(速報)2013年EPO統計速報が発表される -サムスンの出願件数が大きく伸び出願件数首位を堅持- 〔概要〕 2014年3月6日にヨーロッパ特許庁(EPO:European Patent Office)から20 13年の統計速報が発表されました。2013年にヨーロッパ特許庁(EPO)にされたヨ ーロッパ特許出願の件数は前年(148,562件)より693件減少し(0.5%減)、147, 869件となりました。 [出願人別出願件数] 出願人別のヨーロッパ特許出願件数では、昨年首位の韓国「サムスン電子」が件数 を大きく伸ばし(23.8%増)、首位を維持しました。上位10社に入った日本の出願人 は「三菱電機」(第7位)1社のみですが、上位11から20社には5社が入っています。 出願人の国別では、上位25社のうち、ヨーロッパ諸国が11社、日本が8社、米国 が3社、韓国が2社、中国が1社となっています。 [国別出願件数及び特許取得件数] 上位5カ国のEPOへの出願件数を見ますと、1 位米国(23%)、2位ドイツ(18%)、 3位日本(15%)、4位フランス(7%)、5位スイス(4%)の順となっています。 一方、EPOは、66,712件のヨーロッパ特許を付与しました。この件数は、前年の 件数(65,657件)に対して1.6%増となります。特許取得件数上位5カ国は、1 位米 国(14,880件)、2位ドイツ(13、425件)、3位日本(12,135件)、4位フランス(4, 910件)、5位スイス(2,668件)の順となっています。 <目 次> 1.ヨーロッパ特許出願件数 2.国別、出願人別ヨーロッパ特許出願件数 3.国別ヨーロッパ特許取得件数 4.ヨーロッパ特許庁(EPO)による調査報告作成件数 5.ヨーロッパ特許庁(EPO)による審査及びEP特許に対する異議申立ての件数 6.ヨーロッパ特許庁(EPO)の審査官の数 --------------------------------------------------------------------- 1 〔詳細〕 1.ヨーロッパ特許出願件数 (1)ヨーロッパ特許庁(EPO)にされたヨーロッパ特許出願件数の推移 表1は過去5年間にEPOに出願されたヨーロッパ特許出願(直接ヨーロッパ特許出 願)及びヨーロッパの国内段階に移行したPCTによる国際出願(Euro-PCT出願) の件数の推移を示したものです。 〔表1〕過去5年間のヨーロッパ特許出願件数の推移 出 願 年 2009 2010 2011 直接ヨーロッパ出願 2012 2013 55,949 71,391 62,558 63,159 60,606 78,562 79,640 80,275 85,403 87,263 (56%) (57%) (59%) 142,833 148,562 国内移行した Euro-PCT出願 (Euro-PCT出願の%) (58%) (53%) ヨーロッパ特許出願件数 134,511 151,031 147,869 (EPO Annual Report 2013 より) [出願件数全体の傾向] パリルートによる「直接ヨーロッパ出願」とPCTルートによる「国内移行したEuro-P CT出願」は、共にヨーロッパ特許庁において実体審査の対象となる出願であり、この 件数がヨーロッパ特許出願の件数となります。2013年は、この件数は減少しており、 対前年比-0.5%でした。 昨年(2012年)と比較して「直接ヨーロッパ特許出願」は減少していますが(-4%)、 「国内移行したEuro-PCT出願」が増え(+2%)、PCTルートによる出願が59%を 占め、ヨーロッパ特許出願の主たるルートになりつつあります。 [Euro-PCT出願] ヨーロッパ特許が指定され、国際出願日が付与された国際出願は正規のヨーロッ パ特許出願の効果を有します。ヨーロッパ特許条約(EPC)はこのような国際出願を 「Euro-PCT出願」と定義しています(EPC153(2))。 表1の国際出願の「国内移行したEuro-PCT出願」の件数は、Euro-PCT出願 がEPOに対して国内段階に移行した件数を示しています。 2 (2)ヨーロッパ特許庁(EPO)にされた出願件数の推移 表2は過去5年間にEPOにされた、①ヨーロッパ特許出願、及び②PCTによる国 際出願の件数の推移を示したものです。 「ヨーロッパ特許出願」は、例えば、日本の特許出願を基礎に優先権を主張して、 又は優先権を主張せず、直接ヨーロッパ特許庁(EPO)に出願した件数です。以下、 この出願を「ヨーロッパ特許出願」と記します。 一方、「PCTによる国際出願」は、国際出願のうち広域特許であるヨーロッパ特許 を指定した国際出願の件数です。国際出願をするとすべてのPCT締約国を国内特 許及び広域特許のために指定したものとみなされるため、自動的にヨーロッパ特許も 指定され、当該国際出願は正規のヨーロッパ特許出願となります。 従って、「PCTによる国際出願」は国際出願の件数と同じとなります。しかし、実際 には国際出願がすべてヨーロッパの国内段階に移行するわけではありません。 以下の記載では、上記2つの出願を合わせたものを「EPOに提出された出願」と記 します。 〔表2〕過去5年間にEPOにされた出願件数の推移 出 願 年 2009 2010 2011 55,949 63,159 60,606 PCT国際出願 155,406 164,340 182,433 195,314 205,084 ヨーロッパ特許出願件数 (74%) (70%) 211,355 235,731 62,558 2013 ヨーロッパ特許出願 (国際出願の%) 71,391 2012 (74%) 244,991 (76%) (77%) 258,473 265,690 (EPO Annual Report 2013 より) [出願件数全体の傾向] 2013年にヨーロッパ特許庁(EPO)にされた出願の出願件数は前年(258,473 件)より7,217件増加し(2.8%増)、過去最高の265,690件を記録しました。 このうち、ヨーロッパ特許を指定した国際出願は77%を占めており、件数は年々増 加していますが(+5%)、直接EPOに出願されたヨーロッパ特許出願は減少しており、 対前年比-4%となっています。 3 2.国別、出願人別ヨーロッパ特許出願件数 (1)出願人の国別出願件数(2013年) 表3は、表1に示した「ヨーロッパ特許出願」の出願人の国別出願件数トップ20を示 したものです。 〔表3〕 ヨーロッパ特許出願の出願人の国別出願件数トップ20 国 名 (2012年) 出願件数 (2013年) は件数が増加 増減率(%) 1.米国(US) 35,207 33,834 2.ドイツ(DE) 27,276 26,645 -2.3% 3.日本(JP) 22,659 22,555 -0.5% 4.フランス(FR) 9,918 9,754 -1.6% 5.スイス(CH) 6,685 6,651 -0.5% 6.韓国(KR) 5,719 6,336 +10.8% 7.オランダ(NL) 5,063 5,826 +15.0% 8.英国(GB) 4,717 4,567 -3.2% 9.中国(CN) 3,732 4,056 +8.7% 10.イタリア(IT) 3,753 3,704 -1.3% 11.スウエーデン(SE) 3,530 3,668 +3.9% 12.オーストリア(AT) 1,874 1,995 +6.5% 13.デンマーク(DK) 1,605 1,929 +20.2% 14.フィンランド(FI) 1,854 1,895 +2.2% 15.ベルギー(BE) 1,892 1,885 -0.4% 16.カナダ(CA) 2,429 1,862 -22.8% 17.スペイン(ES) 1,412 1,504 +6.5% 18.台湾(TW) 1,271 1,244 -2.1% 19.イスラエル(IL) 1,117 1,048 -6.2% 877 830 -5.4% 20.オーストラリア(AU) -3.9% (EPO Annual Report 2013 より) [出願件数] 出願件数は、2013年に直接EPOに出願されたヨーロッパ特許出願の件数と、EP Oに対して国内段階に移行した国際出願の件数を合計した件数です。 4 (2)出願人別出願件数-サムスンが昨年に続き首位を維持 表4は、2013年にEPOに出願されたヨーロッパ特許出願件数上位25社を示した ものです。サムスンの出願件数が+28.3%と大きく伸び、他を大きく引離しました。 〔表4〕 EPOへの出願件数上位25社(2013年) は件数が増加 (出願件数) 出願人名 2012年 2013年 1.サムスン電子(KR) 2,289 2,833 +28.3% 2.シーメンス(EP) 2,193 1,974 -10.0% 3.フィリップス(EP) 1,160 1,839 +58.5% 4.LG電子(KR) 1,635 1,648 +0.8% 5.BASF(EP) 1,713 1,577 -7.9% 6.ロバート・ボッシュ(EP) 1,456 1,574 +8.1% 7.三菱電機(JP) 1,344 1,327 -1.3% 8.GE(US) 1,702 1,257 -26.1% 9.クアルコム(US) 1,381 1,204 -12.8% 10.エリクソン(EP) 1,189 1,184 -0.4% 830 1,077 +29.8% 12.パナソニック(JP) 1,169 1,055 -9.8% 13.トヨタ自動車(JP) 714 894 +25.2% 14.日立製作所(JP) 830 874 +5.3% 1,098 855 -22.1% 16.バイエル(EP) 884 850 -3.8% 17.アルカテル・ルーセント(EP) 872 806 -7.6% 18.EADS(EP) 818 783 -4.5% 19.ノキア(EP) 502 761 +51.6% 20.富士通(JP) 664 722 +8.7% 21.NEC(JP) 601 699 +16.3% 22.キャノン(JP) 630 682 +8.3% 23.DSM N.V.(EP) 414 659 +59.2% 24.ジョンソン&ジョンソン(US) 590 659 +11.7% 25.Sanofi(EP) 577 651 +12.8% 11.ファーウエイ(CN) 15.ソニー(JP) 増減率(%) (EPO Annual Report 2013 より) 5 3.国別ヨーロッパ特許取得件数 (1)出願人の国別ヨーロッパ特許取得件数(2013年) 表5は、国別ヨーロッパ特許取得件数トップ20を示したものです。2013年にEPO は66,712件の特許を付与しました。これは対前年比1.6%増となります。 取得件数上位5カ国は、1 位米国(22%)、2位ドイツ(20%)、3位日本(18%)、4 位フランス(7%)、5位スイス(4%)の順となっています。 〔表5〕出願人の国別ヨーロッパ特許取得件数トップ20(2013年) 国 名 (2012年) 出願件数 (2013年) 増減率(%) 1.米国(US) 14,705 14,880 +1.2% 2.ドイツ(DE) 13,316 13,425 +0.8% 3.日本(JP) 12,855 12,135 -5.6% 4.フランス(FR) 4,803 4,910 +2.2% 5.スイス(CH) 2,597 2,668 +2.7% 6.イタリア(IT) 2,238 2,352 +5.1% 7.英国(GB) 2,020 2,062 +2.0% 8.韓国(KR) 1,785 1,989 +13.4% 9.オランダ(NL) 1,711 1,886 +10.2% 10.スウエーデン(SE) 1,572 1,790 +13.9% 11.中国(CN) 791 941 +19.0% 12.カナダ(CA) 877 902 +2.9% 13.オーストリア(AT) 743 837 +12.6% 14.ベルギー(BE) 743 736 -0.9% 15.フィンランド(FI) 669 664 -0.7% 16.デンマーク(DK) 565 609 +7.8% 17.台湾(TW) 421 474 +12.6% 18.イスラエル(IL) 336 420 +25.0% 19.スペイン(ES) 405 395 -2.5% 20.オーストラリア(AU) 307 323 +5.2% (EPO Annual Report 2013 より) 6 4.ヨーロッパ特許庁(EPO)による調査報告作成件数 (1)ヨーロッパ調査件数 直接EPOにヨーロッパ特許出願をした場合、EPOにより先行技術に関するヨーロ ッパ調査が行われ、ヨーロッパ調査報告及び当該調査報告に基づくEPOの見解書 が作成されます。最近5年間に行ったヨーロッパ調査の件数は以下のとおりです。 <ヨーロッパ調査の件数> 2009年---------- 99,105件 2010年---------- 100,010件 2011年---------- 104,638件 2012年---------- 103,601件 2013年--------- 105,432件 ○ヨーロッパ調査報告:European Search Report (ESR) ヨーロッパ特許出願に係る発明の先行技術文献がリストアップされます。 ○EPOの見解書:Written Opinion of the EPO (WO/EP) ヨーロッパ調査報告にリストアップされた先行技術文献に基づき、新規性、進歩性及 び産業上の利用可能性等について、EPOの見解が示されます。 (2)EPOによる国際調査件数 EPOはPCTの国際調査機関として、ヨーロッパ特許条約(EPC)締約国の受理官 庁に出願された国際出願の国際調査を行っています。さらに、EPC締約国以外の受 理官庁に出願された国際出願の国際調査を行っています。例えば、米国特許商標 庁に出願された国際出願の1/3はEPOで国際調査がされています。また、英語で 受理官庁としての日本特許庁に国際出願した場合、出願人は国際調査機関としてE POを選択することができます。 <EPOによる国際調査の件数> 2009年---------- 81,463件 2010年---------- 73,686件 2011年---------- 75,274件 2012年---------- 76,825件 2013年---------- 82,220件 7 5.ヨーロッパ特許庁(EPO)による審査及びEP特許に対する異議申立ての件数 (1)EPOによる審査件数 直接EPOに出願されたヨーロッパ特許出願及びヨーロッパ特許を指定した国際出 願(Euro-PCT出願)のうちEPOに対して国内段階に移行した国際出願は、EPO によって実体審査が行われます。最近5年間に行った審査の件数は以下のとおりで す。 <EPOによる審査の件数> 2009年---------- 102,178件 2010年---------- 114,991件 2011年---------- 110,331件 2012年---------- 111,860件 2013年---------- 116,820件 <EPOによる特許付与の件数> 2009年---------- 52,446件 2010年---------- 58,108件 2011年---------- 62,112件 2012年---------- 65,657件 2013年---------- 66,712件 (注)2013年の特許付与率は57.1%でした。 (2)ヨーロッパ特許に対する異議申立て ヨーロッパ特許に対する異議申立ては、ヨーロッパ特許掲載公報発行の日から9カ 月以内にすることができます。最近5年間の異議申立ての件数は以下のとおりです。 <異議申立て件数> 2009年----------2695件 2010年----------2766件 2011年----------2963件 2012年----------2994件 2013年--------- 2963件 <異議申立てに対して決定がされた件数> 2009年----------2314件 2010年----------2309件 2011年----------2234件 2012年----------2021件 2013年---------2176件(4.5%)* * ( )内は異議申立て率 ➲異議申立て率=(2013年に異議申立てに対して決定がされた件数/2013年に異議申 立ての期限が満了した特許件数) ○2013年に異議申し立てについて決定がされた特許の結果は以下のとおり。 ・異議申立てが拒絶(特許は維持)----- 31% ・異議申立てにより特許取消---------- 29% ・補正により特許維持---------------- 40% 8 6.ヨーロッパ特許庁(EPO)の審査官の数(2014年3月現在)。 2009年---------2010年---------2011年---------2012年---------2013年---------- 3965名 3952名 3949名 3987名 4101名 2014(平成26)年3月19日 (IP情報室) ⓒSEIWA PATENT&LAW 条約 特許 欧州 9
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