体験共有型のネットワークサービスモデル - y

画像電子学会
The Institute of Image Electronics
Engineers of Japan
年次大会予稿
Proceedings of the Media Computing Conference 体験共有型のネットワークサービスモデル
Network Service Model for Sharing the experiences
新 麗
Ray ATARASHI
株式会社 IIJ イノベーションインスティテュート IIJ Innovation Institute Inc.
E-mail:
1. は じ め に
SNS な ど の ソ ー シ ャ ル ア プ リ ケ ー シ ョ ン が 普 及 し
たことにより、経験したことを離れた場所にいる人と
[email protected]
ストリーム M の表示時間 t が等しいということになる。
これは、限定された範囲で、ネットワークシステムへ
の要求条件として提示できるものとなる。
共有する、体験共有が新たなコミュニケーションとし
ネ ッ ト ワ ー ク 技 術 は 、す べ て の 人 が つ な が る こ と を
て普及してきている。スポーツ中継をそれぞれ自宅で
めざして発展してきており、ユーザごとの対応はあま
観戦しながらチャットする、などの中継の時間に合わ
り考慮されてきていない。近年になって、アプリケー
せて時間、体験を共有するものから、好きな時間に同
ション指向、サービス指向のネットワークの研究開発
時に同じ動画などを見ながらチャットする、など、さ
が始まったばかりである。筆者らもこのようなユーザ
まざまな形が出現してきている。そもそも複数人、あ
要 求 に 答 え る た め に
るいは多人数でスポーツを観戦したりショーを見学し
Infrastructure)を 提 案 し 研 究 し て い る 。 現 在 は 特 に 動 画
たりしながら近くの人と談笑するというのは、古くか
視聴時の体験共有の実現に取組んでおり、今回ユーザ
らあるコミュニケーションのひとつであり、ネットワ
間で動画視聴の時間に差があるのかどうかを測定した。
ークの広がりと文字コミュニケーション手段の発達と
実際にストレスを感じる程度の時間差が観測できたた
共に遠隔に広がっていっただけとも言える。さらに、
め、アプリケーションとネットワークを連動させて解
音楽コンサートなど演奏中は声を出せないような場面
決することが必要と考え、研究を進めている。
では、ホールの外で中継等を見ながらのチャットであ
SvDI
(Service
Defined
な お 、体 験 共 有 を ネ ッ ト ワ ー ク で サ ポ ー ト す る た め
れば可能となり、これまでよりもリアルタイムに体験
に は 、利 用 す る ユ ー ザ を 特 定 す る こ と が 不 可 欠 で あ る 。
の共有が可能となってきている。
その点で、ユーザがある程度特定できるコミュニティ
動画共有サイトとして日本では圧倒的な人気をも
をサービスの対象とするのは一つの選択肢と言える。
つ ニ コ ニ コ 動 画 は [1]、動 画 に 対 し て 文 字 メ ッ セ ー ジ を
コミュニティごとに持つネットワークへの要求をネッ
付与できるコメント機能があることが、普及した理由
トワーク管理、あるいはクライアントソフトウェアに
とされている。コメントは、動画を提供した側への感
反映することができれば、体験共有がスムーズに行え
想等を伝える交流としての役割もあれば、同じ動画を
ると考えられる。
視聴しているユーザ同士の交流、つまり体験共有とし
本 稿 で は 、第 2 章 で サ ー ビ ス 指 向 に 関 す る 関 連 技 術
ての役割もある。ニコニコ動画は体験共有機能も重視
を 概 観 し 、 第 3 章 で 著 者 ら が 提 案 す る SvDI に つ い て
し、時間的なずれがあって視聴しても、前に視聴した
紹介する。第 4 章で、実環境での体験共有の測定実験
人 の コ メ ン ト が 見 ら れ る よ う に な っ て い る [2]。
を報告し、第 5 章でコミュニティにおける体験共有と
さ て 体 験 共 有 を シ ス テ ム・ネ ッ ト ワ ー ク の 視 点 で 見
そのためのサービス定義について考察する。
ると、体験を共有するユーザ同士がその一時において
時間的に同期するシステムと言える。この場合の同期
2. サ ー ビ ス 指 向 技 術
とは、同じ動画を同時に見ることができ、それに関す
近 年 、サ ー ビ ス 指 向 、ユ ー ザ 指 向 の ネ ッ ト ワ ー ク に
るメッセージが同時にやりとりできることである。た
関する研究開発が進み始めている。本章では、関連す
だ し 、も し ユ ー ザ 群 A と ユ ー ザ 群 B の ユ ー ザ の 組 が 同
る研究・標準化活動を概観する。
じ 動 画 等 を 視 聴 し て い た と し て も 、A と B 両 方 に 属 す
2.1 SOA (Service Oriented Architecture)
る メ ン バ ー が い な い 限 り は 、A と B が 同 期 す る 必 要 は
Service Oriented Architecture (SOA)は 、ソ フ ト ウ ェ ア
な い 。つ ま り 体 験 共 有 と は 、ユ ー ザ 群 X に 属 す る メ ン
をサービスとして部品化し、それらを組み合わせてシ
バ ー x(i)に お い て 、特 定 の 動 画 を 送 る 通 信 ス ト リ ー ム S
ス テ ム を 構 成 す る ア ー キ テ ク チ ャ で あ る 。概 念 は 古 く 、
の 再 生 時 刻 T が 等 し く 、特 定 の メ ッ セ ー ジ を 送 る 通 信
CORBA な ど で も 提 唱 さ れ 実 装 の 試 み が 行 わ れ て い た
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Proceedings of the Media Computing Conference が 、一 般 に 広 く 知 ら れ る よ う に な っ た の は Web サ ー ビ
境 で も 実 現 可 能 と す る 、Intent Based Networking が 提 唱
ス で の 利 用 に 注 目 さ れ て か ら で あ る 。Web サ ー ビ ス で
さ れ て い る [5]。物 理 的 な ネ ッ ト ワ ー ク 機 器 を 設 定 す る
の 利 用 で は 、 メ ッ セ ー ジ の 定 義 や 記 述 に は XML を 使
にあたって、管理ポリシーを切り離して抽象化するこ
用 し 、 サ ー ビ ス 間 の 連 携 に は SOAP が 用 い ら れ る 。 サ
とで、ネットワークの構成変更の簡易化、高速化、管
ービスの呼び出し・応答インターフェースを定義する
理規模の拡大などを目的としている。
た め に WSDL (Web Service Description Language)が 、
またネットワークの標準化分野でも、ネットワーク
WSDL で 記 述 さ れ た サ ー ビ ス を 登 録 、 検 索 す る た め の
機能を抽象化し、ユーザの視点に近づけるためのモデ
技 術 と し て UDDI (Universal Description, Discovery and
ル 化 の 試 み が 始 ま っ て い る 。IETF (Internet Engineering
Integration)が 開 発 さ れ た が 、 大 規 模 に は 普 及 し て い な
Task Force) の Simplified Use of Policy Abstraction
い。
(SUPA) ワ ー キ ン グ グ ル ー プ で は 、 運 用 者 (ネ ッ ト ワ ー
サ ー ビ ス の 粒 度 に つ い て 規 定 は な い が 、Web サ ー ビ
ク に お け る ユ ー ザ )要 求 を ポ リ シ ー と し て モ デ ル 化 す
スでの利用が検討されたため、処理をするアプリケー
る 標 準 化 が 行 わ れ て い る [6]。ネ ッ ト ワ ー ク 側 で の 取 組
ションが単位として捉えられることが多い。インター
みは機器とネットワークリソースの管理が中心となる
フェースの記述が主であり、ネットワークのふるまい
ためアプリケーションを利用するユーザには直接提供
への要求は考慮されていない。ネットワークを介して
されても利用は難しいが、ソフトウェアやアプリケー
の体験共有をひとつのサービスとして定義するような
ションを通じて提供されることで機能向上が望める。
利用法には、粒度が小さく適さないと言えるだろう。
2.2 ユ ー ザ 指 向 ネ ッ ト ワ ー ク
3. Service Defined Infrastructure
ネ ッ ト ワ ー ク 分 野 で は 、仮 想 化 技 術 と SDN (Software
著者らは、アプリケーションに対応したネットワー
Defined Network)技 術 の 普 及 に よ り 、ネ ッ ト ワ ー ク 制 御
クを構成・制御する概念として、サービスを定義する
技 術 が 向 上 し て い る 。SDN に よ る 新 し い ネ ッ ト ワ ー ク
こ と で ネ ッ ト ワ ー ク を 自 動 構 成 す る Service Defined
基盤を利用して、ユーザ指向、サービス指向のネット
Infrastructure (SvDI)を 提 唱 し て い る [7][8][9]。SvDI は 、
ワーク制御の研究が行われるようになった。これまで
仮想サーバ、ストレージ、ネットワーク機器をリソー
は 、QoS (Quality of Service)の 確 保 が 主 で あ っ た が 、ユ
スとして一括して扱う概念である。リソース割り当て
ー ザ 指 向 に な る と ユ ー ザ の 体 感 、 つ ま り QoE (Quality
要求に対して、仮想サーバ、ストレージを割り当て、
of Experience)の 確 保 が 注 目 さ れ る よ う に な っ て い る 。
それらを接続するネットワーク機器を選択し接続する
ユ ー ザ 指 向 の ネ ッ ト ワ ー ク サ ー ビ ス は 、 EU を 中 心
ための設定を行う。サーバのみ、ストレージのみを増
に 進 行 中 の User Centric Networking プ ロ ジ ェ ク ト が 存
減する場合にも同様に割り当てと設定を行う。サービ
在 す る [3]。こ の プ ロ ジ ェ ク ト は 、ユ ー ザ の ふ る ま い と
スには種々あるが、例えばストレージとサーバとのア
物理ネットワークとの双方を対象にし、各ユーザに対
クセスが多いサービスであれば当該の通信がスムーズ
応したコンテンツを配信することを目的としている。
に行くように考慮し、サーバとインターネットとの通
ユ ー ザ の 好 み の 解 析 や プ ラ イ バ シ か ら WiFi の ア ク セ
信量が多いサービスは、外部接続を強化するなどの対
スリンクまで幅広く取り組んでいる。
応を行う。
また、ユーザ要求に連動したネットワークの研究と
SvDI の 目 的 の 一 つ は 、数 年 ご と に ハ ー ド ウ ェ ア を 交
し て は 、Service-Controlled Network (SCN)が 提 案 さ れ て
換 し な が ら も 、サ ー ビ ス を 維 持 し つ づ け る こ と に あ る 。
い る [4]。SCN は 、ユ ー ザ が 定 義 し た ア プ リ ケ ー シ ョ ン
サービスを維持するためには、ハードウェアとその機
の構造とアプリケーションに対する性能指標を基にネ
能の抽象化が必要であり、現在、モデル化を進めてい
ットワークの構成を変更し、性能指標を達成できるよ
る 。 図 1 に SvDI の 概 念 図 を 示 す 。
う に す る 仕 組 み で あ る 。Openflow ネ ッ ト ワ ー ク に 対 応
SvDI は 、大 き く 分 け て 機 器 コ ン ト ロ ー ラ と サ ー ビ ス
しており、性能指標を記述する言語、それをネットワ
定義との 2 つのコンポーネントがある。これまでは、
ーク設定に翻訳する機能、ネットワークを監視する機
機 器 コ ン ト ロ ー ラ が 存 在 し な か っ た た め 、 NETCONF
能 か ら 成 り 立 っ て い る 。現 状 の SCN で 定 義 で き る の は 、
プロトコルによる機器の設定システム、設定のための
転送帯域やパケットロス率などのネットワークにおけ
モデル化、広域分散環境での設定管理システムの実装
る QoS 機 能 で あ る 。
実験など、主に機器コントローラの研究開発を行って
2.4 Intent Based Network
き た [10]。 そ の 間 、 機 器 設 定 の 標 準 化 と 仮 想 化 技 術 、
ネットワーク運用にあたっては、どうやって実現す
SDN 技 術 が 進 展 し 、機 器 お よ び 仮 想 ネ ッ ト ワ ー ク 管 理
る か で は な く 何 を 実 現 す る か に 注 目 し (要 求 、 ポ リ シ
に 関 す る プ ロ ジ ェ ク ト が 出 現 し [11][12]、オ ー プ ン ソ ー
ー )、ポ リ シ ー を 言 語 化 し 、再 利 用 可 能 、ど の よ う な 環
スの管理ソフトウェアも公開されている。機器コント
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Proceedings of the Media Computing Conference ローラは、各ネットワーク機器の変更のたびに対応が
されており、5 秒は妥当と判断できる。
必要であり開発・維持コストがかかる作業である。こ
ラ イ ブ 映 像 の 再 生 時 間 の 計 測 は 、 HTML ス ト リ ー ミ
れがオープンソースとして公開され、デファクトの実
ングを対象とし、外部のコンテンツサーバから配信さ
装標準として利用できるようになったのは画期的であ
れ る 動 画 を Web ブ ラ ウ ザ で 視 聴 す る 状 況 で 行 っ た 。最
る。
も ユ ー ザ に 近 い 数 値 と し て 、HTML5 の video 要 素 か ら
動 画 の 現 在 の 再 生 位 置 を 取 得 し 、t(i)と す る 。こ の ユ ー
ザ i と ユ ー ザ j に お け る 再 生 時 間 の 差 dt を
ServiceDefini+on
ServiceDB
dt = |t(i) – t(j)|
と 定 義 す る と 、 dt が ユ ー ザ 間 再 生 時 間 の 差 と な り 、 こ
れが 5 秒以上であると同時に体験しているという実感
ServiceDefini+onControllerAPI
Device/Network
UsageStatus
TopologyInforma+on
が得られない可能性がある。本定義の概要を図 2 に示
す。
DeviceController
図 1. SvDI (Service Defined Infrastructure)の 概 念 図
SvDI の 研 究 開 発 は 、今 後 は サ ー ビ ス 定 義 に 注 力 し て
SNS
いく段階に入り、まずはサービス定義言語の検討を開
始した。しかし、関連研究にあるように、帯域やパケ
ッ ト ロ ス 率 、遅 延 な ど の QoS 保 証 は 、こ れ ま で も ネ ッ
トワーク分野で多く手がけられているが、ユーザが満
図 2. 動 画 視 聴 時 の 体 験 共 有
足できる快適性を提供できているとは言いがたい。そ
こ で 現 在 、ユ ー ザ の 体 感 に 近 い QoE を 向 上 さ せ る た め
のサービス定義について検討を進めている。
以 上 の 定 義 に 基 づ き 、Chrome ブ ラ ウ ザ に video 要 素
の 動 画 再 生 時 間 t(i)を 取 得 す る 拡 張 機 能 と 、 拡 張 機 能
4. 体 験 共 有 の た め の 動 画 の 同 期 性 計 測
か ら 得 た 再 生 時 間 t(i)を 収 集 す る サ ー バ と を 作 成 し た 。
サービス定義の一例として、地理的に離れたユーザ
計測システムの概要を図 3 に示す。コンテンツサーバ
同士が同じライブ映像を視聴しながらストレスなくチ
と し て は YouTube の ラ イ ブ 配 信 を 利 用 し 、 2 日 間 に わ
ャットで体験を共有できることをサービス要求として
た り 2 カ 所 で 5 種 類 の ネ ッ ト ワ ー ク 環 境 (ホ ー ム ネ ッ ト
定 義 す る こ と を 試 み た [13]。 サ ー ビ ス 要 求 は 、 ユ ー ザ
ワ ー ク や 大 学 、 モ バ イ ル 環 境 な ど )で 測 定 を 行 っ た 。
群 A に 属 す る メ ン バ ー x(i)が 視 聴 し て い る 動 画 の 再 生
時 間 t(i)が ス ト レ ス な く コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン で き る 一
定時間内 T に収まることと定義する。
T の定義については、先攻研究および標準化を参照
して 5 秒と定めた。クライアントが同時刻に画像を見
Streaming
Measurementtoolon
browser
(Chromeextension)
Streaming
Measurementtoolon
browser
(Chromeextension)
ながら対話を行う、体験共有型アプリケーションを利
用する際、どの程度の遅延であれば体験を共有してい
る と 感 じ る か を 調 査 し た 研 究 [14]に よ る と 、 共 有 手 段
として電話を利用した場合には、許容できる遅延は 2
C2
C1
<video>
Playback?me(t2)
bufferend(b2)
<video>
Playback?me(t1)
bufferend(b2)
秒 以 内 と あ る 。本 研 究 で は SNS 等 の テ キ ス ト 入 力 で の
対話を対象とするため、許容される時間がもう少し長
い と 考 え 、同 期 性 の 目 標 値 は 5 秒 と し た 。ETSI に よ る
Datacollec?ng
音声コミュニケーションに付随するサービスに関する
規 格 [15]に お い て も 、 SNS の 遅 延 の 許 容 時 間 は 数 秒 と
図 3. 計 測 シ ス テ ム の 概 要
(C1,t1,b1)
(C2,t2,b2)
:
:
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測 定 の 結 果 、 ユ ー ザ 間 の 時 間 差 dt の 平 均 は 6.42 秒
で あ り 、 最 大 は 61.56 秒 で あ っ た 。 も し こ の 状 態 で チ
ャットなどにより体験を共有しようとすると、時間差
によりストレスを感じていた可能性がある。
今後はユーザ間のコミュニケーション時にストレ
スを感じないよう時間差を減少させる技術の開発に取
り組む。時間差の発生原因として考えられるのは、ク
ライアントのソフトウェアのパフォーマンスに問題が
ある場合とネットワークに問題がある場合とが考えら
れる。現在、ネットワークなのかクライアントなのか
を切り分けるための実験を行っている。ネットワーク
に問題が生じる場合の解決策は、クライアントソフト
ウェアでの調整とネットワーク構成、あるいは配信サ
ー バ の 変 更 (輻 輳 し て い る ネ ッ ト ワ ー ク を 迂 回 す る な
ど )と の 2 つ 、あ る い は 両 方 を 組 み 合 わ せ る 方 法 を 検 討
中である。
5. コ ミ ュ ニ テ ィ に お け る 体 験 共 有
QoE を 指 向 し た サ ー ビ ス 定 義 は 、不 特 定 多 数 の 利 用
者に対して提供するのは難しい。対象が特定されない
場合には、ネットワークで観測される品質を目標とせ
ざるを得ないからである。このようなサービスは、誰
にとってもベストな品質ではないため、誰もが不満と
いうことになる。つまり、体験共有は不特定多数では
なく相手が決まることで、ユーザに満足感を与えるた
めの要求定義が可能と言える。
その点、ネットワークアプリケーション上に形成さ
れるコミュニティは、アプリケーション上で利用者が
把握できるため、必要とされるネットワーク要求が定
義しやすいと考えられる。たとえば、コミュニティ内
で同じ動画を視聴しながら体験を共有するような勉強
会や、全員が遠隔で参加する会議などが具体的に想定
さ れ る ア プ リ ケ ー シ ョ ン で あ る 。本 来 は コ ミ ュ ニ テ ィ 、
アプリケーションごとに異なるはずの要求を、具体的
なメンバーと共にネットワーク側に伝えることができ
れば、各メンバーにとってベストなサービスを提供で
きる可能性がある。ただし、ネットワーク側からユー
ザ情報やサービス要求を推測するのは困難なため、ア
プリケーション側からネットワークに要求するという
連携機能が必要となる。ネットワークの技術的な制約
上、要求された品質が必ずしも提供できるとは限らな
いが、目標が見えるため少しでも近づけるよう調整を
することは可能となるだろう。今後もネットワークと
アプリケーションとの連携機能を実現するための研究
開発を継続して行く予定である。
年次大会予稿
Proceedings of the Media Computing Conference 文
献
[1] ニ コ ニ コ 動 画 http://www.nicovideo.jp/
[2] 濱 野 智 史 , "CGM の 現 在 と 未 来 : 初 音 ミ ク , ニ コ
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コ動画はいかなる点で特異なのか: 「擬似同期」
「 N 次 創 作 」「 Fluxonomy( フ ラ ク ソ ノ ミ ー )」", 情
報 処 理 , volume 53, number 5, pages 489-494, April,
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[3] User
Centric
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Project,
https://usercentricnetworking.eu/
[4] 木 全 崇 , 杉 浦 孔 明 , 董 冕 雄 , 是 津 耕 司
Service-Controlled Networking: ア プ リ ケ ー シ ョ ン
構造やユーザ要求に連動したネットワーク制御
技術
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Network
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2013
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[9] 新 麗 , 金 田 克 己 , 加 藤 雅 彦 , 須 賀 祐 治 , 岡 部 寿 男 ,
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ン タ ー ネ ッ ト ア ー キ テ ク チ ャ ], pp.37--42,
IA2012-18, 2012 年 9 月 .
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"Development of an Automatic Managing System of
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Network Specification", 1st International Workshop
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Management (CNSM), October, 2014.
[11] Open Daylight, https://www.opendaylight.org/
[12] Open
Network
Operating
System,
http://onosproject.org/
[13] 土 屋 俊 貴 , 新 麗 , 川 原 崎 雅 敏 , " 動 画 コ ン テ ン ツ
の 同 期 性 計 測 シ ス テ ム の 開 発 ", 電 子 情 報 通 信 学
会インターネットアーキテクチャ研究会, 信学技
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12 月 .
[14] 大 塚 雅 博 , 片 岡 春 乃 , 末 田 欣 子 , 下 村 道 夫 ,
淺 谷 耕 一 , 水 野 修 , "共 同 体 験 型 コ ミ ュ ニ ケ ー シ
ョ ン サ ー ビ ス の 受 容 性 ", レ タ ー (信 学 論 (B),Vol.
J95-B, No.2, pp.366-370, 2012 年 2 月 1 日 ), 通 信
技術の未来を切り拓く学生論文特集.
[15] ETSI EG 202 057-2, "Voice telephony (and
voiceband
related
services
like
fax,
data
transmission and SMS)".