平成 27 年度海外炭開発支援事業 海外炭開発高度化等調査 「我が国への石炭供給にかかるリスク分析等調査」 平成 28 年 5 月 はじめに 海外炭開発高度化等調査は、我が国への海外炭の安定的かつ低廉な供給確保に資するた め、主要産炭国の石炭生産動向やインフラ整備状況及び主要消費国の石炭消費動向等に係 る最新の情報収集・分析を実施し、本邦民間企業等へ情報提供することを目的としている。 世界の石炭需要、海上貿易量は 2000 年以降の中国やアジア新興諸国の経済発展により 大きく増加し、今後もアジア地域を中心に石炭需要は大きく伸びるものと予想されている。 価格・供給面では、2000 年代後半からの中国の需要の急増等により石炭価格は急騰し、 2011 年にピークに達したが、その後は供給能力の増加や、中国の需要低迷等により、世界 的な石炭供給過剰に陥り、価格は低迷し、多くの石炭会社が炭鉱の休止や閉山、資産の売 却を行っている。採算悪化により倒産した石炭会社も多数ある。このため、新規炭鉱開発 やインフラ整備の遅延が顕在化し、将来的な供給能力に関しての不透明さが増している。 さらに、従来輸出国であったが国内需要の増加により、輸出量が減少する国もある。最 大の一般炭輸出国であるインドネシアは、今後輸出量が徐々に減少すると見られている。 ベトナムでは、内需優先のため輸出量が減少し、我が国への供給が滞る事態も発生してい る。 地球温暖化問題をはじめとして、石炭を取り巻く環境は非常に厳しい状況にある中、 2030 年時点で電源構成の 26%程度を石炭に依存する見通しである我が国は、将来にわた るエネルギー安定供給確保のために、今後の石炭を取り巻く世界情勢や、石炭輸出国の供 給ポテンシャル、経済性等に関し、リスク要因を分析し、供給ソースの多角化や安定供給 確保に備える必要がある。このため、本調査では石炭を取り巻く世界的な環境問題をはじ めとした石炭消費に係るリスクから、アジア太平洋地域での石炭需要動向に基づいた我が 国への供給ポテンシャル、供給国における供給リスク等につき調査・分析を行った。 本調査結果が、我が国の石炭需要家や商社をはじめ、石炭取引に係る企業等の参考にな れば幸甚である。 平成28年5月 独立行政法人 石炭開発部 石油天然ガス・金属鉱物資源機構 要 約 本報告書では、我が国の将来にわたる石炭安定供給確保のために、我が国への主要石炭供給国に おける石炭供給に係るリスクについて分析を行った。 1.我が国の石炭輸入状況 まず、我が国の石炭輸入状況を確認すると、一般炭、原料炭ともに豪州が最大の輸入国でそれ ぞれ 65%、70%程度を占める。次いで、一般炭はインドネシア、ロシア、カナダ、米国他で、原 料炭はカナダ、米国、ロシア、インドネシア他である。強粘結炭では近年新規ソースとしてモザ ンビークからの輸入が始まった。一方、無煙炭の輸入ソースは、ロシア、豪州、中国、ベトナム 他である。我が国の石炭輸入構成は今後も大きく変わることはないであろう。ただし、無煙炭に ついは今後、ベトナムからの輸入が見込めない。 2.世界の石炭需要状況 次に、 世界の石炭需要動向を確認すると、 2000 年代に入り石炭需要は中国での急増に牽引され、 急速に拡大した。今後の石炭需要は穏やかに増加し、2030 年頃にはピークを打つ可能性がある。 レファレンスケースではインドやアセアンを中心に増加すると予測されている。一方、CO2 削減 を強く意識したケースでは、技術開発と省エネルギーがより早く進むと同時に、石炭から他エネ ルギーへの転換が進むことで、石炭需要は早い時期にピークを迎え減少すると予測されている。 これは先進国において石炭需要が大幅に減少するためである。インドやアセアンなどは需要の伸 びは抑えられるが石炭需要は電力需要を担うための燃料として増加することには変わりがない。 一方、原料炭については中国の需要が減少することから 2020 年前にピークを迎えると予測され ている。 3.石炭供給(輸出)に影響を与える要因 このような状況のなか、我が国の石炭需要量は、原子力の復帰の程度と再生可能エネルギーの 増加量によるが、現状とほぼ同レベルもしくは若干減少すると予測されている。我が国は石炭供 給の 99%を上回る量を輸入に頼っており、今後も石炭需要量の増減に関係なく石炭安定供給は重 要な課題である。石炭輸出国において、それらの国の輸出量に影響を与える主な要因としては、 以下が挙げられる。 石炭輸出に関連する政策、規制 多くの輸出国では直接的に輸出を制限するような政策、規制はない。政府が輸出量を直接制限 している輸出国はベトナムとインドネシアである。ベトナムでは VINACOMIN と Dong Bac に 輸出許可が与えられており、政府が輸出量を決定する。インドネシアでは自国の石炭資源の保護 と長期的な有効利用を目的として、生産量を抑制する方針を打ち出している。国内需要が伸びる ため輸出量は減少することになる。 環境問題、それに伴う住民・環境団体などの反対運動 石炭開発や生産に係る環境問題、それによる開発・生産への反対運動がある。豪州では開発反 1 対による許可申請の遅れや炭鉱開発が認可されないなどの事例がある。また、港湾開発への反対 やドレッジング土砂の処理問題などがある。米国では西部海岸での港湾開発への反対が強く、ア ジア市場向けのルートの拡大が難しい。ロシアやコロンビアなど反対運動がそれほど大きな問題 となっていない輸出国もあるが、いずれは石炭開発に影響を与える要因となるであろう。 価格低迷の影響(炭鉱の休山・閉山、新規開発の遅れによる供給不足) 注視しておく必要があるのは、2012 年から続いている価格の下落・低迷による供給への影響で ある。2012 年から石炭価格は一般炭・原料炭ともに下落傾向にあり、低迷している。価格の下落・ 低迷は石炭会社の経営に大きなダメージを与えており、新規開発や拡張計画の遅延や中止、炭鉱 の休山や閉山、資産売却が相次ぎ、また石炭会社が破綻している。最も大きな打撃を受けている のが米国である。価格低迷と国内需要の減少により生産量トップ 2 社(Peabody Energy、Arch Coal)を始め多くの石炭生産会社が破綻し、米連邦破産法 11 条または 7 条の適用申請がなされ ている。また、多くの炭鉱の休山・閉山が続いている。カナダでは Tech Resources を除いて全 ての原料炭生産会社の炭鉱が休山中である。豪州においては多くの新規開発プロジェクトが延期 または中止され、多くの炭鉱が休山または閉山されている。Rio Tinto、Anglo American、Vale など大手資源会社を始め石炭会社では資産の一部の売却を進めている。このため、石炭供給過剰 状況は次第に緩和されつつあると思われるが、石炭需要の伸びによっては供給が不足に陥る可能 性がある。 資産売却による石炭会社の再編 価格低迷により資産の売却(不良資産や新規開発鉱区)が進められている。石炭メジャーでは、 Rio Tinto と Anglo American などが資産整理(資産の一部売却)を進めるなか、Glencore(石 炭輸送事業は売却予定)と BHP Billiton(South 32 を設立し、資産を分割)は現状では豪州の 石炭資産をほぼ維持している。今後の動向を追う必要があるが、一般炭は Glencore のシェアが、 原料炭は BHP Billiton シェアが高まることになろう。一方で、豪州では中堅どころの石炭会社や ファンド会社が既存炭鉱や新規案件鉱区を買収する動きも出てきている。いずれにしても炭鉱の 休山・閉山が進み、石炭資産が大手企業に集中することになれば、石炭購入相手が減るという点 で需要側にとっては調達面で不利となるであろう。 為替変動の影響 価格の下落・低迷下において為替レートが石炭供給国通貨安に動いた。このため価格低迷によ り石炭会社は収益を悪化させているが、石炭は米国ドルで取引されるため石炭供給国通貨安が石 炭会社の価格下落の影響を和らげる結果となった。しかし、ここ数か月、米国ドル安に動いてお り、収益悪化に繋がることが懸念されている。 石炭供給国での需要拡大 上記に示した通り、需要拡大が輸出の減少に繋がっているのは、ベトナムとインドネシアの 2 か国で、輸入国に大きな影響を与えることになる。石炭資源は外貨を稼ぐ重要な輸出品である前 に自国の重要なエネルギー資源である。その他の石炭供給国では、ロシアを除いて国内需要は減 少する見通しであり、問題とならないと思われる。 2 自然災害など 石炭供給を一時的に減少または停止させる要因として、自然災害が挙げられる。これまでもイ ンドネシアや豪州において豪雨や長雨、サイクロンなどによる影響で供給が滞り、石炭価格に影 響を及ぼしてきた。長期にわたり大きな影響が出た事例では豪州 QLD 州での 2008 年初めの豪雨 と 2010 年 11 月から 2011 年初めにかけての豪雨がある。石炭価格は急騰し、特に QLD 州は強 粘結炭の主要供給地域であることから強粘結炭の需給はひっ迫し価格は 300 ドル/トンと急騰し た。その他、最近では発生件数が少なくなったが、ストライキによる供給停止がある。 4.今後の石炭供給 本調査では、上記の要因を踏まえ、石炭供給国における供給リスクを政策、環境問題、輸送イ ンフラ整備、埋蔵量、炭鉱開発の現状、自然災害などから評価した。その結果、我が国が求める 高品位の一般炭と原料炭の輸出国としては、豪州が最も優れているといえる。豪州以外の主要な 輸出国を評価すると以下の通りである。 インドネシアは輸出が減少することになるが、インドネシアが国内の発電所で利用する石炭の 多くは亜瀝青炭であるので、我が国が求める高品位炭への影響は少ないと思われる。なお、原料 炭は内陸部に賦存しており輸送インフラ整備が必要であり、現状の低価格から開発は遅れること になろう。 カナダは主に原料炭を輸出するが、現状は多くの炭鉱が停止している。FOB コストが割高であ ることが今後の供給に影響するが、価格の上昇とともに生産開始されることが期待される。 米国はトップ 2 の石炭会社を始め多くの石炭会社が破綻しており、国内需要、主な輸出先であ る欧州市場も縮小する。破綻会社の生産がすぐに停止されるわけではないが、需要に見合った体 制になると思われる。アジア市場への一般炭の供給拡大は、西海岸の港湾建設が環境問題からの 反対、価格低迷による生産会社の体力低下、中国の輸入減から難しいであろう。原料炭ついては、 価格の変動で生産を調整するスイングサプライヤーであったが、今回の価格低迷が石炭会社に与 えた影響は大きいことが懸念される。ただし、米国は豪州の代替えになる強粘結炭の供給国とし て重要である。 ロシアは海上輸送距離が短く近距離ソースであるが、石炭価格の低迷と現状のロシア内情から みて投資が進まず、内陸輸送が長距離であることが今後の開発のネックとなろう。 モザンビークでは価格が低迷するなか開発が進められており(Nacala 港と鉄道が完成) 、輸出 量も次第に増加している。しかし、開発への投資額が巨額で FOB コストが高くなるため価格の 低迷により他のプロジェクト開発は遅れている。今後の供給拡大は原料炭価格の上昇に大きく影 響されることになろう。 3 4 Summary In order to secure a stable future coal supply in Japan, this report has analyzed coal supply risks in major coal supplying countries of Japan. 1. Coal Import Situation in Japan First, we will confirm our coal import situation. Australia is the biggest supplying country of both steam coal and coking coal, accounting for around 65% and 70%, respectively, followed by Indonesia, Russia, Canada, the U.S., etc. for steam coal, and Canada, the U.S., Russia, Indonesia, etc. for coking coal. As a new source for heavy coking coal, import from Mozambique has recently started. On the other hand, anthracite coal is imported from Russia, Australia, China, Vietnam, etc. This coal import configuration in Japan will probably not change greatly in the future. However, future import of anthracite coal from Vietnam is not expected. 2. Global Coal Demand Situation Next, we will confirm the global coal demand trend. In the 2000s, coal demand expanded quickly, pushed by a sharp increase in China. The future coal demand may increase gradually and peak around 2030. A reference case expects increased coal demand, centering on India and the ASEAN. In the meantime, it is expected in a strong CO2 reduction-conscious case that the coal demand will peak early and drop because of enhanced switching from coal to other energy as well as accelerated technological innovation and development and energy conservation. This is because the coal demand in advanced countries will decrease remarkably. The coal demand will be inhibited in India and the ASEAN, but will still keep increasing as a fuel to meet the electric power demand. For coking coal, its demand is expected to peak before 2020 even in the reference case because China’s demand will decrease. 3. Factors Affecting Coal Supply (Export) Under such circumstances, the coal demand in Japan is expected to slightly decrease from the level almost equal to the status quo, although it depends on the degree of recovery of nuclear power and the increase in renewable energy. Japan imports more than 99% of its coal supply. The stable supply of coal is a grave issue regardless of future increases or decreases of coal demand. The following lists major factors affecting coal export volume in the coal export countries. Policies and Regulations Related to Coal Export Many export countries do not have policies or regulations which directly restrict export. Vietnam and Indonesia are the only export countries where the government directly restricts export volume. In Vietnam, an export license is given only to VINACOMIN and Dong Bac, and the government decides export volume. In Indonesia, the government has launched a policy to inhibit production volume for the purpose of protection and long-term effective utilization of its own coal resources. The export volume will decrease because of higher domestic coal demand. Environmental Problems and Associated Campaigns against Them by Residents and Environmental Groups There are environmental problems related to coal development and production, which have given rise to anti-coal development campaigns. In Australia, there are cases where opposition to development delayed 5 application for permission or hindered authorization for coal mine development. There are also problems such as opposition to harbor development and disposal of dredged earth and sand. In the United States, there is strong opposition to harbor development on the west coast, making it difficult to expand an export route to the Asian market. There are some export countries such as Russia and Columbia where campaigns are not so serious, but those problems will become the factors affecting coal development sooner or later. Effects of Low Price Stagnation (Supply Shortage due to Suspended/Closed Coal Mines or Delayed New Developments) It is necessary to keep an eye on the effects of low price stagnation on coal supply, which has been continuing from 2012. The prices of both steam coal and coking coal have been declining and have been stagnantly low from 2012. Price decline and stagnation has been greatly damaging management of coal companies, causing many delays or cancellations of new development and expansion plans, suspensions or closures of coal mine operations, and sales of assets, which has resulted in the bankruptcy of coal companies. The most damaged country is the United States. Due to low price stagnation and decreased domestic demand, many coal production companies went bankrupt, including the two highest-production ones (Peabody Energy and Arch Coal), filing for protection under Article 11 or 7 of the Federal Bankruptcy Law. In Canada, except for Tech Resources, the coal mines of all the coking coal production companies are being suspended. In Australia, many new development projects were postponed or cancelled, suspending or closing many coal mines. Including major resource companies such as Rio Tinto, Anglo American and Vale, coal companies are selling part of their assets. As a result, it is conceivable that excessive coal supply can be gradually eased, but there may be a shortage in the coal supply, depending on the growth of coal demand. Reorganization of Coal Companies by Sale of Assets Assets (non-performing assets and newly developed mining lots) are being sold due to low price stagnation. Concerning major coal mining companies, Rio Tinto and Anglo American are liquidating their assets (partial sale of assets), and Glencore (going to sell coal transport business) and BHP Billiton (established South 32 to split assets) are maintaining almost all coal assets in Australia for the time being. Although it is necessary to track future trends, Glencore and BHP Billiton are expected to increase their market shares of steam coal and coking coal, respectively. In the meantime, some medium-size coal companies and fund companies are purchasing the existing coal mines and new mining lots in Australia. In any case, if more coal mines are suspended or closed, allowing major corporations to aggressively obtain coal assets will be a disadvantage to the demand side in procurement of coal because it would mean fewer coal suppliers. Effects of Foreign Exchange Fluctuations Under low price stagnation, foreign exchange rates fluctuated toward currency devaluation in the coal supplying countries. Although low price stagnation has reduced profits in coal production, the devalued currencies in the coal supplying countries have eased the effects of lower coal prices on the coal companies because coal is traded in U.S. dollars. During these last couple of months, however, the U.S. dollar has been devalued, raising concerns about lower profits. Thus, foreign exchange fluctuations have a direct effect on profits, except for in the United States. In investment, procurement of facilities from overseas is settled in U.S. dollars, inevitably being accompanied by foreign exchange risks among U.S. dollars, a country’s own currency and currency in an investment target country. Higher Demand in Coal Supplying Countries As described above, higher demand has led to decreased export in two countries, Vietnam and Indonesia, 6 which will be having a big effect on importing countries. Coal resources are important energy resources of a country before they become an important export product earning a foreign currency. In other coal supplying countries except for Russia, this will be no issue because domestic demand is expected to decline. Natural Disasters, etc. Natural disasters are included in the factors that temporarily decrease or stop coal supply. So far in the past, the coal supply has been suspended by the effects of heavy rain, long-term rain, cyclones, etc. in Indonesia and Australia, affecting the coal prices. The cases of long-term big effects include heavy rain in early 2008 and another heavy rain from Nov. 2010 to early 2011 in the state of QLD, Australia. The coal prices rose sharply; particularly, the supply-demand condition for heavy coking coal was strained, causing a sharp price rise to 300 dollars/ton since the state of QLD is a major supply region for heavy coking coal. In addition, there has been completeed stops in supply due to strikes, although the numbers of them have reduced these days. 4. Future Coal Supply In light of the above-mentioned factors, this survey has evaluated supply risks in the coal supplying countries from viewpoints of policies, environmental problems, improvement of transport infrastructure, coal reserves, status quo of coal mine development, natural disasters, and so on. As a result, it was found that Australia was the best export country of high-grade steam coal and coking coal required for Japan. The following evaluates major export countries other than Australia. Indonesia will export less, but this will not have a big effect on high-grade coal required for Japan because most of the coal utilized at the domestic power plants in Indonesia is subbituminous coal. Coking coal exists in inland areas, requiring improvement of transport infrastructure. Given the current low price, development will be delayed. Canada mainly exports coking coal, but many coal mines are currently suspending operation. Comparatively high FOB cost affects future supply, but it is expected to start production as the price goes up. In the United States, many coal companies have gone bankrupt, including the top two, reducing the domestic coal demand and the European market, a major export destination. Production by the bankrupt companies was not stopped immediately, but there will be a structure suitable to demand. Expanded supply of steam coal to the Asian market is presumed difficult because of an opposition to harbor construction on the west coast from an environmental viewpoint, low price stagnation, lower domestic coal demand, and lower import volume by China. For coking coal, the United States has been a swing supplier which adjusts production according to price fluctuations, but there is a concern that this low price stagnation had a big effect on the coal companies. The United States is an important substitute country to supply heavy coking coal in place of Australia. Russia is a short-distance supply source with a short marine transport distance. Given low price stagnation and current internal situations in Russia, however, investments will not be promoted and long-distance inland transport will be an obstacle to future development. In Mozambique, development has been implemented (Nacala port and railroad were completed) while the coal prices have been low, gradually increasing export volume. Because the development investment amount is huge, raising FOB cost, however, development of other projects has been delayed due to low price stagnation. Future supply expansion will depend greatly on price hikes of coking coal. 7 8 目 次 1. 石炭供給、消費に影響を及ぼす要因の抽出と分析 .......................................................................... 3 1.1 石炭生産・輸出に影響を与える石炭政策・規制 ........................................................................... 3 1.2 生産国の需要増加による供給能力の減少....................................................................................... 4 1.3 地球温暖化問題等による石炭消費規制........................................................................................... 8 1.4 アジア新興国等の需要増加 ............................................................................................................15 1.5 中国の石炭輸入 ...............................................................................................................................18 1.6 インドの石炭輸入............................................................................................................................20 1.7 石炭価格の低迷による炭鉱の休止・閉山、新規開発の遅れ...................................................... 22 1.8 資産売却・買収に伴う供給者構図の変貌..................................................................................... 25 1.9 為替変動の影響 ...............................................................................................................................26 2. 主要輸出国における石炭供給リスク .............................................................................................. 31 2.1 世界の生産量、消費量、海上貿易量の推移................................................................................. 31 2.1.1 石炭 .......................................................................................................................................... 31 2.1.2 一般炭 ...................................................................................................................................... 41 2.1.3 原料炭 ...................................................................................................................................... 46 2.1.4 褐炭 .......................................................................................................................................... 51 2.1.5 無煙炭 ...................................................................................................................................... 54 2.2 我が国の輸入量推移と石炭輸入対象国......................................................................................... 59 2.2.1 石炭輸入量推移....................................................................................................................... 59 2.2.2 石炭輸入対象国....................................................................................................................... 60 2.3 石炭価格の動向 ...............................................................................................................................68 2.3.1 一般炭 ...................................................................................................................................... 68 2.3.2 原料炭 ...................................................................................................................................... 70 2.4 石炭供給国の石炭生産・輸出に影響を与える要因分析.............................................................. 74 2.4.1 豪州 .......................................................................................................................................... 74 2.4.2 インドネシア........................................................................................................................... 79 2.4.3 ロシア ...................................................................................................................................... 83 2.4.4 カナダ ...................................................................................................................................... 86 2.4.5 米国 .......................................................................................................................................... 88 2.4.6 ベトナム................................................................................................................................... 92 2.4.7 南アフリカ............................................................................................................................... 95 2.4.8 モザンビーク........................................................................................................................... 97 2.4.9 モンゴル................................................................................................................................... 99 2.4.10 コロンビア............................................................................................................................. 102 2.4.11 中国 ........................................................................................................................................ 104 2.4.12 ニュージーランド ................................................................................................................. 105 2.5 石炭供給国にける供給リスク分析 ..............................................................................................108 i 2.5.1 供給国別評価(一般炭) ..................................................................................................... 108 2.5.2 供給国別評価(原料炭) ..................................................................................................... 117 2.5.3 供給国別評価(無煙炭) ..................................................................................................... 126 3. 世界の石炭需要予測分析 ............................................................................................................... 145 3.1 石炭需要予測 .................................................................................................................................145 3.1.1 各機関の予測結果の比較 ..................................................................................................... 145 3.1.2 IEA, “World Energy Outlook 2015” .................................................................................. 146 3.1.3 日本エネルギー経済研究所、 「アジア/世界エネルギーアウトルック 2015」 ............ 152 3.1.4 EIA, “International Energy Outlook 2016”..................................................................... 154 3.1.5 BP, “BP Energy Outlook 2016”.......................................................................................... 158 3.2 炭種別石炭需要予測......................................................................................................................162 ii 図目次 図 1.2.1 インドネシアの追加発電設備容量(電源別) .......................................................................... 5 図 1.2.2 インドネシアの発電電力量(電源別)...................................................................................... 5 図 1.2.3 ベトナムの発電設備容量(電源別).......................................................................................... 7 図 1.2.4 ベトナムの発電電力量(電源別).............................................................................................. 7 図 1.3.1 EU における発電量の推移と見通し........................................................................................... 9 図 1.3.2 米国の発電設備容量の追加と廃棄.............................................................................................11 図 1.3.3 石炭火力・ガス火力の発電電力量に占める割合と発電向けの石炭・ガス価格の推移 ...... 12 図 1.3.4 Clean Power Plan による電源別の発電電力量減少見通し.................................................... 14 図 1.3.5 Clean Power Plan による電源構成の変化............................................................................... 14 図 1.3.6 Clean Power Plan による石炭消費量の見通し ....................................................................... 15 図 1.4.1 アセアン 5 か国の一般炭需要見通し ....................................................................................... 16 図 1.5.1 中国の輸入国別石炭輸入量の推移............................................................................................ 18 図 1.5.2 中国の炭種別石炭輸入量の推移 ............................................................................................... 19 図 1.5.3 中国の輸入国別石炭輸入量の推移............................................................................................ 19 図 1.5.4 中国の輸入国別石炭輸入量の推移............................................................................................ 20 図 1.6.1 インドの炭種別石炭輸入量の推移............................................................................................ 21 図 1.7.1 米国の石炭国内販売量と発電用石炭価格の推移 .................................................................... 24 図 1.7.2 米国の石炭輸出量と輸出価格の推移........................................................................................ 25 図 1.7.3 米国の石炭販売収入の推移 ....................................................................................................... 25 図 1.9.1 主要石炭輸出国通貨の対米ドル為替レートの推移 ................................................................ 27 図 1.9.2 豪州一般炭スポット価格の推移 ............................................................................................... 27 図 2.1.1 石炭生産量の推移(炭種別) ................................................................................................... 31 図 2.1.2 石炭生産量の推移(地域別) ................................................................................................... 32 図 2.1.3 石炭生産量の推移(上位 10 か国) ......................................................................................... 33 図 2.1.4 石炭生産量上位 10 か国............................................................................................................. 34 図 2.1.5 石炭消費量の推移(地域別) ................................................................................................... 35 図 2.1.6 2014 年の地域別石炭消費構成 ................................................................................................. 36 図 2.1.7 2014 年の地域別石炭消費構成の推移...................................................................................... 36 図 2.1.8 石炭消費量上位 10 か国............................................................................................................. 37 図 2.1.9 石炭貿易量の推移....................................................................................................................... 37 図 2.1.10 主要石炭輸出国の石炭輸出量の推移...................................................................................... 38 図 2.1.11 石炭輸出量上位 10 か国........................................................................................................... 39 図 2.1.12 主要石炭輸入国の石炭輸入量の推移...................................................................................... 40 図 2.1.13 石炭輸入量上位 10 か国 .......................................................................................................... 40 図 2.1.14 石炭フロー(2014 年)........................................................................................................... 41 図 2.1.15 一般炭生産量の推移................................................................................................................. 42 図 2.1.16 一般炭生産量上位 10 か国 ...................................................................................................... 42 iii 図 2.1.17 一般炭消費量の推移................................................................................................................. 43 図 2.1.18 一般炭消費量上位 10 か国 ...................................................................................................... 44 図 2.1.19 主要国の一般炭輸出入量の推移 ............................................................................................. 44 図 2.1.20 一般炭輸出量上位 10 か国 ...................................................................................................... 45 図 2.1.21 一般炭輸入量上位 10 か国 ...................................................................................................... 46 図 2.1.22 一般炭フロー ............................................................................................................................ 46 図 2.1.23 原料炭生産量の推移................................................................................................................. 47 図 2.1.24 原料炭生産量上位 10 か国 ...................................................................................................... 47 図 2.1.25 原料炭消費量の推移................................................................................................................. 48 図 2.1.26 原料炭消費量上位 10 か国 ...................................................................................................... 49 図 2.1.27 主要国の原料炭輸出入量の推移 ............................................................................................. 49 図 2.1.28 原料炭輸入量上位 10 か国 ...................................................................................................... 51 図 2.1.29 原料炭フロー ............................................................................................................................ 51 図 2.1.30 褐炭生産量の推移..................................................................................................................... 52 図 2.1.31 褐炭生産量上位 10 か国 .......................................................................................................... 52 図 2.1.32 褐炭消費量の推移..................................................................................................................... 53 図 2.1.33 褐炭消費量上位 10 か国 .......................................................................................................... 53 図 2.1.34 無煙炭生産量の推移................................................................................................................. 54 図 2.1.35 無煙炭生産量上位 10 か国 ...................................................................................................... 55 図 2.1.36 無煙炭消費量の推移................................................................................................................. 55 図 2.1.37 無煙炭消費量上位 10 か国 ...................................................................................................... 56 図 2.1.38 主要国の無煙炭輸出入量の推移 ............................................................................................. 57 図 2.1.39 無煙炭輸出量上位 10 か国 ...................................................................................................... 57 図 2.1.40 無煙炭輸入量上位 10 か国 ...................................................................................................... 58 図 2.2.1 我が国の日本の石炭供給 ........................................................................................................... 59 図 2.2.2 我が国の炭種別石炭輸入量の推移............................................................................................ 60 図 2.2.3 我が国の国別石炭輸入量(2015 年)...................................................................................... 60 図 2.2.4 我が国の石炭輸入量の推移 ....................................................................................................... 61 図 2.2.5 我が国の一般炭輸入量の推移 ................................................................................................... 61 図 2.2.6 輸入国別の一般炭輸入比率(2015 年).................................................................................. 62 図 2.2.7 我が国の原料炭輸入量の推移 ................................................................................................... 63 図 2.2.8 輸入国別の原料炭輸入比率(2015 年).................................................................................. 63 図 2.2.9 我が国の無煙炭輸入量の推移 ................................................................................................... 64 図 2.2.10 輸入国別の無煙炭輸入比率(2015 年)................................................................................ 64 図 2.3.1 一般炭スポット価格の推移 ....................................................................................................... 68 図 2.3.2 一般炭スポット価格の推移 ....................................................................................................... 69 図 2.3.3 インドネシアのレファレンス価格の推移................................................................................ 70 図 2.3.4 豪州 OLD 州強粘結炭日本向け輸出価格の推移...................................................................... 71 図 2.3.5 日本の長期契約ベースの契約価格............................................................................................ 72 図 2.3.6 原料炭スポット価格の推移 ....................................................................................................... 72 iv 図 2.4.1 インドネシアの石炭輸出量の推移............................................................................................ 80 図 2.4.2 インドネシアの石炭生産・消費・輸出量計画 ........................................................................ 81 図 2.4.3 ロシアの石炭輸出量の推移 ....................................................................................................... 84 図 2.4.4 米国の石炭輸出量の推移 ........................................................................................................... 89 図 2.4.5 米国北西部の石炭ターミナル計画位置図................................................................................ 90 図 2.4.6 ベトナムの石炭輸出量の推移 ................................................................................................... 93 図 2.4.7 南アフリカの輸出量の推移 ....................................................................................................... 95 図 2.4.8 モンゴルの中国向け石炭輸出量の推移.................................................................................... 99 図 2.4.9 コロンビアの石炭輸出量の推移 ............................................................................................. 102 図 2.4.10 ニュージーランドの石炭輸出量の推移................................................................................ 106 図 2.5.1 石炭供給リスク(豪州、一般炭).......................................................................................... 109 図 2.5.2 石炭供給リスク(インドネシア、一般炭) .......................................................................... 110 図 2.5.3 石炭供給リスク(ロシア、一般炭).......................................................................................111 図 2.5.4 石炭供給リスク(カナダ、一般炭)...................................................................................... 112 図 2.5.5 石炭供給リスク(米国、一般炭).......................................................................................... 113 図 2.5.6 石炭供給リスク(南アフリカ、一般炭).............................................................................. 114 図 2.5.7 石炭供給リスク(コロンビア、一般炭).............................................................................. 115 図 2.5.8 石炭供給リスク(中国、一般炭).......................................................................................... 116 図 2.5.9 石炭供給リスク(豪州、原料炭).......................................................................................... 117 図 2.5.10 石炭供給リスク(カナダ、原料炭).................................................................................... 118 図 2.5.11 石炭供給リスク(米国、原料炭)........................................................................................ 119 図 2.5.12 石炭供給リスク(ロシア、原料炭).................................................................................... 120 図 2.5.13 石炭供給リスク(モザンビーク、原料炭)........................................................................ 121 図 2.5.14 石炭供給リスク(モンゴル、原料炭)................................................................................ 122 図 2.5.15 石炭供給リスク(インドネシア、原料炭)........................................................................ 123 図 2.5.16 石炭供給リスク(ニュージーランド、原料炭) ................................................................ 124 図 2.5.17 石炭供給リスク(中国、原料炭) ....................................................................................... 126 図 2.5.18 石炭供給リスク(ロシア、無煙炭).................................................................................... 127 図 2.5.19 石炭供給リスク(豪州、無煙炭) ....................................................................................... 128 図 2.5.20 石炭供給リスク(中国、無煙炭) ....................................................................................... 129 図 2.5.21 石炭供給リスク(ベトナム、無煙炭)................................................................................ 130 図 3.1.1 一次エネルギー需要予測の比較(IEA、IEEJ、EIA、BP) ................................................ 145 図 3.1.2 地域別の実質 GDP 伸び率(IEA 前提条件)........................................................................ 147 図 3.1.3 地域別の人口増加率(IEA 前提条件) .................................................................................. 147 図 3.1.4 一次エネルギー需要見通し(IEA) ....................................................................................... 148 図 3.1.5 石炭需要見通し(IEA)........................................................................................................... 150 図 3.1.6 地域別の実質 GDP 伸び率(IEEJ 前提条件)...................................................................... 152 図 3.1.7 地域別の人口増加率(IEEJ 前提条件) ................................................................................ 152 図 3.1.8 一次エネルギー需要見通し(IEEJ レファレンスケース) ................................................. 153 図 3.1.9 石炭需要見通し(IEEJ レファレンスケース)..................................................................... 154 v 図 3.1.10 地域別の実質 GDP 伸び率(EIA レファレンスケース前提条件)................................... 155 図 3.1.11 地域別の人口増加率(EIA レファレンスケース前提条件).............................................. 156 図 3.1.12 一次エネルギー需要見通し(EIA レファレンスケース) ................................................. 156 図 3.1.13 石炭需要見通し(EIA レファレンスケース)..................................................................... 157 図 3.1.14 一次エネルギー需要見通し(BP) ...................................................................................... 159 図 3.1.15 石炭需要見通し(BP) ......................................................................................................... 160 図 3.2.1 石炭需要見通し(IEEJ)......................................................................................................... 162 図 3.2.2 一般炭要見通し(IEEJ)......................................................................................................... 163 図 3.2.3 原料炭需要見通し(IEEJ)..................................................................................................... 165 vi 表目次 表 1.2.1 インドネシアの発電における石炭需要見通し .......................................................................... 5 表 1.2.2 インドネシアの石炭需要見通し ................................................................................................. 6 表 1.2.3 インドネシアの石炭輸出見通し ................................................................................................. 6 表 1.4.1 アセアン 5 か国の一般炭需要見通し ....................................................................................... 17 表 1.4.2 アセアン 5 か国の一般炭輸入見通し ....................................................................................... 17 表 1.4.3 アセアン 5 か国の原料炭需要見通し ....................................................................................... 17 表 1.4.4 アセアン 5 か国の原料炭輸入見通し ....................................................................................... 18 表 1.5.1 中国の 1-3 月の輸入量の比較.................................................................................................... 20 表 1.6.1 インドの炭種別輸入量............................................................................................................... 21 表 1.6.2 CIL の石炭生産量の推移............................................................................................................ 21 表 1.7.1 2012 年以降に連邦破産法の適用を申請した石炭会社........................................................... 24 表 2.1.1 石炭生産量の推移(炭種別) ................................................................................................... 32 表 2.1.2 石炭生産量の推移(地域別) ................................................................................................... 32 表 2.1.3 石炭生産量の推移(上位 10 か国) ......................................................................................... 34 表 2.1.4 石炭消費量の推移(地域別) ................................................................................................... 35 表 2.1.5 一般炭消費量の推移................................................................................................................... 43 表 2.1.6 原料炭消費量の推移................................................................................................................... 48 表 2.1.7 褐炭消費量の推移....................................................................................................................... 53 表 2.1.8 無煙炭消費量の推移................................................................................................................... 56 表 2.2.1 我が国の石炭輸入量(炭種別、輸入国別)の推移 ................................................................ 65 表 2.4.1 豪州の石炭輸出量の推移 ........................................................................................................... 74 表 2.4.2 QLD 州の炭鉱開発プロジェクト遅延状況.............................................................................. 76 表 2.4.3 NSW 州の炭鉱開発プロジェクト遅延状況 ............................................................................. 77 表 2.4.4 豪州の石炭ターミナル積出能力(2015 年末) ...................................................................... 77 表 2.4.5 QLD 州の石炭ターミナル整備プロジェクト遅延状況........................................................... 78 表 2.4.6 NSW 州の炭田別可採埋蔵量 .................................................................................................... 79 表 2.4.7 QLD 州の確認埋蔵量................................................................................................................. 79 表 2.4.8 インドネシアの主要バージ積出港............................................................................................ 82 表 2.4.9 インドネシアの主要石炭積出港 ............................................................................................... 82 表 2.4.10 インドネシアの石炭埋蔵量 ..................................................................................................... 83 表 2.4.11 ロシアの石炭輸出量の推移 ..................................................................................................... 84 表 2.4.12 ロシア政府による石炭輸出見通し ......................................................................................... 84 表 2.4.13 ロシアの石炭埋蔵量................................................................................................................. 86 表 2.4.14 カナダの石炭ターミナル積出能力 ......................................................................................... 87 表 2.4.15 米国の石炭輸出量の推移......................................................................................................... 88 表 2.4.16 米国北西部の石炭ターミナル計画概要.................................................................................. 91 表 2.4.17 米国の石炭ターミナル............................................................................................................. 92 vii 表 2.4.18 ベトナムの確認可採埋蔵量 ..................................................................................................... 94 表 2.4.19 南アフリカの石炭埋蔵量......................................................................................................... 97 表 2.4.20 南アフリカの石炭品位............................................................................................................. 97 表 2.4.21 モンゴルの主要炭鉱の生産計画 ........................................................................................... 101 表 2.4.22 コロンビアの主要石炭積出港 ............................................................................................... 103 表 2.4.23 コロンビア炭田別石炭埋蔵量(2012 年).......................................................................... 103 表 2.4.24 Solid Energy の石炭保有埋蔵量(2015 年 6 月 30 日現在) ........................................... 107 表 2.5.1 主要石炭供給国の石炭生産・輸出に影響を与える要因(1) ........................................... 131 表 2.5.2 主要石炭供給国の石炭生産・輸出に影響を与える要因(2) ........................................... 133 表 2.5.3 主要石炭供給国の石炭生産・輸出に影響を与える要因(3) ........................................... 135 表 2.5.4 主要石炭供給国の石炭生産・輸出に影響を与える要因(4) ........................................... 137 表 2.5.5 主要石炭供給国の石炭生産・輸出に影響を与える要因(5) ........................................... 139 表 2.5.6 主要石炭供給国の石炭生産・輸出に影響を与える要因(6) ........................................... 141 表 3.1.1 一次エネルギー需要予測の比較(IEA、IEEJ、EIA、BP) ................................................ 146 表 3.1.2 一次エネルギー需要見通し(IEA、Current Policies Scenario)........................................ 148 表 3.1.3 一次エネルギー需要見通し(IEA、New Policies Scenario)............................................. 149 表 3.1.4 石炭需要見通し(IEA、Current Policies Scenario) ........................................................... 151 表 3.1.5 石炭需要見通し(IEA、New Policies Scenario) ................................................................ 151 表 3.1.6 一次エネルギー需要見通し(IEEJ レファレンスケース) ................................................. 153 表 3.1.7 石炭需要見通し(IEEJ ファレンスケース)......................................................................... 155 表 3.1.8 一次エネルギー需要見通し(EIA レファレンスケース) ................................................... 157 表 3.1.9 石炭需要見通し(EIA レファレンスケース)....................................................................... 158 表 3.1.10 一次エネルギー需要見通し(BP) ...................................................................................... 159 表 3.1.11 石炭需要見通し(BP).......................................................................................................... 160 表 3.2.1 石炭需要見通し(IEEJ)......................................................................................................... 162 表 3.2.2 一般炭需要見通し(IEEJ)..................................................................................................... 164 表 3.2.3 原料炭需要見通し(IEEJ)..................................................................................................... 165 viii 第 1 章 石炭供給、消費に影響を及ぼす要因の抽出と分析 -1- -2- 1. 石炭供給、消費に影響を及ぼす要因の抽出と分析 石炭は供給面、消費面において、それを妨げる種々の要因の影響を受けている。石炭供給面では、 輸出に関わる政策や規制、石炭開発や生産に対する規制、またここ数年の石炭価格の低迷による影響 などがある。石炭消費面では地球温暖化など環境問題による規制がある。また石炭市場に影響を与え る要因としては、輸入需要動向(特に中国とインド)がある。本章ではこのような要因を取り上げ、 それらが石炭供給、石炭消費、および石炭市場に及ぼす影響を整理する。 1.1 石炭生産・輸出に影響を与える石炭政策・規制 豪州を始め、カナダ、ロシアなど多くの輸出国では輸出が抑制または制限されるような政策・規制 はない。しかし、石炭輸出国の中には、石炭生産や輸出に影響を与える政策や規制を打ち出している ところがあり、場合によっては輸出量が政策的に制限されることになる。現状では国内需要が増加す るベトナムとインドネシアの事例が挙げられる。 (1) ベトナム 無煙炭の輸出国であるベトナムでは、国営企業 2 社(VINACOMIN と Dong Bac)に輸出許可が与 えられている。ベトナム政府は国内で使用されない高品質の石炭を輸出する方針で、石炭会社が政府 に炭種と数量を申請し、許可を得ることが必要となる。 ベトナムの輸出量は中国のベトナムからの輸入量が急増したことから 2005 年以降急速に増加し 2007 年には 3,000 万トンを突破した。その後、輸出量は 2009 年の 2,499 万トンから中国への輸出量 の減少に伴い減少した。ベトナム政府は 2000 年代後半には増加する内需に対応するために石炭輸出 を制限し、高品位炭の輸出は継続する方針を打ち出して、中国へ輸出されている低品位炭の輸出量を 削減し、2015 年には中国への輸出はゼロとなった。また、2015 年 2 月には高品位炭の粉炭の輸出を 禁止した。その後この禁止処置は解除されたが、2015 年の輸出量は 175 万トンにとどまった。 ベトナムは、国内需要のない炭種(高品位炭)に限定して輸出を継続する方針である(2016 年 2 月 TEX レポートなど) 。VINACOMIN は 2016 年から 2020 年まで 5 年間の輸出量を 200 万トン/年 と計画し政府に申請していた 1。しかし、2016 年 1-3 月のベトナムの輸出量はわずか 6 万 5,577 トン にとどまっている。 また、ベトナムでは輸出を抑制する規制として輸出税がある。ベトナム政府は輸出量の急増を受け て輸出量を抑制すべく2007 年1 月 1 日より輸出税を導入した。 当初の輸出税は10%であったが、 2008 年 4 月 22 日に 15%に、2008 年 6 月 18 日に 20%まで引き上げられた。以後数回にわたり引き下げ、 引き上げが繰り返され、現在の輸出税率は 10%で、2013 年 9 月に 13%から 10%に引き下げられた。 このように過去には輸出抑制策として輸出税を課したが、政策的に輸出量を規制している現状では輸 出税率が輸出量に影響を与えることは少ないであろう。 (2) インドネシア インドネシアでは 2009 年に施行された新鉱物石炭法に基づき、自国の鉱物資源に対する保護政策 1 JOGMEC、 「平成 27 年度海外炭開発支援事業海外炭開発高度化等調査(韓国、台湾及び東南アジア諸国の一般炭需 要動向と輸入動向調査) 」での現地ヒアリング調査より。 -3- が打ち出されている。この新鉱物石炭法に関連していくつかの規則があるが、中でも石炭資源の保護 と将来にわたる石炭資源有効利用の観点から石炭生産量の管理を実施している。 この石炭生産管理は、 今後、国内需要が増加することから輸出量を抑制することになる。 インドネシア政府は 2015 年初めに”National Mid - Term Development Plan of 2015-2019(大統 領令 NO.2) ”を発表した。 その中で示されている生産計画によれば、2015 年の石炭生産量を 4 億 2,500 万トンとし、以後 2016 年に 4 億 1,900 万トン、2017 年に 4 億 1,300 万トン、2018 年に 4 億 600 万 トン、2019 年に 4 億トンまで減少させる計画となっている。 なお、現状の生産実績をみると、輸出需要の減少と低価格による中小の石炭会社の生産量の減少に より 2015 年の生産量は 3 億 9,200 万トン、輸出量は 2 億 9,500 万トンと報じられており 2、計画を大 きく下回っている。 生産抑制のほか輸出を抑制する施策としては、現状では石炭は適用除外になっているが、今後の検 討次第では鉱物資源の高付加価値化や輸出税導入等を挙げることできる。 1.2 生産国の需要増加による供給能力の減少 石炭生産・輸出国において自国の石炭需要の増加により石炭輸出量の減少が見込まれるのはインド ネシアとベトナムの 2 か国である。両国では電力需要の増加に対応するために石炭火力の増強が進め られており、それに伴い石炭需要が増加する。 (1) インドネシア RUPTL 2015-20243によれば、インドネシアの電力需要は年平均 7.8%で伸び、2025 年には 464.2TWh まで増加すると予測され、この電力需要を賄うために 2024 年までに新たに 70.4GW の発 電設備容量が必要になるとしている。このうち石炭火力の発電電力容量は 42.1GW、全体の 59.8%を 占める。計画では 2019 年に追加される発電電力設備容量が飛びぬけて多い。これは 2014 年にジョコ ウィ政権が立ち上げた今後 5 年間(2015 年-2019 年)の「35GW 発電所建設計画」を反映している ためである。この 35GW 計画のうち石炭火力は 56%を占めている。 また、発電電力量の燃料別構成は図 1.2.2 のとおりで、2024 年の構成は石炭が 63.7%、天然ガス (LNG を含む)は 19.2%、地熱が 9%、水力が 6.6%、石油とその他が 1.5%と予測されている。そ の結果、石炭需要量は 2015 年の 7,400 万トンから 2024 年には 1 億 7,100 万トンに達すると予測さ れている。 2 3 各種業界紙より。 電力供給事業計画 2015-2024(Rencana Usaha Penyediaan Tenaga Listrik 2015-2024: RUPTL10-19) -4- (MW) (出所) PLN, “RUPTL 2015-2024 より抜粋 図 1.2.1 インドネシアの追加発電設備容量(電源別) (出所) PLN, “RUPTL 2015-2024 より抜粋 図 1.2.2 インドネシアの発電電力量(電源別) 表 1.2.1 インドネシアの発電における石炭需要見通し 2015 2016 2017 2018 2019 2020 2021 2022 (百万トン) 2023 2024 74 86 98 106 119 133 148 157 168 171 (出所) PLN, “RUPTL 2015-2024 より抜粋 一方、エネルギー鉱物資源省鉱物石炭総局は 2019 年までの石炭需要見通しを報告している。この 報告によれば、石炭需要量は 2015 年の 9,230 万トンから 2019 年には 2 億 210 万トンまで増加する -5- と見通されている。長期計画では 2015 年の 1 億 200 万トンから 2019 年には 2 億 4,000 万トンにな ると予測されている。なお、これらの見通しでは石炭需要量は 35GW 計画の最終年である 2019 年に 石炭需要が急激に増加する見通しとなっている。これは運転開始する設備容量をベースに石炭需要を 算出したものと思われ、PLN の RUPTL の燃料別発電電力量計画をベースにした石炭需要予測と大 きく異なっている。 表 1.2.2 インドネシアの石炭需要見通し 2015 電力 既存石炭火力 2016 2017 2018 (千トン) 2019 166,100 74,000 112,800 94,500 108,700 74,000 76,200 76,200 76,200 76,200 36,600 18,300 32,500 89,900 35MW計画 冶金 3,582 4,648 4,648 4,648 4,648 肥料 1,306 1,980 1,995 6,875 11,075 10,542 12,040 13,990 15,605 16,372 2,200 2,390 2,590 2,790 3,020 650 700 760 820 880 30 30 30 30 30 92,310 134,588 118,513 139,468 202,125 102,000 111,000 121,000 131,000 240,000 9,690 -23,588 2,487 -8,468 37,875 セメント 繊維 パルプ/製紙 ブリケット 合 計 長期計画 長期計画との差 (出所) エネルギー鉱物資源省鉱物石炭総局、クリーンコールデー(2015 年 9 月)での報告資料 石炭生産計画と需要見通しを比較すると、2019 年までの輸出見通しは表 1.2.3 のとおりとなる。鉱 物石炭総局の見通しと長期見通しでは、2018 年まで輸出量はなだらかに減少し、2019 年の輸出量は それぞれ 1 億 9,800 万トン、1 億 6,000 万トンと大きく減少する。電力での需要を RUPTL の見通し とすると、輸出量は 2019 年まで安定して減少して 2019 年の輸出量は 2 億 4,500 万トンになると想 定される。 表 1.2.3 インドネシアの石炭輸出見通し 2015 生産計画 2016 2017 (百万トン) 2018 2019 425 419 413 406 400 需要見通し 鉱物石炭総局 92 135 119 139 202 102 111 121 131 240 鉱物石炭総局 333 284 294 267 198 長期見通し 323 308 292 275 160 92 108 122 137 155 333 311 291 269 245 長期見通し 輸出見通し(ギャップ) 電力での需要がRUPTLの見通しの場合 需要見通し 輸出見通し(ギャップ) (出所) 表 1.2.1、表 1.2.2 およびエネルギー鉱物資源省鉱物石炭総局、クリーンコールデー(2015 年 9 月)での報告資料 -6- (2) ベトナム 第 7 次電力マスタープラン(PDP 7)の改訂版(改訂 PDP 7)によれば、ベトナムの電力需要(BAU ケース)は 2014 年の 127.8TWh から 2020 年に 235TWh、2030 年には 506TWh に年平均 9.0%で 増加すると予測されている。この電力需要を賄うために 2030 年までに新たに 94.4GW の発電設備容 量が必要になるとしている。このうち石炭火力の発電電力容量は 45.4GW、全体の 48.0%を占める。 電源構成に占める石炭の比率は、 2014 年の 27.8%から 2025 年に 49.3%に増加し、 2030 年には 42.6% まで減少すると計画されている。 (MW) 140,000 129,510 輸入 120,000 96,490 100,000 再生可能エネルギー 原子力 80,000 60,000 石油 60,000 40,000 35,070 47,570 55,170 石炭 25,620 20,000 ガス 9,760 水力 0 2014 2020 2025 2030 (出所) PDP 7 改訂版より抜粋 図 1.2.3 ベトナムの発電設備容量(電源別) また、発電電力量は、2014 年の 145.5TWh から 2020 年に 265TWh、2030 年には 572GWh に増 加し、石炭の発電電力量に占める比率は 2014 年の 25.9%から 2025 に 55.0%まで増加し、2030 年に は 53.1%まで減少すると予測している。 (GWh) 700,000 572,000 600,000 再生可能エネルギー 500,000 400,000 原子力 400,000 100,000 石油 265,000 300,000 200,000 輸入 304,300 145,500 220,000 ガス 石炭 130,600 37,700 水力 0 2014 2020 2025 2030 (出所)PDP 7 改訂版より抜粋 図 1.2.4 ベトナムの発電電力量(電源別) この結果、PDP 7 改訂版では石炭火力発電所での石炭消費量を 2020 年で 6,300 万トン、2025 年で 9,500 万トンと予測している。 一方、 「2020 年の石炭産業開発計画および 2030 年の展望」 改訂版では、 2020 年の石炭生産量を 4,700~5,000 万トン、石炭消費量は 8,640 万トン(うち 6,410 万トンが電力 -7- 部門)としており、2030 年の生産量は 5,500~5,700 万トン、石炭消費量は 1 億 5,660 万トンと見通 している 4。 以上のとおり、ベトナムでは増加する石炭需要を国内炭で賄うことはできず、この不足を輸入炭で 補うことになる。このため、石炭生産地である北部に位置する発電所で国内炭を優先的に使用し、 「1.1 節(1) 」で述べたとおり国内で需要のない炭種(高品位炭)に限定して輸出を継続する方針である。 近年の石炭輸出入をみると、政策的に輸出を減少させており、一方で輸入は増加しており、2015 年に 純輸入国となった。今後は輸入量が拡大することになる。 1.3 地球温暖化問題等による石炭消費規制 先進国においては地球温暖化に対応するために石炭の消費を規制する動きがある。例えば米国での 新規石炭火力建設規制や既存火力への規制、EU での環境汚染物質規制や地球温暖化への対応などで ある。今後、これらの規制により既存石炭火力の存続と新規石炭火力建設は難しくなる。 (1) EU EU では低炭素化、環境汚染廃棄物規制により、石炭火力発電所の閉鎖が進み、石炭需要の減少が 見込まれている。 1) 石炭火力発電電力量の見通し 2013 年に EU が発表した「EU におけるエネルギー、交通および温室効果ガス量の 2050 年までの トレンド」5によれば、EU における発電電力量に占める石炭火力からの発電電力量の割合は 2010 年 の 24%から 2030 年には 12%、2050 年には 7%に減少する見通しとなっている。プラントの種類別 にみると、石炭などの固形燃料による発電電力量は 2050 年までに 3%に減少し、CCS が 2030 年頃 から実用化され、CCS 付帯設備からの発電電力量の割合が 6%程度になる見通しとなっている。 2) 地球温暖化への対応 EU は、エネルギーの安定供給や経済性の課題に対処しつつ、気候変動対策を積極的に推進する方 針を維持している。 2015 年に開催された国連の気候変動枠組み条約 (UNFCCC) 締約国会議 (COP21) に際しては、2030 年までに温室効果ガスを少なくとも 40%削減するとの目標を提示している。関連 する制度、指令には以下が挙げられる。 欧州排出量取引制度(EU Emissions Trading Scheme(EUETS) ) 2005 年に排出枠のキャップ&トレードを導入した。しかし、2008 年の景況の悪化・経済活動の縮 小により、排出枠価格(以下、炭素価格)が下落し、制度の調整が進められている。 4 5 エイジアム研究所配信ニュース(http://www.asiam.co.jp/news/detail.php?id=7383) 。 EU Energy, Transport and GHG Emissions Trends to 2050 Reference Scenario 2013 -8- (出所)“EU Energy, Transport and GHG Emissions Trends to 2050 Reference Scenario 2013”より抜粋 図 1.3.1 EU における発電量の推移と見通し CCS 指令 2009 年に、CCS(地中)の実施に関する規制や手続きを定めた CCS 指令(2009/31/EC)を導入 した。この指令では大規模発電所(発電電力量出力 30 万 kW 以上)に対し、CCS の実施可能性を評 価し、CCS の機能を追加可能な施設とすること(CCS-ready)を求めている。なお、進捗報告書(2015 年 11 月)によれば 6、経済の減速と EUETS の炭素価格の低迷により、CCS の取組は想定を大きく 下回り、ほとんど進展がない状況である。今後は、EUETS の強化や研究開発の予算措置などを継続 することで CCS の進展を図るとしている。 3) 産業からの汚染物質への対応 EU では、産業排出指令(Industrial Emissions Directive (IED)2010/75/EU) により産業からの 汚染物質の排出が規制されている。この指令はエネルギー産業等の大規模燃焼設備や、鉄鋼、化学、 食品等各種の産業設備などを対象に、大気、水、土壌、廃棄物排出、原材料消費、エネルギー効率、 騒音、事故防止、設備閉鎖後のサイトの復旧など、総合的な環境規制である。各設備に課される環境 汚染物質などの排出上限値(emission limit value)もしくはその策定方法(BAT に基づく)などを 6 Report on review of Directive 2009/31/EC on the geological storage of carbon dioxide, COM/2015/576 -9- 定めている。石炭火力発電設備については熱投入量 50MW 超が対象となり、既設設備(発令時点で) については 2016 年までに適用が義務付けられる。 なお、2002 年以前に許可された設備の硫黄酸化物、窒素酸化物および煤塵については 2020 年 6 月 30 日までに漸減させて BAT 要件を満たせばよいことになっている。なお、満たさない場合は 2023 年 12 月末までに閉鎖もしくは 2016 年 1 月以降 17,500 時間まで稼働できるなどの例外が認められて いる。 欧州委員会によれば、今後毎年平均して 300~500 万 kW(石炭火力 10 基)程度が寿命を迎えるが、 これらの石炭発電設備は、IED により、設備更新(refurbish)よりも廃止が進む見通しである 7とし ている。 4) 主要国の対応 ① 英国 英国政府は、2025 年までに石炭火力発電をすべて閉鎖、2023 年までに利用を規制すると発表して いる 8,9。エネルギー安全保障を優先しつつ、将来に亘り安定的でクリーンなエネルギー供給を確保す る方針である 10。報道(The Guardian など)によれば、不足分は原子力および天然ガス発電で補い、 再生可能エネルギーの促進に偏重した政策を見直すとしている。 英国はこれまでに、EUETS に加え、炭素の下限価格(Carbon Floor Price:課税政策)を導入す るなど、低炭素化政策を積極的に推進している。 ② ドイツ ドイツ政府は、電力市場改革に関する政策文書(電力市場 2.0(Strommarkt 2.0) )を 2015 年 7 月 に発表した(同年 10 月に閣議決定、2016 年春に成立見込み) 。その柱のひとつとして「戦略的リザ ーブ(capacity reserve) 」の導入がある。この「戦略的リザーブ」では、褐炭火力発電所を戦略的リ ザーブに充て、2020 年までに 5 か所(発電容量合計 270 万 kW)の褐炭火力発電所を操業停止にす ることで電気事業者・石炭労組・政府間で合意している。報道によれば、電気の需要家の料金が kWh あたり 5 ユーロセント上昇、年間総額 2.3 億ユーロ(約 285 億円 11)の費用が見込まれるとしている。 ③ オランダ オランダ議会は、2015 年 11 月 26 日、国内の石炭火力発電所を段階的に廃止する法案を可決した。 国内の石炭火力発電所 11 か所すべてを 2020 年までに閉鎖する。オランダでは 2015 年 6 月、環境 NGO 等の提訴(2013 年)により、政府は現行の気候変動対策を強化する義務があるとの判決が出さ れている。これまでに、1980 年代に建設された石炭火力発電所 4 か所を 2016-2017 年に廃止するこ とが決まっていたが、今般の法案可決により、1990 年代に建設された 3 か所および 2015 年に建設さ 7 8 9 10 11 COM(2013) 180 final DECC(エネルギー・気候変動省)プレスリリース(2015 年 11 月 18 日) https://www.gov.uk/government/news/government-announces-plans-to-close-coal-power-stations-by-2025 この政府発表では「全ての石炭火力発電所の閉鎖計画」とあるが、2016 年春にコンサルテーションを実施するとし ており、詳細はさらに詰められることになろう。当初、英国では CCS 施設を持たないすべての石炭火力発電所が廃 止の対象なり、発電会社は CCS 施設の設置か閉鎖かの二者択一を迫られていたが、 「全ての」であればこの適用除 外項目がきえることになる。現在は、この 2 社選択を受けて、石炭火力発電所の閉鎖発表が相次いでいる。 DECC のプレスリリースは、Rudd 大臣のスピーチの引用にとどまっており、具体的な政策手段等には言及していな い。政府は、来年(2016 年)初めにコンサルテーションを実施し、石炭発電閉鎖の時期等について案を作成すると している。2016 年 4 月 12 日現在、コンサルテーションの公示はない。 1 ユーロ=124 円で計算 - 10 - れた 3 か所の合計 4,700MW があらたに廃止となる。 不足分の一部を電力輸入でまかなう見込みであり、隣国ドイツの褐炭発電の輸入増につながるとの 見方もある。 政府は、具体的な廃止計画の作成が求められている。 5) 石炭産業に対する国家補助 EU では、石炭生産による赤字(生産コストが販売価格を上回る場合の差分)の補填などに対する 国家補助が 2010 年末まで認められていた。しかし、2010 年の決議書によりこうした石炭鉱山に対し 国家補助を継続する正当性はなく、閉山するべきとの方針を示し、従前の補助は 2018 年末を最終期 限とした閉山計画を欧州委員会に提出し、補助額は規定に従い急速に減額し、期限までに閉山してい ない場合には、欧州委員会が補助を全額回収などの要件が定められた。 (2) 米国 米国では大気汚染対策より石炭火力の閉鎖が進んでおり、また新規火力発電所に対する CO2 排出基 準により石炭火力の新規建設は極めて難しい状況にある。また、既設発電所火力に対する CO2 排出基 準案が EPA(Environmental Protection Agency:環境保護庁)から公表されている。これら規制と 老朽化した石炭火力が多いことから石炭火力の発電設備容量は今後も減少し、石炭需要は減少してい くことになる。 1) 発電設備容量の増減 2005 年以降の米国の発電設備容量の運開(追加)と廃止をみると、火力では発電設備容量の追加は 天然ガスが中心である。2010 年以降に石炭火力の追加多いのはリーマン・ショックによる金融危機以 前の電力需要が堅調であった時期に投資されたものである。一方で 2010 年から石炭火力の廃止され る設備容量は増加し、2012 年には約 10GW の石炭火力が廃棄された。これは金融危機により電力需 要が減少したこと、さらにシェールガスの生産増加によりガス価格が下落し石炭火力の発電電力量が 減少したことが主な要因である。さらに、既設火力に適用される環境規制の強化による影響もあり、 2015 年には 10GW を大きく超える石炭火力が廃止され、その後も廃止される計画である。 (GW) その他 水力 地熱 原子力 バイオ 天然ガス 太陽光/熱 石油 風力 石炭 30.00 25.00 20.00 15.00 10.00 5.00 0.00 -5.00 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018 2019 -10.00 -15.00 -20.00 (出所) EIA ホームページより作成 図 1.3.2 米国の発電設備容量の追加と廃棄 - 11 - (US$/MMBtu) 8.0 50% 7.0 40% 6.0 5.0 30% 4.0 20% 3.0 2.0 10% 石炭 1.0 天然ガス 0% 石炭 天然ガス 2016年1月 2015年7月 2015年1月 2014年7月 2014年1月 2013年7月 2013年1月 2012年7月 2012年1月 2011年7月 2011年1月 2016年1月 2015年7月 2015年1月 2014年7月 2014年1月 2013年7月 2013年1月 2012年7月 2012年1月 2011年7月 2011年1月 0.0 (出所) EIA ホームページより作成 図 1.3.3 石炭火力・ガス火力の発電電力量に占める割合と発電向けの石炭・ガス価格の推移 2) 石炭火力に関わる環境規制 大気汚染に関わる規則では以下の 2 つの基準があり、石炭火力発電所廃止の主要因となっている。 ① 東部 28 州に係る SOX・NOX・オゾン・PM 排出基準(Cross-State Air Pollution Rule:CSAPR) 米国大気環境基準(National Ambient Air Quality Standard:NAAQS)で定められた対象物 質の大気中濃度基準を達成すべく、対象州における発電所由来の汚染物質の排出を規制するもので、 2011 年 7 月 6 日に最終規則が発表され、SO2 については 2012 年 1 月 1 日、NOX は 2012 年 5 月 1 日から遵守義務が生じる予定であった。しかし、電力、石炭業界等が EPA を訴えたため、2011 年 12 月に、係争中の効力停止(Stay)の判決が出て執行停止となった。 EPA は 2015 年 5 月に微修正を経た CSAPR に関する個別設備に係る数量基準案を公表し、 2016 年 2 月に CSAPR の実施スケジュール(当初は 2012 年にフェーズ 1)を 2015 年 1 月からに修正 する(遡及して実施する)措置を発表している。 ② 水銀・汚染物質排出基準(Mercury and Air Toxics Standards:MATS) 同基準は、2005 年に EPA が発電所水銀排出基準を策定したが、2008 年に連邦控訴裁判所によ り無効とされた経緯がある。EPA は 2011 年に改めて既設発電所に係る発電所水銀排出基準案を公 表し、2012 年 2 月に最終規則公布し、2014 年に発効された。また、2012 年 11 月に新設発電所 に係る水銀排出基準案を公表し、2013 年 4 月に最終規則公布している。 地球温暖化に関する規則では以下の 2 つ基準がある。 ③ 新設発電所に係る温室効果ガス排出基準(New Source Performance Standard for GHG Emission from Power Plants:NSPS) EPA は 2012 年 4 月に新設発電所に係る温室効果ガス排出基準案を公表した。内容は、 • 定格容量の 3 分の 1 以上を系統に売電することを目的に設置された 25MW 以上の発電設備に ついて、12 か月間の平均 GHG 排出量を 1,000lb-CO2/MWh 以下に抑制(天然ガス焚コンバ インドサイクル(NGCC)により達成可能、もしくは CCS) 。 - 12 - しかし、2013 年 9 月にパブリックコメントを踏まえて 2012 年の NSPS 案を撤回し、見直し案 を発表した。この案は 2014 年 1 月に最終規制として公表された。内容は、 • 大規模天然ガス焚コンバインドサイクルでは 1,000lb-CO2/MWh • 小規模天然ガス焚コンバインドサイクルは 1,100lb-CO2/MWh • 微粉焚きボイラーおよび石炭ガス化複合発電(IGCC)は 1,100lb-CO2/MWh 2015 年 8 月に NSPS 最終規則を公布している。石炭火力については微粉焚きボイラーおよ び石炭ガス化複合発電(IGCC)は 1,400lb-CO2/MWh(635kg-CO2/MWh)と基準を緩めてい る。 しかし、この基準は CCS を付帯しなければクリアできない。現時点の CCS 開発状況では経 済性要因により新規石炭火力案件は成り立たないことになる。 ④ 既設発電所に係る CO2 排出基準(Carbon Pollution Emission Guidelines for Existing Stationary Sources: Electric Utility Generating Units:ESPS) 2014 年 6 月に EPA は ESPS 案を公表し、 国内発電所の CO2 排出量を 2030 年に 2005 年比 30% 削減することを目標に、各州に、①火力発電所の熱効率改善、②発電所の稼働シフト、③原子力と 再生可能電力の拡大、④エネルギー効率改善、の 4 つの手法を組み合わせた排出削減計画の作成・ 実施を指示した。 2015 年 8 月に ESPS 最終規則が公布され、各州は 2018 年 8 月末までに実施計画を策定し EPA による承認を経て実施する責任を負うことになっている。 なお、2016 年 2 月に連邦最高裁は ESPS に関する訴訟が継続している間の効力停止(Stay)を 命令している。 本基準は裁判所で係争中であり未確定の状況であるが、全面撤回の可能性は低いと思われる。 実際には各州政府が作成する排出削減計画の内容が重要であり、省エネ・再エネと石炭火力削減の 間でのバランスのとり方によっても石炭火力への影響は変わると思われる。 この他、石炭火力関わる基準では、⑤ 固形廃棄物(石炭灰)の処理に関する基準(disposal of coal combustion residuals from electric utilities)、⑥ 火力発電所の取水および廃水に関する基準 (Cooling water intakes、Steam Electric Power Generating Effluent Guidelines)がある。 3) Clean Power Plan をベースとした石炭需要見通し 米エネルギー省 EIA は議会からの要請に基づき、Clean Power Plan 実施の場合の影響に関するレ ポートを 2015 年 5 月に発表した 12。EIA は 2015 年 4 月に公表された年次エネルギー見通し Annual Energy Outlook 2015(AEO2015)の基準ケースを基に、Clean Power Plan の実施による全米およ び地域別の電力需要、燃料消費量、燃料価格および電気料金および CO2 排出量等への影響について分 析を行っている。主要な分析結果は以下のとおりである。 発電部門の CO2 排出量は、石炭火力発電からガス火力および再生可能電力へのシフトに伴い、2005 12 Energy Information Administration, “Analysis of the Impacts of the Clean Power Plan”, May 22, 2015 - 13 - 年の 24.16 億トンから 2013 年には 20.53 億トンと減少した。Clean Power Plan を実施しない場合、 2030 年の CO2 排出量は再び増加して 21.77 億トンと見込まれるが、同基準実施により 15.96 億トン に減少すると推計されている。 排出削減手段として中心的役割となるのが石炭火力から天然ガス火力への転換である。再生可能電 力は 2020 年代半ば以降に一層の拡大が期待される。結果として、2030 年時点で米国の電力供給の燃 料別構成は、Clean Power Plan を含まない AEO2015 では、石炭火力がなお 36.5%を占め、再生可 能電力は 16.1%に留まるのに対し、Clean Power Plan が実施された場合では、石炭火力は 25.1%ま で減少し、天然ガス火力が 31.2%と最大のシェアを占め、次いで再生可能電力が 25.2%を賄う見通し となっている。 発電設備容量の増減の面では、2014-40 年の期間中 AEO2015 では合計 40GW の石炭火力発電所の 閉鎖が見込まれているが、Clean Power Plan 実施の場合には 90GW へと増大し、その大半が 2020 年以前に閉鎖される見通しとなっている。老朽化した天然ガス火力および石油火力についても閉鎖が 見込まれるが、他方で発電設備容量の追加は、天然ガス火力(コンバインドサイクル)と再生可能電 力によって占められる。 (TWh) 600 400 200 0 -200 2013 2020 2016 2025 2030 2035 2040 -400 -600 -800 石炭 石油 天然ガス 再生可能 原子力 省エネ (注) AEO2015 基準ケースと、Clean Power Plan 実施ケースを比較した場合の燃料別発電電力量減少分および、総発電電 力量の減少分。ここでは原子力発電所の新規建設は見込まれていない。 (出所) EIA, “Analysis of the Impacts of the Clean Power Plan”, May 22, 2015 図 1.3.4 Clean Power Plan による電源別の発電電力量減少見通し AEO 2015 Clean Power Plan 100% 90% 80% 100% 13.0% 19.4% 70% 15.6% 18.5% 16.1% 17.2% 18.0% 16.5% 60% 50% 27.5% 25.7% 29.2% 31.0% 40% 30% 20% 39.0% 39.3% 36.5% 33.7% 10% 90% 80% その他 70% 再生可能 60% 原子力 50% 再生可能 40% 石油 30% 石炭 20% 17.2% 27.4% 17.6% 16.5% 31.2% 29.5% その他 18.7% 2020 2030 2040 2020 25.1% 25.9% 2030 2040 (注) 電気事業者および CHP、自家発電等を含む (出所) EIA, “Analysis of the Impacts of the Clean Power Plan”, May 22, 2015 図 1.3.5 Clean Power Plan による電源構成の変化 - 14 - 天然ガス 石油 31.1% 0% 2013 再生可能 原子力 32.1% 10% 0% 25.2% 石炭 その結果として、2025 年に向けて石炭需要の減少が見込まれる。ただし 2025 年以降は、天然ガス 価格の上昇が予想され、また再生可能電力の拡大(バックアップ電源の重要性増大)により、残存す る石炭火力発電所の設備稼働率の上昇が見込まれるため、石炭消費量は増加に転じると予測されてい る。 Reference Clean Power Plan (Mton) 1,200 (Mton) 1,200 1,000 1,000 800 800 600 600 400 400 200 200 産業用等 発電用 0 0 2013 2020 2025 2030 2035 2040 2013 2020 2025 2030 2035 2040 (出所) EIA, “Analysis of the Impacts of the Clean Power Plan”, May 22, 2015 図 1.3.6 Clean Power Plan による石炭消費量の見通し 1.4 アジア新興国等の需要増加 第 3 章で述べるように石炭需要はアジアを中心に増加する。特にアセアン諸国では今後の電力需要 の増加から安価な一般炭の需要が増加する。しかし、アセアン諸国はインドネシアを除いて石炭資源 に恵まれておらず、これらの国の一般炭の輸入は増加する。輸入先としては地理的位置からみればイ ンドネシアが最も近く、現状インドネシアからの輸入量の比率は高い。しかし、インドネシアは石炭 資源の保護、将来にわたる有効利用から石炭生産を抑制する方針であり、また国内需要が増加するこ とから、今後の輸出量は減少する見通しである。したがって、今後は豪州、南アフリカ、ロシアなど からの輸入量が増加することが見込まれる。 以下に、日本エネルギー経済研究所はが毎年発表する「アジア/世界のエネルギーアウトルック」 に基づき、アセアン主要国のインドネシア、マレーシア、フィリピン、タイ、ベトナムの 5 か国の石 炭需給を整理する。 (1) 一般炭 5 か国の一般炭需要は、2000 年代に入り石炭火力発電所の運転開始やセメントなど一般産業での消 費が増加し、2000 年の 4,630 万トンから 2013 年には 1 億 4,940 万トンに増加した。今後も一般炭需 要は電力分野を中心に 2040 年に向け年平均 4.3%で増加し、2040 年には 4 億 6,040 万トンと 2013 年の 3.1 倍、3 億 1,100 万トン増加すると予測する。 国別にみると、インドネシアでの一般炭需要は 2040 年に向け年平均 4.8%で伸び、2040 年には 1 億 5,370 万トン増加して 2 億 1,350 万トン(2013 年の 3.6 倍)となる。インドネシアの 35GW 計画 では 56%が石炭火力であり、RUPTL 2015-2024 では 2024 年の発電電力量に占める石炭火力からの 発電電力量を 63.7%としている。自国に石炭資源を豊富に有するインドネシアでは今後の輸出量の減 少が懸念されている。 - 15 - (百万トン) 500 450 400 350 300 250 200 150 100 15 50 0 1990 460 320 ベトナム タイ 210 フィリピン 149 マレーシア 46 2000 インドネシア 2013 2020 2030 2040 (出所) 日本エネルギー経済研究所、「アジア/世界エネルギーアウトルック 2015」より作成 図 1.4.1 アセアン 5 か国の一般炭需要見通し マレーシアでの一般炭需要は 2040 年に向け年平均 2.7%で伸び、2040 年には 2013 年より 2,570 万トン増加して 5,000 万トン(2013 年の 2.1 倍)となる。マレーシアでは 2024 年までに半島部で石 炭火力約 6,000MW の建設計画があり、また石炭資源があるサラワク州では小型の石炭火力建設計画 がある。なお、マレーシアは半島部に石炭資源がほとんどないため、石炭輸入量は 2013 年の 2,210 万トンから 2040 年には 4,500 万トンまで増加すると予測される。 フィリピンでの一般炭需要は 2040 年に向け年平均 3.5%で伸び、2040 年には 2013 年より 2,880 万トン増加して 4,750 万トン(2013 年の 2.5 倍)となる。電力自由化が進んでいるフィリピンでは電 源入札の際に燃料費の安価な石炭火力が選択される可能性が高く、現在 12,000MW 弱の石炭火力建 設計画がある。フィリピンには需要を賄うだけの石炭資源はなく、現状では需要量の 3/4 程度を輸入 に頼っている。 フィリピンの一般炭輸入量は 2013 年の 1,420 万トンから 2040 年には 3,290 万トンに 増加すると予測される。 タイの一般炭需要は 2040 年に向け年平均 3.2%で伸び、2040 年には 2013 年より 2,460 万トン増 加して 4,310 万トン(2013 年の 2.3 倍)となる。電源開発計画では 2036 年までに輸入炭火力を 7,390MW 建設する計画で、このうち 6,340MW が輸入炭火力である。タイの一般炭輸入量は 2013 年の 1,870 万トンから 2040 年には 4,310 万トンに増加すると予測される。 ベトナムの一般炭需要は 2040 年に向け年平均 5.1%で伸び、2040 年には 2013 年より 7,820 万ト ン増加して 1 億 630 万トン(2013 年の 3.8 倍)となる。電源開発計画(PDP 7 改訂版)では 2030 年までに約 450GW の石炭火力建設が計画されている。ベトナム北部には無煙炭が賦存し、現状 4,000 万トン程度が生産されているが、生産能力拡大に限界がある。したがって、ベトナムの一般炭輸入量 は 2013 年の 130 万トンから 2040 年には 2,620 万トンに増加すると予測される。 以上、4 か国の一般炭輸入量は 2013 年の 5,630 万トンから 2040 年には 1 億 4,720 万トンに増加す ると予測される。 - 16 - 表 1.4.1 アセアン 5 か国の一般炭需要見通し (百万トン) インドネシア マレーシア フィリピン タイ ベトナム アセアン計 1990 2000 2013 2020 2030 2040 6.3 2.2 2.6 0.3 4.0 15.2 22.6 3.7 8.6 3.7 7.8 46.3 59.8 24.3 18.7 18.5 28.1 149.4 94.1 31.1 22.1 22.6 40.6 210.5 147.3 40.7 33.5 33.0 65.7 320.2 213.5 50.0 47.5 43.1 106.3 460.4 年平均伸び率(%) 増減 2040 - 2013 '13/'00 '20/'13 '30/'20 '40/'30 '40/'13 153.7 25.7 28.8 24.6 78.2 311.0 7.8 15.7 6.2 13.2 10.3 9.4 6.7 3.6 2.4 2.9 5.4 5.0 4.6 2.7 4.3 3.9 4.9 4.3 3.8 2.1 3.6 2.7 4.9 3.7 4.8 2.7 3.5 3.2 5.1 4.3 (出所) 日本エネルギー経済研究所、「アジア/世界エネルギーアウトルック 2015」より作成 表 1.4.2 アセアン 5 か国の一般炭輸入見通し インドネシア マレーシア フィリピン タイ ベトナム アセアン計 1990 2000 2013 2020 2030 2040 0.8 2.3 1.3 0.3 0.0 4.6 0.0 3.1 7.2 3.7 0.0 14.0 0.0 22.1 14.2 18.7 1.3 56.3 0.0 26.7 16.6 22.6 6.1 72.0 0.0 35.6 23.9 33.0 13.8 106.3 0.0 45.0 32.9 43.1 26.2 147.2 (百万トン) 年平均伸び率(%) 増減 2040 - 2013 '13/'00 '20/'13 '30/'20 '40/'30 '40/'13 0.0 22.9 18.0 2.1 2.9 2.4 2.5 18.7 4.1 4.5 3.7 3.3 3.8 24.4 14.4 2.5 3.9 2.7 3.0 24.9 21.3 8.6 6.7 11.3 90.9 11.3 3.6 4.0 3.3 3.6 (出所) 日本エネルギー経済研究所、「アジア/世界エネルギーアウトルック 2015」より作成 (2) 原料炭 原料炭については、一貫製鉄所の建設計画があるインドネシアとベトナムで需要が増加する。イン ドネシアでは既に一期工事が終了し、操業を開始している。原料炭需要は 2020 年に 340 万トン、2040 年には 810 万トンとなる。ベトナムの原料炭需要は 2020 年に 190 万トン、2040 年に 480 万トンと なる。原料炭輸入は、インドネシアでは自国での供給ができることから 2020 年に 170 万トン、2040 年に 410 万トンになる。ベトナムでは全量が輸入され 2020 年に 190 万トン、2040 年に 480 万トン となる。インドネシアとベトナムを合わせて、2040 年の輸入量は 1,280 万トンとなる。 表 1.4.3 アセアン 5 か国の原料炭需要見通し (百万トン) 年平均伸び率(%) 増減 1990 2000 2013 2020 2030 2040 インドネシア 0.0 0.1 0.1 3.4 5.5 8.1 8.0 -1.8 62.9 5.0 4.0 18.7 マレーシア 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 - - - - - フィリピン 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 - - - - - タイ 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 - - - - - ベトナム 0.0 0.0 0.2 1.9 4.0 4.8 4.6 - 35.9 8.0 1.7 - アセアン計 0.0 0.1 0.3 5.2 9.5 12.8 12.5 6.8 48.5 6.2 3.1 20.8 2040 - 2013 '13/'00 '20/'13 '30/'20 '40/'30 '40/'13 (出所) 日本エネルギー経済研究所、「アジア/世界エネルギーアウトルック 2015」より作成 - 17 - 表 1.4.4 アセアン 5 か国の原料炭輸入見通し (百万トン) 年平均伸び率(%) 増減 2040 2040 - 2013 '13/'00 '20/'13 '30/'20 '40/'30 '40/'13 4.1 4.0 -1.8 48.2 4.9 3.9 15.8 1990 2000 2013 2020 2030 インドネシア 0.0 0.1 0.1 1.7 2.8 マレーシア 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 - - - - フィリピン 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 - - - - - タイ 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 - - - - - ベトナム 0.0 0.0 0.2 1.9 4.0 4.9 4.6 - 35.9 8.0 1.8 - アセアン計 0.0 0.1 0.3 3.6 6.8 8.9 8.6 6.8 40.8 6.6 2.7 19.2 - (出所) 日本エネルギー経済研究所、「アジア/世界エネルギーアウトルック 2015」より作成 1.5 中国の石炭輸入 中国は最大の輸入国であり、石炭市場に大きな影響を与えている。これまで、中国の輸入増大が石 炭価格を押し上げ、これに伴い石炭供給能力が高められてきたと言っても過言ではない。しかし、2014 年からの輸入量の減少が供給過剰状況の緩和を遅らせ、 継続する価格下落の大きな要因となっている。 2013 年までアジアの石炭需要および石炭市場を牽引してきた中国は、2014 年に石炭消費量の増加 が止まり、石炭輸入量は対前年比で 3,540 万トン減少した。2015 年は対前年比で 8,780 万トン減少し た。この消費量の減少の背景には、経済成長の減速に伴う電力需要や鉄鋼需要、セメントなど石炭多 消費産業で生産される製品需要の停滞、大気汚染問題による大都市や沿海地域での石炭総量規制や環 境規制がある。 また、 2014 年以降、 水力発電が好調であることも一般炭消費量の減少に繋がっている。 また、もう一つの要因として、石炭価格の内外価格差が挙げられよう。中国炭の国内向け一般炭価格 と輸入炭一般炭価格を見ると、国内炭価格は輸入炭価格を上回って推移しており、その価格差は 10 数ドル/トンから 30 ドル/トンの差がある。中国の一般炭輸入量を月ベースで見ると、これまではこの 価格差に応じて輸入量が変動する傾向を示しており、 2015 年に入りこの価格差は明らかに小さくなっ ており、輸入量の減少に繋がったと見ることができる。 (US$/トン) 150 140 130 123.76 129.64 141.99 133.34 130.20 120 秦皇港FOB Marker 111.25 125.57 110 100 139.96 106.05 82.80 90 92.82 80 70 107.72 111.86 91.62 globaCOAL NEWC Index 89.08 60 50 57.38 '10年1月 '10年3月 '10年5月 '10年7月 '10年9月 '10年11月 '11年1月 '11年3月 '11年5月 '11年7月 '11年9月 '11年11月 '12年1月 '12年3月 '12年5月 '12年7月 '12年9月 '12年11月 '13年1月 '13年3月 '13年5月 '13年7月 '13年9月 '13年11月 '14年1月 '14年3月 '14年5月 '14年7月 '14年9月 '14年11月 '15年1月 '15年3月 '15年5月 '15年7月 '15年9月 '15年11月 '16年1月 '16年3月 40 (出所) globalCOAL および IHS Energy, “China Coal Daily”より作成 図 1.5.1 中国の輸入国別石炭輸入量の推移 - 18 - (百万トン) 350 327.0 291.6 288.7 300 250 221.5 184.6 200 褐炭 203.8 その他石炭 132.5 150 無煙炭 100 一般炭 40.8 50 原料炭 0 2008 2008 6,857 10,288 19,388 4,301 40,834 40,834 原料炭 一般炭 無煙炭 その他石炭 計 褐炭 合 計 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 34,493 38,566 34,388 19,189 126,636 5,910 132,546 47,271 51,333 26,461 41,183 166,248 18,320 184,568 44,658 54,262 36,124 47,337 182,381 39,150 221,531 53,558 101,492 34,453 45,422 234,925 53,748 288,673 75,400 113,051 39,601 39,089 267,142 59,833 326,974 62,440 111,740 30,366 23,450 227,996 63,589 291,585 47,624 65,843 24,765 17,300 155,531 48,252 203,784 (千トン) 対前年の増減 2014-2013 2015-2014 -12,960 -1,312 -9,235 -15,639 -39,146 3,757 -35,390 -14,816 -45,897 -5,601 -6,150 -72,464 -15,337 -87,801 (出所) TEX レポート(元データは中国海関統計)より作成 図 1.5.2 中国の炭種別石炭輸入量の推移 一般炭+その他石炭 (百万トン) 160 原料炭 (百万トン) 80 146.9 152.1 135.2 140 120 92.5 70 その他 101.6 50 南アフリカ 40 60 ロシア 30 40 豪州 20 80 20 83.1 57.8 14.6 インドネシア 10 0 62.4 60 米国 100 75.4 その他 53.6 47.3 44.7 47.6 34.5 米国 ロシア カナダ モンゴル 6.9 豪州 0 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 (出所) TEX レポート(元データは中国海関統計)より作成 図 1.5.3 中国の輸入国別石炭輸入量の推移 2016 年に入っても対前年同期比で石炭輸入量は減少している。しかし、表 1.5.1 に示すように 2016 年 1-3 月と 2015 年 1-3 月を比べると、 一般炭は 350 万トン減少している一方で、 原料炭は 50 万トン、 無煙炭は 130 万トン、損他石炭は 90 万トン、褐炭は 20 万トン増加し、全体では 60 万トンの減少に 留まっている。2015 年 1-3 月と 2014 年 1-3 月での落ち込みから見れば、2016 年は輸入量の減少に 大きくブレーキがかかっている。今後の状況を見なければならないが、図 1.5.4 に示す月別の輸入量 を見ると、2015 年からほぼ横ばいで推移していると見ることができ、供給過剰状況の緩和に繋がると 思われる。 - 19 - 表 1.5.1 中国の 1-3 月の輸入量の比較 (千トン) 2014年1-3月 2015年1-3月 2016年1-3月 増減 14-15年 15-16年 原料炭 12,970 10,923 11,426 -2,047 503 一般炭 32,055 17,357 13,872 -14,698 -3,485 1,286 無煙炭 9,574 4,933 6,219 -4,641 その他石炭 9,733 3,550 4,440 -6,183 890 計 64,332 36,763 35,957 -27,569 -806 褐炭 総計 19,681 84,014 12,294 12,488 -7,387 193 49,057 48,444 -34,957 -613 (出所) TEX レポート(元データは中国海関統計)より作成 (百万トン) 30 22.3Mt/月 25 19.0Mt/月 20 13.0Mt/月 12.0Mt/月 その他石炭 10 無煙炭 5 一般炭 0 原料炭 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 1月 2月 3月 15 2013年 2014年 2015年 2016年 (百万トン) 10 5.0Mt/月 5.3Mt/月 4.1Mt/月 5 4.2Mt/月 褐炭 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 1月 2月 3月 0 2013年 2014年 2015年 2016年 (出所) TEX レポート(元データは中国海関統計)より作成 図 1.5.4 中国の輸入国別石炭輸入量の推移 1.6 インドの石炭輸入 インドの石炭輸入量は一般炭を中心に急速に増加し、2014 年の輸入量は 2 億 1,210 万トンと同年 に日本を抜いて世界第 2 位の石炭輸入国なった。しかし、インドの輸入増にブレーキがかかった。表 1.6.1 に示すように、 半期毎の輸入量をみると、 2014 年下期と 2015 年上期で、 一般炭の輸入量が 1,640 万トン減少し、原料炭はほぼ横ばい、石炭合計では 1,640 万トン減少した。2014 年 4-12 月と 2015 年 4-12 月を比較すると、原料炭の増加量は 230 万トンにとどまり、一般炭の輸入量は 2,210 万トン 減少し、その他石炭が 940 万トン増加し、石炭合計では 1,020 万トンの減少であった。 インドでは国内生産量を増加させる方針を打ち出し、生産能力と輸送能力の増強を図っている。イ ンドの国内生産の約 8 割を占める Coal India Limited(CIL)石炭生産量は 2014 年度、2015 年度と 生産量を伸ばしており、2015 年度の生産量は 5.36 億トンに達したと現地新聞で報道 13されている。 13 JOGMEC 石炭資源情報(2016 年 4 月 14 日) 。 - 20 - (百万トン) 250 212.1 200 166.9 146.1 145.8 150 102.8 100 59.0 73.3 無煙炭 その他石炭 68.9 一般炭 50 原料炭 0 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 (4-12) 年度 年度 (千トン) 2015 (4-12) 2008 2009 2010 2011 原料炭 21,080 24,628 19,484 31,801 35,557 36,872 43,718 33,463 一般炭 28,659 34,427 42,037 55,284 106,675 121,320 145,332 89,305 無煙炭 677 408 787 1,222 970 1,163 1,037 896 8,586 13,792 6,608 14,534 2,583 7,502 22,020 22,461 59,003 73,255 68,917 102,840 145,785 166,857 212,106 146,125 2014 4-12 2015 4-12 増減 その他石炭 合計 2012 2013 2014 (出所) Ministry of Commerce and Industry, “Export Import Data Bank” より作成 図 1.6.1 インドの炭種別石炭輸入量の推移 表 1.6.1 インドの炭種別輸入量 2014 上期 2014 下期 2015 上期 原料炭 21,646 22,071 22,129 57 31,118 33,463 2,345 一般炭 71,547 73,785 57,340 -16,445 111,415 89,305 -22,111 無煙炭 576 460 644 183 761 896 135 6,790 15,230 15,086 -143 13,061 22,461 9,400 100,560 111,546 95,199 -16,347 156,355 146,125 -10,230 その他石炭 合計 2015上期 -2014上期 (出所) Ministry of Commerce and Industry, “Export Import Data Bank” より作成 また、地元報道によると、インド政府は CIL に対して 2016 年度の生産目標を 6.1 億トンにする方 向であると報道されている 14。この 6.1 億トンを達成するには 7,400 万トンの増産が必要となり、か なり高い目標値となっている。インド国内炭は灰分が高く品質が悪いため、原料炭の輸入は鉄鋼需要 の増加に伴い今後も増加すると思われるが、一般炭は生産が計画通りに伸びれば減少していくことに なろう。しかし、生産量が需要拡大を上回る量で増加し続けることができるのか疑問に思われ、一般 炭輸入は再び増加に向かうと思われる。 表 1.6.2 CIL の石炭生産量の推移 年度 Non Coking Coking 合計 2012 392.48 43.36 435.84 2013 408.56 43.66 452.22 (出所) CIL ホームページ、2016 年は JOGMEC 石炭資源情報。 14 JOGMEC 石炭資源情報(2016 年 4 月 7 日) 。 - 21 - 2014 413.50 48.92 462.42 2015 443.67 50.57 494.24 (百万トン) 2016 n.a. n.a. 536 1.7 石炭価格の低迷による炭鉱の休止・閉山、新規開発の遅れ (1) 石炭価格の推移 2000 年代以降、石炭市場は中国とインドを中心とするアジアでの需要増により拡大してきた。石炭 価格は、リーマン・ショック後の急落など世界経済に影響されつつも高い水準で推移し、一般炭は 100 ドル/トン超、原料炭は 200 ドル/トン超の水準であった。こうした市場環境のなか、中国、インド、 そしてアセアンなどアジア市場、またアフリカや中南米などでも、石炭市場は拡大するとの見通しか ら石炭への投資・開発が進められた。しかし、好調であった中国とインドの経済成長の減速、欧州で の経済低迷により、高水準を維持していた石炭価格は 2011 年をピークに下降し始めた。需要の伸び が大きく減速したわけではないが、石炭ブームに乗った投資・開発による供給能力の増加、それに加 えて国内需要減に対応した米国の輸出拡大により石炭市場は供給過剰となった。 2014 年にはこれまで 輸入を大きく伸ばしてきた中国が輸入減少に転じ、 2015 年には国内炭の増産に伴いインドが輸入減少 に転じた。このため、石炭価格は下落し、低水準で推移している。 現状、一般炭価格は 50 ドル/トンで推移し、原料炭は 70 ドル/トン台半ば下落した後、90 ドル/トン まで戻している。 (石炭価格については、 「2.3 石炭価格の動向」を参照) 需要の伸びの減速とそれに伴う価格の下落に対応するため、石炭会社は人員整理、生産性の向上(生 産性の低い炭鉱の休山や閉山、一方で生産性の高い炭鉱の生産増強や建設中炭鉱の立ち上げ) 、不良資 産売却などにより経営改善を進めてきた。しかし、長期化する価格の低迷により石炭会社の経営状態 は悪化しており、石炭メジャーを始め大手資源会社も立ち行かなくなってきていると言われている。 石炭市場をリードしてきた中国とインドの輸入動向が読みにくい状況ではあるが、炭鉱閉山による 供給力の減少、休山による供給能力の一時的な減少、またプロジェクトの遅れと延期や中止は、供給 過剰からバランス、そして供給不足へ繋がる大きな要因となるであろう。 (2) 炭鉱の休山、閉山 価格低迷に伴い、各国では炭鉱の休山や閉山が相次いでいる。直近の状況は以下の通りである。 豪州 休山: Abel 炭鉱(坑内)2016 年 6 月予定(Ynacoal) West Eallsend 炭鉱(坑内)2016 年 6 月半ば予定(Glencore) Drayton 炭鉱(露天)2016 年 6 月末予定 Baralaba 炭鉱 時期不明(2016 年 2 月 8 日発表)(Cockatoo Coal) Crinum 炭鉱(坑内)2015 年末(BMA) 閉山: West Cliff 炭鉱 Appin Area 9 炭鉱の生産が本格化した時点で閉山する(South32) カナダ 強粘結原料炭の供給国として 3,000 万トンを超える石炭を輸出していたが、2014 年に Walter Energy の 2 炭鉱(Perry Creek 炭鉱が 4 月、Brule 炭鉱が 6 月)が、Anglo American の Trend 炭鉱 が休山し、2015 年に以下の炭鉱が休山した。その結果、カナダの原料炭炭鉱は Tech Resources 所有 - 22 - の 6 炭鉱のみが操業している。なお一方で、Donkin プロジェクト(原料炭、一般炭)での生産が 2016 年後半に開始される見通しである。 休山: Grande Cache 炭鉱の露天掘り 2015 年 2 月(Grande Cache Coal Corp.) Grande Cache 炭鉱の坑内掘り 2015 年末(Grande Cache Coal Corp.) Quinsum 炭鉱 2016 年 1 月(Quinsum Coal Corp.) 一般炭炭鉱 (3) 豪州での新規開発の遅れ 豪州 Department of Industryy, Innovation and Science が公表する“Resources and Energy Major Projects”から炭鉱の拡張および新規炭鉱建設プロジェクトを整理すると以下の通りである。 同報告の 2014 年 4 月と 2015 年 10 月を比較すると、QLD 州では 14 件のプロジェクト(生産能力 1 億 4,680 万トン/年)の生産開始が遅れ、9 件のプロジェクト(生産能力 6,380 万トン/年)が開始未 定もしくは延期またはリストから削除されている(詳細は表 2.4.2 参照) 。 一方、NSW 州では、1 件のプロジェクト(生産能力 260 万トン/年)の生産開始が遅れ、3 件のプ ロジェクト(生産能力 600 万トン/年)が開始未定もしくは延期またはリストから削除されている(詳 細は表 2.4.3 参照) 。 (4) 米国での石炭会社の破綻 米国では、米国内における石炭需要の減少、世界的な需給緩和を背景とした米国石炭輸出量の減少 と輸出価格下落により、米国の石炭会社の販売収入は 2011 年をピークに大幅に下落した。その結果、 2012 年以降、米国内の石炭生産会社の倒産が相次いでおり、2016 年 4 月までに 40 社が連邦倒産法 第 7 条(清算型倒産処理手続、日本の破産法に相当)または同 11 条(再生型倒産処理手続、日本の 民事再生法に相当)の適用を申請している。 なお、生産量トップ 20(2014 年実績)に入る石炭会社では、Peabody Energy Corp.(生産量第 1 位) が 2016 年 4 月 13 日に、 Arch Coal Inc. (第 2 位) が 2016 年 1 月 11 日に、 Alpha Natural Resources (第 4 位) が 2015 年 8 月 3 日に、 Ptriot Coal Corp. (第 12 位) が 2015 年 5 月 12 日に、 Walter Energy Inc.(第 17 位)が 2015 年 7 月 15 日に連邦倒産法第 11 条の適用を申請している。 - 23 - 表 1.7.1 2012 年以降に連邦破産法の適用を申請した石炭会社 申請日 会社名 倒産法 申請日 11* 11/22/13 Alpha & Omega Coal 7 H & D Mining 7 06/11/12 B&B Coal 06/29/12 07/09/12 01/26/12 Larry Addington 02/15/12 03/29/12 会社名 倒産法 Left Fork Mining 7 11/22/13 Cloverfork Mining & Excavating 7 11/22/13 Cumberland River Energies 7 7 11/22/13 Bennett Resources 7 Panther Branch Coal 7 02/07/14 Cobalt Coal 7 Patriot Coal 11 04/07/14 James River Coal 11 07/11/12 Conshor Mining 7 05/22/14 US Coal 11* 09/21/12 Tennessee Classic Coal 11 05/22/14 Licking River Miing 11* 10/01/12 Haley Bros. Coal 7 06/27/14 IBCS Mining 11/07/12 King Coal Trucking 11 10/08/14 Coal Valley 7 02/01/13 Cobra Mining 7 02/24/15 Covington Coal 11 02/01/13 America West Resources 11 04/06/15 Xinergy 11 02/14/13 Trinity Coal 11 04/15/15 Grass Creek Coal 11 02/14/13 Excell Energy and Coal 11 05/12/15 Patriot Coal 11 11* 05/27/15 Birmingham Coal & Coke 11 11 06/03/15 A & M Coal 7 11 02/19/13 T&T Energy 06/28/13 Twin Star Coal 07/01/13 Detherage Coal Sales 7 07/15/15 Walter Energy Inc. 11 09/23/13 Lily Group 11 08/03/15 Alpha Natural Resources 11 10/08/13 Valley Mining 7 01/11/16 Arch Coal Inc. 11 11/22/13 Manalapan Mining 7 04/13/16 Peabody Energy Corp. 11 (注) 上記レポートは 2012 年~2015 年 6 月の倒産企業を整理しており、これに 2015 年 7 月以降の報道を基に弊所が追加。 また、上記レポートには Evergreen Energy(2012 年1 月)、B&S Trucking(2013 年11 月)が含まれたが、前者は低品 位炭由来の代替燃料生産システム開発会社、後者は石炭輸送会社であるため、除外した。また、インドネシア Bumi Resources の子会社 3 社(2014 年 12 月)、カナダ Cline Mining(2014 年 12 月)も米国外企業のため除外した。 Larry Addington は投資家で、旧 AEI Resources Inc.、改称して Horizon Natural Resources Co., Ltd を所有。 11*は、当初倒産法 11 章の適用を申請したが後に 7 章の手続に移行。 (出所) SNL Energy, ”Roster of US coal companies turning to bankruptcy continues to swell” June 04, 2015 および各 種報道より作成 なお、参考まで米国の石炭販売状況を以下に示す。 (ドル/ショート・トン) (百万ショート・トン) 1,200 その他 発電用 50 発電所引取価格 1,000 45 800 40 600 35 400 30 200 25 0 20 1990 1994 1998 2002 2006 2010 2014 (出所) EIA, ”Electric Power Annual”より作成 図 1.7.1 米国の石炭国内販売量と発電用石炭価格の推移 - 24 - (百万ショート・トン) 140 (ドル/ショート・トン) 250 コークス 120 一般炭 原料炭 100 200 原料炭 一般炭 コークス 150 80 60 平均 100 40 50 20 0 0 2000 2005 2010 2000 2015 2005 2010 2015 2010 2015 (出所) EIA,”Quarterly Coal Report”より作成 図 1.7.2 米国の石炭輸出量と輸出価格の推移 (十億ドル) (十億ドル) 50 18 45 16 40 14 35 12 30 コークス輸出 原料炭輸出 一般炭輸出 10 25 8 20 国内発電用 15 6 10 4 5 2 0 0 2000 2005 2010 2000 2014 2005 (出所) EIA, ”Electric Power Annual”および”Quarterly Coal Report”より作成 図 1.7.3 米国の石炭販売収入の推移 1.8 資産売却・買収に伴う供給者構図の変貌 価格低迷により資産の売却(不良資産や新規開発鉱区)が進められている。石炭メジャーでは、Rio Tinto と Anglo American などが資産整理(資産の一部売却)を進めるなか、Glencore(石炭輸送事 業は売却予定)と BHP Billiton(South 32 を設立し、資産を分割)は現状では豪州の石炭資産をほ ぼ維持している。今後の動向を追う必要があるが、一般炭は Glencore のシェアが、原料炭は BHP Billiton シェアが高まることになろう。一方で、豪州では中堅どころの石炭会社やファンド会社が既 存炭鉱や新規案件鉱区を買収する動きも出てきている。いずれにしても炭鉱の休山・閉山が進み、石 炭資産が大手企業に集中することになれば、石炭購入相手が減るという点で需要側にとっては調達面 で不利となるであろう。 (1) 豪州における石炭メジャー等の資産売却 Rio Tinto: Bengalla 炭鉱の権益 40%を New Hope に売却(2016 年 3 月 1 日完了) (上記に伴い三菱商事から Coal & Allied Industies Ltd.の株式を 20%取得、Hunter Valley - 25 - Operations の権益 32.4%を三菱商事に譲渡、2016 年 3 月 1 日完了) Mount Pleasant プロジェクトの権益 100%を MACH Energy Australia に売却予定 Mount Thorley 炭鉱、Warkworth 炭鉱を予定している。 Anglo American: 以下の炭鉱の売却を進めており、これらの売却が完了すれば、Anglo American の操業中炭鉱は German Creek 炭鉱群と Jellinbah 炭鉱群(いずれも原料炭)のみとなる。 Dartbrook 炭鉱の権益 83.33%を Australia Pacific Coal に売却予定 Callide 炭鉱を Batchfire Resources に売却予定 Foxleigh 炭鉱の権益 70%に Taurus Funds Management に売却予定 Dawson 炭鉱、Moranbah North 炭鉱、Grosvenor 炭鉱、Moranbah South 鉱区の売却を予定して いる。 Peabody Energy: Wilkie Creek 炭鉱を Sekitan Resources Pty. Ltd.に売却(2015 年 7 月完了) Wotonga 鉱区の権益 100%を Stanmore Coal Ltd.に売却(2015 年 9 月 4 日完了) Vale: Isaac Plains 炭鉱の権益 50%を Stanmore Coal に売却(2015 年 11 月 30 日完了) Integra 炭鉱を Glencore と Bloomfield Group に売却予定 Glencore: NSW 州石炭輸送事業の売却(2016 年第 3 四半期までに予定) (2) 豪州以外での石炭メジャー等の資産売却 Peabody Energy: ニューメキシコ州とコロラド州の石炭資産を Bowie Resource Partners LLC に売却予定 Walter Energy Inc.: 米国で保有する石炭ならびにコークス資産を Virginia Conservation Legacy Fund 等に売却予定 BHP Billiton: San Junan 炭鉱を Westmoreland Coal Company に売却(2016 年 2 月完了) CONSOL Energy: バージニア州 Buchanan 炭鉱、ウエストバージニア州 Amonate 炭鉱、バージニア州とペンシルベ ニア州の鉱区などを Coronado IL に売却予定 Glencore: Optimum Coal mine を Oakbay Investments Group に売却予定 Mechel: Elga 炭鉱プロジェクトの権益のうち 49%を Gazprombank に売却予定 1.9 為替変動の影響 国際石炭市場では、石炭価格は米国ドルで取引されているため、石炭生産会社の販売収益は輸出国 通貨の対ドル為替レート変動の影響を受けることになる。石炭価格が下落傾向を示し始めた 2011 年 以降の石炭輸出国通貨の対米ドル為替レートは軟化傾向で推移している。図 1.9.1 は 2011 年初めの輸 - 26 - 出国通貨の対米ドル為替レートの変化率を示す。ばらつきはあるものの各国の通貨は対米ドル安に動 いている。南アフリカランドとインドネシアルピアは 2011 年から軟化傾向を示しており、インドネ シアルピアは 2015 年半ばから横這いとなっている。豪州ドルは 2013 年半ばから、コロンビアペソは 2014 年半ばから軟化している。ロシアは経済制裁の影響で 2014 年半ば以降急激に落ちている。 なお、2016 年 5 月時点での各国通貨の対米ドル為替レートは、2011 年 1 月=1 と比較して、豪州 ドルは 0.75、インドネシアルピアは 0.67、コロンビアペソは 0.67、ロシアルーブルは 0.46、南アフ リカランドは 0.46 であった。 このように石炭価格の下落とともに各国通貨の対米ドル為替レートも下がっており、販売収益の面 では生産者にはプラス要因となった。しかし、為替レートは、資源価格が上昇に転じて経済状況が改 善されれば上がってくることになり、この場合は生産者にマイナス要因として働くとことになる。 (2011年1月1日=1) 1.20 1.00 2016年5月時点 0.80 0.75 0.67 0.60 0.40 豪州ドル 0.67 インドネシアルピア 0.46 0.46 ロシアルーブル 南アランド 0.20 コロンビアペソ 0.00 (出所) OWANDA ホームページより作成 図 1.9.1 主要石炭輸出国通貨の対米ドル為替レートの推移 参考まで、豪州の一般炭スポット価格の米国ドルと豪州ドル価格の推移を見ると、2013 年半ば以降 から豪州ドル建ての一般炭スポット価格の下落が緩やかになっている。 (US$/t、A$/t) 140 US$/ton 120 A$/ton 100 80 60 40 20 (出所) IHS, ”Australian Coal Report”より作成 図 1.9.2 豪州一般炭スポット価格の推移 - 27 - 2016/01 2015/10 2015/07 2015/04 2015/01 2014/07 2014/10 2014/04 2014/01 2013/07 2013/10 2013/04 2013/01 2012/07 2012/10 2012/04 2012/01 2011/07 2011/10 2011/04 2011/01 0 - 28 - 第 2 章 主要輸出国における石炭供給リスク - 29 - - 30 - 2. 主要輸出国における石炭供給リスク 2.1 世界の生産量、消費量、海上貿易量の推移 IEA の Coal Inforamtion 2015 をもとに世界の石炭需給について、石炭全体および炭種別に整理す る。世界の石炭需要は 2000 年代に入り急成長した中国を中心にアジアで増加してきたが、最大の石 炭消費国である中国の石炭消費が停滞したことから2014年の石炭需要はわずかではあるが縮小した。 2.1.1 石炭 (1) 生産 世界の石炭生産量は、石炭消費量の動向に対応し 1990 年の 46 億 4,490 万トンから 2000 年の 46 億 3,730 万トンと 1990 年代の増加量は停滞したが、2000 年代に入りアジアでの石炭消費量が急増し たことから 2013 年には 80 億 7,550 万トンと 2000 年の 1.7 倍に増加した。しかし、2014 年の生産量 は、消費量が前年を下回ったため 80 億 2,250 万トンと 5,290 万トン減少した。 炭種別の生産量をみると、 一般炭の生産量は 2000 年の 44 億 8,880 万トンから 2013 年の 62 億 310 万トンと 1.9 倍に増加し、原料炭の生産量は 2000 年の 4 億 7,710 万トンから 2013 年の 10 億 3,760 万トンと 2.2 倍に増加した。なお、2014 年の生産量は対前年比で一般炭は 5,590 万トンの減少し、原 料炭は 2,720 万トン増加した。 褐炭の生産量は 1990 年の 11 億 1,760 万トンから 2000 年の 8 億 4,420 万トンに減少し、 その後は需要の増減に対応して 8 億 5,000 万トン前後で推移し、 2014 年は 8 億 1,050 万トンに減少した。 炭種別の生産構成をみると、 一般炭の比率が大きく上昇した一方で、 褐炭の比率が相対的に減少し、 2014 年の炭種別の生産比率は、一般炭が 76.6%、原料炭が 13.3%、褐炭が 10.1%であった。なお、 2000 年の生産比率は一般炭が 55.9%、原料炭が 10.3%、褐炭が 18.2%であった。 (百万トン) 9,000 2014年の構成 8,000 褐炭 10.1% 褐炭 7,000 6,000 原料炭 13.3% 5,000 原料炭 4,000 3,000 2,000 一般炭 1,000 *2014 2012 2010 2008 2006 2004 2002 2000 1998 1996 1994 1992 1990 0 (注) 2014 年は推定値。無煙炭は一般炭に含む。 (出所) IEA, “Coal Information 2015”より作成 図 2.1.1 石炭生産量の推移(炭種別) - 31 - 一般炭 76.6% 表 2.1.1 石炭生産量の推移(炭種別) (百万トン) 1990 1995 2000 2005 2010 2011 2012 一般炭 2,927.8 3,153.0 3,316.1 4,488.8 5,421.7 5,749.1 5,900.6 6,203.1 2014* 6,147.2 原料炭 599.5 545.9 477.1 660.0 907.9 960.6 976.1 1,037.6 1,064.8 1,117.6 858.6 844.2 847.8 840.2 889.0 887.2 834.7 810.5 4,644.9 4,557.5 4,637.3 5,996.6 7,169.8 7,598.8 7,763.9 8,075.5 8,022.5 褐炭 世界計 2013 (注) 2014 年は推定値。無煙炭は一般炭に含む。 (出所) IEA, “Coal Information 2015”より作成 地域別の生産量をみると、アジアの生産量は、内需が増加する中国とインド、輸出国であるインド ネシアを中心に 2013 年まで増加し、2014 年は微減した。この微減の要因は中国の内需と輸入量の減 少によるところが大きい。オセアニアの生産量は、輸出国である豪州の輸出の増加に伴い増加してい る。旧ソ連の生産量はソ連崩壊により 1990 年代前半に減少したが、経済回復による内需増加とロシ アを中心とした輸出の増加により 1999 年以降増加した。ここ数年の生産量は、内需要減少と欧州市 場の縮小により減少している。アフリカの生産量は輸出国であるアフリカを中心に増加を示してきた が、ここ数年ほぼ横ばいで推移し、中南米の生産量は輸出国であるコロンビアを中心に増加したが、 2011 年以降ほぼ横這いで推移している。一方、北米と欧州では需要の減少から減少傾向にある。 (百万トン) 9,000 2014年の構成 8,000 中東 7,000 中南米 6,000 アフリカ 5,000 旧ソ連 4,000 オセアニア 3,000 旧ソ連 6.2% アフリカ 中南米 3.3% 1.5% オセアニア 6.2% 欧州 7.8% 欧州 2,000 1,000 アジア *2014 2012 2010 2008 2006 2004 2002 2000 1998 1996 1994 1992 1990 0 アジア 62.7% 北米 12.3% 北米 (注) 2014 年は推定値。 (出所) IEA, “Coal Information 2015”より作成 図 2.1.2 石炭生産量の推移(地域別) 表 2.1.2 石炭生産量の推移(地域別) (百万トン) 1990 1995 2000 2005 2010 2011 2012 2013 アジア 1,375.8 1,751.6 1,850.3 3,017.5 4,173.9 4,552.5 4,716.1 5,081.1 2014* 5,027.1 北米 1,001.9 1,012.1 1,040.8 1,104.4 1,064.0 1,073.0 998.8 972.6 985.3 欧州 1,171.0 878.6 756.2 728.9 673.8 709.8 707.0 654.5 629.3 オセアニア 207.1 245.4 310.2 375.9 429.7 407.2 435.7 463.6 495.1 旧ソ連 668.2 410.1 383.2 434.0 471.8 486.8 523.2 520.7 501.1 アフリカ 182.4 213.0 230.6 250.5 259.4 258.3 269.0 268.2 265.9 中南米 37.6 45.6 64.9 83.9 96.1 110.1 113.0 113.7 117.6 0.8 1.1 1.1 1.6 1.1 1.2 1.0 1.1 1.1 4,644.9 4,557.5 4,637.3 5,996.6 7,169.8 7,598.8 7,763.9 8,075.5 8,022.5 中東 世界計 (注) 2014 年は推定値。 (出所) IEA, “Coal Information 2015”より作成 - 32 - 中東 0.01% 上位 10 か国の生産推移をみると、中国の生産量は 2003 年以降に急増したが、内需の減少により 2014 年は減少した。中国に次ぐ米国は 1997 年以降 10 億トン前後で推移していたが、国内需要の減 少から 2009 年以降生産量が減少傾向にある。インドでは国内需要の増加に伴い生産量が増加してお り、石炭輸出国である豪州、インドネシアでは石炭市場の拡大に応じて生産量を伸ばしているが、イ ンドネシアは輸出需要の減少から 2014 年の生産量は減少した。ロシアの生産量は経済が回復基調に 転じた 1999 年に増加に転じ、それ以降増加傾向にある。南アフリカは微増傾向を維持してきたが、 2013 年以降微減している。 (百万トン) 4,500 4,000 3,500 3,000 2,500 2,000 1,500 1,000 500 0 '80 '82 '84 米国 '86 '88 '90 インド '92 '94 '96 '98 '00 インドネシア 豪州 '02 '04 ロシア '06 '08 '10 '12 '14* 中国 南アフリカ (中国を除く) (百万トン) 1,200 1,000 800 600 400 200 0 '80 米国 '82 インド '84 '86 豪州 '88 '90 '92 インドネシア '94 '96 ロシア '98 '00 南アフリカ '02 '04 ドイツ (注) 2014 年は推定値。 (出所) IEA, “Coal Information 2015”より作成 図 2.1.3 石炭生産量の推移(上位 10 か国) - 33 - '06 '08 ポーランド '10 '12 '14* カザフスタン 表 2.1.3 石炭生産量の推移(上位 10 か国) (百万トン) 中国 1990 1995 2000 2005 2010 2011 2012 2013 2014* 1,039.8 1,338.7 1,353.8 2,299.7 3,140.2 3,418.8 3,532.5 3,843.6 3,747.5 米国 933.6 937.1 971.6 1,038.6 996.1 1,005.9 932.3 903.7 916.2 インド 225.3 290.4 335.7 437.3 570.4 582.3 602.9 610.0 668.4 豪州 204.6 241.8 306.7 370.6 424.4 402.2 430.8 458.9 491.2 インドネシア 南アフリカ 10.2 41.8 79.4 170.5 325.0 404.6 444.5 487.7 470.8 371.9 245.7 240.3 282.9 298.7 295.6 329.4 326.0 334.1 ドイツ 174.8 206.2 224.2 245.0 254.5 252.8 258.6 256.3 253.2 ポーランド 434.0 251.6 205.1 205.9 183.5 189.5 197.0 191.0 186.5 カザフスタン 215.3 200.7 162.8 159.5 133.2 139.3 144.1 142.9 137.1 (注) 2014 年は推定値。 (出所) IEA, “Coal Information 2015”より作成 2014 年の石炭生産量を国別にみると、中国が世界の石炭生産量の 46.7%にあたる 37 億 4,750 万ト ンを生産し、以下、米国の 11.4%、インドの 8.3%と続き、これら 3 か国で全生産量の 66.5%を占め た。2014 年の石炭生産量を 10 年前の 2004 年と比較すると、中国の生産量は 16 億 6,370 万トン(年 平均 7.0%)増加し、次いでインドネシアが 3 億 7,150 万トン(同 15.4%) 、インドが 2 億 2,630 万ト ン(同 6.0%)増加した。一方、米国、ドイツ、ポーランドでは生産量が減少した。アジアの石炭生 産量はこの 10 年間で 1.8 倍になり、2014 年では世界の石炭生産量の 62.7%を占め、中国、インド、 インドネシアの 3 か国でアジアの生産量の 97.6%を占めている。 カザフスタン ポーランド1.4% その他 1.7% 8.8% ドイツ 2.3% (百万トン) その他 南アフリカ 3.2% カザフスタン 12.1% 1.5% ロシア ドイツ ポーランド 4.2% 2.9% 世界計 3.7% 南アフリカ 8,023百万トン インドネシア 4.3% (外円:2014年推定) 5.9% ロシア 豪州 6.1% 4.6% インドネシア 2.5% 豪州 6.2% インド 8.3% 中国 36.9% 中国 46.7% 5,654百万トン (内円:2004年) インド 7.3% 米国 18.0% 2004 2014 推定 中国 2,083.8 3,747.5 1,663.7 米国 1,019.1 916.2 ▲ 102.9 インド 410.4 668.4 258.0 豪州 350.3 491.2 140.9 インドネシア 143.7 470.8 327.1 ロシア 258.9 334.1 75.1 南アフリカ 242.8 253.2 10.4 ドイツ 211.1 186.5 ▲ 24.6 ポーランド 162.4 137.1 ▲ 25.3 28.4 カザフスタン その他 世界計 米国 11.4% 増減 アジア計 87.0 115.5 684.1 702.1 18.0 5,653.7 8,022.5 2,368.9 2,734.2 5,027.1 2,292.9 (48.4%) (62.7%) (出所) IEA, “Coal Information 2015”より作成 図 2.1.4 石炭生産量上位 10 か国 (2) 消費 世界の石炭消費量は、1990 年代には増減があったものの 1990 年の 46 億 3,800 万トンから 2000 年の 47 億 4,830 万トンに増加した。 1990 年代初めの減少は旧ソ連での消費量が減少したためで、 1997 年以降の減少は中国と欧州での減少が主な原因である。 2000 年代に入り石炭消費量は中国を中心にア - 34 - ジアで急増し 2010 年に 71 億 3,550 万トンに、2013 年には 79 億 9,460 万トンに達した。しかし、 2014 年の石炭消費量は、最大の石炭石炭消費国である中国の消費量が経済発展速度の減速、大気汚染 問題による消費抑制などから 1 億トン以上減少した他、ウクライナやイギリス、ドイツ、ロシアなど の諸国でも1千万トン前後石炭消費は減少した。 インドでは1億トン増加したものの、 世界全体の2014 年の石炭消費量は 79 億 2,320 万トンと 2013 年を 7,140 万トン下回った。 (百万トン) (百万トン) 0 (%) 1 12.0 9,000 0 3.7 0 0.0 5.0 2.8 1.0 6.0 4.0 2.2 1.5 -1.1-1.5 アフリカ 4.0 旧ソ連 2.0 オセアニア 0.0 欧州 北米 -4.0 アジア -6.0 伸び率 *2014 2012 2000 1998 1996 6.0 -0.7 -2.0 0 1994 1992 0 -1.1 -1.9 -2.4 -3.5 0 1990 0 3.1 1.4 中南米 8.0 5.3 2010 3,000 1,000 1.8 0 4,000 6.1 2008 5,000 4.8 3.5 中東 10.0 2006 6,000 2002 7,000 2,000 7.1 7.5 0 2004 8,000 (注) 2014 年は推定値。 (出所) IEA, “Coal Information 2015”より作成 図 2.1.5 石炭消費量の推移(地域別) 表 2.1.4 石炭消費量の推移(地域別) (百万トン) アジア 1990 1995 2000 2005 2010 2011 2012 2013 5,443.4 2014* 5,440.4 1,545.1 1,908.0 2,077.8 3,168.5 4,488.3 4,831.9 5,050.5 北米 865.1 916.2 1,029.4 1,087.1 997.7 964.4 861.9 878.8 877.8 欧州 1,321.0 1,015.4 937.2 941.4 883.1 930.2 939.0 888.9 846.6 オセアニア 97.5 104.6 130.2 143.9 140.8 136.6 135.6 124.3 118.3 旧ソ連 635.1 405.8 346.8 347.6 351.3 369.1 394.1 374.5 354.3 アフリカ 136.4 158.3 170.5 189.5 201.1 198.3 197.4 195.2 195.0 中南米 33.0 38.5 43.9 50.0 58.3 62.7 62.9 73.9 74.5 中東 世界計 4.8 8.3 12.6 14.6 14.9 16.1 18.7 15.6 16.4 4,638.0 4,555.1 4,748.3 5,942.6 7,135.5 7,509.3 7,660.1 7,994.6 7,923.2 (注) 2014 年は推定値。 (出所) IEA, “Coal Information 2015”より作成 地域別に石炭消費量の推移を概観すると、石炭消費量はアジアで大きく伸び、欧州や旧ソ連では減 少している。アジアでは 2000 年代に入り急速に増加し、2013 年には 54 億 4,340 万トンと 2000 年 の2.6 倍に増加した。 2014 年には中国の消費量が1 億トン以上減少したことからほぼ横ばいとなった。 北米では 2005 年まで漸増した後横這いとなり、2009 年のリーマン・ショックの影響により 1 億トン 減少、さらに 2012 年にはシェールガスの増産によるガス価格の下落の影響を受け 1 億トン減少し、 その後ほぼ横ばいで推移した。欧州では 1990 年代に減少で推移(1990 年代初めにはドイツでの褐炭 消費の減少などにより大幅に減少)した後、2000 年代に入り 9 億トン台前半で増加したが、2013 年 以降減少傾向を示している。 旧ソ連も同様に 1990 年代に減少した後に 4 億トン近くまで増加し、 2013 年以降減少傾向を示している。オセアニアでは 2010 年以降減少傾向にある。これらの減少は環境対 策(大気汚染対策、温暖化問題)によるところが大きい。 - 35 - 2014 年の地域別の石炭消費量をみると、アジアで 7 割弱が消費され、北米と欧州で 1 割強が消費 されている。 旧ソ連 アフリカ 2.5% 4.5% 中南米 0.9% オセアニア 1.5% 中東 0.21% 欧州 10.7% 北米 11.1% アジア 68.7% (注) 2014 年は推定値。 (出所) IEA, “Coal Information 2015”より作成 図 2.1.6 2014 年の地域別石炭消費構成 石炭消費を分野別にみると、石炭は発電用燃料としての利用が多く、電力需要の増大に伴い発電用 燃料としての石炭消費量がアジアを中心に増加し、発電に利用される石炭量が石炭消費量全体に占め る比率は 1990 年の 56.0%から拡大し、2013 年は 64.2%であった。 100% 90% 20.2% 80% 70% 14.1% 14.5% 11.8% 13.7% 12.9% 13.2% 11.0% 11.1% 10.9% 10.4% 11.0% 11.1% 12.2% 12.7% 13.1% 13.0% 12.8% 12.6% 13.1% 12.5% 12.3% 12.3% 13.9% 60% その他 50% 40% 55.0% 60.2% 66.1% 63.2% 63.9% 63.7% 65.4% 65.0% 64.8% 65.2% 64.8% 64.2% 30% 他産業 発電 20% コークス製造 10% 11.0% 11.2% 10.0% 10.7% 10.9% 10.8% 10.8% 10.7% 11.3% 11.6% 11.7% 11.7% 1990 1995 2000 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 0% (出所) IEA, “Coal Information 2015”より作成 図 2.1.7 2014 年の地域別石炭消費構成の推移 2014 年の石炭消費量を国別にみると、中国が世界の石炭消費量の 46.7%にあたる 39 億 940 万ト ンを消費し、以下、インドの 11.4%、米国の 10.5%と続き、これら 3 か国で全消費量の 71.3%を占め た。2014 年の石炭消費量を 10 年前の 2004 年と比較すると、中国の消費量は 18 億 9,560 万トン(年 平均 6.9%)増加し、次いでインドが 4 億 6,740 万トン(同 7.5%)増加した。一方、米国、ドイツ、 ロシア、南アフリカ、ポーランド、豪州では消費量が減少した。アジアの石炭消費量はこの 10 年間 で 1.9 倍になり、2014 年では世界の石炭消費量の 68.7%を占めた。 - 36 - その他 豪州 13.7% 韓国 1.5% 1.7% ポーランド その他 1.7% 18.3% 南アフリカ 中国 2.2% 豪州 世界計 日本 35.4% 韓国 2.4% 7,923百万トン ロシア ポーランド (外円:2014年推定) 2.5% 南アフリカ ドイツ 5,697百万トン 日本 3.0% (内円:2004年) ロシア 3.8% ドイツ インド 4.4% 米国 7.7% 米国 10.5% 17.7% (百万トン) 中国 2004 2014 推定 2,014.2 3,909.4 439.2 906.5 467.4 1,010.7 835.4 ▲ 175.3 インド 米国 中国 49.3% 1,895.3 ドイツ 249.4 236.1 ▲ 13.3 ロシア 217.0 201.4 ▲ 15.7 日本 183.6 187.7 4.1 南アフリカ 179.0 177.9 ▲ 1.1 ポーランド ▲ 8.1 145.1 137.0 韓国 80.0 133.1 53.2 豪州 136.2 115.5 ▲ 20.6 1,042.6 1,083.1 40.5 5,696.9 7,923.2 2,226.4 2,928.9 5,440.4 2,511.4 (51.4%) (68.7%) その他 世界計 インド 11.4% 2004-2014 増減 アジア計 (出所) IEA, “Coal Information 2015”より作成 図 2.1.8 石炭消費量上位 10 か国 (3) 貿易 世界の石炭貿易量は、主に発電用燃料として消費される一般炭需要の拡大に伴い増加している。貿 易量を輸出側からみると、 世界の石炭輸出量は、 2000 年の 6 億 2,440 万トンから 2010 年に10 億 7,680 万トンに増加し、2014 年には 13 億 8,360 万トンと 2000 年の 2.2 倍となった。2014 年の輸出量を炭 種別にみると原料炭が3億2,180万トン (総輸出量の23.3%) 、 一般炭が10億5,380万トン (同76.2%) 、 1,600 1,400 1,000 800 600 400 200 0 '80 '82 '84 原料炭 輸出量/生産量比(原料炭) '86 '88 '90 '92 '94 '96 一般炭 輸出量/生産量比(一般炭) '98 '00 '02 '06 褐 炭 輸出量/生産量比(褐 炭) 注) *2014 年は推定値。輸出量を貿易量としており、一般炭には無煙炭を含める。 石炭輸出比率: 石炭輸出比率(%)=石炭輸出量÷石炭生産量 出所) IEA, “Coal Information 2015" より作成 図 2.1.9 石炭貿易量の推移 - 37 - '04 '08 '10 '12 60 50 40 30 20 石炭輸出比率(%) 石炭輸出量(百万トン) 1,200 144 119 275 149 128 289 147 128 286 145 130 287 167 152 330 172 180 364 167 183 363 175 179 367 192 195 400 193 197 401 210 294 520 202 288 506 203 281 498 186 253 449 195 254 457 195 299 504 194 323 525 197 348 551 184 368 558 179 369 554 187 432 624 195 478 678 182 481 667 186 535 725 191 569 763 206 610 820 200 893 689 215 929 710 235 935 696 210 932 718 276 1,077 796 272 920 1,196 283 985 1,275 1,072 296 1,375 322 1,054 1,384 褐炭が 800 万トン(同 0.6%)であった。 10 0 '14* 輸出量/生産量比(石炭全体) しかし、石炭は他の化石燃料に比べて国際貿易により取引される比率が小さい。世界の総生産量と 総輸出量を比較すると、生産に対する輸出の比率は次第に上昇しているものの、2014 年の比率は 17.2%に過ぎない。これを炭種別にみると、原料炭が 30.2%、一般炭(無煙炭を含む)が 17.2%、褐 炭が 1.0%であった。 1) 輸出 主要石炭輸出国の石炭輸出量の推移をみると、 2000 年代前半までは豪州の石炭輸出が他を圧倒して きたが、2000 年代に入りインドネシアの輸出量が急増し、インドネシアの石炭輸出量は 2011 年に豪 州を上回った。豪州では QLD 州で豪雨のために石炭生産が停滞した他、炭鉱ストなどによる生産の 減少が重なり、2011 年の輸出量が前年を下回ったが、2012 年以降再び増加に転じている。一方、イ ンドネシアの輸出量は 2013 年まで増加し続けたが、2014 年には減少に転じた。これは中国のインド ネシアからの輸入量が減少したことが最大の原因である。 輸出量第 3 位であるロシアの輸出量は 1990 年代に入り半減したが、1999 年以降増加傾向にある。 ロシアの主要輸出先はこれまで欧州市場であったが、 2009 年頃からアジア市場への輸出量の増加がし ている。 輸出量第 4 位である米国の輸出量は 1990 年代から 2000 年代前半にかけ減少したが、2000 年代半 ばから増加傾向を示し、 2009 年は米国のサブプライムローン問題に端を発した世界同時不況の影響か ら減少に転じたが、2011 年、2012 年はシェールガス増産による米国国内ガス価格の低迷により国内 での石炭消費が減少したことを受けて輸出量を増加させた。しかし、主要輸出先である欧州市場の縮 小とアジア向け輸出量の減少により 2013 年以降減少に転じた。 コロンビアの輸出量は 2011 年、2012 年と増加したが、その後は 2013 年のストライキの影響や欧 州市場の縮小などから輸出量はほぼ横ばいで推移した。 南アフリカはインド向け輸出の拡大により輸出量を増加させてきたが、 2012 年以降はインドを中心 にアジア市場向けが増える一方で、欧州市場向けが減少し、横這いで推移した。 (百万トン) 450 インドネシア 400 豪 350 州 ロシア 300 米 国 コロンビア 250 南アフリカ 200 オランダ カナダ 150 カザフスタン 100 モンゴル 50 北朝鮮 0 '90 '92 '94 '96 '98 '00 '02 '04 '06 '08 '10 (注) 2014 年は推定値。 (出所) IEA, “Coal Information 2015”より作成 図 2.1.10 主要石炭輸出国の石炭輸出量の推移 - 38 - '12 '14* 中国は2001 年から2003 年まで世界第2 位の石炭輸出国で2003 年には9,000 万トンを上回ったが、 2004 年以降は国内需要の増加から輸出量を大きく減少させた。近年、中国は石炭生産過剰が続いてい るが、生産コストが割高なため競争力がなく輸出は低迷しており、2014 年の輸出量は 560 万トンと 第 15 位の輸出国まで順位を下げている。 2014 年の石炭輸出量は、インドネシアが 4 億 1,090 万トンと世界の輸出量の 29.7%を占めた。次 いで豪州が 3 億 7,500 万トンと同 27.1%を占め、この 2 か国で世界の輸出量の 56.8%を占めた。第 3 位以下は、ロシア、米国、コロンビア、南アフリカと続き、これら上位 6 か国で世界の輸出量の 85.7% を占めた。 カザフスタンモンゴル 1.4% その他 2.1% カナダ 5.5% 2.5% オランダ 2.8% 南アフリカ 5.5% その他 19.3% カザフスタン コロンビア 3.2% 5.8% カナダ 米国 6.4% インドネシア 29.7% インドネシア 13.8% 世界計 1,384百万トン (外円:2014年推定) オランダ 3.4% 1.2% 763百万トン 豪州 28.8% (内円:2004年) 南アフリカ 8.9% コロンビア 6.7% 米国 ロシア 5.7% 9.0% ロシア 11.2% 2004 増減 インドネシア 105.1 410.9 305.8 豪州 219.3 375.0 155.7 ロシア 68.9 155.5 86.6 米国 43.5 88.3 44.8 コロンビア 50.9 80.3 29.4 南アフリカ 67.9 76.4 8.4 9.3 38.7 29.4 カナダ 25.9 34.5 8.6 カザフスタン 24.5 28.9 4.4 0.0 19.3 19.3 オランダ モンゴル 147.1 75.8 ▲ 71.2 世界計 762.5 1,383.6 621.0 アジア計 206.7 468.8 262.1 (27.1%) (33.9%) その他 豪州 27.1% 2014 推定 (出所) IEA, “Coal Information 2015”より作成 図 2.1.11 石炭輸出量上位 10 か国 2) 輸入 主要石炭輸入国の石炭輸入量の推移をみると、日本が最大の輸入国であったが、2000 年代終り以 降に中国とインドの輸入量が急増し、2011 年に中国の輸入量が、2014 年にはインドの輸入量が日本 を上回った。 中国の輸入量は国内需要の拡大、国内炭価格の上昇などにより、主要産炭地域から遠距離にある東 南沿岸地域を中心に輸入が急拡大し、2013 年には 3 億 2,720 万トンの石炭を輸入した。しかし、2014 年の輸入量は経済成長の鈍化、大気汚染問題、国内需給調整から前年比で 3,560 万トン減少した。 インドの輸入量は、急増する国内需要に国内生産が追い付かないこと、海外炭専焼火力が運開して いること、国内炭が高灰分で品質が悪いことなどから 2008 年以降に急増した。 韓国の輸入量は新規石炭火力の運開や製鉄所の増設などにより 2011 年まで漸増してきたが、2012 年以降増加ペースは鈍化し、ほぼ横ばいで推移した。 日本の輸入量は、世界同時不況の影響から 2009 年に、東日本大震災の影響から 2011 年に輸入量を 減少させたが、石炭火力からの発電量の増加(運転再開、新規石炭火力の運開)などにより 2012 年、 2013 年と輸入量は増加した。 - 39 - (百万トン) 350 中 国 インド 300 日 本 韓 国 台 湾 250 200 ドイツ 150 オランダ 100 英 国 トルコ 50 ロシア 0 '90 '92 '94 '96 '98 '00 '02 '04 '06 '08 '10 '12 '14* (注) 2014 年は推定値。 (出所) IEA, “Coal Information 2015”より作成 図 2.1.12 主要石炭輸入国の石炭輸入量の推移 2014 年の輸入量は 14 億 2,360 万トン、うち中国が 2 億 9,160 万トンで世界の輸入量の 20.5%を占 め、以下、インドの 2 億 3,940 万トン(同 16.8%) 、日本の 1 億 8,770 万トン(同 13.2%) 、韓国の 1 億 3,090 万トン(同 9.2%) 、台湾 6,710 万トン(同 4.7%)と続く。中国を含めた東アジア 4 か国の 輸入量は 7 億 2,890 万トンで、石炭輸入量全体の 51.2%を占めた。なお、2014 年のアジアの石炭輸 入量は 10 億 520 万トンで世界の輸入量の 70.6%を占め、この 10 年間で 6 億トン増加した。 その他 21.0% ロシア 1.8% トルコ 2.1% 英国 2.9% オランダ 3.8% ドイツ 4.0% その他 35.6% 中国 インド 2.4% 3.7% 世界計 (百万トン) 中国 20.5% 2004 日本 23.3% 1,424百万トン (外円:2014年推定) 788百万トン (内円:2004年) 韓国 10.0% インド 16.8% ロシア トルコ 2.8% 2.1% オランダ 台湾 2.9% 7.7% 英国 ドイツ 台湾 4.6% 5.0% 4.7% 日本 韓国 13.2% 9.2% 増減 中国 18.6 291.6 273.0 インド 29.0 239.4 210.4 日本 183.6 187.7 4.1 韓国 79.0 130.9 51.9 台湾 60.5 67.1 6.6 ドイツ 39.6 57.0 17.5 32.1 オランダ 22.6 54.7 英国 36.2 40.6 4.5 トルコ 16.4 29.8 13.4 ロシア 22.4 25.3 2.9 その他 280.3 299.5 19.3 世界計 788.1 1,423.6 635.6 アジア計 409.0 1,005.2 596.2 (51.9%) (70.6%) (出所) IEA, “Coal Information 2015”より作成 図 2.1.13 石炭輸入量上位 10 か国 - 40 - 2014 推定 3) 貿易フロー 石炭市場は、大別してアジア太平洋市場と欧州大西洋市場の 2 つに分かれている。欧州大西洋市場 がわずかずつ縮小しているのに対して、アジア太平洋市場は拡大している。2013 年時点でアジア太平 洋市場は欧州大西洋市場の 3 倍以上まで拡大している。 12.9Mt その他欧州 46.8Mt モンゴル 19.3Mt ロシア 155.5Mt OECD欧州 280.5Mt 中国 5.6Mt 4.5Mt 25.4Mt 71.0Mt 19.3Mt 13.4Mt 2.3Mt 中国 291.6Mt OECD欧州 280.5Mt 3.6Mt 29.4Mt 3.6Mt 5.8Mt 4.4Mt アフリカ・中東 26.2Mt 9.0Mt 103.1Mt 北米 25.4Mt 120.3Mt 2.4Mt 豪州 375.0Mt インド 226.8Mt コロンビア 80.3Mt 5.3Mt 14.3Mt 6.5 Mt 輸出国 47.3Mt 31.4Mt 9.6Mt 中南米 37.8Mt インドネシア 410.9Mt 136.4Mt 南アフリカ 76.4Mt 3.0Mt 2.5Mt 10.2Mt 9.6Mt 10.4Mt 5.3Mt 5.3Mt 26.3Mt 55.2Mt 9.5Mt 41.4Mt 128.2Mt 米国 88.3Mt 5.0Mt 5.4Mt その他アジア 297.8Mt 7.9Mt 3.0Mt 106.4Mt 94.5Mt 52.0Mt 4.5Mt 7.8Mt 日本 193.3Mt 18.3Mt 5.1Mt カナダ 34.5Mt 8.2Mt 輸入国・地域 4.2Mt (注) 貿易量は推計値。図には 200 万トン以上のフローを記載。 青色の数字は対前年度増加、赤色の数字は対前年度減少、黒色の数字は増減なしを示す。 (出所) IEA, “Coal Information 2015" より作成 図 2.1.14 石炭フロー(2014 年) アジア太平洋市場へは、インドネシア、豪州から多くの石炭が供給され、欧州大西洋市場へは、コロ ンビア、ロシア、米国からの石炭が供給されている。南アフリカからの輸出は欧州大西洋市場が主要 な市場であったが、ロシア、コロンビア、そして米国から欧州太平洋市場への供給量が増えたこと、 またインドの輸入量が増加していることから、インドを中心にアジア向けにシフトしている。 2.1.2 一般炭 15 (1) 生産 一般炭の生産量は、1990 年代前半と後半でその増加が停滞したが、2000 年代に入り中国を始めイ ンドやインドネシアなどアジアを中心に増加し、2013 年の一般炭生産量は 62 億 310 万トンまで増加 し、2014 年は中国の生産量が 1 億トン以上減少したことを受けて 61 億 4,720 万トンに減少した。 15 無煙炭を含む。 - 41 - 6,147 6,203 5,901 5,749 5,422 5,205 5,090 4,757 4,489 3,881 3,592 3,526 3,316 3,202 3,239 3,228 3,226 3,153 3,028 2,924 2,886 3,000 2,928 4,000 2,906 生産量(百万トン) 5,000 4,000 3,500 3,000 2,500 2,000 1,500 2,000 1,000 1,000 国別生産量(百万トン) 4,218 6,000 4,943 7,000 500 0 0 '90 '92 一般炭生産量 豪州 '94 '96 '98 中国 ロシア '00 '02 '04 米国 カザフスタン '06 '08 インド コロンビア '10 '12 '14* インドネシア ポーランド 南アフリカ (注) 無煙炭を含む。2014 年は推定値。 (出所) IEA, “Coal Information 2015”より作成 図 2.1.15 一般炭生産量の推移 2014 年の一般炭生産量を国別にみると、中国が 31 億 7,960 万トンと世界の一般炭生産量の 51.7% を生産し、以下、米国、インド、インドネシア、南アフリカ、豪州、ロシアと続き、上位 3 か国で一 般炭生産量の 73.5%を、上位 7 か国で 92.3%を占めた。上位 10 ヵ国のうち、2004 年と対比して米国 とポーランドを除く 8 ヵ国で生産量は増加した。中国の増加量は 13 億 2,950 万トンと他の生産国を 圧倒し、次いでインドネシアの増加量が多く、2013 年の生産量は 4 億 6,810 万トンと 2004 年の 3.3 倍に増加した。 2013 年のアジアの一般炭生産量は 41 億 3,700 万トンで、 世界の一般炭生産量の 69.2% を占めており、2003 年よりも 14.0 ポイント増加した。 コロンビア ポーランド 1.0% カザフスタン 1.4% 1.5% その他 ロシア 3.9% 3.1% 豪州 その他 4.0% 5.3% 南アフリカ ロシア 4.1% 豪州 3.9% 世界計 南アフリカ インドネシア 5.7% 6,147百万トン 7.6% インドネシア (外円:2014年推定) 3.4% インド 9.3% インド 8.5% 4,218百万トン (百万トン) 中国 43.9% 中国 51.7% (内円:2004年) 米国 21.3% 2004 2014 推定 中国 1,850.1 3,179.6 1,329.5 米国 899.1 769.2 ▲ 130.0 インド 357.6 569.9 212.3 インドネシア 142.7 468.1 325.4 南アフリカ 241.6 250.6 9.1 豪州 164.6 245.7 81.1 ロシア 128.6 189.5 60.9 カザフスタン 72.0 93.5 21.4 コロンビア 52.0 83.5 31.4 ポーランド 84.7 61.0 ▲ 23.7 その他 世界計 米国 12.5% アジア計 (注) 無煙炭を含む。 (出所) IEA, “Coal Information 2015”より作成 図 2.1.16 一般炭生産量上位 10 か国 - 42 - 増減 225.0 236.8 11.9 4,217.9 6,147.2 1,929.3 2,418.9 4,321.6 1,902.8 (57.3%) (70.3%) (2) 消費 一般炭の消費量は、電力向け石炭需要の拡大に伴い増加している。1990 年初めと 1997 年以降で減 少したものの一般炭の消費量は 1990 年の 29 億 5,400 万トンから 2000 年には 34 億 2,150 万トンま で増加した。2000 年代に入り中国を中心にアジアにおいて一般炭消費量は急拡大し、2010 年に 54 億 4,630 万トン、2013 年には 61 億 4,870 万トンまで増加し、2014 年は中国の消費量が 1 億 2,000 万トン減少したことを受け、60 億 8,620 万トンに減少した。 (百万トン) (百万トン) 0 (%) 1 12.0 7,000 8.6 8.7 0 5,000 6.4 6.0 0 5.5 4,000 6.1 0 3,000 2.9 2.1 0.8 1.5 2012 2008 2006 2004 2002 2000 中東 8.0 アフリカ 6.0 中南米 4.0 北米 旧ソ連 2.0 2.5 -1.0 -0.6 -1.2 1998 1994 1992 -0.40 -0.1 -0.9 1990 2.3 4.8 4.3 2010 2.2 0 1,000 2.9 2.7 3.3 1996 2,000 0 4.6 0 欧州 0.0 0 オセアニア 10.0 アジア -2.0 *2014 6,000 伸び率 (注) 無煙炭を含む。2014 年は推定値。 (出所) IEA, “Coal Information 2015”より作成 図 2.1.17 一般炭消費量の推移 表 2.1.5 一般炭消費量の推移 (百万トン) アジア 1990 1995 2000 2005 2010 2011 2012 2013 2014* 4,542.8 1,304.0 1,600.5 1,790.6 2,689.9 3,758.1 4,049.0 4,247.8 4,562.9 欧州 380.2 321.4 291.1 302.9 274.4 279.6 297.4 290.7 266.7 旧ソ連 341.7 220.7 166.6 180.9 177.8 185.5 209.4 201.6 183.8 北米 736.4 790.2 913.5 974.8 896.4 855.0 756.7 778.3 777.2 中南米 14.9 20.0 26.5 33.3 39.3 42.4 43.1 52.3 55.7 アフリカ 127.8 151.3 164.4 182.8 195.4 193.6 192.9 190.5 190.8 3.8 6.9 10.9 13.2 14.0 15.3 18.0 14.9 15.7 中東 オセアニア 世界計 45.2 47.6 57.9 68.5 64.2 60.8 60.3 57.4 53.6 2,954.0 3,158.6 3,421.5 4,446.3 5,419.6 5,681.4 5,825.5 6,148.7 6,086.2 (注) 無煙炭を含む。2014 年は推定値。 (出所)IEA, “Coal Information 2015”より作成 2014 年の一般炭消費量は、中国が 32 億 7,790 万トン(全一般炭消費量の 53.9%) 、インドが 7 億 5,730 万トン(同 12.4%) 、米国が 7 億 4,660 万トン(同 12.3%)で、これら 3 か国で全消費量の 78.6% を占めた。以下、南アフリカ、日本、ロシア、韓国と続く。上位 10 ヵ国について 2014 年の一般炭消 費量を 2004 年と比較すると、米国、ロシア、ポーランドの 3 か国を除く 7 か国で増加した。2014 年 のアジアの一般炭消費量は 45 億 4,280 万トンとなり、世界の一般炭消費量の 74.6%を占めた。 - 43 - ポーランド 1.0% カザフスタン その他 1.1% 10.3% インドネシア ロシア 1.0% 1.3% その他 韓国 日本 13.5% 1.6% インドネシア 2.3% ポーランド 南アフリカ カザフスタン 2.9% 世界計 韓国 ロシア 日本 6,086百万トン 南アフリカ (外円:2014年推定) 4.2% 米国 (百万トン) 中国 中国 41.9% 中国 53.9% 4,250百万トン 12.3% (内円:2004年) 米国 21.5% インド 8.7% 2004 2014 推定 1,780.9 3,279.9 インド 371.0 757.3 386.4 米国 913.2 746.6 ▲ 166.5 1,499.0 南アフリカ 177.0 174.4 ▲ 2.6 日本 122.7 137.0 14.3 韓国 58.9 100.3 41.4 ロシア 95.8 77.2 ▲ 18.5 カザフスタン 47.6 67.1 19.5 ポーランド 70.2 60.8 ▲ 9.5 21.3 インドネシア その他 インド 12.4% 2004-2014 増加量 世界計 アジア計 38.6 59.9 574.5 625.7 51.2 4,250.3 6,086.2 1,835.9 2,511.2 4,542.8 2,031.7 (59.1%) (74.6%) (注) 無煙炭を含む。 (出所) IEA, “Coal Information 2015”より作成 図 2.1.18 一般炭消費量上位 10 か国 (3) 貿易 国別に一般炭の輸出量と輸入量の推移をみると、インドネシアの輸出量は、中国やインドなどアジ ア諸国の輸入量が増大したことから急増し、2013 年には 4 億 2430 万トンまで増加し、2014 年は 4 億 820 万トンに減少した。中国への輸出量が減少したことが大きく影響している。一方、豪州、ロシ ア、南アフリカの輸出量はアジアの需要拡大に伴い増加した。なお、中国の輸出量は国内需要急増に より 2004 年の 8,090 万トンをピークに減少し、2014 年の輸出量は 480 万トンまで減少した。この背 景には、国際市場価格に比して中国国内市場の価格が高いこと、FOB コストが高くアジア太平洋市場 で競争力がないことが挙げられる。 輸 (百万トン) 出 輸 (百万トン) 450 入 300 インドネシア 中 国 400 豪 州 350 250 インド ロシア 日 本 300 コロンビア 250 南アフリカ 200 オランダ 200 韓 国 台 湾 150 ドイツ 米 国 150 オランダ 100 カザフスタン 100 北朝鮮 英国 50 マレーシア 50 ベトナム 0 トルコ 0 '00 '02 '04 '06 '08 '10 '12 '14* '00 '02 '04 '06 (注) 無煙炭を含む。2014 年は推定値。 (出所) IEA, “Coal Information 2015”より作成 図 2.1.19 主要国の一般炭輸出入量の推移 - 44 - '08 '10 '12 '14* 一方、輸入側をみると、2009 年以降に中国とインドの輸入量が急速に増加した。その他では、韓国 の輸入量が新規石炭火力の運開に伴い 2007 年から 2011 年まで増加し、日本では東日本大震災後の 2012 年、2013 年に増加した。欧州市場ではイギリスやドイツなどで天然ガス価格が高いこと、石炭 価格が安いこと、CO2 取引価格が安いことから経済的に有利な石炭の使用量が増加し、輸入量は 2011 年から増加傾向にあった。なお、2014 年の中国の輸入量は国内需要の停滞、需給調整などから 2,000 万トン程度減少した。 2014 年の一般炭の輸出量は 10 億 5,380 万トンであった。最大の一般炭輸出国はインドネシアで 4 億 820 万トン(世界の一般炭輸出量 38.7%)を輸出し、次いで豪州が 1 億 9,460 万トン(同 18.5) を輸出した。以下、ロシア、コロンビア、南アフリカと続き、これら上位 5 か国の輸出量は世界の一 般炭輸出量の 84.4%を占めた。 一方、輸入国をみると、最大の一般炭輸入国は中国で 2014 年に 2 億 1,740 万トン(世界の一般炭 輸入量の 20.4%)を輸入し、以下、インドの 1 億 7,670 万トン(同 16.8%) 、日本の 1 億 3,700 万ト ン(同 12.2%) 、韓国の 9,710 万トン(同 8.6%) 、台湾の 5,980 万トン(同 5.3%)と続く。なお、 2014 年のアジアの一般炭輸入量は 7 億 9,820 万トンで世界の一般炭輸入量の 70.9%を占め、この 10 年間で 5 億トン以上増加した。 ベトナム 北朝鮮 0.9% カザフスタン 1.5% 2.5% その他 米国 2.9% オランダ 3.1% 南アフリカ 7.2% 4.6% 2004 その他 21.0% インドネシア 18.3% ベトナム 2.0% 1,054百万トン カザフスタン (外円:2014年推定) コロンビア 4.2% 569百万トン 米国 7.5% オランダ 3.3% 1.6% (内円:2004年) ロシア 12.5% インドネシア 38.7% 世界計 豪州 18.9% 豪州 18.5% 104.1 408.2 304.1 豪州 107.6 194.6 87.0 ロシア 56.7 132.0 75.3 コロンビア 49.3 78.8 29.5 南アフリカ 67.0 76.0 9.0 8.9 33.1 24.2 米国 19.0 31.1 12.1 カザフスタン 24.1 26.5 2.4 1.6 15.6 14.0 オランダ ベトナム 11.6 9.9 ▲ 1.8 その他 119.3 48.0 ▲ 71.3 世界計 569.1 1,053.8 484.7 アジア計 199.4 454.7 255.3 (35.0%) (43.1%) (注) 無煙炭を含む。 (出所) IEA, “Coal Information 2015”より作成 図 2.1.20 一般炭輸出量上位 10 か国 - 45 - 増減 インドネシア 北朝鮮 南アフリカ ロシア 11.8% コロンビア 10.0% 8.7% 2014 推定 トルコ 2.1% マレーシア 2.1% 英国 3.0% その他 38.7% (百万トン) 中国 20.4% その他 21.4% 中国 2.0% 2004 インド 2.1% 日本 20.9% 世界計 1,125百万トン (外円:2014年推定) 韓国 9.7% 586百万トン (内円:2004年) オランダ 4.0% トルコ 英国 2.0% 5.1% ドイツ ドイツ 5.6% マレーシア 4.2% オランダ 台湾 1.5% 3.0% 5.3% インド 16.8% 台湾 9.5% 増減 中国 11.8 229.1 217.4 インド 12.0 188.7 176.7 日本 122.7 137.0 14.3 韓国 57.2 97.1 39.9 台湾 55.4 59.8 4.4 ドイツ 32.7 47.3 14.6 26.9 オランダ 17.6 44.5 英国 29.8 34.3 4.5 8.6 23.6 15.0 マレーシア 日本 12.2% 韓国 8.6% 2014 推定 トルコ 11.6 23.6 11.9 その他 226.8 240.3 13.5 世界計 586.2 1,125.3 539.1 アジア計 296.1 798.2 502.0 (50.5%) (70.9%) (注) 無煙炭を含む。 (出所) IEA, “Coal Information 2015”より作成 図 2.1.21 一般炭輸入量上位 10 か国 5.9Mt その他欧州 33.5Mt ロシア 132.0Mt OECD欧州 222.2Mt 中国 4.8Mt 19.6Mt カナダ 3.3Mt 11.7Mt 65.2Mt 中国 228.7Mt OECD欧州 222.2Mt 2.8Mt 26.2Mt 2.9Mt 5.8Mt 105.7Mt 63.2Mt 3.3Mt その他アジア 250.2Mt 4.3Mt アフリカ・中東 23.9Mt 米国 31.1Mt 日本 138.9Mt 2.2Mt 7.9Mt 51.6Mt 79.4Mt コロンビア 78.8Mt 2.2Mt 中南米 22.8Mt インドネシア 408.2Mt 5.3Mt 14.3Mt 豪州 194.6Mt 9.6Mt 136.4Mt 輸出国 6.5Mt 31.4Mt 4.8Mt 5.3Mt 10.2Mt 南アフリカ 76.0Mt 北米 17.9Mt 54.9Mt 8.8Mt 41.0Mt 128.0Mt 5.3Mt 26.3Mt 31.9Mt インド 178.3Mt 輸入国・地域 (注) 貿易量は推計値。図には 200 万トン以上のフローを記載。 青色の数字は対前年度増加、赤色の数字は対前年度減少、黒色の数字は増減なしを示す。 無煙炭を含む。 (出所) IEA, “Coal Information 2015" より作成 図 2.1.22 一般炭フロー 2.1.3 原料炭 (1) 生産 原料炭の生産量は、1990 年代には停滞する傾向にあったが、2000 年代に入り中国で急増し、2014 年には 10 億 6,480 万トンまで増加した。 - 46 - 1,065 1,038 976 908 500 783 772 742 704 660 592 522 483 475 477 481 526 496 546 526 518 500 600 540 560 600 800 600 400 国別生産量(百万トン) 生産量(百万トン) 1,000 961 1,200 300 400 200 200 100 0 0 '90 '92 原料炭生産量 中国 '94 豪州 '96 '98 米国 '00 '02 '04 インド ロシア '06 カナダ '08 '10 モンゴル '12 '14* ウクライナ ポーランド (注) 2014 年は推定値。 (出所) IEA, “Coal Information 2015”より作成 図 2.1.23 原料炭生産量の推移 2014 年の原料炭生産量を国別にみると、中国が 5 億 6,790 万トンと世界の一般炭生産量の 53.3% を生産し、以下、豪州、米国、ロシア、インド、カナダと続き、上位 3 か国で原料炭生産量の 77.7% を占めた。上位 10 ヵ国のうち、2004 年と対比してウクライナとポーランドを除く 8 か国で生産量は 増加している。中国の増加量は 3 億 3,420 万トンと他の生産国を圧倒し、その他では輸出需要の増加 により豪州、米国、ロシア、モンゴルで増加している。2014 年のアジアの原料生産量は 6 億 3,220 万トンで、原料炭生産量の 59.4%を占めており、2004 年よりも 15.9 ポイント増加した。 ポーランド モンゴル ウクライナ 1.2% 1.0% 1.2% カザフスタン その他 1.4% 2.8% カナダ 2.9% インド モンゴル その他 4.8% 6.0% ウクライナ 0.0% 4.4% ポーランド 米国 2.8% カナダ 7.0% 世界計 4.3% インド 1,065百万トン 3.8% (外円:2014年推定) ロシア 米国 7.0% 7.5% 592百万トン (百万トン) 2004 中国 39.5% 中国 53.3% (内円:2004年) ロシア 10.3% 豪州 17.4% 豪州 19.6% 2014 推定 増減 中国 233.7 567.9 334.2 豪州 116.2 184.8 68.6 ロシア 61.1 75.0 13.9 米国 44.2 75.0 30.7 インド 22.4 51.4 28.9 カナダ 25.5 30.6 5.1 カザフスタン 11.0 15.3 4.3 ウクライナ 26.2 12.8 ▲ 13.4 ポーランド 16.5 12.3 ▲ 4.2 モンゴル 0.0 10.3 10.3 その他 35.3 29.6 ▲ 5.7 世界計 592.2 1,064.8 472.7 アジア計 257.2 632.2 375.1 (43.4%) (59.4%) (出所) IEA, “Coal Information 2015”より作成 図 2.1.24 原料炭生産量上位 10 か国 (2) 消費 原料炭の消費量は、鉄鋼需要の動向(銑鉄の生産量動向)により増減している。原料炭消費量は 1990 - 47 - 年代初めと 1996 年以降で減少したため 1990 年の 5 億 5,500 万トンから 2000 年には 4 億 7,710 万ト ンまで減少した。しかし、原料炭消費量は 2000 年代に入り中国での鉄鋼特需から中国の原料炭消費 量が急増し、2005 年に 6 億 4,410 万トン、2010 年には 8 億 8,050 万トンまで増加した。中国経済発 展の鈍化、欧州での経済停滞を受け、2012 年頃から鉄鋼需要の伸びが鈍化したため、原料炭消費量の 伸び率は減速しているが、2014 年の原料炭消費は 10 億 3,210 万トンまで増加した。 (百万トン) (百万トン) 0 1,200 0 1.6 5.0 6.2 3.1 2.9 アフリカ 中南米 1.6 1.6 北米 0.0 旧ソ連 -5.0 欧州 0 *2014 2012 2010 2004 アジア 2002 2000 1998 -0.6 -0.8 -2.7 -3.8 -3.1-3.0 1996 -1.2-1.6 0 -4.4 -5.6 0 1990 0 0 0.1 1994 200 4.5 1992 400 8.2 7.6 中東 10.0 6.8 0 オセアニア 15.0 8.9 9.9 600 14.7 2008 800 15.9 0 2006 1,000 (%) 20.0 1 -10.0 伸び率 (注) 2014 年は推定値。 (出所) IEA, “Coal Information 2015”より作成 図 2.1.25 原料炭消費量の推移 表 2.1.6 原料炭消費量の推移 (百万トン) 1990 1995 2000 2005 2010 2011 2012 2013 2014* アジア 206.7 261.7 238.5 420.4 667.8 714.4 731.3 809.9 824.7 欧州 137.3 115.5 96.4 86.4 74.5 75.0 74.1 68.2 68.1 旧ソ連 139.1 93.2 84.9 85.5 87.7 93.3 96.4 89.5 90.6 北米 40.3 34.4 30.4 25.1 22.8 25.0 23.7 21.9 22.1 中南米 15.8 15.8 14.6 14.2 17.5 18.2 16.8 17.3 18.2 アフリカ 8.6 7.0 5.9 6.4 5.4 4.5 4.3 4.5 3.9 中東 1.0 1.4 1.6 1.5 0.9 0.8 0.6 0.7 0.7 オセアニア 6.2 6.0 4.8 4.6 4.2 4.4 3.7 3.7 3.7 555.0 534.9 477.1 644.1 880.8 935.5 950.9 1,015.6 1,032.1 世界計 (注) 2014 年は推定値。 (出所)IEA, “Coal Information 2015”より作成 2014 年の原料炭消費量は、中国が 6 億 2,950 万トン(全原料炭消費量の 61.0%)で、以下、イン ド 10 億 210 万トン(同 9.9%) 、日本 5,480 万トン(同 5.3%) 、ロシア 5,070 万トン(同 4.9%)と 続く。上位 10 ヵ国について 2014 年の原料炭消費量を 2004 年と比較すると、中国以外ではインド、 韓国が 1,000 万トン以上増加させている一方で、ロシアやウクライナ、米国、ドイツなどで消費量は 減少した。2014 年のアジアの原料炭消費量は 8 億 2,470 万トンで、世界の原料炭消費量の 79.9%を 占めた。 - 48 - カザフスタン 1.2% その他 ポーランド 7.9% 1.5% ドイツ 1.3% ウクライナ 米国 1.8% その他 2.0% 15.2% 韓国 カザフスタン 3.2% ドイツ 2.3% ロシア 世界計 4.0% 4.9% ポーランド 1,032百万トン 米国 1.8% (外円:2014年推定) 日本 3.6% 5.3% ウクライナ 595百万トン 5.4% (内円:2004年) 韓国 3.5% ロシア インド インド 日本 6.4% 10.2% 9.9% 8.3% (百万トン) 2004 中国 39.2% 中国 61.0% 2014 推定 2004-2014 増加量 中国 233.3 629.5 396.2 インド 38.2 102.1 63.9 日本 49.2 54.8 5.6 ロシア 60.9 50.7 ▲ 10.2 韓国 21.0 32.9 11.8 ウクライナ 32.3 20.6 ▲ 11.7 米国 21.5 18.7 ▲ 2.8 ポーランド 10.8 15.0 4.2 ドイツ 23.7 13.5 ▲ 10.1 カザフスタン 13.7 12.4 ▲ 1.3 その他 90.7 82.0 ▲ 8.7 世界計 595.1 1,032.1 437.0 アジア計 359.8 824.7 464.9 (60.5%) (79.9%) (出所) IEA, “Coal Information 2015”より作成 図 2.1.26 原料炭消費量上位 10 か国 (3) 貿易 国別に原料炭の輸出量の推移をみると、豪州が最大の輸出国で他を圧倒している。豪州の輸出量は 2009 年、2011 年に減少したが、概観して右肩上がりで増加し、2000 年の 9,920 万トンから 2014 年 には 1 億 8,050 万トンまで増加した。2009 年の減少はリーマン・ショックの影響から欧州や日本な どで輸入が減少しこと、BMA でのストライキよる減産が要因として挙げられる。2011 年の減少は 2010 年から 2011 年にかけての QLD 州での大雨による供給停止が要因として挙げられる。 輸 (百万トン) 出 輸 (百万トン) 200 入 100 豪 州 175 中 国 米 国 150 インド 75 カナダ 125 日 本 ロシア 韓 国 モンゴル 100 ブラジル 50 オランダ 75 オランダ モザンビーク 50 インドネシア ドイツ 25 台 湾 チェコ 25 ウクライナ ポーランド 英 国 0 0 '00 '02 '04 '06 '08 '10 '12 '14* '00 '02 '04 '06 '08 '10 '12 '14* (注) 2014 年は推定値。 (出所)IEA, “Coal Information 2015”より作成 図 2.1.27 主要国の原料炭輸出入量の推移 豪州以外の主要な輸出国には、米国、カナダ、ロシア、モンゴルがある。米国では 2010 年、2011 - 49 - 年と輸出量は増加し、その後は漸減している。2010 年、2011 年の増加は供給力に余力がある米国が 豪州の供給ストップとアジアの輸入増に対応したものであると思われる。カナダとロシアもアジアの 輸入需要増に対応した。モンゴルは南ゴビでの炭鉱開発が進んだことから輸出量が増加したが、輸出 先はほぼ全量が中国向けであり、中国の輸入状況に左右されている。 一方、輸入側をみると、中国の輸入量が 2009 年以降急速に増加し、2008 年の 690 万トンから 2013 年には 7,540 万トンまで増加したが、2014 年は粗鋼生産の停滞から減少に転じた。その他ではインド と韓国の輸入量が増加した。インドは経済成長に伴い粗鋼生産量が増加したことから原料炭輸入は増 加し、2012 年以降は急増した。韓国では新しい高炉が稼働を開始したことを受け、増加した。 2014 年の原料炭の輸出量は 3 億 2,180 万トンであった。前述の通り最大の原料炭輸出国は豪州で 2014 年に 1 億 8,050 万トン(世界の原料炭輸出量の 56.1%)を輸出した。以下、米国が 5,720 万ト ン(同 17.8%) 、カナダ 3,110 万トン(同 9.7%) 、ロシアが 2,110 万トン(同 6.6%) 、モンゴルと続 く。この 10 年をみれば主要輸出国の輸出量は増加しており、米国は 2 倍以上に増加した。 モザンビーク インドネシア 0.8% 1.2% オランダ 1.8% カナダ 9.7% チェコ 0.7% ポーランド 0.6% その他 モンゴル 1.7% 3.1% ポーランド ロシア チェコ 6.6% その他 インドネシア 5.9% ロシア 6.3% 2004 世界計 カナダ 12.5% 322百万トン (外円:2014年推定) 191百万トン 米国 12.8% (内円:2004年) 豪州 58.6% 豪州 56.1% 米国 17.8% 2014 推定 増減 豪州 111.7 180.5 68.7 米国 24.3 57.2 32.8 カナダ 23.8 31.1 7.2 ロシア 11.9 21.1 9.1 10.1 モンゴル 0.0 10.1 オランダ 0.4 5.6 5.2 モザンビーク 0.0 3.8 3.8 インドネシア 1.1 2.7 1.7 チェコ 3.3 2.4 ▲ 0.9 ポーランド その他 世界計 アジア計 3.0 2.1 ▲ 0.9 11.2 5.4 ▲ 5.8 190.8 321.8 131.0 7.1 13.6 6.5 (3.7%) (4.2%) (出所) IEA, “Coal Information 2015”より作成 一方、2014 年の原料炭輸入量を国別にみると、中国の輸入量は 6,240 万トン(世界の原料炭輸入量 の 21.3%)で、以下、インド 5,070 万トン(同 17.3%) 、日本 5,069 万トン(同 17.3%) 、韓国 3,380 万トン(同 11.5%) 、ブラジル 1,100 万トン(同 3.7%)と続く。なお、2014 年のアジアの原料炭輸 入量は 2 億 700 万トンで、この 10 年間で 9,420 万トン増加した。 - 50 - (百万トン) その他 15.1% イギリス 2.2% ウクライナ 2.4% 台湾 2.5% 中国 21.3% 中国 3.4% インド 8.5% その他 26.7% 2004 世界計 ドイツ 294百万トン 3.3% (外円:2014年推定) イギリス オランダ 3.2% 199百万トン 3.5% ウクライナ (内円:2004年) ブラジル 3.4% 台湾 2.5% 3.7% オランダ ドイツ 2.5% 韓国 3.4% ブラジル 10.9% 韓国 4.8% 11.5% 2014 推定 日本 30.5% インド 17.3% 増減 中国 6.8 62.4 インド 16.9 50.7 33.8 日本 60.9 50.7 ▲ 10.2 韓国 55.6 21.8 33.8 12.0 ブラジル 9.6 11.0 1.3 オランダ 5.0 10.1 5.1 ドイツ 6.9 9.7 2.8 台湾 5.1 7.3 2.2 ウクライナ 6.8 7.1 0.3 イギリス 6.3 6.3 ▲ 0.0 53.2 44.3 ▲ 8.8 世界計 199.4 293.5 94.1 アジア計 112.9 207.0 94.2 (56.6%) (70.5%) その他 日本 17.3% (出所) IEA, “Coal Information 2015”より作成 図 2.1.28 原料炭輸入量上位 10 か国 その他欧州 12.8Mt モンゴル 14.8Mt ロシア 21.1Mt 7.0Mt OECD欧州 55.9Mt 14.8Mt 4.5Mt 5.8Mt 5.8Mt 7.2Mt 16.1Mt 1.1Mt アフリカ・中東 2.2Mt 7.1Mt 2.1Mt 日本 54.4Mt 31.3Mt 2.9Mt その他アジア 47.5Mt 20.1Mt 4.5Mt 7.5Mt 中国 62.4Mt OECD欧州 55.9Mt 4.8Mt カナダ 31.1Mt 1.6Mt 米国 57.2Mt 3.7Mt 北米 7.4Mt 2.1Mt 41.0Mt 1.1Mt 5.5Mt 2.4Mt 7.7Mt 51.5Mt 3.2Mt 中南米 15.1Mt インドネシア 2.7Mt 豪州 180.5Mt 1.7Mt 5.8Mt 輸出国 40.8Mt インド 48.4Mt 輸入国・地域 (注) 貿易量は推計値。図には 100 万トン以上のフローを記載。 青色の数字は対前年度増加、赤色の数字は対前年度減少、黒色の数字は増減なしを示す。 (出所) IEA, “Coal Information 2015" より作成 図 2.1.29 原料炭フロー 2.1.4 褐炭 (1) 生産 褐炭の生産量は、1990 年代前半にドイツ(旧東ドイツ)をはじめロシアやチェコなどで減少した ことから 1990 年の 11 億 1,760 万トンから 1995 年には 8 億 5,860 万トンまで減少し、その後はほぼ 横ばいで推移した。 - 51 - 810 887 835 889 840 839 866 862 854 848 844 855 849 843 844 846 816 870 857 859 923 874 500 800 400 600 300 400 200 200 100 0 国別生産量(百万トン) 生産量(百万トン) 1,000 600 967 1,118 1,200 700 1,015 1,400 0 '90 '92 褐炭生産量 '94 ドイツ '96 '98 ロシア '00 米国 '02 '04 ポーランド '06 トルコ '08 豪州 '10 ギリシャ '12 '14* インド チェコ (注) 2014 年は推定値。 (出所)IEA, “Coal Information 2015”より作成 図 2.1.30 褐炭生産量の推移 2014 年の褐炭生産量を国別にみると、 ドイツが 1 億 7,820 万トンと褐炭生産量の 22.0%を生産し、 以下、米国、ロシア、ポーランド、トルコ、豪州続く。2014 年のアジアの褐炭生産量は、7,330 万ト ンで世界の褐炭生産量の 9.0%で、インドで 4,720 万トン、タイで 1,800 万トンが生産された。 (百万トン) その他 17.3% ブルガリア 3.9% チェコ 4.7% インド 5.8% ドイツ 22.0% その他 19.8% ブルガリア 3.1% チェコ 5.7% インド 3.6% ギリシャ 5.9% ギリシャ 8.3% 豪州 7.5% 2004 ドイツ 21.6% 世界計 844百万トン (外円:2014年推定) 810百万トン 米国 9.0% 米国 8.9% (内円:2004年) ロシア 8.2% ポーランド 豪州 7.3% 8.2% トルコ 5.2% トルコ 7.6% ロシア 8.6% ポーランド 7.9% 2014 推定 増減 ドイツ 181.9 178.2 ▲ 3.7 米国 75.8 72.1 ▲ 3.7 ロシア 69.2 69.6 0.4 ポーランド 61.2 63.9 2.7 トルコ 43.7 61.5 17.8 豪州 69.6 60.7 ▲ 8.9 ギリシャ 70.0 48.0 ▲ 22.0 インド 30.4 47.2 16.7 チェコ 48.5 38.2 ▲ 10.3 ブルガリア 26.5 31.2 4.8 166.8 140.0 ▲ 26.9 世界計 843.6 810.5 ▲ 33.1 アジア計 58.2 73.3 15.1 (6.9%) (9.0%) その他 (出所)IEA, “Coal Information 2015”より作成 図 2.1.31 褐炭生産量上位 10 か国 (2) 消費 褐炭の消費量は、1989 年の 12 億 1,330 万トンをピークに 1990 年代にドイツ(旧東ドイツ)やロ シアをはじめ主に東欧諸国で減少し、1995 年の消費量は 8 億 6,160 万トンとなった。その後褐炭消 費量は 8 億 4,000 万トン~8 億 6,000 万トンの間で推移し、 2010 年の生産量は 8 億 3,500 万トン、 2011 年には欧州での消費量が増加し、2011 年と 2012 年は 8 億 9,240 万トン、8 億 8,370 万トンと推移し たが、その後は欧州の消費が減少し、2014 年の消費量は 8 億 480 万トンとなった。 - 52 - (百万トン) (百万トン) 0 (%) 1 15.0 1,200 1,000 0 6.9 4.1 800 0 600 0 400 0 200 -6.9 0 -9.0 オセアニア 10.0 中東 5.0 アフリカ 中南米 -5.4-4.5-5.4 0.0 -1.4-1.6 -3.3 -1.0 -0.9 0.1 0.1 1.0-0.1 -0.3 -2.6 0.0 -1.0 欧州 アジア -15.0 伸び率 *2014 2012 2010 2008 2006 2004 2002 2000 1998 1996 1994 旧ソ連 -10.0 0 1992 北米 -3.1 -5.0 -6.0 0 1990 0 1.0 -1.8 2.1 (注) 2014 年は推定値。 (出所)IEA, “Coal Information 2015”より作成 図 2.1.32 褐炭消費量の推移 表 2.1.7 褐炭消費量の推移 (百万トン) 1990 アジア 1995 2000 2005 2010 2011 2012 2013 2014* 34.4 45.8 48.6 58.2 62.4 68.5 71.4 70.6 72.8 欧州 803.5 578.5 549.7 552.1 534.2 575.5 567.6 530.1 511.7 旧ソ連 154.4 92.0 95.3 81.2 85.8 90.3 88.2 83.4 79.9 88.4 91.7 85.5 87.3 78.4 84.4 81.5 78.6 78.5 中南米 2.2 2.7 2.9 2.6 1.5 2.1 3.0 4.2 0.6 アフリカ 0.0 0.0 0.2 0.2 0.3 0.3 0.3 0.2 0.3 中東 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 北米 オセアニア 世界計 46.1 51.0 67.5 70.8 72.4 71.3 71.7 63.1 61.0 1,129.0 861.6 849.7 852.3 835.0 892.4 883.7 830.3 804.8 (注) 2014 年は推定値。 (出所)IEA, “Coal Information 2015”より作成 その他 17.2% ブルガリア 3.9% チェコ 4.8% ギリシャ 5.8% ブルガリア 3.1% チェコ 5.6% (百万トン) ドイツ 22.0% その他 20.1% 2004 ドイツ 21.4% 世界計 805百万トン (外円:2014年推定) 米国 8.9% 851百万トン (内円:2004年) ギリシャ ロシア 8.3% 8.5% インド ポーランド インド 3.5% 豪州 7.2% 5.9% 8.2% トルコ 5.3% 豪州 ポーランド 7.5% トルコ 7.9% 7.6% 米国 8.7% ロシア 8.6% 2004-2014 増加量 ドイツ 181.9 177.0 ▲ 5.0 米国 76.1 70.1 ▲ 6.0 ロシア 72.1 69.3 ▲ 2.8 ポーランド 61.2 63.8 2.7 トルコ 44.8 61.5 16.7 豪州 69.6 60.7 ▲ 8.9 インド 30.0 47.2 17.1 ギリシャ 70.9 47.1 ▲ 23.8 チェコ 47.4 38.7 ▲ 8.8 ブルガリア 26.3 31.2 4.9 171.2 138.4 ▲ 32.8 世界計 851.4 804.8 ▲ 46.6 アジア計 57.9 72.8 14.8 (6.8%) (9.0%) その他 (出所)IEA, “Coal Information 2015”より作成 図 2.1.33 褐炭消費量上位 10 か国 - 53 - 2014 推定 2014 年の褐炭消費量を国別にみると、ドイツが 1 億 7,700 万トンと全消費量の 22.0%を占め、以 下、米国、ロシア、ポーランド、トルコ、豪州と続き、これら 6 か国で 5,000 万トンを上回る褐炭が 消費された。アジアにおける褐炭消費量は 7,280 万トンで世界の 9.0%を占め、インドで 4,720 万ト ン、タイで 1,800 万トンが消費された。 2.1.5 無煙炭 16 (1) 生産 無煙炭の生産量は、1990 年代後半にウクライナでの需要が大きく減少したことから同国の生産量 が 1990 年の 3,590 万トンから 1,200 万トン前後まで減少し、これに伴い無煙炭の生産量合計も約半 分に減少した。2000 年以降では、主に中国の輸入増加に伴い、ベトナムの生産量が大きく増加し、 2010 年頃からロシアや北朝鮮の生産量が増加した。 その結果、 無煙炭の生産量合計は 2000 年の 2,800 万トンから 2013 年には 9,970 万トンまで増加した。 ベトナムの生産量は 2007 年から輸出抑制策をと ったことと 2010 年代に入り国内需要の伸びが止まったことから 2012 年以降減少しており、2014 年 はウクライナの生産量が大きく減少した。ウクライナの減産は主要生産地での内戦が大きく影響して いる。その結果、2014 年の無煙炭生産量合計は 8,270 万トンと見込まれている。 98 96 100 100 90 85 80 80 74 74 83 78 45 40 70 35 60 60 30 50 25 41 40 37 36 33 27 27 30 24 23 22 23 28 30 33 37 20 15 20 10 10 5 0 国別生産量(百万トン) 生産量(百万トン) 80 50 0 '90 '92 無煙炭生産量 南アフリカ '94 '96 ベトナム ドイツ '98 '00 '02 北朝鮮 韓国 '04 '06 ロシア スペイン '08 米国 豪州 '10 '12 '14* ウクライナ (注) 2014 年は推定値。 図に示す各国のデータ集計の開始年は、ベトナム 1978 年、北朝鮮 2002 年、ロシア 2005 年、米国 2004 年、ウクライナ 1990 年、南アフリカ 2010 年、ドイツ 2003 年、韓国 2000 年、スペイン 2004 年、豪州 1988 年となっている。 (出所)IEA, “Coal Information 2015”より作成 図 2.1.34 無煙炭生産量の推移 16 上記「2.1.2 一般炭」で注記したとおり一般炭に無煙炭を含めて整理したが、ここでは参考まで無煙炭を取り上げ て整理する。なお、統計上中国の無煙炭の生産量がゼロとなっていることや、2014 年の推定値に豪州の数値が挙が っていないなど、実際とは異なる集計となっていることに注意する必要がある。また、各国のデータが集計され始 めた年がまちまちであり、主要な生産、消費国のデータの集計開始年を 2014 年時点で数量の多い順に 10 か国につ いてみると、 • 生産側では、ベトナムが 1978 年から、北朝鮮が 2002 年から、ロシアが 2005 年から、米国が 2004 年から、ウクライナが 1990 年から、南アフリカは 2010 年から、ドイツは 2003 年から、韓国は 2000 年から、スペインが 2004 年から、豪州が 1988 年からとなっている。 • 消費側では、中国が2000年から、ベトナムは1978年から、ウクライナが1990年から、韓国が2000年から、日本が1990 年から、米国が 2004 年から、ドイツが 2003 年から、スペインが 2004 年から、南アフリカが 2010 年から、ブルガリアが 2004 年からとなっている。 - 54 - 2014年の無煙炭生産量を国別にみると、 ベトナムが3,580万トンと無煙炭生産量の43%を生産し、 以下、北朝鮮の 1,560 万トン(19%) 、ロシアの 1,360 万トン(16%)と続く。 豪州 0.0% 韓国 ドイツ 2.1% 2.5% スペイン 1.6% 南アフリカ 4.2% ウクライナ 5.1% スペイン 6.2% 豪州 韓国 1.5% 5.3% ドイツ 3.3% 米国 6.0% 南アフリカ 0.0% その他 0.0% (百万トン) その他 0.0% 2004 世界計 ロシア 16.4% ベトナム 43.3% ベトナム 45.8% 82.7百万トン (外円:2014年推定) ウクライナ 26.5% 59.8百万トン (内円:2004年) 北朝鮮 2.6% 米国 8.7% 2014 推定 ロシア 0.0% 増減 ベトナム 27.3 35.8 8.4 北朝鮮 1.6 15.6 14.0 ロシア 0.0 13.6 13.6 米国 5.2 5.0 ▲ 0.3 ▲ 11.6 ウクライナ 15.9 4.2 南アフリカ 0.0 3.5 3.5 ドイツ 2.0 2.0 0.1 韓国 3.2 1.7 ▲ 1.4 スペイン 3.7 1.3 ▲ 2.4 ▲ 0.9 豪州 0.9 0.0 その他 0.0 0.0 0.0 59.8 82.7 22.9 32.1 53.1 21.0 (53.7%) (64.3%) 世界計 北朝鮮 18.9% アジア計 (出所)IEA, “Coal Information 2015”より作成 図 2.1.35 無煙炭生産量上位 10 か国 (2) 消費 無煙炭の消費量は、1990 年代のウクライナでの消費減により旧ソ連での消費が減少したが、一方 でベトナムを中心にアジアでの消費が漸増し、 2000 年代に入りベトナムと中国を中心に増加速度が高 まった。その結果、無煙炭の消費量は、1990 年から 1996 年までは 4,300 万トンから 2,230 万トンに 減少したが、その後増加に転じ、2005 年に 6,850 万トン、2011 年には 1 億 420 万トンとなった。な お、2014 年は 9,170 万トンまで減少している。 (百万トン) 48.4 160 50.0 40.0 140 23.4 120 15.0 14.6 100 6.0 80 -3.5 -9.9 60 40 -0.8 20.0 12.9 10.0 4.4 10.2 6.5 -1.1 -14.1 -1.2 -6.8 -21.6 -10.5 20 15.9 2.7 30.0 22.0 -2.8 0.0 2.4 -11.6 *2014 2012 2010 2008 2006 2004 2002 2000 1998 1996 1994 1992 1990 0 中東 中南米 アフリカ (%) 旧ソ連 オセアニア 欧州 -10.0 北米 -20.0 アジア -30.0 伸び率 (注) 2014 年は推定値。 図に示す各国のデータをみると、中国が 2000 年から、ベトナムは 1978 年から、ウクライナが 1990 年から、韓国が 2000 年から、日本が 1990 年から、米国が 2004 年から、ドイツが 2003 年から、スペインが 2004 年から、南アフリカが 2010 年から、ブルガリアが 2004 年からデータが掲載されている。 (出所)IEA, “Coal Information 2015”より作成 図 2.1.36 無煙炭消費量の推移 - 55 - 表 2.1.8 無煙炭消費量の推移 (百万トン) 1990 1995 2000 2005 2010 2011 2012 2014* 2013 アジア 6.2 9.1 17.3 39.6 64.7 75.5 73.4 78.7 69.9 北米 0.4 0.4 0.5 5.5 4.9 5.3 5.5 5.1 5.2 欧州 0.2 0.2 0.3 9.6 6.4 11.0 10.4 7.6 7.8 オセアニア 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 旧ソ連 35.9 18.6 11.5 13.8 8.2 11.1 10.1 10.2 6.5 アフリカ 0.0 0.0 0.0 0.0 1.2 1.3 1.5 1.7 1.8 中南米 0.1 0.1 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.1 0.0 中東 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.4 0.3 0.5 43.0 28.5 29.7 68.5 85.5 104.2 101.3 103.7 91.7 合 計 (注) 2014 年は推定値。 (出所)IEA, “Coal Information 2015”より作成 2014 年の無煙炭消費量を国別にみると、中国が 3,040 万トンで全体の 33%を占め、ベトナムが 2,840 万トンで全体の 31%を占める。以下、ウクライナの 6.4%、韓国の 5.9%、日本の 5.6%、米国 の 5.3%、ドイツの 4.1%と続く。アジアでの消費量が全体の 80%と多い。 ブルガリア 0.9% その他 3.5% 南アフリカ ドイツ 2.0% 4.1% その他 3.3% 米国 中国 5.3% スペイン ブルガリア 12.1% ドイツ6.4% 2.0% 4.5% 日本 世界計 5.6% 米国 8.9% 91.7百万トン スペイン 2.1% 韓国 5.9% ウクライナ 6.4% (百万トン) 2004 中国 33.1% べトナム 20.4% (外円:2014年推定) 日本 9.0% 韓国 8.8% 64.4百万トン (内円:2004年) ウクライナ 24.6% 中国 増減 7.8 30.4 べトナム 13.1 28.4 15.3 ウクライナ 15.9 5.9 ▲ 9.9 韓国 5.7 5.4 ▲ 0.2 日本 5.8 5.1 ▲ 0.7 米国 5.7 4.9 ▲ 0.8 ドイツ 2.9 3.8 0.9 スペイン 4.1 2.0 ▲ 2.1 南アフリカ 0.0 1.8 1.8 ブルガリア 1.3 0.8 ▲ 0.4 その他 世界計 アジア計 べトナム 31.0% 2014 推定 22.5 2.1 3.2 1.1 64.4 91.7 27.3 24.1 73.4 49.3 (37.4%) (80.0%) (出所)IEA, “Coal Information 2015”より作成 図 2.1.37 無煙炭消費量上位 10 か国 (4) 貿易 国別に無煙炭の輸出量の推移をみると、 ベトナムの輸出量は 2007 年には3,210 万トンに達したが、 その後、輸出を政策的に抑制したことから大きく減少した。ベトナムに替わってロシアや北朝鮮の油 少量が増加している。ウクライナの輸出は欧州向けに漸増したが、2014 年は内戦の影響により大きく 減少している。 一方、輸入側をみると、中国の輸入量が 2004 年から急増し、2007 年以降は触れ幅が大きいが増加 傾向で推移、2014 年は内需の減少から 1,000 万トンほど減少した。その他の輸入国は大きな変化はな - 56 - く、ほぼ横ばいで推移した。ウクライナは内戦の影響で生産量が落ち込んだため、2014 年の輸入量は 350 万トンほど増加した。 輸 (百万トン) 出 輸 (百万トン) 35 入 45 北朝鮮 40 30 ロシア 中 国 35 日 本 25 30 ベトナム 韓 国 20 25 ウクライナ ウクライナ 20 15 南アフリカ 15 ドイツ 10 ベルギー 10 ベルギー 5 米 国 0 5 ブルガリア 0 '00 '02 '04 '06 '08 '10 '12 '14* '00 '02 '04 '06 '08 '10 '12 '14* (注) 2014 年は推定値。 (出所)IEA, “Coal Information 2015”より作成 図 2.1.38 主要国の無煙炭輸出入量の推移 2014 年の無煙炭輸出量は 4,370 万トンであった。そのうち北朝鮮が 1,560 万トンと全体の 36%を 占め、ロシアが 1,270 万トン(全体の 29%) 、ベトナムが 990 万トン(同 23%)となっている。 ベルギー 米国 1.3% 0.6% 南アフリカ 3.4% ウクライナ 6.5% その他 7.7% ベルギー 5.9% 米国 1.3% ベトナム 22.6% スペイン 0.6% 2004 北朝鮮 10.1% 北朝鮮 35.8% 2014 推定 増減 北朝鮮 1.6 15.6 14.0 ロシア 0.0 12.7 12.7 11.6 9.9 ▲ 1.8 世界計 ウクライナ 0.0 2.8 2.8 43.7百万トン 南アフリカ 0.0 1.5 1.5 ベルギー 0.9 0.6 ▲ 0.4 米国 0.2 0.3 0.1 スペイン 0.0 0.3 0.3 その他 1.2 0.0 ▲ 1.2 世界計 15.5 43.7 28.1 アジア計 13.2 25.5 12.3 (85.1%) (58.4%) (外円:2014年推定) 15.5百万トン (内円:2004年) ベトナム 75.0% ベトナム ロシア 29.1% (出所) IEA, “Coal Information 2015”より作成 図 2.1.39 無煙炭輸出量上位 10 か国 一方、2014 年の無煙炭輸入量を国別にみると、中国の輸入量は 3,040 万トンと全体の 61%を占め、 以下、日本が 510 万トン(10%) 、韓国が 358 万トン(7.2%) 、ウクライナが 355 万トン(7.2%) 、 ドイツが 170 万トン(3.5%)と続く。 - 57 - ロシア ヨルダン スペイン 0.8% 1.0% 1.1% ベルギー 1.8% その他 4.1% ブルガリア 1.7% ドイツ 3.5% スペイン その他 9.4% 1.0% ウクライナ ブルガリア 7.2% 6.8% 韓国 7.2% ベルギー 7.8% ドイツ 4.6% 韓国 8.5% 日本 10.3% (百万トン) 2004 2014 推定 増減 中国 7.8 30.4 22.5 日本 5.8 5.1 ▲ 0.7 韓国 1.9 3.6 1.7 ウクライナ 0.0 3.6 3.6 ドイツ 1.0 1.7 0.7 (外円:2014年推定) ベルギー 1.7 0.9 ▲ 0.8 22.0百万トン ブルガリア 1.5 0.8 ▲ 0.7 スペイン 0.2 0.6 0.4 ロシア 0.0 0.5 0.5 ヨルダン 0.0 0.4 0.4 その他 2.1 2.0 ▲ 0.0 世界計 中国 35.5% 49.6百万トン (内円:2004年) 中国 61.2% 日本 26.4% 世界計 22.0 49.6 27.6 アジア計 16.1 39.6 23.4 (73.1%) (79.8%) (出所) IEA, “Coal Information 2015”より作成 図 2.1.40 無煙炭輸入量上位 10 か国 - 58 - 2.2 我が国の輸入量推移と石炭輸入対象国 我が国は 1960 年代には石炭供給の多くを国内炭で賄っていたが、埋蔵量が少なくかつ坑内掘り であるために生産コストが高く石炭産業は衰退した。我が国は、まず良質の原料炭を海外に求め、続 いて 2 回にわたる石油危機を経て 1970 年代終わりから石炭への燃料転換が始まり一般炭の輸入量が 増加した。1970 年代には石炭供給に占める輸入炭の比率は 70%を上回り、1970 年代終り頃からは国 内炭の生産量が減少するなか一般炭の輸入量の増加に伴い輸入炭の比率は次第に拡大し、 2002 年以降 では石炭供給の 99%以上を輸入炭に頼っている。 輸入比率(%) (百万トン) 200 100% 輸入比率 180 90% 160 80% 一般炭生産量 140 70% 120 60% 原料炭生産量 一般炭輸入量 100 50% 80 40% 60 30% 原料炭輸入量 40 20 0 1965 20% 10% 0% 1970 1975 1980 1985 1990 年 1995 2000 2005 2010 2014 度 (注) 「エネルギー・経済統計要覧」では、「エネルギー生産・需給統計」が 2001 年 12 月をもって廃止されたため、2001 年度 からの炭種別輸入量は「日本貿易月報」に基づいている。「日本貿易月報」では、本来一般炭として使用される一部の石 炭が原料炭に分類され、集計されている。このため、2001 年度に原料炭の輸入量が急激に増加している。 (出所) 日本エネルギー経済研究所、「エネルギー・経済統計要覧 2016」より作成 図 2.2.1 我が国の日本の石炭供給 2.2.1 石炭輸入量推移 我が国の石炭輸入量は、1980 年以降に電力を中心とした一般炭需要の拡大に伴い増加し、1990 年 に 1 億 752 万トン、2000 年に 1 億 4,528 万トン、2008 年には 1 億 9,167 万トンまで増加したが、リ ーマン・ショックの影響からエネルギー需要が減退し、2009 年の輸入量は 1 億 6,181 万トンに減少 した。2010 年に石炭輸入量は回復したが、2011 年には東日本大震災による石炭火力発電所の操業停 止や世界的な景気の低迷による鉄鋼生産の減少から 1 億 7,524 万トンにとどまった。2012 年以降、 石炭火力発電所が順次再稼動したことと景気回復により石炭輸入量は一般炭、原料炭共に増加し、 2013 年以降 1 億 9,000 万トン前後で推移している。 なお、 原料炭の輸入量は鉄鋼需要の減少から 2014 年、2015 年と輸入量が減少している。 - 59 - 6.0 5.6 190.6 191.5 188.4 185.2 175.2 6.3 5.9 5.1 5.4 無煙炭 113.8 108.9 108.9 107.7 101.2 91.8 105.1 100.9 91.6 94.5 101.6 4.2 96.2 82.4 74.7 184.6 191.7 5.9 161.8 186.5 180.8 167.0 158.5 155.8 145.3 5.5 5.0 3.7 72.5 61.7 56.3 3.5 3.3 2.8 2.8 3.2 5.9 5.9 6.0 4.7 4.9 66.4 133.6 55.1 137.2 129.4 131.8 126.2 42.6 38.0 53.1 117.1 113.9 111.3 112.0 34.2 2.5 2.4 2.0 2.4 2.4 36.5 100 31.4 125 107.5 150 50.0 175 177.2 180.0 (百万トン) 200 一般炭 原料炭 70.9 77.1 74.3 71.5 76.7 68.7 65.8 80.7 80.0 79.7 79.7 78.7 79.6 79.0 78.7 75.2 72.7 75.0 72.2 73.0 73.4 73.4 75.3 72.1 25 72.4 50 74.1 75 0 '90 '91 '92 '93 '94 '95 '96 '97 '98 '99 '00 '01 '02 '03 '04 '05 '06 '07 '08 '09 '10 '11 '12 '13 '14 '15 (注) 財務省の「貿易統計」では、本来一般炭として使用される一部の石炭が原料炭に分類され、集計されている。 (出所) 財務省、「貿易統計」より作成 図 2.2.2 我が国の炭種別石炭輸入量の推移 2.2.2 石炭輸入対象国 2015 年の我が国の石炭輸入量を輸入国別に整理すると、総輸入量の 65.0%にあたる 1 億 2,400 万 トンが豪州から輸入され、 以下インドネシアの 17.1%、 ロシアの 8.8%、 カナダの 4.2%、 米国の 3.2%、 中国の 0.8%、ベトナムの 0.3%と続き、カナダまでの 4 か国から総石炭輸入量の 95.2%にあたる 1 億 8,152 万トンを輸入した。 2015年における 総石炭輸入量 1億9,064万トン ロシア 1,682万トン カザフスタン 15万トン カナダ 806万トン 中 国 160万トン 米 国 609万トン コロンビア 27万トン ベトナム 50万トン カナダ 4.2% モザンビーク 34万トン インドネシア 3,263万トン 中国 0.8% ベトナム 0.3% ロシア 8.8% インドネシア 17.1% 豪 州 1億2,400万トン 南アフリカ 8万トン 米国 3.2% ニュージーランド 10万トン (出所) 財務省、「貿易統計」より作成 図 2.2.3 我が国の国別石炭輸入量(2015 年) - 60 - オーストラリア 65.0% その他 0.5% 191 192 188 185 185 175 192 162 186 181 177 180 167 159 145 134 132 129 126 117 112 111 120 108 140 114 160 137 180 156 (百万トン) 200 その他 ニュージーランド カザフスタン コロンビア モザンビーク ベトナム 100 中国 80 アメリカ 60 カナダ 40 ロシア 20 インドネシア 豪州 2015 2014 2013 2012 2011 2010 2009 2008 2007 2006 2005 2004 2003 2002 2001 2000 1999 1998 1997 1996 1995 1994 1993 1992 1991 1990 0 (出所) 財務省、「貿易統計」より作成 図 2.2.4 我が国の石炭輸入量の推移 炭種別に、輸入先別の輸入量の推移をみると、一般炭の輸入量は、1990 年の 3,137 万トンから 2015 年には 1 億 1,384 万トンに増加した。豪州からの一般炭輸入量の拡大が著しく、豪州からの輸入量は 1990 年の2,180万トンから2015 年には8,680万トンに増加した。 一般炭輸入における豪州の比率は、 中国とインドネシアなどからの輸入量の増加に伴い 1990 年の 69.5%から 60%近くまで減少したが、 中国の輸入量が減少し始めた 2006 年以降上昇し、2012 年以降 70%を上回っている。インドネシア からの輸入量は 2000 年代に入り急速に増加し、2011 年に 2,000 万トンを上回ったが、その後は減少 114 109 109 108 102 101 101 92 92 その他 南アフリカ 66 62 56 55 コロンビア 中国 アメリカ 43 38 36 34 31 40 50 60 53 80 75 72 82 100 96 94 (百万トン) 120 105 傾向にある。 カナダ ロシア 20 インドネシア 豪州 2015 2014 2012 2013 2011 2010 2009 2008 2007 2006 2005 2004 2003 2002 2001 2000 1999 1998 1997 1996 1995 1994 1993 1992 1991 1990 0 (注) 財務省の「貿易統計」では、本来一般炭として使用される一部の石炭が原料炭に分類され、集計されている。 (出所) 財務省、「貿易統計」より作成 図 2.2.5 我が国の一般炭輸入量の推移 中国からの一般炭輸入量は、2004 年には 1,700 万トンを上回ったが、その後中国国内の需要増加と 国際価格が中国国内価格より安ことなどから中国の輸出量が減少し、また中国炭の価格が高いことも あり、それに伴い我が国の中国からの輸入量は激減し、2013 年以降の輸入量は 50 数万トンで推移し - 61 - た。近距離ソースであるロシアからの輸入量は 1990 年代は 100 万~200 万トンで推移していたが、 2000 年に入り増加しており、2015 年には 1,000 万トンを上回った。カナダからの輸入は 2000 年代 初めには 50 万トンまで落ち込んだがその後再び増加し、2007 年以降では 200 万トン前後が輸入され ている。米国からの輸入は 2000 年代半ばには輸入量がゼロになったが、現状では 100 万トン上回る 石炭が輸入されている。 2015 年の一般炭の輸入量は、豪州からの輸入量が全体の約 4 分の 3 を占め、インドネシアとロシ アがそれぞれ 1 割ずつを占め、これら 3 か国で全体の 96.7%を占めた。 ロシア 9.5% アメリカ 中国 カナダ 1.1% 0.5% 1.6% 南アフリカ 0.1% インドネシア 11.0% 豪州 76.3% 一般炭輸入量:1億1,384万トン (注) 財務省の「貿易統計」では、本来一般炭として使用される一部の石炭が原料炭に分類され、集計されている。 (出所) 財務省、「貿易統計」より作成 図 2.2.6 輸入国別の一般炭輸入比率(2015 年) 原料炭の輸入量は、1990 年代は 7,000 万トン前半で推移し、2000 年代に入り 8,000 万トン前後で 推移した。2009 年にはリーマン・ショックによる鉄鋼需要の落ち込みにより、2011 年と 2012 年に は東日本大震災と需要減により輸入量は大きく減少した。ここ 2 年間は鉄鋼停滞と中国の鉄鋼輸出に より需要が落ち込み、原料炭輸入量は減少傾向にある。国別にみると、原料炭についても豪州からの 輸入量が最も多く、1999 年以降その比率は 50~60%で推移している。その他の輸入国では、1990 年代にカナダ、米国などからの輸入が減少し、代わりに中国、インドネシアからの輸入が増加した。 中国からの原料炭輸入は 2000 年初めには 1,000 万トンを上回ったが、中国国内の需要が増加したこ とから 2004 年以降減少し、2015 年の輸入量は 9 万トンまで減少した。カナダからは 2000 年代以降 600 万~800 万トンが輸入されている。米国からの輸入は海上輸送距離が長いことから 1990 年代以 降減少し、2000 年代半ばに輸入は一時的に途絶えたが、2000 年代後半以降の 2 度にわたる豪州 QLD 州を襲った豪雨により豪州からの高品位原料炭の供給が一時的に停止したため、これを補うべく米国 からの輸入が再開された。現状では 400 万トンを超える原料炭が米国から輸入されている。ロシアか らの輸入量は、増減があるが、250 万~350 万トン台が輸入されている。ニュージーランドからは、 2000 年代初めには 1,000 万トン近くの原料炭が輸入されたが、その後漸減している。 - 62 - 70 74 71 77 71 69 77 81 66 80 80 79 80 80 79 79 75 73 75 72 73 73 73 72 75 72 80 74 (百万トン) 90 その他 中国 ニュージーランド 60 カザフスタン 50 コロンビア モザンビーク 40 ロシア 30 アメリカ 20 カナダ インドネシア 10 豪州 2015 2014 2013 2012 2011 2010 2009 2008 2007 2006 2005 2004 2003 2002 2001 2000 1999 1998 1997 1996 1995 1994 1993 1992 1991 1990 0 (注) 財務省の「貿易統計」では、本来一般炭として使用される一部の石炭が原料炭に分類され、集計されている。 (出所) 財務省、「貿易統計」より作成 図 2.2.7 我が国の原料炭輸入量の推移 2015 年の原料炭の輸入量は、豪州からの輸入量が全体の半分を占め、インドネシアが 4 分の 1 を 占め、以下、カナダ、米国、ロシアと続き、これら 5 か国で全体の 98.7%を占めた。 モザンビーク 0.5% アメリカ 6.6% カザフスタン コロンビア 0.2% 0.4% ニュージーランド 0.1% ロシア 4.9% 中国 0.1% カナダ 8.8% 豪州 50.1% インドネシア 28.3% 原料炭輸入量:7,095万トン (注) 財務省の「貿易統計」では、本来一般炭として使用される一部の石炭が原料炭に分類され、集計されている。 (出所) 財務省、「貿易統計」より作成 図 2.2.8 輸入国別の原料炭輸入比率(2015 年) 無煙炭の輸入量は少なく、1990 年代では 220 万~380 万トンで推移し、2000 年代以降では 2009 年を除いて 500 万~600 万トンが輸入されている。国別に輸入量の推移をみると、輸入量の増加に伴 い、中国とベトナムからの輸入量が増加したが、2005 年以降では中国とベトナムに代わりロシアと豪 州からの輸入量が増加している。 - 63 - 5.6 5.9 6.0 6.3 5.1 5.4 その他 北朝鮮 3.7 南アフリカ カナダ 3.3 インドネシア 2.8 2.8 2.5 2.4 2.4 2.0 3 2.4 3.2 4 3.5 4.2 5 5.0 4.7 4.9 6 5.9 6.0 5.5 5.9 5.9 (百万トン) 7 アメリカ ベトナム 2 中国 1 豪州 ロシア 2015 2014 2013 2012 2011 2010 2009 2008 2007 2006 2005 2004 2003 2002 2001 2000 1999 1998 1997 1996 1995 1994 1993 1992 1991 1990 0 (出所) 財務省、「貿易統計」より作成 図 2.2.9 我が国の無煙炭輸入量の推移 2015 年の無煙炭の輸入量は、ロシアからの輸入量が全体の半分近くを占め、豪州が 3 分の 1 を占 め、以下、中国、ベトナムと続き、これら 4 か国で全体の 98.4%を占めた。 ベトナム 8.6% アメリカ 1.6% その他 0.01% 中国 16.8% ロシア 44.2% 豪州 28.9% 無煙炭輸入量:586万トン (出所) 財務省、「貿易統計」より作成 図 2.2.10 輸入国別の無煙炭輸入比率(2015 年) - 64 - 表 2.2.1 我が国の石炭輸入量(炭種別、輸入国別)の推移 石 炭 総 輸 入 量 55,736 64,996 86,541 103,728 117,496 104,832 114,765 121,781 119,140 124,005 935 8,833 14,045 29,410 33,835 35,389 36,148 36,680 35,826 32,632 ロシア 8,704 5,155 5,464 10,695 10,689 11,375 12,472 12,346 15,097 16,821 カナダ 19,267 17,716 13,383 7,375 10,542 9,644 9,871 9,867 9,611 8,062 アメリカ 11,546 11,312 4,196 2,063 3,065 6,273 6,277 6,645 5,534 6,087 5,214 9,805 17,037 23,965 6,301 5,035 3,452 2,142 1,842 1,597 106 1,116 1,127 2,351 1,734 1,313 1,109 1,023 631 501 0 0 0 0 0 0 90 213 169 343 120 185 99 0 60 266 145 207 121 265 カザフスタン 0 0 0 0 0 0 0 0 41 150 ニュージーランド 290 482 932 706 474 418 189 144 175 103 5,040 6,116 1,952 143 299 616 424 466 219 78 558 465 502 372 64 77 211 30 3 1 107,517 126,179 145,278 180,808 184,560 175,239 185,152 191,544 188,409 190,645 21,796 31,001 42,197 59,650 72,075 66,763 75,955 80,130 80,478 86,804 291 3,379 4,226 12,729 15,839 20,726 18,275 15,486 14,418 12,561 ロシア 2,729 2,004 3,106 6,594 7,062 7,513 8,066 7,851 9,664 10,761 カナダ 1,361 1,726 1,368 730 1,986 2,299 2,432 2,424 2,138 1,805 780 3,080 2,721 0 364 533 777 1,839 1,489 1,306 中国 2,969 5,810 11,093 16,326 3,928 2,530 1,584 536 517 526 南アフリカ 1,445 2,938 1,647 143 299 616 424 466 219 78 コロンビア 0 0 0 0 60 204 145 148 25 0 モンゴル 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 韓国 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 その他 0 46 0 0 0 0 0 0 0 0 31,370 49,986 66,358 96,171 101,614 101,184 107,658 108,880 108,949 113,841 33,713 33,985 43,768 43,643 44,017 36,739 37,578 39,832 37,289 35,510 644 5,454 9,812 16,682 17,972 14,656 17,872 21,195 21,407 20,071 カナダ 17,906 15,990 12,014 6,644 8,555 7,345 7,438 7,443 7,472 6,257 アメリカ 10,766 8,231 1,474 2,063 2,702 5,725 5,461 4,806 4,025 4,691 ロシア 5,682 3,078 2,357 3,282 2,296 2,540 2,033 2,853 3,410 3,470 0 0 0 0 0 0 90 213 169 343 120 185 99 0 0 62 0 59 95 265 中国 ベトナム モザンビーク コロンビア 南アフリカ その他 合 計 豪州 インドネシア 一 般 炭 輸 入 量 アメリカ 合 計 豪州 インドネシア 原 料 炭 輸 入 量 モザンビーク コロンビア 2012 カザフスタン 0 0 0 0 0 0 0 0 41 150 ニュージーランド 290 482 932 706 474 418 189 144 175 103 中国 1,563 2,815 4,236 5,672 603 1,098 612 502 232 89 その他 3,422 3,193 549 55 63 76 210 28 0 0 74,107 73,412 75,241 78,747 76,682 68,659 71,483 77,074 74,316 70,948 ロシア 293 72 1 819 1,331 1,322 2,374 1,642 2,023 2,590 豪州 227 9 576 435 1,404 1,330 1,232 1,820 1,373 1,690 中国 682 1,180 1,708 1,968 1,769 1,407 1,256 1,103 1,094 981 ベトナム 106 1,116 1,033 2,351 1,734 1,313 1,109 1,023 631 501 アメリカ 0 0 0 0 0 15 39 0 19 91 インドネシア 0 0 8 0 24 8 0 0 0 0 カナダ 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 南アフリカ 203 0 0 0 0 0 0 0 0 0 北朝鮮 528 404 351 277 0 0 0 0 0 0 その他 0 0 1 39 1 1 1 2 3 1 2,040 2,781 3,679 5,890 6,263 5,395 6,010 5,589 5,143 5,855 合 計 無 煙 炭 輸 入 量 2011 (千トン) 2015 2000 インドネシア 2010 2014 1995 豪州 2005 2013 1990 合 計 (注) 財務省の「貿易統計」では、本来一般炭として使用される一部の石炭が原料炭に分類され、集計されている。 (出所) 財務省、「貿易統計」より作成 - 65 - 参考:財務省「貿易統計」による輸入炭の分類と一般炭、原料炭の輸入量 財務省「貿易統計」での分類は、実際に使用される石炭を比較すると、一般炭と原料炭ので見る と財務省「貿易統計」では HS コード 2701.12-019 に分類される石炭を原料炭として統計している。 しかし、同 HS コードに分類される石炭には一般炭として使用される石炭が含まれる。特に、同 HS コードに分類されるインドネシア炭の大部分は一般炭と利用されている。 図 2.1.3 においてデー タソースが「エネルギー生産・需給統計」 (2001 年 12 月をもって廃止された)から「貿易統計」 に代わった 2001 年度に原料炭の輸入量が増加したのは、この影響によるところが大きい。 石炭輸入概況品コード別分類基準 炭種 分類基準 HSコード 無煙炭 無水無鉱物質ベースでの 揮発分が14%以下 2701.11-000 2701.12-011 強粘結炭 2701.12-019 その他のコークス用炭 瀝青炭 2701.12-091 強粘結炭 (5,833kcal/kg以上) 2701.12-092 その他のコークス用炭 無水無鉱物質ベースでの 揮発分が14%を超え、 含水無鉱物質ベースでの 発熱量が5,833kcal/kg以上 2701.12-099 一般炭 その他の石炭 (5,833kcal/kg未満) 無水無鉱物質ベースでの 揮発分が14%を超え、 含水無鉱物質ベースでの 発熱量が5,833kcal/kg未満 2701.19-010 一般炭 2701.19-090 一般炭 灰分含有量 : 乾燥状態において全重量の8%以下 灰分含有量 : 乾燥状態において全重量の8%超 灰分含有量 : 乾燥状態において全重量の8%以下 灰分含有量 : 乾燥状態において全重量の8%超 出所:財務省、「貿易統計:概況品コード表」より作成 したがって、ここでは同 HS コードに分類されているインドネシア炭を一般炭として整理し、よ り利用実態に近い輸入国別の構成を示してみた。その結果、我が国の 2015 年の一般炭輸入量は 1 億 3,365 万トン、原料炭輸入量は 5,121 万トンとなる。 我が国の国別輸入量(2015 年) (千トン) インドネシア修正後 一般炭 原料炭 豪州 86,804 インドネシア ロシア 貿易統計による集計 計 一般炭 原料炭 計 35,510 122,314 86,804 35,510 122,314 32,297 335 32,632 12,561 20,071 32,632 10,761 3,470 14,231 10,761 3,470 14,231 カナダ 1,805 6,257 8,062 1,805 6,257 8,062 米国 1,306 4,691 5,996 1,306 4,691 5,996 中国 526 89 615 526 89 615 南アフリカ 78 0 78 78 0 78 コロンビア 0 265 265 0.029 265 266 ニュージーランド 0 103 103 0 103 103 モザンビーク 0 343 343 0 343 343 その他 0 150 150 0 150 150 133,577 51,212 184,789 113,841 70,948 184,789 計 (注) 財務省貿易統計で HS コード 2701.12-019 に分類されるインドネシアからの輸入炭を一般炭として整理した。 (出所) 財務省、「貿易統計」をもとに日本エネルギー経済研究所推定 インドネシアからの輸入は、一般炭輸入量が 1,256 万トンから 3,230 万トンに増加し、原料炭輸 - 66 - 入量が 2,007 万トンから 34 万トンに減少する。その結果、一般炭の国別構成は、豪州からの輸入 が 65%を占め、次いでインドネシア 24%、ロシア 8.1%、カナダ 1.4%、米国 1.0%となり、原料 炭の国別構成は、豪州が全体の 69%を占め、次いでカナダ 12%、米国 9.2%、ロシア 6.8%、モザ ンビーク 0.7%、インドネシア 0.7%となる。 原料炭 一般炭 カナダ 米国 1.4% 1.0% 南アフリカ 0.1% 中国 0.4% その他 0.0% インドネシア 0.7% ロシア 8.1% 中国 0.2% 米国 9.2% モザンビーク 0.7% その他 0.8% ロシア 6.8% カナダ 12.2% インドネシア 一般炭輸入量 24.2% 1億3,365万トン ニュージランド 0.2% 原料炭輸入量 5,221万トン 豪州 65.0% 豪州 69.3% (注) 財務省貿易統計で HS コード 2701.12-019 に分類されるインドネシアからの輸入炭を一般炭として整理した。 (出所) 財務省、「貿易統計」をもとに日本エネルギー経済研究所推定 インドネシア修正後の我が国の国別輸入量(2015 年) 原料炭 一般炭 カナダ 米国 1.6% 1.1% 中国 南アフリカ 0.1% 0.5% 中国 ニュージランド モザンビーク その他 0.1% 0.1% 0.5% 0.6% その他 0.0% ロシア 米国 4.9% 6.6% ロシア 9.5% カナダ 8.8% インドネシア 11.0% 一般炭輸入量 1億1,384万トン 原料炭輸入量 7,095万トン インドネシア 28.3% 豪州 76.3% (出所)財務省、「貿易統計」より作成 貿易統計による我が国の国別輸入量(2015 年) - 67 - 豪州 50.1% 2.3 石炭価格の動向 2.3.1 一般炭 一般炭スポット価格(豪州ニューカッスル出し FOB 価格)は、需給の逼迫により 2003 年後半か ら上昇し 2004 年 7 月には 60 ドル/トンを上回った。その後供給が追い付き、一般炭スポット価格は 50 ドル/トン前後で推移していたが、2007 年に入り底堅い需要増が続く中で、6 月上旬から中旬にか けて豪州 NSW 州を襲った暴風雨、10 月頃からの需要各国による冬期用石炭の早めの調達により一般 炭スポット価格は上昇し、12 月末には 89.69 ドル/トンまで高騰した。 2008 年に入り、豪州 QLD 州の豪雨や中国中南部の大雪による石炭輸出の一次的な停止が突発し、 2 月中旬に一般炭スポット価格は 139.16 ドル/トンまで上昇した。3 月終わりには 120 ドル/トンまで 戻したが、堅い需要増が続くなか夏期需要向けの調達時期となり、原油や天然ガスの価格の急騰に引 っ張られるかたちで一般炭スポット価格は 5 月終わりから急騰し、豪州一般炭スポット価格は 7 月初 めに 194.79 ドル/トンをつけた。その後、世界同時不況による一般炭需要の落ち込みと急騰の反動か ら一般炭価格は一気に下落し、2009 年 3 月には 60 ドル/トンまで値を下げた。 (US$/トン) 200 • 世界同時不況 NEWC Index 180 • 需要の顕著な増加 • 夏期需要の調達 RB Index 160 電力を中心に底堅い需要の増加 • 200 年には価格低迷と豪州ドル高 が重なり、豪州の輸出力が低下 3 • 中国の国内需要急増による需給逼 迫、2004年初めの輸出抑制実施に よる輸出力低下 • 自然災害、事故等の発生 • 140 120 • 景気回復による需要増 • 中国の輸入拡大 • 自然災害の発生 • 豪州QLDでの豪雨 • 中国の輸出の一時的中止 • 供給力の増加 • 需要の停滞 • 豪州NSWでの長雨 • • • • 100 80 需要の顕著な増加 豪州での滞船 豪州NSWでの暴風雨 インドネシアの豪雨 • 豪州QLDでの豪雨 • インドネシアでの多雨 60 • 供給過剰 • 需給タイト化での ・期ずれ契約 ・冬期需要期へ向けた早めの調達 40 20 • 異常寒波による冬期需要の増加 • インドネシアでの豪雨、豪州での出荷トラブル '16年1月 '15年7月 '15年1月 '14年7月 '14年1月 '13年7月 '13年1月 '12年7月 '12年1月 '11年7月 '11年1月 '10年7月 '10年1月 '09年7月 '09年1月 '08年7月 '08年1月 '07年7月 '07年1月 '06年7月 '06年1月 '05年7月 '05年1月 '04年7月 '04年1月 '03年7月 '03年1月 '02年7月 '02年1月 '01年7月 0 NEWC Index - 豪州ニューカッスル港出し一般炭スポット価格(週平均) RB Index - 南アフリカリチャーズ・ベイ港出し一般炭スポット価格(週平均) (出所) globalCOAL ホームページより作成 (注) 図 2.3.1 一般炭スポット価格の推移 その後、需要の回復と伴に一般炭スポット価格は上昇に転じ、2009 年の夏期の需要期には 80 ドル /トン近くまで戻し、さらに 2010 年の冬期の需要期には 100 ドル/トンまで戻した。そして、2011 年 1 月には豪州での豪雨による影響により一般炭スポット価格は 136.30 ドル/トンまで上昇した。 一般炭スポット価格は、その後も 120 ドル/トン前後と高値で推移したが、2011 年 9 月の 123.57 ドル/トンから 2012 年の 6 月の 84.98 ドル/トンに下落した。 その主な要因としては、 以下が挙げられ、 その結果、石炭市場はアジア・欧州市場ともに供給過剰となり、その状況は現在まで続いている。 - 68 - ① 欧州の経済停滞 ② 中国・インドの経済成長の減速による需要の伸び低下 ③ 米国でのシェールガス増産による石炭輸出の増加・輸入の減少 ④ 豪州等の石炭輸出国における世界の石炭需要増を見込んだ生産能力増強による供給能力増加 一般炭スポット価格は、 2012 年6 月以降80 ドル/トンから95 ドル/トンの間で推移していたが、 2013 年 6 月末には 80 ドル/トンを割り込んだ。一般炭スポット価格は、冬期の石炭需要期を前に価格は 9 月を底に上昇に反転し 11 月は 84 ドル/トン台まで上昇、12 月は 85~86 ドル/トン台で推移した。し かし、 一般炭スポット価格は 2014 年 1 月以降下がり続け、 2016 年 1 月には 50 ドル/トンを割り 48.14 ドル/トンとなった。現状では 51 ドル/トン前後で推移している。なお、図 2.3.2 に見られるように 2015 年 2 月には豪州 NSW 州で雨が多く供給に影響を及ぼしたため、一時的に上昇した。 (US$/トン) 140 130 136.30 123.57 NEWC Index 122.16 120 108.87 110 116.80 96.09 100 86.36 110.28 90 80 74.60 87.79 RB Index 70 60 84.98 80.82 66.15 76.70 72.98 DES ARA Index 51.29 61.04 50 54.37 48.14 2010年1月 2010年3月 2010年5月 2010年7月 2010年9月 2010年11月 2011年1月 2011年3月 2011年5月 2011年7月 2011年9月 2011年11月 2012年1月 2012年3月 2012年5月 2012年7月 2012年9月 2012年11月 2013年1月 2013年3月 2013年5月 2013年7月 2013年9月 2013年11月 2014年1月 2014年3月 2014年5月 2014年7月 2014年9月 2014年11月 2015年1月 2015年3月 2015年5月 2015年7月 2015年9月 2015年11月 2016年1月 2016年3月 40 NEWC Index - 豪州ニューカッスル港出し一般炭スポット価格(週平均) RB Index - 南アフリカリチャーズ・ベイ港出し一般炭スポット価格(週平均) DES ARA Index - 北ヨーロッパ(アムステルダム、ロッテルダム、アントワープ港)渡し一般炭スポット 価格(週平均) (出所) globalCOAL ホームページより作成 (注) 図 2.3.2 一般炭スポット価格の推移 図 2.3.3 にインドネシア政府が毎月公表するレファレンス価格(HBA:Harga Batubara Acuan) を示す。このレファレンス価格は、 インドネシアの価格指標である Indonesia Coal Index(ICI) 、Platts -1、ニューキャッスル港出し価格指標である NEX Index (HIS Energy)、NEWC Index(globalCOAL) の 4 つの指標の前月価格の平均値としており、先に示した豪州一般炭スポット価格の動向と一か月遅 れでほぼ同じ動きを示している。このリファレンス価格の基準発熱量は発熱量 6,322kcal/kg(GAR) であり、先に示した globalCOAL の MEWC Index は発熱量 6,000kcal/kg(NCV)である。これを考 慮するとインドネシアのレファレンス価格は豪州一般炭スポット価格より低く設定されていることに なる。 - 69 - (US$/トン) 140 127.05 130 119.24 120 112.87 110 116.26 97.22 100 90 80 70 87.81 86.58 109.29 90.09 86.21 81.90 90.05 77.39 84.65 72.45 81.44 76.70 76.61 67.76 73.60 60 52.32 62.92 50 50.92 2010年1月 2010年3月 2010年5月 2010年7月 2010年9月 2010年11月 2011年1月 2011年3月 2011年5月 2011年7月 2011年9月 2011年11月 2012年1月 2012年3月 2012年5月 2012年7月 2012年9月 2012年11月 2013年1月 2013年3月 2013年5月 2013年7月 2013年9月 2013年11月 2014年1月 2014年3月 2014年5月 2014年7月 2014年9月 2014年11月 2015年1月 2015年3月 2015年5月 2015年7月 2015年9月 2015年11月 2016年1月 2016年3月 40 (出所) Ministry of Energy and Mineral Resources ホームページより作成 図 2.3.3 インドネシアのレファレンス価格の推移 今後の一般炭スポット価格は、中国とインドの動向で大きく左右される。 「1.5 中国の石炭輸入」で 述べたように、2016 年に入り、中国の一般炭輸入量の減少にブレーキがかかっている。一方で、 「1.6 インドの石炭輸入で述べたように 2015 年の 4 月~12 月の一般炭輸入量は、対前年同期比で 2,200 万 トン減少した。2016 年もこの傾向が続くは、インド政府が CIL に対して示している生産目標が達成 できるかにかかっている。 一方で、 欧州は引き続き輸入が減少することが予想されるが、 韓国では 2016 年に 8 基の新規石炭火力発電所が運転開始する予定であり、価格を押し上げる要因となる。また、供 給側では炭鉱の休山や需要に見合った生産調整を進めており、供給逼迫状況は緩和するであろう。こ れらを考えると、インドの一般炭輸入が減少するとして、2016 年の一般炭スポット価格はほぼ現状の 50 ドル前半で推移し、インドの輸入量が回復してくれば、2017 年に以降、緩やかに上昇すると思わ れる。ただし、供給能力は、生産調整分と休山中炭鉱の生産能力の能力を考慮すれば需要を上回って いると考えられ、一般炭スポット価格は 50 ドル/トン台で上昇、下降を繰り返すもの思われる。 豪州の The Department of Industry, Innovation and Science が 2016 年 3 月に出した”Resources and Energy Quartly”では、日本の一般炭契約価格は、実質ベースで 2015 年の 69 ドル/トンから 2018 年に 54 ドル/トンまで下がり、その後緩やかに上昇し、2020 年に 56 ドル/トンと予測している。この 予測よれば、一般炭スポット価格は実質ベースで、2020 年まで 50 ドル/トン前後ですることになる。 2.3.2 原料炭 豪州 QLD 州出しの日本向け原料炭(強粘結炭)価格は、2000 年代に入り 40 ドル/トン台で推移し ていたが、2003 年以降の需要の急拡大から 2004 年、2005 年と上昇し、120 ドル/トンを上回った。 この価格上昇は、一般炭と同様に供給国が需要増に対応できなかったことによるが、これに加えて 2005 年に QLD 州 Dalrymple Bay Coal Terminal のシップ・ローダーが倒壊したことも要因の一つ として挙げられる。その後、豪州やカナダなどでの増産により需給状況が改善され、価格は穏やかに 低下した。 2007 年に入りインドなどアジア地域での需要増から原料炭市場は次第に引き締まってきていたが、 - 70 - 2008 年初めの豪州 QLD 州での豪雨により一時的に生産が停止する事態が生じ、2008 年に原料炭価 格は 90 ドル/トンから 270 ドル/トンまで一気に跳ね上がった。その後、リーマン・ショック後の世界 同時不況の影響を受け鉄鋼需要が大きく落ち込んだことから原料炭需要も冷え込み、減慮炭価格は 110 ドル/トン台まで下落した。 その後、景気の回復とともに原料炭需要が回復したことから原料炭価格も上昇に転じ 2010 年には 200 ドル/トンまで上昇し、2011 年の原料炭価格は、QLD 州を再び記録的な集中豪雨が襲い供給が一 時的に滞ったことから再び急騰し、300 ドル/トンを上回った。このように二度の価格の急騰は豪州 QLD 州の豪雨による一時的な供給停止が最大の要因であった。以後、原料炭価格は下落し続けてい る。 (US$/トン) 350 306.90 292.80 278.00 300 250 213.80 200 191.20 150 121.80 154.40 100 76.40 111.70 90.60 50 58.50 40.90 2016年1月 2015年7月 2015年1月 2014年7月 2014年1月 2013年7月 2013年1月 2012年7月 2012年1月 2011年7月 2011年1月 2010年7月 2010年1月 2009年7月 2009年1月 2008年7月 2008年1月 2007年7月 2007年1月 2006年7月 2006年1月 2005年7月 2005年1月 2004年7月 2004年1月 2003年7月 2003年1月 2002年7月 2002年1月 0 (出所) IHS Energy, Australian Coal Report より作成 図 2.3.4 豪州 OLD 州強粘結炭日本向け輸出価格の推移 なお、図 2.3.5 に日本の長期契約ベースの原料炭(高品位強粘結炭)契約価格を示す。日本の原料 炭価格は 2009 年度まで年度初めにその年度の価格を交渉し、価格は一年間固定であったが、2014 年 度から四半期毎の交渉に変更となった。このため、図 2.3.4 では 2009 年年度までは一年間を通して比 較的変動が少なくなっている。 例えば 2008 年をみると 2008 年の秋には原料炭スポット価格は急落し たが、2008 年度の原料炭長期契約価格が 300 ドル/トンであったため、図 2.3.4 では 2009 年 3 月頃ま で価格は 300 ドル/トン近くで推移している。 図 2.3.6 に 2010 年 3 月からの原料炭スポット価格 (豪州高品位強粘結炭 FOB 価格 (IHS McCloskey Australian prime hard coking coal FOB) 、米国低揮発分原料炭 FOB 価格(IHS McCloskey US high ash, low vol FOB index)を示す。 原料炭スポット価格は、2010 年 11 月から続いた豪州での豪雨等により急騰し、365 ドル/トンにま で上昇した。その後も原料炭スポット価格は 300 ドル/トン台と高値で推移したが、需給が緩んできた ことから 2011 年 8 月の 310 ドル/トンから 2012 年 10 月の 150 ドル/トンまで下落した。 - 71 - (US$/トン) 350 330 315 300.00 285 300 250 225 225 200 200 150 235 225 210 170 172 209 165 128.00 126.20 114.00 152 143 120 117 145 96.00 100 120 119 57.20 42.75 48.10 46.20 0 2001.4 2002.4 2003.4 50 2004.4 2005.4 2006.4 2007.4 2008.4 2009.4 2010.4 2011.4 2012.4 2013.4 2014.4 93 81 109.5 89 84 2015.4 2016.4 (注) 2010 年度から四半期毎の交渉となった。 (出所) IHS Energy, Australian Coal Report より作成 図 2.3.5 日本の長期契約ベースの契約価格 その主な要因としては以下が挙げられ、その結果、一般炭と同様に原料炭市場はアジア・欧州とも に供給過剰となった。 ① 欧州の経済停滞 ② 中国・インドの経済成長の減速による需要の伸び低下 ③ 豪州等の石炭輸出国における世界の石炭需要増を見込んだ生産能力増強による供給能力増加 原料炭スポット価格は、 2012 年 10 月以降150 ドル/トンから 170 ドル/トンの間で推移していたが、 その後は供給過剰が続く中、原料炭スポット価格は下落傾向で推移し、2016 年初めには 76 ドル/トン となった。その後、中国の鉄鋼生産が対前年比で増加し、原料炭輸入量も上向いたことから原料炭ス ポット価格は上昇に転じている。 (US$/トン) 400 365.83 350 333.40 310.33 IHS McCloskey US high ash, low vol FOB index 300 253.55 301.57 250 225 200 198.17 171 200 151.95 150 150 100 136.50 IHS McCloskey Australian prime hard coking coal FOB 97.25 111.65 85.45 76.10 2010年3月 2010年5月 2010年7月 2010年9月 2010年11月 2011年1月 2011年3月 2011年5月 2011年7月 2011年9月 2011年11月 2012年1月 2012年3月 2012年5月 2012年7月 2012年9月 2012年11月 2013年1月 2013年3月 2013年5月 2013年7月 2013年9月 2013年11月 2014年1月 2014年3月 2014年5月 2014年7月 2014年9月 2014年11月 2015年1月 2015年3月 2015年5月 2015年7月 2015年9月 2015年11月 2016年1月 2016年3月 2016年5月 50 (注) IHS McCloskey Australian prime hard coking coal FOB:豪州高品位強粘結炭 FOB 価格 IHS McCloskey US high ash, low vol FOB index: (出所) IHS Energy 情報より作成 米国低揮発分原料炭 FOB 価格 図 2.3.6 原料炭スポット価格の推移 - 72 - 今後の原料炭価格は、一般炭と同様に、中国とインドの動向で大きく左右される。 「1.5 中国の石炭輸 入」で述べたように、中国の原料炭輸入量の減少にブレーキがかかっている。一方で、 「1.6 インドの 石炭輸入で述べたように 2015 年の 4 月~12 月の原料炭輸入量は、対前年同期比で 230 万トン増加し たが、増加量は前年と比較すると小さくなっている。2016 年 1-3 月に中国の原料炭輸入量がわずかで はあるが増加し、原料炭スポット価格は期待感からこれに反応して一時期 100 ドル/トン近くまで上昇 したと思われる。その後の中国の鉄鋼産業の動向を注視する必要があるが、期待感から上昇した原料 炭スポット価格は再び下落しするのではないだろうか。中国の輸入減少にブレーキはかかっており、 大きな減少がなければ 2016 年の原料炭スポット価格は 80 ドル/トン台で推移すると思われる。供給 側の生産調整分と休山分を考慮すれば、一般炭と同様に供給力は需要を上回っており、2017 年以降も 原料炭スポット価格は 80 ドル/トン台で推移すると思われる。 なお、豪州の The Department of Industry, Innovation and Science が 2016 年 3 月に出し た”Resources and Energy Quartly”では、豪州原料炭価格は実質ベースで、2015 年の 103.3 ドル/ト ンから 2016 年には 82.8 ドル/トンまで下落し、2017 年に 78.3 ドル/トン、2018 年に 78.1 ドル/トン となり、その後、上昇し 2020 年で 80.1 ドル/トンと予測している。 - 73 - 2.4 石炭供給国の石炭生産・輸出に影響を与える要因分析 各供給国において石炭生産・輸出に影響を与えると考えられる要因について、政策、環境問題・反 対運動、炭鉱開発、輸送インフラ(鉄道・港湾)整備、埋蔵量・炭質、輸送などについて以下に整理 する。 政策: 石炭の生産・輸出を抑制・制限するような政策 環境問題・反対運動: 開発・生産・輸送を妨げるような事例や政策 炭鉱開発: 炭鉱開発状況、市況低迷による炭鉱開発の遅延など 輸送インフラ整備: 輸送需要・炭鉱開発に見合った整備、内陸輸送距離 埋蔵量・炭質: わが国が現状調達している高品位炭の埋蔵量 海上輸送: 海上輸送距離 その他: 国内需要増、自然災害、ストライキ、テロなど 2.4.1 豪州 豪州は、豊富な石炭資源を有し、わが国の最大の石炭輸入相手国である。わが国企業は石炭開発や 炭鉱に多くの投資(権益取得)を行っている。豪州では石炭は重要な輸出品の一つと位置付けられて おり、輸出を抑制するような政策はない。しかし、環境面では、周辺住民や環境団体等の開発反対が 炭鉱開発と輸送インフラ開発に影響を及ぼす可能性がある。輸送インフラ整備面では、Take or Pay 契約 17により整備が進められており、現状においては大きな問題はない。しかし、今後の需要増に即 した能力拡大は必要となる。炭鉱開発面では、石炭価格の低迷による今後の開発遅延が懸念され、こ れは輸送インフラ整備も同様である。 (1) 輸出 豪州の石炭輸出量は、豪雨の影響を受けた 2011 年を除いて右肩上がりで増加してきたが、2015 年 は需要の減少から横ばいとなった。原料炭をみると、2011 年に 2,600 万トン減少しており、これは豪 雨と MBA でのストライキの影響によるものである。 表 2.4.1 豪州の石炭輸出量の推移 (千トン) 2014 2015 134,656 135,262 158,958 132,707 144,543 170,010 186,365 185,426 増減 2015-2014 -939 83,849 84,866 101,908 87,087 90,273 105,522 121,416 120,631 -784 50,807 50,166 56,899 44,988 53,415 63,839 64,194 64,387 193 230 151 633 856 648 756 408 -348 126,401 139,150 141,337 147,516 171,062 188,238 200,887 201,866 979 151 138 752 568 497 177 160 106 -54 261,208 274,550 301,046 280,791 316,102 358,425 387,412 387,398 -14 2008 原料炭 うち 強粘結炭 非微粘結炭/PCI炭 その他原料炭 一般炭 無煙炭、他 合 計 2009 - 2010 2011 2012 2013 (出所)TEX レポート(基データは豪州通関統計)より作成 17 生産者が港湾および鉄道とそれぞれ輸出量を長期(10 年程度)確保し、生産者がその数量を使っても使わなくても 契約金額を支払う契約。港湾と鉄道会社はこの取扱数量に基づきインフラ整備を進めることができる。しかし、こ こ数年の輸出需要の伸び悩みと価格の低迷下において、この契約は生産者に損失を与えている。 - 74 - (2) 政策面 輸出税、輸出許可など輸出制限を目的とした政策はなく、また、導入される可能性も極めて低い。 地方政府の財源確保として、石炭生産(輸出は FOB 価格、国内向けは山元出し価格)に対する ロイヤルティがある。 NSW 州:坑内掘り(400m 以深)6.2%、坑内掘り(<400m)7.2%、露天掘り 8.2% QLD 州:石炭価格 100 豪ドル/トン以下 7%、100 豪ドル/トン超 10% QLD 州では、過去にロイヤルティ率を高め問題視された経緯がある。 2010 年に導入が可決された鉱物資源利用税と炭素税は、政権が変わり 2014 年に廃止となった。 (3) 環境面 グレートバリアリーフ問題がある。港湾開発や船舶の航行がグレートバリアリーフの汚染や破壊 につながるとの議論がある。また、環境保護団体等はユネスコに対して「世界危機遺産」に登録 するよう圧力をかけている。 港湾開発・維持では、ドレッジング土砂の処理問題が発生し、海上投棄ができなくなった。 新規ターミナルの建設に支障をきたす可能性がある。 新規開発や拡張に対する環境面からの反対がある。このため、EPA などの認可に時間がかかり または認可が下りない場合がある。認可に時間がかかれば開発が遅れるとともに生産会社の投資 額が増えることになる。 例えば Anglo American は地元の種馬飼育場の反対に遭い、ハンターバレーのドレイトン鉱山の 寿命を延長することができずにいる。最終的に NSW 州計画アセスメント委員会が承認しなかっ た。 Wartermark は EPA 認可に時間がかかった。 (4) 炭鉱開発 環境団体、牧畜者の反対により開発が許可されない場合がある。 これまで数年前の石炭ブーム時に投資した炭鉱が操業を開始していたが、石炭市況の悪化から炭 鉱開発計画が延期または中止されている。高効率で低コストの炭鉱開発は進められているが、炭 鉱の休山・閉山が増えており、数年後の供給能力に問題が出る可能性がある。 豪州 Department of Industryy, Innovation and Science が公表する“Resources and Energy Major Projects”の 2014 年 4 月、2015 年 10 月の報告を比較すると、多くのプロジェクトが遅延 または延期となっている。この 1 年半の状況は以下のとおりである。 QLD 州では、 生産開始が遅れたもの:14 件、生産能力 1 億 4,680 万トン/年 開始が未定またはリストから削除されたもの:9 件、生産能力 6,380 万トン/年 なお、2013 年 4 月と 2014 年 4 月の一年間で、QLD 州では 11 件のプロジェクトで生産開始が 遅れ、13 件が開始未定もしくはリストから削除されていた。 - 75 - 表 2.4.2 QLD 州の炭鉱開発プロジェクト遅延状況 2014年4月報告 プロジェクト名 会社名 2015年4月報告 2015年10月秋報告 炭種 生産開始 予定 予想生産 能力(MT) 生産開始 予定 予想生産 能力(MT) 生産開始 予定 予想生産 能力(MT) Baralaba expansion Cockatoo Coal PCI/一般炭 2014 3.5 2015 3.5 2015 3.5 Baralaba South Cockatoo Coal PCI/一般炭 2016 3 2019 3 2019 4 Curragh Mine Wesfarmers 原料炭 n/a 1.5-2 Eaglefield Peabody Energy 原料炭 n/a 5 n/a 5 n/a 5 2012/10に完成 原料炭 n/a 6 n/a 6 n/a 6 Jellinbah, Marubeni, Sojitz PCI/原料炭 2015 2 - - - - Jellinbah, Marubeni, Sojitz, AMCI PCI/原料炭 2013 4 Peabody Energy / YanCoal PCI/原料炭 2014 3.6 2014 3.6 New Hope Coal 一般炭 2016 2.7 2017 2.3 2017 2.7 Glencore, Sumisho, Itochu, ICRA OC 原料炭 n/a 5 n/a 5 n/a 5 Rolleston (phase 2) Xstrata, Sumisho, IRCA 一般炭 n/a 3 n/a 3 n/a 3 Springsure Creek (stage 2) Bandanna Energy 一般炭 2019+ 5.5 - - - - Alpha Coal Project GVK - Hancock Coal 一般炭 2016 32 2018 32 2018 32 Belvedere underground Vale 原料炭 2016 7 - - - - Belview Stanmore Coal 原料炭 2017 n/a 2018 n/a 2018 n/a Byerw en Coal Project QCoal / JFE Steel Corporation 一般炭 2015 10 2016 10 2016 10 Carmichael Coal Project (mine and rail) Adani 一般炭 2017 60 2017 60 2017 60 Caval Ridge BHP Billiton Mitsubishi Alliance 一般炭 2014 5.5 China First Coal project (Galilee Coal Project) Waratah Coal 一般炭 2018+ 40 2018+ 40 2018+ 40 Codrilla Peabody Energy Colton New Hope Comet Ridge Acacia Coal / Bandanna Energy Dingo West Bandanna Energy Drake Coal project QCoal Grosvenor Phase 2 拡 Jellinbah East Lake Vermont 張 Middlemount (stage 2) Anglo American New Acland (stage 3) Oaky Creek (phase 2) Eagle Dow ns (Peak Dow ns East underground) Aquila Resources / Vale 2014/4に完成 2015/4に完成 2014/4に完成 PCI 2019+ 3.2 2020+ 3.2 2020+ 3.2 原料炭 2015 0.5 2018 0.5 2018 0.5 一般炭/原料炭 2015 0.4 2016 0.4 2016 0.4 PCI/一般炭 2016 1 - - - - 一般炭/原料炭 2015 6 2014 6 原料炭 2017 4.5 2017 4.5 2017 4.5 5 2015/4に完成 一般炭 2017 5 2019 5 2019 一般炭/原料炭 n/a 5.5 - - - - Anglo American 原料炭 2016 5 2016 5 2016 5 Jax QCoal 原料炭 2015 1.8 - - - - Kevin's Corner GVK 一般炭 2016 30 2019 30 2019 30 一般炭/原料炭 2016 7 Elimatta New Hope Ellensfield coal mine project Vale Grosvenor underground - - - - 2016 1.5 2016 1.5 1.7 2016 1.9 2018 1.9 n/a 2019 2 2019 2 2018 4 2018 4 2018 4 一般炭 2018 8 2018 8 2018 8 Cockatoo Coal 一般炭 2020 2.5 2020 2.5 2020 2.5 Orion Dow ns Endocoal 一般炭 2016 2.5 - - - - Project China Stone MacMines Austasia 一般炭 2017 45 2018 55 2018 55 Red Hill Mining BHP Billiton / Mitsubishi Allian 2020+ 14.5 South Galilee Coal Project (3 phases) Bandanna Energy 一般炭 2015 17 Springsure Creek (stage 1) Bandanna Energy 一般炭 2015 5.5 - - - - Styx Waratah Coal, Queensland Nickel PCI/一般炭 n/a 1.5 n/a 1.5 n/a 1.5 Talw ood Coking Coal Project Aquila Resources PCI/一般炭 2016 3.6 2016 3.6 2016 3.6 Taroborah Shenhuo International 原料炭 2016 2.3 2018 5.73 2018 5.73 Teresa Linc Energy PCI 2016 6 2016 6 2016 6 The Range Project Stanmore Coal 一般炭 2016 5 n/a 5 n/a 5 Togara North Xstrata 一般炭 2017 6 2017 6 2020+ 6 Vermont East/Wilunga Peabody Energy PCI/一般炭 2015 3 2015 3 2020+ 3 Wards Well BHP Billiton Mitsubishi Alliance 原料炭 2017 5 2017 5 2017 5 Washpool coal project Aquila Resources 原料炭 n/a 2.9 n/a 2.9 2020+ 2.9 Winchester South Rio Tinto 一般炭/原料炭 2016 4 - - - - Minyango 新 Meteor Dow ns South 規 開 Moorlands 発 New Lenton Guangdong Rising Assets Management U & D Mining 一般炭 Cuesta Coal Limited 一般炭 2016 New Hope Coal, MPC 原料炭 2016 North Surat - Collingw ood Project Cockatoo Coal 一般炭 North Surat - Taroom Project Cockatoo Coal North Surat - Woori Project 原料炭/一般炭 (出所)The Department of Industry, Innovation and Science, “Resources and Energy Major Projects,” April 2014, April 2015, October 2015 より作成 NSW 州では、 生産開始が遅れたもの:1 件、生産能力 260 万トン/年 開始が未定またはリストから削除されたもの:3 件、生産能力 600 万トン/年 なお、2013 年 4 月と 2014 年 4 月の一年間で、NSW 州では 4 プロジェクトの生産開始が遅 れ、10 件のプロジェクトが開始未定もしくはリストから削除されていた。 - 76 - 表 2.4.3 NSW 州の炭鉱開発プロジェクト遅延状況 2014年4月報告 プロジェクト名 拡 張 新 規 開 発 会社名 2015年4月報告 2015年10月秋報告 炭種 生産開始 予定 予想生産 能力(MT) 生産開始 予定 予想生産 能力(MT) 生産開始 予定 予想生産 能力(MT) 原料炭 2016 3.5 2016 3.5 2016 3.5 一般炭/非微粘 2015 3.6 2017 3.6 2017 3.6 Rio Tinto / Wesfarmers 一般炭 2017 4.3 2017 4.3 2017 4.3 Drayton South Anglo Coal Australia 一般炭 n/a n/a - - - - Metropolitan Peabody Energy 原料炭 2015 1.5 2015 1.5 2015 1.5 Moolarben (stage 2 - OC4, UG1 and UG2) Yancoal Australia 一般炭 n/a 5 2016 5 2016 5 2016 8 0 Appin Area 9 BHP Billiton Ashton South East opencut Yancoal Australia Bengalla expansion (stage 2) Moolarben (stage 2 - UG1 ) Mt Thorley - Warkw orth extension Rio Tinto 一般炭 n/a 0 n/a 0 n/a NRE No. 1 Colliery Gujarat NRE Coking Coal 原料炭 2015 3 - - - - Russell Vale Colliery Wollongong Coal 原料炭 n/a 3 n/a 3 Ravensw orth North (Stage 1) Xstrata, Itochu 一般炭/非微粘 2013 8 Stratford Yancoal Australia 一般炭/原料炭 2015 2.6 2017 2.6 2017 2.6 Ulan West Xstrata, Mitsubishi 一般炭 2014 6.7 Wongaw illi Colliery Gujarat NRE Coking Coal 原料炭 2016 3 - - - - Caroona BHP Billiton 一般炭 2019+ 10 2020+ 10 2020+ 10 Maules Creek Whitehaven 一般炭/原料炭 2015 10.8 2015 10.8 2015 12 Mount Pleasant Project Rio Tinto / Mitsubishi 一般炭 n/a 10.5 2019 10.5 2019 10.5 Spur Hill Malabar Coal 一般炭/非微粘 2018 6 2018 6 2018 6 Vickery Whitehaven 一般炭/原料炭 n/a 4.5 n/a 4.5 2020+ 4.5 Wallarah underground longw all Korea Resources Corp / Sojitz Corp 一般炭 n/a 5 n/a 5 n/a 5 Watermark Shenhua Energy 一般炭 2015 6.15 n/a 6.15 2018 6.15 The Hume Coal Project POSCO n/a 3 2014/4に完成 2014/4に完成 一般炭/原料炭 2016/1予定 (出所)The Department of Industry, “Resources and Energy Major Projects,” April 2014, April 2015, October 2015 より作成 (5) 輸送インフラ面 Take or Pay 契約によりインフラ整備は需要に追いついた。この契約をもとに鉄道会社と港湾会 社は鉄道・港湾整備の融資を受けることができ、需要量に見合ったインフラ整備が実施されてい る。 表 2.4.4 豪州の石炭ターミナル積出能力(2015 年末) QLD 州 NSW 州 (百万トン/年) (百万トン/年) 現状 Abbot Point港 50 (APCT) Hay Point港 Carrington CT 25 Kooragang CT 120 PWCS小計 145 NCIG 66 (DBCT) 85 Newcastle計 211 (HPCT) 55 Port Kembla 18 NSW州合計 229 Gladstone港 (RGTCT) 70 (BPCT) 8 (WICET) 27 Brisbane港 (FICT) 合計 10 305 (出所)各種資料より作成 - 77 - 豪州 Department of Industryy, Innovation and Science が公表する“Resources and Energy Major Projects”の 2014 年 4 月、2015 年 10 月の報告を比較すると、Abbot Point T3 が 1 年以上 の遅れ、Dudgeon Point、Firzeroy Terminal および Yarwun Coal Terminal がリストから消え た。 なお、NSW 州の Newcastle 港の Kooragang T4 プロジェクトは 2015 年操業予定で 2012 年 10 月の報告までリストアップされていたが、2013 年 4 月報告以降、リストから外れている。 また、2014 年 4 月と 2013 年 4 月と比較して Abbot Point T2 がリストから消え、WICT(Stage 2,3)が未定となる。また、Abbot Point T3, T0 と Hay Point (phase 3)が遅れた。 なお、炭鉱開発と同様に、インフラ整備が停滞しており、数年後のインフラ輸送能力に問題が出 る可能性がある。 表 2.4.5 QLD 州の石炭ターミナル整備プロジェクト遅延状況 操業開始予定 プロジェクト名 会社名 2014年4月報告 2015年4月報告 2015年10月報告 追加能力 (MT) Abbot Point Coal T3 (part of Alpha Coal Project) GVK 2017 2018+ 2018+ 60 Abbot Point T0 (Phase 1 and 2) Adani 2017 2017 2017 70 Hay Point Coal Terminal (phase 3) BHP Billiton Mitsubishi Alliance (BMA) 2015 2015 2015 11 Dudgeon Point NQBP / Adani 2018+ - - 180 Fitzroy Terminal Mitchell Group 2016 - - 22 Wiggins Island Coal Terminal (stage 1) Wiggins Island Coal Export Terminal 2014 2015 Wiggins Island Coal Terminal (stage 2 and 3) Wiggins Island Coal Export Terminal n/a n/a Yarw un Coal Terminal (Stage 1) Metro Coal / 3TL Bow en Basin Terminal Mitchell Group 2018+ 27 n/a 2015/12に完成 2015/4に完成 54 - - 25 2018 2018 10~15 (出所)The Department of Industry, Innovation and Science, “Resources and Energy Major Projects,” April 2014, April 2015, October 2015 より作成 (6) 埋蔵量・炭質 NSW 州は主に一般炭が賦存し、一般炭、PCI 炭、非微粘炭が生産される。 現在の主力生産地区は Hunter Valley であるが、その奥地である Gunnedah での開発が進めら れている。炭質はほぼ同じとみてよい。なお、Hunter Valley には良質な石炭埋蔵量が存在する。 R/P 比は 70 年以上となっている。 QLD 州 Bowen 堆積盆には高品位原料炭(強粘結炭)が賦存する。また、一般炭は Bowen 堆積 盆のほか Surat、Galilee 堆積盆にも賦存しており、Surat、Galilee 堆積盆での開発が進められ ている。 なお、Surat 堆積盆の石炭は HGI が低く、Galilee 堆積盆の石炭は発熱量が低く、一般炭として の炭質は Bowen 堆積盆に比べ落ちる。 QLD 州の確認埋蔵量は 327 億 2,900 万トン、うち原料炭が 112 億 4,000 万トン、一般炭が 214 億 8,900 万トンである。 原料炭はほぼ全量の 111 億 9,300 万トンが Bowen Basin に賦存する。P/R 比は 70 年以上となっ ている。 - 78 - 表 2.4.6 NSW 州の炭田別可採埋蔵量 (百万トン) 炭田名 4,330 1,290 1,440 670 1,760 1,280 20 10,790 Hunter Gunnedah Newcastle Southern Western Oaklands Gloucester 合 計 増 減 2008/09 2004/05 6,832 1,271 463 542 1,770 1,280 45 12,203 2,502 -19 -977 -128 10 0 25 1,413 (出所)NSW, Department of Trade & Investment, “New South Wales Coal Industry Profile 2006, 2010”より作成 表 2.4.7 QLD 州の確認埋蔵量 (百万トン) 確認埋蔵量(demonstrated) 堆積盆 (Baisn) 原料炭 坑内掘り 露天掘り Bowen 7,079 4,114 一般炭 計 坑内掘り 露天掘り 11,193 Galilee - - - Callide - - - - Clarence-Moreton - - - Ipswich - - - Laura 47 Mulgildie - - 47 Styx - - - Surat - - - Tarong - 合 計 7,126 4,114 11,240 計 坑内掘り 露天掘り 6,561 3,227 9,788 13,640 7,341 20,981 530 1,678 2,208 530 1,678 2,208 6.7% 970 970 0 970 970 3.0% 2,250 2,250 0 2,250 2,250 6.9% 4 565 561 4 565 1.7% 47 0.1% 122 122 0.4% 561 - 合計 計 - - - 122 4 7,656 4,198 - 47 122 4 4,198 - 0 4 - 4,198 64.1% 4 0.0% 4,198 12.8% 1,384 1,384 - 1,384 1,384 4.2% 13,833 21,489 14,782 17,947 32,729 100.0% (注)一般炭は PCI 炭を含む。 (出所)QLD, Department of Natural Resources and Mines ホームページ掲載資料より作成 (7) その他 自然災害による被害:雨などの影響で出荷が遅れたり、鉄道輸送に遅れが出ることがある。特に QLD 州での 2008 年初めの豪雨、2010 年 10 月から 2012 年初めまでの断続的な豪雨により供給 がストップし(炭鉱によっては 1 年間の生産停止もあった) 、世界の石炭市場が供給不足に陥っ た。 国内の石炭需要は減少傾向にあり、今後も減少することが見込まれる。 過去にはストライキが多く見受けられた。近年では 2011 年 6 月からの MBA での長期間にわた るストライキのほか鉄道会社などでのストライキがあった。MBA でのストライキは生産に大き な影響を与えた。 2.4.2 インドネシア インドネシアは世界最大の一般炭輸出国であり、わが国では豪州に次ぐ輸入相手先である。インド ネシア政府は生産を抑制する方針を打ち出している。国内の電力需要の増大に伴い発電向け石炭需要 が増加するため、今後の石炭輸出量は減少することが見込まれる。埋蔵量面では、インドネシアは石 - 79 - 炭資源を豊富に有するが、低品位炭の占める割合が多く、わが国が多く輸入する高発熱量の石炭埋蔵 量が少ない。中央カリマンタンには良質な原料炭が賦存しているが、開発が遅れている。輸送インフ ラはバージを利用した輸送システムが完成していると言えるが、河川輸送が限界にきているといわれ ている。 (1) 輸出 石炭輸出はアジア市場の拡大に伴い2013 年まで急速に拡大したが、 2014 年以降減少に転じている。 これは中国の輸入量の減少よるところが大きい。 (百万トン) 450 400 350 300 250 200 150 100 291.2 201.1 323.6 347.6 381.5 356.3 295.0 234.3 50 0 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 (出所)TEX レポート(基データは豪州通関統計)より作成 図 2.4.1 インドネシアの石炭輸出量の推移 (2) 政策 インドネシアでは 2009 年に施行された新鉱物石炭法に基づき、自国の鉱物資源に対する保護政策 が打ち出されており、今後の石炭輸出に大きな影響を与えることになる。具体的な政策措置・規制は、 以下のとおりである。 生産管理 インドネシア政府は中期的な国家開発計画に基づき 2015 年の生産量を 4.25 億トン、その後減 少させて 2019 年の生産量を 4 億トンにするとしている。国内需要が大きく増加することが見 込まれるため、石炭輸出量は減少することになる。 国内供給義務(DMO:Domestic Market Obligation) 国内石炭需要の安全保障を目的として 2010 年に施行され、毎年、各石炭生産会社に国内供給 量が割り当てられている。なお、石炭品質が合わない場合は他の石炭生産会社から調達をする ことが要求され、生産会社の負担が大きいことから、現行制度の運用の見直しが検討されてい る。 高付加価値化 新鉱業法において鉱物資源への高付加価値化の義務化が規定され、2014 年 1 月に施行された。 石炭は同規制の対象外となっているが、新鉱業法は鉱物資源の国家管理の基本的な考え方であ るため、注視しておく必要がある。 - 80 - 輸出税の導入 鉱物資源の主要 5 品目については 2012 年 5 月から輸出税が導入されたが、石炭は除外され対 象外となっている。今後導入の可能性があるため、注視しておく必要がある。なお、2005 年に 当時の外務省が輸出税の導入を提案したことがあるが、この時は最高裁判所の決定よって廃止 となった経緯がある。 (百万トン) 450 400 350 300 250 200 150 100 50 0 425 419 323 413 308 2015 292 2016 生産量 400 275 121 111 102 406 2017 輸出量 240 131 2018 160 2019 国内消費 (出所) APERC ワークショップでのプレゼン資料 (Directorate General of Minerral and Coal, Ministry of Energy and Mineral Resources, “Coal Policy in Indonesia" )より 図 2.4.2 インドネシアの石炭生産・消費・輸出量計画 (3) 環境問題・反対運動 森林法(1999 年法律 第 41 号)により、保護および保存された森林地域では特に露天掘り炭 鉱での石炭の採掘は禁じられている。 複数の NGO がすでに石炭産業の拡大に異議を唱えている。特に、保護および保存された森林 地域に炭鉱が存在する場合はそうした反発が強い。 炭鉱排水(酸性水、粉塵汚染水)、騒音、振動、および道路の陥没などを理由に開発・生産に 対する反対運動と賠償金要求のための運動が活発に行われている。 (4) 炭鉱開発 1980 年代から外資を積極的に受け入れ、外資による炭鉱開発が順調に推移し、短期間で世界最 大の一般炭輸出国に成長してきた。 開発条件のよい海岸沿いおよびマカハム川やバリトー川沿いに炭鉱開発が行われ、今後の開発 の中心は奥地へ移行することになる。 東カリマンタン北部の石炭資源は未開発となっている。 現在は露天掘りが主体であるが、はく土比は年々上昇しており、また将来は坑内掘りへと移行 することになる。加えて、坑内採掘の技術者が少ないことも課題となっている。 (5) 輸送インフラ整備 インドネシアではバージによる石炭輸送システムが確立され、大手石炭会社のいくつかは自社 の石炭ターミナルを所有しているが、今後の増産のためには更なる整備が必要となる。 - 81 - カリマンタン島ではマハカム川、バリトー川が石炭輸送に利用されているが、能力的に限界に 来ている。 中央カリマンタンはマハカム川、バリトー川の上流に位置するため水深が浅く、大型バージが 使えない。そのため、炭鉱開発の足かせとなっている。 今後の石炭増産のためには更なる港湾整備が必要となる。 専用の石炭輸送道路を所有しない生産会社は公道を使用しているが、地方政府によって規制さ れることになった。 表 2.4.8 インドネシアの主要バージ積出港 位置 スマトラ Kertapati 操業会社 PTBA 最大バージ (DMT) 7,000 Tanjung Redeb カリマンタン PT. Berau Coal Tanah Merah カリマンタン PT. Kideco Beloro カリマンタン Loa Tebu Satui 処理量 (トン/日) 6,000 5,000 - 12,000 8,000 PT.MHU 8,000 - カリマンタン PT. Tanito Harum 8,000 - カリマンタン PT.Artmin 5,000 - Banjarmasin カリマンタン Harbour Authrity 5,000 - Kelanis カリマンタン PT. Adaro 8,000 - (出所)JOGMEC、 「インドネシアの石炭輸出規制及び石炭開発状況調査」 、平成 25 年 3 月 表 2.4.9 インドネシアの主要石炭積出港 位置 Tarahan スマトラ 操業会社 PTBA 最大船舶 (DMT) 処理量 (トン/日) 40,000 30,000 Tanjung Bara North Pulau Laut Coal カリマンタン PT. KPC 180,000 8,000 カリマンタン PT. Arutmin 150,000 40,000 Indonesia Bulk Terminal カリマンタン Terminal Batubara Indah 60,000 40,000 Balikpapan Coal Terminal カリマンタン PT. BCT 90,000 40,000 Harbour Authority 35,000 10,000 150,000 50,000 Pulau Bai スマトラ Bontang カリマンタン PT. Indominco (出所)JOGMEC、 「インドネシアの石炭輸出規制及び石炭開発状況調査」 、平成 25 年 3 月を一部修正 (6) 埋蔵量・炭質 資源量は総計で 1,205 億トン、埋蔵量は 314 億トン、埋蔵量のうち 58%がスマトラ島、42% がカリマンタン島に賦存する。 埋蔵量のうち中発熱量にランクされる石炭が最も多く、総埋蔵量の 64%を占め、次いで低発熱 量にランクされる石炭が総埋蔵量の 30%を占める。高発熱量にランクされる石炭はわずか 5% で、残りの 1%が超高発熱量の石炭である。 原料炭は主に中央カリマンタンに賦存するが、ボルネオ島内陸部であるため一年を通して河川 輸送が利用できず、輸送インフラ(鉄道)整備が必要となる。 インドネシアでは探査活動が遅れている。将来、探査がすすめば埋蔵量が増加することが見込 まれる。 - 82 - 表 2.4.10 インドネシアの石炭埋蔵量 (百万トン) 埋蔵量 資源量 地域 ランク カリマンタン 低発熱量 1,539 1,623 2,008 0 5,171 1,230 876 2,105 中発熱量 21,859 9,346 11,867 5,468 48,541 3,638 10,881 14,519 高発熱量 3,400 1,608 2,766 834 8,609 763 419 1,182 460 326 1,118 14 1,917 164 92 256 超高発熱量 スマトラ 確定埋蔵量 推定埋蔵量 計 計 27,259 12,903 17,759 6,316 64,237 5,794 12,268 18,062 9,079 8,477 6,093 1,743 25,393 2,531 4,845 7,376 中発熱量 2,639 7,580 7,987 11,378 29,584 343 5,271 5,614 高発熱量 417 344 148 13 922 227 78 305 0 0 0 0 1 0 0 0 12,135 16,401 14,229 13,135 55,900 3,101 10,194 13,295 0 計 低発熱量 0 0 3 4 7 0 0 中発熱量 56 133 42 99 329 0 0 0 高発熱量 0 1 22 4 27 0 0 0 超高発熱量 0 0 26 0 26 0 0 0 計 計 計 低発熱量 超高発熱量 その他 確定資源量 推定資源量 予想資源量 仮想資源量 56 134 92 107 389 0 0 0 低発熱量 10,619 10,100 8,104 1,747 30,570 3,760 5,720 9,481 中発熱量 24,554 17,059 19,896 16,945 78,454 3,981 16,152 20,133 高発熱量 3,817 1,953 2,937 851 9,558 991 497 1,488 460 326 1,143 14 1,943 164 92 256 39,450 29,438 32,080 19,557 120,525 8,895 22,462 31,357 超高発熱量 計 出所)Indonesia Coal Book 2014/2015 より作成 (7) その他 今後、発電用石炭需要を中心に国内需要が拡大するため、輸出は減少する。 豪雨や長雨(雨季の期間が長くなる)により生産や輸送に影響が出ることがある。 ストライキや周辺住民による石炭運搬道路閉鎖などがあった。 2.4.3 ロシア ロシアは豊富な石炭資源を有し、3 億 5,000 万トンの石炭を生産し、1 億 4,000 万トンを輸出して いる。我が国ではインドネシアに次ぐ第 3 位の石炭輸入相手国である。内陸輸送距離は長いが、港か ら我が国へは近距離ソースとして重要な輸入相手先である。ロシア政府の石炭発展プログラムでは石 炭輸出を増加させる計画である。アジア市場に石炭を供給するには極東沿岸の港湾まで長距離輸送す る必要があり、ロシア炭の供給リスクの一つとなり得る。ロシアでは今後の拡大が見込まれるアジア 市場への輸出を増加させるべく、鉄道の輸送能力の増強および石炭ターミナルの建設や拡張が計画さ れている。現状では石炭生産に対する環境問題や住民反対はあまりない。 (1) 輸出 石炭輸出は欧州向け輸出が減少した2011年を除いて増加し、 2015年に1億5,270万トンとなった。 地域別ではアジア市場向けが順調に増加し 2015 年は伸びが減速した。炭種別でみると輸出量のうち 一般炭の輸出量が全体の 85~87%を占める。 - 83 - (百万トン) 180 160 140 120 104.9 1.5 15.7 97.4 1.2 18.2 100 80 116.7 3.1 18.2 109.5 3.4 14.3 140.6 2.8 16.9 129.2 4.0 16.0 153.2 4.7 15.4 152.7 4.7 15.1 66.2 65.6 アフリカ、中東、米州他 63.6 旧ソ連邦 61.7 60 63.6 65.1 58.4 61.4 40 27.1 19.9 20 0 11.2 9.0 ヨーロッパ 25.5 30.6 その他アジア 0.6 16.1 9.5 14.6 27.7 30.4 41.8 24.4 36.3 19.2 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 東アジア(日本、韓国、台湾) (出所)TEX レポート(基データはロシア貿易統計)より作成 図 2.4.3 ロシアの石炭輸出量の推移 表 2.4.11 ロシアの石炭輸出量の推移 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 原料炭 13,614 13,219 18,167 14,176 17,705 21,902 21,082 18,480 (千トン) 増減 2015-2014 -2,602 一般炭他 83,826 91,693 98,567 95,364 111,543 118,740 132,081 134,183 2,102 合 計 97,440 104,913 116,734 109,540 129,248 140,642 153,163 152,663 -500 (出所)TEX レポート(基データはロシア貿易統計)より作成 (2) 政策 2030 年までの石炭産業開発プログラムでは石炭輸出を拡大する方針を示している。 表 2.4.12 ロシア政府による石炭輸出見通し (百万トン) 輸出 2008 2009 2010 2007 (実績) (実績) (実績) (実績) 98.6 101.2 107.4 116.4 2015 2020 2025 2030 140 150 155 170 一般炭 88.6 87.6 94.1 98.4 115 115 115 125 原料炭 10.0 13.6 13.3 18.0 25 35 40 45 出所) The Russian Federation, “The Long-term Program of development of the coal sector until 2030”, 2012 より作 成 輸出税、輸出許可など輸出制限を目的とした政策はなく、今後も導入される可能性は極めて低 い。 ウクライナ問題など現状の動きを考えると、 政策的リスクは高く、動向を注視する必要がある。 - 84 - (3) 環境問題・反対運動 現状では、石炭産業は地域の重要な産業であり、環境問題や周辺住民による反対運動など大き な問題はない。 都市部や港湾近郊の都市において、粉じん(炭じん)が大気汚染を招いていると指摘されてい る。 年間生産量が 220-250 百万トンを超えるクズバス(Kuzbass)炭田の生態系に対する制約が適 用される可能性がある。 (4) 炭鉱開発 現在のロシアの金融市場の状況で新規プロジェクトが資金を獲得するのは困難であり、外国か ら融資を受けるのも困難である。 プロジェクトの大部分は石炭価格の低迷により厳しい状況にあり、開発プロジェクトは遅れて いる。 内陸輸送距離が長く(西シベリアのクズネツクからは 6,000km 以上) 、内陸輸送コストが他国 に比較して高い。なお、生産コストは豪州と比較して安い。 新規開発には、シベリア鉄道、バム鉄道までの引込線など輸送インフラ整備が必要となり、開 発資金がかさむ。 旧ソ連時代からの炭鉱は、設備の老朽化という課題を未だに抱えている。 (5) 輸送インフラ整備 不十分な鉄道インフラ能力が主要な課題となっている。なお、東方向への鉄道能力は 2020 年 までに 40%以上増加させる計画である。 石炭ターミナル新規建設計画はワニノ港およびワニノ港の北に位置するムチカ湾に集中してお り、BAM 鉄道および港湾との接続線の輸送能力増強がスムーズ進むかが大きな課題となって いる(鉄道の整備・拡張はロシア鉄道により行われる) 。また、シベリア鉄道からボストチヌイ 港へ向かう接続線、ポシェット港へ向かう路線の拡張についても、各港湾の取扱能力の増強に 伴い進める必要がある。 アジア向け輸出については積出港の能力不足が大きなネックとなっていたが、鉄道およびボス トチヌイ港石炭ターミナル拡張を初め既存港湾での石炭埠頭の能力拡張および新規石炭ターミ ナル(SUEK)の完成により大きく改善した。しかし、今後の輸出拡大には更なる能力拡大が 必要となる。 石炭ターミナルは、民間主導で多くの新規・拡張計画が提案されているが、資金面や需要面か ら実現可能性に疑問が残る。 ワニノ港、ムチカ湾では、冬期は流氷の影響を受ける。 (6) 埋蔵量・炭質 確認埋蔵量は 1,937 億トン、うちハードコールが 860 億トン(うち原料炭 404 億トン)とロシ アは豊富な石炭埋蔵量を持つ。原料炭は西シベリアのクズネツ炭田やサハ共和国の南ヤクート 炭田に賦存し、開発が進められている。 - 85 - 表 2.4.13 ロシアの石炭埋蔵量 (百万トン) うち操業炭鉱の埋蔵量 埋蔵量 ハード・コール うち原料炭 無煙炭 褐炭 合計 確認 予想 確認 可採 85,951 31,608 117,559 合計 18,110 11,868 40,384 9,651 50,035 7,466 4,731 6,849 2,231 9,080 689 540 100,891 45,512 146,403 7,935 7,583 193,691 79,351 273,042 26,734 19,991 出所)APERC ワークショップでのプレゼン資料(Coal Marketing Research Institute, “Status and prospects of Russian coal export to the Asia-Pacific region" )より (7) その他 ロシア通貨の急落により競争力が高まっている。 石炭発展プログラムによれば、国内需要は増加する見通しとなっている。 以前に比べれば異物混入量は減少しているが、未だ完全には除去されておらず揚げ地で(ユー ザーが)の対応が必要である。また、冬期の輸入では石炭が凍結している場合がある。 冬期の気象条件が厳しいことが原因でのトラブルが起こり得る。 2.4.4 カナダ カナダの石炭資源は主に西部に賦存し、ブリティッシュコロンビア州とアルバータ州に瀝青炭、ア ルバータ州に亜瀝青炭が賦存する。カナダは強粘結炭の産出国であり、原料炭を輸出している。わが 国ではロシアに次ぐ第 4 位の石炭輸入相手国で、原料炭に限ると豪州に次ぐ石炭輸入相手国である。 カナダ政府はエネルギー輸出に関して全般的には促進的な政策を執っており、石炭輸出を増加させる 方針である。環境面では地球温暖化ガスの排出量を削減する施策を執っており、発電所などの石炭を 使用する工場の閉鎖が進められ、国内需要は減少している。ただし、炭鉱を閉鎖する施策はない。し かし、環境団体などは石炭産業の成長、石炭ターミナル建設に反対している。輸出インフラ整備につ いては現状問題がないが、輸出量が増加すれば鉄道・港ともに能力拡張が必要となる。カナダは、豪 州と比べて採掘条件が悪く、一部一般炭炭鉱を除いて内陸輸送が 1,000km を超えるため、FOB コス トが高い。このため、石炭市況が低迷している現状では操業を中止する炭鉱が増えており、炭鉱開発 計画のほとんどが先送りとなっている。 (1) 輸出 輸出量は 2013 年の 3,839 万トンから 2014 年の 3,437 万トン、 2015 年の 3,039 万トンと減少した。 うち原料炭の輸出量は 2013 年の 3,502 万トンから 2014 年の 3,106 万トン、2015 年の 2,805 万トン と減少した。アジア向けが減少していることに加え、価格の低迷から炭鉱の休山が相次いでいる。 (2) 政策 カナダは長年にわたり石炭(ならびに石油、天然ガス)の主要な輸出国としての地位を確立し ており、政府はエネルギー輸出に関して全般的に促進的な政策をとっている。 石炭輸出を増加させる方針である。 - 86 - 輸出税、輸出許可など輸出制限を目的とした政策はなく、導入される可能性は極めて低い。 ブリティッシュコロンビア州には炭素税があるが、輸出品には適用されない。 (3) 環境問題・住民反対 カナダでは、石炭産業の成長に対する反対意見が多く存在する。 エコジャスティス(Ecojustice)など環境関連のロビー団体が、西海岸における輸出ターミナ ルの建設に反対している。アジアにおける石炭の使用量が増えることによる地球温暖化、地域 での健康被害、炭塵や石炭の流出による水質への影響といった様々な懸念を挙げている。 また、ブリティッシュコロンビア州では先住民のコミュニティ、住民および政府当局者が炭鉱 や輸出ターミナルの建設に反対している。 一方で、様々な利害関係者の団体から厳しい反対があるにもかかわらず、2014 年 8 月、年間 400 万トンの石炭を輸出することを目的に、ポートメトロバンクーバーはフレーザー・サリー・ ドックを拡張することを許可した。 (4) 炭鉱開発 豪州と比べて採掘条件が悪く、内陸輸送が 1,000km を超えるため FOB コストが高い。石炭市 況の低迷によりほとんどの炭鉱開発プロジェクトは延期または中止されている。 また、2014 年、石炭市況の低迷により数多くの炭鉱が稼働を停止し、価格が持ち直すまで多く の従業員が一時解雇 (レイオフ) された。 現在操業をしている原料炭生産会社は、 Teck Resources のみである。 (5) 輸送インフラ 鉄道および港湾に投資がなされており、現状は輸送能力に問題はない。輸出需要が増えれば、 バンクーバー方面への鉄道能力とウエストシェア石炭ターミナル、ネプチューン石炭ターミナ ルの能力拡張が必要となる。輸出需要の減少から現状では輸出インフラ能力は余っている。な お、今後、米国パウダーリバーで生産される石炭の取り扱いが増加する可能性はある。 最近行われた一時解雇(レイオフ)により、輸出ターミナル(Ridley Terminals 社)では少人 数での操業を強いられている。 表 2.4.14 カナダの石炭ターミナル積出能力 2013年末能力 (万トン/年) ターミナル ウエストショア 2,900 リドレー 1,200 ネプチューン 1,250 計 5,350 出所)各種情報をもとに作成 (6) 埋蔵量 カナダの確認埋蔵量は 87 億トン、可採埋蔵量は 66 億トンでうち無煙炭および瀝青炭の可採埋 - 87 - 蔵量は 35 億トン、亜瀝青炭および褐炭の可採埋蔵量が 31 億トンで、石炭可採年数(R/P 比) は約 100 年である(WEC 報告) 。 ブリティッシュコロンビア州、アルバータ州、およびサスカチュワン州に拡がる西部カナダ (Western Canada)堆積盆には、低揮発分瀝青炭から高揮発分瀝青炭、無煙炭、亜瀝青炭、 褐炭が賦存し、強粘結原料炭から PCI 炭、一般炭を産出する。 (7) その他 地球温暖化ガス(GHG)の排出量削減を目的とするカナダの施策が、数多くの政策の中に組み 込まれている。このことが、カナダ国内において石炭を燃料とする工場が次々と閉鎖される直 接の原因となっており、国内の石炭消費量は減少している。 過去に大雪が鉄道輸送に影響を及ぼした事例がある。 米国 2.4.5 米国は豊富な石炭資源を有し、東部のアパラチア炭田、イリノイ炭田で瀝青炭、西部のパウダーリ バー炭田で亜瀝青炭が産出される。カナダに次ぐ第 5 位の石炭輸入相手国である。政策的には現状、 輸出を対象とする規制はないが、環境問題や石炭産業全般に対する規制により、石炭生産および輸出 に影響が出る可能性がある。輸送インフラは、欧州・大西洋市場向けには整備されている。一方でア ジア・太平洋市場への供給拡大のためには西海岸に港湾を建設する必要があるが、環境団体等の反対 により建設が難しい状況にある。 (1) 輸出 輸出量は 2010 年から 2012 年にかけて、アジア向け、欧州向け輸出の増加により増加したが、その 後減少し、2015 年の輸出量は 6,710 万トンまで減少した。炭種別では原料炭の輸出減少が大きく、 2015 年は対前年度で 1,270 万トン減少した。輸出需要の減少に加え、価格の低迷による生産減が影響 していると思われる。 表 2.4.15 米国の石炭輸出量の推移 (千トン) 原料炭 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 38,664 33,831 50,949 63,078 63,390 59,583 54,495 41,737 増減 2015-2014 -12,758 無煙炭 341 222 310 351 533 691 283 304 21 一般炭 21,776 15,152 14,743 26,984 41,010 34,607 27,052 19,707 -7,345 5,365 8,096 11,338 5,866 4,711 -1,155 亜瀝青炭 その他石炭 13,123 4,349 7,970 1,356 1,052 518 512 611 99 計 73,904 53,554 73,973 97,135 114,082 106,737 88,208 67,071 -21,137 (出所)TEX レポート(基データは米国貿易統計)より作成 - 88 - (百万トン) 120 114.1 106.7 97.1 100 88.2 80 その他石炭 74.0 73.9 67.1 60 亜瀝青炭 一般炭 53.6 無煙炭 40 原料炭 20 0 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 (出所)TEX レポート(基データは米国貿易統計)より作成 図 2.4.4 米国の石炭輸出量の推移 (2) 政策 輸出税、輸出許可など輸出制限を目的とした政策はなく、導入される可能性は極めて低い。 ただし、環境面からの石炭産業に対する規制が強化されており、石炭生産を制限し、それが輸 出減に繋がる可能性がある。 内務省が石炭開発改革案を発表した。内容は、今後 3 年間連邦領における新規石炭開発鉱区リ ースを停止し、その間に適正な石炭価格が形成されるように、鉱区リース手続およびロイヤル ティを策定するというものである。この案が可決されれば新規開発鉱区での開発に大きな影響 が出ると思われる。 (3) 環境問題・住民反対 炭鉱操業に対する環境問題は以前から存在するが、産炭地で深刻な問題となった事例はほとん どなく、この意味では低リスクといえる。 しかし、EPA が炭鉱排水に関する規制を進めており、石炭操業に係る規制が生産の縮小に繋が る可能性が高い。 環境団体の反対により港湾開発を停止する可能性があることが最大の問題である。 (4) 炭鉱開発 価格が下落し続ける一方で、現在の石炭供給は需要を上回っており、米国の石炭会社のキャッ シュフローに大きな影響を及ぼしている。 このため、 操業を休止する石炭会社が増えているが、 これまでの経験から石炭市況が上向くと再び生産意欲も高まることが予想される。 米国の原料炭生産会社は、規模の小さい炭鉱が集まり一つのコンプレックスをつくっており、 市場価格が高い時に生産し、安い時は休止するといったいわゆるスイングサプライヤーでもあ る。 - 89 - しかし、中小の事業者だけでなく大手の石炭会社を含め破綻する事業者が増加しており、今後 の動向に注視する必要がある。 炭鉱開発プロジェクトは先送りとなっており、既存鉱区での炭量枯渇や将来の需要増に対応で きなくなる可能性がある。 (5) 輸送インフラ整備 鉄道および船舶輸送は、農産物や工業製品の積み荷の増加で込み合ってきており、スムーズな 石炭輸送に支障が出始めており、そのため石炭産業の順調な発展の可能性が制限されている。 パウダーリバー炭田を中心とする西部地区には、アジア・太平洋市場向けの輸出ポテンシャル があるが、西海岸への輸送インフラが整備されていない。 既存積出港はシアトルとロサンゼルスにあるが、規模は小さい。現在、バンクーバーのウエ スト・シュア石炭ターミナルを利用している。 ワシントン州およびオレゴン州で 6 件の港湾建設が計画されていたが、環境団体の反対より 2 件(下記①、②)を除き建設が中止に追い込まれている。 2012 年時点で計画されていた港湾建設プロジェクト ワシントン州: ① Bellingham(Gateway Pacific Terminal) ② Longview(Millennium Bulk Terminal) ③ Grays Harbor(Port of Grays Harbor) オレゴン州: ④ Boardman(Port of Morrow)18 ⑤ St. Helens(Port of Helens) ⑥ Coos Bay(Port of Coos Bay) ① ③ ② ⑤ ④ ⑥ (注) ×印は中止となった石炭ターミナル計画。 図 2.4.5 米国北西部の石炭ターミナル計画位置図 18 バージターミナル。下流の Port Westward に石炭ターミナルを建設予定。 - 90 - 表 2.4.16 米国北西部の石炭ターミナル計画概要 港湾 (プロジェクト名) 実施主体 概要 【ワシントン州】 Point, SSA Marine Cherry ・石炭・バルクターミナル Gateway Pacific Terminal の建設 (国際輸送サー ・2015 年操業開始、年間輸出可能量 2500 万トン(バルク込みで 5400 万ト Bellingham (Gateway Pacific ビス) ン、将来的に石炭輸出 4800 万トンを目指す) Terminal) ・Powder River Basin で生産する Peabody Energy と石炭輸送・輸出で合意 ・2011 年 2 月に州および連邦政府に建設許可を申請 現状:環境アセス中 ・自治体・州政府による環境アセスメントが進行中(約 1 年遅れて 2016 年 (許可プロセスが進展中) 前半に環境アセス報告書を提出、審査結果は 2017 年後半に判明する見 込) Ambre Longview Energy ・アルミ会社が所有していた Millennium Bulk Terminal を買収し、石炭輸出 ( Millennium Bulk (豪) Arch Coal Terminals Logistics:MBTL) に用途変更、年間輸出可能量 570 万トン。 ・2010 年 11 月に Cowlitz 郡の港湾立地許可を得たが、公表より大規模な 港建設を計画している(6000 万トン)ことが発覚し、環境運動などの反対 が高まったため取下げ。 ・2011 年 6 月に再申請、2012 年の操業開始を目指す。 ・Ambre Energy が MBTL 権益を含む試算を売却したため、現在は Resource Capital Funds と Arch Coal が事業主体となっている。 現状:環境アセス中 ・自治体・州政府による環境アセスメントが進行中(アセスの受注契約が (許可プロセスが進展中) 承認され、提出された環境アセス報告書について 2016 年 6 月にパブリッ クコメント実施予定) (出所)各社ホームページ等より作成 なお、この他にメキシコの太平洋岸では、グアイマス港(Guaymas)で 200 万トン、トポ ロバンポ港(Topolobampo)で 130 万トン、ラサロ・カルデナス港(Lazaro Cardena)で 200 万トンの輸出計画がある。 東海岸、メキシコ湾岸の積出港は整備されている。 (6) 埋蔵量・炭質 WEC によれば、資源量は、無煙炭・瀝青炭 1,085.0 億トン、亜瀝青炭 986.2 億トン、褐炭 301.8 億トン、合計 2,373.0 億トンと報告されている。 EIA によれば、可採埋蔵量 194 億ショート・トン、推定可採埋蔵量 2,558 億ショート・トン、 推定埋蔵量 4,785 億ショート・トンと報告されている。 西部地域のパウダーリバー炭田は亜瀝青炭、アパラチア炭田およびイリノイ炭田は瀝青炭が賦 存し、原料炭と一般炭を産出する。 - 91 - 表 2.4.17 米国の石炭ターミナル (百万ショート・トン) ターミナル 東 海 岸 メ キ シ コ 湾 岸 五 大 湖 西 海 岸 CNX Marine Chesapeake Bay Terminal (CSX) Sparrows Point Lamberts Point (NS) Pier IX Dominion Terminal Associates(DTA) Fairless Hills Shipyard River Terminal Port of Tampa United Bulk Terminal Ram Terminals Lower Mississippi River Midstream Operators Port Sulphur Terminal International Marine Terminal IC Rail Marine Terminal (Convent) Burnside Terminal McDuffie Terminal CHIPCO Terminal Bulk Materials Handling Plant Blue Creek Terminal Deepwater Terminal Port of Houston (HBT) Port Arhtur Bulk Terminal PABTEX Corpus Christi Bulk Terminal Ashtabula Coal Dock Conneaut Dock Sandusky Dock Pier 3 Superior Terminal Presque Isle Dock Gateway Terminal Millenium Bulk Terminal Gateway Pacific Terminal Seaward Coal Terminal Port Mackenzie 合計 港 Baltimore(メリーランド) Hampton Roads(バージニア) Philadelphia(ペンシルバニア) Charleston(サウスカロライナ) Tampa(フロリダ) New Orleans(ルイジアナ) Lower Miss. River(ルイジアナ) Mobile(アラバマ) Pasadena(テキサス) Houston(テキサス) 既存 13.6 9.5 34.5 14.5 20.0 1.8 1.8 1.0 10.9 Ashtabula(オハイオ) Sandusky(オハイオ) Lake Superior(ウィスコンシン) Erie(ペンシルバナニア) Buffalo(ニューヨーク) Columbia River,Longview(ワシントン) Puget Sound,Cherry Point(ワシントン) Seaward(アラスカ) Anchorage(アラスカ) 14.5 12.7 0.9 16.0 20.0 10.0 29.0 9.0 9.1 9.1 1.0 2.7 6.0 2.4 Galveston(テキサス) Corpus Christi(テキサス) 計画後 1.4 9.0 9.0 1.8 4.0 0.5 1.8 3.0 20.0 18.0 8.2 14.5 2.7 10.0 6.4 0.9 0.9 5.9 36.0 48.0 2.2 1.0 206.6 248.6 (出所)The U.S. Coal Export Coalition より作成 2.4.6 ベトナム ベトナムは無煙炭の輸出国であるが、電力需要の拡大により国内の石炭需要が急増するため、政府 は無煙炭の輸出量を規制する方針である。無煙炭の輸出用インフラは現状において整備されており今 後輸出量が減少することからインフラ面では問題はないと言える。国内的には、今後増加する輸入炭 の受入基地と北部生産地から南部消費地への輸送インフラ整備が課題である。なお、石炭輸出には政 府の許可が必要である。 (1) 輸出 無煙炭輸出量は、2009 年の 2,499 万トンをピークに政府の方針に則り減少し、2015 年の輸出量は 175 万トンとなった。 - 92 - (万トン) 中国 3,000 韓国 日本 東南アジア その他 2,499 2,500 2,000 1,983 1,935 1,716 1,521 1,500 1,283 2,045 1,000 728 1,464 1,461 1,344 500 1,210 986 175 414 0 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 0 2015 (出所)2008~2014 年:ベトナム統計局、2015 年:ベトナム財務省・貿易統計 図 2.4.6 ベトナムの石炭輸出量の推移 (2) 政策 ベトナムはこれまで無煙炭を重要な輸出商品の一つとして位置付けていたが、急増する国内の エネルギー需要への対応策として、国内炭を優先的に国内へ供給するという方針に大きく舵を 切った。そのため、政府は今後の輸出量を制限する方針を示している。なお、国内生産だけで は需要に追いつかず、今後は海外からの輸入が増加する。 ベトナム政府は、国内で使用されていない高品質な石炭を輸出する方針で、国営企業の VINACOMIN と Dong Bac に輸出することを許可している。 石炭製品には 2013 年 9 月から 10%の輸出税が適用される。これまで輸出税率は数回見直され ており、これまでの最高は 20%であった。 ロイヤルティ(資源採掘税)は、露天掘りが 9%、坑内掘りが 7%である。 (3) 環境問題・住民反対 採炭活動は、粉塵や廃水などによって、大気や水、土地資源を汚染し、また土地の劣化や森林 破壊を引き起こしており、それらに対応しなければ今後の石炭生産の拡大はより深刻な環境問 題を引き起こすことになる。 VINACOMIN は、周辺住民の意見を聞きながら、炭鉱排水、粉塵、騒音などの環境対策を徹 底しており、これまで大きな問題は発生していない。 環境団体等による大規模な反対運動等は行われていないが、これまでで唯一ハロン湾で反対運 動があった。 ベトナムには環境税があり、石炭製品 1 トン当たり 1 米ドル、原炭 1 トン当たり 0.5 米ドルと なっている。 環境再生、地盤沈下対策、鉱床再生環境基金が適用されている。 - 93 - (4) 炭鉱開発 政府は、石炭部門の開発に関するマスタープラン 19を通じて期間毎に石炭生産を計画し、炭鉱 開発を進めている。炭鉱の増産計画に従って、坑内掘炭鉱の開発を急ぐため、国内、海外資金 の借入れを行っている。 なお、ベトナムでは海外からの炭鉱開発、投資を禁止している。 現在、ベトナムにおいて、財政的な問題により開発プロセスが遅れている炭鉱はない(APERC 専門家の報告)。 露天掘炭鉱では剥土比が高くなっている。生産量に占める坑内掘炭鉱の比率も高くなっており、 坑内掘りの比率は 2015 年に 60%、2020 年には 77%に達すると言われている。 生産コストが高い場合は、VINACOMIN が適切な市場価格に見合うようコストを調整する。 VINACOMIN は国営企業であるため、財務省が同社の負債を調整するといった仕組みになっ ている。 (5) 輸送インフラ整備 北部の石炭を中・南部の石炭消費地まで輸送するための港湾整備が不十分である。ベトナム南 部は遠浅の海岸か多く、大型船を使用できないため、今後海外炭の受入にも支障をきたすこと になる。 輸出用の港湾など輸送インフラ整備は、これまでの輸出需要量(1,000 万トンを超えていた) に対応して整備がなされており、現状において問題はないと判断できる。ただし、国内向けの 輸送量が増加するため、増強が必要となる。 (6) 埋蔵量 VINACOMIN の報告によれば、確定埋蔵量は 61 億トンである。 表 2.4.18 ベトナムの確認可採埋蔵量 (千トン) 炭種:炭田 確定資源量 クアンニン炭田 内陸炭田 地方炭鉱 確定埋蔵量 5,906,665 4,121,745 15,600 165,110 48,684 11,250 28,692,197 1,580,956 褐炭 164,356 235,438 合計 34,827,502 6,114,499 KhoaiChau, PhuCu, Tian Hai (出所)METI、 「平成 26 年度石油産業体制等調査研究(アジア・太平洋市場の石炭需給調査) 」 (元資料は JCOAL) より抜粋 (7) その他 石炭火力発電所の運転開始による国内の石炭需要増に対応するため、2017 年から輸入が本格化 する。 19 マスタープランは MOIT によって策定 (および首相により承認) され、5~10 年ごとに改定されている。 - 94 - 2.4.7 南アフリカ 南アフリカは一般炭の輸出国で、アジア、欧州向けを中心に年間 7,000 万トン台の石炭を輸出して いる。我が国の南アフリカらの輸入量は 2014 年まで年間数十万トン程度で推移した。積出港である Rechards Bay 港の積出能力は 9,100 万トン/年あり、今後需要拡大に伴い増加が見込める。しかし、 これまでの開発地域である Witbank、Highveld、Ermelo 炭田等の埋蔵量は減少し、炭質が悪化傾向 にあり、生産の中心は今後の開発地域 Waterberg 炭田に移行する。現状の輸出量は 7,000 万トンであ り、輸送インフラ能力は需要を上回っているが、Waterberg からの鉄道路線の強化が必要となる。 (1) 輸出 輸出量のほとんどは一般炭で、ここ数年 7,500 万トンを上回って推移しており、2015 年は 7,830 万トンであった。欧州向けに代わって輸出量を伸ばしてきたアジア向けの輸出量は 2011 年以降 4,000 万トン台で推移しており、2015 年の輸出量は 4,300 万トンであった。ここ 2 年でインド向けが急増 するなか、中国向けが激減し 2015 年の中国向け輸出量はゼロとなった。我が国の南アフリカ炭の輸 入量は数十万トンで推移してきたが、2015 年は 8 万トンまで減少した。 (百万トン) 90 80 69.1 67.0 2008 2009 70 70.4 71.6 2010 2011 76.7 75.5 2012 2013 78.7 78.3 2014 2015 60 50 40 30 20 10 0 (出所)TEX レポート(元データは南アフリカ貿易統計)より作成 図 2.4.7 南アフリカの輸出量の推移 (2) 政策 新鉱業法では、 「鉱物類・石油を加工し、付加価値を付与する、大臣が定めるベース・ライン価 格以上でなければならい」とされているが、石炭に関して特段の規制は見当たらない。 輸出に係わる規制、輸出税はない。 ロイヤルティについては、2008 年 11 月に「鉱物および石油資源ロイヤルティ法(Mineral and Petroleum Resources Royalty Act,2008) 」が成立し、2010 年 3 月に発効された。本法では税 および利子前利益(Earnings before Interest and Tax, EBIT) 、総売上高(Gross Sales, GS) 、 鉱物精製の有無によるロイヤルティ料率を決定し、総売上高に料率を乗じてロイヤルティを決 めるとしている。ただし、最大 7%としている。 (3) 環境問題・住民反対 長年採炭をしていることから、以下のような環境問題や環境団体による反対運動等が発生して いる。 - 95 - • 数多くの放置された廃鉱山(石炭鉱山以外も含む)のリハビリテーションの不履行問題や 鉱山排水(酸性水)の問題 • 自然公園保護団体(Mapungubwe Action Group)による Limpopo での外資企業による新 規炭鉱の開発許可に対する反対運動 環境団体による石炭産業の監視(大気・水汚染) (4) 炭鉱開発 石炭産業の設備投資額が 2013 年までの 5 年間と比較し、新規鉱山開発および既存設備の拡張 のために、次の 5 年間の投資額が約 1.6 倍に増加することが見込まれる。 既存開発エリアでの埋蔵量の減少から、ジンバブエとの国境に近い Waterberg での開発を進め る必要がある。 生産状況をみると、石炭生産量の約半数が坑内掘炭鉱で生産されている。 FOB コストは露天掘りおよび坑内掘りともに他国との比較において低く、南アフリカ炭は競争 力がある。 しかし、国際的な市況低迷により石炭会社は厳しい状況にある。 (5) 輸送インフラ整備 輸出向け石炭の輸送は山元から港までは鉄道輸送であるが、国内ユーザー向けは鉄道とトラッ ク輸送であり、このトラック輸送が限界にきている。鉄道への切り替えが必要となるがそのた めには鉄道能力の増強が必要となる。 今後、採炭エリアを Waterberg 炭田へ移行していくことになるが、Waterberg 線の増強を図る 必要がある。 Richards Bay 石炭ターミナルの積出能力は現時点で 9,100 万トン/年で、 能力的に問題はない。 なお、拡張計画(Phase VI)がある。 石炭ターミナルには、 Richards Bay 石炭ターミナルのほか、Durban 港 (年間能力 150 万トン) があり、モザンビークの Maputo 港(年間能力 600 万トン)も利用されている。 (6) 埋蔵量 330 億トンと豊富な埋蔵量を有するが、これまでの開発エリア(Witbank、Highveld、Ermelo 炭田等)の埋蔵量が減少してきており、また炭質が悪化傾向にある。 将来、埋蔵量の多い Waterberg 炭田(ジンバブエ国境付近に位置する)が主な開発エリアとな る。ただし、炭質が現在の開発エリアより劣ると言われている。 (7) その他 南アフリカ政府の報告では、南アフリカの石炭輸出量は、2020 年代に入り 9,000 万トン台で頭 打ちとなるとしている。 - 96 - 表 2.4.19 南アフリカの石炭埋蔵量 (百万トン) 資源量 確認可採埋蔵量 2009年時埋蔵量 (Baruya et al., 2003) (Baruya et al., 2003) (Prevost, 2011) 炭田 Witbank 16,241 12,460 8,509 Highveld 16,909 10,979 9,475 Ermelo 7,525 4,698 4,388 Utrecht 1,067 649 541 Kliprivier 1,157 655 529 321 204 100 South Rand 3,072 730 716 Sasolburg 4,757 2,233 1,708 Free State 8,876 4,919 Waterberg 55,614 15,487 3,250 1,700 Vryheld Springbok Flats 6,744 256 107 1,450 267 257 Other Fields in Kwazulu-Natal 256 98 Nongoma: 6 Kangwane 467 147 146 Limpopo Soutpansberg Molteno-Indwe Total 376 47 121,218 55,333 33,117 (出所)METI、 「平成 26 年度石油産業体制等調査研究(アジア・太平洋市場の石炭需給調査) 」 (元資料は JCOAL) より抜粋 表 2.4.20 南アフリカの石炭品位 炭田名(堆積盆) Soutpansberg Waterberg 公表されている炭質 灰分 揮発分 硫黄 発熱量 11.0-12.3% 22.5-31.5% 0.85-1.30% 7,551kcal/kg 8.4-33.4% 24.5-37.1% 0.52-0.95% 4,864-7,027kcal/kg Kangwane 12.4% 6.3% 0.7% 7,384kcal/kg Witbank 10.6-24.5% 21.1-31.5% 0.52-0.90% 5,597-7,236kcal/kg Ermelo 11.5-21.5% 25.5-32.0 % 0.96-1.1 % 5,707-6,729kcal/kg Highveld 10.8-26.1% 22.8-34. % 0.54-0.98% 5,156-6,820kcal/kg South Rand - - - - 26.4-37.9 21.7-23.9% 0.62-0.73% 3,783-4,516kcal/kg Utrecht 13.8-14.1% 25.7-26.4% 1.33-1.58% 6,586-6,696kcal/kg Vryheid 14.1% 8.7% 1.28% 7,133kcal/kg Nongoma 7.4% 5.3% 0.72% 7,926kcal/kg Klip River 11.0% 4.1% 1.85% 7,245kcal/kg Sasolburg (出所)NEDO、 「南東部アフリカ諸国における石炭資源の開発状況と石炭輸出ポテンシャル調査」 、平成 22 年 2 月 2.4.8 モザンビーク モザンビークには原料炭(強粘結炭)が賦存し、外資により開発が進められている。原料炭の輸出 は 2011 年から始まり、2014 年には 377 万トンを輸出した 20。我が国は 2014 年に 17 万トン、2015 年には 34 万トンを輸入している 21。輸出を制限するような規制はなく、環境問題や住民反対は今の 20 21 IEA, “Coal Information 2015”より 財務省、 「日本貿易統計月報」より - 97 - ところ大きな問題はない。一番の課題は炭鉱開発と同時に輸送インフラ(鉄道と積出港)の建設が必 要となることである。 (1) 政策 政府 5 ヵ年計画 2010 年-2014 年(Programa Quinquenal do Governo 2010-2014)では、鉱業 は「鉱物資源は国の貿易収支改善を担う財源(輸出品)と位置付け、経済成長を促進するもの として持続的な活用にプライオリティを置く」としている。 輸出に係わる規制や輸出税、また数量的な制限はない。ロイヤルティはある。 鉱物資源のモザンビーク国内での付加価値化を推奨しているが、これに関しての規制は特にな い。 新鉱業法(2014 年 8 月 22 日施行)では、マイニングコントラクト(採掘権付与時に結ばれる 政府との契約)に以下の条項を設けるとしている。 開発に際しての国の参加(権益付与)に係わる条項 地域住民の雇用とトレーニングに係わる条項 (2) 環境問題・住民反対 石炭開発が初期の段階にあることからこれまでのところ大きな問題となっていない。 (3) 炭鉱開発 Tete 州では石炭の大規模開発が始まって間もなく、多くの鉱区で露天掘りが可能である。 なお、歩留まりが低く、選炭性が悪いことが生産コストを上昇させることになる。 上記政策で示したとおり操業に際し、地域住民の雇用が条件となっており、未経験の地域住民 をトレーニングして雇用する必要がある。 港までの輸送距離が 600km~900km と長く、深水港湾がないことから、石炭開発に必要な輸 送インフラへの投資が大きく、輸送コストが高くなる。よって、現状のように石炭の石炭市況 が悪い(市場価格が低い)場合は、市場価格がコストのブレークイーブンを下回る場合がある。 (4) 輸送インフラ整備 Vale が主体となって建設を進めていた生産地区の Tete から積出港の Nacala 港までの鉄道が 2014 年 12 月に開通した。現在では第 1 ステージが完成し年間 1,100 万トンの輸送能力を有す る。今後第 2 ステージで輸送能力を 2,200 万トン/年に拡張する計画である。 Beira 港への路線などの整備計画がある。同港では 2012 年 6 月に積出能力が 600 万トン/年と なった。今後 1,200 万トン/年に拡大し、将来は 2,000 万トン/年まで拡張する計画である。港の 拡張に合わせて鉄道(セナ鉄道)の拡張も進める計画である。 2020 年以降に計画されている新規鉱山が立ち上がる場合は、鉄道輸送能力とともにターミナル 能力も不足する。 (5) 埋蔵量 Tete 州の Zambeze 川流域を中心とした Zambeze 堆積盆に良質の原料炭が賦存する。 Coal India の自鉱区での探査結果が、一般炭としても不適合ということで、撤退を決定した事 - 98 - 例がある。 原料炭 (強粘結炭)の有望地域と言われている Tete 州においても地域により品質に差異があり、 期待した炭質の石炭の埋蔵量が少なかったという結果も十分あり得る。 灰分が高くかつ可選性が悪い。原料炭の歩留まりは 20-30%と言われている。 (6) その他 原料炭とともに生産される一般炭の売り先がないのが現状である。国内に需要はほとんどなく、 輸出も限られている。 2.4.9 モンゴル 石炭資源はモンゴル全土に拡がるが、南ゴビには原料炭(強粘結炭)が賦存し、2000 年代初め頃か ら開発が進められている。モンゴルの石炭輸出のほほ全量が中国向けである。今後、隣国であるロシ アへの輸出増は考えられるが、アジア・太平洋市場へ石炭を輸出するためには中国経由もしくはロシ ア経由となり、鉄道輸送が高額となるため FOB 積出港での競争力がない。また、モンゴル国内での 鉄道建設のために高額な投資が必要となる。政策面では、輸出を規制するための政策はないが、石炭 生産会社は多額の税金などが徴収されている。環境問題・住民反対では、採掘作業やトラック輸送に よる粉塵問題がある。 (1) 輸出 モンゴルの石炭輸出のほほ全量が中国向けである。中国海関統計からモンゴルからの輸入量をみる と、2012 年に 2,170 万トンを輸入した後減少し、2015 年の輸出量は 1,410 万トンであった(うち原 料炭は 1,250 万トン) 。輸出インフラを持たないモンゴルの輸出は、今後も中国の輸入需要に大きく 影響されることになる。 (百万トン) 25 21.7 20.2 20 16.6 19.2 17.3 14.1 15 その他石炭 10 一般炭 6.0 5 4.0 原料炭 0 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 (出所)TEX レポート(元データは中国海関統計)より作成 図 2.4.8 モンゴルの中国向け石炭輸出量の推移 (2) 政策 モンゴル政府は石炭輸出を増加させたい方針で、石炭輸出を規制するような政策はない。 ただし、石炭会社に課されている税金、ロイヤルティ等には以下がある。 - 99 - 輸出用石炭に対しロイヤルティの増額を検討している。 輸出税という名目ではないが、関税手続料(トン当たり 1,500 ツグルク)が徴収されてい る。 全ての企業にかけられる地方税等の税金のほかに炭鉱独自の税金があり、 石炭会社は売上 げの 4 割、収益の 6 割が税金として徴収されていると言われている。 未加工石炭(原炭)に高い輸出税を掛ける動きがある。 外資が炭鉱権益の 49%以上取得する場合は国家の承認が必要となる。 (3) 環境問題・住民反対 採掘作業に伴い発生する粉塵が隣接する地域で問題となっている。 未塗装道路におけるトラック輸送による粉塵および粉塵堆積による牧草地の裸地化が問題とな っており、地元住民が石炭開発および生産活動に反対しているケースがある。 モンゴル南部における環境保護に関し、地元政府が石炭の生産と輸送に制約を課す可能性があ る。 (4) 炭鉱開発 石炭市況の低迷(低価格)により石炭生産会社は厳しい経営が続いている。 また、多くのプロジェクトが財源を確保することが困難となっている。 豪州のコントラクターなどを使っており、採掘技術は先進国並みの炭鉱も多い。 採掘コストは安いが中国向けの石炭が国際市場に比べ安価に取引されており、収益が上がって いない。このため選炭による高付加価値化を進めている。しかし、選炭のための水資源が限ら れているといった課題を抱えている。 ここ数年で生産コストが急激に上昇している。 アジア市場に中国ルートで輸出する場合は、国際市場が 200 ドル/トン以上となる必要があると の試算がある。 (5) 輸送インフラ整備 輸出のほぼ全量が中国向けであるが、中国への輸出のための越境地点が少ない。 現状では、南ゴビで生産される石炭の中国との国境までの輸送手段はトラック輸送であるが、 中国向けに鉄道建設が進められており、運用が始まれば輸送コストの低減および輸出量の増加 が期待できる。 ロシア経由の輸送のためにタバントルゴイからモンゴル鉄道への鉄道建設も進められている。 モンゴル北部ではロシアに向けての鉄道建設が計画されている。 積出港に関しては、モンゴルは内陸国で海洋に面しておらず、港に直接アクセスする手段がな い。このため、アジア・太平洋市場へのアクセスはロシア経由もしくは中国経由となる。この ため内陸輸送コストが高い。 - 100 - 表 2.4.21 モンゴルの主要炭鉱の生産計画 炭鉱 ① Ukhaa Khudag (UHG) ② Baruun Naran (BN) ③ Ovoot Tolgoi 操業社 Mongolian Mining Corporation (MMC) Mongolian Mining Corporation (MMC) Southgobi Resources Limited カナダ 炭種 強粘結炭 一般炭 権益 県 強粘結炭 100% South Gobi 非微粘結炭 一般炭 100% South Gobi 100% South Gobi ④ Tavan Tolgoi Erdenes Tavan Tolgoi 強粘結炭 100% South Gobi ⑤ Tsankhi PJ Erdenes Tavan Tolgoi 強粘結炭 100% South Gobi ⑥ South Gobi PJ Guildford Coal Limited 豪州 (BNU) 強粘結炭 PCI炭 70% South Gobi ⑦ Nariin Sukhait Mongolian Alt Corp. (MAK) ⑧ Ovoot PJ Aspire Mining Limited 豪州 ⑧ Nuurstei PJ Ekhgovin Chuluu JV (ECJV) 強粘結炭 強粘結炭 ⑨ Khushuut PJ ⑩ Ulaan Ovoo ⑪ Unst Khudag 原料炭 Mongolian Mining Corporation 原料炭 (MMC) 一般炭 Prophency Development Corp. カナダ 一般炭 Banpu Public Company タイ 出炭開始 生産量 ・CHPP 500万トン×3基 ・生産量減 2008年4月 ・原炭306万トン/2013年 ・原炭156万トン/2014年 1967年 ・2015年以降900万トン/年の生産計画延期 ・West Tsankhiで小規模採掘実施中 2013年末 ・小規模採掘実施中 ・150万トン/2015年 政府承認 ・200万トン/2016年 政府承認 ・400万トン/2017年 計画 ・800万トン/2019年 計画 100% South Gobi 2007年12月 ・原炭528万トン/2011年 100% Khusvgul 2018年 ・Stage 1: 精炭500万トン/年 ・Stage 2: 精炭1,000万トン/年 60% Khuvsgul 100% Khovt 100% Selenge 80% Dundgobi 備考 2009年9月 ・原炭920万トン/2013年 ・原炭329万トン/2014年_1-6 2012年2月 ・原炭50万トン/2013年 ・UHGのCHPPで処理 ・中国輸出 ・2014年生産停止(コントラクター未払い) ・株式売却計画あり(全株式の20%は国民に配布) ・生産停止10/23まで停止 ・2014年12月に”Tsankhi Project”の国際入札が行われ、神華、住友商 事、モンゴルEnergy Resources LLCが優先交渉権を獲得。 ・神華プレスリリースによると、East Tsankhiも含まれている。 ・PJの一環としてBaruun Noyon Uul (BNU)炭鉱を操業中 ・2014年8月に中国へトライアル輸出(酒泉鋼鉄集団) ・策克(Ceke)までトラック輸送し選炭して貨車輸送 ・BNU-Shivee Khurenの石炭輸送道路が2013年12月に完成。2015年 以降増産計画。 ・Northern Railwayの建設認可 ・中国、日本、韓国に輸出意向 ・ECJVは将来権益を90%保有する権利を持つ ・ECJVの権益を下記が所有 Aspire Mining Limited 90% Noble Group Limited(香港) 10% ・現在Moron とErdenet間に舗装道路を建設中。 ・Nuurstei炭鉱の石炭はこの道路を利用しErdenetへ輸送され、鉄道輸 送に積換え。 ・Aspire はErdenetにストックヤードと石炭積込施設を建設する計画。 2010年10月 ・小規模採掘実施中も2012年10月に ・新疆に輸出 ・蒙古能源有限公司が推進 原料炭市場の低迷で生産停止中 ・一般炭ををロシアに輸出 2010年11月 12万トン/2013年 ・ロシアとの国境Zelturaまでの専用鉄道(17km)の石炭輸送専門道 路の建設認可 未定 1~2千万トンを計画 (出所)METI、 「平成 26 年度石油産業体制等調査研究(アジア・太平洋市場の石炭需給調査) 」 (元資料は JCOAL) より抜粋 モンゴル政府は 2014 年 8 月に鉱物を中国ルートで第 3 国に輸出するための協定を中国政府と 締結し、この協定は 2015 年 1 月にモンゴル閣議で了承されている。 また、ロシア経由の北朝鮮羅津港からの石炭輸出に期待しており、トライアル輸出も開始して いる。 なお、モンゴルと中国の軌条幅は異なっており、鉄道輸送でモンゴルと中国をつなぐ場合のネ ックとなる。 (6) 埋蔵量 モンゴルのほぼ全土に石炭資源が拡がっており、中央部から西部にかけて瀝青炭と亜瀝青炭が 賦存し、 なかでも南ゴビには強粘結炭が賦存し、 世界でも有数の原料炭賦存地域の一つである。 可採埋蔵量は 25.2 億トン(WEC の報告)であるが、推定資源量は 1,500 億トンあると言われ ており、探査が進めば可採埋蔵量の増加が見込める。 (7) その他 国内では、一般炭の需要が増加することが見込まれるが、需要量は生産量に比して少なく、輸 出への影響は小さい。 輸出のほぼ 100%が中国向けで、今後の石炭産業の発展は中国の長期的な輸入需要にかかって いる。アジア太平洋市場への石炭供給は、鉄道が整備されておらず、また自国に港湾を持たな いため難しい。 - 101 - 2.4.10 コロンビア 石炭資源はコロンビアの北から中部にかけて拡がっており、豊富な石炭資源を有している。大西洋 市場を中心に主に一般炭を輸出する。石炭メジャーや大手石炭会社が生産を行っており、トップ 2 社 で全生産量の 90%以上を占める。現状、輸出インフラ能力は需要を上回っている。なお、コロンビア では反政府組織によるテロ行為が発生するリスクを抱えている。 (1) 輸出 輸出量は 2014 年に 8,710 万トンと過去最高を記録したが、2015 年には主要な輸出先である欧州へ の輸出が減少し 7,450 万トンまで減少した。アジア向けは 53 万トンであった。なお、生産量は近年 8,500 万トン超で推移している。 (百万トン) 100 87.1 90 80 70 67.9 70.5 2009 2010 77.7 75.6 74.8 2011 2012 2013 74.7 61.1 60 50 40 30 20 10 0 2008 2014 2015 (出所)TEX レポート(元データはコロンビア貿易統計)より作成 図 2.4.9 コロンビアの石炭輸出量の推移 (2) 政策 石炭は、石油・天然ガスに次ぐ重要な輸出品であり、輸出を抑制するような規制はない。 輸出税はないが、輸出による総売り上げに対して1%の源泉徴収税が課せられる。 輸出を制限するような規制はないが、環境問題、人権重視を背景に規制が導入される可能性が ある。 (3) 環境問題・住民反対 調査の範囲では確認できなかったが、先進国と同様に反対運動は今後発生するものと思われる。 (4) 炭鉱開発 露天掘りが主流で、生産量の 90%以上が一般炭で大規模な露天掘り、原料炭は内陸部に位置す る坑内掘りで生産される。 現状においては、他の生産国に比して低コストである。 (5) 輸送インフラ整備 大手石炭会社では、需要増、生産能力の増強に対応して各社が鉄道、積出港の整備を行ってい る。 - 102 - 現状は能力が需要を上回っており問題はないが、今後の輸出拡大に向け鉄道・港湾の整備が必 要となる。 パナマ運河運用が 2016 年第 2 四半期から可能になるとの報道あり。 表 2.4.22 コロンビアの主要石炭積出港 港 出荷能力 保有/運営企業 拡張計画 (百万トン) Puerto Bolivar Cerrejon 35.0 40MT(2015-2016年) Puerto Drummmond Drummond 30.0 40MT(2015-2016年) Puerto Prodeco Glencore 15.5 Puerto Nuevo Glencore 21.0 2013年5月に新規開港 Rio Cordoba Colombian Natural Resources 7.5 12-15MT(2015-2016年) Puerto de Barranquilla Puerto de Barranquilla 3.4 4.1MT(2020年までに) Puerto de Cartagena Portuaria Regional de Cartagena 5.4 - Puerto de Buenaventura Portuaria Regional de Buenaventura S.A. 1.9 2.7MT(2020年までに) Puerto de Santa Marta Carbosan 5.9 - 2014年に閉港。 Puerto Nuevoへ移行 (出所)JOGMEC、 「米国シェールガス開発が米国及びコロンビアの石炭産業に与える影響調査並びに大西洋及びアジ アの石炭市場に与える影響調査」 、平成 25 年 3 月 (6) 埋蔵量 コロンビア北部から中央部にかけて石炭資源が賦存する。 発熱量 6,000kcal/kg 以上の石炭が多く賦存する。 確認埋蔵量は 64.2 億トン。 表 2.4.23 コロンビア炭田別石炭埋蔵量(2012 年) 県 確認埋蔵量 (百万トン) 比率(%) La Guajira 3,659.55 57.0 Cesar 1,724.23 26.9 377.96 5.9 Antioquia Antiguo Caldas 86.91 1.4 Valle del Cauca 40.45 0.6 Cundinamarca 220.14 3.4 Boyaca 151.32 2.4 55.11 0.9 Norte de Santander 102.90 1.6 合 計 6,418.57 100.0 Cordoba Norte de Antioquia Santander (出所)Boletín Estadístico de Minas y Energía 2008-2012 (7) その他 コロンビア国内の治安は改善されているが、依然として反政府組織によるテロ行為が発生する リスクを抱えている。例としては、2013 年 10 月の FARC(コロンビア最大の左翼武装組織) によるセレホン鉄道の爆破テロが発生している。 2013 年には 2 月にセレホン炭鉱で、7 月にはドラモンド炭鉱で、炭鉱労働者によるストライキ が発生している。 - 103 - 2016 年 3 月にもセレホン炭鉱でストライキ発生の動きがあったが、 賃金と諸手当の交渉が妥結 したことからストライキが回避された。 2.4.11 中国 中国の石炭輸出量は 2004 年をピークに減少し、2015 年の輸出量は 519 万トンまで減少している。 2004 年以降の国内需要の急増により国内需給が逼迫したことによるものである。また、現在は生産コ ストが高いためアジア・太平洋市場での競争力がなく、輸出量は低調のまま推移している。坑内掘り が 90%以上を占めるため、今後も競争力を持たないと考えられる。 石炭生産に伴う生態系破壊が問題となっており、政府は生産を抑制する方針を示している。輸送イ ンフラについては鉄道・港湾の能力向上が進められている。炭鉱開発・生産体制については、大型生 産基地に生産を集約し、中小炭鉱の閉鎖を進めている。 (1) 政策 石炭輸出事業は 4 社のみにが許可が与えられている (China National Coal Group Corporation、 China Minmetals Corporation、Shanxi Coal Import and Export Group Corporation、および Shenhua Group Corporation)。輸出量については、毎年、政府が各社の割当量を設定してい る。 輸出税:国内需要が急増した 2000 年代に輸出を抑制するために輸出税を導入したが、2015 年 1 月 1 日に輸出税を 10%から 3%へ減税した。 過剰生産能力を是正するために技術的に遅れている非効率な炭鉱の廃止を加速させている。中 小炭鉱の閉鎖、採算性のない炭鉱の閉鎖を進め、大型石炭生産基地を中心とした生産体制とす る。 省政府が課している税金、ロイヤルティ(採掘権/使用料) 、および山西省の石炭事業の持続可 能な発展のための基金などがあったが、資源税の見直しに伴い一部は廃止された。 2015 年 1 月から品質規制を開始している。 2000 年代に廃止した輸入税を 2014 年 10 月から再び導入した(一般炭 6%、原料炭 3%) 。 (2) 環境問題・住民反対 公害は政府と国民にとっての関心事となり、小規模な炭鉱は徐々に閉鎖に追い込まれている。 中央、西部地区では水資源が不足している。石炭採掘により地下水が失われ、環境破壊を引き 起こす可能性がある。このため、新規に開かれる炭鉱では、実際に稼働させる前に環境影響の 分析が厳格に行われている。 気候変動に係る米国と中国の共同声明が 2014 年 11 月に出され、中国の CO2 排出量は 2030 年 頃をピークに減少させる方針を示した。 (3) 炭鉱開発 2003 年から 2012 年にかけて石炭市場が好調であった時期に、多くの企業がその生産能力を拡 大させた。しかし、近年の石炭市況の悪化(低価格)で数多くの企業が財務的に厳しい状況に ある。 内モンゴル自治区、山西省、陝西省、およびその他の地域に所在する石炭関連企業の資金上の - 104 - 問題で、数多くの炭鉱事業や炭鉱関連事業が中断または中止に追い込まれている。 坑内掘りが多く、かつ保安(安全)上の問題がある。 炭鉱のおよそ 90%が坑内掘りで、中国における炭鉱の平均深度はおよそ 400 メートルで、中国 東部では平均深度がすでに 600 メートルを超えている。 14 の石炭生産拠点を既に形成し、さらに生産拠点を増やす予定で、これらをベースにした生産 体制の構築を進めている。 2020 年までにこれら生産拠点で総生産量の95%を賄う計画である。 中国は、過剰生産能力を是正するために技術的に遅れている生産設備の廃止を加速させている。 また、保安上問題のある炭鉱の閉鎖を進めている。 中国東部の炭鉱は一般的に採掘深度が深いため、生産コストは高くなっている(約 60~70 米 ドル/トン) 。これらの炭鉱は市場における競争力を失っているため、石炭を輸出することは不 可能である。 (4) 輸送インフラ整備 2015 年の鉄道輸送量は 26 億トン、鉄道輸送能力は約 30 億トンと見られており、輸送需要を 満たすことができると考えられる。 2015 年の積出量は 7.5 億トン、計画されている処理能力は 8.3 億トンであり、輸送需要を満た すことができると考えられる。 (5) 埋蔵量 WEC の報告によれば確認可採埋蔵量は 1,145 億トン。 中国の報告によれば、総資源量は 5.90 兆トン、うち 2.02 兆トンが確認されている。 山東省西部や河北省中部など、中国東部のいくつかの石炭生産拠点では、将来的に資源が枯渇 する見通しである。 原料炭は山西省を中心に産出される。 (6) その他 消費量の総量規制により、北京市、天津市、河北省、および山東省での石炭消費量は、2012 年 と比較して 1 億トン減少することになる。また、長江デルタと珠江デルタにおける石炭の消費 量も減少する。 中国は、国内に大きな石炭市場を抱えている。高品質の石炭の輸入と外国における石炭関連の 開発事業を推進することで、国内と国外の市場の両方を十分に活用することになる。 中国は、石炭の液化、石炭のガス化、および石炭のオレフィン化を実証するプロジェクトを推 進している。これが主に行われている場所は、新疆ウイグル自治区、内モンゴル自治区、陝西 省、山西省などである。 2.4.12 ニュージーランド ニュージーランドは原料炭の供給国である。IEA, “Coal Information”によると、2014 年の推定値 で 174 万トンの石炭を輸出し、うち 172 万トンが原料炭である。わが国も同国から毎年原料炭を輸入 しており、2015 年では第 9 位の原料炭輸入相手先である。日本は 2000 年代前半から半ばにかけて 100 万トン近い原料炭を同国から輸入していたが、2015 年の輸入量は 10 万トンまで減少した。 - 105 - (1) 輸出 石炭(原料炭)輸出は 2006 の 270 万トンをピークに減少し、2015 年の輸出量は 130 万トンであ った。 (千トン) 3,000 2,720 2,500 1,932 2,000 1,551 2,561 2,420 2,331 2,210 1,908 2,014 2,034 2,151 2,210 2,096 1,719 1,710 1,326 1,500 1,000 500 0 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 (出所)Ministry of Business, Innovation & Employment 公表データより作成 図 2.4.10 ニュージーランドの石炭輸出量の推移 (2) 政策 調査の範囲では、石炭の生産・輸出を抑制するような規制はなかった。 石炭探査、採掘には、国家鉱物法(1991 年制定) 、鉱物プログラム(石油以外)および国家鉱 物規則(石油以外の鉱物ロイヤルティ) (ともに 2013 年制定)などの法律が適用される。 ロイヤルティは、石炭の実質売上高の 2%(利益が 500 百万 NZ ドル未満) 、実施売上高の 2% または利益の 10%(利益が 500 百万 NZ ドル以上) 。 (3) 環境問題・反対運動 調査の範囲では確認できなかったが、炭鉱開発、操業では共通の問題(騒音、粉塵、水質汚 染など)があり、石炭会社はそれらに対応している。また、環境保護団体等の石炭開発・操業 への反対運動もあると思われる。 資源管理法(Resource Management Act 1991)があり、環境に関連する事項については、同 法に従い許可取得が義務図けられている。 (4) 炭鉱開発 国有企業の Solid Energy New Zealand が生産量の 8 割以上を占めていた。なお、現在は石炭 市況の低迷によりその他の石炭会社は生産を中止しており、Solid Energy New Zealand のみ が生産を継続している。 Solid Energy New Zealand では、売上げ不振から当面の新規炭鉱開発計画はない。 今後の原料炭市況次第であるが、新規開発は難しいと思われる。 (5) 輸送インフラ整備 原料炭を生産する炭鉱は南島の西海岸北部に位置し、積出港の Lyttelton 港は南島の東海岸に - 106 - 位置する。炭鉱と積出港は鉄道接続され、輸送距離は 250km~400km である。 鉄道は単線・非電化。一列車当たりの輸送量は約 1,600 トンと低い。 これまでの最高輸出量は 2006 年の 272 万トンで、2006 年に約 290 万トンの輸送実績がある。 Lyttelton 港での石炭取り扱いは 1976 年に開始。貯炭能力は 33.5 万トン、積込能力は 500~ 1,650 トン/時、最大受入船型はパナマックスである。 鉄道、積出港ともに、これまでの年間取扱量(300 万トン以下)からみて、能力的には十分で あると判断される。 (6) 埋蔵量・炭質 炭田は北島と南島の両島にあり、褐炭から瀝青炭までが賦存する。資源量は 150 億トン以上、 その半分以上が可採資源量である。 最も資源量が多いのは褐炭で南島の Southland 地方と Central Otago 地方に賦存する。次いで 亜瀝青炭が多く、北島、南島の両島に賦存する。 高品質瀝青炭の資源量は量的に少ないが、主に南島の West Coast に賦存する。 (以上は Ministry of Business, Innovation & Employment ホームページより) 一方、World Energy Council の報告では、確認可採埋蔵量は 5 億 5,100 万トン、うち瀝青炭(無 煙炭を含む)は 3,300 万トン、亜瀝青炭は 2 億 500 万トン、褐炭は 3 億 3,300 万トンとなって いる。瀝青炭の可採埋蔵量は 5.8%と少ない。 Solid Energy の原料炭炭鉱の資源量と埋蔵量は表 2.4.24 のとおりである。 表 2.4.24 Solid Energy の石炭保有埋蔵量(2015 年 6 月 30 日現在) (百万トン) 資源量 Buller Grey 埋蔵量 確定 0.7 推定 14.2 予想 9 SSCC 0.9 14.5 Thermal 0.6 4.6 計 Specialist 2.2 HCC/SHCC HCC/SHCC SSCC 確定 0.5 推定 2.7 予想 3.2 31 0.7 2.2 2.9 4 0.7 5.9 4.0 33.3 43.2 2.0 10.8 10.2 3.5 5.0 8 1.1 11.5 8.8 30 Thermal 0.0 0.0 29 計 15.0 13.7 17.1 47.0 合計 2.0 0.0 0.4 66.9 2.0 0.0 1.8 110.1 3.9 10.8 12.0 0.4 (出所)Solid Energy, “Annual Report 2015” (7) その他 石炭国内需要は、2000 年代後半に 300 万トンを上回った時期があったが、ここ数年は 280 万 トン~290 万トンである。今後、微減した後、ほぼ横ばいで推移すると予測されている 22。 22 日本エネルギー経済研究所、 「アジア/世界エネルギーアウトルック 2015」より - 107 - 2.5 石炭供給国にける供給リスク分析 上記「2.4」で取り上げた各供給国における石炭生産・輸出に影響を及ぼす要因に基づき、我が国へ の石炭安定供給と言う観点から国別に供給リスクを評価する。供給リスク評価については、我が国の 最大の相手国である豪州の評価結果を基準に、各国を比較することで行い、供給リスク(安定供給を 阻害する要因)結果は基本的に「大」 、 「中」 、 「小」の 3 段階で示し、微妙な差がある場合は「小中」 および「中大」を用いた。 評価項目は「2.4」で取り上げた「政策(生産・輸出に関わる規制等) 」 、 「環境問題(環境規制、反 対運動) 」 、 「国内需要(その影響) 」 、 「輸送インフラ整備」 、 「炭鉱開発(インフラ開発を含む) 」 、 「埋蔵 量」 、 「炭質」 、 「海上輸送(我が国までの距離) 」 、 「その他(自然災害、ストライキ等) 」の 9 項目であ る。 また、炭種毎の評価対象国は以下の通りである。 一般炭供給国: 豪州、インドネシア、ロシア、カナダ、米国、南アフリカ、コロンビア、中国 原料炭供給国: 豪州、カナダ、米国、ロシア、モザンビーク、モンゴル、インドネシア、ニュージーランド、中 国 無煙炭供給国: ロシア、豪州、ベトナム、中国 2.5.1 供給国別評価(一般炭) (1) 豪州 我が国の最大の一般炭輸入相手国で、2015 年の一般炭輸入量の 76.3%を占める。インドネシアの 輸出減少により、近い将来に世界最大の一般炭輸出国に返り咲くことが見込まれ、我が国にとっても 最も重要な輸入相手国である。 (政策) 輸出を制限するような規制はない。 (埋蔵量・炭質) NSW 州が世界最大の高品位一般炭の供給地域。高発熱量一般炭の埋蔵量が豊富で、大規模増 産が可能。 QLD 州のボーエン炭田でも一般炭埋蔵量が豊富で増産可能。 QLD 州のガリリー炭田、スラット炭田に豊富な埋蔵量が賦存。ただし、炭質は若干落ちる。ガ リリー炭田は一般的に発熱量が低い、スラット炭田は HGI が低い。 (輸送インフラ整備) 輸送インフラは整備され、需要に合わせた拡張が可能。ただし、QLD 州のガリリー炭田とスラ ット炭田の開発には鉄道・港湾インフラの整備・建設が必要。 (炭鉱開発) 石炭メジャーを始め大手資源、豪州石炭会社が操業し、多くの開発プロジェクトがある。 石炭市況の低迷から多くの開発プロジェクトが遅延し、また炭鉱が休山または閉山している。 石炭市況が回復すれば休山中の炭鉱からの生産が開始される。 - 108 - (環境問題・住民反対) 現状においても発生している。今後も環境問題・住民反対により開発プロジェクトの認可の遅 れがあり得る。 (内陸輸送) ハンターバレー炭田中心部と積み出し港の距離は 150km 程度で鉄道輸送は低コスト。 (海上輸送) 我が国への輸送距離は中距離。ニューキャッスルから京浜地区までの距離は 4,300 海里。 (自然災害等) 豪雨、暴風雨などが供給に影響を及ぼす。2008 年初めと 2010 年 10 月から 2011 年初めまでの 継続的な豪雨は甚大な被害を与えた。 (国内需要) 今後、減少する。 豪州 政策 自然災害 等 大 環境問題 中 小 海上輸送 国内需要 輸送インフ ラ整備 炭質 埋蔵量 炭鉱開発 (出所) 日本エネルギー経済研究所 図 2.5.1 石炭供給リスク(豪州、一般炭) (2) インドネシア 我が国 2 番目の一般炭輸入相手国で、2015 年の一般炭輸入量の 11.0%を占める。発熱量は豪州炭 に劣るが、低硫黄、低灰分の石炭が生産される。海上輸送距離も豪州より短い。しかし、生産抑制策 が打ち出されており、国内需要の増加に伴い輸出量は減少する見通しである。 (政策) 資源保護の観点から政策的に生産量の上限を設定。 国内需要拡大にともない、輸出量は漸減が見込まれる。 (国内供給義務) 現状石炭には適用されていないが、高付加価値化(低品位炭の輸出禁止) 、輸出税の導入の可能 性がある。 (埋蔵量・炭質) 埋蔵量はカリマンタン、スマトラに賦存するが、発熱量の低い亜瀝青炭・褐炭が多い。瀝青炭 は主にカリマンタンに賦存。 (輸送インフラ整備) 一部炭鉱を除いて、バージ輸送が主で、バージ輸送システムは確立している。 大手石炭会社のいくつかは自社の石炭ターミナルを所有している。 - 109 - (炭鉱開発) 外資による開発により順調に石炭産業は成長。条件のよいところから開発されている。今後は 生産量の総量規制もあり、大規模開発は困難と思われる。 (環境問題・住民反対) 炭鉱排水、騒音、振動、および道路の陥没などの環境問題、またそれらを対象とした反対運動 がある。 (内陸輸送) 内陸の炭鉱は河川輸送を利用するが、マハカム川、バリトー川での河川輸送は能力的に限界に 来ている。 (海上輸送) 豪州よりは短距離。 タンジュンバラ(KPC の石炭ターミナル)から京浜地区までの距離は 2,910 海里。 (自然災害等) 豪雨や長雨(雨季の期間が長くなる)が供給に影響を及ぼす。 (国内需要) 発電用石炭需要を中心に国内需要が拡大するため、輸出は減少する。 インドネシア 政策 自然災害 等 大 環境問題 中 小 海上輸送 国内需要 輸送インフ ラ整備 炭質 埋蔵量 炭鉱開発 (出所) 日本エネルギー経済研究所 図 2.5.2 石炭供給リスク(インドネシア、一般炭) (3) ロシア 我が国 3 番目の一般炭輸入相手国で、2015 年の一般炭輸入量の 9.5%を占める。海上輸送距離は短 い。アジア市場向けの輸出拡大に力を入れている。世界では第 3 位の一般炭輸出国である。 (政策) 輸出を拡大する方針で、輸出を制限するような規制はない。 ウクライナ問題など現状の動きを考えると、 政策的リスクは高く、 動向を注視する必要がある。 (埋蔵量・炭質) 埋蔵量は豊富で大規模開発が可能。 ただし、幹線鉄道沿いは既に開発されている。 (輸送インフラ整備) 、 (炭鉱開発) 鉄道整備、港湾建設・拡張計画が計画通り進まない可能性大(バム鉄道) 。 - 110 - 低価格、現状のロシアの金融市場の状況では新規プロジェクトへの投資は困難、海外からの融 資も難しい。 (環境問題・住民反対) 石炭産業は地域の重要な産業であり、現状では大きな問題はないが、今後は先進国と同様に発 生する可能性あり。 (内陸輸送) サハリンを除くと、主要な地域からの内陸輸送距離が長く(3,500~6,000km 以上) 、輸送コス トが高い。 (海上輸送) 我が国への海上輸送距離は短距離。ボストチヌイ港から京浜地区までは 915 海里。 (自然災害等) 冬季の気象条件が厳しいことが原因でトラブルが起こる可能性がある。 ワニノ港、ムチカ湾は流氷の影響を受ける。 (国内需要) 石炭発展プログラムによれば、国内需要は増加する見通しとなっている。ロシアは地域によっ てはカザフスタンなどから輸入をしているが、基本的に国内炭で需要を賄えるため問題はない。 ロシア 政策 自然災害 等 大 環境問題 中 小 海上輸送 国内需要 輸送インフ ラ整備 炭質 埋蔵量 炭鉱開発 (出所) 日本エネルギー経済研究所 図 2.5.3 石炭供給リスク(ロシア、一般炭) (4) カナダ 我が国 4 番目の一般炭輸入相手国で、2015 年の一般炭輸入量の 1.6%を占める。輸入量はここ数年 微減している。海上輸送距離は豪州と同程度である。 (政策) 輸出を拡大する方針で、輸出を制限するような規制はない。 (埋蔵量・炭質) 原料炭の埋蔵量が主で、良質な一般炭がブリティッシュコロンビア州に賦存する。 (輸送インフラ整備) 輸送インフラは整備されており、輸出需要の減少から輸送能力は余っている。 (炭鉱開発) 採掘条件は豪州に比して悪く、生産コスト高。石炭価格が低ければ開発は困難。 炭鉱規模は最大数百万トン。 - 111 - (環境問題・住民反対) 石炭産業に対する反対運動がある。 (内陸輸送) 炭鉱により異なるが、内陸の場合は内陸輸送距離が長く、輸送コストが高い。 (海上輸送) 我が国への輸送距離は中距離。豪州とほぼ同じ。バンクーバーから京浜地区まで 4,290 海里。 (自然災害) 過去に大雪により鉄道輸送に影響が出た例がある。 (国内需要) 温暖化対策から国内需要は減少傾向にある。 カナダ 政策 自然災害 等 大 環境問題 中 小 海上輸送 国内需要 輸送インフ ラ整備 炭質 埋蔵量 炭鉱開発 (出所) 日本エネルギー経済研究所 図 2.5.4 石炭供給リスク(カナダ、一般炭) (5) 米国 我が国 5 番目の一般炭輸入相手国で、2015 年の一般炭輸入量の 1.1%を占める。輸入量はここ数年 微減している。 (政策) 輸出を制限するような規制はない。 石炭生産に対する環境規制が生産の制限に繋がる可能性がある。 内務省が石炭開発改革案を発表した。内容は今後 3 年間連邦領における新規石炭開発鉱区リー スの停止と鉱区リース手続およびロイヤルティの策定などである。 (埋蔵量・炭質) 豊富な石炭埋蔵量を有する。 地理的位置(海上輸送を考慮すれば)からみて、我が国やアジア向けにはパウダーリバー炭田 からの輸出が主となる。 パウダーリバー炭田には埋蔵量は豊富であるが、炭質は亜瀝青炭。 (輸送インフラ整備) 西海岸での港湾建設、鉄道輸送は環境団体等の反対から難しい状況。2012 年時点で 6 プロジェ クトがあったが、現状では 2 プロジェクトが継続されている。輸出の大幅な拡大はこれらの建 設とアジアの需要増にかかっている。 (炭鉱開発) パウダーリバーの場合、生産コストは極めて低い。 - 112 - 炭鉱規模は数千万トン以上の大規模炭鉱。 低価格を受けて、開発プロジェクトは先送りまたは中止となっている。 (環境問題・住民反対) 港湾建設、鉄道輸送に対する環境団体等の激しい反対運動がある。 (内陸輸送) パウダーリバーの場合、内陸輸送が長く(1,400km 以上)高コストとなる。 (海上輸送) 我が国への輸送距離は中距離。ワシントン州の計画中ターミナルであれば、輸送距離はバンク ーバーより若干長くなる程度。 (自然災害) メキシコ湾、東海岸ではハリケーンの影響やミシシッピー川での洪水がある。 (国内需要) 今後減少する。 米国(Powder River)政策 自然災害 等 大 環境問題 中 小 海上輸送 国内需要 輸送インフ ラ整備 炭質 埋蔵量 炭鉱開発 (出所) 日本エネルギー経済研究所 図 2.5.5 石炭供給リスク(米国、一般炭) (6) 南アフリカ 南アフリカは世界第 5 位の一般炭輸出国である。輸出量のうちアジア向けが半分以上を占める。こ こ数年の輸出量はほぼ横ばいである。我が国は数十万トンの南アフリカ炭を輸入していたが、2015 年は 8 万トンに減少した。 (政策) 輸出を制限するような規制はない。 (埋蔵量・炭質) 埋蔵量は豊富で大規模開発が可能であるが、炭質低下が見られる。 これまでの開発エリアでの埋蔵量の減少から、ジンバブエとの国境に近い Waterberg での開発 を進める必要がある。 (輸送インフラ整備) 現状は需要に見合った整備がなされている。 リチャーズ・ベイ石炭ターミナル能力 9,100 万トン /年、実績 7,000 万トン台。 Waterberg 地区での炭鉱開発が進めば、これに伴う鉄道整備が必要。 (炭鉱開発) これまでの開発エリアの埋蔵量が減少していることから、Waterberg での開発が進められる。 - 113 - 輸出用炭鉱の開発が進まなければ、輸出は 9,000 万トン台で頭打ちといわれている。 (環境問題・住民反対) 環境問題、環境団体による反対運動あり。 (内陸輸送) 現在生産の中心地域まで 500km 以下、将来 Waterberg に生産の中心が移ると輸送距離が倍に なる。 (海上輸送) 我が国への輸送距離は長距離。リチャーズベイから京浜地区まで 7,734 海里。 (自然災害等) 調査の範囲では事例は見あたらなかった。 (国内需要) IEA の見通しでは Current Policies Scenario で微増、New Policy Scenario で微減予測してい る。 生産が頭打ちになると見通されており、輸出も 2020 年代半ばをピークに減少する可能性が高 い。 南アフリカ 政策 自然災害 等 大 環境問題 中 小 海上輸送 国内需要 輸送インフ ラ整備 炭質 埋蔵量 炭鉱開発 (出所) 日本エネルギー経済研究所 図 2.5.6 石炭供給リスク(南アフリカ、一般炭) (7) コロンビア コロンビアは世界第 4 位の一般炭輸出国であるが、主要な輸出先は欧州市場である。我が国では 2011 年に 20 万トンを輸入した実績があるが、その後漸減して 2015 年の輸入量はゼロであった。 (政策) 輸出を制限するような規制はないが、環境問題、人権重視を背景に規制が導入される可能性が ある。 政府が Drummond 社に対し Drummond 港からの輸出停止を命じ、2014 年 1 月中旬から 3 月 末まで輸出が停止した事例がある。 また、テロ行為が発生するリスクがある。例としては、2013 年 10 月の FARC によるセレホン 鉄道の爆破テロが発生している。 (埋蔵量・炭質) 埋蔵量は豊富で大規模開発が可能である。 発熱量 6,000kcal/kg 以上の石炭が多く賦存する。 - 114 - (輸送インフラ整備) 需要増、生産能力の増強に対応して各社が整備を行っている。 現状問題はないが、今後の輸出拡大に向けた鉄道・港湾の整備遅れが懸念される。 (炭鉱開発) 石炭メジャー3 社と Drummond 社で生産量の 85%前後を占め、現状においては他の生産国に 比して低コストである。 (環境問題・住民反対) 調査では確認できなかったが、環境問題や反対運動は発生する可能性あり。 (内陸輸送) 比較的短い。 (海上輸送) 我が国への輸送距離は長距離。 (自然災害等) 調査の範囲では事例が見あたらなかった。 (国内需要) 400 万トン程度推移している。今後も大きな増加は見込まれない。 コロンビア 政策 自然災害 等 大 環境問題 中 小 海上輸送 国内需要 輸送インフ ラ整備 炭質 埋蔵量 炭鉱開発 (出所) 日本エネルギー経済研究所 図 2.5.7 石炭供給リスク(コロンビア、一般炭) (8) 中国 中国の一般炭輸出量は 2004 年をピークに 2015 年には 120 万トンまで減少した。我が国は 2005 年 に中国から 1,630 万トンの一般炭を輸入したが、中国の輸出量の減少に伴い輸入量は大きく減少し、 2015 年の輸入量は 53 万トンとなった。近距離ソースとしては重要な輸入相手国である。 (政策) 現状は輸出税を 10%から 3%に下げ、輸出を促進する政策をとっていると言える。しかし、今 後の国内需給状況に応じて、方向性は変わる可能性がある。 輸出は輸出権利を持つ会社(4 社)に限られ、それぞれの会社に年間割当量が定められる。 省レベルで課している税金やロイヤルティ、持続可能な発展のための基金など、複数の徴収が なされている。これらのうち一部は廃止となっている。 (埋蔵量・炭質) 埋蔵量は豊富であると言えるが、生産量が 40 億トン近くと多く、R/P 比は高くない。 - 115 - 炭質は、高品位原料炭から褐炭までが賦存する。一般炭質の石炭は全国にあるが、主生産地は 山西省、陝西省、内蒙古など。山東省は枯渇に近づいていると言われている。 南部の地域の石炭は硫黄分が高い。 (輸送インフラ整備) 過去、鉄道能力がネックと言われていたが、鉄道・港湾ともに増強が図られ、需要に見合った 状況になっている。 2015 年での鉄道輸送需要見込み 26 億トンに対し、鉄道輸送能力は 30 億トン。港湾での取扱 量見込み 7.5 億トンに対し計画処理能力は 8.3 億トンであった。 需要が減少している現状においては、問題がないと判断できる。 (炭鉱開発) 価格低迷から企業は財務的に厳しい状況。数多くの炭鉱が閉山。 坑内掘が 90%以上でコストが割高。深度も平均 400m、東部では 600m 超。 現状の国際価格ではコスト高から輸出は難しい。 (環境問題・住民反対) 小型炭鉱を中心に環境規制に対応できない炭鉱は閉山に追い込まれている。 水資源不足地域である西部や中央部では地下水が失われ、 環境破壊を引き起こす可能性がある。 新規炭鉱に対しては、環境評価が厳しくなってきている。 (内陸輸送) 山東省など沿岸地域は港湾まで近いが、主力産炭地である山西省、陝西省、内蒙古自治区から は 500km 以上の鉄道輸送が必要となる。 (海上輸送) 我が国への輸送距離は短距離。一番遠い京浜地区までは秦皇島から 1,300 海里、日照港から 1,130 海里。 (自然災害等) 過去に大雪で輸送ができなかった事例がある。需要が旺盛な時期で、カナダでも大雪で鉄道が とまり、価格の高騰に繋がった事例がある。 (国内需要) これまでのような増加はなく、一般炭は増加しても微増。2020 年代から減少の予測が多い。既 にピークを打ったとの意見もある。原料炭は既にピークを打ったという意見が圧倒的。 中国 政策 自然災害 等 大 環境問題 中 小 海上輸送 国内需要 輸送インフ ラ整備 炭質 埋蔵量 炭鉱開発 (出所) 日本エネルギー経済研究所 図 2.5.8 石炭供給リスク(中国、一般炭) - 116 - 2.5.2 供給国別評価(原料炭) (1) 豪州 我が国の最大の原料炭輸入相手国で、2015 年の原料炭輸入量の 50.1%を占める。最も重要な輸入 相手国である。 (政策) 輸出を制限するような規制はない。 (埋蔵量・炭質) QLD 州ボーエン炭田が世界最大の原料炭供給地域で、強粘結炭の埋蔵量豊富。大規模増産が可 能。 NSW 州からは非微粘結炭、PCI 炭が出荷可能。 需要に合わせた開発が可能。 (輸送インフラ整備) 輸送インフラは整備され、需要に合わせた拡張が可能。 (炭鉱開発) 石炭メジャーを始め大手資源、豪州石炭会社が操業し、多くの開発プロジェクトがある。 石炭市況の低迷から多くの開発プロジェクトが遅延し、また炭鉱が休山または閉山している。 石炭市況が回復すれば休山中の炭鉱からの生産が開始しされる。 (環境問題・住民反対) 現状においても発生している。今後も環境問題・住民反対により開発プロジェクトの認可の遅 れがあり得る。 (内陸輸送) ボーエン炭田中心部と積み出し港の距離は 150km 程度で鉄道輸送は低コスト。 (海上輸送) 我が国への輸送距離は中距離。ヘイポイントから京浜地区までの距離は 3,670 海里。 (自然災害等) 豪雨、暴風雨などが供給に影響を及ぼす。2008 年初めと 2010 年 10 月から 2011 年初めまでの 継続的な豪雨は QLD 州に甚大な被害を与えた。 (国内需要) 需要はほとんどない。 豪州 政策 自然災害 等 大 環境問題 中 小 海上輸送 国内需要 輸送インフ ラ整備 炭質 埋蔵量 炭鉱開発 (出所) 日本エネルギー経済研究所 図 2.5.9 石炭供給リスク(豪州、原料炭) - 117 - (2) カナダ 我が国 3 番目の原料炭輸入相手国で、2015 年の原料炭輸入量の 8.8%を占める。海上輸送距離は豪 州と同程度である。強粘結炭が生産されるが、価格の低迷で多くの炭鉱が生産を中止している。 (政策) 輸出を拡大する方針で、輸出を制限するような規制はない。 (埋蔵量・炭質) 原料炭の埋蔵量が主。良質一般炭の埋蔵もある。 高品質の原料炭(強粘結炭)はブリティッシュコロンビア州に賦存。 (輸送インフラ整備) 輸送インフラは整備されており、需要に合わせた拡張可能。 内陸輸送が長く(1,000km 以上) 、コスト高。 (炭鉱開発) 操業条件は豪州に比して悪く、生産コスト高。 石炭価格が低迷すれば開発は困難となる。 炭鉱規模は最大数百万トン。 (環境問題・住民反対) 石炭産業に対する反対運動がある。 (内陸輸送) 内陸輸送が長く(1,000km 以上) 、コスト高。 (海上輸送) 我が国への輸送距離は中距離。豪州とほぼ同じ。我が国への輸送距離は中距離。豪州とほぼ同 じ。バンクーバーから京浜地区まで 4,290 海里。 (自然災害) 過去に大雪により鉄道輸送に影響が出た例がある。 (国内需要) 国内需要は減少傾向にある。 カナダ 政策 自然災害 等 大 環境問題 中 小 海上輸送 国内需要 輸送インフ ラ整備 炭質 埋蔵量 炭鉱開発 (出所) 日本エネルギー経済研究所 図 2.5.10 石炭供給リスク(カナダ、原料炭) - 118 - (3) 米国 我が国 4 番目の原料炭輸入相手国で、2015 年の原料炭輸入量の 6.6%を占める。輸入量はここ数年 ほぼ横ばいで推移している。世界では第 2 位の原料炭輸出国である。 (政策) 輸出を制限するような規制はない。 現状の環境規制などが生産に制限に繋がる可能性がある。 内務省が石炭開発改革案を発表した。内容は今後 3 年間連邦領における新規石炭開発鉱区リー スの停止と鉱区リース手続およびロイヤルティの策定などである。 (埋蔵量・炭質) 豊富な石炭埋蔵量を有する。 強粘結炭は主にアパラチアに賦存する。 (輸送インフラ整備) 輸送インフラは整備されており、拡張計画もあり需要に合わせた拡張が可能。 (炭鉱開発) 坑内掘炭鉱が多く、生産性は低く、生産コストは高い。 スイングプロデューサー的小規模生産者が多く、こうした炭鉱が集まって石炭コンプレックス を形成している。価格上昇により増産可能か。 低価格を受けて、開発プロジェクトは先送りまたは中止となっている。 (環境問題・住民反対) 港湾建設、鉄道輸送に対する環境団体等の激しい反対運動がある。 (内陸輸送) 東海岸の積出港まで内陸輸送距離は短い。 (海上輸送) 我が国への輸送距離は長距離。ハンプトンローズから京浜地区まで 9,546 海里。 (自然災害) メキシコ湾、東海岸ではハリケーンの影響やミシシッピー川での洪水がある。 (国内需要) 今後微減する。 米国 政策 自然災害 等 大 環境問題 中 小 海上輸送 国内需要 輸送インフ ラ整備 炭質 埋蔵量 炭鉱開発 (出所) 日本エネルギー経済研究所 図 2.5.11 石炭供給リスク(米国、原料炭) - 119 - (4) ロシア 我が国 5 番目の原料炭輸入相手国で、2015 年の原料炭輸入量の 4.9%を占める。海上輸送距離は短 い。強粘結炭が賦存する。アジア市場向けの輸出拡大に力を入れている。世界では第 4 位の原料炭輸 出国である。 (政策) 輸出を拡大する方針で、輸出を制限するような規制はない。 ウクライナ問題など現状の動きを考えると、 政策的リスクは高く、 動向を注視する必要がある。 (埋蔵量・炭質) 埋蔵量は豊富で大規模開発が可能。 高品質の原料炭(強粘結炭)はクズバス炭田、南ヤクーチャ炭田等に賦存。 (輸送インフラ整備) 、 (炭鉱開発) 鉄道整備、港湾建設・拡張計画が計画通り進まない可能性大。 低価格、現状のロシアの金融市場の状況では新規プロジェクトへの投資は困難、海外からの融 資も難しい。 (環境問題・住民反対) 石炭産業は地域の重要な産業であり、現状では大きな問題はないが、今後は豪州等と同様に発 生する可能性あり。 (内陸輸送) 主要な地域からの内陸輸送距離が長く(2,000~6,000km 以上) 、輸送コストが高い。 (海上輸送) 我が国への海上輸送距離は短距離。ボストチヌイ港から京浜地区までは 915 海里。 (自然災害等) 冬季の気象条件が厳しいことが原因でトラブルが起こる可能性がある。 ワニノ港、ムチカ湾は流氷の影響を受ける。 (国内需要) 石炭発展プログラムによれば、国内需要は横這いで推移する。 ロシア 政策 自然災害 等 大 環境問題 中 小 海上輸送 国内需要 輸送インフ ラ整備 炭質 埋蔵量 炭鉱開発 (出所) 日本エネルギー経済研究所 図 2.5.12 石炭供給リスク(ロシア、原料炭) - 120 - (5) モザンビーク 世界第 7 位の原料炭輸出国で 2011 年より原料炭の輸出を開始した。 我が国は 2012 年から輸入を開 始し、2015 年は 34 万トンを輸入した。海上輸送距離は長いが、強粘結炭が賦存している。 (政策) 輸出を制限するような規制はない。 新鉱業法が 2014 年 8 月に施行されたばかり。 (埋蔵量・炭質) Tete 州のザンベゼ堆積盆に良質の原料炭が賦存する。 開発が開始されたばかりで、探査中。 強粘結炭質の石炭が賦存するが、灰分が高くかつ可選性が悪く、生産コストが割高。 (輸送インフラ整備) 、 (炭鉱開発) 港までの輸送距離が 600km~900km と長く、深水港湾がないことから、石炭開発に必要な輸 送インフラへの投資が大きいため FOB コストが高く、 現状の価格では開発が困難と思われる。 輸送インフラでは生産地の Tete から積出港の Nacala までの鉄道が 2014 年 12 月に開通。 現在 は鉄道と石炭ターミナル開発の第 1 ステージ完成し、 年間 1,100 万トンの能力を有する。 今後、 第 2 ステージで年間 2,200 万トンに拡張する計画である。 他ルートでは Beira 港と接続する路線などの計画がある。Beira ルートでは現在年間 600 万ト ンの能力があり、今後、年間 1,200 万トン、将来は年間 2,000 万トンまで拡張する計画である。 Tete 州では Moatize 炭鉱の他、いくつかの炭鉱建設が進められているが、価格の低迷により遅 れや中止が懸念される。 (環境問題・住民反対) 石炭開発が初期の段階にあることからこれまでのところ大きな問題となっていない。 (内陸輸送) 上記の通り内陸輸送距離が長く、新規の鉄道と石炭ターミナルが必要で、コスト高となる。 (海上輸送) 我が国への海上輸送距離は長距離。 (自然災害等) 特に過去の事例は調査の範囲では見あたらない。 (国内需要) 原料炭の需要はない。共に生産される一般炭の需要もない。 モザンビーク 自然災害 等 政策 大 環境問題 中 小 海上輸送 国内需要 輸送インフ ラ整備 炭質 埋蔵量 炭鉱開発 (出所) 日本エネルギー経済研究所 図 2.5.13 石炭供給リスク(モザンビーク、原料炭) - 121 - (6) モンゴル モンゴルは世界第 5 位の原料炭輸出国である。輸出量のほとんどが中国向けで、我が国はモンゴル から原料炭を 2010 年に 6 万トン、2012 年に 5 万トン、2013 年に 3 万トン試験的に輸入したが、そ の後の輸入はない。 (政策) 政府は輸出を増加させたい方針であるが、多くの税が炭鉱に課せられている。ロイヤルティの 増額を検討中。 一部地域で生産・輸送に制約を課す可能性あり。 (埋蔵量・炭質) 南ゴビに強粘結炭が賦存する。 (輸送インフラ整備) モンゴルは内陸国で、港湾を保有しない。 鉄道インフラ整備の計画はあるが、遅れている。 モンゴルと中国の軌条幅は異なっている。 (炭鉱開発) 中国の輸入需要に頼るところが大。 生産コストは低いが、ここ数年急上昇している。 (環境問題・住民反対) 生産活動とトラック輸送による粉じん等が問題となっている。 (内陸輸送) 我が国を始めアジア市場へ石炭を出す場合は、中国経由もしくはロシア経由となる。 (海上輸送) 港に出れば我が国への海上輸送距離は短距離。 (自然災害等) 調査の範囲ではない。 (国内需要) 現状では石炭消費のほとんどが褐炭で、原料炭の消費量は数十万トン程度である。半コークス 製造プロジェクトがあるが、今後の需要はないと思われる。 モンゴル 政策 自然災害 等 大 環境問題 中 小 海上輸送 国内需要 輸送インフ ラ整備 炭質 埋蔵量 炭鉱開発 (出所) 日本エネルギー経済研究所 図 2.5.14 石炭供給リスク(モンゴル、原料炭) - 122 - (7) インドネシア 貿易統計上では我が国 2 番目の原料炭輸入相手国で、2015 年の原料炭輸入量の 28.3%を占める。 良質な原料炭は中央カリマンタンに賦存するが開発はこれらである。PCI 炭等が輸入されている。海 上輸送距離も豪州より短い。 (政策) 資源保護の観点から政策的に生産量の上限を設定。 国内需要拡大にともない、輸出量は漸減が見込まれる。 (国内供給義務) 現状石炭には適用されていないが、輸出税の導入の可能性がある。 (埋蔵量・炭質) 原料炭は主に中央カリマンタンに賦存する。 開発はこれからで詳細探査は進んでいない。 (輸送インフラ整備) 一部炭鉱を除いて、バージ輸送が主で、バージ輸送システムは確立している。しかし、河川輸 送は能力的に限界に来ている。 中央カリマンタンの原料炭開発には鉄道が必要になる。 (炭鉱開発) 外資による開発により石炭産業は成長。条件のよいところから開発されている。 新規開発は石炭市況、将来の原料炭需要による。 (環境問題・住民反対) これまで開発されてきた鉱区において、炭鉱排水、騒音、振動、および道路の陥没などの環境 問題、またそれらを対象とした反対運動がある。 (内陸輸送) 内陸の炭鉱は河川輸送を利用するが、マハカム川、バリトー川での河川輸送は能力的に限界に 来ている。 中央カリマンタンからの輸送には一年を通して河川輸送が利用できない。 (海上輸送) 豪州よりは短距離。 (自然災害等) 豪雨や長雨(雨季の期間が長くなる)が供給に影響を及ぼす。 (国内需要) 一貫製鉄所が生産を開始。拡張計画があるが需要量は少ない。 インドネシア 自然災害 等 政策 大 環境問題 中 小 海上輸送 国内需要 輸送インフ ラ整備 炭質 埋蔵量 炭鉱開発 (出所) 日本エネルギー経済研究所 図 2.5.15 石炭供給リスク(インドネシア、原料炭) - 123 - (8) ニュージーランド 石炭(原料炭)市況の低迷から輸出量は 130 万トンまで落ちているが、200 万~270 万トンの原料 炭をしていた。我が国もかつては 100 万トン近い原料炭を同国から輸入したが、2015 年の輸入量は 10 万トンにまで減少している。 (政策) 輸出を制限・抑制するような規制はない。 (埋蔵量・炭質) 埋蔵量は北島と南島の両島に賦存するが、発熱量の低い亜瀝青炭・褐炭が多い。 原料炭は主に南島の West Coast に賦存するが、量的には少ない。 WEC の報告では瀝青炭の確認可採埋蔵量は 3,300 万トン(全体の 5.8%) 。 (輸送インフラ整備) 、 (内陸輸送) 南島の西海岸北部に位置する原料炭炭鉱は、東海岸に位置する Lyttelton 港と鉄道で接続され ている。輸送距離は 250km~400km。 鉄道は単線・非電化。一列車当たりの輸送量は約 1,600 トンと低いが、過去年間 200 万~300 万トンの輸送実績がある。 Lyttelton 港では 1976 年から石炭を取り扱っており、 石炭積込設備が整備されている。 ただし、 最大受入船型はパナマックス(足切りベース)である。 鉄道、積出港ともに、これまでの年間取扱量(300 万トン以下)からみて、能力的には十分で あると判断される。 (炭鉱開発) 石炭市況の低迷を受け、現在は Solid Energy New Zealand のみが生産を継続。 新規開発は石炭市況による。埋蔵量やインフラ整備状況から判断して開発の規模は小さい。 (環境問題・住民反対) 調査では確認できなかったが、炭鉱開発、生産での共通の問題(騒音、粉塵、水質汚染など) に対しては、石炭会社が対応している。 (海上輸送) 豪州ニューキャッスル港より 900 海里ぼど長距離。 (自然災害等) 調査では事例は確認できなかった。 (国内需要) 消費量は少ない。横這いから微減で推移。 ニュージーランド 自然災害 等 政策 大 環境問題 中 小 海上輸送 国内需要 輸送インフ ラ整備 炭質 埋蔵量 炭鉱開発 (出所) 日本エネルギー経済研究所 図 2.5.16 石炭供給リスク(ニュージーランド、原料炭) - 124 - (9) 中国 中国の原料炭輸出量は 2002 年をピークに 2015 年には 150 万トンまで減少した。我が国は 2005 年 に中国から 570 万トンの一般炭を輸入したが、2015 年の輸入量はわずか 9 万トンであった。近距離 ソースとしては重要な輸入相手国である。 (政策) 現状は輸出税を 10%から 3%に下げ、輸出を促進する政策をとっていると言える。しかし、今 後の国内需給状況に応じで、方向性は変わる可能性がある。 輸出は輸出権利を持つ会社(4 社)に限られ、それぞれの会社に年間割当量が定められる。 省レベルで課している税金やロイヤルティ、持続可能な発展のための基金など、複数の徴収が なされている。これらのうち一部は廃止となっている。 (埋蔵量・炭質) 埋蔵量は豊富であると言えるが、生産量が 40 億トン近くと多く、R/P 比は高くない。 炭質は、高品位原料炭から褐炭までが賦存する。強粘結炭は山西省に多い。 (輸送インフラ整備) 過去、鉄道能力がネックと言われていたが、鉄道・港湾ともに増強が図られ、需要に見合った 状況になっている。 2015 年での鉄道輸送需要見込み 26 億トンに対し、鉄道輸送能力は 30 億トン。港湾での取扱 量見込み 7.5 億トンに対し計画処理能力は 8.3 億トンであった。 需要が減少している現状においては、問題がないと判断できる。 (炭鉱開発) 価格低迷から企業は財務的に厳しい状況。数多くの炭鉱が閉山。 坑内掘が 90%以上でコストが割高。深度も平均 400m、東部では 600m 超。 現状の国際価格ではコスト高から輸出は難しい。 (環境問題・住民反対) 小型炭鉱を中心に環境規制に対応できない炭鉱は閉山に追い込まれている。 水資源不足地域である西部や中央部では、地下水が失われ、環境破壊を引き起こす可能性があ る。 新規炭鉱に対しては、環境評価が厳しくなってきている。 (内陸輸送) 山東省など沿岸地域は港湾まで近いが、主力産炭地である山西省、陝西省、内蒙古自治区から は 400km 以上の鉄道輸送が必要となる。 (海上輸送) 我が国への輸送距離は短距離。一番遠い京浜地区までは秦皇島から 1,300 海里、日照港から 1,130 海里。 (自然災害等) 過去に大雪で輸送ができなかった事例がある。需要が旺盛な時期で、カナダでも大雪で鉄道が とまり、価格の高騰に繋がった事例がある。 (国内需要) 原料炭は既にピークを打ったという意見が圧倒的。 - 125 - 中国 政策 自然災害 等 大 環境問題 中 小 海上輸送 国内需要 輸送インフ ラ整備 炭質 埋蔵量 炭鉱開発 (出所) 日本エネルギー経済研究所 図 2.5.17 石炭供給リスク(中国、原料炭) 2.5.3 供給国別評価(無煙炭) (1) ロシア 我が国最大の無煙炭輸入相手国で、2015 年の無煙炭輸入量の 44.2%を占める。海上輸送距離は短 い。無煙炭から半無煙炭が賦存する。 (政策) 輸出を拡大する方針で、輸出を制限するような規制はない。 ウクライナ問題など現状の動きを考えると、 政策的リスクは高く、 動向を注視する必要がある。 (埋蔵量・炭質) 主にクズバス炭田に無煙炭、半無煙炭が賦存する。 (輸送インフラ整備) 、 (炭鉱開発) 鉄道整備、港湾建設・拡張計画が計画通り進まない可能性大。 低価格、現状のロシアの金融市場の状況では新規プロジェクトへの投資は困難、海外からの融 資も難しい。 (環境問題・住民反対) 石炭産業は地域の重要な産業であり、現状では大きな問題はないが、今後は豪州等と同様に発 生する可能性あり。 (内陸輸送) 主要な地域からの内陸輸送距離が長く(6,000km 以上) 、輸送コストが高い。 (海上輸送) 我が国への海上輸送距離は短距離。ボストチヌイ港から京浜地区までは 915 海里。 (自然災害等) 冬季の気象条件が厳しいことが原因でトラブルが起こる可能性がある。 ワニノ港、ムチカ湾は流氷の影響を受ける。 (国内需要) 無煙炭需要についての情報は得られていない。 - 126 - ロシア 政策 自然災害 等 大 環境問題 中 小 海上輸送 国内需要 輸送インフ ラ整備 炭質 炭鉱開発 埋蔵量 (出所) 日本エネルギー経済研究所 図 2.5.18 石炭供給リスク(ロシア、無煙炭) (2) 豪州 我が国 2 番目の無煙炭輸入相手国で、2015 年の無煙炭輸入量の 28.9%を占める。半無煙炭が輸入 されている。 (政策) 輸出を制限するような規制はない。 (埋蔵量・炭質) 低揮発分 PCI 炭が輸出可能。高品質の無煙炭の数量は少ない。 (輸送インフラ整備) 輸送インフラは整備され、需要に合わせた拡張が可能。 (炭鉱開発) 石炭メジャーを始め大手資源、豪州石炭会社が操業し、多くの開発プロジェクトがある。 石炭市況の低迷から多くの開発プロジェクトが遅延し、また炭鉱が休山または閉山している。 (環境問題・住民反対) 現状においても発生している。今後も環境問題・住民反対により開発プロジェクトの認可の遅 れがあり得る。 (内陸輸送) 内陸輸送距離は短い。 (海上輸送) 我が国への輸送距離は中距離。 (自然災害等) 豪雨、暴風雨などが供給に影響を及ぼす。2008 年初めと 2010 年 10 月から 2011 年初めまでの 継続的な豪雨は QLD 州に甚大な被害を与えた。 (国内需要) 需要はほとんどない。 - 127 - 豪州 政策 自然災害 等 大 環境問題 中 小 海上輸送 国内需要 輸送インフ ラ整備 炭質 埋蔵量 炭鉱開発 (出所) 日本エネルギー経済研究所 図 2.5.19 石炭供給リスク(豪州、無煙炭) (3) 中国 中国の無煙炭輸出量は 2004 年をピークに 2015 年には 300 万トンまで減少した。我が国 3 番目の 無煙炭輸入相手国で、2015 年の無煙炭輸入量の 16.8%を占める。 (政策) 現状は輸出税を 10%から 3%に下げ、輸出を促進する政策を取っていると言える。しかし、今 後の国内需給状況に応じで、方向性は変わる可能性がある。 輸出は輸出権利を持つ会社(4 社)に限られ、それぞれの会社に年間割当量が定められる。 省レベルで課している税金やロイヤルティ、持続可能な発展のための基金など、複数の徴収が なされている。これらのうち一部は廃止となっている。 (埋蔵量・炭質) 埋蔵量は豊富であると言えるが、生産量が 40 億トン近くと多く、R/P 比は高くない。 炭質は、高品位原料炭から褐炭までが賦存する。 (輸送インフラ整備) 過去、鉄道能力がネックと言われていたが、鉄道・港湾ともに増強が図られ、需要に見合った 状況になっている。 2015 年での鉄道輸送需要見込み 26 億トンに対し、鉄道輸送能力は 30 億トン。港湾での取扱 量見込み 7.5 億トンに対し計画処理能力は 8.3 億トンであった。 需要が減少している現状においては、問題がないと判断できる。 (炭鉱開発) 価格低迷から企業は財務的に厳しい状況。数多くの炭鉱が閉山。 坑内掘が 90%以上でコストが割高。深度も平均 400m、東部では 600m 超。 現状の国際価格ではコスト高から輸出は難しい。 (環境問題・住民反対) 小型炭鉱を中心に環境規制に対応できない炭鉱は閉山に追い込まれている。 水資源不足地域である西部や中央部では、地下水が失われ、環境破壊を引き起こす可能性があ る。 新規炭鉱に対しては、環境評価が厳しくなってきている。 (内陸輸送) 主に山西省と思われるが、詳細不明。 - 128 - (海上輸送) 我が国への輸送距離は短距離。一番遠い京浜地区までは秦皇島から 1,300 海里、日照港から 1,130 海里。 (自然災害等) 過去に大雪で輸送ができなかった事例がある。 (国内需要) 横這いから微減と思われるが詳細は不明。 中国 政策 自然災害 等 大 環境問題 中 小 海上輸送 国内需要 輸送インフ ラ整備 炭質 埋蔵量 炭鉱開発 (出所) 日本エネルギー経済研究所 図 2.5.20 石炭供給リスク(中国、無煙炭) (4) ベトナム 2005 年には我が国最大の無煙炭輸入相手国であったが、その後輸入量は減少し、2015 年では第 4 番目の輸入相手国であった。国内需要の高まりから輸出を抑制する政策を取っている。 (政策) 輸出は政府の許可に基づく。政府は輸出量を抑制する方針。 (埋蔵量・炭質) 北部に無煙炭が賦存する。 (輸送インフラ整備) 、 (炭鉱開発) 輸出用の港湾など輸送インフラ整備は、 これまでの輸出需要量に対応して整備がなされており、 現状において問題はない。 北部の石炭を中・南部の石炭消費地まで輸送するための港湾整備が不十分である。 北部炭田での開発は埋蔵量や環境問題から難しい。紅河デルタの開発(坑内掘り)の計画があ るが、開発は困難な模様である。 坑内掘りへの移行が進んでいる。 (環境問題・住民反対) VINACOMIN は、周辺住民の意見を聞きながら環境対策を徹底しており、これまで大きな問 題は発生していない。 環境団体等による大きな活動は行われていないが、これまでで唯一ハロン湾で反対運動があっ た。 (内陸輸送) 内陸輸送距離は短い。 - 129 - (海上輸送) 我が国への海上輸送距離は中距離。 (自然災害等) 雨の影響により採炭に影響を及ぼすことがある。 (国内需要) 石炭火力発電所の増加により需要は大きく増加する。北部では国内無煙炭を利用し、中南部で は輸入炭を利用するため、一般炭の輸入量が増加する。一方で、無煙炭の輸出量は減少してい る。 ベトナム 政策 自然災害 等 大 環境問題 中 小 海上輸送 国内需要 輸送インフ ラ整備 炭質 埋蔵量 炭鉱開発 (出所) 日本エネルギー経済研究所 図 2.5.21 石炭供給リスク(ベトナム、無煙炭) - 130 - 表 2.5.1 主要石炭供給国の石炭生産・輸出に影響を与える要因(1) オーストラリア インドネシア ロシア カナダ ・ なし。今後の導入も極めて低い。 ・ 2014年9月1日からエネルギー・鉱物資源 省の鉱物・石炭総局からの推薦を得た上 で、商務省から輸出登録証の取得が必要。 ・ なし。 ・ 2030年までの石炭産業開発プログラムで は石炭輸出を拡大する方針を示している。 ・ なし。 ・ カナダ政府の政策は、国内での石炭消費を 減らし、輸出を増加させる方針。 政府はエネルギーの輸出に関して全般的 に制約的でない政策をとっている。 ・ なし。今後の導入も極めて低い。 ・ 鉱物資源の主要5品目については2012年5 月から20%の輸出税が掛けられたが、石炭 は現在でもその対象外。 ・ 今後導入の可能性あり(検討中) ・ なし。 ・ なし。 ・ カナダの石炭産業の長期的な発展には輸 出事業が欠かせない。 ・ なし。今後の導入も極めて低い。 ・ 中期国家開発計画(大統領規定No2)に基 づく、生産計画。 2015年の生産量は4億2,500万トン。 2019年にまでに4億トンまで減じる。 ・ なし。 2030年までの石炭産業開発プログラムで は石炭輸出を拡大する方針を示している。 ・ なし。 ・ なし。今後の導入も極めて低い。 地方レベルの政策・規制 ・ 以下の規制がある。 ・ なし。 ・ 実施される可能性がある石炭プロジェクトな 国内供給義務(DMO) らびに設備建設は、CEAAに報告し、環境評 石炭価格統制(ICPR) 価を受けなければならない(輸出対応能力 外資規制(10年後に株式の51%をインドネシ に影響が及ぶ可能性がある)。 ア企業に譲渡の義務) ・ カナダ環境評価局(Canadian 高付加価値化の義務化(鉱物資源へは Environmental Assessment Agency:CEAA) 2014年1月施行、石炭は対象外) は、カナダ環境省の直接の管理下にある機 石炭については現在検討中 関。 石炭輸出港の限定(14港の名前が挙がっ ている。 ・ 地方税の徴収あり。 ・ ロイヤルティあり。付加価値税を除いた利益 ・ ロイヤルティあり。 ・ ロイヤルティあり。地方政府へ還元されてい に対し4%。 ・ 生産、輸出に影響を与えるほどではない。 る。 ・ ロイヤルティの引き上げ、IUPを現行の3.5% ~7%をCCoWの13.5%へアップの予定 ・ 地方分権によって、県知事が探査権、採掘 ・ なし。 ・ ブリティッシュ・コロンビア州には炭素税があ 権の認可の権限を得た。 るが、輸出品には適用されない。 地方組織の石炭開発への 反対など ・ 炭鉱排水の酸性水、粉塵汚濁水、騒音、振 ・ 大きな問題ではない。 動、道路の陥没など反対運動と賠償金要求 のための運動が活発。 ・ 数多くの環境団体、先住民のコミュニティ、 住民、および政府当局者が炭鉱や輸出ター ミナルの建設に反対している(ブリティッ シュ・コロンビア州)。 ・ 2010年に資源税、CO2税が可決。政権が 変わり2014年に取りやめ。 ・ CCoWの条件見直し CNC(Clean&Clear) ・ 年間220-250百万トンを超える生産レベル であるクズバス(Kuzbass)の生態系に対す る制約が適用される可能性がある。 ・ メトロ・バンクーバーの決議では、拡大を続 ける石炭の取扱を見直す際に健康への影 響に関する評価を含めることが支持されて いる。 ・ 産業は規則を順守しており、環境関連のモ ニタリングを実施。 ・ 周辺住民、農業者、牧畜者の新規炭鉱へ の反対、操業時のトラブルを避けるための 対策を実施。 ・ 環境保護と管理に関する法律(2009年法律 ・ 中リスク。 32号) ・ 現状では、石炭産業は地域の重要な産業 ・ 森林法(1999年法律第41号) であり、大きな問題はないが、将来的には ・ AMDAL(環境アセスメント)の提出 先進国と同様に、粉じん、騒音、水質などの ・ 国立公園は炭鉱開発禁止。 問題が生じることになる。 ・ その他地域でも森林法によって炭鉱開発 が大幅に規制されるようになった。 ・ カナダでは、石炭産業の成長に反対する者 が数多く存在する。 ・ 現状なし。 ・ 2010年にCO2税が可決。政権が変わり 2014年に取りやめ。 ・ 規則なし。 ・ 低リスク。 ・ 現状では規制はない。将来も先進国と比較 して大きな問題とならないと思われる。 ・ 規制が厳しくなり、石炭火力の閉鎖が進 む。 ・ 地球温暖化ガス(GHG)の排出量を減らす ことを目的とするカナダの施策が、数多くの 政策に組み込まれている。 石炭を燃料とする工場が国内において次々 と閉鎖される直接の原因となっている。 ・ 産業にとってより大きなリスクである。環境 反対グループは組織的に動き、運動が巧 妙になってきている。反対運動はいくつか のプロジェクトを遅らせるとともに開発コスト を増加させている。 ・ 炭鉱周辺でも環境団体が運動、多額の CSRの支出を余儀なくされている。 ・ 中部ジャワでは石炭火力発電所の土地収 容が環境団体の運動で大幅に遅れてい る。 ・ 低リスク。 ・ エコジャスティス(Ecojustice)など環境分野 ・ 現状はないが、都市部に近いところなどで のロビー団体が、西海岸における輸出ター は環境団体などによる反対が起きる可能性 ミナルの建設に反対している。 は否定できない。 ・ アジアにおける石炭の使用量が増えること による地球温暖化、地域での健康被害、炭 塵や石炭の流出による水質への影響といっ た様々な懸念を挙げている。 ・ 重要な問題はない。 ・ インドネシアの森林域は、森林法により保 安林(Conservation forest)、保護林 (Protected forest)、生産林(Production forest)に分類される。規制により、 保安林での開発はできない(採掘活動には 林業省の認可が必要)、 保護林での露天掘り採掘はできない。 ・ 現在、都市部や港湾近郊の都市において、 粉じん(炭じん)が大気汚染を招いていると 指摘されている。 ・ 北西部における米国向け輸出ターミナルに 対してし烈な抗議運動が繰り広げられてい ることから、BCターミナルから輸出される石 炭の量が増えている。今後、抗議運動が起 きる可能性がある。 ・ 現在の市場状況(低価格)により、いくつか のプロジェクトは、融資獲得が難しくなって いる。 ・ 環境グループは、化石燃料負の遺産キャン ペーンを含む融資保留を通して炭鉱開発に 融資をしない金融市場を奨励する動きをし ている。 ・ 外資を率先的に受けいれ、外資による炭鉱 開発が順調に推移。短期間で世界での最 大の一般炭輸出国に成長。民間主体で炭 鉱開発が行われている。 ・ 高リスク。現在のロシアの金融市場の状況 で新規プロジェクトに対して資金を獲得する のは困難。また、外国から融資を受けるの も困難である。 ・ 需要と供給のバランスが世界規模で再び取 り戻されるまで、炭鉱の建設が遅れる可能 性が高い。 ・ 現在、原料炭炭鉱ではTeck Resourcesの みが操業を継続 ・ なし。 ・ 坑内採掘の技術者が少ない。 ・ 中程度のリスク。新規プロジェクトについて は低リスク。 ・ 旧ソ連時代からの炭鉱は、設備の老朽化と いう課題を未だに抱えている。 ・ 問題なし。 ・ 問題ない。現在の採掘ペースで十分な年 数の採掘を継続できる大量の埋蔵量を有し ている。 ・ NSW:需要増に伴い生産地域は次第に Gunnedah地区へ移行し始めている。奥地 に行くことで輸送距離が長くなる。 ・ QLD:Galilee炭田の開発は輸送距離が 400kmとながい。 ・ 露天採掘が主体であるが、年々剥土比は 上昇している。 ・ ロシアは露天掘りを含めて、良質な石炭資 源を十分有している。 ・ ただし、新規開発には、シベリア鉄道、バム 鉄道までの引込線など輸送インフラ整備が 必要となり、開発資金がかさむ。 ・ 山間部であり、採炭条件はよくない。 1. 政策 輸出に係る許可 輸出に係わる規制 輸出税 数量的抑制 (輸出を制限するような生 産制限) 石炭産業への規制 ロイヤルティ、地方税 ・ ロイヤルティあり。州で比率が異なる。 QLD州:(注)参照。 NSW州:坑内掘り(400m以深)6.2%、坑内 掘り(<400m)7.2%、露天掘り8.2% ・ なし。今後の導入も極めて低い。 その他 2. 環境面 炭鉱操業に対する環境問 題・対策 CO2規制などの導入 環境団体の反対 その他環境問題 3. 炭鉱開発 開発資金 技術的問題 深部への移行(U/Gへ)、 奥地への移行 (注) 豪州 QLD 州のロイヤルティ 適用年度内の平均価格(AP)が 100 豪州ドル/トン以下:7%、 100 豪州ドル/トン以上 150 豪州ドル/トン未満:RR= 7+ (AP-100) ×5.5 AP 、150 豪州ドル/トン以上: RR= 7+ (AP-100) ×5.5 AP + (AP-150) ×2.5 AP (出所) 各種調査資料より整理。(各種調査資料:IEEJ 石炭グループ収集情報、APERC 研究者および各国専門家からの提供資料、APERC ワークショップでのプレゼン資料、JCOAL 提供資料(平成 26 年度調査外注先)) - 131 - - 132 - 表 2.5.2 主要石炭供給国の石炭生産・輸出に影響を与える要因(2) オーストラリア インドネシア ロシア カナダ ・ 国内輸送が長く、内陸輸送費が高い。生産 コストは他国と比較して安い。 ・ 2015年は、ロシア通貨の急落により、ロシ アの石炭は過去数か月で競争力が高まっ ている。 ・ 内陸輸送が1000km以上とコストがかかる。 採掘条件が悪いことからFOBコストはもとも と高い。 ・ 主な問題ではない。 ・ 高リスク。 ・ プロジェクトの大部分は、石炭価格が低い ため負債による困難を抱えている。現在の ロシアの金融市場状況での資金獲得には 限界がある。 ・ なし。 ・ カナダには現在、石炭を産出している企業 が7社存在し、ブリティッシュ・コロンビア州、 アルバータ州、およびサスカチュワン州で19 の炭鉱を運営していたが、価格低迷により 多くの炭鉱が生産を中止している。 ・ 資産売却とビジネスの再編は、生産量に影 響する。 ・ 連邦レベルと地方レベルでの許認可が必 要で時間を要する。スピードアップ、1本化を 検討しているが、進んでいない。 環境アセスに時間を要し、開発費のアップ につながる。 ・ 高いコストにより、新たな高性能輸入機器 の修理や購入に問題が生じる可能性があ る ・ 低価格の継続で厳しい状況にある。各社コ ストダウンを図っている。 ・ 2014年、価格の低迷により数多くの炭鉱が 稼働を停止し、価格が持ち直すまで多くの 従業員が一時解雇(レイオフ)された(具体 的にはB.C.)。 ・ 輸出ターミナル(Ridley Terminals社)でもレ イオフを実施。 3. 炭鉱開発(続き) FOBコスト ・ 豪州炭は、急速な生産コストの上昇により ここ数年競争力を失っている。産業は競争 力向上と存続をかけて競争力と大胆なコス トカットと生産性向上計画を進めている。 ・ 豪州など他国と比較して安い。 借金等による借り入れの停 止など その他 4. 輸送インフラ 内陸輸送の能力不足 ターミナルの能力不足 ・ 現在は問題はない。T&P契約でインフラ整 備が追いついた。 ・ 将来の輸出量の増加に備えて、能力拡大 が必要(2019年より先) ・ Galilee炭田開発には新規の鉄道建設が必 要。 ・ Gunnedah炭田開発には鉄道増強が必要。 ・ カリマンタン島ではマハカム川、バリト川が 石炭輸送に利用されているが、限界に来て いる。 ・ 中央カリマンタンでは輸送インフラが貧弱で あり、石炭開発の足かせになっている。 ・ 不十分な鉄道インフラ容量が主要な問題と なっている。東方向への鉄道の容量は 2020年までに40%以上増加する予定であ る。 ・ BAM鉄道の輸送能力増強がスムーズ進む かが大きな課題となっている。 ・ 投資がなされており、現状問題なし。 ・ 可能性は低いが、需要が増えれば能力アッ プが必要(バンクーバー方面への鉄道) ・ 現状、問題ない。 ・ 将来の輸出量の増加に備えて、能力拡大 が必要となる。 ・ 輸出需要の停滞、価格低迷により新規案 件や拡張計画が棚上げになっている。 ・ 全国に10港の石炭積出港が整備されてお り、多くのJettyが建設されているが、今後 の石炭増産のためには更なる港湾整備が 必要である。 ・ 今後の輸出増加を後押しするため、新たな 容量の開発が必要となる可能性がある (2016年以降)。 ・ 民間主導で多くの新規・拡張計画が提案さ れているが、資金面や需要面から開発され るか疑問が残る。 ・ ワニノ港、ムチカ湾では、冬期は流氷の影 響を受ける。 ・ 投資がなされており、現状問題なし。 ・ 米国Powder Riverの石炭がアジア向けに増 えたばあい、米国西海岸の港湾ができなけ れば能力増強が必要。 ・ 問題ない。 ・ 中央カリマンタン、南スマトラ、ジャンビ、リ アウの内陸部では社会インフラの整備が遅 れており、鉄道や道路などの整備が期待さ れている。 ・ 高いサービスコストにより、ロシアの採掘会 社による外部委託の需要は小さい。 ・ 問題なし。 ・ カナダでは、鉄道によって年間3,000万トン もの石炭が輸送されている。2つの大手鉄 道会社(CNとCP)は、インフラと保有車両の 改良のために30億ドルを投資した。(カナダ 石炭協会) ・ 遠隔化による輸送距離増(コストアップ) NSW州ではGunnedah地区での開発 QLD州ではSurat炭田での開発 ・ NSW州ではHVCCCが山元から鉄道、港湾 までの石炭輸送を一括管理。 ・ Tanjung Enim のPTBA の鉄道は今後の石 炭増産に向けて複線化を急ぐ必要がある。 中央カリマンタンの開発は鉄道建設が必 要。 ・ 大陸では輸送距離が長い(西シベリアのク ズバスからボストチヌイ港まで6,000km以 ・ 上)。 冬期の気象条件が厳しいことが原因でのト ラブルが起こり得る。 ・ 内陸輸送距離が1,000kmを超える。 石炭産業(港湾を含む)の ための社会インフラ不足 その他インフラ問題 埋蔵量/炭質 世界エネルギー会議 (WEC)の報告 (2011年末) 無煙炭・瀝青炭:371.0億t 亜瀝青炭:21.0億トン 褐炭:372.0億t 合計:764.0億t R/P比 :192年 ・ Galileeは品質が落ちる(5,000kcal後半)。 ・ SuratはHGIが30台と低い。 ・ 国内消費は2008-09年度以降減少してい る。将来に向けても減少の見通し。 国内需要拡大による影響 その他のリスク、要因 またはコメント 無煙炭・瀝青炭:490.9億t 亜瀝青炭:974.7億トン 褐炭:104.5億t 合計:1,570.1億t R/P比 :481年 無煙炭・瀝青炭:34.7億t 亜瀝青炭:8.7億トン 褐炭:22.4億t 合計:65.8億t R/P比 :98年 確定資源量1,205億t、確定埋蔵量3,167億t 自国の報告 炭質 無煙炭・瀝青炭:0.0億t 亜瀝青炭:280.2億トン 褐炭:0.0億t 合計:280.2億t R/P比 :79年 ・ 能力拡大と輸出量の増加は長期輸出需要 の大きく依存する。長期輸出需要は、輸入 国の環境政策、経済成長と発展、輸入制限 (政策とインフラによる)の影響を受ける。 2000年代前半の輸出需要の急増時に、供 ・ 給能力不足に陥った。これは1990年代終 わりからの低価格により投資が遅れていた ため。このため、滞船問題が発生 (queue)。現在は解消。それでも10-20 隻が滞船。 現状の長期化する価格の低迷は、供給能 ・ 力不足の大きな要因となり得る。炭鉱の休 山・閉山も増えている。 ・ 中発熱量65%、低発熱量25%、高発熱量 8%。超高発熱量は中央カリマンタンに多く ・ 賦存し、埋蔵量の2%程度に過ぎない。 国内需要は急速に増加。 資源保護・有効利用の観点から生産抑制 の方針であることから輸出量は減少する。 国内供給優先(DMO)により各社に供給量 を割り当てている。 ・ インドネシアでは2009年に新鉱物石炭法が 施行されて以来、自国の鉱物資源に対する 様々な保護政策が打ち出されている。 ・ 資源ナショナリズムに伴う政府規程としては DMO(国内供給義務)、ICPR(石炭価格統 制)に始まり、今後は、石炭への付加価値 の義務化、輸出税、輸出規制などが検討さ れている。 ・ また、生産量にキャップをかける動きがあ り、そうなれば輸出が激減する恐れがあ る。 ・ さらに、石炭の発熱量による輸出制限が検 討されており、施行されれば低品位炭の輸 出が困難となり、インド、中国を始め影響は 大きい。 ・ また、インドネシアでの石炭増産に向けて の弱点はインフラ整備に遅れであり、港湾、 鉄道、道路など新たな建設が急務である。 異物問題が依然ある。 冬期には凍った塊が混入している。 国内消費は減少傾向にある。 ・ ロシアの石炭生産者にとっての主なリス ・ 低いリスク - カナダにおける石炭の消費 ク要因は、世界の石炭価格、供給が需要 量は、温室効果ガスの排出を抑え、石炭を を上回っている世界の石炭市場の状況、お ガスで代替させようとする環境政策が施行 よび、ロシアにおいて検討中の一部の石炭 されていることから低下を続けている。カナ プロジェクトの有利性が近い将来に低下し ダは、従来的な石炭を燃料とする発電所の 得るという可能性に関連している。 建設を禁止した最初の主要な石炭産出国と ・ ロシアの石炭生産に対する主な障壁は、 なった。カナダでは、オンタリオ州において 天然ガスの調整価格による国内での石炭 石炭が最も多く消費されていましたが、 2014年までに石炭を使用した発電は完全 需要の低迷、物流の不足 (輸送および港湾 インフラ、国境検問所、高い鉄道運賃)、プロ に打ち切られた。北米では、オンタリオ州が ジェクトへの投資の需要に関連している。さ 発電への石炭の利用を廃止した最初の地 らに、輸入税が導入され、また、中国への 域となっている。カナダ国家エネルギー委 輸入石炭に含まれる有害物質に関する要 員会によれば、国内需要の低下により、輸 求事項が増加している。 出に充てることが可能な石炭の量が年間 ・ これらのリスクを低減し障壁を取り除く 3.6%増加することになる。 ための優先事項は、プロジェクトの資金調 ・ 中程度のリスク - カナダは、CCSの開発 達・実施に向けてロシア・中国の共同事業 に向けて数多くの施策を掲げている。これ を設置し、政府保証の下で石炭供給の長期 は画期的な技術であり、この技術の採用を 契約を締結することである。また、ロシア政 進めることで、国内の需要が増える可能性 府が中国政府に働きかけ、ロシア産石炭中 がある。(専門コンサルタント) の有害物質 (フッ素) 含有に関する要求事 項を減少させる。 (出所) 各種調査資料より整理。(各種調査資料:IEEJ 石炭グループ収集情報、APERC 研究者および各国専門家からの提供資料、APERC ワークショップでのプレゼン資料、JCOAL 提供資料(平成 26 年度調査外注先)) - 133 - - 134 - 表 2.5.3 主要石炭供給国の石炭生産・輸出に影響を与える要因(3) 米国 中国 ベトナム モンゴル 1. 政策的要因 ・ なし。今後の導入はあり得ない。。 ・ 輸出ができるのは4社のみ。政府が年間輸 出量・割当量を設定する。 ・ なし。今後の導入はあり得ない。。 ・ 国内需要が急増した2000年代に輸出税を ・ FOB価格の10%(2013年9月以降) これまで%は変わっている。最高は20% 導入。2015年1月1日より輸出税を10%から ・ Vinacominは国営企業であるため、全般的 3%へ減税。 に政府の規制によって管理されている。 ・ 環境問題以外では、あり得ない。 ・ 生産能力過剰のため、生産調整を実施。中 小炭鉱の閉鎖、採算性のない炭鉱の閉鎖 を進め、大型石炭生産基地を中心とした生 産体制とする。 ・ 輸出は国内消費増と共に減少。政府は今 ・ なし。 後の輸出量を200万トン/年程度(国内で使 用しない高品位炭)に制限する方針。 ・ 2015年から副首相の指示で粉炭の輸出は 全面的に禁止、輸出は隗炭のみとなる。 ・ 5-10年毎に改定されるマスタープランにより 石炭生産を規制している。 ・ 輸出のみを対象とする規制はあり得ない。 全般的な規制が生産を制限し、それが輸出 に繋がる可能性があると予想する。 ・ 中国は、過剰生産能力を是正するために非 効率な生産設備の廃止を加速させている。 ・ 2015年1月から品質規制を開始。 ・ 石炭は国の財産であり、国営企業が生産を 行う。民間への鉱区の開放ない。 ・ 外資が炭鉱権益の49%以上取得する場合 は国家の承認が必要 ・ 現状のロイヤルティや税率の引き上げのリ スクは低い。 ・ 省の政府が課している税金、ロイヤルティ (採掘権/使用料)、および山西省の石炭事 業の持続可能な発展のための基金などの 基金が複数存在する。最近になって、これ らのうちのいくつかが廃止となっている。 ・ 資源採掘税(ロイヤルティ)あり。 坑内掘り7%、露天掘り9% ・ 全ての企業にかけられる地方税等の税金 のほかに炭鉱独自の税金がある。 ・ 売上げの4割、収益の6割が税金として徴収 されているといわれている。 ・ 国家予算が赤字であるため、国会は、輸出 用石炭のためのロイヤルティ(採掘権/使用 料)を増額することを検討する可能性があ る。 ・ 中リスク、環境規制による影響が懸念され る。 ・ 中央政府主導なのでない。石炭生産の多 い省では重要な産業であり、石炭産業を維 持する方向。 ・ 基本的には中央政府の規定のみである が、環境に関しては地方が独自で税を掛け ている。 ・ ないと思われる。 ・ 低リスク ・ 特になし。 ・ 特になし ・ 2000年代に廃止した輸入税を2014年10月 から再び導入。一般炭6%、原料炭3% ・ 海外からの炭鉱開発、投資を禁止してい ・ る。 石炭運搬の一般道路への乗り入れを規 制。専用道路をVinacominへ要請。 ・ 低リスク ・ 生産に対する一般的な環境問題は過去か ら存在し、この意味では低リスクといえる。 ・ EPAが坑内排水に関する規制を進めてい る。 ・ 公害は、政府と国民にとっての関心事とな り、小規模な炭鉱は徐々に閉鎖に追い込ま れている。 ・ 中央、西部地区は水資源不足。石炭採掘 により地下水が失われ、環境破壊を引き起 こす可能性がある。 ・ このような理由により、新規に開かれる炭 鉱では、実際に稼働させる前に環境的な分 析が厳格に行われることになる。 ・ 環境規制あり。 ・ Vinacominは住民の意見を聞きながら、規 制事項に対して対応。 ・ Vinacominは炭鉱排水、粉塵、騒音などの 環境対策を徹底。大きな問題は発生してい ない。 ・ 環境再生、地盤沈下対策、鉱床再生環境 基金が適用されている。 ・ 未塗装道路におけるトラック輸送による粉 塵及び粉塵堆積による牧草地の裸地化。 ・ 採掘作業に伴う粉塵。 ・ 中リスク ・ 規制が時流に逆らうものになれば、石炭を 掘れなくなる可能性もある。 ・ 気候変動に係るUS-China協定を発効。中 国のCO2排出量は2030年頃にピークとす る。 ・ 現在は存在しない。 ・ 規制はなし。 ・ 中リスク ・ 港湾開発を停止する可能性があることが最 大の問題。 ・ 特になし。 ・ 環境団体も大きな活動はないが、唯一ハロ ン湾で反対運動が行われた。 ・ 特にモンゴル南部における環境保護に関す る地元の政策が、石炭の生産と輸送に制 約を課すかも知れない。 ・ 特になし ・ 特になし。 ・ ベトナムにおける環境税は高い: 石炭製品 1トン当たり1USD、原炭1トン当たり 0.5USD。 ・ 特になし。 ・ 中リスク ・ 現状の低価格が、石炭会社のキャッシュフ ローに影響を及ぼしている。 ・ Peabodyを始め多くの石炭会社が連邦倒産 法第11条の適応を申請。 ・ 近年の石炭市況の悪化(低価格)で数多く の企業が財務的に厳しい状況にある。 ・ 内モンゴル自治区、山西省、陝西省、およ びその他の地域に所在する石炭関連企業 の資金上の問題で、数多くの炭鉱事業や 炭鉱関連事業が中断または中止に追い込 まれている。 ・ 炭鉱の増産計画に従って、坑内採掘炭鉱 の開発を急ぐため、国内、海外資金の借入 れを行っている。 ・ 低価格の市場であり厳しい経営が続いてい る。 ・ 石炭の価格の低迷により、多くのプロジェク トが財源を確保することが困難となってい る。 ・ 低リスク ・ 坑内掘りが多い。保安(安全)に問題あり。 ・ 生産性向上のための機械化を促進。技術 ・ 豪州のコントラクターを使うなど採掘技術が 導入と人材育成が急務。 先進国並みの炭鉱も多い。 ・ 熟練作業者が不足している。 (特に坑内掘り)。 ・ リスクは地域によって異なる。複雑な地形 条件により、近代的な技術や機器の適用が 大きな問題となっている。 たとえば、紅河デルタ流域における石炭生 産については高リスク (現在、紅河デルタ 流域における石炭のパイロット生産は2020 年まで延期されている)。 ・ 低リスク ・ 14石炭生産拠点をベースにした生産体 制。さらに拠点を増やす計画。2020年まで にこれらで、総生産量の95%を賄う。 ・ 山東省西部や河北省中部など、中国東部 のいくつかの石炭産出拠点では、将来的に 資源の枯渇に見舞われる。 ・ 炭鉱のおよそ90%が坑内掘炭鉱で、10%が 露天掘炭鉱となっている。 ・ 中国における炭鉱の平均深さはおよそ400 メートルで、中国東部では平均深さがすで に600メートルを超えている。 ・ 坑内採掘が増加し、露天採掘はやがて無く なる。坑内採掘の割合は2015年60%、2020 年77%を予定。採掘深度は毎年深部化して いる。 輸出に係る許可 輸出に係わる規制 輸出税 数量的抑制 (輸出を制限するような生 産制限) ・ 政府は国内で使用されない高品質の石炭 をVinacomin、Dong Bacに輸出することを許 可している。 ・ 炭種・数量はVinacominが政府に申請し許 可得る。 ・ 輸出規制なし。 ・ 輸出税という名目ではなく、関税手続料とし てトン当たり1,500Tg。 ・ 未加工石炭(原炭)に高い輸出税を掛ける 動きがある。 石炭産業への規制 ロイヤルティ、地方税 地方レベルの政策・規制 地方は石炭産業で成り立っているところが 多く、炭鉱との共存共栄が基本。石炭採掘 への大きな反対運動は無い。 地方組織の石炭開発への 反対など その他 ・ 特にモンゴル南部における環境保護に関す る地元の政策が、石炭の生産と輸送に制 約を課すかも知れない。 ・ 地元民の反対あり。 2. 環境面 炭鉱操業に対する環境問 題・対策 CO2規制などの導入 環境団体の反対 その他環境問題 3. 炭鉱開発 開発資金 技術的問題 深部への移行(U/Gへ)、 奥地への移行 ・ 開発が開始されて間もないため、現状は露 天掘りである。将来は坑内掘りとなる。 ・ 豊富な埋蔵量を有する。原料炭、一般炭、 褐炭が賦存する。 (出所) 各種調査資料より整理。(各種調査資料:IEEJ 石炭グループ収集情報、APERC 研究者および各国専門家からの提供資料、APERC ワークショップでのプレゼン資料、JCOAL 提供資料(平成 26 年度調査外注先)) - 135 - - 136 - 表 2.5.4 主要石炭供給国の石炭生産・輸出に影響を与える要因(4) 米国 中国 ベトナム モンゴル ・ 中リスク ・ Powder Riverは大規模露天掘りでの操業 で、生産性が高く、生産コストは低コストで あるが、輸送コストがかさむ。 ・ アパラチアは中小の坑内掘炭鉱が多く、生 産生産性が悪く、高コスト。 ・ 東部地区ではアパラチアから生産性の高い イリノイへ生産は移行する。 ・ 国際市場のほうが国内向け価格より安い。 中国東部の炭鉱は一般的に深いため、生 産コストはとても高くなっている(およそ60 ~70米ドル/トン)。これらの炭鉱は、市場 における競争力を失っているため、石炭を 輸出することは不可能である。 ・ 露天採掘から坑内採掘への移項、採掘現 場の深部化により、採掘コストは年々上昇 し、大きな課題となっている。 ・ 生産コストが高い場合 (FOB)、Vinacomin が適切な市場価格に対してコストを調整す る。 ・ 採掘コストは安いが中国向けの石炭価格 が国際市場に比べ安価に取引されており、 収益が上がっていない。選炭による高付加 価値化を進めている。 ・ 生産コストが急激に上昇している。 ・ 低リスク ・ 2003年から2012年にかけて石炭市場が好 ・ 国内銀行、海外銀行から借入している。 調であったとき、多くの企業がその産出能 JBICからは3億米ドルを借入。借入金の停 力を拡大させた。しかし、中国北東部を中心 止などは無い。 に、近年の市場環境の悪化で数多くの企業 ・ Vinacominは国営企業であるため、財務省 が深刻な財務的に厳しい状況にある。 が同社の負債を調整する。 ・ タバントルゴイ社が持つ中国企業(Chalco) への返済が遅れている。 ・ タバントルゴイ開発の優先交渉権を得たコ ンソーシアムにこの負債を引き継ぐ条件を 付す予定。 ・ 特になし ・ 選炭のための水資源が限られている。 3. 炭鉱開発(続き) FOBコスト 借金等による借り入れの停 止など その他 労働組合が考えられるが、実質的な懸念 はない。 4. 輸送インフラ 内陸輸送の能力不足 ターミナルの能力不足 ・ 中リスク ・ 穀物や他の製品貨物で鉄道は込み合って いる。よって、スムーズな石炭輸送に支障 が出るかもしれない。 ・ アジア・太平洋市場へ輸出する場合、鉄道 能力の増強が必要。 ・ 2015年の鉄道輸送量は26億トン。鉄道輸 送能力は約30億トンと見られており、輸送 需要を満たすことができると考えられる。 ・ 北部の石炭を中・南部の石炭消費地まで輸 ・ 南ゴビの輸送手段は現状トラック輸送。 送するための港湾整備が不十分。大型船 ・ 中国への輸出が行われる箇所(越境地点) の使用が無理なため、今後海外炭の受入 が限られている。 に支障をきたす。 ・ 中国経由の輸送のために鉄道建設が進め られており、運用が始まれば輸送コストの 低減及び輸出量の増加が期待できる。 ・ ロシア経由の輸送のためにタバントルゴイ からモンゴル鉄道への鉄道建設も進められ ている。 ・ モンゴル北部でもロシア向けの鉄道建設が 計画されている。 ・ 東海岸、メキシコ湾岸の積出港は整備され ており、需要に見合った拡張も可能とされて いる。 ・ 西海岸の積出港は整備されていない。アジ ア・太平洋向けの輸出のために計画はある が、環境団体の反対により建設が困難。 ・ 2015年の積出量は7.5億トン。計画されて いる処理能力は8.3億トン、輸送需要を満た すことができると考えられる。 ・ 整備が遅れている。 ・ モンゴルは海洋に面していない。 ・ モンゴルはロシア経由の北朝鮮羅津港から の石炭輸出に期待しており、トライアル輸出 も開始している。 ・ 2014年8月に中国と鉱物を中国ルートで第 3国に輸出に関する協定を締結。2015年1 月にモンゴル閣議で了承されている。 ・ 問題なし ・ 問題なし ・ 問題なし ・ 不足 ・ 絶対的な輸送インフラ不足及び資金不足。 タバントルゴイ開発で神華、住商、Energy Resourcesのコンソーシアムが優先交渉権 を得たが、コンソーシアムに対して鉄道建設 を含むインフラ整備の条件を付す予定。 ・ 特になし ・ 特になし ・ 特になし ・ モンゴルの軌道幅は広軌、中国は狭軌。貨 物の積み替えが必要。 ・ 現在建設中の中国国境向けの鉄道も広 軌。 石炭産業(港湾を含む)の ための社会インフラ不足 その他インフラ問題 埋蔵量/炭質 世界エネルギー会議 (WEC)の報告 (2011年末) 無煙炭・瀝青炭:1,085.0億t 亜瀝青炭:986.2億t 褐炭:301.8億t 合計:2,373.0億t R/P比 :217年 自国の報告 EIAによれば、可採埋蔵量192億st、推定可 採埋蔵量2,586億st。 炭質 国内需要拡大による影響 無煙炭・瀝青炭:1.5億t 亜瀝青炭:0.0億トン 褐炭:0.0億t 合計:1.5億t R/P比 :4年 ・ リスクは低い。 ・ 天然ガスの価格レベルから推測すると、国 内で石炭火力発電所が拡大される可能は 小さい。 無煙炭・瀝青炭:11.7億t 亜瀝青炭:0.0億トン 褐炭:13.5億t 合計:25.2億t R/P比 :257年 確定資源量348億トン、確定埋蔵量61億ト ン、81%が無煙炭である。 ・ 西部地域のパウダーリバー炭田は亜瀝青 炭。 ・ 原料炭の生産地域はアパラチア炭田、イリ ノイ炭田に多い。 ・ Power River Basinからの内陸輸送は 1,400km以上。 その他のリスク、要因 またはコメント 無煙炭・瀝青炭:622.0億t 亜瀝青炭:337.0億トン 褐炭:186.0億t 合計:1,145.0億t R/P比 :34年 ・ 南ゴビには良質な強粘結炭が賦存。 産業は効率性を向上し、石炭は他燃料に代 ・ 国内の石炭需要急増に対応するため、 替えされる。その結果、2020年の石炭消費 2017年から海外からの輸出が本格化 量は約42億トン。 ・ 中国は、国内に大きな石炭市場を抱えてい る。高品質の石炭の輸入と外国における石 炭関連の開発事業を推進することで、国内 と国外の市場の両方を十分に活用すること になる。 ・ 中国東部の炭鉱は一般的に採掘深度が 深いため、生産コストは高くなっている(約 60~70米ドル/トン)。これらの炭鉱は市場 における競争力を失っているため、石炭を 輸出することは不可能である。 ・ ベトナムではこれまでの無煙炭は輸出して 外貨を稼ぐ重要な商品との考えから、国内 炭は優先的に国内へ供給するという考え方 に大きく舵を切った。これは、急増する国内 エネルギーへの対応策となる。国内生産だ けでは需要に追いつかず、今後は海外から の輸入も予定されている。 ・ 国内における石炭の使用量は、生産量と比 較して低い。2025年の国内需要は、現状の 1.5倍程度の1,000万トン前後と予測されて いる。 ・ 石炭産業の発展は、中国の長期的な需要 にかかっている。 ・ 日本政府は石炭輸入先の多角化を推し進 めており、モンゴルのタバントロゴイの良質 な原料炭に注目している。日本企業は商社 を中心に連合体を結成、政府の後押しも あって、炭鉱開発に意欲を燃やしたが、モン ゴル側の度重なる入札条件の変更などに よって開発業者が決まらず、翻弄されてき た。こういう中、日本企業も入った最終コン ソーシアムが現在交渉中であるが、過去の 例から今後の動きは不透明なところも多く、 リスクは残る。 また、炭鉱開発での大きな課題はインフラ 整備であり、ファイズⅠ、ファイズⅡの工事 は予定から大きく遅れている。 さらに、ロシアルート(5,000km)、中国ルー ト(2,500km)の選択を政府は今だ決定して いない。 (出所) 各種調査資料より整理。(各種調査資料:IEEJ 石炭グループ収集情報、APERC 研究者および各国専門家からの提供資料、APERC ワークショップでのプレゼン資料、JCOAL 提供資料(平成 26 年度調査外注先)) - 137 - - 138 - 表 2.5.5 主要石炭供給国の石炭生産・輸出に影響を与える要因(5) 南アフリカ モザンビーク ニュージーランド コロンビア 1. 政策的要因 ・ 輸出規制はなし ・ 鉱物資源のモザンビーク国内での付加価 値化を推奨しているが、これに関しての規 制は特にない。 ・ 輸出に係る規制も特になし。 ・ 輸出規制はなし ・ 輸出規制はなし ・ なし。 ・ なし。 ・ 輸出による総売り上げに対して1%の源泉 徴収税が課せられる。 ・ 不明 ・ なし。 ・ なし。 ・ なし ・ なし ・ 新鉱業法では、鉱物・石油に付加価値を付 与し、大臣が定めるベース・ライン価格以上 とする。 ・ 採掘権付与時に政府とマイニングコントラク トを締結し、開発に国の参加(権益付与)の 条件が付与される。 ・ 特にないが、政府がDrummondに対し Drummond港からの輸出停止を命じ、2014 年1月中旬から3月末まで輸出が停止した。 ・ 特になし ・ ロイヤルティあり。 ・ ロイヤルティあり。 ・ ロイヤルティあり ・ ロイヤルティあり 利益が500百万NZドル未満:2% 利益が500百万NZドル以上:実施売上高の 2%または利益の10% ・ 国のMineral and Petroleum Resources Development Act が中央及び地方の鉱業 活動をカバーする。 ・ なし。 ・ ないと思われる。 ・ ないと思われる。 ・ 調査の範囲では特になし。 ・ 特になし。 開発に先立ち、環境アセスメント認可が求 められる。現状、石炭開発が初期の段階に あることからこれまでのところ大きな問題と なっていない。 ・ 調査の範囲では確認できなかったが、周辺 地区への操業に伴う粉塵、騒音及び水質 問題に対する対策は必要である。 ・ 調査の範囲では事例なし。 ・ 既に対策済み。 規制はなし。 ・ 規制はなし。 ・ 未確認。 ・ 調査の範囲では確認できなかったが、先進 国と同様に反対運動は今後発生するものと 思われる。 ・ 調査の範囲では確認できなかったが、反対 運動はあると思われる。 ・ 石炭市場の低迷により各社の収益が低 下。 ・ 石炭市場の低迷により各社の収益が低 下。 現在はSolid Energy のみが操業を継続。 輸出に係る許可 輸出に係わる規制 輸出税 数量的抑制 (輸出を制限するような生 産制限) 石炭産業への規制 ロイヤルティ、地方税 地方レベルの政策・規制 地方組織の石炭開発への 反対など その他 ・ 環境NGO等による鉱山排水(酸性水)の問 題、数多くの放置された廃鉱山(石炭鉱山 以外も含む)のリハビリテーションの不履行 問題 ・ 権益のマイノリティ取得はこれまで関係省 の許認可は不要であったが、新鉱業法で は関係省の許認可が条件に附される。 2. 環境面 炭鉱操業に対する環境問 題・対策 CO2規制などの導入 ・ 安全・環境管理プログラムを有しないものが ・ 採掘行為を行った場合は、ペナルティの課 金あるいは2年間の拘束あるいはその両方 がかせられる。 ・ 環境NGO等による鉱山排水(酸性水)の問 題 ・ 化石燃料からの発電に対する課税(2009) ・ 環境団体の反対 ・ 環境NGO等による鉱山排水(酸性水)の問 ・題 自然公園保護団体(MapungubweAction Group)によるLimpopoでの外資企業による 新規炭鉱の開発許可に対する反対運動。 環境団体による石炭産業の監視(大気・水 汚染) その他環境問題 ・ 数多くの放置された廃鉱山(石炭鉱山以外 も含む)のリハビリテーションの不履行問題 3. 炭鉱開発 開発資金 ・ 石炭産業の設備投資額が2013年までの5 ・ 港までの距離が長く、石炭開発に必要な輸 年間と比較し、次の5年間の投資額が増加 送インフラへの投資が大きい。 (約1.6倍)見込まれる-新規鉱山開発、既 存設備の拡張 技術的問題 ・ 保安の向上と生産性の増加を目指すため には、機材の更新、技術の向上、技術者の スキルアップが必要 ・ 炭層の灰分が高くかつ可選性が低い。歩留 まりを向上させるかが大きな課題。 ・ 石炭メジャーなどが開発をしており、先進国 並みの技術が導入されている。 ・ 急傾斜炭層での採炭。グレイマウスでは水 力採炭を導入した経緯がある。 ・ 石炭生産量の約半数が坑内掘炭鉱からの もの。 ・ 既存開発エリアでの埋蔵量の減少から、採 掘エリアをジンバブエとの国境に近い Waterbergでの開発を進める必要がある。 ・ Tete州では石炭の大規模開発が始まって 間もなく、埋蔵量的にも多くが露天掘りが可 能である。 ・ 露天掘りが主流である。生産量の90%以 上が一般炭で大規模の露天掘り。原料炭 は内陸部に位置する坑内掘り。 ・ 坑内掘り炭鉱あり。 深部への移行(U/Gへ)、 奥地への移行 埋蔵量、炭質(下に欄あり) (出所) 各種調査資料より整理。(各種調査資料:IEEJ 石炭グループ収集情報、APERC 研究者および各国専門家からの提供資料、APERC ワークショップでのプレゼン資料、JCOAL 提供資料(平成 26 年度調査外注先)) - 139 - - 140 - 表 2.5.6 主要石炭供給国の石炭生産・輸出に影響を与える要因(6) 南アフリカ モザンビーク コロンビア ニュージーランド ・ FOBは露天掘及び坑内掘りともに他国との 比較において低く、競争力がある ・ 現状においては、他の生産国に比して低コ ストである。 ・ 規模が小さく高コスト。 FOBコスト ・ 港までの輸送距離が600km-900kmと長 く、鉄道輸送コストが高い。したがって、石 炭の市場価格が低い場合は、市場価格が コストのブレークイーブンを下回る場合があ る。また、歩留まりが低いため生産コストも 高くなる。 借金等による借り入れの停 止など ・ これまで大手会社による開発が主である が、最近、1炭鉱(Minas de Moatize)が清算 会社となった。 その他 ・ 地元従業員へのトレーニング義務がかせら れているが、それに係る人数等の詳細はな い。 3. 炭鉱開発(続き) 4. 輸送インフラ ・ 国内ユーザー向けのトラック輸送が限界。 鉄道輸送に切り替える必要あり。 ・ Tete州の西部からの輸送は既設の鉄道が 無く、トラック輸送に限られる。 ・ 積出港と鉄道の整備計画があるが、開発 は遅れ気味である。 ・ 2014年12月にTeteとNacala港間の鉄道が 開通した。 ・ 需要増、生産能力の増強に対応して各社 が整備を行っている。 ・ 能力は小さいが需要に見合ったインフラは 整備済み。 ・ 現状は問題なし。 Richards Bayの拡張計画(Phase VI)ある がF/S中で実現は5年後以降。 ・ Beiraが唯一の石炭ターミナルであったが、 2014年にNacalaの石炭ターミナルが開設さ ・ れた。 2020年以降に計画されている新規鉱山が 立ち上がる場合は、鉄道輸送能力とともに ターミナル能力も不足する。 ・ 需要増、生産能力の増強に対応して各社 が整備を行っている。 ・ 能力は小さいが需要に見合ったインフラは 整備済み。 内陸輸送を能力不足 ターミナルの能力不足 ・ 不足。 特に産業用、及び住民用の電力供給が不 足 石炭産業(港湾を含む)の ための社会インフラ不足 その他インフラ問題 埋蔵量/炭質 世界エネルギー会議 (WEC)の報告 (2011年末) 自国の報告 無煙炭・瀝青炭:301.6億t 亜瀝青炭:0.0億トン 褐炭:0.0億t 合計:301.6億t R/P比 :120年 ・ これまでの開発エリアでの埋蔵量の減少。 無煙炭・瀝青炭:67.5億t 亜瀝青炭:0.0億トン 褐炭:0.0億t 合計:67.5億t R/P比 :79年 無煙炭・瀝青炭:3,300万t 亜瀝青炭:2.05億トン 褐炭:3.33億t 合計:5.51億t R/P比 :6年 埋蔵量67億トン、うち経済的/準経済的埋 蔵量37億トン(2004年) 確認埋蔵量64億トン 資源量150億トン、うち半分以上が可採資 源量 ・ これまでの開発エリアでの炭質が悪化傾 向。 ・ Coal Indiaの自鉱区での探査結果が、一般 ・ 瀝青炭が賦存。 炭にも不適合ということで、撤退を決定した 事例有り。 ・ 原料炭の有望地域と言われているテテ州に おいても地域により品質に差異があり、期 待した炭質の石炭の埋蔵量が少なかったと いう結果も十分あり得る。 ・ 南島の西海岸北部に瀝青炭(原料炭)が賦 存。 ・ 今後、電力需要の増加に伴い、石炭需要も 増加する ・ 国内消費量は少ない。原料炭とともに産出 される一般炭の利用から山元発電の計画 がある。 ・ 国内消費は280-290万トン。今後はほぼ 横ばいから微減 ・ その他のリスクは無い。 ・ その他のリスクは無い。 炭質 国内需要拡大による影響 無煙炭・瀝青炭:2.1億t 亜瀝青炭:0.0億トン 褐炭:0.0億t 合計:2.1億t R/P比 : - 年 その他のリスク、要因 またはコメント ・ 国内消費は500-700万トン。 テロ行為: コロンビア国内の治安は改善されている が、依然として反政府組織によるテロ行為 が発生するリスクを抱えている。 例としては、2013年10月のFARCによるセレ ホン鉄道の爆破テロが発生している。 ストライキ: 2013年には2月にセレフォン炭鉱で、7月に はドラモンド炭鉱で、炭鉱労働者によるスト ライキが発生している。 特になし (出所) 各種調査資料より整理。(各種調査資料:IEEJ 石炭グループ収集情報、APERC 研究者および各国専門家からの提供資料、APERC ワークショップでのプレゼン資料、JCOAL 提供資料(平成 26 年度調査外注先)) - 141 - - 142 - 第 3 章 世界の石炭需要予測分析 - 143 - - 144 - 3. 世界の石炭需要予測分析 本章では、主要機関が発表する長期石炭需要予測として、International Energy Agency(国際 エネルギー機関、以下 IEA), “World Energy Outlook 2015”(2015 年 11 月発表) 、日本エネル ギー経済研究所(以下 IEEJ) 、 「アジア/世界エネルギーアウトルック 2015」 (2015 年 10 月発 表 )、 U.S. Energy Information Administration ( 米 国 エ ネ ル ギ ー 情 報 局 、 以 下 EIA ) , “International Energy Outlook 2016” (2016 年 5 月発表) 、 および BP, “BP Energy Outlook 2016” (2016 年 2 月発表)について取りまとめた。 3.1 石炭需要予測 3.1.1 各機関の予測結果の比較 まず、各機関の予測を比較すると、2040 年の一次エネルギー需要は EIA のレファレンスが最 も大きく、次いで IEA の Current Policies Scenario、次いで IEEJ のレファレンスケース、IEA の New Policies Scenario、BP、IEEJ の技術進展ケース、IEA の 450 Senario と続く。EIA お よび IEA の Current Policies Scenario、IEEJ のレファレンスケースはともに現状維持ケースで あるが、IEEJ の方は省エネルギー・低炭素化が進むものとして一次エネルギー需要を低く予測 している。BP の予測は 2035 年までであるが、2035 年以降も 2030 年から 2035 年と同様の伸び 率で増加すると仮定すると 2040 年の一次エネルギー需要量は 18,177 百万 toe(石油換算トン) と試算され、IEA の New Policies Scenario を上回る需要量となる。 (百万toe) 25,000 20,536 19,643 20,000 13% 15,000 11% 10,000 5% 13,545 17,934 3% 16% 2% 5% 23% 7% 15,197 25% 26% 25% 4% 31% 22% 5% 10% 3% 再生可能エネルギー 8% 7% 18% 11% 21% 17,307 16% 2% 6% 24% 16,396 14% 3% 27% 5,000 18,963 26% 5% 26% 22% 30% 28% 22% 29% 29% 25% 16% 原子力 天然ガス 30% 29% 水 力 石 油 石 炭 24% 19% 25% 25% 2040 2035 0 2013 2040 2040 2040 Current New 450 Policies Policies IEA 2040 2040 レファレンス 技術進展 レファレンス IEEJ EIA BP (注) EIA の予測では水力と再生可能エネルギーの数値が分かれていない。EIA の 16%は水力と再生可能エネルギー の合計の割合を示す。 (出所) IEA, ”World Energy Outlook 2015”、BP, ”BP Energy Outlook 2016 edition”、EIA, ”Inertnational Emergy Outlook 2016”および IEEJ、「アジア/世界エネルギーアウトルック」より作成 図 3.1.1 一次エネルギー需要予測の比較(IEA、IEEJ、EIA、BP) 2040 年の一次エネルギー需要を前回の予測結果と比較すると、EIA は 20,655 百万 toe(2013 年発表)から 20,536 百万 toe とわずかの減少であるのに対し、IEA の Current Policies Scenario では 20,039 百万 toe から 19,643 百万 toe に、IEEJ のレファレンスケースでは 19,276 百万 toe から 18,963 百万 toe と 300 百万 toe~400 百万 toe 予測結果を下げている。 - 145 - 2040 年における一次エネルギー需要に占める石炭需要の比率を比較すると、IEA の Current Policies Scenario では 2013 年と同じ 29%と予測しており、IEEJ のレファレンスケース、EIA のレファレンスケースおよび BP の予測ではそれぞれ 24%、25%および 25%としており、石炭 からのエネルギー転換や熱効率の向上などが進むと予測している。同様に IEA の New Policies Scenario においても石炭比率は 25%と予測されている。また、IEEJ の技術進展ケースと IEA の 450 Senario ではさらに化石燃料から再生可能エネルギーへのエネルギー転換や熱効率の向上 が進むことから、石炭需要の比率はそれぞれ 19%と 16%になると予測されている。 2040 年の石炭需要量を比較すると、IEA の New Policies Scenario と IEEJ のレファレンスケ ース、EIA のレファレンスケースがそれぞれ 4,414 百万 toe、4,577 百万 toe、4,540 百万 toe と ほぼ 4,500 百万 toe 前後を予測している。しかし、石炭需要を地域別にみると(詳細は後述のそ れぞれの機関の予測の説明を参照) 、IEA と IEEJ の予測では OECD 米州と OECD 欧州で石炭 需要が大きく減少すると予測しているのに対し、 EIA の予測では、 OECD米州は2012 年から2020 年にかけて増加した後、横這いで推移すると予測している。OECD 欧州については減少すると予 測しているが、IEA と IEEJ の予測より減少量が少ない。一方で、アジアの需要をみると、2040 年のアジア需要量を IEA は 3,520 百万 toe、 IEEJ は 3,546 百万 toe と予測しているのに対して、 EIA は 3,267 百万 toe と低く予測している。EIA のレファレンスケースの予測では、米国で進め られている新規・既存の石炭火力への CO2 規制が反映されていないと思われる。 表 3.1.1 一次エネルギー需要予測の比較(IEA、IEEJ、EIA、BP) (百万toe) 2040 2013 Current Policies IEA New Policies 2035 IEEJ 450 レファレンス 技術進展 EIA 低価格 レファレンス BP 石 炭 3,923 5,618 4,414 2,495 4,577 3,105 3,245 4,540 4,272 石 油 4,210 5,348 4,735 3,351 5,496 4,658 4,855 6,200 5,115 天然ガス 2,902 4,610 4,239 3,335 4,741 3,665 3,940 5,327 4,428 原子力 646 1,036 1,201 1,627 1,127 1,597 1,597 1,159 水 力 326 507 531 588 434 443 443 再生可能エネルギー 1,538 2,523 2,815 3,801 2,587 2,928 2,953 合 計 13,545 19,643 17,934 15,197 18,963 16,396 17,033 3,310 20,536 859 1,274 1,359 17,307 (注) EIA の予測では水力と再生可能エネルギーの数値が分かれていない。EIA の 16%は水力と再生可能エネルギー の合計値を示す。 (出所) IEA, ”World Energy Outlook 2015”、BP, ”BP Energy Outlook 2016 edition”、EIA, ”Inertnational Emergy Outlook 2016”および IEEJ、「アジア/世界エネルギーアウトルック」より作成 以下に、各機関の見通しについて整理する。 3.1.2 IEA, “World Energy Outlook 2015” IEA は 2015 年 11 月 10 日に”World Energy Outlook 2015”を発表した。Current Policies Scenario、New Policies Scenario、450 Senario、Low Oil Price Scenario の 4 つのシナリオに ついて発表したが、ここでは Current Policies Scenario(以下、CPS)と New Policies Scenario (以下 NPS)について整理する。 - 146 - (1) 一次エネルギー需要見通し 前提条件 IEA は 2013 年から 2040 年までの世界の実質 GDP 伸び率を 3.5%、日本と韓国を除くアジア 3.4% 3.5% 4.9% 4.5% 2013-2040 2.1% 1.9% 3.4% 2.9% 4.0% 4.6% 4.3% 3.5% 5.1% 4.6% 1990-2013 0.9% 2.6% 1.9% 1.5% 1.8% 1.7% 2.5% 2.2% 8.0% 7.0% 6.0% 5.0% 4.0% 3.0% 2.0% 1.0% 0.0% 7.3% 5.2% の実質 GDP 伸び率を 5.2%、また 2040 年までの人口増加率を 0.9%と仮定している。 (出所)IEA, ”World Energy Outlook 2015”より作成 1.3% 0.9% 1.5% 1.0% 1.4% 0.8% 2.5% 2.2% 1.4% 1.5% 0.8% 0.7% 0.4% 0.5% 1.3% 0.6% 1.0% 0.0% 1.5% 2013-2040 0.4% 0.0% 2.0% 1990-2013 0.5% 0.2% 2.5% 1.1% 0.7% 3.0% 2.4% 図 3.1.2 地域別の実質 GDP 伸び率(IEA 前提条件) -0.2% 0.0% -0.5% (出所)IEA, ”World Energy Outlook 2015”より作成 図 3.1.3 地域別の人口増加率(IEA 前提条件) 一次エネルギー需要 一次エネルギー需要は、2013 年の 13,559 百万 toe(石油換算トン)から 2040 年まで CPS で 年平均 1.4%、NPS で年平均 1.0%で増加し、2040 年の一次エネルギー需要は、それぞれぞれ 19,643 百万 toe、17,934 百万 toe と予測されている。その結果、2040 年の NPS での一次エネル ギー需要は、CPS の 91%に止まると予測されている。 - 147 - Current Policies Scenario (百万toe) New Policies Scenario (百万toe) 19,643 20,000 20,000 17,934 17,345 16,349 15,041 10,000 14,743 15,000 再生可能 エネルギー 水 力 8,772 10,000 原子力 13,559 15,000 8,772 13,559 再生可能エネルギー 水 力 原子力 天然ガス 天然ガス 5,000 5,000 石 油 石 油 0 石 炭 0 1990 2013 2020 2030 2040 1990 2013 2020 2030 2040 (出所)IEA, ”World Energy Outlook 2015”より作成 図 3.1.4 一次エネルギー需要見通し(IEA) CPS を一次エネルギー源別にみると、化石エネルギーでは、天然ガス需要は 2040 年に向けて 年平均 1.7%で増加し、2040 年の需要量は 2013 年の 2,901 百万 toe から 4,610 百万 toe(1,709 百万 toe の増)と予測されている。同様に石炭需要は年平均 1.3%で増加し、2040 年の需要量は 5,618 百万 toe(1,689 百万 toe の増) 、石油需要は年平均 0.9%で増加し、2040 年の需要量は 5,348 百万 toe(1,129 百万 toe の増)と予測されている。その結果、一次エネルギーに占める天然ガス の比率は 2013 年の 21.4%から 2040 年には 23.5%まで増加するが、石炭の比率は 2013 年の 29.0%から 2040 年の 28.6%に減少、石油の比率は 31.1%から 27.2%に減少する。化石エネルギ ーの一次エネルギー需要に占める比率は 2013 年の 81.5%から 2040 年の 79.3%と 2.2 ポイント 減少するにとどまり、2040 年においても化石エネルギーへの依存度は変わらない。 表 3.1.2 一次エネルギー需要見通し(IEA、Current Policies Scenario) (百万toe) 実 績 1990 予 測 2013 2020 2030 年平均伸び率(%) 2040 13/90 40/13 石 炭 2,221 3,929 4,228 4,941 5,618 2.5% 1.3% 石 油 3,237 4,219 4,539 4,942 5,348 1.2% 0.9% 天然ガス 1,662 2,901 3,233 3,878 4,610 2.5% 1.7% 原子力 526 646 827 959 1,036 0.9% 1.8% 水 力 184 326 380 449 507 2.5% 1.7% 再生可能エネルギー 942 1,537 1,834 2,176 2,523 2.2% 1.9% 8,772 13,559 15,041 17,345 19,643 1.9% 1.4% 石 炭 25.3% 29.0% 28.1% 28.5% 28.6% 石 油 36.9% 31.1% 30.2% 28.5% 27.2% 天然ガス 19.0% 21.4% 21.5% 22.4% 23.5% 6.0% 4.8% 5.5% 5.5% 5.3% 合 計 (構成比) 原子力 水 力 2.1% 2.4% 2.5% 2.6% 2.6% 再生可能エネルギー 10.7% 11.3% 12.2% 12.5% 12.8% 合 計 100.0% 100.0% 100.0% 100.0% 100.0% (出所)IEA, ”World Energy Outlook 2015”より作成 - 148 - 一方、NPS では、CPS と比較して 2040 年での化石エネルギー需要の比率が 2.7 ポイント小さ くなる。化石エネルギー別の需要をみると、天然ガス需要は 2040 年に向けて年平均 1.4%で増加 し、2040 年の需要量は 2013 年の 2,901 百万 toe から 4,239 百万 toe(1,338 百万 toe の増)と予 測されている。石油需要は年平均 0.4%で増加し、2040 年の需要量は 4,735 百万 toe(516 百万 toe の増)と予測されている。石炭需要の年平均伸び率は 0.4%と CPS に比べて 0.9%低くなり、 2040 年の需要量は 4,414 百万 toe(485 百万 toe の増)にとどまる。その結果、一次エネルギー に占める天然ガスの比率は 2013 年の 21.4%から 2040 年には 23.6%まで増加し、石油の比率は 2013 年の 31.1%から 2040 年の 26.4%に、石炭の比率は 2013 年の 29.0%から 24.6%に減少す る。 表 3.1.3 一次エネルギー需要見通し(IEA、New Policies Scenario) (百万toe) 実 績 1990 予 測 2013 2020 2030 年平均伸び率(%) 2040 13/90 40/13 石 炭 2,221 3,929 4,033 4,219 4,414 2.5% 0.4% 石 油 3,237 4,219 4,461 4,612 4,735 1.2% 0.4% 天然ガス 1,662 2,901 3,178 3,691 4,239 2.5% 1.4% 原子力 526 646 831 1,042 1,201 0.9% 2.3% 水 力 184 326 383 467 531 2.5% 1.8% 942 1,537 1,857 2,318 2,815 2.2% 2.3% 8,772 13,559 14,743 16,349 17,934 1.9% 1.0% 石 炭 25.3% 29.0% 27.4% 25.8% 24.6% 石 油 36.9% 31.1% 30.3% 28.2% 26.4% 天然ガス 19.0% 21.4% 21.6% 22.6% 23.6% 6.0% 4.8% 5.6% 6.4% 6.7% 再生可能エネルギー 合 計 (構成比) 原子力 水 力 2.1% 2.4% 2.6% 2.9% 3.0% 再生可能エネルギー 10.7% 11.3% 12.6% 14.2% 15.7% 合 計 100.0% 100.0% 100.0% 100.0% 100.0% (出所) IEA, ”World Energy Outlook 2015”より作成 (2) 石炭需要見通し 上述の通り、石炭需要は CPS で年平均 1.3%で伸び、2040 年には 5,618 百万 toe まで増加し、 NPC では省エネルギー、利用効率の向上、燃料転換などから年平均 0.4%で伸び、2040 年には 4,414 百万 toe、 CPS に対して 1,204 百万 toe 少なくなると予測されている。 CPS と比較して NPC では各地域において石炭需要は減少すると予測されているが、需要量の多い(2013 年で世界の 65%を占め、今後も増加する)アジアでの需要量は 2040 年において 862 百万 toe 減少する。し かし、2040 年の NPS での需要量の CPS に対する減少率(NPS での需要量÷CPS での需要量) をみると、OECD 欧州が 61%、OECD 米州が 67%と大きく減少すると予測されている。 - 149 - Current Policies Scenario New Policies Scenario (百万toe) (百万toe) 5,618 6,000 4,941 5,000 3,929 4,228 6,000 中 東 5,000 中 東 中南米 4,000 4,000 3,000 2,221 2,000 1,000 3,929 4,033 4,219 4,414 中南米 アフリカ アフリカ 3,000 2,221 東欧・ユー 2,000 ラシア 東欧・ユーラシア OECD欧州 1,000 OECDアジア・オセアニア OECD欧州 OECD米州 アジア 0 0 1990 2013 2020 2030 2040 1990 2013 2020 2030 2040 (出所)IEA, ”World Energy Outlook 2015”より作成 図 3.1.5 石炭需要見通し(IEA) 地域別にみると、 石炭需要は CPS と NPS ともアジアを中心に非 OECD 地域で増加し一方で、 OECD 地域で減少すると予測されている。 アジアの石炭需要は、2013 年の 2,550 百万 toe から CPS では 2040 年に 4,206 百万 toe まで 増加し、NPS では 3,345 百万 toe(対 CPS80%)となる。東欧・ユーラシアは 2013 年の 219 百 万 toe から CPS では 2040 年に 215 百万 toe まで増加し、NPS では 223 百万 toe(対 CPS89%) となり、アフリカでは 2013 年の 104 百万 toe から CPS では 2040 年に 201 百万 toe と倍増し、 NPS では 181 百万 toe(対 CPS90%) 、中南米では 2013 年の 24 百万 toe から CPS では 2040 年に 53 百万 toe と倍増し、NPS では 46 百万 toe(対 CPS86%) 、中東では 2013 年の 3.1 百万 toe から CPS では 2040 年に 4.4 百万 toe まで増加し、NPS では 4.1 百万 toe(対 CPS93%)に なると予測されている。 一方、OECD 米州では、2013 年の 469 百万 toe から CPS では 2040 年に 453 百万 toe に減少 し、NPS では 305 百万 toe(対 CPS67%) 、OECD 欧州では、2013 年の 314 百万 toe から CPS では 2040 年に 222 百万 toe と 7 割まで減少し、さらに NPS では 134 百万 toe(対 CPS61%) と 2013 年の 4 割近くまで減少すると予測されている。OECD アジア・オセアニアでは、2013 年の 246 百万 toe から CPS では 2040 年に 227 百万 toe に減少し、NPS では 175 百万 toe(対 CPS77%)に減少すると予測されている。なお、日本の石炭需要については、2013 年の 121 百 万 toe から CPS では 2040 年に 102 百万 toe に減少し、NPS では 83 百万 toe(対 CPS81%)に 減少するとされている。 - 150 - 表 3.1.4 石炭需要見通し(IEA、Current Policies Scenario) (百万toe) 予 測 実 績 1990 2013 2020 2030 年平均伸び率(%) 2040 13/90 40/13 アジア 684 2,550 2,872 3,570 4,206 5.9% 1.9% OECDアジア・オセアニア 138 246 240 232 227 2.5% -0.3% OECD米州 491 469 458 468 453 -0.2% -0.1% OECD欧州 452 314 291 253 222 -1.6% -1.3% 東欧・ユーラシア 367 219 218 230 251 -2.2% 0.5% アフリカ 74 104 114 142 201 1.5% 2.5% 中南米 15 24 30 41 53 2.1% 3.0% 中 東 0.7 3.1 3.5 4.1 4.4 6.7% 1.3% 2,221 3,929 4,228 4,941 5,618 2.5% 1.3% 30.8% 64.9% 67.9% 72.3% 74.9% 6.2% 6.3% 5.7% 4.7% 4.0% OECD米州 22.1% 11.9% 10.8% 9.5% 8.1% OECD欧州 20.3% 8.0% 6.9% 5.1% 3.9% 東欧・ユーラシア 合 計 (地域比率) アジア OECDアジア・オセアニア 16.5% 5.6% 5.2% 4.7% 4.5% アフリカ 3.3% 2.6% 2.7% 2.9% 3.6% 中南米 0.7% 0.6% 0.7% 0.8% 0.9% 中 東 合 計 0.0% 0.1% 0.1% 0.1% 0.1% 100.0% 100.0% 100.0% 100.0% 100.0% (出所)IEA, ”World Energy Outlook 2015”より作成 表 3.1.5 石炭需要見通し(IEA、New Policies Scenario) (百万toe) 実 績 1990 予 測 2013 2020 2030 年平均伸び率(%) 2040 13/90 40/13 アジア 684 2,550 2,761 3,096 3,345 5.9% 1.0% OECDアジア・オセアニア 138 246 233 207 175 2.5% -1.3% OECD米州 491 469 404 335 305 -0.2% -1.6% OECD欧州 452 314 278 192 134 -1.6% -3.1% 東欧・ユーラシア 367 219 211 214 223 -2.2% 0.1% アフリカ 74 104 113 133 181 1.5% 2.1% 中南米 15 24 29 38 46 2.1% 2.5% 中 東 0.7 3.1 3.5 3.9 4.1 6.7% 1.0% 2,221 3,929 4,033 4,219 4,414 2.5% 0.4% 30.8% 64.9% 68.5% 73.4% 75.8% 6.2% 6.3% 5.8% 4.9% 4.0% OECD米州 22.1% 11.9% 10.0% 8.0% 6.9% OECD欧州 20.3% 8.0% 6.9% 4.6% 3.0% 東欧・ユーラシア 16.5% 5.6% 5.2% 5.1% 5.1% アフリカ 3.3% 2.6% 2.8% 3.2% 4.1% 中南米 0.7% 0.6% 0.7% 0.9% 1.0% 中 東 0.0% 0.1% 0.1% 0.1% 0.1% 100.0% 100.0% 100.0% 100.0% 100.0% 合 計 (地域比率) アジア OECDアジア・オセアニア 合 計 (出所)IEA, ”World Energy Outlook 2015”より作成 - 151 - 3.1.3 日本エネルギー経済研究所、「アジア/世界エネルギーアウトルック 2015」 日本エネルギー経済研究所(IEEJ)は 2015 年 10 月 20 日に「アジア/世界エネルギーアウト ルック 2015」を発表した。レファレンスケース、技術進展ケース、低価格ケースの 3 つのケー スについて発表したが、ここではレファレンスケース(以下、レファレンスとする)について取 りまとめた。 (1) 一次エネルギー需要見通し 前提条件 IEEJ は 2013 年から 2040 年までの世界の実質 GDP 伸び率を 2.9%、アジアの実質 GDP 伸び 率を 4.3%(日本を除くアジアの実質 GDP 伸び率を 5.0%) 、また 2040 年までの人口増加率を 0.9%と仮定している。 2.0% 2.8% 2.9% 4.7% 4.3% 2013-2040 2.0% 1.9% 3.1% 2.2% 3.9% 4.5% 2.8% 3.2% 2.7% 4.4% 5.1% 4.4% 1990-2013 1.0% 3.0% 1.7% 1.5% 4.0% 2.5% 2.2% 5.0% 2.4% 4.4% 4.3% 6.0% 1.0% 世界 非OECD OECD オセアニア アフリカ 中東 中南米 アセアン 非OECD ヨーロッパ アジア OECD ヨーロッパ 北米 0.0% (出所)日本エネルギー経済研究所、「アジア/世界エネルギーアウトルック 2015」より作成 1.4% 1.0% 1.3% 0.9% 世界 2013-2040 非OECD 1.3% 1.0% 1.4% 0.8% 1.4% 0.8% 1.2% 1990-2013 0.0% 0.5% 0.6% 1.0% 0.5% 0.2% 1.5% 1.0% 0.6% 2.0% 1.4% 2.5% 0.7% 0.4% 2.4% 3.0% 2.5% 2.3% 図 3.1.6 地域別の実質 GDP 伸び率(IEEJ 前提条件) OECD オセアニア アフリカ 中東 中南米 アセアン 非OECD ヨーロッパ アジア OECD ヨーロッパ 北米 -0.5% -0.2% 0.0% (出所)日本エネルギー経済研究所、「アジア/世界エネルギーアウトルック 2015」より作成 図 3.1.7 地域別の人口増加率(IEEJ 前提条件) 一次エネルギー需要 一次エネルギー需要は、2013 年の 13,555 百万 toe(石油換算トン)から年平均 1.3%で増加し、 2040 年の一次エネルギー需要は 18,963 百万 toe になると予測されている。期間を区切って需要 - 152 - の増加率をみると、2013 年から 2020 年までは年平均 1.7%で増加し、2020 年から 2030 年まで は年平均 1.2%、2030 年から 2040 年は年平均 1.0%と次第に増加率は低くなる。 (百万toe) 18,963 20,000 17,211 15,207 13,555 15,000 再生可能エネルギー 水 力 10,000 8,768 原子力 天然ガス 5,000 石 油 石 炭 0 1990 2013 2030 2020 2040 (出所)日本エネルギー経済研究所、「アジア/世界エネルギーアウトルック 2015」より作成 図 3.1.8 一次エネルギー需要見通し(IEEJ レファレンスケース) 一次エネルギー源別にエネルギー需要をみると、化石エネルギーでは、天然ガス需要は 2040 年に向けて年平均 1.9%で増加し、2040 年の需要量は 2013 年の 2,902 百万 toe から 4,741 百万 toe(1,839 百万 toe 増)となる。同様に石油需要は年平均 1.1%で増加し、2040 年の需要量は 5,496 百万 toe(1,287 百万 toe 増)となる。石炭需要の年平均増加量は 0.6%と低く、2013 年の 3,928 百万 toe から 2040 年の 4,577 百万 toe と 650 百万 toe 増加する。その結果、天然ガス需要は石 炭需要を上回る。一次エネルギーに占める天然ガスの比率は 2013 年の 21.4%から 2040 年には 25.0%まで増加し、石油の比率は 2013 年の 31.1%から 2040 年には 29.0%まで減少する。 表 3.1.6 一次エネルギー需要見通し(IEEJ レファレンスケース) (百万toe) 実 績 1990 予 測 2013 2020 2030 年平均伸び率(%) 2040 14/90 35/14 石 炭 2,221 3,928 4,143 4,367 4,577 2.5% 石 油 3,232 4,210 4,616 5,121 5,496 1.2% 1.1% 天然ガス 1,663 2,902 3,359 4,096 4,741 2.4% 1.9% 原子力 526 646 844 981 1,127 0.9% 2.3% 水 力 184 326 369 402 434 2.5% 1.1% 再生可能エネルギー 942 1,544 1,877 2,243 2,587 2.2% 2.1% 8,768 13,555 15,207 17,211 18,963 1.9% 1.3% 石 炭 25.3% 29.0% 27.2% 25.4% 24.1% 石 油 36.9% 31.1% 30.4% 29.8% 29.0% 天然ガス 合 計 (構成比) 19.0% 21.4% 22.1% 23.8% 25.0% 原子力 6.0% 4.8% 5.5% 5.7% 5.9% 水 力 2.1% 2.4% 2.4% 2.3% 2.3% 再生可能エネルギー 10.7% 11.4% 12.3% 13.0% 13.6% 合 計 100.0% 100.0% 100.0% 100.0% 100.0% (出所) 日本エネルギー経済研究所、「アジア/世界エネルギーアウトルック 2015」より作成 - 153 - 0.6% 石炭の比率は 2013 年の 29.0%から 2040 年には 24.1%まで減少する。なお、化石エネルギー の一次エネルギー需要に占める比率は 2013 年の 81.4%から 2040 年の 78.1%と 3.3 ポイント減 少する。 (2) 石炭需要見通し 上述の通り、石炭需要は 2013 年から 2040 年まで年平均 0.6%で伸び、2040 年には 5,618 百 万 toe まで増加する。地域別にみると、アジア、アフリカ、中南米、中東で増加し、北米、OECD 欧州、非 OECD 欧州、オセアニアで減少する。 (百万toe) 5,000 4,500 3,928 4,367 4,143 4,577 中 東 4,000 オセアニア 3,500 中南米 3,000 2,500 アフリカ 2,221 2,000 非OECD欧州 1,500 OECD欧州 1,000 北米 500 アジア 0 1990 2013 2020 2030 2040 (出所)日本エネルギー経済研究所、「アジア/世界エネルギーアウトルック 2015」より作成 図 3.1.9 石炭需要見通し(IEEJ レファレンスケース) アジアの石炭需要は、2013 年の 2,747 百万 toe から 2040 年の 3,546 百万 toe(年平均 0.9%、 798 百万 toe 増)まで増加する。2000 年代以降に需要が急増した中国の石炭需要は次第にその増 加が穏やかになり、インドやアセアンで石炭需要は増加する。アフリカでは 2013 年の 104 百万 toe から 2040 年には 167 百万 toe(年平均 1.8%、63 百万 toe 増)となり、中南米では 2013 年 の 43 百万 toe から 2040 年の 167 百万 toe(年平均 2.0%、31 百万 toe 増)となる。 一方、北米の石炭需要は、環境対策(大気汚染、地球温暖化)とシェールガス増産などにより 2013 年の 450 百万 toe から 2040 年には 269 百万 toe(年平均-1.9%、181 百万 toe 減)と 2/3 に減少する。欧州の石炭需要は、主に環境対策(大気汚染、地球温暖化)により、OECD 欧州で は 2013 年の 307 百万 toe から 2040 年には 265 百万 toe(年平均-0.5%、45 百万 toe 減)となり、 非 OECD 欧州では 2013 年の 219 百万 toe から 2040 年には 192 百万 toe(年平均-0.5%、27 百 万 toe 減)となる。 3.1.4 EIA, “International Energy Outlook 2016” 米国エネルギー情報局(EIA)は 2016 年 5 月 11 日に“International Energy Outlook 2016” を発表した。レファレンスケースに加え、高成長ケース、低成長ケース、石油高価格ケース、石 油低価格ケースの 5 つのケースについて発表したが、ここではレファレンスケース(以下、レフ ァレンスとする)について取りまとめた。 - 154 - 表 3.1.7 石炭需要見通し(IEEJ ファレンスケース) (百万toe) 実 績 1990 予 測 2013 2020 年平均伸び率(%) 2030 2040 13/90 40/13 アジア 786 2,747 2,992 3,271 3,546 5.6% 0.9% 北米 485 450 417 345 269 -0.3% -1.9% OECD欧州 449 307 294 285 265 -1.6% -0.5% 非OECD欧州 367 219 210 198 192 -2.2% -0.5% アフリカ 74 104 126 144 167 1.5% 1.8% 中南米 20 43 45 60 74 3.3% 2.0% オセアニア 36 47 48 47 45 1.1% -0.2% 3 10 12 16 21 5.4% 2.7% 2,221 3,928 4,143 4,367 4,577 2.5% 0.6% アジア 35.4% 69.9% 72.2% 74.9% 77.5% 北米 21.8% 11.4% 10.1% 7.9% 5.9% OECD欧州 20.2% 7.8% 7.1% 6.5% 5.8% 非OECD欧州 16.5% 5.6% 5.1% 4.5% 4.2% アフリカ 3.3% 2.6% 3.0% 3.3% 3.6% 中南米 0.9% 1.1% 1.1% 1.4% 1.6% オセアニア 1.6% 1.2% 1.2% 1.1% 1.0% 中 東 0.1% 0.3% 0.3% 0.4% 0.5% 100.0% 100.0% 100.0% 100.0% 100.0% 中 東 合 計 (地域比率) 合 計 (出所)日本エネルギー経済研究所、「アジア/世界エネルギーアウトルック 2015」より作成 (1) 一次エネルギー需要見通し 前提条件 EIA は 2012 年から 2040 年までの世界の実質 GDP 伸び率を 2.8%、日本と韓国を除くアジア の実質 GDP 伸び率を 4.6%、また 2040 年までの人口増加率を 0.9%と仮定して、一次エネルギ 1.0% 0.0% (出所)EIA, ”International Energy Outlook 2016”より作成 図 3.1.10 地域別の実質 GDP 伸び率(EIA レファレンスケース前提条件) - 155 - 2.8% 1.9% 4.0% 4.7% 2.5% 2.7% 1.3% 2.0% 1.6% 3.0% 2012-2040 2.4% 4.0% 3.5% 5.0% 4.6% ー予測を行っている。 0.5% 0.9% 1.0% 0.9% 0.6% 0.0% 0.2% 1.0% 0.7% 1.5% 0.4% 2012-2040 2.0% 2.1% 1.7% 2.5% 0.0% 0.0% -0.5% (出所)EIA, ”International Energy Outlook 2016”より作成 図 3.1.11 地域別の人口増加率(EIA レファレンスケース前提条件) 一次エネルギー需要 一次エネルギー需要は、2012 年の 13,842 百万 toe(石油換算トン)から年平均 1.4%で増加し、 2040 年の一次エネルギー需要は 20,536 百万 toe になると予測されている。期間を区切って需要 の増加率をみると、2012 年から 2020 年まで年平均 1.7%で増加し、2020 年から 2030 年までは 年平均 1.33%と増加率は低くなり、2030 年から 2040 年の増加率は年平均 1.28%とわずかに低 くなると予測されている。 (百万toe) 25,000 20,536 20,000 18,087 水 力/再生可能エネルギー 15,849 15,000 13,621 13,842 原子力 天然ガス 10,000 石 油 5,000 石 炭 0 2011 2012 2020 2030 2040 (出所)EIA, ”International Energy Outlook 2016”より作成 図 3.1.12 一次エネルギー需要見通し(EIA レファレンスケース) 一次エネルギー源別にエネルギー需要をみると、化石エネルギーでは、天然ガス需要は 2040 年に向けて年平均 1.9%で増加し、2040 年の需要量は 2012 年の 3,130 百万 toe から 5,327 百万 toe(2,197 百万 toe 増)になると予測されている。同様に石油需要は年平均 1.1%で増加し、2040 年の需要量は 6,200 百万 toe(1,575 百万 toe 増)と予測されている。石炭需要の年平均増加量は 0.6%と低く、2012 年の 3,862 百万 toe から 2040 年の 4,540 百万 toe と 678 百万 toe 増加すると 予測されている。その結果、天然ガス需要は 2030 年以降で石炭需要を上回る。一次エネルギー に占める天然ガスの比率は 2012 年の 22.6%から 2040 年には 25.9%まで増加し、石油の比率は 2012 年の 33.4%から 2040 年には 30.2%まで減少する。 石炭の比率は 2012 年の 27.9%から 2040 - 156 - 年には 22.1%まで減少する。なお、化石エネルギーの一次エネルギー需要に占める比率は 2012 年の 83.9%から 2040 年の 78.2%と 5.7 ポイント減少する。 表 3.1.8 一次エネルギー需要見通し(EIA レファレンスケース) (百万toe) 実 績 2011 年平均伸び率(%) 予 測 2012 2020 2030 2040 2040/2012 石 炭 3,830 3,862 4,249 4,396 4,540 0.6% 石 油 4,545 4,625 5,145 5,589 6,200 1.1% 天然ガス 3,064 3,130 3,485 4,363 5,327 1.9% 661 617 779 1,013 1,159 2.3% 原子力 水 力/再生可能エネルギー 1,521 1,607 2,192 2,725 3,310 2.6% 13,621 13,842 15,849 18,087 20,536 1.4% 石 炭 28.1% 27.9% 26.8% 24.3% 22.1% 石 油 33.4% 33.4% 32.5% 30.9% 30.2% 天然ガス 22.5% 22.6% 22.0% 24.1% 25.9% 4.9% 11.2% 100.0% 4.5% 11.6% 100.0% 4.9% 13.8% 100.0% 5.6% 15.1% 100.0% 5.6% 16.1% 100.0% 合 計 (構成比) 原子力 水 力/再生可能エネルギー 合 計 (出所)EIA, ”International Energy Outlook 2016”より作成 (2) 石炭需要見通し 上述の通り、石炭需要は 2012 年から 2040 年まで年平均 0.6%で伸び、2040 年には 4,540 百 万 toe まで増加する。地域別にみると、OECD 欧州と Non-OECD 欧州・ユーラシアで微減し、そ の他の地域で増加する。 (百万toe) 5,000 4,249 4,500 4,000 3,830 4,396 4,540 中 東 3,862 Non-OECD米州 3,500 アフリカ 3,000 Non-OECD欧州・ユーラシア 2,500 2,000 OECD欧州 1,500 OECD米州 1,000 OECDアジア・オセアニア 500 Non-OECDアジア 0 2011 2012 2020 2030 2040 (出所)EIA, ”International Energy Outlook 2016”より作成 図 3.1.13 石炭需要見通し(EIA レファレンスケース) Non-OECD アジア(日本と韓国を除くアジア)の石炭需要は、2012 年の 2,407 百万 toe から 2040 年の 3,012 百万 toe(年平均 0.8%、605 百万 toe 増)まで増加する。2000 年代以降に石炭 需要が急増した中国では次第にその増加が穏やかになりピークを打つ。インドやアセアンで石炭 需要は増加する。アフリカでは 2012 年の 120 百万 toe から 2040 年には 175 百万 toe(年平均 - 157 - 1.4%、55 百万 toe 増)となり、Non-OECD 米州では 2012 年の 22 百万 toe から 2040 年の 29 百万 toe(年平均 1.0%、7 百万 toe 増)となる。また、OECD 米州の石炭需要は、2012 年 470 百万 toe から 2020 年に 512 百万 toe まで増加し、2030 年には 507 百万 toe、2040 年の 504 百 万 toe まで減少する。他の機関が OECD 米州の石炭需要は環境規制等により大きく減少すると予 測している中、EIA の予測では 2020 年以降に減少するものの、その数量は小さく、2040 年の需 要量は 2012 年の消費量の 34 百万 toe 上回ると予測されている。CO2 規制等が予測に考慮されて いないと思われる。 一方、欧州の石炭需要は減少が見込まれているが、その減少量は小さい。石炭需要量は 2012 年の 338 百万 toe から 2040 年の 318 百万 toe と 20 百万 toe 減少するに止まる。環境対策(大気 汚染、地球温暖化)の影響を小さく見ていると思われる。同様に Non-OECD 欧州・ユーラシアで も石炭需要は、2014 年の 258 百万 toe から 2040 年の 242 百万 toe まで減少すると予測されてい る。 表 3.1.9 石炭需要見通し(EIA レファレンスケース) (百万toe) 予 測 実 績 2011 Non-OECDアジア 2012 2020 2030 年平均伸び率(%) 2040 2040/2012 2,350 2,407 2,752 2,882 3,012 0.8% OECDアジア・オセアニア 244 245 258 253 255 0.1% OECD米州 528 470 512 507 504 0.2% OECD欧州 326 338 332 329 318 -0.2% Non-OECD欧州・ユーラシア 243 258 236 243 242 -0.2% アフリカ 115 120 135 152 175 1.4% Non-OECD米州 22 22 21 25 29 1.0% 中 東 1.8 2.3 2.9 4.3 5.6 3.2% 3,830 3,862 4,249 4,396 4,540 0.6% 61.4% 62.3% 64.8% 65.6% 66.3% 6.4% 6.3% 6.1% 5.8% 5.6% OECD米州 13.8% 12.2% 12.1% 11.5% 11.1% OECD欧州 8.5% 8.7% 7.8% 7.5% 7.0% Non-OECD欧州・ユーラシア 6.3% 6.7% 5.6% 5.5% 5.3% アフリカ 3.0% 3.1% 3.2% 3.5% 3.9% Non-OECD米州 0.6% 0.6% 0.5% 0.6% 0.6% 中 東 0.0% 0.1% 0.1% 0.1% 0.1% 100.0% 100.0% 100.0% 100.0% 100.0% 合 計 (地域比率) Non-OECDアジア OECDアジア・オセアニア 合 計 (出所) EIA, ”International Energy Outlook 2016”より作成 3.1.5 BP, “BP Energy Outlook 2016” (1) 一次エネルギー需要見通し BP は 2016 年2 月 10 日に 2035 年までの一次エネルギー需要アウトルック”BP Energy Outlook 2016 edition”を発表した。同アウトルックによると、世界の一次エネルギー需要は、2014 年の 8,772 百万 toe(石油換算トン)から年平均 1.4%で増加し、2035 年の一次エネルギー需要量は 17,307 百万 toe になると予測されている。 - 158 - (百万toe) 20,000 17,307 16,479 15,542 14,431 15,000 再生可能エネルギー 12,928 水 力 10,000 8,133 原子力 天然ガス 5,000 石 油 石 炭 0 1990 2014 2020 2025 2030 2035 (出所)BP, ”BP Energy Outlook 2016 edition”より作成 図 3.1.14 一次エネルギー需要見通し(BP) 一次エネルギー源別にみると、天然ガス需要は 2035 年に向けて年平均 1.8%で増加し、2035 年の需要量は 2014 年の 3,066 百万 toe から 4,428 百万 toe(1,363 百万 toe 増)に、同様に石油 需要は年平均 0.9%で増加し、2035 年の需要量は 4,272 百万 toe(904 百万 toe 増)になると予 測されている。石炭需要は年平均 0.5%で増加し、2014 年の 3,882 百万 toe から 2025 年に 4,101 百万 toe、3035 年には 4,272 百万 toe(2014 年からの増加量は 390 百万 toe)になると予測され ている。その結果、一次エネルギーに占める天然ガスの比率は 2014 年の 23.7%から 2035 年に は 25.6%まで増加し、石油の比率は 2014 年の 32.6%から 2035 年の 29.6%に減少する。石炭の 比率は 2014 年の 30.0%から 2025 年に 26.4%に減少し、2035 年には 24.7%まで減少すると予 測されている。化石エネルギーの一次エネルギー需要に占める比率は 2014 年の 86.3%から 2035 年には 79.8%まで減少するが、 2035 年においても化石エネルギーの重要性は大きく変わらない。 表 3.1.10 一次エネルギー需要見通し(BP) (百万toe) 実 績 1990 年平均伸び率(%) 予 測 2014 2020 2025 2030 2035 14/90 35/14 石 炭 2,233 3,882 4,011 4,101 4,188 4,272 2.3% 0.5% 石 油 3,161 4,211 4,602 4,839 5,010 5,115 1.2% 0.9% 天然ガス 1,768 3,066 3,521 3,874 4,136 4,428 2.3% 1.8% 原子力 453 574 726 788 851 859 1.0% 1.9% 水 力 490 879 986 1,102 1,189 1,274 2.5% 1.8% 29 317 585 838 1,105 1,359 10.5% 7.2% 8,133 12,928 14,431 15,542 16,479 17,307 1.9% 1.4% 石 炭 27.5% 30.0% 27.8% 26.4% 25.4% 24.7% 石 油 38.9% 32.6% 31.9% 31.1% 30.4% 29.6% 天然ガス 21.7% 23.7% 24.4% 24.9% 25.1% 25.6% 原子力 5.6% 4.4% 5.0% 5.1% 5.2% 5.0% 水 力 6.0% 6.8% 6.8% 7.1% 7.2% 7.4% 再生可能エネルギー 合 計 (構成比) 再生可能エネルギー 合 計 0.4% 2.5% 4.1% 5.4% 6.7% 7.9% 100.0% 100.0% 100.0% 100.0% 100.0% 100.0% (出所)BP, ”BP Energy Outlook 2016 edition”より作成 - 159 - (2) 石炭需要見通し 上述の通り、石炭需要は 2035 年に向けて年平均 0.5%で増加し、2014 年の 3,882 百万 toe か ら 2025 年に 4,101 百万 toe、3035 年には 4,272 百万 toe になると予測されている。地域別では、 アジア太平洋、アフリカ、中南米で増加し、欧州・ユーラシアと北米で大きく減少する。 (百万toe) 5,000 4,500 3,882 4,000 4,011 4,101 4,188 4,272 中 東 3,500 中南米 3,000 2,500 2,233 アフリカ 2,000 北 米 1,500 欧州・ユーラシア 1,000 500 アジア太平洋 0 1990 2014 2020 2025 2030 2035 (出所)BP, ”BP Energy Outlook 2016 edition”より作成 図 3.1.15 石炭需要見通し(BP) アジア太平洋の石炭需要は、2014 年の 2,777 百万 toe から 2035 年の 3,522 百万 toe(年平均 1.1%、746 百万 toe 増)となる。なお、中国の石炭需要は 2027 年をピークに減少すると予想さ れている。 また、 アフリカでは 2014 年の 99 百万 toe から 2035 年には 140 百万 toe (年平均 1.7%、 41 百万 toe 増)となり、中南米では 2014 年の 31.6 百万 toe から 2035 年の 34.2 百万 toe(年平 均 0.4%、2.6 百万 toe 増)とわずかに増加すると予測されている。 表 3.1.11 石炭需要見通し(BP) (百万toe) 実 績 1990 予 測 2014 2020 2025 年平均伸び率(%) 2030 2035 14/90 35/14 アジア太平洋 820 2,777 2,998 3,224 3,389 3,522 5.2% 1.1% 欧州・ユーラシア 804 477 468 431 385 345 -2.2% -1.5% 北 米 514 489 431 334 284 242 -0.2% -3.3% 1.7% アフリカ 75 99 110 117 126 140 1.1% 中南米 18 32 33 32 34 34 2.5% 0.4% 中 東 3.1 9.7 9.3 9.1 8.9 8.7 4.9% -0.5% 2,233 3,882 4,011 4,101 4,188 4,272 2.3% 0.5% アジア太平洋 36.7% 71.5% 74.7% 78.6% 80.9% 82.4% 欧州・ユーラシア 36.0% 12.3% 11.7% 10.5% 9.2% 8.1% 北 米 23.0% 12.6% 10.7% 8.1% 6.8% 5.7% アフリカ 3.4% 2.5% 2.7% 2.8% 3.0% 3.3% 中南米 0.8% 0.8% 0.8% 0.8% 0.8% 0.8% 合 計 (地域比率) 中 東 合 計 0.1% 0.3% 0.2% 0.2% 0.2% 0.2% 100.0% 100.0% 100.0% 100.0% 100.0% 100.0% (出所)BP, ”BP Energy Outlook 2016 edition”より作成 - 160 - 一方、北米では 2014 年の 489 百万 toe から 2035 年には 242 百万 toe(年平均-3.3%、247 百 万 toe 減)とほぼ半減し、欧州・ユーラシアでは 2014 年の 477 百万 toe から 2035 年の 345 百 万 toe(年平均-1.5%、131 百万 toe 減)まで減少すると予測されている。なお、EU での石炭消 費量が半減すると見込まれている。 - 161 - 3.2 炭種別石炭需要予測 日本エネルギー経済研究所、 「アジア/世界エネルギーアウトルック 2015」では、石炭需給予 測にあたり、炭種別(一般炭、原料炭、褐炭)の予測をあわせて実施している。ここでは、この 予測結果に基づいて、炭種別の需要見通しを整理する。 石炭需要は、2000 年代に入りアジア、特に中国を中心に急増し、2000 年からの 2013 年まで 年平均 4.1%で増加した。今後も石炭需要は、アジアを中心に 2013 年の 79 億 9,500 万トンから 2040 年向け年平均 0.6%で増加し、2040 年には 94 億 1,800 万トンとなる。 炭種別に 2040 年までの需要をみると、一般炭需要は電力向け需要を中心に 2013 年から 2040 年まで年平均 0.8%で増加し、2040 年の需要量は 77 億 4,100 万トンに増加する。原料炭需要は 2013 年の 10 億 1,600 万トンから 2040 年には 9 億 500 万トンまで減少する。原料炭需要はこれ まで急増していた中国の需要量がピークを向え、2014 年以降で漸減すると見込まれている。褐炭 は 2013 年の 8 億 3,000 万トンから 2040 年には 7 億 7,100 万トンまで減少する。 以下に一般炭、 原料炭の地域別・主要国別の需要見通しを整理する。 (百万トン) 10,000 9,000 7,995 8,441 8,944 9,418 8,000 7,000 6,000 5,000 4,748 4,638 褐炭 4,000 原料炭 3,000 一般炭 2,000 1,000 0 1990 2000 2013 2020 2030 2040 (出所)日本エネルギー経済研究所、「アジア/世界エネルギーアウトルック 2015」より作成 図 3.2.1 石炭需要見通し(IEEJ) 表 3.2.1 石炭需要見通し(IEEJ) (百万トン) 一般炭 原料炭 褐 炭 合 計 年平均伸び率(%) 増減量 1990 2000 2013 2020 2030 2040 2,954 3,422 6,149 6,655 7,217 7,741 1,592 2040 - 2013 '13/'00 '20/'13 '30/'20 '40/'30 '40/'13 4.6 1.1 0.8 0.7 0.9 555 477 1,016 977 918 905 -110 6.0 -0.6 -0.6 -0.1 -0.4 1,129 850 830 810 809 771 -59 -0.2 -0.4 0.0 -0.5 -0.3 4,638 4,748 7,995 8,441 8,944 9,418 1,423 4.1 0.8 0.6 0.5 0.6 (出所)日本エネルギー経済研究所、「アジア/世界エネルギーアウトルック 2015」より作成 - 162 - (1) 一般炭 世界の一般炭需要は、2013 年の 61 億 4,900 万トンから 2040 年には 77 億 4,100 万トンに増加 する。 地域別にみると、一般炭需要は、非 OECD では経済発展に伴い増大する電力需要を安価な燃 料である石炭で賄うケースが多いことから、アジアを中心にアフリカや、中南米、中東において 増加する。一方で、北米、OECD 欧州など先進地域では、地球温暖化への対応、大気汚染規制、 再生可能エネルギーの拡大やシェールガス生産の影響から石炭火力からの発電電力量が減少する ため一般炭需要は減少する。 アジアでは、中国の一般炭需要の増加は次第に穏やかになり、2030 年代はほぼ横ばいとなる。 一方でインドの一般炭需要は発電向け需要を中心に 2040 年まで年平均 3.3%で増加し、2040 年 には 2013 年の 2.4 倍の 15 億 9,900 万トンにまで増加する。アセアン諸国では各国で石炭需要は 増加するが、中でもインドネシアの石炭需要は 2040 年に向け年平均 4.8%で増加し、ベトナムで は年平均 5.1%、フィリピンでは年平均 3.5%で増加する。この結果、アジアの石炭需要は 2040 年に向けて年平均 1.2%で増加し、2013 年の 45 億 6,300 万トンから 2040 年には 63 億 6,000 万 トンに増加する。 アフリカの一般炭需要は、2040 年に向けては年平均 1.7%で増加し、2013 年の 1 億 9,100 万 トンから 2040 年には 2 億 9,800 万トンまで増加する。中南米では年平均 2.4%で増加し、2013 年の 5,500 万トンから 2040 年には 1 億 500 万トンに増加する。 一方で、北米と OECD 欧州の一般炭需要はそれぞれ年平均 2.0%と年平均 0.7%で減少する。 特に北米ではカナダが石炭の国内消費を減じる方針であること、米国では既存火力への規制によ り石炭火力の閉鎖が進められていること、CO2 規制により石炭火力が今後新設されないことを前 提に、発電所での石炭消費量が減少することを見込んでいる。その結果、石炭需要量は 2013 年 の 7 億 7,800 万トンから 2040 年には 4 億 5,600 万トンと 2013 年比で 3 億 2,200 万トン減少す る。OECD 欧州では、再生可能エネルギーの増加と環境政策(規制)の影響から石炭需要は 2013 年の 2 億 8,000 万トンから 2040 年には 2 億 3,400 万トンまで減少する。 (百万トン) 9,000 7,741 8,000 7,217 中東 6,655 7,000 6,149 オセアニア 6,000 アフリカ 5,000 4,000 欧州非OECD 2,954 3,422 欧州OECD 3,000 中南米 2,000 北米 1,000 アジア 0 1990 2000 2013 2020 2030 2040 (出所)日本エネルギー経済研究所、「アジア/世界エネルギーアウトルック 2015」より作成 図 3.2.2 一般炭要見通し(IEEJ) - 163 - 表 3.2.2 一般炭需要見通し(IEEJ) (百万トン) 年平均伸び率(%) 増減 1990 2000 2013 2020 2030 2040 736 913 778 714 589 456 -322 -1.2 -1.2 -1.9 -2.5 -2.0 702 866 751 692 575 448 -302 -1.1 -1.2 -1.8 -2.5 -1.9 15 26 55 58 83 105 50 5.7 0.9 3.6 2.4 2.4 OECD欧州 366 283 280 263 252 234 -46 -0.1 -0.9 -0.4 -0.7 -0.7 非OECD欧州 355 174 210 201 187 191 -19 1.4 -0.6 -0.7 0.2 -0.3 186 98 85 77 76 73 -12 -1.1 -1.4 -0.1 -0.4 -0.5 4 11 15 18 24 31 16 2.4 2.9 2.8 2.7 2.8 128 164 191 227 259 298 107 1.1 2.6 1.3 1.4 1.7 北米 米国 中南米 ロシア 中東 アフリカ 南アフリカ 2040 - 2013 '13/'00 '20/'13 '30/'20 '40/'30 '40/'13 119 155 178 207 225 249 71 1.1 2.2 0.9 1.0 1.2 1,304 1,791 4,563 5,110 5,759 6,360 1,797 7.5 1.6 1.2 1.0 1.2 中国 969 1,218 3,400 3,700 3,883 3,892 492 8.2 1.2 0.5 0.0 0.5 インド 166 296 667 840 1,156 1,599 932 6.4 3.4 3.2 3.3 3.3 日本 51 96 142 144 153 152 11 3.1 0.1 0.6 -0.1 0.3 韓国 33 52 99 100 114 112 13 5.0 0.2 1.3 -0.2 0.5 台湾 13 42 59 59 58 56 -3 2.8 -0.2 -0.1 -0.2 -0.2 インドネシア マレーシア フィリピン タイ ベトナム オセアニア 6 2 3 0 4 45 2,954 23 4 9 4 8 58 3,422 60 24 19 19 28 57 6,149 94 31 22 23 41 62 6,655 147 41 33 33 66 64 7,217 214 50 48 43 106 66 7,741 154 26 29 25 78 8 1,592 7.8 15.7 6.2 13.2 10.3 -0.1 4.6 6.7 3.6 2.4 2.9 5.4 1.1 1.1 4.6 2.7 4.3 3.9 4.9 0.4 0.8 3.8 2.1 3.6 2.7 4.9 0.2 0.7 4.8 2.7 3.5 3.2 5.1 0.5 0.9 アジア 世界計 (出所)日本エネルギー経済研究所、「アジア/世界エネルギーアウトルック 2015」より作成 (2) 原料炭 世界の原料炭需要は、2013 年の 10 億 1,600 万トンから 2040 年には 9 億 1,200 万トンに 1 億 トン以上減少する。 アジアの原料炭需要をみると、中国の鉄鋼需要が経済成長の減速からピークアウトすると見込 まれることから、中国の原料炭需要は今後減少すると見ており、2013 年の 6 億 2,600 万トンか ら 2040 年には 4 億 700 万トンまで減少する。アジア地域で原料炭需要が顕著に増加するのはイ ンドで、2040 年に向け 3.4%で増加し、需要量は 2013 年の 9,300 万トンから 2040 年の 2 億 200 万トンまで増加する。また、インドネシアやベトナムで一貫製鉄所の計画(インドネシアは 1 期 工事が既に完成)があり、わずかではあるが原料炭需要が増加すること見込まれる。韓国、台湾 の原料炭需要はほぼ横ばいで推移し、日本は鉄鋼需要の減少に伴い原料炭需要は漸減する。その 結果、アジアの原料炭需要量は、中国での需要減少に引っ張られることになり、2013 年の 8 億 1,000 万トンから 2040 年には 6 億 9,500 万トンまで減少する。 中南米ではブラジルでの鉄鋼需要の増加により原料炭需要は2040 年に向けて 1.4%で増加する。 一方で、米国、OECD 欧州では、鉄鋼需要が停滞することから原料炭需要は横這いから微減とな る。 - 164 - (百万トン) 1,200 1,016 1,000 980 925 中東 912 オセアニア 800 600 アフリカ 欧州非OECD 555 477 欧州OECD 中南米 400 北米 200 アジア 0 1990 2000 2013 2020 2030 2040 (出所)日本エネルギー経済研究所、「アジア/世界エネルギーアウトルック 2015」より作成 図 3.2.3 原料炭需要見通し(IEEJ) 表 3.2.3 原料炭需要見通し(IEEJ) (百万トン) 北米 米国 中南米 1990 2000 2013 2020 40 30 22 35 26 19 年平均伸び率(%) 増減 2030 2040 25 24 24 2 -2.5 1.8 -0.1 -0.2 0.0 21 20 20 0 -2.2 0.8 -0.2 -0.2 0.1 2040 - 2013 '13/'00 '20/'13 '30/'20 '40/'30 '40/'13 16 15 17 19 23 24 7 1.4 0.9 2.1 0.6 1.4 欧州OECD 129 93 67 67 65 63 -4 -2.5 -0.1 -0.3 -0.3 -0.6 欧州非OECD 147 89 91 92 94 93 3 0.2 0.3 0.2 -0.1 -0.2 54 44 53 50 53 53 0 1.4 -0.7 0.5 0.1 -0.3 中東 1 2 1 1 2 2 2 -6.4 8.6 3.4 3.1 4.8 アフリカ 9 6 4 5 5 5 1 -2.1 1.9 0.3 0.0 0.8 ロシア 南アフリカ アジア 6 3 4 4 4 4 1 2.9 2.2 0.3 0.0 1.0 207 238 810 768 708 697 -114 9.9 -0.8 -0.8 -0.2 -0.2 -1.2 中国 80 119 626 561 466 407 -220 13.6 -1.6 -1.8 -1.4 インド 39 36 93 115 148 202 109 7.6 3.0 2.6 3.2 3.4 日本 65 58 54 47 43 38 -16 -0.5 -1.9 -0.8 -1.4 -1.2 韓国 12 19 29 32 33 29 0 3.2 1.1 0.4 -1.2 -0.3 台湾 4 5 7 8 8 7 0 1.8 1.9 0.0 -1.0 0.6 インドネシア 0 0 0 3 5 8 8 -1.8 62.9 5.0 4.0 18.7 ベトナム 0 0 0 2 4 5 5 - 35.9 8.0 1.7 - 6 5 4 4 4 4 0 -2.0 0.0 0.0 0.0 0.0 6 5 4 4 4 4 0 -2.4 0.0 0.0 0.0 0.0 555 477 1,016 980 925 912 -104 6.0 -0.5 -0.6 -0.1 -0.2 オセアニア 豪州 世界計 (出所)日本エネルギー経済研究所、 「アジア/世界エネルギーアウトルック 2015」より作成 - 165 - - 166 - 平成 27 年度海外炭開発支援事業 海外炭開発高度化等調査 「我が国への石炭供給にかかるリスク分析等調査」 平成 28 年 5 月 発行 発行: 〒105-0001 東京都港区虎ノ門 2 丁目 10 番 1 号 虎ノ門ツインビルディング http://www.jogmec.go.jp/ おことわり:本レポートの内容は、必ずしも独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構とし ての見解を示すものではありません。正確な情報をお届けするように最大限の努力を行っており ますが、本レポートに基づきとられた行動の帰結につき、独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物 資源機構及びレポート執筆者は何らの責を負いかねます。なお、本報告書の内容を引用等する際 は、あらかじめ独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構の許可を受けてください。
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