透析患者さんも運動を! 腎臓リハビリテーションの目的

透析患者さんも運動を!
透析患者さんは運動不足による筋力低下が骨折の原因となります。また、
骨折等により寝たきりなるリスクがあります。さらに高齢化の進行とともに、身
体機能の低下、日常生活に介助を要する患者さんの増加が問題となりつつあ
ります。
これらの問題に対処するため近年、腎臓リハビリテーションという概念が提
唱されております。
腎臓リハビリテーションの目的
症状の緩和
体力・健康の維持や増進
精神的負担の軽減
生活の質の改善
運動療法、教育、食事療法、
薬物療法、精神ケアなどを
内容とした包括的なアプローチ
透析患者さんの体力、筋力は低下しやすい
誰でも歳を重ねると体力や筋力は低下します。しかし、透析患者さんは、一般
の健常者と比較して筋力も体力も低下していることが知られています。過去の
調査で、透析患者さんの最高酸素摂取量(体力の指標)は同年代健常者の
60%にまで落ちていると報告されました。また、尿毒症の影響で筋肉の委縮・変
性により筋力低下、さらに、ホルモンバランスの異常や老廃物により骨・関節が
弱くなりやすい傾向にあります。体力低下の一因として透析の通院による時間
的制約や透析後の疲労で身体活動量が低いこともあります。
トレーニングで改善できる
透析患者さんにおいてもトレーニングによって体力
(運動耐容能)、筋力は改善することが確認されています。
・最大酸素摂取量の増加
・左室収縮能の亢進(安静時・運動時)
・心臓副交感神経の活性化
・心臓交感神経過緊張の改善
・栄養低下、炎症複合症候群の改善
・貧血の改善
・不安・うつ・QOL(生活の質)の改善
・ADL(日常生活活動)の改善
・前腕静脈サイズの増加(特に等張性運動による)
・透析効率の増加
どんな運動が良いのか?
運動の中心となるのはウオーキングです。
ウオーキングは下肢だけでなく体幹や上肢の筋肉も使いますので全身運動と
いえます。また、歩きながら風景や会話も楽しむことで精神的な効果も得られ
ます。ウオーキングは「楽に感じる」程度の速度で10分間程度から始めて、
徐々に時間、距離を伸ばします。初めから頑張りすぎると関節痛や筋肉痛を
引き起こしたりすることがあるので、専門スタッフの指導、助言を受けながら進
めることが大切です。
透析中も運動ができる!!
運動を始める際に透析患者さんにとって問題なのは、運動の時間を確保
することです。
お勧めなのが透析中の運動です。透析中に運動を行ってしまえば時間の節
約になりますし、なにより継続しやすいという利点があります。報告による
と、トレーニングの効果は、非透析日に監視下で行うのが最も効果的です
が、継続率は透析中の運動が高いとされております。
透析中の運動として下肢エルゴメーターを推奨いたします。透析開始後30分
から1時間程度、アシスト付で行います。
透析治療中のトレーニング風景
電動サイクルマシン エスカルゴ PBE-100/escargot
エスカルゴの特徴
業界初『専用安定ボード』は、機体の安定性を高め、滑り止め効果を発揮するため、
ベットや布団の上でも快適にペダリング運動をしていただけます。
人間工学に基づき、安定感と装着感を追求したペダルです。足をおく面が常に上を
向くように設計されているため、装着時のイライラがありません。
また、絶妙な角度に取り付けられた伸縮性のある『かかとバンド』は、安定感を生
み、足のずれ落ちを防ぎます。ペダルを強制的に止めると、モーターが止まる
『自動停止安全機能』を装備。安心・安全にお使いいただけます。
寝た姿勢でも手軽にペダリング運動が可能です
ペダルを強制的に止めると、モーターも止まる『自動停止安全機能』を装備し、静音設計で周囲を
気にせず使える『エスカルゴ』は、お薦めです。
体力が上がると生命予後がよくなる
体力の指標である最高酸素摂取量が高い透析患者さんは生命予後が良い
事は報告されています。また、DOPPSという国際研究によると、定期的な運
動習慣のある透析患者さんは運動を全くしない患者さんと比較して明らかに
生命予後が良いこと、運動回数が多いほど生命予後が良いとされてます。
安全に運動を行うには
透析患者さんは血圧の変動や体液量の増減などがあるので、体調は変わり
やすく、運動をすべきでない時もあります。また、膝痛、腰痛といった関節の
痛み、神経障害、心疾患などを合併している患者さんにとっては、運動の方
法を工夫することが必要です。それぞれの患者さんの状態に応じて、医師、
透析スタッフの指導・監視のもとで運動を行うことが大切です。
体力のない方やリハビリにも
エスカルゴは、モーターがペダリング運動をアシストするので、体力のない方でも無理
なく股関節運動や膝の屈伸運動が行えます。
サイクル運動により大腰筋を鍛えられ、すり足、つまずきを防止し『転倒』→『寝たきり』
防止につながります。
『寝た姿勢』を前提に開発されているので、腰痛の方や高齢者の方にも気楽にそして
安全にサイクル運動を続けていただけます。
当院でも10月より導入しました
当院はこの度、透析治療中に寝たまま行える運動療法として『エスカルゴ』を導入
致しました。
エスカルゴは低体力の患者様に向いていますが、週3回の透析の際に運動療法
を行ってしまうことで、改めて透析以外の時間に運動時間を設定しなくて良いとい
うメリットもあります。
透析中の運動は、血圧の変動が少ない透析開始から30分後から1時間程度が良
いとされています。今まで運動をしていない患者様にエスカルゴを体験して頂きた
いと考えています。
透析中にエスカルゴや筋力増強訓練をすることで、これから運動を継続するきっ
かけになってほしいと思います。