Deliquescence and Ion Segregation of Alkali Halide Nanocrystals

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Deliquescence and Ion Segregation of Alkali Halide Nanocrystals on SiO2
(1. Osaka Univ., 2. Lawrence Berkeley National Lab., 3. UC Berkeley, 4. National Tsing
Hua Univ., 5. CSIC-ICN)
Kenta Arima1, Peng Jiang2,3, Deng-Sung Lin4,
Albert Verdaguer5, and Miquel Salmeron2,3
気中のエアロゾルが環境変動に与える影響、特に、エアロゾルが関与する大気中での気液界面
反応には不明な点が多く、世界レベルで多くの研究が進められている。例えば最近では、海塩が気
中の水分により潮解した際、水滴中に溶出したハロゲンイオンがオゾンガスの分解を促進するメカニ
ズムの解明が進み、注目されている[1]。しかし、気中の水分は水滴以外に、固体エアロゾルを覆う吸
着水層としても多く存在する。このような固体表面上の吸着水層内における陽・陰イオンの挙動に注
目した報告は極めて少ないが、大気中での気相とエアロゾルとの化学反応を正しく理解する上で、
必要不可欠な情報である。
本発表では、エアロゾルの主要な成分の一つである SiO2 上にアルカリハライド微結晶群を形成
し、湿度上昇時にそれらが水和する様子、及び、潮解した微小液滴内での陽・陰イオン分布を非接
触型の原子間力顕微鏡により観察した結果について報告する。
試料作製方法として、まず、シリコンウエハ上に化学酸化膜(SiO2)を形成し、その上にアルカリ
ハライド溶液を滴下した。次に、これをガラスベルジャー内の N2 雰囲気下(8% RH (RH: Relative
Humidity))で乾燥し、アルカリハライド微結晶群を SiO2 上に形成した(Fig.1(a))。本実験で用いたア
ルカリハライドの種類は、主に KBr(他に KCl、KF、及び NaCl)であり、堆積量は約 10 モノレイヤー
(ML)であった(Fig. 1(b))。観察には、非接触型の原子間力顕微鏡の一種である、Scanning
Polarization Force Microscopy を用いた。本顕微鏡では、導電性のカンチレバーに交流正弦波電圧
を印加し、試料表面に近づける。そして、試料表面の静電気力を感じて励振するカンチレバーの動
きを四分割フォトダイオードによりモニターし、カンチレバーと試料間の距離(20nm 前後)や、カンチ
レバーに加える直流電圧信号に対してフィードバック制御をかけるものである。顕微鏡の原理や装置
系の詳細は他の文献[2]に譲るが、本顕微鏡を用いることにより、 (1) 局所的な誘電率により変調さ
れた表面形状像と、(2) 表面電位分布像 の二種類を高い空間分解能で同時に得ることができる。
観察は全て、大気圧雰囲気下で行った。
実験ではまず、KBr 微結晶群を形成した SiO2 表面において、雰囲気中に水蒸気を導入した。そ
して、湿度を 10% RH 以下から潮解点である 86% RH 程度まで掃引し、その途中段階での顕微鏡
観察を行った。その結果、微結晶群表面への水分吸着及び、表面層の水和を示唆する形状画像を
得た。特に約 55% RH 以上においては、小さい微結晶が近傍のより大きい微結晶に順次吸収されて
いくといった興味深い知見を得た。
次に、潮解前後での微結晶群の変化を観察した結果を Fig.2 に示す。81% RH 時の Fig.2(a)に
おいて、二つの KBr 微結晶が存在している。この後、湿度を 95% RH まで増すと、形状・表面電位分
布像共に大きく変化した(Fig. 2(b))。すなわち、Fig.2(a)で存在した微結晶群は消滅し、代わりに
KBr が潮解してできた微小な液滴が平坦な層状の構造(Fig. 2(b)左)として現れた。さらに、この微小
液滴表面の電位は、周辺部(SiO2 上の吸着水層)と比して低いことを示す表面電位分布像を得た
(Fig. 2(b)右)。Fig. 2(b)中の白線部における断面プロファイルを Fig. 2(c)に示す。約 10nm の高さの
微小液滴表面では、周辺部よりも 15mV 程度、負の電位を有することが明らかである。この結果は、
潮解により溶け出した陽イオン(K+)と陰イオン(Br-)が微小液滴内で垂直方向に分離し、陰イオンは
より液滴表面側に、陽イオンは液滴と SiO2 の界面に滞在することを意味する(Fig.3)[3]。
ここで得られた結果は、SiO2 表面の吸着水層内に Br-イオンが存在した場合、それらは吸着水の
表面に露出し、気相との反応に寄与し易いことを示唆しており、エアロゾルが関与した大気中での環
境変動を考察する上で有益な知見であると思われる。
References
[1] S. Ghosal et al., Science, 307, 563 (2005).
[2] L. Xu et al., Chapter 6. In Nano-Surface Chemistry, edited by M. Rosoff, Marcel Dekker, New
York (2001).
[3] K. Arima et al., J. Phys. Chem. A, 113, 9715 (2009).
Fig. 1. Sample preparation
(c)
Water on SiO2
Deliquesced droplet
(nm)
10
5
(mV)
0
-5
-10
Ion segregation
~ 10
nm
SiO2
Cation Anion
(K+) (Br-)
concen concen
tration tration
Fig. 3. Schematic drawing of anion
segregation to the surface
of deliquesced droplet.
0
-15
Fig. 2. AFM images of KBr nanocrystals on
SiO2 (a) before, and (b) after
deliquescence. Left and right images
represent topography and surface
potentials,
respectively.
(c)
Cross-sectional profiles along white
lines in (b)