OVCL-00591 J.S.バッハ:ゴルトベルク変奏曲 アレクサンドル・クニャーゼフ(オルガン) [CD] 価格:3,000円(税別) 録音日:2014年7月 録音場所:フランス・ストラスブール ジャケット 「 オルガンのた め の 変 奏 曲 」 ※ロシア新聞(ロシースカヤ・ガゼータ)に掲載された インタビュー記事より、引用翻訳しております。 モスクワ国 際 音 楽 堂で の チェリスト、アレクサンドル・クニャー ゼ フのコン サート Q.何故、チェロの後に、更にオルガンを(弾かれるのですか)? A.それは26歳で新しい専門に取り組もうという、真面目な一歩でした。 ( 自分の)満足のために始め たのですが、その後、これは真剣なものだ、と理解しました。私はバッハの音楽に多大な興味を感じて いましたし、子供のころから、オルガンの音色と可能性は私を惹きつけていました。ポリフォニーを弾 くのに、これは最良の楽器です。しかし、これが私はチェロに失望したのではないか、との誤解を与え ました。ただ単に、チェロで弾くことが出来るよりも、もっとバッハの音楽を演奏したかったのです。 Q.オルガンの演奏技巧用の練習方法は? A.そのために最良の作品は、バッハの『音楽の捧げもの』のジャン・ギユー(Jean Guillou)による オルガン用編曲です。ギユーは偉大なオルガニストで、 『 音楽の捧げもの』はオルガンにとってあり得 る限りの最も技 巧的な作品です。考えてみて下さい、ギユーは15歳の少 年の時に「もしこれをマス ターしたら、自分は完 全に何でも弾けるようになる」と、これを演奏することを思いつき、それをやり 遂げたのです。 Q.でもオルガニストは、楽器がどこにでもあるわけではないので、 聴衆の前に出る機会はより少ないのではないですか? A.反対に、より多くの作品を弾くための私自身が足りません(訳注:楽器の方ではなく、演奏する側 の自分が足りない、時間が追いつかないということ)。ドイツ・ロマン派の、ブラームスのツィクルス 1 や、メンデルスゾーンの素晴らしいソナタ、音楽の中でも最も鮮やかでロマンティックな作品のひとつ であるロイプケ(Julius Reubke)のソナタを弾きたいのです。毎年、バッハの誕生日である3月21日 に、モスクワのカトリックの大 聖 堂でガラ・マラソン(コンサート)をします。2時間半、バッハの偉 大 な音楽が演奏されます。昨年は、リガ大聖堂(Rigas Doms)のオルガンで録音された『18のライプ ツィヒ・コラール 集 』のアルバムリリースを記 念したものでした 。この夏には 、日本 のレコード会 社 『オクタヴィア』が、ストラスブールのアンドレアス・ジルバーマンの歴史的オルガンで 私が録 音した 『ゴールドベルク変奏曲』をリリースします。 『 ゴールドベルク変奏曲』を、私はロシアの多くの町で演 奏し、サンクト・ペテルブルグの『マリインスキー3(プロジェクト)』で出来たコンサートホールにある 素晴らしいフランスのケルン社製のオルガンでも弾き、またロシアに存在する最高のオルガンのひと つ、カリーニングラードのカトリック大 聖 堂(ケーニヒスベルク大 聖 堂)のオルガンでも演奏しまし た。今 年は、私のコンサートが、フランスの複数の町、またエルサレムのオルガン・フェスティバルで、 そしてミュンヘン、東 京で 予定されています。次のプロジェクトは、バッハの最後の作品『フーガの技 法』です。 Q.あなたはバッハを暗譜で弾く、ロシアで唯一のオルガニストだと言われていますが? A.そもそも、楽譜なしでオルガンを弾くようになったロシアで 最初のオルガニストかもしれません。 でも、どんな楽器の場合でも演奏の際には、この自由な感覚がなくてはいけません。 Q.ロシアにオルガンの聴衆はいるのでしょうか? A.彼らは素晴らしいですよ!毎年 行って、シーズン中3∼4回のコンサートが出来る都 市があり、常 に満席です!エカテリンブルグでは、毎年バッハのフェスティバルがあり、そこで私はオルガニスト、 またチェリストとして演奏しました。カザン音 楽院のホールにも素晴らしい聴衆がいます。わが国で オルガンは、西側でのような礼 拝用の楽 器ではありませんでした。まさにそれゆえに、オルガンへの 興味は現在とても大きいのです。 Q.チェロが恋しくなりませんか? A.チェロ(の存 在)が 私の人 生においてより小さくなったのではなく、オルガンのコンサートがずっ と増えたのです。私はまたピアニストとしても演奏し始めましたが、これはもう別の話です。 Q.消耗する生活ではないですか? A.何故ですか? 好きなことに従事していて、素晴らしく元気です。 Q.ご自分のチェロのレパートリーを広げることで、貴方は同僚達を非常に助けていますね? A.チェロのための作品はそれほど多くないんです。でも、自分の編曲の中で、私は神聖な原則を遵 守しています。それはひとつとして音を変えないこと。シューベルトのヴァイオリン・ソナタを全曲、 ベートーヴェンの5つのヴァイオリン・ソナタを演奏しています。昨年、私はクロイツェル・ソナタをフ ランスで演奏しましたが、これは大 成 功でした。誰も、この曲がチェロでこれほど素晴らしく響くと 思っていなかったのです。つまり、技術だけの問題ではなく、同様の緊張感で鳴らなくてはいけない のです。最も難しいのはモーツァルトです。モーツァルトは透明感を前提としていますが、チェロでそ れを実現するのは難しいのです。私はモーツァルトの最高の作品のひとつ、ヴァイオリンとヴィオラの ための協奏交響曲を演奏しますが、ヴィオラの代わりにチェロで演奏するのです。 2 Q.レパートリーを広げるために、最近作曲された音楽には注意を向けられないのですか? A.私はそういうものを結構弾いていますよ。ショスタコーヴィチ、プロコフィエフ、ハチャトゥリヤン、 ヒンデミットやシュニトケ、あまり演奏されないブリテンのコンチェルトです。私のレパートリーの中に は、サミュエル・バーバーや、イスラエルの作曲家ベンジャミン・ユスポフ(Benja min Yusupov)、 イーゴリ・ライヘリソン(Igor Rayk helson、訳注:英語ではライヘルソン)、アレクセイ・ルイブニコ フ、ジャン・ギユー、ボリス・チャイコフスキーのコンチェルトがあります。この3年だけでも、6つの協 奏曲の初演を行いました!ですから、20世紀に対しても貢献してきました。でも、それが 好きな時 代 だとは言えません。最 終的には、チャイコフスキーの『ロココの主題による変奏曲』は偉大な音楽で、 この曲がコンクールで弾かれ過ぎて手垢が付いている、というのは作品のせいではありません。そし て、有名な作品を素晴らしく弾くことは、シュトックハウゼンをマスターすることより劣るというので しょうか?私はそうは思いません。私にとっては、バッハ、モーツァルト、ベートーヴェンは永 遠に変わ ることのない天才で、私は彼らの中に、その付きることのない泉から一生汲み取り続けることが出来 るほど、多くのものを発見しているのです。 (アレクサンドル・クニャーゼフ・談) 翻訳: 鮫島奈津子 ■ プロフィール アレクサンドル・クニャーゼフ 1961年、モスクワに生まれる。6歳でチェロを学び始め、アレクサンドル・フェドルチェンコに師事。 1986年にモスクワ音楽院を卒業。その後オルガンをガリーナ・コズロワに師事し、1991年にニジニ・ ノヴォゴロド音楽院を卒業。 チェリストとしては1979年のカサド国際コンクール3位、1987年のトラパーニ国際室内楽コンクー ル1位、1990年のチャイコフスキー国際コンクール2位という数々の受賞歴を持つ。世界第一線の指 揮者、オーケストラと共演を重ねる他、エフゲニー・キーシン、ニコライ・ルガンスキー、ボリス・ベレゾ フスキーをはじめとするピアニストや、ヴァイオリンのワディム・レーピン、ヴィオラのユーリ・バシュ メットなどの面々と室内楽のパートナーシップを築き上げてきた。 オルガニストとしても国内外で活躍を続け、1999年にはモスクワで「フーガの技法」による演奏会 を挙行し話題を呼ぶ。フランスからも頻繁に招かれ、歴史あるサン・ユスタシュ教会やノートルダム大 聖堂へ客演を果たすほか、2010年にはラジオ・フランス&モンペリエ音 楽祭でバッハのトリオ・ソナ タ全 曲 演 奏 会 のステージに立っている 。その主 要なレパートリーは バッハからメンデルスゾーン、 シューマン、ブラームス、そしてフランクにまで及び、2012年にはカリーニングラードで開催されたロ シア・オルガン・コンクールで運営委員長をつとめた。 3
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