イデルビオンをご使用になる血友病患者さんのための総合情報サイトヘモフィリアナビゲーターヘモフィリアナビ CSLベーリング株式会社 CSLセルフケア窓口病院・医院名 2016年11月作成　IDMK018A 24時間受付検索 0120-663-440 http://www.cslbehring.co.jp/ 血友病 Bの患者さまへ血友病とは？血友病の出血部位血友病では、さまざまな部位に出血が起こり、とくに関節内の出血には注意が必要です。血友病は、血液凝固因子が不足して、出血したときに血が止まりにくくなる病気です。出血すると、血を止めるために「血管」、「血小板」、「血液凝固因子」がそれぞれ働きます。血友病では、「目にみえる出血」だけでなく、関節や筋肉など、身体のなかで起こる血友病は、「血液凝固因子」が生まれつき不足または欠乏している病気です。そのため、「目にみえない出血（内出血）」が多く、出血が起こりやすい部位は、年齢とともに変化出血すると、血が止まるまでに時間がかかります。はち「血液凝固因子」はひとの身体では多くの種類があり、血友病 A は血液凝固第Ⅷ 因子きゅうが、血友病 B は血液凝固第Ⅸ因子が不足または欠乏しています。 2015 年 5月31日時点で日本の血友病の患者さんの数は6,050人で、そのうち血友病 B の患者さんの数は1,064人（男性1,050人、女性14人）と報告されています。します。とくに、関節内の出血は繰り返されると関節に炎症が起こり、関節症を引き起こします。症状が進むと、痛みやはれが生じたり、関節が動きにくくなり、日常生活にも支障がでます。（平成27年度血液凝固異常症全国調査報告書）血が止まるしくみ出血赤血球血管収縮血管の働き血管が傷つくと、血液が流れ出ないよう、血管が収縮します。血小板血小板の働き血小板が集まり、傷口に止血栓をつくります（一次止血）。この止血栓は弱いので、このままでは止血が不十分です。正常な場合血液凝固因子の働き血友病の場合フィブリン完全に止血するために、血液凝固因子が働いて、フィブリンがつくられます。フィブリンは、止血栓をおおい固め、頑丈にします（二次止血）。すみやかに血が止まる 2 出血しやすい部位ずがいない頭蓋内出血（脳出血）鼻出血頭部の打撲、外傷などによって出血しますが、原因不明の場合も多いです。吐き気や頭痛、めまいなどの症状がありますが、子どもは症状が出ないこともあります。命にかかわる場合もあります。鼻炎やかぜ、打撲、鼻ほじりなどで出血しやすい部位です。血が止まるまでに時間がかかる噛み傷や切り傷、歯科での治療、歯の生え変わりなどによって出血します。消化管出血のどからの出血胃や腸から出血し、吐血や下血がみられます。大量出血では命にかかわる場合もあります。ひどい咳などにより、のどから出血することがあります。出血で気道や食道が圧迫され、呼吸しにくい、食べ物を飲み込みにくいなどの症状が出ることもあります。腎臓血液凝固因子がうまく働かない（または働くはずの因子がない）ため、十分なフィブリンをつくることができず、頑丈な止血栓ができません。口腔内・歯茎からの出血血尿がでます。皮下出血関節内出血（●）軽い打撲などによって、青あざや皮膚内に血のかたまりができます。ひざ、ひじ、足首などで起こりやすく、出血すると痛み、はれ、熱感などの症状を生じます。出血の前兆として、「むずむずする」など関節に違和感があらわれることがあります。筋肉内出血（●）太もも、ふくらはぎ、二頭筋、前腕、腰の筋肉などで起こりやすく、痛み、はれ、熱感、動かしづらさなどを感じることがあります。 3 血友病の治療－出血時の補充療法血友病の治療－出血を防ぐための補充療法血友病の治療は、不足した血液凝固因子を補う『補充療法』が基本です。血友病の治療は、不足または欠乏している血液凝固因子を注射で補う「補充療法」が基本です。補充療法には、「出血時の補充療法」、「予備的補充療法」、「定期補充療法」きゅうの3つの方法があります。血友病 B では血液凝固第Ⅸ因子製剤を投与します。予備的補充療法運動会や遠足、旅行など、出血する可能性の高い行事の前（当日の朝な今日の運動会がんばろうね。ど）に血液凝固因子製剤を注射し、出血時の補充療法出血したあと、完全に血が止まるまで血液凝固因子を補充する治療と出血部位のケアライス（RICE）を行います。血液凝固因子製剤の注射は、出血後できるだけ早く（可能であれば2時間以内）に行います。血を止めるのに必要な血液凝固因子製剤の投与量は、出血部位や出血量と、患者さん出血を未然に防ぐ方法です。また、外科手術や歯科治療など出血が予想される手術・処置の前に注射します。の血液凝固因子活性レベル（因子の働きの強さ）から決めます。定期補充療法 RICE（ライス）補充療法と一緒に行い、出血部位を補助的にケアします。症状を軽くし、再び出血するのを防ぐために重要な処置です。 R Rest：安静を保つ I 2週に1回または週に1回～数回、定期的に血液凝固因子を注射する方法です。出血を予防するために、血液凝固因子活性レベルを一定以上に保つように、血液凝固因子製剤の Ice：患部を冷やす投与間隔や投与量を調節します。定期補充療法で期待できること定期補充療法は、関節内の出血回数を減らすことで、関節症の予防に役立ちます。横になる、または患部が動かないようにします。 C Compression：患部を圧迫する 4 E Elevation：挙上（患部を心臓より高い位置に保つ）下肢のときは、横になって台の上に足をのせます。また、出血回数が減ると、スポーツや日常生活の制限も少なくなり、より活動的な学校生活や社会生活が送れるようになります。（%） 80 血液凝固因子活性出血部位を清潔な布で押さえ、圧迫止血します。関節内出血では、包帯やサポーターなどを使って、出血した部位を押さえます。氷のうなどをタオルに包んであて、出血部位を冷やします。 70 60 50 40 30 20 10 0 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14（日）注射後の時間注射血液凝固因子活性が10％を下回ると出血リスクが高くなるため、活動度の高い運動は避けたほうがよいとされています。1回の注射で維持できる血液凝固因子活性はお薬によって異なり、必要な投与量や投与間隔も変わります。（National Hemophilia Foundation の資料より） 5 イデルビオンとはイデルビオンの安全対策イデルビオンは、血友病Bの治療に使われる遺伝子組換え血液凝固第Ⅸ 因子製剤（注射剤）です。イデルビオンは、ヒトや動物由来の成分を使わずに精製・製剤化しています。きゅうイデルビオンは作用時間の長いきゅう「遺伝子組換え血液凝固第Ⅸ因子アルブミン融合タンパク質製剤」アルブミンは血液中に存在するタンパク質のうち約60% を占め、血液中に長くとどまる性質を持っています。体内の水分を調節して浸透圧を保ったり、血液中の栄養素などに結合して運んだりする天然の物質です。イデルビオンの製造工程きゅう ①アルブミン融合血液凝固第Ⅸ因子を産生する細胞を培養ヒトや動物由来の血清成分を含まない培地で培養きゅうイデルビオンはアルブミンと融合した血液凝固第Ⅸ因子製剤であり、アルブミンの性質を利用して、血液中に長くとどまることができます。 ②クロマトグラフィーイデルビオンの種類 250、500、1000、2000国際単位（IU）の4規格あり、それぞれに溶解液（注射用水）が添付されています。250IU、500IU および1000IU 製剤は2.5mL で、2000IU 製剤 ③ウイルス不活化は5mL で溶解します。イデルビオン静注用250 イデルビオン静注用500 イデルビオン静注用1000 イデルビオン静注用2000 250国際単位 500国際単位 1000国際単位 2000国際単位 ④3種類のクロマトグラフィー ⑤ウイルスろ過 ⑥ガラスバイアルに充填し、凍結乾燥 6 7 イデルビオンの投与方法イデルビオンの投与方法イデルビオンは、出血時/手術・処置前の投与、週に1回または2週に1回の定期的な投与ができます。イデルビオンは、出血時の投与、手術・処置前の投与、定期的な投与に使います。イデルビオンの出血時/手術・処置前の投与イデルビオンの定期的な投与方法の例イデルビオンを週1回または2週に1回投与にもできます。 ◆ 7日に1回（週1回）注射する場合通常、1回体重1kg あたり50国際単位を投与 ➡毎週決めた曜日の都合のよい時間に投与する 1回の投与量、投与回数は患者さんの症状や体重などにあわせて、医師が決めます。 ◆ 14日に1回（2週に1回）注射する場合 ➡1週おきに決めた曜日の都合のよい時間に投与するイデルビオンの定期的な投与以下の方法で投与します。投与量と投与間隔は、患者さんの症状や体重などにあわ今日は3月4日の土曜日。今月はあと1回打てば終わりだね。注射が終わったら、寝ようね。来週の土曜日は注射がないね。せて、医師が決めます。体重1kg あたり35～50国際単位を7日に1回投与体重1kg あたり75国際単位の14日に1回投与に変更することも可能（出血状況など患者さんの状態を考慮）ただし、1回の投与量は体重1kg あたり75国際単位を超えて投与することはありません。週1回の投与の場合（●） 2週に1回の投与の場合（●） 3月イデルビオンの投与方法に関する注意事項日月火 1 きゅう ◆ イデルビオンの投与量や投与間隔は、患者さんの「血液凝固第Ⅸ因子活性レベル」や「出血部位や出血量」など、患者さんの状態に応じて医師が調節します。 3月水木 2 金 3 日月火 4 水 1 木 2 金 3 ● 5 6 7 8 9 10 11 土 4 ● 5 6 7 8 9 10 11 12 12 14 15 16 17 18 ● ◆ イデルビオンをお使いになる際は、医師の指導を必ず守り、自分の判断で投与量や投与間隔を変更することはやめましょう。土 12 12 14 15 16 17 18 ● 19 20 21 22 23 24 25 ● 19 20 21 22 23 24 26 27 28 29 30 31 25 ● 26 8 27 28 29 30 31 9 イデルビオンの家庭療法　① 家庭療法を安全に行うためにイデルビオンの家庭療法　② 実際に必要なもの血液凝固因子製剤は在宅で自己注射できます。イデルビオンは、家庭療法を行うことができます。家庭療法とは、血液凝固因子製剤の定期的な投与、または出血時の投与などを自宅医療機関で在宅自己注射教育を受け、医師が適切に使用できると判断した患者さんで行うことをいいます。家庭療法は、出血時にすみやかに補充療法ができ、通院しなまたはご家族の方にかぎって、イデルビオンを家庭で投与することができます。くても定期的な補充療法ができるため、関節症などの予防に有用です。自己注射のあと十分な止血効果が感じられない場合は、ただちに医師、看護師家庭療法を行うには、医師や看護師から血液凝固因子製剤の投与について十分なまたは薬剤師に連絡してください。指導と訓練を受け、医師の許可を得る必要があります。家庭療法を安全に行うための確認事項イデルビオンの家庭療法を行うために必要なもの溶解時に必要なもの ① 患者さんまたは患者さんの保護者は、以下の項目について十分に理解しておきましょう。 ◆ 出血や出血の合併症についての知識 ◆ 血液凝固因子製剤の投与量、溶解・準備、取扱い、保存 ③ ② 薬剤バイアル溶解液バイアル ④ ◆ 静脈内注射の手技、清潔 CSLベーリングトランスファーセット［溶解器（薬液用両刃針）］ ◆ 投与の記録 ◆ 注射針等の保管方法、廃棄　等 ① ② 注射等の手技については、正しく実施できているか定期的チェックを受け、必要であれば再度指導を受けましょう。 ③とくに異常がなくても、定期的に受診しましょう。 ④以下の場合は、すみやかに医療機関に連絡してください。 ① 滅菌済み翼状針　② アルコール綿　③ 空の滅菌済み注射器　④ 廃棄用ポリ袋投与時に必要なもの ◆ 重度の出血が生じた場合 ◆ 投与を行ったが、止血効果が不十分に感じられる場合 ④ ◆ 注射時や注射後に異常を感じた場合 ◆ その他、不明な点や心配がある場合血友病家庭注射療法のガイドライン2003年版（日本血栓止血学会） ⑤ ③ ⑥ 溶解マニュアル ⑦ ② ① ① 駆血帯　② 絆創膏　③ アルコール綿　④ 秒針付き時計　⑤ 廃棄用ポリ袋　⑥ 翼状針固定用テープ　⑦ 投与記録表 10 投与マニュアル 11 イデルビオンの取扱い上の注意イデルビオンの家庭療法　③ 投与の記録イデルビオンの家庭療法を行った時は、投与の記録を必ずつけましょう。イデルビオンの自己注射を行ったあとは、輸注状況や出血の状況を必ず投与記録表へ記入し、次回の通院時に医師、看護師または薬剤師にみせましょう。また、他の医師を受診する場合や、薬局などで他の薬を購入する場合は、必ずこの薬を使用していることを医師、看護師または薬剤師に伝えてください。イデルビオンの投与の記録 ◆ 投与日　◆ 製造番号（ロット番号）　◆ 投与量　◆ 出血部位、出血の程度（急性出血時の投与の場合） ◆ 投与開始時間および終了時間　◆ 投与中の異常、気づいた点　イデルビオンは、2〜25℃で保存します。イデルビオンの保存方法 ◆イデルビオンは、2〜25℃で、遮光して保存してください。室温が2℃以下になる、または25℃を超える場合は、冷蔵庫での保存が望ましいです。 ◆光の影響を防ぐために、イデルビオンは外箱に入れたままの状態で保存してください。 ◆夏場に持ち運ぶときは、保冷剤と一緒に保冷バッグに入れてください。 ◆冷蔵庫から取り出したイデルビオンと溶解液は、室温に戻してから使ってください。 ◆25℃を超えて保存した場合は使わないでください。 ◆イデルビオンを冷凍庫などで凍結させないでください。誤って凍結させた場合は使わないでください。 ◆溶解したイデルビオンは25 ℃以下で保存し、4時間以内に使ってください。溶解後、4時間を過ぎたものは使わないでください。 ◆ 投与後の異常、気づいた点　等イデルビオンの使用で保存される情報イデルビオンは「血液製剤代替医薬品」であるため、投与した日から少なくとも20年間、以下の情報が医療機関で保存されます。 ◆ 製品名（販売名） ◆ 製造番号（ロット番号） ◆ 投与または処方した日 ◆ 投与または処方を受けた患者氏名、住所　等 12 イデルビオンの溶解・投与に関する注意 ◆溶解前に、薬剤バイアルに微粒子または変色がないか、目で見て確認してください。 ◆イデルビオンは、必ず添付の溶解液を全量使って溶解してください。 ◆溶解したイデルビオンをさらに希釈しないでください。 ◆他の薬と混ぜて注射しないでください。 ◆使用後に容器に残った薬液は使わないでください。 ◆薬剤や、使用済みの針を含む器具一式は、小さなお子様の手の届かないところに保存してください。 13 イデルビオンの副作用 ② イデルビオンの副作用 ① イデルビオンの安全性についてインヒビターの発現イデルビオンを投与しても予想した止血効果が得られない場合、インヒビターの発現が疑われます。きゅう日本と海外の血友病 B 患者さん107人（国内10人、海外97人）にイデルビオンを国際共同試験において、血液凝固第Ⅸ 因子製剤による治療経験のある患者さんに、投与したところ、8人（国内1人、海外7人）に副作用（好ましくない作用）があらわれインヒビターの発現はありませんでした。現在行っているイデルビオンの臨床試験で、ました（国際共同試験より）。治療経験のない患者さんにインヒビターが発現しました。注射のあと十分な止血効果が感じられない場合には、ただちに医師、看護師またはイデルビオンでみられた副作用イデルビオン使用中に、次のような副作用があらわれることがあります。・頭痛　・浮動性めまい　・発疹　・湿疹　・過敏症このような症状や、このほかにも気になる症状があらわれた場合には、医師、看護師または薬剤師に相談してください。重大な副作用これらの症状があらわれた場合には、夜間・休日であってもすぐに医師、看護師または薬剤師に連絡してください。重大な副作用主な自覚症状冷や汗、めまい、意識がうすれる、考えがまとまらない、血の気が引く、息切れ、判断力の低下アナフィラキシー身体がだるい、ふらつき、意識の低下、考えがまとまらない、ほてり、どうき目と口唇のまわりのはれ、しゃがれ声、息苦しい、息切れ、動悸、じんましん、判断力の低下血栓塞栓症 14 インヒビターとは？患者さんによっては、投与された血液凝固因子を異物とみなして抗体がつくられることがあり、この抗体をインヒビターといいます。インヒビターが発生すると、血液凝固因子製剤の効果が弱くなります。インヒビターは、投与をはじめてまもない時期に発現しやすいとされています。以下に当てはまる方は、イデルビオンを使う前に医師に相談してください。きゅうショックけっせんそくせんしょう薬剤師に連絡してください。血を吐く、吐き気、嘔吐、胸の痛み、胸をしめつけられる感じ、胸を強く押さえつけた感じ、激しい腹痛、腹がはる、足の激しい痛み、出血、知覚のまひ ◆過去にイデルビオンまたは他の血液凝固第Ⅸ因子製剤、イデルビオンに含まれる成分またはハムスター由来タンパク質に対して過敏な反応を経験したことがある人 ◆肝臓の病気がある人 ◆最近手術を受けた人 ◆新生児 ◆血栓塞栓症が起こりやすいといわれている人 ◆線維素溶解の徴候または播種性血管内凝固症候群（DIC）がある人 ◆妊娠中または授乳中の人 15