体温コントロール機器

体温コントロール機器
2013.2.19
慈恵ICU勉強会
臨床工学部 児島 徹
低体温療法機器に
求められるもの
冷却
: 32℃-34℃
冷却持続時間
: 12hr-24hr
復温
:
0.25-0.5℃/hr
様々な方法があり、施設によって異なる方法を選択してる。
医療機器を使用しない方法
氷嚢、アイスパッド
Cold infusion
4℃ リンゲル液,30ml/kg
Resuscitation 2003;56:9-13
医療機器を使用する方法
External cooling
Internal
cooling
External cooling
1. Cold water blanket
2. Self adhesive cooling pads
3. ThermoSuit®
4. RhinoChill® IntraNasal Cooling System
1. Cold water blanket
Fig. 4. Reponses to the question, “If you do cool patients after cardiac
resuscitation, how do you induce hypothermia in your patients?”.
Resuscitation 2005;64 :181–186.
2003年米国内科医265名を対象としたアンケート結果
• 多くの医師が選択
• 院内保有機器あり
2. Self adhesive cooling pads
Cold water blanketの進化版
Arctic Sun 5000
• 日本ではIMIより販売
• ジェルパッドにより熱伝導効率
を高め、体温を調整
本体定価 398万円
ジェルパッド 10万円
• マットレス・パッド内に水
を循環させ、体外より体温
を調整
• 冷却、維持、復温
コントロールパネル
• 患者体温を測定することに
より目標体温へ自動的に水
温調整することが可能
操作回数
Arctic Sun < Cold water blanket
温度プローブ
A randomized controlled trial comparing the Arctic Sun
to standard cooling for induction of hypothermia after cardiac arrest.
Heard KJ, Peberdy MA, Sayre MR, Sanders A, Geocadin RG, Dixon SR, Larabee TM, Hiller K,
Fiorello A, Paradis NA, O'Neil BJ
Resuscitation 2010; 81 :9–14.
目的:冷却ブランケット とArctic Sun を使用した時の冷却性能の比較
試験デザイン:multi-center randomized controlled trial
対象患者:院外心停止後の昏睡状態の患者 全64名
方法:冷却ブランケット (n=30), Arctic Sun (n=34) にて冷却
膀胱温にて計測
結果
・4 hr以内に34℃に達した割合
Arctic Sun :71%
冷却ブランケット :50% (p=0.12)
34℃に達する平均時間はArctic Sunが54min速かった
(190 min vs 244 min p < 0.01)
Resuscitation 2010; 81 :9–14.
・32℃以下の割合(過冷却)
Arctic Sun
Arctic Sun :3%
冷却ブランケット :28 %
(p=0.12)
Arctic Sunは速い冷却・
冷却ブランケット
安定した体温管理が可能
神経学的予後に
有意差なし(p=0.6)
Resuscitation 2010; 81 :9–14.
3. ThermoSuit®
日本未発売
• シートから冷却水(2℃)
が患者へ放出される
• 14L/minで循環
Rapid induction of therapeutic hypothermia using convectiveimmersion surface cooling: Safety, efficacy and outcomes
Howes D, Ohley W, Dorian P, Klock C, Freedman R, Schock R, Krizanac D, Holzer M.
Resuscitation 81 (2010) 388–392
目的:臨床環境でのサーモシートの実用性と冷却の評価
試験デザイン:多施設共同観察研究
対象患者:心停止後の成人患者 3施設 24名
方法:コア温度(食道温)を測定し, 目標体温 34℃まで冷却
開始時 2.0(±2.0)℃の冷却水を循環
12hr~24hr時間持続後、0.2~0.5℃/hrで毛布などを使用し加温
結果
34℃に達する平均時間37分であった
患者の87%は60分以内で目標を達成
平均3.0℃/hで冷却可能
External coolingで最も
冷却スピードが速い?
Resuscitation 81 (2010) 388–392
4. RhinoChill® IntraNasal Cooling System
・酸素と一緒に噴出される冷却水の蒸発が鼻腔の熱を奪い、2℃まで冷却
・持ち運びが可能 (院外発生症例にも使用可)
・合併症: 鼻や顔の凍結
Intra-Arrest Transnasal Evaporative Cooling
A Randomized, Prehospital, Multicenter
Study (PRINCE: Pre-ROSC IntraNasal Cooling
Effectiveness)
Castrén M, Nordberg P, Svensson L, Taccone F, Vincent JL, Desruelles D, Eichwede F,
Mols P, Schwab T, Vergnion M, Storm C, Pesenti A, Pachl J, Guérisse F, Elste T, Roessler
M, Fritz H, Durnez P, Busch HJ, Inderbitzen B, Barbut D.
Circulation. 2010;122:729-736
目的:入院前鼻腔冷却の冷却効果・安全性と神経学的予後・生存率に対す
る影響を調査
試験デザイン:prospective, randomized trial
対象患者:院外心停止後の心拍再開した成人患者
欧州5カ国 15のERにて実施
方法:鼓膜温とコア温度(直腸 or 膀胱)を測定
RhinoChill使用群 (n=35) , standard care群(n=43) にて比較
両グループとも病院到着後に全身冷却を開始
結果:34℃までの到達時間
鼓膜温
102 min vs. 282min, P=0.03
中枢温
155min vs. 284 min, P=0.13
鼓膜温度の低下時間に有意差あり
その後の中枢温の低下も速い結果に
Circulation. 2010;122:729-736
Rinochill使用患者は
CPR開始時間が10min以下の
症例に関しては有意差あり
合併症:鼻変色(14%)
鼻出血(3.2%)
Circulation. 2010;122:729-736
External cooling
• 低侵襲で管理が可能
• 種類は多いが、日本で使用できる機種が少ない
• 日本においてはArctic Sun 5000が臨床使用に最も
適している
Internal cooling
1. Intravenous cooling catheter
2. cardiopulmonary bypass
1. Intravenous cooling catheter
サーモガードシステム
• 日本では旭化成から販売予定
• バルーン付CVカテーテル内を
温度管理された生理食塩水が循環
• 膀胱温をフィードバックし
体温を自動調整
•日本では低体温療法としては
承認を受けていない
脳障害患者の発熱の抑制に使用
バルーン
CVとして使用
Quattro™
9.3Fr 38cm
A prospective, multicenter pilot study to evaluate the feasibility
and safety of using the CoolGard™ System and Icy™ catheter
following cardiac arrest
Al-Senani FM, Graffagnino C, Grotta JC, Saiki R, Wood D, Chung W, Palmer G, Collins KA.
Resuscitation 2004; 62: 143–150.
目的:心停止後の低体温療法において、血管内冷却装置の評価
試験デザイン: prospective, non-randomized
対象患者:臨床センター3施設 にて自己心拍再開後、意識障害(GCS≤8) と
なった成人患者13名
期間:2001年3月と2002年9月
方法:膀胱温33℃を目標
カテーテルを大腿静脈から挿入し、下大静脈に留置
結果
• 目標温度までの
平均到達時間は
219min
冷却速度
平均冷却速度
0.8±0.3 ◦C/h
・合併症は少ない結果と
なった。
しかし, カテーテル感
染率や静脈血栓症には
完全には否定できない
Resuscitation 2004; 62: 143–150.
Comparison of cooling methods to induce and maintain normo- and
hypothermia in intensive care unit patients: a prospective
intervention study
Cornelia W Hoedemaekers*, Mustapha Ezzahti, Aico Gerritsen and Johannes G van der Hoeven
Critical Care 2007; 11: No 4
目的:ICUでの温度管理における各種デバイスの有用性を比較
試験デザイン:前向き介入研究
対象患者:50人の成人ICU患者
方法:冷却リンゲル vs. クールウォーターブランケット(BR) vs. 空気
冷却装置(CC) vs. Arctic Sun(AS) vs. 血管内冷却装置(CG)
低体温療法(目標体温33℃)と常温療法(目標体温37℃)を施行
直腸温をモニタリング
冷却速度
冷却速度
BR: 1.33 ± 0.63°C/h
AS: 1.04 ± 0.14°C/h
CG: 1.46 ± 0.42°C/h
は迅速な冷却が可能
冷却速度
AS<BR<CG
体温維持率
目標温度を維持するには
血管内冷却装置はすべての
他の冷却方法よりも優れている
p < 0.05
Critical Care 2007; 11: No 4
2. cardiopulmonary bypass (PCPS)
・侵襲度が高い
・最も冷却スピードが速い
・酸素化と流量補助が可能
目的:心拍再開後または心拍再開していない患者にPCPS+IABP
低体温療法・PCIを早期に施行した際の神経学的予後の評価
対象患者:18歳以上 院外発生の心原性心停止の患者 全171名
前向き研究
期間:2000年11月~2007年12月まで
方法:膀胱温にて測定.
冷却方法は以下の2通り
the post-ROSC cooling group:102名
2000年11月~2004年11月
コイル式冷却装置
PCPS開始から5.5hr以内に34℃を目標
intra-arrest cooling group:69名
2004年11月~2007年12月
乳酸リンゲル液 4℃・2Lを急速輸液・熱交換器
PCPS開始から30min以内に34℃を目標
低体温プロトコール
Circ J 2010; 74: 77 – 85
結果
発症から34℃に達成した時間別に4つに分類
baseline characteristics
Circ J 2010; 74: 77 – 85
結果
95分以内に34℃に到達したグループに
おいては22.2%は神経学的予後が良好
全患者では171名のうち、
21名(12.3%)は神経学的予後が良好
Circ J 2010; 74: 77 – 85
結果
早期PCPSの導入・体温の冷却が重要
Circ J 2010; 74: 77 – 85
Internal cooling
• 侵襲度は大きいが、血液温を直接コントロールできるの
で、体温管理においては容易に行なえる
• PCPSに関しては低体温療法よりも救命を目的として
行なわれる場合が多い
• PCPSを早期導入には教育・システムの構築が必要
低体温療法の保険点数
12,200点
(1)低体温療法は、心肺蘇生後の患者に対し、直腸温
35℃以下で12時間以上維持した場合に、開始から3
日間に限り算定する。
(2)重度脳障害患者への治療的低体温の場合は算定でき
ない。
(3)当該点数を算定するに当たり、かならずしも手術を
伴う必要はない。