙に行けるようにしたいですね。 ―最後にこれから事業を起こそうと考えている方にメッセージをお願いします。堀江繰り返しになりますが事業をやるなら「金のかからないことをやる」というのと成功したいのなら「常識を疑え」ということですね。やった方がいいんじゃないですか。昔と比べてＩＴツールはめちゃくちゃ安い。ＩＴビジネスなんてほとんどリスクはないですよ。最初にたっぷりと資金を費やす事業は厳しいですよ。たとえばコンビニ経営なんか難しいでしょ。利益が５％とかしかないんじゃないないですか。知り合いの若いやつが「コンビニでバイト中に携帯電話料金を店の金で支払っちゃいました」とか言っているのを聞いて「お前コンビニの粗利がどんだけ少ないかわかっているのか！」って怒鳴ったことがありますよ。携帯電話の料金は２万円くらいするでしょ。下手したらその日一日の利益を超える金額ですよ。そういう仕事はあんまりおススメしませんね。 ―資金がかからないビジネスはリスクは少ないかもしれませんが、誰でもうまくいくものではありません。うまく行く人と行かない人の違いは何だと思いますか。堀江貴文吠える常識に抗う男２００６年１月２３日、ライブドア社長・堀江貴文氏逮捕。時代の寵児だった堀江氏が時代に捕らわれた瞬間だった。証券取引法違反により東京地裁で実刑判決を言い渡された同氏は、現在最高裁に上告中だ。「神聖な証券市場を食い物にした悪人だ」「出る杭が打たれて残念だ」様々な意見があるだろう。しかし、同氏が並ならぬ起業家であることに異を唱える人はいない。激流から束の間、浮島に身を寄せる同氏は今、何を考え、世の中をどう見ているのだろうか。既成概念に徹底抗戦を続ける堀江氏に直撃した。 ―唐突ですが今は何をしているんですか。堀江　今は講演や執筆活動などもしていますよ。指紋認証システムズという会社のオーナー兼社員でもあります。そこでは指紋認証ソフトも扱っているみたいだけどまだそんな稼動はしていないかな。 ―今、景気悪化の影響からか起業あってワクワクするじゃないですか。ただクライマックスが欲しかったんですよね。 ―宇宙へ行くというのは幼い頃からの憧れだったのですか。堀江　憧れというか当たり前のことなんですよね。僕は１９７２年生まれですけど、アポロが月にいったのがその３年前の１９６９起業にリスクなんてありますか？堀江　「人と違うことが考えられない人」はうまくいかないんじゃないですか。常識を疑ってかかるくらいじゃないと。他の人と同じ考えでは勝ち抜くことはできませんよ。 ―現在、事業を手がけている多くの起業家も元気がないように感じます。堀江　諦めちゃった人が多いんじゃないですか。「世界を変える」とか「日本一になる」とか言っている人もいますが本気じゃないですよ。最近は時間があるのでよくゴルフに行きますが、平日でもベンチャー企業の経営者を見かけますよ。君の能力でそんなことやってちゃ絶対に無理だよって言ってやりたいですね。それなりに成功したほとんどの経営者が小金を稼いで満足しているんですよ。 ―堀江さんはライブドア時代に「世界一の会社にする」と公言していましたね。堀江　僕は燃える仕事がしたかった。宇宙旅行を民間で初めて実現させるという目標がありますからそのために世界一の企業を作って資金を稼ごうと思っていました。ＩＴだと世界一になるぐらいしかゴールがないじゃないですか。宇宙旅行も誰もやってないし、夢が 10 Business Chance 2009.10　24 25　Business Chance 2009.10 PROFILE●1972年福岡県生まれ。36歳。91年東京大学入学(後に中退)。96年資本金600万円でオン・ザ・エッジを設立。2002 年に経営破綻した旧ライブドアから営業権を取得、04年には社名をライブドアに変更。同年、大阪近鉄バファローズの買収を打診。 05年ライブドアがニッポン放送の筆頭株主に。フジテレビと経営権争奪戦を繰り広げるも和解。同年、広島６区から衆議院選出馬も落選。06年に証券取引法違反容疑で逮捕。07年に実刑判決を受けるも即日控訴。東京高裁に控訴を棄却されると即日上告。現在は最高裁の判決を待つ身だ。 40 燃える仕事がしたいんですよその先にクライマックスが欲しかった