特定商取引法及び割賦販売法改正法の説明会議事録

平成20年6月16日(月)
於:経済産業省・B2講堂
改正『特定商取引に関する法律』及び『割賦販売法』
説明会速記録
経済産業省
目
【第1セッション】
次
…………………………………………………………………………
1
【第2セッション】 …………………………………………………………………………
25
【第1セッション】特定商取引法の一部改正について(消費者団体関係者向け)
(説明者:消費経済政策課
石塚
課長補佐
吉村
:取引信用課
課長補佐
)
1.はじめに
本日の説明会においては、「『特定商取引に関する法律』及び『割賦販売法』の一部を
改正する法律について」と題された、改正法の解説テキストに基づいて行います。
まず確認ですけれども、平成20年6月11日に参議院本会議で、特定商取引法及び割
賦販売法の一部を改正する法律案については、政府原案どおり全会一致で可決成立となっ
ております。(注:この改正法は、平成20年6月18日に公布されています。)
この改正法の施行は、3段階になっています。
まず、特定商取引法の迷惑メールに関係する部分は、公布の日から半年以内の別に定め
る日に施行ということとなっていまして、基本的に今年中に発効することとなります。
この改正点以外の大部分の特定商取引法に関する改正法は、公布の日から1年6カ月以
内に政令で定める日に施行することとなっていますので、遅くとも来年中には施行され、
発効するということとなります。
それでは、解説テキストに基づいて、以下説明をしていきたいと思います。まず目次を
みていただくと、このテキストは、次のように、PART1から PART5までの大きく5つの
パートに分かれています。
PART1
規制の抜け穴を解消します
PART2
訪問販売規制を強化します
PART3
クレジット規制を強化します
PART4
インターネット取引等の規制を強化します
PART5
その他
これらの各パートの中には、割賦販売法の改正で措置されるものと、特定商取引法の改
正で措置されるものとが、それぞれ位置づけられており、いわば、改正によって解消した
いと考えている消費者トラブルや消費者被害の場面という切り口で、このテキストは作成
されています。そのため、特定商取引法の改正事項として、一続きの一覧となっていない
点について、ご容赦いただきたいと思います。
-1-
2.「規制の抜け穴を解消します」
まず、テキストの4ページでは、特定商取引法の指定制の廃止について説明しています。
改正のポイント①
規制の後追いから脱却するため、これまでの指定商品・指定役務制を廃止し、訪
問販売等では原則すべての商品・役務を規制対象とします。
現行の特定商取引法の訪問販売規制、通信販売規制、電話勧誘販売規制においては、規
制対象となる商品や役務(サービス)について、いわゆる指定制がとられています。要す
るに、消費者トラブルが起きると、そのトラブルの原因となった商品やサービスを政令で
追加指定することにより、規制の対象にするという仕組みです。
しかし、衆知のように、このような仕組みでの規制では、悪質業者との間でイタチごっ
こがずっと続いていました。去年、平成19年には、いわゆるロコ・ロンドンまがい取引
と称される海外マーケットでの商品取引仲介サービス、あるいはいわゆる祈祷サービス、
そして調味料の類を追加指定しました。しかし、相談事例をみてみると、またぞろちらほ
ら指定対象になっていない「新」商品に関する相談も散見されているようです。
最近顕著なのは、いわゆる「情報商材」として称する類の商品もしくはサービスで、嘘
八百書いてあるような印刷資料の電子ファイルを有償でダウンロードさせる商法です。宣
伝では、「この通りやると儲かりますよ」と煽り文句が散りばめられていますが、中身は
どこにでもあるようなものだったり、ひどいものになると、この情報商材の電子ファイル
をダウンロードさせること自体をすれば良いなどと書かれていたりする訳です。そこで、
非常に後悔している消費者の方が、多数いらっしゃって、相談してくるということです。
このような相談ケースが、先の政令追加後もちらほら相談室に来ているので、やはり指
定制の「イタチごっこ」は解消できていないということです。
そこで、今回の法律改正で、規制対象物品・サービスについて、原則すべての商品・サ
ービスとし、例外的に幾つかのものを除外するという方式に変えることとし、この改正案
が6月11日までの国会で可決成立したということになります。
次の5ページでは、原則適用の例外である、適用除外について説明しています。
-2-
改正のポイント②
その上で、クーリング・オフになじまない商品・役務等は、規制の対象から除外
します。
今回に改正によって、原則適用の例外たる適用除外については、大きく分けて2種類の
適用除外の類型を措置しています。
一つは、全面適用除外です。現行の特定商取引法でも幾つかの取引類型について、特定
商取引法の訪問販売等に関する規制全体を全面適用除外しています。具体的には、輸出や、
事業者側が国や地方公共団体の場合の取引などが、適用除外としています。これらの取引
と並ぶ形で今回の法改正で、まず法文上具体的に規定しているものとして、2つの取引を
全面適用除外として追加しています。
一つは非商業紙、つまり学会とかコミュニティーが発行する有料の新聞の販売です。も
ちろん無償の新聞は、そもそも特商法の対象外です。もう一つが、弁護士業務です。
これと加えて、今後政令を整備することにより具体化されていく類型で、他の法律によ
って消費者の方の保護が図られている商品やサービスを規定していくこととなります。改
正法では、金融商品取引法、旅行業法、宅地建物取引業法の3つを例示として法律に明記
し、これら以外の商品やサービスについては、政令で規定することとなります。
政令で規定することとなる法律か否かの判断基準は、必ずしも国だけではなくて都道府
県その他、何らかの行政機関が訪問販売、通信販売、電話勧誘販売の形態で、消費者の方
への勧誘活動を行う場合に、事業者による消費者に対する不適切行為・不当行為があった
場合に、その行為を改善させるか、その行為をやめさせることができることが挙げられま
す。つまり、ある特定の商品やサービスの業のあり方を規制する何らかの法律によって、
行政処分として業務改善命令とか業務停止命令が出せることということになります。その
ような行政権限が、法律で確実に措置されているような商品やサービスの訪問販売等につ
いては、その法律で「取引の公正」や「消費者の利益の保護」を図ることとしていただく
ということにしまして、特定商取引法自体は適用除外するということになります。
このような判断基準を設けているところではありますが、そうは言っても、一律に条文
でこう書いてあるからということだけでは、適用除外の可否の整理はつきません。我々も
改正法案の準備段階において相当数の法律を精査しましたけども、今後、政令を策定する
段階において、個別具体的に一つ一つ整理をしていくことになります。
-3-
次は、特定の条項を適用除外にするものであり、いわば部分的適用除外となります。
この部分適用除外となる商品やサービスについては、一言で「クーリング・オフになじ
まない商品や役務」と言いましても、いろいろ理由で適用除外とされるものがありますの
で、いくつかの条項に分けて規定しています。
まずは、特定の規制として、書面交付義務とクーリング・オフ規定の適用を除外するも
のを第26条第2項で規定しています。ここでは、「その全部の履行が契約の締結後直ち
に行われるもの」を政令で指定することになります。この政令で規定されるものとして、
典型的に想定されているのは、飲食店が行う路上の客引き行為の類です。このようなサー
ビス提供、つまりお銚子を頼むとか焼き鳥の注文等について書面交付義務やクーリング・
オフと言ったところで、現実的に消費者にメリットがあるとも思えません。そこで、こう
いった即時提供型で問題のないサービスについては、書面交付義務とクーリング・オフの
規定を適用除外することとしています。
また、今回の改正による指定制の廃止に伴って新設されるクーリング・オフの適用除外
措置として、生鮮食料品等のように期間経過により勝ちが著しく減価するもの、そして、
そのサービスが直ちに提供されないと消費者が困るサービスについても、クーリング・オ
フの適用を除外することとしています。
第3に、法文上の規定方法は異なりますが、現行の特定商取引法でも措置しているもの
で、契約締結までに相当の期間を要することが通例であるものとして、自動車を政令で指
定している類型と、同様に、法文上の規定方法は異なりますが、いわゆる消耗品条項も、
そのまま残ります。
このように、書面交付義務とクーリング・オフ両方の適用を除外するもの、クーリン
グ・オフの適用除外のうち、今回の指定制の廃止に伴い新設されるもの、そして現行特定
商取引法でもクーリング・オフの適用除外が定められているもの、これらを一括して改正
後の26条に整理して規定することとなっています。
3.「訪問販売規制を強化します」
テキストの8ページから、PART2の訪問販売規制に関連する改正点、規定の強化につい
て解説しています。まず第一点は、訪問販売に関する勧誘行為の規制を強化する部分を説
明します。
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改正のポイント①
訪問販売業者に「契約しない旨の意思」を示した消費者に対しては、契約の勧誘
をすることを禁止します。
この訪問販売における勧誘規律の強化は、新設される第3条の2に規定されることにな
ります。この第3条の2は、2項立てになっています。第1項では、「勧誘開始の段階で
相手方(消費者)に勧誘を受ける意思があるかどうかを確認することを努力義務」として
いますが、今回の改正では、この点について努力義務としているので、確認行為をしなか
ったことをもって、直ちに行政処分とはなりませんが、改正後は、そのような勧誘行為を
について指導その他により、勧奨していくことになるでしょう。
第2項では、「『契約を締結しない旨の意思』を表示している相手方に対しては勧誘の
継続や再度の来訪による勧誘をしてはならない」こととしており、いわゆる「再勧誘の禁
止」規制を訪問販売にも導入いたします。
現行法においても、電話勧誘販売については、電話勧誘販売を特定商取引として、特定
商取引法の規制対象に加えた時点から、再勧誘の禁止規制は導入されていますが、訪問販
売についても、同様の規制を行うべく改正したということであり、この再勧誘禁止措置に
より、次々販売の防止に是非つなげていきたいと考えています。
次の改正ポイントが、いわゆる過量販売に関連する改正ということになります。
改正ポイント②
訪問販売で、通常必要とされる量を著しく超える商品等を購入契約した場合、契
約後1年間は契約を解除できることとします(ただし、消費者にその契約を結ぶ特
別の事情があった場合は例外とします)。
まず、この条項による契約解除の対象となる契約が、どのような契約なのかという点が
最重要事項になるかと思います。
解説テキスト10ページ「補足(3)事業者の売り方による過量販売の2パターンにつ
いて」にもありますように、過量解除権の対象となる契約については、改正後の特定商取
引法第9条の2において定めが置かれており、この条文においても、対象となる契約を第
第一号、第二号と条文上2号構成としています。
条文上の第一号の契約、テキストでは①で記載している契約の方は、単純な契約で、単
一の事業者と消費者との間の1回の取引で、過量状態なるような契約ということです。非
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常に簡単に言えば、浄水器5台を一遍に売るとか、独居の消費者宅に一遍に布団を10組
売るという契約が、解除の対象になる第一号の契約です。
第二号は、条文自体はとても複雑な書き方になっていますが、端的に説明すると、消費
者と事業者がある契約を結ぶ時点で、その契約に基づいて消費者が商品なりサービスなり
を提供されてしまうと、過量状態、つまり通常必要とされる量を著しく超えてしまうこと
を事業者側が知っているのに、そのまま締結してしまった契約のことです。過量状態にな
るという事情を、事業者が「知りながら」締結した契約ということで理解するのが、一番
確実です。
複雑なのは、この事業者側の「知りながら」という条件が成り立つケースには、実は2
つあるところです。
第1のケースは、同一の事業者が同一の消費者に対して、複数回の契約を締結したこと
によって過量状態になるケースです。同一の事業者が同一の消費者に商品を売りつけたり、
役務提供をしたりするのですから、その消費者の商品の保有状態や役務提供の状態を知っ
ていて当たり前であり、知らないほうがおかしいのです。こういう場合には、自動的に
「知りながら」の要件を具備していることになります。
これが具体的にどのようなケースかと言えば、3回にわたって浄水器を2台ずつ売りつ
ける契約を締結して、合計6台を販売した場合で、浄水器が一つの家庭に6台というのは
当然過量状態ですから、このような契約行為は法的に許容されず、解除されるということ
です。
第2のケースは、複数の事業者が特定の消費者との間で、それぞれ1回ずつか複数ずつ
かは問わず、同種の商品、同種の役務に関する契約を締結したことによって過量状態にな
るというケースです。このようなケースでも、契約を締結した事業者が、その契約通りに、
商品やサービスを提供すると過量状態になることを知っていれば、その契約を解除できま
す。要すれば、複数の事業者がグルになって、カモとされるような消費者と契約を繰り返
す、通謀類型の事案とでも言うべきかもしれませんが、このような場合についても、契約
解除の主張はできるようにはしました。
ただし、この場合の「知りながら」の証明は、消費者の方でなさなければなりませんが、
この「知りながら」の条件を立証することは難しいと思います。今後、訴訟実務における
主張立証の場面において、どのような証拠を提示すればこの条件を具備しているというこ
とになるかについて、様々な実務的工夫がなされると思います。今回の過量契約の解除権
-6-
規定の立案においては、消費者の立証負担の問題については慎重に配慮をしたつもりです。
少なくとも密室的状態で行われる勧誘行為の状況を立証する必要はなくなっており、この
規定でもそれなりに立証負担は軽くなっているとは思います。しかし、通謀類型における
「知りながら」の立証は難しいとは思いますが、今回我々が頑張れたのはここまでです。
なお、過量契約の解除に関する民事ルールの導入と併せて、特定商取引法第7条の指示
対象行為の類型に、過量販売の勧誘行為を追加しています。正当な理由なく、日常生活に
おいて通常必要とされる分量を著しく超えるような商品の販売を勧誘することは、改正法
施行後は行政処分の対象になります。
4.「インターネット取引等の規制を強化します」
解説テキストでは、次のパートがクレジット関係の解説になりますので、テキスト上は
少し飛びまして 23 ページの PART4の説明に移ります。ここからが通販関係、特にネット
を中心とした通信販売に関する規制の改正内容です。今回の通信販売関係の改正は、返品
条件表示ルールと迷惑メールに対する規制の強化という2つの内容で構成されています。
改正のポイント①
返品の可否・条件を広告に表示しない場合は、8日間、送料を消費者負担で返品
(契約の解除)を可能します。
特定商取引法で定める通信販売に関するルールにおいて、理由の如何を問わない解除権
であるクーリング・オフがルール化されていないこととはご案内の通りです。一方、通信
販売においても返品トラブルが多いのも事実です。しかし、この場合、トラブルの本質的
解消策は、通信販売で購入した商品でも一方的に「返せるようにすべきか」という点にあ
るのではないと思っています。そもそも事業者と消費者との間で返品、つまり物品売買契
約の解除についてどういう合意がなされていたのかということが、非常に曖昧に、あるい
は双方のすれ違いの元で理解されてきたということに問題の本質があると考えています。
この点、現行法の第11条でも返品条件を広告に表示することが義務づけられています
が、返品条件を表示しなかったからといっても行政処分の対象となるだけであり、駐車違
反と同じで、行政当局に見つからなければ不問に付されていたわけです。
今回の改正によって、返品条件をわかりやすく表示していなければ、商品到着後8日間
は、送料については消費者負担ではありますが、返品を必ず受け入れなさいというルール
が導入されます。
-7-
今回の改正により、返品条件表示のルールが強化され、返品条件表示を怠ると事業者に
とって損になる仕組みが導入されることになりますが、単に表示されているということで
はなくて、わかりやすく表示されていることが、今後さらに重要になります。本日会場に
お越しの相談員の方の中にも、返品条件表示が分からないという相談を現実に受けられて
いる方もいらっしゃるかもしれません。経済産業省の相談室にも、このような相談が結構
来ています。特に、ネットというのはリンク構造を使えば、どんなに複雑・大量の情報で
あっても低コストで提供できる訳ですが、それゆえリンクの構造が複雑になり、情報の掲
載場所を知らないと気づかないということが往々起こりがちです。そこで、特にネット通
販の場合には、返品条件を記載したページにリンクは張ってあったから免責されるべきと
いう抗弁・反論を許さないために、ネットの通販については、特に広告以外の場所であっ
て、省令で定めるところに返品条件を表示するようにと、特別ルールを法文上も規定して
います。この「省令で定める場所」は、ネット通販の場合には、申し込みの最終確認画面
を必ずつくりなさいというルールになっているので、その最終確認画面に返品条件も表示
するべきであると決める方向となっています。
通販関係のコアとなる改正の2点目は、いわゆる迷惑メール広告、スパムメール広告の
問題です。
改正のポイント②
消費者があらかじめ承諾・請求しない限り、電子メール広告の送信を原則的に禁
止します。
改正のポイント③
電子メール広告に関する業務を一括して受託する事業者についても、規制の対象
とします。
改正のポイント④
オプトイン規制に違反した場合は、行政処分や罰則の対象になります。
現行法では、最初に未承諾で送られてきた広告メールに対して、受信拒絶の連絡をした
消費者に再度広告メールを送ってはいけないというルールになっています。しかし、現状
を見てみれば、この規制では全く実効性があがっていないと評価せざるを得ません。現実
に、日本産業協会にお願いしている迷惑電子メール広告の分析事業においても、その受信
件数は、足元では頭打ちかもしれませんが、現行規制の導入以前と比較して大幅に増加し
-8-
ています。いわゆるオプトアウト規制では、破綻をしているということです。そこで、今
回の改正では、オプトイン、つまり受信する消費者があらかじめ「送信していいよ」と言
った電子メール広告以外は送ってはいけないというルールに変えることなった訳です。
そこで、いざ具体的にオプトイン規制を同様しようとすると、細かい論点が様々出てき
ます。例えば「事前の承諾」をしたと評価できる消費者の意思表示とは何かということが
問題となります。この点について、特に問題になるのが、いわゆる「デフォルト・オン」
の問題です。
つまり、「電子メール広告を送信することを了解しますか」といった趣旨のことが、ウ
ェブ画面上に記載さていますが、その項目に関するチェックボックスがあらかじめオンに
なっていて、その事項を読み飛ばしてしまうと、承諾の意思表示をしたことになってしま
うという画面表示の方式です。この方式を認めるかどうかは、様々な議論が審議会でもな
されましたが、現時点では、電子メール広告の受信について自分が承諾をしたと認識でき
るよう明瞭にわかりやすく表示されていれば認めようということになっています。
迷惑電子メール広告に関して、もう一点の重要な改正点は、メール広告の受託業者に対
しても規律を導入することとした点です。
現在、不当電子メール広告の実態をみてみると、ある種高度な分業体制がとられるよう
になっています。広告主と実際にメール送信をする輩は、多くのケースで別人格となって
います。さらに、送信行為をする輩と広告主たる通信販売業者の間をつなぐ事業者がいま
す。ネットショップのオーナーが、顧客に広告メールを一種のCSR、もしくはコンシュ
ーマー・リレーション・マネジメントの観点で送っているということでは全然なくて、現
在の電子メール広告は、既存メディアにおける広告と同じように、広告主とメディア業者
(メール送信業者)の間にそのアレンジをする広告代理店的立場の業者が介在するという
構造になっています。
不当な電子メール広告を減少させるためには、そのような電子メール広告を送らせる広
告主に対して所要の処分を行っていくことが重要であることは当然ですが、一方、広告主
を処分しても、その不当な電子メール広告の送信を仲介・アレンジをしている業者を掣肘
しなければ、結局同じことを繰り返すことに繋がります。そこで、このような業者につい
て、「電子式メール広告受託事業者」という概念をつくりまして、この者に対しても特定
商取引法に基づいて行政処分を行うことができるようにする改正を行います。
-9-
また、この電子メール広告関係の規制見直しは、特定商取引法上の通信販売だけではな
く、連鎖販売取引及び業務提供誘因販売に関する電子メール広告に関する部分にも同様の
措置が講じられていることを最後に付け加えさせていただきます。
5.「その他」
PART5では、これら以外の様々な改正点について、解説しています。
改正のポイント①
クーリング・オフがあった場合、仮に商品を使用していた場合でも、事業者はそ
の対価を原則請求できないこととなります。
今回の改正では、クーリング・オフの場合の精算ルールについて、修正を施しています。
この背景には、勿論先に説明した過量販売契約の解除ルールの導入があります。同時に、
訴訟実務において、最近の下級審の裁判事例などにおいて、いわゆるクーリング・オフ期
間に相当する期間の経過後、数ヶ月たったケースにおいてもクーリング・オフを認容する
ケースが散見されるようになっていることがあります。
このような現象が起きるのは、一つには、平成16年改正で、クーリング・オフ妨害に
対するクーリング・オフ期間の進行停止条項が入ったこと、二つには、裁判実務において
法定書面の記載事項の充足について厳格に考えるようになってきているといった点を挙げ
ることができます。これらの要因により、数カ月たった後のクーリング・オフを認めてい
る下級審が結構出ています。今回の改正で導入された過量販売契約の解除ルールでも、こ
の解除権は、契約締結後1年間、行使することができますので、訪問販売に関する契約が、
その契約の締結後相当期間経過後に特定商取引法に基づいて解除されることが、一層増加
することが予想されます。
このときに問題になりますのが、いわゆる使用利益の問題で、特に耐久消費財の販売契
約の場合に問題になると予想されます。つまり、耐久消費財の場合には、それを保持して
いたという状態だけをもって、一種の利益が発生したと講学上考えられるケースがありま
す。契約を解除された場合、事業者からその利益相当分を返せと言われる可能性があると
いうことです。そこで、実務において訪問販売のクーリング・オフの期間が実質的に長期
化する傾向にあり、かつ今回の改正で法律上1年の解除主張期間のある過量販売解除リー
ルを設けたことから、9条においても、商品の使用利益について請求できないとのルール
を明確化し、このルールを、過量販売解除を定める新設される9条の2でも準用するとい
-10-
う形をとりました。
ちなみにサービスについては、現行の9条で基本的に消費者が払った代金は全額戻す、
つまりサービスを享受した利益分の請求を制限するルールになっていますので、商品につ
いても、その点を踏襲する方向での再整理を行ったということになります。
もう一点、説明に触れておきたいと思いますのが、訪問販売協会に関する改正です。
改正のポイント④
訪問販売協会による自主規制の強化を図ります。
訪問販売協会については、大きく2点の改正をしています。
残念なことではありますが、日本訪問販売協会の正会員の会社が、県もしくは国から行
政処分を受けることは、必ずしもレアとは言えない状況があります。
そこでやはり、特定商取引法の行政処分をうけた業者が、「訪問販売協会」という、訪
問販売の取引の公正を確保するために活動する組織の正会員として、漫然と活動し続ける
ということは、やはり看過できません。また、後ほど説明しますが、今回の改正で導入さ
れる訪問販売協会いよる消費者補償制度のことを考えると、訪問販売協会の正当性という
観点から、協会の会員のあり様を厳格化することが必要である判断されました。そこで、
行政処分を受けた会員の脱退や加入拒否について、きちんと協会の定款で必要事項を定め
るべきとしました。
同時に、訪問販売協会の会員の行った訪問販売トラブルによって不当な損害、例えば、
クーリング・オフしてにもかかわらず代金が返還されないといった場合に、訪問販売協会
が、その肩がわりを訪問販売協会がすることとし、そのための被害者補償基金を作ること
を義務づけています。
この基金制度によって、訪問販売協会の会員相互間で、他の会員が訪問販売の勧誘にお
いて不当行為をしていないかということを監視することになります。また、協会の会員外
の方、例えば、クレジット会社からすると、協会の会員である事業者に対しては、相当程
度の信頼感を持つ一方で、協会の会員外の業者との加盟店契約について、相当程度躊躇す
るという状態になることになるでしょう。そうなれば、協会とクレジット会社の監視によ
り、個別信用購入あっせん、個別クレジットを利用できる訪問販売業者から、悪質業者を
排除するということに繋がり、悪質訪問販売によるクレジット被害の予防が図れるのでは
ないかと思っています。
-11-
さて、若干説明が駆け足になりましたが、次は、割賦販売法の説明にバトンタッチをし
たいと思います。
続きまして、割賦販売法の関係の御説明をいたします。
6.「規制の抜け穴を解消します」
4ページに戻っていただけますでしょうか。指定商品制・指定役務制の見直しについて、
割賦販売法のほうでも対応をしております。
改正のポイント①
規制の後追いから脱却するため、これまでの指定商品・指定役務制を廃止し、訪
問販売等では原則すべての商品・役務を規制対象とします。
割賦販売法は、全面適用除外は唯一、不動産の販売だけでありまして、それ以外すべて
の商品・役務について割賦販売法の対象。特に、割賦購入あっせんと言われていたクレジ
ット規制の対象となります。なお、いわゆる2社間の自社割賦については、従来どおりの
指定制となっております。
続いてクーリング・オフの適用除外ですけれども、5ページで特定商取引法について書
いてございますが、割賦販売法について6ページに注記で書いてございます。
改正のポイント②
その上で、クーリング・オフになじまない商品・役務等は、規制の対象から除外
します。
「割賦販売法における個別クレジット契約のクーリング・オフの適用除外」と書いてお
りますが、後ほど御説明をいたしますが、いわゆるクーリング・オフといいますと販売契
約のクーリング・オフでありまして、特定商取引法だけを従来利用されていたかと思いま
すけれども、今回販売契約だけではなくて、個別クレジット契約につきましても、訪問販
売その他の類型の場合には、クーリング・オフできることといたしました。
この個別クレジット契約のクーリング・オフについて、適用除外を整理しておりまして、
特商法と同じということでございます。特商法のクーリング・オフの例外については、先
ほど石塚のほうから申し上げたようなことが、個別に適用除外されていくわけですけれど
も、実は割賦販売法の個別クレジット契約のクーリング・オフは、販売契約もあわせて一
体として解除できるような形にしておりますので、適用範囲はそろえるということで、同
-12-
様の適用除外としております。
以上が、指定制の見直しと適用除外の関係でございます。
続いて7ページで、割賦の定義の見直しであります。
改正のポイント③
割賦の定義を見直して、これまでの「2ヶ月以上かつ3回払い以上」の分割払い
のクレジット契約に加えて、「2ヶ月以上後の1回払い、2回払い」も規制対象と
します。
従来、2カ月以上かつ3回払い以上の分割払いについて、クレジット規制の適用対象と
してまいったわけですが、今回1回払い、2回払いについてもボーナス一括払いといった
ような、法の先達的とも見られるような悪質な事例があったことを踏まえまして、1回払
い、2回払いまで規制対象としています。
ただ、クレジットカードなどで対応されておりますマンスリークリア、翌月払いについ
ては、現金同様の単なる決済手段としての性格が強い、また実際にトラブル事例も少ない
ということで、与信ということではないという考え方でございまして、規制対象から除外
をしてあります。
今回、1回払いまで規制対象になったということでございまして、従来「割賦購入あっ
せん」ということで――割賦というのは分割不払いの略ですが、これが意味をなさなくな
ったということで、新しく「信用購入あっせん」という言い方を、法律上定義してありま
す。
2つに分けまして、クレジットカードを利用したような、いわゆる限度額の中で包括的
に与信をするタイプを「包括信用購入あっせん」。クレジットカード等を使用せずに、個
別の契約、車とか宝石とか呉服を買うたびに与信を行うものを「個別信用購入あっせん」
というふうに、法律上定義をしているところであります。
先ほど指定制でも申し上げましたが、いわゆる自社割賦、ローン提携販売については、
従来どおりの定義としております。
続いてクレジット規制の強化ということで、12ページから22ページまでございます。
7.クレジット規制を強化します。
ここの部分が中核的な部分でありますので、少し丁寧に御説明を申し上げたいと思って
います。
-13-
まず12ページですけれども、今回の訪問販売等の特定商取引法に関する規制の強化と
あわせて、クレジット規制を強化するわけでありますが、そのターゲット、中心となって
おりますのは個別クレジットでございます。いわゆる埼玉県富士見市で起きましたような
リフォーム詐欺のケースですとか、呉服あるいは布団のような次々販売事例でも、限度額
なしで個別に毎回毎回クレジットをつける個別クレジット、昔は個品割賦と言っていたも
のですが、これについて非常に消費者被害が多発し、また高額化しているということで、
この個別クレジット規制を強化しようということが、一番の中心的課題でございました。
改正のポイント①
個別事業を行う事業者は登録制とし、立入検査、改善命令など、行政による監督
規定を導入します
まず従来、登録制という形で行政の監視・監督が及んでいたものが総合割賦クレジット
カードだけであったものですから、いわば野放し状態になっていた個別クレジットについ
てきちんと登録制を導入し、登録を受けた法人でなければ営業できないこととしまして、
あわせて行政処分、立入検査権限等行政の監督規定を導入するということであります。
登録制ですけれども、具体的な登録要件としては、まず一定の財産的基礎を有している
こととか、貸金業法に違反して罰金を科された法人でないこととか、あるいは暴力団員が
介入しているような法人でないこととか、それから割賦販売法の遵守や苦情処理のための
社内体制が整っていること等の要件を、きちんと経済産業省のほうで確認をすることにな
ります。
また個別クレジットについては、貸金業法がそういう立てつけになっておりますが、更
新登録としておりまして、3年ごとに登録を更新しますので、そういう意味で休眠的な、
あるいは違法なことをやっている業者は、排除されていく仕掛けになっているわけであり
ます。
それから包括信用購入あっせん、クレジットカード業者についても、今回の法改正に伴
いまして登録要件の内容が強化されておりまして、暴力団員が介入していないとか、割賦
販売法の遵守体制がきちっと整っているといった要件が、追加されることになっておりま
す。
1ページめくっていただいて13ページで、具体的な行政監督規定ですが、立入検査権
限、それから報告徴収権限に加えまして、行政処分として、例えば後ほど出てくるような
適正与信義務とか、あるいは過剰与信防止義務に違反した場合には、業務改善命令を下す
-14-
ことができるようになります。業務改善命令に違反した場合には、業務の停止命令とか登
録の取り消しも行うということでございます。
それから個別クレジットの関係で、特定商取引法の執行とリンクしていくことが非常に
重要と考えてございまして、割賦販売法に基づいて特定商取引絡みの義務、後ほど御説明
しますが、加盟店調査義務等があるわけですが、これの履行状況の調査については、割賦
販売法に基づいて加盟店等に対する立入検査、報告徴収命令ができるようにいたしており
まして、いわば特商法の執行の中で得られた証拠書類といったものも、割賦販売法のほう
の信販会社、個別クレジット会社に対する処分に援用できるという形の手当てをしてござ
います。
続きまして、14ページにまいります。ここから具体的な、どのような義務がかかりま
すかということです。
改正のポイント②
個別クレジット業者に、訪問販売等を行う加盟店の勧誘行為について調査するこ
とを義務づけ、不適正な勧誘があれば消費者への与信を禁止します。
個別クレジット業者に訪問販売等を行う加盟店販売業者の行為についての調査を義務づ
けることとしまして、訪問販売業者等が特商法に違反するような不適正な勧誘を行った場
合には、消費者に対する与信を禁止するということです。
具体的に申し上げると、ここに趣旨が書いてございますが、個別信用購入あっせん、個
別クレジットの場合には、実際のクレジット契約の勧誘、それから契約書の取り次ぎを販
売業者、加盟店にやらせているという実態がございます。その後、クレジット会社がさま
ざまな与信審査等をするという形になっているわけでございます。
したがいまして与信審査とあわせて、契約を締結するに当たって、販売業者がいかなる
勧誘行為をしたのかというところについて、自分がクレジット契約の勧誘をゆだねている
わけでありますから、その部分の調査をきちんと義務づけるということであります。
具体的な対象は、訪問販売、電話勧誘販売、連鎖販売(マルチ商法)、特定継続的役務
取引、業務提供誘引販売の5つの取引類型が対象となります。これらの取引を行う加盟店
が不実の告知とか、重要事実の不告知を行っていないかどうか、また不退去、退去妨害と
いった特定商取引法の第6条で禁止され、消費者契約法で取消権が認められるような勧誘
行為をしているかどうかといったことについて、調査を義務づけることになります。
具体的な調査の範囲、あるいは方法は今後、省令で定める予定でありますけれども、具
-15-
体的には加盟店契約を締結するときに、まずどのような勧誘方法をしようとしているのか
ということについて、ダイレクトメールとか販売マニュアルを徴収して調査をし、さらに
個別のクレジット契約を締結するたびに、消費者に対して実際にどのような勧誘行為が行
われたのかを問い合わせるということで、調査をすることを想定しております。
この調査結果は記録を作成して保存することになりますので、後に消費者トラブルがあ
って行政の立ち入り等があった場合には、この保存されている書類を提出しなければいけ
ないことになるわけであります。
この調査の結果、特商法6条に禁止されているような行為を訪問販売業者等がしている
ことになれば、個別信用購入あっせん業者は消費者に対する与信をしてはいけないという
ことになりますので、結果的には現金でお買い求めになれば別ですけれども、クレジット
契約がつかないわけですから、クレジット商法は相当程度排除されるということでありま
す。以上の調査義務、与信禁止の義務に違反した場合には、業務改善命令が下されること
になります。
続いて、15ページになります。先ほどの加盟店調査義務とあわせて、書面交付の義務
も強化いたしました。従来個別クレジットでは、販売業者に書面交付義務が課せられてい
たわけでありますが、往々にして不備書面といいましょうか、いいかげんな書面が配られ
ることがあって、支払い総額が書いていないといった事例も見られたところであります。
今回、特に悪質事例が目立ちます、通信販売を除く特定商取引、先ほどの5類型につい
ては、契約の申し込み時と締結時に書面を交付する法的責任を個別クレジット会社にも課
すことになりまして、販売業者と個別クレジット会社両方がきちんとチェックをして、適
正な書面を交付しなければいけないことにしました。
具体的な書面記載事項については、従来とそれほど変わらないわけでありますが、一部
特定継続的役務取引であれば役務の提供期間とか、連鎖販売であれば取引の条件、あるい
は後ほど御説明します、与信契約のクーリング・オフについての具体的な注意事項につい
て、書面記載事項とする方針でございます。
それから、個別信用購入あっせん業者の場合には、先ほどの加盟店調査義務、販売業者
がどのような勧誘をしたのかについての調査をしなければいけませんので、この調査の内
容と、その結果を記載した書面を交付させることにしております。
したがって、契約の申し込みの段階で、勧誘行為についてどのような調査をするかとい
うことを、事前に申し込みの時点で消費者さんのお手元に届き、また、その結果与信審査
-16-
が行われて契約締結という時点になれば、どういうような調査結果であったのかが交付さ
れることになります。
続きまして16ページが、いわゆる既払金返還と言われているものでありまして、訪問
販売業者等が虚偽説明等による勧誘や過量販売を行った場合について、個別クレジット契
約を解約して、いわゆる既払金の返還請求が可能になるということであります。
改正のポイント③
訪問販売業者等が虚偽説明等による勧誘や過量販売を行った場合、個別クレジッ
ト契約も解約し、すでに支払ったお金の返還も請求可能にします。
まず1番が、過量解除権でありますが、特定商取引法で契約締結後1年間は過量販売に
関連する販売契約の解除が主張できることになるわけですが、個別クレジットを利用され
ている場合が多いということで、まず個別信用購入あっせん業者に対して、きちんと過量
販売でないことを確認する行政上の義務を課すとともに、消費者が契約・締結後1年間は、
過量販売契約のための個別クレジット契約を解除することができるという規定を設けてお
ります。
これによりまして、特定商取引法で販売契約を解除できる場合には、事実上、個別クレ
ジット契約も両方一遍に解除をすることによって、既払金の返還まで結びつくということ
であります。
この点1点、注意事項ですけれども、この場合の意思表示は、契約後1年間と猶予があ
ることもございまして、それぞれに意思表示をしなければいけないことになっております。
具体的には、実務上は内容証明郵便で送られるということだと思いますけれども、クレジ
ット会社に個別クレジット契約の解除を意思表示し、訪問販売業者に販売契約の解除を意
思表示することが必要になります。
それぞれ意思表示をしていただくと清算関係に移るわけですが、その際の清算について
は法律上、以下のように定めてございまして16ページの下段ですけれども、原則として
与信契約に関する損害賠償が、まず制限されると。クーリング・オフと一緒であります。
それから、ここからが清算ですが、個別クレジット業者は立替払相当額、100 万円の商
品であれば100万円立替払いするわけですが、販売業者に対して立替払いした相当額を
消費者に費用請求することができなくなるということであります。
販売業者は立替金、先ほどの例で言えば100万円ですが、これを個別クレジット業者
に返還をすることになり、個別クレジット業者は消費者から、例えば3回分、30 万円受
-17-
け取っていれば、その分の既払金を消費者に返還しなければなりません。
補足ですけれども、特商法の解除権と割販法の解除権が両方並び立っているものですか
ら、特商法のほうが先に解除権が意思表示をされますと、そちらが先に発動しまして、販
売業者は全額返さなきゃいけなくなるわけですね。ですから、立替金を全部消費者さんに
返さなきゃいけなくなってしまいまして、先ほど申し上げた清算ルールとちょっと矛盾し
てまいります。
先ほどの清算ルールは、販売業者がクレジット会社に立替金を返し、既払金を消費者さ
んに返すということで、消費者さんの懐の痛み方は既払金だけなものですから、それで問
題がないということであるんですが、若干順番が前後すると、そこが混乱してまいるとい
うことがございます。
したがって、既払金返還というところまで、クレジット会社との関係で求めたい場合に
は、解除権としては同時であればいいんですが、販売業者のほうが先になるとちょっと混
乱する可能性が実は残ってしまっているので、私どもとしてはクレジット会社のほうにま
ず意思表示をしていただいて、あわせて訪問販売業者にもしていただくことが安全であろ
うと思っております。これで確実に既払金返還に結びつくということです。
そうでない場合でも、民法の原則で処理されるとは思っておりますが、若干名分がない
ところがございますので、そこは御注意いただければということであります。
続いて既払金返還、不実告知タイプの場合が2番に書かれてございまして、特商法の新
法で言うと9条の2じゃなくて9条の3になるのでこれはちょっと誤植ですけれども、改
正法の9条の3の不実告知等を理由に販売契約を取り消した場合にでも、従来の割賦販売
法のルールですと抗弁権の接続だけということで、既払金の返還まで結びつかなかったわ
けでございますので、今回、個別クレジット契約の取消権を導入いたしまして、両方取り
消すことによって、既払金の返還に結びつくという形にしてございます。
取消権の事由ですけれども、不実告知の対象が問題になるわけですが、今回、商品の品
質、性能等の販売契約に関する重要事項についても不実告知の対象としてございますので、
これを利用すれば、例えば販売契約の中身、性能についてうそを言った場合、「絶対やせ
ます」と言って、実際上何の根拠もなかった場合。あるいは必要性、リフォームであれば、
例えばシロアリがいますみたいなことが、一つリフォームの必要性についての勧誘によく
使われるわけですが、それについて不実のことであった場合、それで誤認をして契約をし
てしまった場合については、これも司法判断は入りますけれども、クレジット契約につい
-18-
て重要事項であると認められれば、取消権の対象になるということであります。
清算規定については、先ほど過量解除権で申し上げましたけれども、販売業者が立替金
を与信業者に返し、既払金部分について与信業者がクレジット会社から消費者に返すと。
クレジット会社は立替金相当額を請求することができないという形になっているわけでご
ざいます。
割賦販売法の外の話ですけれども、威迫・困惑類型といいましょうか、不退去、退去妨
害の場合にどうなのかという御質問をよくいただきますが、これは現在、消費者契約法、
下級審判例が幾つか出ておりますが、その場合には消費者契約法の5条の媒介者の法理を
利用して、消費者契約法で取り消せると理解をしてございます。
したがって今回、消費者契約法では取り消し対象にならない不実の告知、重要事実の不
告知について、督促的に割賦販売法を設けたという理解でございますので、実際の現場で
は不退去、退去妨害ケースについては、消費者契約法を利用していただくことがいいのか
なと考えております。
続いて改正のポイント4、19ページになります。ここの部分だけちょっと個別クレジ
ットの関係だけではなくて、クレジットカードにも使える規定でございます。
改正のポイント④
クレジット業者に対し、指定信用情報機関を利用した信用能力調査を義務づけ、
消費者の支払能力を超える与信契約の締結を禁止します。
いわゆる過剰与信防止義務でありまして、クレジット業者に対し、指定信用情報機関を
利用した支払い能力調査を義務づけて、消費者の支払い能力を超える与信契約の締結を禁
止するということであります。
解説のところですが、まずクレジットカード取引ですけれども、カードの交付あるいは
使用限度額を増額する際に、「包括支払可能見込額」、消費者さんにとっての支払い余力
を調査していただくことになります。
調査方法は、利用者の年間の収入、預貯金あるいは過去のクレジット債務の支払い状況、
借入金の状況などを基礎として合理的に算定をした、1年間にクレジット債務の支払いが
可能と見込まれる額でありまして、収入とか預貯金を調査した結果、そこから合理的にク
レジット会社が算定できる支払い余力となります。
この支払可能見込額の中には、利用者の自宅及び自宅の敷地、それから生活を維持する
ために必要な額は含まれないことになっております。後者の生活維持費については省令で
-19-
定めることになってございます。
したがいまして、これによってクレジット債務を返済するために、現に生活している住
宅までは奪われず、最低限度の生活が維持できる、持続的に支払可能な額の範囲内に、ク
レジット債務の額をおさめていただくということであります。
それから、個別信用購入あっせんについても同じような概念ですが、個別支払可能見込
額を調査する義務がありまして、その額を超える――支払可能見込額は1年当たりの概念、
1年間当たりの額なものですから、その額を超える1年間の支払いを必要とする個別クレ
ジット契約は締結できないことになるわけであります。
「また」以下ですが、クレジット業者が支払可能見込額の調査を行うに当たりまして、
他社のクレジット債務の額や支払状況を調査するために、指定信用情報機関の提供する信
用情報を利用することを義務づけることになっています。このために、指定信用情報機関
制度を創設することになっております。
続きまして、21ページです。ちょっと順番が前後しておりまして申しわけないんです
が、ここの部分は個別クレジットについての規定になります。
改正のポイント⑤
訪問販売等の場合について個別クレジット契約のクーリング・オフができること
とします。個別クレジット契約をクーリング・オフすれば販売契約も同時にクーリ
ング・オフされることになります。
与信契約をクーリング・オフすれば、あわせて販売契約も同時にクーリング・オフされ
るような制度を導入いたしました。
対象は訪問販売、電話加入販売、連鎖販売、特定継続的役務提供、それから業務提供誘
引販売になります。この5つの販売契約について与信契約をする場合にクーリング・オフ
を導入して、その際、1本の通知を消費者さんがクレジット会社にしていただければ、同
時に販売契約もクーリング・オフされることになります。
クーリング・オフの効力の発生期間は、このあたりは特定商取引法と同じですけれども、
通知の時点ということになります。クーリング・オフ期間の起算点は与信契約の書面受領
日ということで、個別クレジット会社が交付した書面の受領日となるわけであります。
以上が、クレジット規制の強化であります。
最後に、その他若干のクレジット関係の規制強化について申し上げますが、28 ページ、
いわゆるクレジットカード情報の保護の規定であります。
-20-
改正のポイント⑤(PART4)
クレジット会社等に対して、個人情報保護法ではカバーされていないクレジット
カード情報の保護のために必要な措置を講じることを義務づけるとともに、カード
番号の不正提供、不正取得を下した者等を刑事罰の対象とします。
(割賦販売法第35条の16、第35条の17、第49条の2)
最近6~7年前に刑法の改正がありまして、それにより偽造カードは随分減ってまいっ
たんですが、なおカード番号のインターネット上での流出、例えばフィッシング詐欺のよ
うなものによってカード番号が流出しまして、これをインターネット上で利用することで、
消費者さんの身に覚えのない請求があるといった二次被害が発生するケースが、なお増大
をしてございます。
このために、クレジットカードの漏えい、不正利用の防止ということで、クレジットカ
ード会社に不正利用対策をきちんととっていただくよう、行政上の義務づけをすることに
なります。
それから刑事罰を設けておりまして、フィッシング詐欺でありますとか、カード会社あ
るいは委託先の従業員が、不正にカード番号を流出させるといったことがあった場合には
刑事罰、最高3年以下の懲役がかかる形にしてございますので、これによりカード情報の
保護を図っていきたいということであります。
それから31ページ以降ですが、罰則についても見直しをしておりまして、全体的に罰
則の引き上げを行っております。
改正のポイント②(PART5)
違反事業者に対する罰則を強化します。
また32ページですけれども、自主規制団体を創設することにしておりまして、現在で
も個別の業界ごとに自主的なルールはつくっている部分もございますが、今後、割販法の
規制をきちんと強化してやっていくわけでありますが、自主規制もあわせて規制の趣旨、
割販法の趣旨を踏まえて運用していただくということもありますし、さらに消費者トラブ
ルを先んじて減らしていくという意味もあるわけでございますから、業界一体となった自
主規制、自主ルールの運用をしていただくということで認定制度を設けまして、業界全体
で統一的な自主的取り組み、自主ルールの制定をしていただくことにしております。
-21-
改正のポイント③(PART5)
クレジット取引の自主規制等を行う団体を認定する制度を導入します。
(割賦販売法第35条の18~24)
1点、悪質な加盟店の情報につきまして、この認定割賦販売協会で蓄積をすると。情報
を登録してもらって蓄積し、それをクレジット会社に還流させることによって、できるだ
け悪質な加盟店の情報を業界全体に知れ渡らせる、周知することによって、悪質な加盟店
がこの信販会社でひっかかったから、この次は別のところといったような形で、事実上、
生き延びることができないように、初めて出会った加盟店であっても、この加盟店情報交
換制度を使えば、前歴が悪ければあらかじめ排除できるような仕組みもつくっております
ので、この自主規制団体がきちんと機能すれば、悪質な加盟店の排除にも有効に機能する
であろうと考えているわけでございます。
以上、早口になりましたけれども、割賦販売法関係の御説明を終わりにしたいと思いま
す。
※以下、質疑
○問1
個別信用購入あっせん業者の登録制度の導入ですけれども、この登録の事務です
が、これは国のほうでされるんでしょうか、それとも県のほうですることになるんでしょ
うか。
○吉村課長補佐
その点についてはちょっと省いてしまったんですが、3時からのセッシ
ョンではより詳細にと思っておったんですけども、具体的な行政上の手続といいましょう
か、権限配分については今後となりますが、私どもの考えとしては、まずルーチンとして
登録を受け付ける業務については、基本的に経済産業局、国のほうで行いたいと考えてお
ります。
他方、ここも都道府県さんに御相談しないといけないんですが、業務改善命令等の処分
については、現在特定商取引法では都道府県さんで非常にたくさんの件数を処分いただい
ているということもありまして、また今回、加盟店調査とか適正与信義務とか特商法とリ
ンクする形で、特商法の悪質行為を信販会社が防げたのかどうかという観点から、きちん
と立入検査をし、場合によっては処分をするということを考えているものですから、この
点については都道府県さんとの御相談の上ではありますけれども、一部からは既にぜひ、
-22-
やりたいという声も聞いてございますので、その辺は柔軟に、御要望に応じて県のほうに
権限の移譲ができるようなことも検討しないといけないだろうなと思っております。この
あたりぜひニーズといいましょうか、御要望がございましたらお知らせいただければ、大
変ありがたく思います。
○問2
既払金の返還のときに、クレジットの手数料などは消費者、販売業者、クレジッ
ト会社、最終的にはどこが負担するんでしょうか。
○吉村課長補佐
基本的に取り消しでありますので、完全巻き戻しということで、手数料
のところは結論的にはクレジット会社が負担するということですね。ですから、消費者に
は支払い手数料も含めて返ってくることになりますし、遅延利息も当然あり得るわけです。
販売業者からは、そこは契約にもよると思いますが、立替相当額を戻すことになります
から、手数料分は原則クレジット会社。そこから先は、販売業者にどう転嫁するかは個別
契約ということかと思います。
○問3
個別信用購入あっせん業者の使用する書面ですけれども、この書面は今までどお
り、販売事業者と個品信用購入あっせん業者と一体の書面となるんでしょうか。
○吉村課長補佐
その点も、法律上はどちらと書いてあるわけではないんですが、運用上
そういうふうに一体として交付することはできると考えておりますので、実務としては恐
らく連名で配る、一体として配ることになるんじゃないかと。
ただ、書面交付義務がかかっているわけですから、クレジット会社がいいかげんなこと
になっていると、まずクーリング・オフの対象ということが出てくると思いますし、不備
書面の場合に、クーリング・オフ期間が起算せずに長期にわたるという点は、特商法の確
立した運用がありますので、これと同じようなことになるだろうと思っているものですか
ら、そこはクレジット会社も別々に配らないとしても、販売業者がちゃんと配っているか
どうかということは、きちんとチェックをすることになるだろうと考えています。
○問4
クーリング・オフの使用利益に関する改正について、訪問販売においてだけ措置
されているが、電話勧誘や連鎖販売取引については、なぜこのような措置が執られてい
ないのですか。
-23-
○石塚課長補佐
改正案の検討過程において、クーリング・オフに関する下級審の裁判例
などを確認すると、電話勧誘販売では、相当期間経過後のクーリング・オフ請求が認容さ
れた事案をほとんど確認できませんでした。勿論、理論上の整理として、電話勧誘販売に
ついても使用利益の請求制限ルールを導入してしまうという考えもありますが、やはり立
法事実がついてこない、つまり実態がない改正については、もっと慎重な議論が必要でな
いないかとされ、今後さらに実態を精査していくこととしました。
一方、連鎖販売取引については、クーリング・オフ期間経過後の契約解除については、
いわゆる返品規定が設けられています。契約時点から一定程度の時間経過後の連鎖販売取
引に関する契約の解除については、こちらのルールで実務的には処理されていますので、
使用利益自体が問題とはなっていないと思います。
ただ、いずれにしても、実態において、契約締結後相当期間経過してからの解除が電話
勧誘販売でも多く発生したり、連鎖販売取引の返品を巡って、トラブルが多くなれば、そ
れはまた状況が変わってくると思います。
○問5
未制定の政省令の制定、それから施行の期日等まだ未定だと思うんですけども、
何かめどといいますか、お考えがございましたらお教えいただけますでしょうか。
○回答略
○問5
金銭消費貸借の形式を利用している貸金業者さんが、今の個品割賦購入あっせん
に当たるものをするような場合も、登録をしなければいけないということですね。それを
せずに2者間の契約だと言い張って実質的にやっているような場合は、経済産業省さんの
ほうではどのようにされるんでしょうかというのが1点。
○吉村課長補佐
金銭消費貸借型の、旧来の個品割賦についてどうなるのかということで
すが、結論的に言えばもちろん登録制の対象になります。したがって、個別クレジットに
当たるかどうかの定義は、販売店との密接な関係がどこまであるかということになります
ので、ここらあたりはきちんと貸金業者にも周知をして、登録制の対象になることはきち
んとやってまいりたい。
もし無登録があれば、事後的には最大懲役3年の刑事罰の対象になるわけでありますか
ら、そこはきちんと周知をして、もし違法なケースがあれば、事後的には警察との関係も
出てくると思っていますので、そこはきちんとまずは周知徹底をして、登録をしてもらう
-24-
ということだと考えております。
○問6
過量販売の件ですが、どこからが過量になるかという点は、政省令などの中で明
確に定められるのでしょうか。
例えば、幼稚園の幼児に、小学校1年から中学3年までの教材を売るというのは、相談
実務の感覚からすると、過量販売だと思いますが、どうでしょうか。また、新聞を一定の
期間契約をしたら、1年先、2年先の分まで契約させられるというケースもありますが、
このようなケースはどうなりますか。
○石塚課長補佐
過量の判断基準ですが、まず法律上何と書いてあるかというと、「日常
生活において通常必要とされる分量を著しく超える」状態と定めています。勿論、役務、
サービスについては、回数等の数量概念で定めを置いています。
ここでは、「著しい」という評価的概念がその条件の中に入っていますので、どういう
状態であったら、この過量解除の対象になるのかということを、単純な基準で選り分ける
ことは、基本的にできないと思っています。「著しく」というのは、商品や役務の如何に
よって変動するもの解さざるを得ず、様々な条件を斟酌することが必要となります。
一方、我々が今考えている基準は、「通常必要とされる分量」とは何かという点であり、
こちらはある程度の基準のようなものをお示しはできると思います。いわば「シロ・リス
ト」「シロ基準」とでも言うことができるかもしれません。
例えば浄水器だったら一家に1台、これは白だということです。シロの契約であれば基
本的には解除の対象にならないし、同じく行政処分の対象にもならないが、特別な事情が
はっきりしないのに、そのシロの基準よりも相当多いものを売っていたら、基本的には黒
だということになるでしょう。
もちろん本当に消費者に必要があれば、一家で3台でも4台でも買うかもしれませんが、
その場合には、9条の2第1項のただし書にある「特別の事情」を事業者が立証する必要
があるということになります。繰り返しになりますが、ある程度明確化できるのは、「通
常必要とされる分量」の方ということになります。
そこで、質問された新聞ですが、たまたま長期の新聞の購読契約を締結してしまった場
合、新聞1紙でしたら、おそらく「通常必要とされる分量」ではないでしょうか。つまり、
-25-
シロということです。
教材については、判断は微妙ではないでしょうか。教材の取引が一般的にどの程度の分
量で行われるのか、例えば家計調査といった統計でどうなっているかという点の下調べが
まだ完全にできていないのですが、小学校1年生から中学3年生までの教材を一括して購
入するという取引が通常存在するものなのかどうかを見てみないと判然としません。勿論、
個人的、直観的には変といえば変だと思いますが。いずれにしても、実態を統計的に見て
みないと判然としないところがありますので、この点については目下、下調べをしている
ところです。
8.最後に
今後、政令や省令の整備、また、与信枠のガイドライン、過量のガイドライン、あるい
は再勧誘のガイドラインといったものを、来年中の施行に向けて、逐次整備をしていくこ
ととなります。
これらの作業の進捗その他については、可能な限り「消費生活安心ガイド」等でご紹介
をしていきますので、適宜ご参照いただければと思います。また、今日使用した改正法の
解説テキストや、今日の説明では触れていない、改正法のパンフレットも、この「消費生
活安心ガイド」からダウンロードできるようにして行きますので、ご活用いただけると幸
いです。
-26-
【第2セッション】特定商取引法の一部改正について(法執行関係者向け)
(説明者:消費経済政策課
:取引信用課
課長補佐
石塚
課長補佐
吉村
)
1.はじめに
本日の説明会において主として使う資料が、「消費者を守る法律を強化します」という
副題のついた 改正法の解説用テキストです。
まず、テキストを開いていただくと、〈目次〉があります。このテキストは、次のよう
に、PART1から PART5までの大きく5つのパートに分かれています。
PART1
規制の抜け穴を解消します
PART2
訪問販売規制を強化します
PART3
クレジット規制を強化します
PART4
インターネット取引等の規制を強化します
PART5
その他
これらの各パートの中には、割賦販売法の改正で措置されるものと、特定商取引法の改
正で措置されるものとが、それぞれ位置づけられており、いわば、改正によって解消した
いと考えている消費者トラブルや消費者被害の場面という切り口で、このテキストは作成
されています。そのため、特定商取引法の改正事項として、一続きの一覧となっていない
点について、ご容赦いただきたいと思います。
2.「規制の抜け穴を解消します」
PART1「規制の抜け穴を解消します」から、特定商取引法改正の説明を始めます。
改正のポイント①
規制の後追いから脱却するため、これまでの指定商品・指定役務制を廃止し、訪
問販売等では原則すべての商品・役務を規制対象とします。
現行の特定商取引法の規制対象の商品とかサービスについては、指定制となっています。
つまり、政令でこれとこれが規制の対象であると、個別に定める、限定列挙方式をとって
いるわけですけ。しかし、これでは、悪質事業者との間のイタチごっこがとまらないとい
うご案内の状況になっている訳です。
平成19年に、いわゆる祈祷サービス、調味料、そして「ロコ・ロンドンまがい取引」
-27-
と称されるような不当な海外商品先物取引などを政令追加しました。この後も、例えば
「情報商材」と称されるような、中身があるのか、ないのかわからないようなもののダウ
ンロードサービスとか、特定商取引法の規制が及んでいないと思われるものを、相談事例
から数えだしたら切りがないという状態です。そこで、従前から懸案になっていました指
定制の見直しをするための改正を今回実施しようとしているところです。
この改正によって、原則すべての商品、サービスが特定商取引法の規制及び民事効の対
象になるわけですけれども、その中でも例外的に幾つかのものについては、適用除外の措
置を講じています。
改正のポイント②
その上で、クーリング・オフになじまない商品・役務等は、規制の対象から除外
します。
解説テキストの5ページ以下で説明しているように、適用除外には、大きく分けて2種
類の形があります。
第一は、特定商取引法自体を全面的に適用除外とするものです。現行でも幾つかの取引
は、全面適用除外になっております。例えば輸出や、国または地方公共団体との取引にう
いては、特定商取引法の規定は適用されません。このような取引に加えて、今回の改正で
は、全面的に適用除外する取引として、三種類の取引を追加することになります。
まずは、「株式会社以外が発行する新聞」、学術団体が発行する新聞や、コミュニティ
ー新聞とされる、いわゆる非商業紙です。もちろん、無償の新聞はそもそも特定商取引法
の対象外ですが、有償で販売するという行為についても、明文で適用除外にしています。
次が、弁護士業務ですが、この取引もことの性質上行政処分になじまないので、そもそも
適用除外としています。
これらに加えて三番目として、特定商取引法以外の他の法律によって消費者の保護が図
られている商品やサービスの取引については、特定商取引法適用から除外にすることとな
ります。個別具体的な商品やサービスの規定は、今後政令で定めることになりますが、法
文上では例示として3つのサービスを掲げています。テキストにも記載している金融商品
取引法のほかに、旅行業法と宅地建物取引業法について適用除外を定めています。これら
の法律及び今後政令で規定される法律に基づく行政監督に服している事業者が行う取引に
ついては、特商法の適用が除外をされることになります。
-28-
適用除外の方法の第二は、部分的に適用除外とするものです。この部分的適用除外につ
いても、適用の除外される特定商取引法の条項に関して、2つのパターンが措置されるこ
ととなります。1つは書面交付義務とクーリング・オフの除外をするものです。このパタ
ーンに該当するのは飲食店の路上での勧誘のようなものです。今回の改正により、指定制
を改正することに伴い、飲食業も基本的に特商法の規制対象に入ります。同時に、特定商
取引法では、路上で声がけして営業所等に連れていく類型も規制対象としています。飲食
業の路上勧誘ということとなると、いわば飲食店の客引きのような営業が、特定商取引法
の規制対象に入ってくることになります。しかし、居酒屋の客引きについて特定商取引法
の規制をかけ、書面交付にクーリング・オフといってみても、余り意味がありません。要
するに、お酒の注文をして、飲んでしまった後にクーリング・オフと言ったところで、実
際にはできもしない原状回復義務を消費者に課すこととなります。要するに、消費者保護
の実益もない一方で、あまり問題が生じていない取引分野に規制を及ぼしても、ただいた
ずらに無用な混乱を招くだけとなります。そこで、こういったものについては書面交付義
務とクーリング・オフの適用を除外するという措置を講じています。
この適用除外とは別に、クーリング・オフ規定だけが適用除外となるパターンがありま
す。このパターンにもいくつかの種類を措置しているのですが、その一つ目は、現行法で
も措置がとられているもので、「契約を結ぶまでに時間がかかることが一般的」と考えら
れる商品やサービスを定めることとなり、現在は自動車販売が政令で指定されています。
なお、この部分に関し、現行では、商品だけを政令で定めることとなっていましたが、自
動車の販売と同視できる、自動車のリースを適用除外にてきるように、商品に加えて役務
もこの適用除外に追加していることを付け加えます。
次のクーリング・オフ除外ですが、葬儀サービスのように、消費者が役務を提供してく
れと依頼してから時間が経過してしまうと、消費者が非常に困るというサービスがありま
す。そもそも、サービスについてのクーリング・オフの趣旨が、クーリング・オフ期間中
はサービスの提供をせずに、消費者がそのサービス契約の必要性について冷静に物事を考
えられる期間をつくるという点にあります。とすると、迅速なサービス提供を消費者が必
要とするサービスについて、消費者保護のルールを適用すると、その消費者の利便性を著
しく害するということになりかねません。そこで、そういった性格のサービスについては、
クーリング・オフ規定の適用だけは除外するということとしています。
3番目が、現行でも措置している、いわゆる消耗品関係の適用除外です。要は、ふたを
-29-
あけてしまうと価値が著しく減じるものについてのクーリング・オフの制限も改正後存置
します。
それから最後にもう1点、今回の改正で新設していますのが、生鮮食料品、あるいは花
の類についてのクーリング・オフの制限です。こういうものについてクーリング・オフと
いっても、原状回復義務が消費者にもかかるわけですから、傷んで商品価値の全くなくな
ったものでは、原状回復義務になりません。結局、金銭返還になるのですが、そうなると
クーリング・オフといっても仕方ないのであり、適用除外とすることとしています。
このように、今回の改正で指定性を原則的方式に改めることとにともない、きめ細かい
適用除外措置を講じることで、無用の社会的コストが発生しないように配慮をしているつ
もりです。
補足的に、1点だけ追加説明をしたいと思います。現行法の下では、クーリング・オフ
の民事的な主張をする時、あるいは行政処分をする時に、その主張や処分の対象となった
商品やサービスが、特定商取引法の規制対象、つまり指定商品や指定役務を定める政令の
別表に定めるものであることを証明してからでないと措置ができませんでした。
この点は、指定制、つまり限定列挙方式を原則適用方式に変更するにあたり、この立証
配分の問題についても検討しました。民事としてクーリング・オフ等を主張する場合、改
正後は、立証配分が変わりまして、訪問販売とか電話勧誘販売で契約が締結されたという
事実だけ立証できれば、後はその商品やサービスが適用除外がどうかという主張・立証責
任は事業者側になります。そのようになるように、条文案の構造を精査して策定いたしま
した。消費者相談やあっせんの実務の面で、この辺りの負担が少しでも軽くなればと思っ
ています。ただし勿論、行政処分の場合には、行政機関側が、適用除外への非該当性を立
証した上で処分しなければならない点は変更がありません。
3.「訪問販売規制を強化します」
次に、解説テキストの PART2の訪問販売関係の改正点についての説明に入ります。ま
ず、勧誘規律の強化に関する部分です。
-30-
改正のポイント①
訪問販売業者に「契約しない旨の意思」を示した消費者に対しては、契約の勧誘
をすることを禁止します。
今回の訪問販売関係の改正では、行為規制として第3条の2という条文を追加していま
す。この3条の2という条文は、第1項、第2項の2項立てになっていまして、第1項が
消費者と訪問販売業者の接触段階における規律です。現行の第3条が、訪問販売の接触段
階において最初に氏名を明示しろと定めている訳ですけれども、その次のステップにおい
て、守るべき規範として、「勧誘開始の段階で相手方(消費者)に勧誘を受ける意思があ
るかどうかを確認すること」の努力義務を定めています。これは努力義務なので、3条2
第1項違反自体から、直ちに行政処分という議論ではありませんが、勧誘を受ける意思が
あるかどうかを確認するよう努めるべく、訪問販売業者に求めることとなります。
改正法第3条の2の中心は第2項です。「『契約を締結しない旨の意思』を表示してい
る相手方に対しては勧誘の継続や再度の来訪による勧誘をしてはならないこととする」と
いうことです。
このような規定は、電話勧誘販売については既に導入をされていまして、「結構です」
と言ったら基本的に電話を切りなさいということになっておりますが、訪問販売について
も、いわゆる再勧誘の禁止という規律を導入いたします。
基本的には、「契約を締結しない旨の意思」は、個別に消費者が事業者に対して明示し
た意思表示ということになります。典型的な事例は、「○○○の商品の勧誘なんですが」
と、第3条に基づいて事業者が言ったときや、商品の説明、契約の勧誘の過程で、消費者
が「結構です」とか、「私は買う気はありません」と言ったら、その後契約の勧誘をして
はならないということとなります。勿論、この辺りの言い回しの問題については、電話勧
誘販売における運用と同じで良いのかといった問題もありますので、どういう状態になっ
たら違反になるのかということについては、きちんとガイドラインを提示をさせていただ
きたいと思っています。
次が、今回導入された大きな民事ルールである過量販売契約の解除についてであり、特
定商取引法の第7条と第9条の2の改正部分ということになります。ちなみに、第9条の
2という条文自体は、現行法でも不実告知の取消権などを規定している条項ですが、今回
の改正では、この現行の9条の2の条文番号を第9条の3にずらし、新設される過量契約
-31-
解除を9条の2とすることとしています。
改正ポイント②
訪問販売で、通常必要とされる量を著しく超える商品等を購入契約した場合、契
約後1年間は契約を解除できることとします(ただし、消費者にその契約を結ぶ特
別の事情があった場合は例外とします)。
第7条は指示処分の対象となる不当行為を列記する規定に、過量な販売行為、つまり日
常生活において通常必要とされる分量を著しく超えるような商品の販売を勧誘することを
追加しています。この追加におり、このような行為を行うと業務停止命令の対象ともなり
ます。このような行為は、いわば適合性に反する行為であり、現在は、第7条に基づく省
令第7条で「顧客の知識、経験及び財産の状況に照らして不適当と認められる勧誘を行う
こと」と規定されているのですが、このような行為の内、まさに目下看過しえない行為と
して行われている過量販売勧誘内を法文上書き起こし、個別具体的なものをさらに細かく
省令で規定するという構成として、指示や業務停止の対象に追加をしています。
さらに、このような問題のある不当勧誘で結ばされた契約があった場合には、契約締結
後1年以内ではありますけれども、解除できることとする措置を講じています。これが過
量販売の解除権ということになります。法律上の条文で言うと、第9条の2第1項におい
て、過量契約解除の対象となる契約というのは、1号、2号立てとなりますが、細かくい
うと実質的には3種類あることになります。
第1号は、比較的単純なケースでして、事業者と消費者との間で1回行われた取引で過
量になっている、つまり、通常必要とされる分量を著しく超えているということです。1
回の取引で独居のお宅に布団を5組売るとか、浄水器を5台売るとか、健康食品を 10 年
分売るという類の契約が典型的なパターンです。
第2号のパターンが、消費者の商品の保有状況その他を知っていて、この契約に基づい
て商品やサービスを提供すると、通常必要とされる量を超えることが分かっていたにもか
かわらず、事業者がその契約の申し込みを受けたり、その勧誘を締結したりした場合には、
その契約を解除できるということです。
解除の対象となる契約は、実質的には3種類あるとしましたが、この第2号のパターン
中が、状況的には2つに分かれているものと考えることができるのです。まず、その一つ
は、単一の事業者と消費者との間で複数回の契約を締結した結果、過量になるパターン、
-32-
ケースです。この場合には、事業者は特定の消費者と継続的に何回も取引しているわけで
すから、その消費者が浄水器を何台持っているかとか、布団を何組持っているかとか、少
なくとも自己の販売した商品の保有状況やサービスの提供状況について知っているはずで
す、それを知っていながら、過量となる契約をするというのは、非常に不当だということ
になりますのでで、そのような契約は解除をできるということです。
もう一つのパターン、ケースが、複数の事業者が複数の取引を特定の消費者と行った結
果、過量状態になってしまうという場合です。この複数の取引の中では、ある事業者は1
回しか取引を行っていないかもしれません。例えば、一の事業者が布団1組を独居世帯の
方に売ること自体は、別に何の問題もないわけですが、契約の相手方が既に布団を3組持
っているということを知っていたにもかかわらず契約をした場合には、その契約の解除を
受け入れなければいけません。つまり、複数の事業者が次々入れ替わり立ち替わり勧誘に
来るような次々販売で、複数の事業者が一種の通謀関係にあるような場合には、それらの
契約は解除されても仕方がないということになります。
ただ、留意点としては、この通謀関係の立証の問題があります。第1号の単一の事業者
が過大な量の契約を勧誘してくるケースは、立証が簡単です。第2号でも、単一の事業者
が繰り返し物を売ることによって過量になるケースも、比較的立証は簡単です。要すれば、
だれと契約を結んだのかということだけ立証できればいいわけですから。
厄介なのが、複数の事業者が通謀的に勧誘してきた場合の契約解除主張時の立証です。
この通謀類型の場合、通謀しているという事実、つまり、複数の事業者が消費者の保有状
況とか役務の提供状況に関する情報を融通して、いわば「カモ」に商品などを売りつけた
ということの立証責任は、基本的には原告側、つまり消費者にあることとになっています。
この立証責任をすべて事業者側に寄せるとすると、「知らなかった」ことを事業者が立
証するということにあなりますが、これはほとんど不可能であると思われます。とすると、
消費者が一回一回の取引を重ねて結果的に過量になってさえいれば、訪問販売である限り、
どんな契約でも解除できるということになってしまいます。そこで、条文上に「知りなが
ら」と規定し、この「知りながら」という条件の立証配分は、解除を申し立てる方、原告
側となります。
この立証は、必ずしも簡単ではないと予想されます。勿論、この過量販売契約の解除規
定については、現行の不実告知取消権等の消費者保護規定が必ずしも紛争解決手法として
十分に活用できておらず、その原因の一部に立証配分の問題があることも踏まえて検討し
-33-
てきています。今後、新設9条の2の有効性を検証していって、将来的には立証配分を考
え直す時期も来るのかもしれません。
4.「インターネット取引等の規制を強化します」
解説テキストでは、次のパートがクレジット関係の解説になりますので、テキスト上は
少し飛びまして 23 ページの PART4の説明に移ります。ここからが通販関係、特にネット
を中心とした通信販売に関する規制の改正内容です。今回の通信販売関係の改正は、返品
条件表示ルールと迷惑メールに対する規制の強化という2つの内容で構成されています。
まず、返品条件表示ルールについての説明です。
改正のポイント①
返品の可否・条件を広告に表示しない場合は、8日間、送料を消費者負担で返品
(契約の解除)を可能します。
通信販売については現行の特定商取引法第 11 条第1項で、広告に返品条件を記載する
ことが義務づけられています。加えて、返品に関する特約を設けていないのであれば、特
約がない旨を記載するようにと入念な規定となっています。
しかしながら、こと返品に関しては、特別な合意がない限り、返品を受け入れる必要は
事業者側にはない、つまり、一度締結した契約は守るべきということが、民法の原則です。
とすれば、行政取り締まりのルールとして、返品条件について記載しろといった言ったと
ころで、返品を受け入れるつもりのない事業者は、わざわざ返品について記載しようとは
しません。あるいは、全くの未記載とまではいかなくても、どこに返品条件が書いてある
のかわからない、あるいは書いて返品条件が分かりにくいという、苦情や相談も寄せられ
ています。その結果、「商品違いとかイメージ違いだったら、返品できて当然ではないな
か」とか、「返品できないと書いてないじゃないか」といってトラブルに発展してしまう
訳です。
そこで、返品条件をきっちり書いてもらうため、今回の改正では返品表示条件ルールと
して、返品条件が分かりやすく書かれていなかった場合には、商品到着後8日間は送料消
費者負担で、返品を販売事業者は必ず受け付けなければならないというルールを導入して
います。
この返品条件表示ルールが施行されるのは、指定制の変更と同じタイミングですので、
この改正後の返品に関するルールが適用されるのは、原則すべての商品と指定権利の売買
-34-
契約です。役務提供契約の場合には、この新設されるルールの対象外です。
というのも、通信販売の方法での役務提供の申し込みという場合には、ネットでのダウ
ンロードみたいな形態のものを除くと、基本的には法律上、予約のケースが非常に多いの
ではないかと思います。勿論、旅行業の約款のように、断るとキャンセル料を徴収すると
なっている場合には、もちろん契約は成立しているわけですけども、一方、飲食店に「何
月何日に行きますよ」と電話で連絡を入れた場合は、多分民法上予約です。つまり契約の
申し込みは行われているが、契約そのものは成立してなくて、契約締結権だけが消費者に
あるという状態なのです。このような法的状態にある関係において、契約の解除と言って
も仕方がなく、要すれば、役務提供を受けに行かなければ良いのです。よって今回の返品
条件表示ルールについては、商品と指定権利の売買契約について導入するという整理にし
ています。
次に通信販売関係の改正事項の大きな塊としてあるのが、迷惑メール関係です。
改正のポイント②
消費者があらかじめ承諾・請求しない限り、電子メール広告の送信を原則的に禁
止します。
改正のポイント③
電子メール広告に関する業務を一括して受託する事業者についても、規制の対象
とします。
改正のポイント④
オプトイン規制に違反した場合は、行政処分や罰則の対象になります。
現行特定商取引法では、電子メール広告に関して、オプトアウト規制、つまり一度消費
者のが「受信したくない」と答えた電子メール広告を再度送信することを禁止するという
規制になっています。しかし、日本産業協会で行っている迷惑メールの傍受事業の観測結
果では、迷惑メールの数は全然減っていないところでもあります。単純な数字をみてみる
と、若干頭打ちかといった議論もありますが、いずれにせよオプトアウト規制導入直後と
比べて、足下の迷惑メールの数は極めて増加している状況にあることは間違いありません。
とすると、オプトアウト規制には全く効力がなかったということが、事実によって立証さ
れていると評価せざるを得ません。
このため、今回の改正では、オプトイン規制、つまりあらかじめ消費者からOKとされ
-35-
ていないメール以外の広告メールは禁止するという措置を導入します。
この規制を導入するに際し、当然問題となる点が、事前のOK、つまり消費者の承諾と
か同意とは、いったいどのような状態をいうのかという点です。特に、具体的な問題とし
て議論の俎上に上ったのは、「デフォルト・オン」という形での同意の取り方の適否です。
ネットショップ・サイトでは、最後的に申し込みを送信する画面に、「今後、広告メール
を送ってもよろしいですか」と1行書いてあり、そのチェックボックスという四角の枠に、
最初からチェックが入っているというケースが良くあります。このチェックボックスのチ
ェックを外さないと、OKという意味であるとされます。このような同意の取り方によっ
て取得された「同意」を今回のオプトイン規制における承諾同意と考えるのかどうかとい
う点が、問題となりました。現在までの議論では、電子メール広告受信の同意と見なす旨
の表示が分りやすく書かれていることを条件に、デフォルト・オン自体は、「承諾」と取
り扱うこととなっています。
また別の問題として、いわゆるフリーメール・サービスの取り扱いの問題があります。
フリーメールを使うと、そのメールには必ず広告が付されていて、その広告料でサービス
自体が維持運営されているわけです。とすれば、消費者も、フリーメールを使い始めると
きに、必ずしも個別に特定の広告を受領するということを承諾している訳ではありません
が、送受信するメールに広告が掲載されていること自体をサービスを享受する前提として
理解しているはずです。このような形態の電子メール広告の提供まで禁止するというのは、
実態にあっていません。同様な問題は、いわゆるメールマガジンにも存在するところです
が、これらの点については、きめ細かい適用除外を最終的には省令で定めることとなって
います。
もう1点、今回の電子メール広告関係の改正で重要な点は、規制対象者を広告主たる通
信販売業者等から拡大していることです。電子メール広告に関して、特定商取引法にオプ
トアウト規制を導入したころに想定されていたのは、通信販売事業者自身が広告と称して
一斉に多数の迷惑メールを送信するという事態でした。しかし、近時の実態を見てみると、
この分野においてもある種の分業が進んでいて、今は普通の広告、つまり新聞広告やテレ
ビ広告では、広告主がいて、媒体会社がいて、その間に広告代理店がいるというのが、一
般的な形態だと思いますが、電子メール広告の分野も同じで、通信販売事業者という広告
主がおり、別にプログラムを組む等により実際に送信行為をする業者がおり、その両者の
-36-
間にアレンジをする受託業者がいるという3層構造になっています。
とすると、勿論、特定商取引法の基本は通信販売業者規制ですから、広告主たる通信販
売業者にオプトイン規制を課すことが土台ではありますが、同時に、この広告主から電子
メール広告の送信や送信先の管理を受託する、いわばアレンジ業者をも制肘しないことに
は、不当な電子メール広告はなくならないということとなります。そこで、このような業
者にも規制の網がかかるように、これらの業者を「電子メール広告受託事業者」として、
この電子メール広告受託業者に対しても、特定商取引法に基づいて指示等の行政処分を下
し、不当な電子メール広告の送信に要する行為を止めさせることができるように措置して
います。ちなみに、この電子メール広告受託事業者の定義とは、消費者から承諾を得る業
務、承諾や請求があったことの記録保存業務、そして受信拒否の連絡を受け付ける業務を
一括して受託している業者となっています。通信販売業者が、これらの業務を個別に頼ん
でいた場合には、全部の責任が通信販売事業に残りますし、個別に業務を請け負う場合の
受託事業者は、今回の改正法における規制の対象ではありません。要するに、通信販売業
者が関連業務を「丸投げ」をしているのであれば、「丸投げ元」を規制したところで、
「私、何も事情を知らなかったんです」と言われるだけですから、その「丸投げ先」を規
制することが重要なのです。
また、これらの電子メール広告関係の規制に違反した場合には、勿論、行政処分や処罰
の対象にしています。特に、送信した電子メール広告がオプトイン規制に違反していると
同時に、その電子メール広告内容自体が優良誤認を引き起こすような虚偽誇大広告であっ
た場合には、懲役刑も科されることとなりますので、相当程度の抑止効果はあるのではな
いかと思っています。
なお、この電子メール広告関係の規制見直しは、特定商取引法上の通信販売だけではな
く、連鎖販売取引及び業務提供誘因販売に関する電子メール広告に関する部分にも同様の
措置が講じられていることを最後に付け加えさせていただきます。
5.「その他」
最後に「その他」として、直接的な規制強化ではないですが、今回の改正事項や特定商
取引法の執行などを下支えする改正点について、何点か説明したいと思います。
-37-
改正のポイント②
違反事業者に対する罰則を強化します。
1
特定商取引法を厳正に執行するため、販売業者とその密接な関係者に対して「物
件提出命令」を新設、販売業者等と取引する者への「報告徴収命令」を新設しま
す。悪質な「不実告知」「重要事項不告知」「威迫・困惑行為」など、特定商取引
法違反を構成する中核的な罪に対する罰則は、他の法令の罰則水準を踏まえて、
「3年以下の懲役又は 300 万円以下の罰金」へと引き上げます。
今回の改正では、特定商取引法違反の摘発の実効性を高める観点から、報告徴収命令の
対象範囲の拡張や罰則水準の引き上げを行うこととしています。
特定商取引法を厳正に執行するため、違反行為を行う販売業者自体に対して、「物件提
出命令」を新設します。また、販売業者とその密接な関係者に対して、単に報告を求める
だけではなく、「資料提出」を求めることができるようにします。同時に、販売事業者等
と取引する者への「報告徴収命令」の範囲を「販売業者等の業務又は財産」に関する事項
一般へと拡張します。
一方、悪質な「不実告知」、「重要事項不告知」などの違反行為が後を絶たないことか
ら、こういった特定商取引法における中核的な罪に対する罰則を、「2年以下の懲役」か
ら「3年以下の懲役」に引き上げます。
このような措置を講じることにより、立ち入り検査による違反事実の把握の実効性も高
まるのではないかと思います。特に、これまで明示的な「物件提出命令」が措置されてい
なかった関係で、違反を立証する重要な証拠、例えば「セールストークマニュアル」など
について、現場でコピー対応をとるしかないなど、御苦労された部分もあると思います。
今後はこの改正法が施行されると、直ちに物件提出命令を出していただいて、関係証拠類
を一旦持って帰って精査することができるようになります。
また、「取引する者」に対する報告徴収命令の範囲を拡張したことにともない、金融機
関、要すれば口座を管理している銀行、事業者の利用するレンタルオフィス業者とか、販
売業者が加盟店となっているクレジット会社に対して、関連情報を聴取することができる
ようになります。また、電子メール広告に対する規制の強化に伴い、報告徴収等を規定し
ている第 66 条に第4項を追加しています。これにより、電子メールに関する規制を行う
上での課題であったものを解決しようとするものであり、URL やメールアドレスなどの数
-38-
字や記号の羅列が現実社会の誰のことを指し示すものなのかを、電気通信事業者に聴取す
ることができるという規定です。この権能そして金融機関への口座照会の権能が付与され
ることによって、不当メールの規制については相当程度実効性が上がると思います。
1点補足すると、訪問販売協会についても、その業務における機能強化をしています。
改正のポイント④
訪問販売協会による自主規制の強化を図ります。
訪問販売協会の会員が行った不始末、要するにクーリング・オフがされているのに消費
者に代金を返さないとか、過量解除されているのに消費者に代金を返さないということが
あれば、訪問販売協会がその消費者が被った損害の補償を行うということとなります。こ
のような一種の補償業務を行う以上、協会の会員に対しては、協会の内の相互監視によっ
て、協会から悪質業者を排除するという力学が作用することとなります。
このような自浄作用をさらに強く作用させるためにも、行政処分を受けたような業者が
訪問販売協会の会員として存在し続けられるというのは、極めて不適切です。そこで、協
会の定款を改定して、不当業者の脱退や入会拒否を定款に定めるべきことを規定すること
しています。これらの措置を通じて、訪問販売協会の会員であることのステイタスが上が
っていくことを期待しています。以上、特定商取引法改正のポイントを説明いたしました。
続きまして、割賦販売法のポイントについて御説明いたします。4ページに戻っていた
だきまして、冒頭から御説明いたします。
6.「規制の抜け穴を解消します」
改正のポイント①
規制の後追いから脱却するため、これまでの指定商品・指定役務制を廃止し、訪
問販売等では原則すべての商品・役務を規制対象とします。
まず、4ページ、5ページの規制の抜け穴の解消、指定商品制・指定役務制の廃止、見
直しですが、割賦販売法については今回、不動産の販売を除いて、すべての商品・役務に、
割賦販売法のクレジット規制の適用があるということにいたしました。
ただ、個別の条項ごとに適用除外を丁寧にしていくということで、クーリング・オフに
関しては特定商取引法と同様に、先ほど石塚から申し上げたような、細かい適用除外をし
ていくことになっております。
-39-
改正のポイント②
その上で、クーリング・オフになじまない商品・役務等は、規制の対象から除外
します。
6ページに注書きで書いておりますけれども、今回、割賦販売法に新たに導入をいたし
ました、個別クレジット契約のクーリング・オフ規定がございますが、このクーリング・
オフはクレジットのみならず、販売契約も一体としてクーリング・オフできるような形に
なっておりますので、特商法と同じ適用にするということで適用除外を決めていると。具
体的には、特商法と同じような適用除外にしているということであります。
以上が、指定制の関係でございます。
引き続いて7ページですけれども、割賦の定義の見直しを今回行いました。
改正のポイント③
割賦の定義を見直して、これまでの「2ヶ月以上かつ3回払い以上」の分割払い
のクレジット契約に加えて、「2ヶ月以上後の1回払い、2回払い」も規制対象と
します。
クレジット規制は3者間契約ですけれども、クレジット規制の対象について、従来は2
カ月以上かつ3回以上の分割払いを対象にしていたわけでございますが、ボーナス一括払
いを利用する例とか、従来の法律の脱法ではないかと思われるようなトラブル事例もござ
いましたので、一括払いを含めて、すべて規制の対象とする。
ただし、クレジットカードで特に利用されていますと翌月一括払いについては、単なる
決済手段としての性格が強いということで、規制対象から除外をされております。
こういう形で、1回払いまでクレジット規制の対象になりましたので、法律上、従来割
賦購入あっせんという言い方をしておりまして、分割不払いという概念が割賦の中に読み
込まれていたんですが、今回1回払いも含むので、信用という定義に改めまして、信用購
入あっせんというふうにしております。
そのうちクレジットカードは限度額の範囲で、包括的に与信をするということで、「包
括信用購入あっせん」。
個別の契約ごとに、例えば宝石を買うごとに、あるいは呉服を買うごとに、車を買うご
とに与信契約をするものについて、従来、個品割賦と通称されていましたけれども、これ
を法律上「個別信用購入あっせん」と定義をしたということでございます。
なお、自社割賦は法律上は割賦販売、それからローン提携販売については従来どおり割
-40-
賦の定義を維持しておりまして、また指定制についても、従来どおり指定商品制・指定役
務制を踏襲しているということでございます。
7.クレジット規制を強化します。
続きましてクレジット規制ということで、12ページから順に御説明を申し上げます。
改正のポイント①
個別事業を行う事業者は登録制とし、立入検査、改善命令など、行政による監督
規定を導入します
従来、クレジットについての行政監督は、法律上は総合割賦と従来言っておりましたク
レジットカード業だけでございました。かつ従来は、財務の健全性がきちんとしているか
どうか、純資産比率ですとか、あるいは資本金の点だけをチェックをしておりまして、制
度趣旨としては加盟店保護が中心でございました。
他方、通達行政という意味で言えば、取引信用課から類似の加盟店管理通達等を出して
おりまして、消費者保護の観点からも気を配ってきたわけでございますが、今回、法律上
も消費者保護の規制をきちんと盛り込んでいくということで、従来何ら登録制もなければ、
行政処分権限もなかった個別クレジットについて、登録制と行政処分権限を導入するとと
もに、総合割賦についても過剰与信防止その他の法律上の義務の履行について、きちんと
確保していくための行政処分権を導入したということでございます。
順次まいりまして12ページの1ですけれども、個別クレジット業者に対する登録制を
導入いたします。登録要件としては、一定の財産的基礎を有していること。それから、貸
金業法に違反して罰金を科された法人等でないこと、あるいは暴力団員の勧誘がないこと。
それから、割賦販売法の遵法体制であるとか、あるいは苦情処理のための社内体制が整っ
ているといった、体制要件も課すことにしてございます。
それから個別クレジットに関しては、包括クレジット、クレジットカードとは違いまし
て、更新制を導入しております。3年ごとの更新制でありまして、そのたびごとに財産的
基礎、その他体制要件について、継続的にチェックをしていくことを考えてございます。
なお、先ほど申し上げましたが、包括信用購入あっせん、クレジットカードについても、
従来の登録制を強化いたしまして、暴力団員が勧誘していないかどうかとか、体制要件、
割賦販売法の遵守や苦情処理のための社内体制が整っていることを、新たな要件として追
加をしてございます。
-41-
現在、クレジットカード業者、総合割賦の登録を受けている会社が 340 程度ございます
けれども、それとの重複もあるとは思いますが、大体500~600ぐらい、個別クレジ
ット業者がいるのではないか。これは既存の相談事例などから社名を洗い出した結果です
ので、確定的なものではありませんけれども、それぐらいあるのではないかと思っており
ます。
補足のところですけれども、この登録制の施行は公布後1年6月となってございますの
で、遅くとも来年中には施行して、その後は登録業者でなければ無登録業者ということに
なりまして、3年以下の懲役という刑事罰が科されるわけでございます。
したがって、一定の経過措置が必要であろうということで、まず個別クレジットについ
ては、施行時に既に個別クレジットを行っている事業者については、施行からさらに6カ
月間にしています。
それから総合割賦、包括クレジットについても、新たにやり始められる方は施行と同時
に登録していただかないといけないわけですが、その時点で既に登録をしている包括信用
購入あっせん業者、総合割賦業者については施行後6カ月以内に、先ほど追加された要件、
例えば暴力団員が介入していないとか、割賦販売法の遵守体制がきちんとあるといった、
追加書面の提出を求めることとしてございます。
したがって最終的に、現在現存しておられる業者については、今から最大で2年以内に
登録手続を終了していただく必要があるということでございます。
続きまして、行政監督の関係で 13 ページでございます。登録した個別信用購入あっせ
ん業者に対する行政監督ということで、まず①の個別関係ですけれども、過剰与信防止等
の法的義務を履行しない場合に、業務改善命令を課すことになります。この業務改善命令
になお違反した場合には業務の停止、あるいは登録の取り消しがございます。
それから、当然立入検査や情報書類の徴求もできることになっておりまして、特商法と
同様な帳簿書類等の提出命令等も課せられることになっております。
それから、この点がポイントでございますけれども、後で申し上げますように、特商法
類型、訪問販売等を行う加盟店、販売業者の勧誘行為について、きちんと個別クレジット
会社にチェックをさせるという義務をかけるんですが、この部分は、結局は消費者トラブ
ルは訪問販売のところで起きるわけでございまして、特商法の処分が行われたときでは、
あわせてクレジットが利用されていた場合に、じゃあ、個別クレジット事業者はきちんと
加盟店の勧誘行為をチェックしていたのかどうかとか、そこで事実上、関与していたので
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はないかといったところを調査し、場合によっては信販会社、クレジット会社に対する処
分も必要になると考えておりますので、「あわせて」というところですが、今申し上げた
販売契約など勧誘にかかわる調査、また不適切な勧誘があった場合の――書き方はあれで
すが、個別クレジット契約の締結禁止に関する義務の履行の調査について、加盟店に対す
る立入検査や資料提出命令ができることとしております。
これは実態上は、特商法と一緒に割賦販売法の権限も持って、訪問販売業者等に立入検
査していただくことで、そこで得られた証拠書類が割賦販売法の証拠書類としても使える。
したがって、後々、個別クレジット会社に対する行政処分をする際の証拠書類になるとい
うことでございます。
それから、②包括信用購入あっせん関係ですが、過剰与信防止義務等の法的義務が守ら
れない場合に、新たに業務改善命令を下せることといたしました。それに違反した場合に
は、登録の取り消しとなります。
昨今、クレジットカード業務の一部を他の業者、地銀系カードなどで地銀自身に委託し
ているような場合も見られますので、委託先への報告徴収、立入検査も可能としてござい
ます。
その他、後ほど申し上げますが、クレジットカード情報の管理を今回義務づけしており
まして、その関係で、クレジットカードの発行業者のみならず、加盟店管理業者、アクワ
イアラーに対する報告徴収、立入検査も可能となっております。
具体的な規範自身が、後ほど御説明するものですからわかりづらくて恐縮でございます
けれども、処分権限としては以上のようになっているということでございます。
続きまして14ページ、具体的なルール、規範について御説明いたします。
改正のポイント②
個別クレジット業者に、訪問販売等を行う加盟店の勧誘行為について調査するこ
とを義務づけ、不適正な勧誘があれば消費者への与信を禁止します。
今回の一番の目玉は、訪問販売等の悪質事業者に個別クレジットが加担していたのでは
ないか。これについてきちんと適正な勧誘行為がなされたのかどうかを、与信業者がクレ
ジット会社にチェックをさせようということでございまして、加盟店販売業者の行為につ
いての調査を義務づける。さらに、不適正な勧誘があったと認められる場合には、与信を
禁止するということでございます。
具体的な対象としては、解説の2パラグラフ目ですけれども、訪問販売、電話勧誘販売、
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連鎖販売、特定継続的役務取引、業務提供誘引販売となります。これらについて、例えば
訪問販売であれば、特定商取引法第6条で禁止されているような不実告知、重要事実の不
告知、不退去、退去妨害がないかどうかをチェックするということであります。
具体的な調査の範囲、方法は省令で定めることになっておりますけれども、加盟店契約
を締結する場合、個別の訪問販売業者と取引を開始する時点でダイレクトメールとか、あ
るいは販売マニュアルといったものを徴求して、勧誘方法として想定されるものを調査し、
さらに個別のクレジット契約を消費者との間で締結をするたびに、消費者に対して実際に
どのような勧誘が行われたのかについて電話で問い合わせるなどによって、調査をさせる
ことを想定しております。
調査結果はすべて保存させることにしておりますので、実際に消費者トラブルが起きて、
報告徴収、立入検査が必要な場合には、まずはこの記録を出させることになります。
以上の調査義務、あるいは調査の結果を踏まえて、不適正な勧誘があった場合に与信を
してはいけないという義務に違反した場合には、業務改善命令が課されることになります。
続いて15ページで、書面交付の関係です。従来、訪問販売等の悪質商法、消費者トラ
ブルが起きた場合に、非常に書面が不備である。例えば、支払い総額についての記載がな
いと。1回2万円で 30 回なんだけども手数料を含めて、一体総額幾らなのかというとこ
ろが書かれていない場合も見られました。
それが消費者トラブルの原因なのではないかという指摘がございましたので、今回、特
定商取引関係の5類型、先ほどの加盟店に対する調査の類型と同じですけれども、この類
型については、個別クレジット会社自身がきちんと書面を交付する法的責任を負うことに
なります。申し込み書面と締結書面両方について、そのようになります。
後ほど申し上げますが、この書面は個別クレジット契約のクーリング・オフの起算点と
なる書面となりますので、ここで記載事項に不備があれば、クーリング・オフの期間が起
算しないという形で、クレジット会社に不利益がございますので、民事上のインセンティ
ブも効いているということでございます。
それから記載事項については、従来の販売業者における書面記載事項を、基本的には踏
襲するつもりでございますが、一部特定継続的役務取引、あるいは連鎖販売についての追
加、それから与信契約のクーリング・オフの制度についての注意事項についても、書面記
載を求める予定でございます。
それから、前のページで申し上げました加盟店の勧誘行為についての調査の中身につい
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ても、あらかじめ消費者に書面交付をせよということにしてございます。これにより、消
費者にあらかじめどのようなことが聞かれるのかということを、きちんと伝える意味があ
るということでございます。
続きまして16ページからは、幾つか民事ルールが書かれてございます。要するに既払
金返還という、今回のクレジット規制強化の眼目の一つでございます。
改正のポイント③
訪問販売業者等が虚偽説明等による勧誘や過量販売を行った場合、個別クレジッ
ト契約も解約し、すでに支払ったお金の返還も請求可能にします。
1番が、過量販売解除権の関係。特定商取引法について導入されることになりました過
量販売解除の場合、あわせて個別クレジット契約についても解除できることとしておりま
す。
要件はすべて一緒でございまして、例えば契約締結後1年間でありますとか、あるいは
ただし書ですね、消費者が通常の必要量以上の購入をする特別な事情がある場合は例外で
あるとか、このあたりすべて一緒になってございます。
あと、今回個別クレジットの解除を定めるに当たって、清算関係を明確にするために清
算ルールを定めておりまして、原則として与信契約に関する損害賠償を制限される。これ
はクーリング・オフと同じでありますが、あわせて(2)のクレジット会社は立替払相当
額を消費者に請求できないとか、あるいは販売業者は立替金をあっせん業者に返還しなけ
ればならない。最終的には、クレジット会社が消費者から受け取った既払金を消費者に返
還するという順番で、順次清算が行われるように、明文で規定をしているところでござい
ます。
続きまして17ページの2ですが、これが不実告知タイプについての取消権。同じよう
に既払金の返還を可能とするルールでありまして、個別信用購入あっせん取引においては
従来、現行の特商法9条の2、これは改正後は9条3になるわけですけれども、不実の告
知を理由に取り消すことができましたが、割賦販売法のほうでは抗弁権の接続ということ
で、未払分については支払請求を拒絶できましたが、割賦販売法のほうでは抗弁権の接続
ということで、未払分については支払い請求を拒絶できましたけれども、既払金について
は返ってこなかったということで、今回、既払金についても返還させる規定を導入したと
いうことでございます。
具体的な取消権の中身としては、支払い総額、支払い回数等のクレジット契約の内容の
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みならず、その動機となっている販売契約の部分、例えば商品の品質であるとか性能、さ
らには商品が必要な事情、例えば役務の例ですけれども、リフォームのような場合に床下
にシロアリが巣くっているといったことが、例えばリフォームを行う理由と必要性になる
わけですが、こうした部分についても、今回のクレジット契約の締結に当たっての重要事
項という形で認められれば、今回導入しました取消権を利用しまして、消費者が個別クレ
ジット契約を取り消し、既払金の返還を請求することができるわけでございます。
以上が、民事ルールの関係です。
続きまして19ページ、過剰与信防止義務の関係です。
改正のポイント④
クレジット業者に対し、指定信用情報機関を利用した信用能力調査を義務づけ、
消費者の支払能力を超える与信契約の締結を禁止します。
今回、個別クレジットだけではなくて、クレジットカード会社、包括クレジット業者に
対しても導入してございますが、クレジット業者に対し、指定信用情報機関を利用した支
払い能力調査を義務づけ、消費者の支払い能力を超える与信契約の締結を禁止するという
ことでございます。
クレジットカード取引の場合については、カードを交付する時点、それからカードの使
用限度額を増額する場合、通常更新時において継続する場合、それから限度額を増額する
場合がありますが、こういうものもすべて含めて、カードの条件が変更される場合につい
て、変更または継続される場合について、包括支払可能見込額を調査する必要があるとい
うことでございます。
この包括支払可能見込額というのは支払い余力のようなものなんですが、何かと申しま
すと、クレジット会社から見ると、利用者の年間の収入とか預貯金、あるいは過去のクレ
ジット債務の支払い状況、それから借入金の状況などをさまざまな方法で調査をいたしま
して、その調査結果を基礎として合理的に算定できる、その消費者が1年間にクレジット
債務の支払いが可能と見込まれる額であります。
この中に、例えば居住している自宅を最後に競売にかければ回収できるので、支払い能
力ありとするとか、あるいは年収ぎりぎりまで、例えば年金で200万しかなくて、ほか
に資産もないのに200万ぎりぎりまで、例えば呉服の債務を支払わせるといったことは、
事実上債務を持続的に支払い可能とは考えられないということで、法文上、まず自宅は支
払い可能見込額の対象外ですと。それから、生活を維持するために最低限必要な費用、こ
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れは省令で定めることになっておりますが、これについては支払い可能見込額の対象とし
ますということを明記しているわけであります。
こうした定義がなされている支払い可能見込額をクレジットカード会社が算定しまして、
それを基礎として一定割合を乗じることにより、カードの限度額を決めることになってお
りまして、その支払い可能額を超えるような形で、カードの限度額を設定することはでき
ないことになるわけでございます。
この一定割合が何かということは、最終的には経済産業大臣が定めることになっておる
んですが、詳細は注意書きのところをお読みいただければと思います。
それから、個別クレジットについても同様の規制がかかることになっておりまして、支
払い可能見込額の考え方は同様でございますけれども、その範囲で年間の支払いをおさめ
なければいけない。それを超えるような年間の支払いを必要とする契約は締結できなくな
るということでございます。
また今回の改正では、支払い可能見込額の調査に当たって、他社のクレジット債務の額
や支払い状況を調査するために、指定信用情報機関の提供する信用情報を利用することを
義務づけております。
この信用情報の利用の義務づけには、指定信用情報機関のインフラ整備が必要でござい
ますので、施行時期が1年ずれておりまして、最大で2年6月以内の政令で定める日とい
うことで、ここに書かれております過剰与信関係の義務が法的義務になるのは、最終的に
は公布から2年6月以内の政令で定める日ということで、再来年になるということでござ
います。
早口で大変恐縮ですが、続きまして21ページ、与信契約のクーリング・オフの関係で
す。
改正のポイント⑤
訪問販売等の場合について個別クレジット契約のクーリング・オフができること
とします。個別クレジット契約をクーリング・オフすれば販売契約も同時にクーリ
ング・オフされることになります。
これは個別クレジットについて、訪問販売その他5類型について適用があるものでござ
いますが、このクーリング・オフは1本の書面をクレジット会社、個別クレジット会社に
通知をすれば、販売契約もあわせて解除されるようになってございまして、8日間、ある
いは連鎖などの場合には20日間ですけれども、短期間で消費者が通知をしなければいけ
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ないということで、今申し上げたように、1本の通知で両方の契約が解除されるような立
てつけにしてございます。
ここまでがクレジット規制でございまして、最後にインターネット関係とその他のとこ
ろで、1点ずつ触れさせていただきたいと思います。28ページになります。
改正のポイント⑤(PART4)
クレジット会社等に対して、個人情報保護法ではカバーされていないクレジット
カード情報の保護のために必要な措置を講じることを義務づけるとともに、カード
番号の不正提供、不正取得を下した者等を刑事罰の対象とします。
(割賦販売法第35条の16、第35条の17、第49条の2)
クレジットカード情報の保護の関係です。現在、クレジットカード番号、クレジットカ
ードの件名に書いてあります有効期限とか番号については、個人情報保護法では実はカバ
ーされていないということで、行政上の義務がかかっていないわけでありまして、今回、
割賦販売法にこのカード情報の漏えい対策、あるいは滅失対策を事業者に義務づけること
にしております。
義務づけられる対象はカードを発行しているあっせん業者と、それから「立替払取次業
者」という名前がついておりますが、いわゆるアクワイアラーと言われているクレジット
イシュアー、クレジット発行業者から委託を受けて、加盟店を管理していますアクワイア
ラーの2者に対して法的義務がかかることになります。
こうした事業者はみずからの従業員、退職者などが漏えいしないような体制をとること
はもちろんのこと、加盟店とか業務の委託先についても適切な管理が図られるように、指
導その他の措置を講じなければいけないことにしております。
また、カード番号等を不正に流出させたり、あるいはフィッシング詐欺のような形で不
正に取得した者に対しては、最長法定刑3年以下の懲役がかかるということで、刑事罰を
もって対処することにしていまして、これによりカードの不正利用を、できるだけ防止を
していきたいということであります。
それから、自主規制団体の関係を最後に申し上げます、32 ページです。
改正のポイント③(PART5)
クレジット取引の自主規制等を行う団体を認定する制度を導入します。
(割賦販売法第35条の18~24)
訪問販売協会は既に法律上、定めがございますが、割賦販売法では自主規制団体がこれ
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までなかったということで、法律上認定制度を盛り込んでおります。
業務としては自主ルールの制定、その自主ルールを会員に守らせるような措置というこ
とですが、加えて悪質加盟店の情報の交換制度を盛り込んでおりまして、訪問販売業者そ
の他で、過去消費者トラブルを引き起こしたような情報をできるだけ蓄えて、それを会員
で共有することによって、悪質な加盟店との取引をできるだけしないようにすると、悪質
な加盟店を排除していくということで考えてございます。
これにより、みずから健全化していくことが期待されますし、訪問販売業者にとっても、
クレジットを利用するためには、みずからのヒストリーといいましょうか、健全な歴史を
つくっていかなきゃいけないということで、一定の抑止力が働くと考えております。
以上、早口になりましたが、また不明な点等ございましたら、ぜひ質問をいただければ
と思います。ありがとうございました。
※以下、質疑
○問1
報告徴収の対象として今回金融機関等が入ったということですが、確認ですけれ
ども、NTTとか通信事業者に対しても報告徴収の対象となるのでしょうか。
○石塚課長補佐
ご指摘の点は、特に電子メール広告の場合の問題となります。改正後の
第66条第4項では、「主務大臣は、この法律を施行するため特に必要があると認めると
きは、電気通信事業法第二条第五号に規定する電気通信事業者その他の者であって、電磁
的方法の利用者を識別するための文字、番号、記号その他の符号又は同条第二号に規定す
る電気通信設備を識別するための文字、番号、記号その他の符号を使用する権利を付与し
たものから、当該権利を付与された者の氏名又は名称、住所その他の当該権利を付与され
た者を特定するために必要な情報について、報告を求めることができる」とあります。
この規定により、電気通信事業者に対して、あるURLとかメールアドレス、場合によ
っては電話番号を利用している者が誰であるかを聞くことができるようになります。
ただ御注意いただきたいのは、ある特定の通信、要するに何月何日にAさんとBさんと
の間で行われた電気通信がなされた場合に、その中身自体を聞くのは許容されません。あ
くまで、電話番号とかメールアドレスを指示して、「これは誰ですか」と聞くことが許さ
れるというだけです。その範囲内において、憲法上求められている「通信の秘密」を侵し
ていないという整理になっています。
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ちなみに、今通常国会で、総務省が所管されているいわゆる特定電子メール法において
も、オフトイン規制が導入されますが、その改正に併せて、特定商取引法の第66条第4
項に相当する条項も導入されています。
○問2
あと割販法に関しては、クレジット会社に対する行政処分とか、立ち入りとかの
対象になるという話ですが、都道府県に権限をおろすということをちょっと聞いておりま
すが、その点、今後の考え方についてお聞きしたいと思います。以上です。
○吉村課長補佐
割賦販売法の行政権限について、都道府県に対して移譲があるのかどう
かということですが、2つに分けて考えてございまして、まず登録受付、審査をする点に
ついては原則、現時点において経済産業局、国のほうでやることを考えております。
他方、事後的な行政処分、現在特商法でもその部分で都道府県の処分件数が非常に多い
ということでございますが、今回、いわゆる加盟店調査、その他、訪問販売等の悪質商法
対策でクレジット規制を強化しているところがございますので、こういう部分を中心とし
て、既に一部の都道府県さんからは、個別クレジット会社に対する業務改善命令の権限が
必要だというお声はいただいております。
最終的には知事会さんとかとも相談しないといけない話なんですが、ポイントは2つで、
特商法もそうですけれども、国が最終的にすべての案件について権限を有しているという
か、責任を持っているということは当然必要だろうと思っておりまして、例えば単県事業
者であれば全部ゆだねてしまうということは考えていないんですが、ただ都道府県におい
ても、適切に権限を行使していただくことは十分あり得るんじゃないかと思っておりまし
て、むしろこの点は皆様方から御要望いただければ、より動きやすいのかなと考えている
ところでございます。
○問3
これらの割販法の関係で、自治体が直接に権限行使してもらうということをおっ
しゃっていましたけども、立入検査の権限を実質的には都道府県に移行しまして、自治体
にやってもらうという方向性をお考えなんでしょうか。
○吉村課長補佐
そこは必ずしもそういうことじゃなくて、国としてもやらなきゃいけな
い体制整備とか、局のほうでやらなきゃいけないことももちろんあると思っています。
先ほども申し上げましたけど、登録制については都道府県にお願いするつもりは基本的
にはありません。今の時点で全く考えていませんし、行政処分権限についても、特商法も
-50-
そうですけれども、そこは輻輳的にやっていくということだろうと思っていまして、むし
ろ特商法と一体としてやったほうが効率的だし、ぜひやったほうがいいという都道府県さ
んからの声も聞いておりますので、それをできるだけ考えていくという方向で調整できれ
ばいいのかな。
皆様方からそのあたり、各県いろいろ御事情があるとは思いますけれども、ぜひやりた
いということがあれば、むしろ私どものほうに教えていただいたほうがいいのかなと思っ
ております。
○問4
東京都です。許可制業者の関係で、定例的に立入調査と報告聴取をやっていると
思うんですけど、個別事業者に関しては、こういうことは考えているのかどうかというこ
とですが、いわゆる特商法の関係みたいに、問題が生じたときにやるということで考えて
いるのか、定期的な検査を考えているのか、それをちょっと教えてください。
○吉村課長補佐
今おっしゃられたところは、今後の運用にもかかわるところですけれど
も、今、現行的に言うと、いわゆる総合割賦ですね。クレジットカードのほうは定期的な
立入検査という運用をしております。これは局のほうでやっておるんですね。この点を全
部やめてしまうかということはないのかなと思っています。
他方、個別クレジットで、特に訪問販売等の特商法関係で、加盟店調査等をちゃんとや
ってなかったじゃないかみたいな部分については、むしろトラブル対処型なのかなと思っ
ていまして、そこは特商法の処分にフォローしていくというか、要するに実際に事が起き
てから入るといったような形で考えておりまして、そこは併用制といいましょうか、クレ
ジットカードなどはむしろそうではなくて定期的な計算。個別クレジットのほうはそうで
はなくて、特商法と同じようなスタイルと考えています。
なぜ個別クレジットは定期的なのが要らないかというと、3年に1回の登録更新制度に
なっているものですから、定期的な検査であれば、3年に1回登録更新する際にきちんと
全部出し直して、その時点での状況をチェックすればいいのかなと考えているものですか
ら、今申し上げたような全体像を描いているということであります。
むしろ都道府県さんとの関係で言えば、特商法とのリンクもございますから、事後的に
入るタイプのものを中心としてやっていただくことが多いのかなと想像をしております。
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8.最後に
いずれにしても、改正特定商取引法や割賦販売法を施行する上で必要となる政令や省令、
ガイドラインといった、細則を定める部分の作業はこれからです。電子メール広告等の前
前倒し施行に関連する部分は年内、また大部分が施行される公布後1年半以内、つまり来
年中の施行に向けて、逐次これらの整備を進めていきます。
これらの作業の進捗状況については、可能な限りタイミング良く、「消費生活安心ガイ
ド」等でご紹介していきたいと思っていますので、適宜ご参照いただければと思います。
また、本日利用した解説テキスト、そして、今回の説明では触れませんでしたが、改正法
の内容を紹介するパンフレットも、この「消費生活安心ガイド」からダウンロードできる
ようにしいきますので、ご活用いただけると幸いです。
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