ダウンロード - 第51回日本高気圧環境・潜水医学会学術総会

日本高気圧環境・潜水医学会
第51回学術総会 プログラム
The 51st Annual Scientific Meeting of the Japanese Society
of Hyperbaric and Undersea Medicine
歴史の継承と新たな挑戦
会 長
宮本 正章(日本医科大学付属病院循環器内科 教授
高気圧酸素治療室 室長)
会 期
2016年12月3日
(土)
・4日
(日)
会 場
学校法人日本医科大学教育棟/同窓会橘桜会館
〒113-0023 東京都文京区向丘2-20-10
(文京区千駄木:日本医科大学付属病院隣り)
各種会合
理事会
12月2日
(金)午後 東京ドームホテル 真砂(5階)
社員総会
12月2日
(金)午後 東京ドームホテル 初音(5階)
各種委員会
12月3日
(土)
,4日
(日) 学会会場
専門医認定試験 12月4日
(日)
午前 学会会場
全体懇親会
12月3日
(土)18:00∼20:00
学会会場(教育棟3F)
企業展示
(日)
9:00∼16:00
12月3日
(土)9:00∼17:00,4日
学会会場(教育棟2F)
第51回日本高気圧環境・潜水医学会学術総会 プログラム
目 次
会長挨拶 .......................................................................................................................................... 1
開催概要 .......................................................................................................................................... 2
会場周辺地図........................................................................................................................... 2
会場案内図............................................................................................................................... 3
運営要項 .................................................................................................................................. 5
日程表 ....................................................................................................................................13
各種会議のお知らせ .............................................................................................................15
演題日程 ........................................................................................................................................17
講演 ........................................................................................................................................17
シンポジウム.........................................................................................................................18
パネルディスカッション .....................................................................................................21
ワークショップ .....................................................................................................................22
一般演題 ................................................................................................................................23
演者・座長索引 .....................................................................................................................79
協賛企業・法人一覧 .....................................................................................................................86
第 51 回日本高気圧環境・潜水医学会学術総会
会 長 挨 拶
第51回 日本高気圧環境・潜水医学会学術総会の開催にあたって
来る2016年(平成28年)
12月3日(土)
・4日(日)の2日間,東京都文京区千駄木にございます学校
法人日本医科大学教育棟講堂及び同窓会橘桜会館におきまして第51回日本高気圧環境・潜水医学会
学術総会を開催させて頂きます。
今回は半世紀を経た新たなスタートとなる第51回学術総会ですので,メインテーマを「歴史の継承
と新たな挑戦」
とさせて頂きました。
昭和47年にわが国において初めて高気圧酸素治療が健康保険収載され,その後適応拡大して現
在の適応疾患となりましたが,特に非救急疾患に対する保険点数の惨状等により結果としてHBO治
療施設の減少に繋がり,減圧障害治療,放射線合併症治療,救急治療の危機となり,医療崩壊の
一因ともなっております。そのため現在川嶌眞人代表理事のもと本学会でも専門医制度を発足させ,
エビデンスレポートを作成し,様々な手法を駆使し学会主導で,診療報酬改定に向けた厚生労働省を
はじめ関係機関へのヒアリングを実施しております。
これらを受け今回新たな挑戦としましては,日本臨床高気圧酸素・潜水医学会との融合を図るべく
3日(土)昼から日本臨床高気圧酸素・潜水医学会代表理事の有賀徹先生に招請講演を頂戴致し,さ
らに副代表理事の四ノ宮成祥先生にも同日午前に特別講演を頂戴申し上げます。
今回は学会プログラムの特徴として,シンポジウム「ダイバーの健康診断」
,パネルディスカッション
「減圧障害に対する第1種装置での治療の位置づけ」等潜水医学関係の演題は 3日(土)に集中致しま
した。さらに高気圧酸素治療専門技師の方々を中心とするシンポジウム「HBOにおけるME機器使用
の現状と安全性」
,ワークショップ「臨床工学技士養成校における高気圧酸素治療の教育について」
においても活発なディスカッションをお願い申し上げます。会員の皆様に少しでも有益な知識・情報を
得て頂きたく最新のエビデンスレポート,
Annual review sessionも準備致しました。
両日共にお昼にはお弁当,3日(土)夜の全員懇親会では美味しいワイン
とお食事と共に,京都の能役者河村博重様により能の実演と共に皆様参
加型の実演を供する予定です。
今回は毎年11月の金曜日・土曜日開催ではなく,当大学の施設の関係
上,12月初めの土曜日・日曜日開催となり,皆様にはご迷惑をお掛け致し
誠に申し訳ございません。寒さ厳しき折と存じますが,会員皆様の一人で
も多くのご参加を心よりお待ち申し上げ,東京でお会い出来ることを楽し
みにしております。何卒宜しくお願い申し上げます。ありがとうございます。
第 51回 日本高気圧環境・潜水医学会学術総会 会長
日本医科大学付属病院循環器内科 高気圧酸素治療室
宮本 正章
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日本高気圧環境・潜水医学会雑誌
Vol.51 Supplement, Sep, 2016
開 催 概 要
会場周辺地図
■12月3日(土),4日(日)
会場:学校法人日本医科大学 教育棟/同窓会
橘桜会館 周辺地図
〒113-0023
東京都文京区向丘 2-20-10(文京区千駄木:日本医科大学付属病院隣り)
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第 51 回日本高気圧環境・潜水医学会学術総会
会場案内図
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日本高気圧環境・潜水医学会雑誌
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Vol.51 Supplement, Sep, 2016
第 51 回日本高気圧環境・潜水医学会学術総会
参加者へのご案内
1. 参加資格
⑴ 本学会学術総会は,すべての参加者に開かれます。
⑵ 本学会に参加される方は,当日総合受付で,参加登録を行ってください。
⑶ シンポジウム,パネルディスカッション,ワークショップ,一般演題における発表
者は日本高気圧環境・潜水医学会会員に限りますので,未入会の方は入会手続きを
行ってください。
⑷ 入会手続きは本学会事務局までお問い合わせください。
一般社団法人 日本高気圧環境・潜水医学会 事務局
http://www.jshm.net/
TEL:03-5803-4884 FAX:03-3813-6292
E-Mail:jshm.hbo@tmd.ac.jp
⑸ 一般演題を含むすべての演題の題名,演者名,所属はホームページに公開されます。
また,学術総会後にプロシーディングとして発表内容を学術誌に掲載いたします。
(P.9 座長・演者の先生へのご案内 3. プロシーディング受付について 参照)
2. 参加費
⑴ 全て,当日会場受付となります。事前参加登録はございません。
受付時間・場所:12月3日(土),4日(日)
学校法人日本医科大学 教育棟 2F 受付 8:00 ∼ 16:00
⑵ 学会の参加費は以下の通りです。
会員
10,000円
会員以外の医師・歯科医師
10,000円
会員以外の看護師・臨床工学技士
8,000円
一般参加者(潜水関係者を含む)
3,000円
研修医・学生(※身分証明書提示)
無料
⑶ 会場に備え付けの参加登録用紙にご記入の上,受付にて学会参加費をお支払下さい。
⑷ 参加登録用紙と引き換えにネームカードおよび参加証明書をお渡しします。会場内
では必ずご着用ください。
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日本高気圧環境・潜水医学会雑誌
Vol.51 Supplement, Sep, 2016
3. 全体懇親会について
日 時 12月3日(土)
18:00 ∼ 20:00
場 所 学校法人日本医科大学 教育棟 3F
会 費 3,000円(学術総会総合受付にて参加登録時にお申し込みください)
会場内ではネームカードを必ずご着用ください。
4. 予稿集・プログラム・プロシーディングについて
⑴ 予稿集の製本配布は行わず,学術総会ホームページに予稿集を掲載して参加者各自
でダウンロードのうえ,ご利用いただく事と致します。
⑵ プログラムは印刷物として作成し,学術集会前に会員へ送付致します。会場では配
布しませんので,各自ご持参ください。
⑶ 学術総会後にプロシーディングとして発表内容を学術誌に掲載いたします。全ての
演題が対象となります。
5. クロークについて
受付場所:12月3日(土),4日(日) 学校法人日本医科大学 教育棟 2F
お引き取りがなされないお荷物は,大会本部にてお預かりいたします。
6. 昼食整理券について
12月3日の総会,4日のエビデンスレポートで昼食の提供があります。数量に限りがあり
ますので,ご希望の方は各日の朝から受付で配布する引換券をお取り下さい。お一人様
1枚ずつでお願いします。引換券終了後は申し訳ありませんが近隣の飲食店等をご利用
下さい。
7.企業展示について
展示時間・場所:12月3日(土),4日(日) 9:00 ∼ 17:00
学校法人日本医科大学 教育棟 2F 講義室2
各協賛企業の機器,器材等の製品をお試しいただけます。
8.会場での注意
患者個人情報に抵触する可能性のある内容は,患者あるいはその代理人(親族など)
からインフォームド・コンセントを得たうえで,患者個人情報が特定されないよう十
分留意し発表してください。個人情報が特定される発表は禁止します。
学会会場内は禁煙です。
原則として,会場内での呼び出しは行いません。会場内に設置の「会員掲示板」をご
利用ください。
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第 51 回日本高気圧環境・潜水医学会学術総会
会場での録音や撮影はご遠慮ください。印刷物の掲示や配布,カメラやビデオなどで
の撮影について,事前に会長の許可を得ている場合は例外となります。
携帯電話は電源を切るかマナーモードに設定をお願い致します。
会場へは公共交通機関をご利用ください。
9.日本高気圧環境・潜水医学会 生涯教育単位について
本学会では,日本高気圧環境・潜水医学会生涯教育単位(8単位)を取得できます。
今後,学術総会・地方会では参加証1枚目が,生涯教育単位8単位のご本人保管用の証
明書になります。
また,参加証3枚目を切り離し,日本高気圧環境・潜水医学会事務局の回収ボックスへ
ご提出いただくと,紛失した場合に事務局での照合が可能となります。
10.日本医師会生涯教育単位について
本学会では,学会参加により日本医師会生涯教育単位を取得できます。
ご希望の方は当日総合受付にて,お申し込みください。
11.問い合わせ先
第51回日本高気圧環境・潜水医学会学術総会運営事務局
〒179-0074 東京都練馬区春日町4-5-17
合同会社エム・プランニングオフィス 内
担当:町田
TEL / FAX:03-3825-7968 mail:[email protected]
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日本高気圧環境・潜水医学会雑誌
Vol.51 Supplement, Sep, 2016
座長・演者の先生へのご案内
1. 座長の先生へのお願い
⑴ セッション開始30分前までに受付にお越しください。
⑵ 各セッションの開始15分前までに会場内前方右手の次座長席までお越しください。
その際,進行係にお声をお掛けください。
⑶ 進行は座長にお任せいたしますが,終了時刻厳守にご協力お願いいたします。
2. 講演・一般演題発表について
⑴ 講演・質疑応答時間
各セッションの時間枠に応じて,終了時刻厳守にご協力お願いいたします。発表時
間の終了1分前にタイマーでお知らせいたします。
⑵ 発表形式
口演発表についての注意とお願い
口演はすべてパソコンによるプレゼンテーションとなります。液晶プロジェクター
は 1台(スクリーン 1面)のみご用意します。
計時は発表終了1分前(黄)
,終了時(赤)
のランプにてお知らせいたします。
プログラムの円滑な進行のため時間厳守にて発表くださいますようお願いいたしま
す。
⑶ PC受付
演者は発表30分前までに必ず受付を済ませてください。
PC受付の場所・時間
受付時間
12月3日(土)
8:00 ∼
12月4日(日)
8:00 ∼
受付場所 教育棟2階ロビー
※12月4日午前に発表の方は前日の混み合っていない時間帯に発表データの受付を
されるようお願いいたします。
⑷ メディアにて発表データをお持込の方
発表データをメディア(USBメモリ,CD-R)
に保存したものをPC受付にお持ちくださ
い。なお,バックアップ用としてお手持ちのノートパソコンをご持参いただくことを
お勧めいたします。
保存したデータはご自身のノートパソコン以外でも文字化け等がなく,データを読み
込めるかどうか事前にご確認ください。
保存したファイル名は「発表日」
「
,演題番号」
「
,氏名」
の順で名前を付けてください。
他のデータ(静止画・グラフなど)
をリンクさせている場合でも元のデータをメディア
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第 51 回日本高気圧環境・潜水医学会学術総会
に一緒に保存していただき,必ず事前に他のパソコンでの動作確認をお願いいたしま
す。
講演会場ではWindows7およびMicrosoft PowerPoint 2007/2010/2013がインストール
されたパソコンを用意します。他のWindowsのバージョンやMacで作成された場合は,
必ず上記環境で動作確認済のデータをお持ちください。
文字フォントはWindows7標準のフォントをご利用ください。
(それ以外では正しく表
示されない場合があります)
発表データは,発表終了後に学会事務局で全て削除いたします。
PowerPointの発表者ツール機能は使用できませんのでご注意ください。
⑸ ノートパソコン本体をお持込の方へ(Windows,
Macintosh)
ノートパソコンの本体を持込でご使用される場合,PC受付で動作確認後,ご自身の
発表時間30分前までに,会場内のPC接続場所(次演者席付近)へ,各自でお持ちく
ださい。
液晶プロジェクターとの接続はMini D-sub15pinの外部出力端子です。
ノートパソコン本体の外部出力端子の形状および出力の有無を確認してください。
専用のアダプターが必要な場合は各自ご持参ください。
パソコン本体はサスペンドモード(スリープ,省エネ設定)やスクリーンセイバー
が作動しないようにあらかじめ設定してください。
バッテリー切れ防止のため,電源(AC)
アダプターは必ずお持ちください。
万が一の作動不良に備えてご自身のノートパソコンに保存されている重要なデータ
はバックアップをお取りください。また,発表データのバックアップとしてメディ
アをお持ちになることをお勧めいたします。
発表終了後は速やかに発表会場のオペレータ席にてノートパソコンをお引き取りく
ださい。
3. プロシーディング受付について
学術総会後にプロシーディングとして発表内容を学術誌に掲載いたしますので,プロ
シーディング用の原稿を発表時に提出して下さい。容量は本誌1ページ分に相当する
ものとします。なお,発表から 1週間以内であれば修正を受け付けます。全ての演題
が対象となります。詳細は以下の通りです。
⑴ プロシーディング原稿の作成要領
プロシーディング原稿には既定のフォーマットはありません。
プロシーディング原稿はMicrosoft Wordにて,
1,600文字以内で作成してください。
図表や文献がある場合には,1ページに収まるように本文の字数を調整してくださ
い。
プロシーディングには,演題タイトル,発表者氏名(共同発表者を含む)
,所属を
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日本高気圧環境・潜水医学会雑誌
Vol.51 Supplement, Sep, 2016
お書きください。発表者氏名の頭に〇をお付け下さい。
図表,引用文献の記載方法は,学会誌(日本高気圧環境・潜水医学会雑誌)の投稿規
定に準じてください。ただし,引用文献の著者は筆頭著者のみ記載してください。
⑵ プロシーディング原稿の提出方法
発表者は発表当日にプロシーディング原稿を収めたUSBメモリー,CD-Rをプロシー
ディング原稿受付に必ず提出してください。
⑶ プロシーディング原稿の修正
プロシーディング原稿は,学術総会でのディスカッションなどの経緯を踏まえ,提
出後訂正を希望する場合,1週間以内であれば修正が可能です。1週間以内に,学術
総会事務局宛に修正原稿をCD-Rに収めて郵送するか,メールに原稿を添付の上
[email protected]までお送りください。
4. 利益相反(COI)の開示について
日本高気圧環境・潜水学会が主催する学術集会の演題発表に際して,発表者(演者)と
共同研究者・共同発表者の利益相反を開示することになりました。詳細は以下の通り
となりますので,必ずご確認の上,演題のご登録をお願いいたします。
【対象者および対象】
日本高気圧環境・潜水学会が主催する学術集会,シンポジウム,講演会,市民公開講
座等の発表・講演に際しては利益相反関連事項への記載が必須になります。
報告対象となるのは(1)
発表者,及び(2)
共同研究者・共同発表者です。
申告すべき対象は,発表内容に関連する企業や営利を目的とする団体との関係につい
てです。
【学術集会での発表に際しての個人情報開示項目】
大会での当日発表の際に,発表者はスライドの 2枚目に掲示して下さい(必須)。
※サンプルスライドが学術集会HP「発表者へのご案内」
にございます。参照ください。
学術集会HP:http://jshum51.umin.jp/
抄録提出日を基準として過去3年間について開示をして下さい。
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第 51 回日本高気圧環境・潜水医学会学術総会
プロシーディング用原稿の提出について
本学会では 2010年に開催された第45回学術総会から演題発表後に本誌1ページ分に相当
するプロシーディング用原稿を提出することとされております。その際に,なぜそのよう
に決められたかについてアナウンスしておりますが,他の学会ではおそらく要求されてい
ないことなので,プロシーディングを作成する意義についてご不審をもたれる方も少なく
ないと思われます。そこで,以下にプロシーディング原稿を作成提出するに至った経緯及
びその理由をあらためて記します。
その一つは学術総会の発表の資料性を増強するためです。毎回多くの発表がなされ,そ
のためには相応のエネルギーが傾注されているものと思われますが,その成果が論文とし
て一つのまとまった形で本誌上に残されることがほとんど認められないのが実情です。し
かし,英文論文が重視され,二重投稿に厳しい目が注がれている現状では,それも致し方
ないのかもしれません。そうしますと,本誌上に残るのは情報の限定された抄録のみとな
ります。プロシーディングでは記述のスペースを従来の抄録の倍に当たる本誌1ページ分確
保し,さらに図表及び参考文献の使用も可能としましたので,論文として最小限必要な情
報は充分に記述でき,資料価値が増します。
二番目として内容そのものの向上が挙げられます。従来は抄録原稿の締め切り日が演題
を発表する学術総会当日よりも相当前であるためか,具体的な内容の極めて乏しいものま
で,時として抄録として掲載されてきました。今回,プロシーディング原稿の締め切りを
演題発表当日としたことで,研究の成果をより具体的な形で原稿に取り込むことが出来ま
す。また,学術総会でのディスカッションを十分に反映すべく,発表1週間以内であれば原
稿を修正することも可能としましたが,これは本学会が小規模であるがために可能なこと
です。言うなれば規模の小ささを逆手に取った対応ということができます。
三番目として,従来たまに見受けられたことですが,いわゆるドタキャンをした演題に
対して,プロシーディングに載せないことによって正当な対応をとることが出来ることが
挙げられます。従来の抄録では,抄録原稿がいわゆるsupplementではなく本誌の正式なペー
ジ数を取って印刷されていたために,事後から見るとドタキャン演題も実際に発表された
他の演題と同じように発表されたものとみなされるようになっておりました。
なお,発表成果としてプロシーディングを残すことについて,将来の本格的な論文執筆
の妨げとなるのではないかと危惧される方もいらっしゃいますが,プロシーディングの位
置づけはあくまで基本的には従来の抄録と同様であって,二重投稿のおそれはありません。
ページ数を 1ページと限定したのもそれを考慮したものです。
以上から,理事会及び社員総会の議を経て学術総会発表時にプロシーディング原稿を提
出していただき,学術総会の記録を学術総会プロシーディングと銘打った本誌第4号として
年末に刊行することになりました。
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日本高気圧環境・潜水医学会雑誌
Vol.51 Supplement, Sep, 2016
この方式については,毎年開かれている理事会及び社員総会において,含まれている情
報量が格段に充実している,とその意義が十分に評価されており,今後とも継続されるも
のと考えております。
しかしながら,問題点もあります。その最大のものは,学術総会に当たられる側の負担
が大きくなることです。そのような負担の増加があるにも拘わらず,プロシーディングを
作成刊行しようとするのは,ひとえに学術総会を充実させ,その成果をより広く還元した
いと考えるからであります。このことをどうかご理解いただき,プロシーディング原稿を
提出されるよう要望致します。
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第 51 回日本高気圧環境・潜水医学会学術総会
第51回日本高気圧環境・潜水医学会学術総会 日程
第 1 日目 12 月 3 日(土)
8:00
第 1 会場(教育棟 2F 講堂)
第 2 会場(橘桜ホール)
9:30
10:00
10:30
11:00
11:30
12:00
12:30
13:00
講義室 2(教育棟 2F)
学術委員会
8:00 ~ 9:00
8:30
9:00
第 3 会場(教育棟 2F 講義室 1)
第一会議室(教育棟 3F) 橘桜会館(1 階・第1会議室)
教育委員会
8:00 ~ 9:00
講義室 3(教育棟 3F)
地方会等検討委員会
8:00 ~ 9:00
開会の辞
【パネルディスカッション 1】
減圧障害に対する
第 1 種装置での治療の
位置づけ
座長:鈴木信哉
池田知純
演者:池田知純
望月 徹
櫻庭直達
清水徹郎
鈴木信哉
【特別講演 1】
高気圧酸素治療の生物学的
効果と安全性
【シンポジウム 1】
「糖尿病足潰瘍・壊疽治療
における HBO 有用性」
座長:高木 元
川嶌眞之
演者:松井 傑
川口達也
桐木園子
村尾尚規
田村裕昭
宮本聡子
協賛:日本イーライ
協賛:日本イーライリリー株式会社
リリー㈱
日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社
技術部会
常任幹事会
9:00 ~ 11:00
一般演題1(30 分)
眼科・耳鼻科領域
座長:柳下和慶 演者:四ノ宮成祥
【招請講演】
安全・安心な医療と
医療事故調査制度
安全対策
委員会
9:00 ~ 10:00
一般演題2(50 分)
治療成績,評価
技術部会
幹事会
11:00 ~ 12:00
座長:川嶌眞人
演者:有賀 徹
総会(20 分)
(お弁当配布)
医療機器展示
休憩
13:30
14:00
14:30
15:00
【シンポジウム 2】
HBO における ME 機器使用の
現状と安全性
座長:小森恵子
堂籠 博
演者:石川勝清
大久保淳
山本遼太郎
鈴木信哉
15:30
16:00
16:30
17:00
17:30
18:00
一般演題3(80 分)
脳神経外科・
整形外科領域・
スポーツ医学関連
認定・試験
委員会
13:30 ~ 14:30
専門医
認定委員会
14:30 ~ 15:30
一般演題4(50 分)
機器・器具
【シンポジウム 3】
ダイバーの健康診断
座長:和田孝次郎
小島泰史
演者:千足耕一
桐木園子
山崎博臣
三保 仁
高尾勝浩
小島泰史
【ワークショップ】
臨床工学技士養成校における
高気圧酸素治療の教育について
座長:石川勝清
灘吉進也
演者:中島章夫
廣瀬 稔
原田俊和
赤嶺史郎
濱田倫朗
高気圧酸素
治療安全協会
16:00 ~ 17:00
JSHUM
近畿地方会
理事会
18:30
19:00
全員懇親会
19:30
20:00
20:30
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日本高気圧環境・潜水医学会雑誌
Vol.51 Supplement, Sep, 2016
日本高気圧環境・潜水医学会雑誌
Vol.51 Supplement, Sep, 2016
第 2 日目 12 月 4 日(日)
8:00
8:00
8:30
第 1 会場(教育棟 2F 講堂)
第 2 会場(橘桜ホール)
第 1 会場(教育棟 2F 講堂)
第 2 会場(橘桜ホール)
講義室 2(教育棟 2F)
第一会議室(教育棟 3F)
橘桜会館(1 階・第1会議室)
講義室 3(教育棟 3F)
講義室 2(教育棟 2F)
第一会議室(教育棟
広報委員会 3F)
8:00 ~ 9:00
橘桜会館(1 階・第1会議室)
講義室 3(教育棟 3F)
第 2 日目 12 月 4 日(日)
受付 8:30 ~
広報委員会
8:00 ~ 9:00
8:30
9:00
9:00
9:30
9:30
10:00
10:00
10:30
10:30
11:00
11:00
11:30
11:30
12:00
12:00
12:30
【シンポジウム 4】
一酸化炭素中毒に対する
HBO の現状と問題点
一般演題5(30 分)
基礎研究
【シンポジウム
4】
座長:土井 浩
一酸化炭素中毒に対する
瀧 健治
HBO
の現状と問題点
演者:柳下和慶
藤田 基
座長:土井 浩
土居 浩
瀧 健治
前山英男
演者:柳下和慶
藤田 基
【特別講演 2】
土居 浩
東京オリンピック・
前山英男
パラリンピックに向けた
アンチ・ドーピング活動
【特別講演 2】
東京オリンピック・
座長:宮本正章
パラリンピックに向けた
演者:鈴木秀典
アンチ・ドーピング活動
一般演題5(30 分)
基礎研究
一般演題6(60 分)
教育・環境・管理
座長:宮本正章
【教育講演 1】
演者:鈴木秀典
HBO による骨癒合促進作用
座長:柳下和慶
【教育講演 1】
演者:井上 治
HBO による骨癒合促進作用
13:30
14:00
14:00
14:30
14:30
15:00
15:00
15:30
15:30
16:00
16:00
16:30
16:30
17:00
17:00
17:30
17:30
18:00
18:00
18:30
19:00
19:30
19:30
20:00
20:00
20:30
20:30
14
14
一般演題7(50 分)
CO中毒・ガス塞栓症
認定試験
一般演題7(50 分)
CO中毒・ガス塞栓症
一般演題8(70 分)
潜水関連
一般演題8(70 分)
潜水関連
座長:齋藤 繁
演者:合志清隆
【エビデンスレポート】
堂本英治
【教育講演 2】
救急医療における HBOT の
意義と将来
【教育講演 2】
座長:德永 昭
救急医療における
HBOT の
演者:増野智彦
意義と将来
【シンポジウム 5】
座長:德永 昭
全国大学病院高気圧酸素治療部
演者:増野智彦
(室)連絡会の設置に向けて
(第 2 弾)
【シンポジウム 5】
全国大学病院高気圧酸素治療部
座長:鶴田良介
(室)連絡会の設置に向けて
宮本正章
(第 2 弾)
演者:藤田 智
齋藤 繁
座長:鶴田良介
猪口貞樹
宮本正章
今村 浩
演者:藤田 智
合志清隆
齋藤 繁
鶴田良介
猪口貞樹
今村 浩
合志清隆
【パネルディスカッション
3】
鶴田良介
晩期放射線障害に対する
HBO の期待と実際
【パネルディスカッション
3】
座長:榎本光裕
晩期放射線障害に対する
中田瑛浩
HBO の期待と実際
演者:唐澤久美子
岸 和史
座長:榎本光裕
丹羽康江
中田瑛浩
演者:唐澤久美子
榎本光裕
岸 和史
平塚理沙
丹羽康江
大江与喜子
中田瑛浩
榎本光裕
閉会の辞
平塚理沙
大江与喜子
閉会の辞
18:30
19:00
認定試験
【エビデンスレポート】
13:00
13:30
編集委員会
9:00 ~ 10:00
一般演題6(60 分)
教育・環境・管理
座長:柳下和慶
演者:井上 治
12:30
13:00
受付 8:30 ~
編集委員会
9:00 ~ 10:00
座長:齋藤 繁
(お弁当配布)
演者:合志清隆
堂本英治
(お弁当配布)
【パネルディスカッション 2】
消化器領域における HBO の
有用性と問題点
【パネルディスカッション
2】
座長:内田英二
消化器領域における
HBO の
平井一郎
有用性と問題点
演者:土井智章
平井一郎
座長:内田英二
戸部 賢
平井一郎
高橋悠希
演者:土井智章
中田瑛浩
平井一郎
戸部 賢
高橋悠希
中田瑛浩
【Annual review】
座長:合志清隆
演者:和田孝次郎
【Annual
review】
伊古美文隆
座長:合志清隆
演者:和田孝次郎
伊古美文隆
医療機器展示
医療機器展示
保険情報委員会
12:40 ~ 13:40
保険情報委員会
12:40 ~ 13:40
第 51 回日本高気圧環境・潜水医学会学術総会
各種会議のお知らせ
■理事会・社員総会(評議員会)
東京ドームホテル
通常理事会
12月2日(金)
14:00 ∼16:00 会場:5F「真砂」
社員総会(評議員会) 12月2日(金)
16:15 ∼18:15 会場:5F「初音」
■委員会等 学校法人日本医科大学教育棟/同窓会橘桜会館
No.
会議名
日時
会場
1
第51回学術総会(議事)
12月3日(土)12:40 ∼ 13:00
講堂(教育棟2F 第一会場)
2
学術委員会
12月3日(土)8:00 ∼ 9:00
講義室1(教育棟2F)
3
技術部会常任幹事会
12月3日(土)9:00 ∼ 11:00
講義室1(教育棟2F)
4
技術部会幹事会
12月3日(土)11:00 ∼ 12:00
講義室1(教育棟2F)
5
教育委員会
12月3日(土)8:00 ∼ 9:00
第一会議室(教育棟3F)
6
認定・試験委員会
12月3日(土)13:30 ∼ 14:30
第一会議室(教育棟3F)
7
専門医認定委員会
12月3日(土)14:30 ∼ 15:30
第一会議室(教育棟3F)
8
高気圧酸素治療安全協会
12月3日(土)16:00 ∼ 17:00
第一会議室(教育棟3F)
9
地方会等検討委員会
12月3日(土)8:00 ∼ 9:00
橘桜会館(1階・第1会議室)
10 安全対策委員会
12月3日(土)9:00 ∼ 10:00
橘桜会館(1階・第1会議室)
11 広報委員会
12月4日(日)8:00 ∼ 9:00
第一会議室(教育棟3F)
12 編集委員会
12月4日(日)9:00 ∼ 10:00
橘桜会館(1階・第1会議室)
13 保険情報委員会
12月4日(日)12:40 ∼ 13:40
橘桜会館(1階・第1会議室)
14 近畿地方会理事会
12月3日(土)17:30 ∼ 18:00
橘桜会館(1階・第1会議室)
■専門医・技師認定試験 学校法人日本医科大学教育棟
No.
会議名
1
高気圧酸素治療専門医認定試験
2
高気圧酸素治療専門技師認定試験
日時
会場
12月4日(日)9:00 ∼ 12:00
講義室3
(受付開始8:30 ∼)
(教育棟3F)
12月4日(日)9:00 ∼ 12:00
講義室3
(受付開始8:30 ∼)
(教育棟3F)
15
日本高気圧環境・潜水医学会雑誌
Vol.51 Supplement, Sep, 2016
関連行事のご案内
【評議員懇親会】
社員総会(評議員会)
終了後,懇親会を開催いたしますので,皆様方の親交を深めていただきたく存じ
ます。
日 時
12月2日
(金)18:30 ∼20:30 会 場
東京ドームホテル 地下1F 「シンシア」
会 費
4,000円(社員総会受付にてお支払いください)
【全体懇親会】
学術総会(1日目)終了後,全体懇親会を開催いたします。どなたでも参加いただけますので,皆様方の
親交を深めていただきたく存じます。
16
日 時
12月3日
(土)18:00 ∼20:000 会 場
学校法人日本医科大学教育棟3F 講義室3
会 費
3,000円(学術総会総合受付にて参加登録時にお支払いください)
第 51 回日本高気圧環境・潜水医学会学術総会
第51回日本高気圧環境・潜水医学会学術総会
演 題 日 程
講演・シンポジウム・パネルディスカッション・ワークショップ
■招請講演
12月3日(土)
11:40 ∼12:40 第一会場(教育棟 2F 講堂)
「安全・安心な医療と医療事故調査制度」
座長:川嶌 眞人(日本高気圧環境・潜水医学会 代表理事,
社会医療法人 玄真堂川嶌整形外科病院 理事長)
演者:有賀 徹(日本臨床高気圧酸素・潜水医学会 代表理事,
独立行政法人労働者健康安全機構 理事長)
■特別講演1
12月3日(土) 10:40 ∼11:40 第一会場(教育棟 2F 講堂)
「高気圧酸素治療の生物学的効果と安全性」
座長:柳下 和慶(日本高気圧環境・潜水医学会 副代表理事,
東京医科歯科大学スポーツサイエンス機構スポーツ医歯学診療センター
医学部附属病院 高気圧治療部/スポーツ医学診療センター)
演者:四ノ宮成祥(日本臨床高気圧酸素・潜水医学会 副代表理事
防衛医科大学校 防衛医学研究センター/分子生体制御学講座)
■特別講演2
12月4日(日) 10:30 ∼11:30 第一会場(教育棟 2F 講堂)
「東京オリンピック・パラリンピックに向けたアンチ・ドーピング活動」
座長:宮本 正章(日本医科大学付属病院 循環器内科教授/高気圧酸素治療室 室長)
演者:鈴木 秀典(日本医科大学大学院 医学研究科薬理学分野・大学院 教授)
■教育講演1
12月4日(日) 11:30 ∼12:30 第一会場(教育棟 2F 講堂)
「HBOによる骨癒合促進作用」
座長:柳下 和慶(日本高気圧環境・潜水医学会 副代表理事,
東京医科歯科大学スポーツサイエンス機構スポーツ医歯学診療センター
医学部附属病院高気圧治療部/スポーツ医学診療センター)
演者:井上 治(江洲整形外科クリニック 院長,
琉球大学医学部附属病院 高気圧治療部)
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日本高気圧環境・潜水医学会雑誌
Vol.51 Supplement, Sep, 2016
■教育講演2
12月4日(日) 13:30 ~14:30 第一会場(教育棟 2F 講堂)
「救急医療におけるHBOTの意義と将来」
座長:德永 昭(日本医科大学 名誉教授)
演者:増野 智彦(日本医科大学付属病院 高度救命救急センター)
■エビデンスレポート
12月4日(日) 12:30 ~14:00 第二会場(橘桜会館 2F 橘桜ホール)
座長:齋藤 繁(群馬大学大学院医学系研究科 麻酔神経科学分野)
「エビデンスレポート:その他の疾患」
演者:合志 清隆(琉球大学医学部附属病院 高気圧治療部)
「エビデンスレポート 潜水関係」
演者:堂本 英治((財)神奈川県警友会 けいゆう病院病理診断科)
■Annual review
12月4日(日) 16:20 ~17:50 第二会場(橘桜会館 2F 橘桜ホール)
座長:合志 清隆(琉球大学医学部附属病院 高気圧治療部)
「高気圧酸素療法HBOTの効果(臨床編)
」
演者:和田孝次郎(防衛医科大学校 脳神経外科)
「Annual review 2015-2016: 基礎編 ― HBOT・潜水医学」
演者:伊古美文隆(防衛医科大学校 防衛医学研究センター)
■シンポジウム1(協賛:日本イ
ーライリリー株式会社)
日本イーライリリー株式会社/日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社)
12月3日(土) 9:00 ~10:50 第二会場(橘桜会館 2F 橘桜ホール)
「糖尿病足潰瘍・壊疽治療におけるHBO有用性」
座長:髙木 元(日本医科大学付属病院 循環器内科)
川嶌 眞之(社会医療法人玄真堂 川嶌整形外科病院)
「透析症例の救肢戦略 SWAT~ HBOの使命」
演者:松井 傑((医)桑園中央病院 救肢・創傷治療センター)
「高気圧酸素治療時の末梢動脈疾患の組織酸素化について」
演者:川口 達也(済生会松山病院 脳神経外科)
「2型糖尿病における第二種高気圧酸素療法の役割:重症下肢虚血での検討」
演者:桐木 園子(日本医科大学付属病院 循環器内科)
「高気圧酸素療法による透析患者虚血肢皮膚灌流圧の変化」
演者:村尾 尚規(北海道大学 医学部 形成外科)
「2000年以後の当院での高気圧酸素治療を行った骨髄炎の治療成績」
演者:田村 裕昭(社会医療法人玄真堂 川嶌整形外科病院)
18
第 51 回日本高気圧環境・潜水医学会学術総会
「末梢動脈疾患に対して高気圧酸素治療とデキストラン硫酸LDL吸着療法を含む
集学的治療が有用であった一例」
演者:宮本 聡子(東京医科歯科大学医学部附属病院 MEセンター)
■シンポジウム 2
12月3日(土) 13:40 ∼15:10 第一会場(教育棟 2F 講堂)
「HBOにおけるME機器使用の現状と安全性」
座長:小森 恵子(東海大学医学部付属病院 診療技術部 臨床工学技術科)
堂籠 博(琉球大学医学部附属病院 救急部)
「高気圧酸素治療装置への医療機器の持込みに関する技術部会の取り組み
∼これまでの経緯∼」
演者:石川 勝清(北海道大学病院 医療技術部 ME機器管理部門)
「高気圧酸素治療と医療機器の持ち込み ∼第2種高気圧酸素治療装置の現状と
問題点∼」
演者:大久保 淳(東京医科歯科大学医学部附属病院 MEセンター)
「高気圧酸素治療における埋め込みデバイス使用の現状報告およびシリンジポンプの
電気的安全性(バッテリー関連)の検討」
演者:山本遼太郎(鹿児島市医師会病院 高気圧酸素治療室)
「求められる安全性情報 ― 医療機器の高気圧酸素治療装置内使用に関する
学会発表内容の分析評価と情報提供 ―」
演者:鈴木 信哉(亀田総合病院 救命救急科)
■シンポジウム 3
12月3日(土) 15:30 ∼17:30 第一会場(教育棟 2F 講堂)
「ダイバーの健康診断」
座長:和田孝次郎(防衛医科大学校 脳神経外科学講座)
小島 泰史((一財)
日本海洋レジャー安全・振興協会(DAN JAPAN),
東京医科歯科大学医学部附属病院 高気圧治療部)
「SCUBA潜水直前の健康チェック」
演者:千足 耕一(東京海洋大学)
「中高年ダイバーの循環器疾患リスク評価の重要性」
演者:桐木 園子(日本医科大学付属病院 総合診療科/循環器内科)
「呼吸器疾患発見のためのメディカルチェック」
演者:山崎 博臣(山崎内科医院)
「耳鼻咽喉科領域のダイバー検診」
演者:三保 仁(三保耳鼻咽喉科)
19
日本高気圧環境・潜水医学会雑誌
Vol.51 Supplement, Sep, 2016
「高気圧作業従事者に対する減圧性骨壊死の健康診断」
演者:高尾 勝浩(社会医療法人玄真堂 川嶌整形外科病院)
「現在のダイバーの健康診断とその問題点及び提言」
演者:小島 泰史((一財)日本海洋レジャー安全・振興協会(DAN JAPAN),
東京医科歯科大学医学部附属病院 高気圧治療部)
■シンポジウム 4
12月4日(日)
9:00 ∼10:30 第一会場(教育棟 2F 講堂)
「一酸化炭素中毒に対するHBOの現状と問題点」
座長:土居 浩(東京都保健医療公社 荏原病院 脳神経外科)
瀧 健治(札幌東徳洲会病院 救急科センター)
「本学における一酸化炭素中毒患者に対するHBOの実際とフォローアップの現状」
演者:柳下 和慶(東京医科歯科大学 医学部附属病院 高気圧治療部,
東京医科歯科大学 スポーツ医歯学診療センター)
「COP-J study参加施設における急性CO中毒の治療方針からみたHBO治療の
現状と問題点」
演者:藤田 基(山口大学大学院 医学系研究科 救急・総合診療医学講座,
山口大学医学部附属病院 先進救急医療センター)
「一酸化炭素中毒による遅発性脳症の検討」
演者:土居 浩(東京都保健医療公社 荏原病院 脳神経外科)
「一酸化炭素中毒と労務管理 現状と課題 ― 潜在患者へのスクリーニングと
早期対応 ―」
演者:前山 英男(マシモジャパン株式会社)
■シンポジウム 5
12月4日(日) 14:30 ∼16:10 第一会場(教育棟 2F 講堂)
「全国大学病院高気圧酸素治療部(室)連絡会の設置に向けて(第2弾)」
座長:鶴田 良介(山口大学医学部附属病院 先進救急医療センター)
宮本 正章(日本医科大学付属病院 循環器内科/高気圧酸素治療室)
「旭川医科大学病院の高気圧酸素治療の卒前教育と日常診療」
演者:藤田 智(旭川医科大学 救急医学講座)
「群馬大学での高気圧酸素治療教育」
演者:齋藤 繁(群馬大学大学院 医学系研究科 麻酔神経科学分野)
「東海大学医学部の高気圧酸素治療の卒前教育と日常診療」
演者:猪口 貞樹(東海大学 救命救急医学)
「信州大学における高気圧酸素治療の卒前教育と日常診療」
演者:今村 浩(信州大学 医学部 救急集中治療医学)
20
第 51 回日本高気圧環境・潜水医学会学術総会
「琉球大学の高気圧酸素治療の卒前教育と日常診療」
演者:合志 清隆(琉球大学医学部附属病院 高気圧治療部)
「全国大学病院高気圧酸素治療部(室)連絡会の設置の必要性」
演者:鶴田 良介(山口大学医学部附属病院 先進救急医療センター)
■パネルディスカッション1
12月3日(土) 9:00 ∼10:40 第一会場(教育棟 2F 講堂)
「減圧障害に対する第1種装置での治療の位置づけ」
座長:鈴木 信哉(亀田総合病院 救命救急科)
池田 知純(東京慈恵会医科大学 環境保健医学講座)
「第1種装置を減圧障害に対する治療手段として位置づける必要性」
演者:池田 知純(東京慈恵会医科大学 環境保健医学講座)
「圧気や潜水作業における減圧障害の現状」
演者:望月 徹(株式会社潜水技術センター)
「第2種装置へのアクセスが困難な地区での第1種装置を持つ医療施設の現状」
演者:櫻庭 直達(独立行政法人 労働者健康安全機構 釧路労災病院
臨床工学部)
「減圧症治療に於ける第一種装置と第二種装置の使い分け」
演者:清水 徹郎(南部徳洲会病院 高気圧治療部)
「酸素加圧型の第1種装置による応急治療の後に第2種装置で標準治療を行う施設間
治療連携」
演者:鈴木 信哉(亀田総合病院 救命救急科)
■パネルディスカッション2
12月4日(日) 14:00 ∼15:50 第二会場(橘桜会館 2F 橘桜ホール)
「消化器領域におけるHBOの有用性と問題点」
座長:内田 英二(日本医科大学消化器外科)
平井 一郎(山形大学 第1外科)
「岐阜大学医学部附属病院における消化器領域疾患に対する高気圧酸素療法の
有用性とその特徴」
演者:土井 智章(岐阜大学医学部附属病院 高度救命救急センター)
「肝胆膵外科における高気圧酸素療法(HBO)
の有用性」
演者:平井 一郎(山形大学 第1外科)
「高圧酸素治療が奏功した小児腸管嚢腫様気腫症の一例」
演者:戸部 賢(群馬大学医学部附属病院 集中治療部)
「イレウスへのHBO効果は何故に違うか?」
演者:高橋 悠希(札幌東徳洲会病院,聖マリア病院)
21
日本高気圧環境・潜水医学会雑誌
Vol.51 Supplement, Sep, 2016
「放射線腸炎に対する高気圧酸素治療・放射線膀胱炎との合併も含めて」
特別発言:中田 瑛浩(栗山中央病院 泌尿器科)
■パネルディスカッション3
12月4日(日) 16:10 ∼18:10 第一会場(教育棟 2F 講堂)
「晩期放射線障害に対するHBOの期待と実際」
座長:榎本 光裕(東京医科歯科大学医学部附属病院 高気圧治療部)
中田 瑛浩(栗山中央病院 泌尿器科)
「晩期放射線有害事象に対するHBOの経験と期待」
演者:唐澤久美子(東京女子医科大学 放射線腫瘍学講座)
「俯瞰:HBOに晩期放射線障害の解決を期待してよい根拠を地球生物学から
話してみよう」
演者:岸 和史(社会医療法人孝仁会 北海道大野記念病院,
札幌高機能放射線治療センター)
「前立腺癌陽子線治療後の晩期障害に対する高気圧酸素治療
∼治療成績と診療の背景∼」
演者:丹羽 康江(医療法人徳洲会 宇治徳洲会病院 放射線治療科)
「放射線性放射性膀胱炎の本態と治療 − 高気圧酸素治療の有効性と限界 −」
演者:中田 瑛浩(栗山中央病院 泌尿器科)
「遅発性放射線障害を有する患者の臨床的特徴と高気圧酸素治療に伴う合併症」
演者:榎本 光裕(東京医科歯科大学医学部附属病院 高気圧治療部)
「放射線治療による皮膚障害に対する高気圧酸素療法の有効性」
演者:平塚 理沙(公社荏原病院 皮膚科)
「当院における放射線障害に対する高気圧酸素治療」
演者:大江与喜子(樹徳会 上ヶ原病院)
■ワークショップ
12月3日(土) 16:00 ∼17:30 第二会場(橘桜会館 2F 橘桜ホール)
「臨床工学技士養成校における高気圧酸素治療の教育について」
座長:石川 勝清(北海道大学病院 医療技術部 ME機器管理センター)
灘吉 進也(社会医療法人共愛会 戸畑共立病院 臨床工学科)
「杏林大学における高気圧酸素(HBO)
治療教育の現状と今後の課題」
演者:中島 章夫(杏林大学保健学部 臨床工学科)
「臨床工学技士養成施設における高気圧酸素治療教育の現状と今後の課題」
演者:廣瀬 稔(日本臨床工学技士教育施設協議会教育委員会,
北里大学医療衛生学部 医療工学科臨床工学専攻)
22
第 51 回日本高気圧環境・潜水医学会学術総会
「日本臨床工学技士会におけるHBOT教育の取り組みと当院の学生教育(臨床実習)
体制」
演者:原田 俊和(熊本大学医学部附属病院 医療技術部 ME機器センター)
「高気圧酸素治療における臨床実習の実際」
演者:赤嶺 史郎(医療法人 沖縄徳洲会 南部徳洲会病院 臨床工学部)
「臨床工学技士養成課程における高気圧酸素治療教育の課題
−講義および臨床実習後のアンケートから−」
演者:濱田 倫朗(社会福祉法人 恩賜財団 済生会熊本病院 臨床工学部門)
一般演題
■一般演題
1.12月3日(土) 10:50 ∼11:20 第二会場(橘桜会館 2F 橘桜ホール)
― 眼科・耳鼻科領域 ―
座長:吉田 泰行(威風会栗山中央病院 耳鼻咽喉科・健康管理課)
1-1 「千葉労災病院高気圧酸素治療における眼科疾患への治療実績報告」
演者:長見 英治(独立行政法人 労働者健康安全機構 千葉労災病院
臨床工学部)
1-2 「耳管機能検査計を用いた内耳気圧外傷(Inner ear barotrauma; IEB)
患者の
耳管機能評価」
演者:北島 尚治(北島耳鼻咽喉科医院)
1-3 「高気圧酸素治療の初回治療時における耳痛発生の検討」
演者:前田 卓馬(東京医科歯科大学医学部附属病院 MEセンター)
2.12月3日(土) 11:20 ∼12:10 第二会場(橘桜会館 2F 橘桜ホール)
― 治療成績,評価 ―
座長:松田 範子(日本医科大学付属病院 消化器外科)
2-1 「当院の高気圧酸素治療における現状と課題 ―CEの役割―」
演者:三春 摩弥(山形大学医学部附属病院 臨床工学部)
2-2 「認定施設更新を経て見えてきた当院における治療実績」
演者:小川 駿(札幌麻生脳神経外科病院 臨床工学科)
2-3 「第2種装置・高気圧酸素治療における患者説明に対してアンケートを実施した
一考察」
演者:阿部 結美(横浜労災病院 臨床工学部)
2-4 「当院における治療環境の患者満足度評価をおこなって」
演者:新家 和樹(刈谷豊田総合病院 臨床工学科)
2-5 「減圧障害は酸素吸入で改善する∼沖縄県の取り組み∼
減圧障害に高気圧酸素治療は必要か?酸素吸入のみでの対処」
演者:村田 幸雄(琉球大学病院 高気圧治療部)
23
日本高気圧環境・潜水医学会雑誌
Vol.51 Supplement, Sep, 2016
3.12月3日(土) 13:40 ∼15:00 第二会場(橘桜会館 2F 橘桜ホール)
― 脳神経外科・整形外科領域・スポーツ医学関連 ―
座長:吉松 弘喜(国保小見川総合病院 脊椎脊髄センター 脊椎脊髄外科)
加藤 剛(青梅市立総合病院 整形外科)
3-1 「高気圧酸素治療(HBOT)を行った脳動脈瘤によるくも膜下出血(aSAH)
クリッピング術後脳血管攣縮症例の予後判別式の検討」
演者:濱田 倫朗(社会福祉法人 恩賜財団 済生会熊本病院 臨床工学部門)
3-2 「創傷治癒遅延をきたした浅側頭動脈-中大脳動脈吻合術後頭皮にたいする高気圧
酸素療法の有用性」
演者:和田孝次郎(防衛医科大学校 脳神経外科)
3-3 「高気圧酸素治療時の脳疾患の組織酸素化について(重症度別の検討)」
演者:東 幸司(済生会松山病院 ME部)
3-4 「硬膜外膿瘍を伴う化膿性脊椎炎に対する高気圧酸素療法を併用した低侵襲治療」
演者:橋本 光宏(千葉労災病院 整形外科)
3-5 「高気圧酸素治療期間中における血球変化」
演者:細川 加保(鳥取大学医学部附属病院 MEセンター)
3-6 「MRIを用いたハムストリング肉離れ急性期に対する初回高気圧酸素治療の
有効性評価」
演者:柳下 和慶(東京医科歯科大学 医学部附属病院 高気圧治療部)
3-7 「人体に於ける酸素濃度 その 2」
演者:吉田 泰行(威風会栗山中央病院 耳鼻咽喉科・健康管理課)
3-8 「脊髄型減圧症重症度分類の新たな試案」
演者:石山 純三(静岡済生会総合病院 脳神経外科)
4.12月3日(土) 15:10 ∼16:00 第二会場(橘桜会館 2F 橘桜ホール)
― 機器・器具 ―
座長:鎌田 桂(医療法人中庸会 やまゆりの里)
4-1 「ストレーナー関連トラブルの原因検証」
演者:中山 拓也(日本医科大学付属病院 ME部)
4-2 「高気圧環境が患者監視装置の計測値に及ぼす影響について」
演者:石原 雅也(東京都保健医療公社荏原病院 検査科臨床工学部門)
4-3 「新型シリンジポンプにおける高気圧下での流量特性」
演者:山本 素希(東京医科歯科大学医学部附属病院 MEセンター)
4-4 「高気圧環境下における新型輸液ポンプの流量特性」
演者:後藤 啓吾(東京医科歯科大学医学部附属病院 MEセンター)
4-5 「高気圧酸素治療装置内における吸引器破損について」
演者:鈴木 絵梨(日本医科大学付属病院 ME部)
24
第 51 回日本高気圧環境・潜水医学会学術総会
5.12月4日(日) 9:00 ∼ 9:30 第二会場(橘桜会館 2F 橘桜ホール)
― 基礎研究 ―
座長:芝山 正治(駒沢女子大学 人間健康学部 健康栄養学科)
5-1 「高気圧酸素治療は血中炎症細胞を抑制し,損傷骨格筋にマクロファージを誘導し,
細胞増殖と筋再生を促進する」
演者:小柳津卓哉(東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究所 整形外科学分野/
東京医科歯科大学医学部附属病院 高気圧治療部)
5-2 「ラット頭蓋骨欠損モデルを用いた膜性骨欠損治癒に対する高気圧酸素治療の
促進効果について」
演者:林 海里(東京医科歯科大学大学院 医歯学総合研究科
スポーツ医歯学分野)
5-3 「高圧ヘリウム・酸素混合ガス環境が事象関連電位(P300)
に及ぼす影響」
演者:小沢 浩二(海上自衛隊 潜水医学実験隊)
6.12月4日(日) 9:30 ∼10:30 第二会場(橘桜会館 2F 橘桜ホール)
― 教育・環境・管理 ―
座長:宇都宮精治郎(国家公務員共済組合連合会 新別府病院 臨床工学室)
中島 正一(社会医療法人雪の聖母会 聖マリア病院 臨床工学室)
6-1 「高気圧酸素治療での快適な環境づくりを目指して」
演者:伊藤 達也(刈谷豊田総合病院 臨床工学科)
6-2 「高気圧酸素治療室におけるJCI取得後の外国人患者受け入れ状況」
演者:向畑 恭子(医療法人沖縄徳洲会 南部徳洲会病院)
6-3 「高気圧酸素治療における看護の役割」
演者:松田健太郎(医療法人財団樹徳会 上ヶ原病院 看護部)
6-4 「高気圧酸素治療の学生教育における現状と課題」
演者:佐々木 健(横浜労災病院 臨床工学部)
6-5 「第2種高気圧酸素治療装置の更新を経験して」
演者:門馬 陽平(東海大学医学部付属病院 臨床工学技術科)
6-6 「第1種高気圧酸素治療装置における感染管理」
演者:後藤陽次朗(社会医療法人共愛会 戸畑共立病院 臨床工学科)
7.12月4日(日) 10:30 ∼11:20 第二会場(橘桜会館 2F 橘桜ホール)
― CO中毒・ガス塞栓症 ―
座長:小池祥一郎(国立病院機構まつもと医療センター松本病院)
山田実貴人(社会医療法人厚生会 木沢記念病院 救急部門)
7-1 「当院におけるCO中毒に対するHBO施行の現状と問題点∼遷延型一酸化炭素
中毒のリスクの検討∼」
演者:若井慎二郎(東海大学 医学部 外科学系救命救急医学)
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日本高気圧環境・潜水医学会雑誌
Vol.51 Supplement, Sep, 2016
7-2 「縦隔気腫によりHBOが早期開始できなかった重度一酸化炭素中毒の経験」
演者:西山 和芳(JA愛知厚生連豊田厚生病院 臨床工学技術科)
7-3 「ヘリウムガス自殺に対する高気圧酸素治療の実際」
演者:土居 浩(東京都保健医療公社 荏原病院 脳神経外科)
7-4 「誘因不明の動脈ガス塞栓症の一例」
演者:清水 徹郎(南部徳洲会病院 高気圧治療部)
7-5 「第1種装置で応急治療後,翌日搬送して第2種装置の標準治療にて良好な予後が
得られた動脈ガス塞栓症の一例」
演者:鈴木 信哉(亀田総合病院 救命救急科)
8.12月4日(日) 11:20 ∼12:30 第二会場(橘桜会館 2F 橘桜ホール)
― 潜水関連 ―
座長:野澤 徹(NPO法人アンダーウォータースキルアップアカデミー,水中科学研究所)
望月 徹(東京慈恵会医科大学環境保健医学講座,株式会社潜水技術センター)
8-1 「Guidelines for Prehospital Management of Diving Injuries 作 成 の た め の
International Divers Alert Network(IDAN)の取り組み」
演者:小島 泰史((一財)日本海洋レジャー安全・振興協会(DAN JAPAN),
東京医科歯科大学医学部附属病院 高気圧治療部)
8-2 「沼津市にあるダイブサイトでの事故の傾向について」
演者:野澤 徹(NPO法人アンダーウォータースキルアップアカデミー,
水中科学研究所)
8-3 「高所ダム湖における大深度潜水作業」
演者:望月 徹(東京慈恵会医科大学環境保健医学講座,
株式会社潜水技術センター)
8-4 「商業飽和潜水における潜水士の安全と健康−エクスカーションと減圧−」
演者:密本 尚寛(アジア海洋㈱)
8-5 「水中酸素減圧が可能なマスクの開発」
演者:錦織 秀治((有)
中国ダイビング 潜水技術研究部)
8-6 「シミュレーション飽和潜水時における筋力発揮感覚に対する,一側肢への筋力
提示の効果」
演者:岩川 孝志(海上自衛隊 潜水医学実験隊)
8-7 「潜水後に浸漬性肺水腫が疑われ,経過から肺型減圧障害を併発していたと
考えた一例」
演者:森島 亮(亀田総合病院 呼吸器内科)
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招請講演
特別講演
教育講演
エビデンスレポート
Annual review
シンポジウム
パネルディスカッション
ワークショップ
日本高気圧環境・潜水医学会雑誌
Vol.51 Supplement, Sep, 2016
招請講演
安全・安心な医療と医療事故調査制度
特別講演1
高気圧酸素治療の生物学的効果と安全性
有賀 徹
四ノ宮成祥
日本臨床高気圧酸素・潜水医学会 代表理事
日本臨床高気圧酸素・潜水医学会 副代表理事
独立行政法人 労働者健康安全機構 理事長
防衛医科大学校 防衛医学研究センター/
分子生体制御学講座
一昨年の医療法改正に伴い,昨年10月から新たな
医療事故調査制度が開始された。そこでは,患者が
死亡したアクシデント事例について,管理者が”医療
に起因し,それを予期しなかった”と判断すれば,管
理者にはその事故について第三者機関に報告し院内
で事故調査を進めるなどの一連の作業が課せられ
た。具体的には,病院などの医療施設で,報告の対
象となる死亡事例に遭遇すれば,日本医療安全調査
機構に報告し院内調査を開始する。都道府県医師会
や,各種の学術団体,病院団体などは,その際に病
院などに課せられる諸作業を支援するための支援団
体となっている。東京都医師会においてはそれらの
団体を東京都医療事故等支援団体連絡協議会として
束ね,その下に組織された運営委員会を中心にして,
電話による各種(よろず)相談に応じると同時に,死
後画像と病理解剖についての支援も行っている。筆
者も上記運営委員会委員長として各種の相談に応じ
たり,院内調査や報告書作成について支援したりす
る役割を担っている。そして,筆者はまた,本年3月
まで病院管理者(病院 長)をしていたことから,昨
年10月以降に院内で生じたアクシデント(死亡事例)
について報告対象となるかどうかを検討した経験もあ
る。確かに今回の新たな制度は,法改正に伴う大き
な制度設計であることに違いないが,今までも粛々と
遂行してきた,院内におけるアクシデントやインシデン
トについての対応に加えて,病院長に大きな責任が
課せられたと理解することができる。病院職員にとっ
ては,今まで通り淡々と職務を遂行しつつ,院長によ
る判断を組織的に支援する仕組みについて強化すな
どが求められよう。法の趣旨は医療事故の再発防止
などを通じて,医療安全を強化し,医療の質向上を
図ることであるが,法曹の立場からは,本制度をこの
目的ではなく,自らの都合に合わせる向きもないとは
言えない。従って,本制度についての課題はまず,正
しく法に則った事例について整然と報告することと,
法の目的に沿った報告書を作成することとがポイント
であろう。これらにはそれなりの熟練が求められると
思われるが,このことについて支援団体(上記委員会
など)がよい助言を与え得る。安全・安心な医療を展
開すべく病院での経験を経て,また支援団体の活動
を通じて本制度に関する課題などについて論考する。
28
高気圧酸素治療(HBOT)は,溶解型酸素を増加
させて創傷治癒や血管新生を促進する。しかし,そ
の作用は単に組織酸素化による細胞生存の改善に留
まらず,酸素ストレスにより生じる活性酸素の多彩な
役割が関わっている。
研究当初我々は,海上自衛隊潜水医学実験隊の
プロジェクトとして深海飽和潜水の医学的諸問題に
取り組んでおり,高圧潜水ストレスが生体に及ぼす作
用を観察していた。その中で,高圧ストレスが免疫
系の細胞変化,特にCD4 + T細胞サブセットの減少を
引き起こすことを発見した。さらに,潜水ストレスが
Hsp72/73やHsp27などの熱ショック蛋白応答に関わ
っていることを見出した。そして,この熱ショック蛋
白応答の強さに関わる因子が潜水深度ではなく潜水
期間であったことから,潜水時に長時間吸入する高
分圧酸素がその主因だと考えた。実際,
の実
験で活性酸素により末梢血リンパ球に熱ショック蛋白
応答が誘導されることが分かった。熱ショック蛋白応
答は虚血再灌流傷害モデルにおける神経細胞保護と
密接に関わっており,最近になってHBOTによる酸素
ストレスがこの応答に働くことが分かってきた。
HBOTによる酸素ストレスは炎症部位における細胞
間接着分子の発現に関わっており,過度の酸素ストレ
スは組織傷害を惹起する。一方,適度の酸素ストレ
スは一酸化窒素(NO)産生を介して白血球の接着を
抑制し炎症を終息に向かわせる。また,NOが血管内
皮細胞のもとになる幹細胞をrecruitすることも分かっ
てきた。
HBOTはこのような組織修復の面ばかりでなく,腫
瘍組織内の酸素濃度を上昇させ放射線治療における
酸素増感効果にも役立つと考えられる。酸素増感を
模擬した
モデルにより,放射線増感効果が腫
瘍細胞にアポトーシスを誘導すること,また,酸素ス
トレス除去や細胞周期進行に関わる遺伝子発現が細
胞内で起きていることが分かった。
一酸化炭素(CO)中毒はHBOTの救急的適応疾患
と考えられているが,単なる組織の酸素化だけでなく
COそのものの除去が神経細胞障害の予防に重要で
あると考えている。このような仮説に対し,酸素存在
下でCO曝露した神経細胞の細胞内シグナル分子機
構についても紹介したい。
併 せて, 種 々の 事 故 事 例 や 研 究 結 果をもとに
HBOTに伴うリスクについて考え,安全なHBOT施行
のために重要な要素は何かについても論じてみたい。
第 51 回日本高気圧環境・潜水医学会学術総会
特別講演2
東京オリンピック・パラリンピックに向けた
アンチ・ドーピング活動
教育講演1
HBOによる骨癒合促進作用
井上 治
江洲整形外科クリニック 院長
鈴木秀典
日本医科大学大学院 医学研究科薬理学分野
琉球大学医学部附属病院 高気圧治療部
大学院教授
HBOは,膠原線 維の増生や血管新生を促 進し,
リオデジャネイロで開催されたオリンピック・パラリ
ンピック大会が終わり,いよいよ東京大会に向けて,
アスリートが最高のパフォーマンスを発揮できるように
様々な領域において準備が本格化している。その一
環として,クリーンな大会を支えるアンチ・ドーピング
活動も体制の整備と拡充が進められている。現在,
アンチ・ドーピング活動はスポーツ界と政府機関によ
って設立された世界アンチ・ドーピング機構(WADA)
を中心に,世界共通の規程の下にドーピング検査,
アンチ・ドーピング教育・啓発活動が行われている。
国内では日本アンチ・ドーピング機構(JADA)がその
活動を担っている。
ドーピングに使用される物質は多様化しているが,
禁止される薬や方法は,WADAが定める「禁止表国際
基準」に規定されており,毎年少なくとも1回公表され
る。禁止される物質の多くは医療用医薬品として通常
の治療に用いられているため,医療関係者はどのよう
な薬や方法が禁止されるかを知る必要がある。薬物
ドーピングの主な目的として,持久系種目における酸
素運搬能増加,パワー系種目における筋力増強,競
技会時の精神的昂揚がある。酸素運搬能増加におい
ては腎性貧血治療に用いられるエリスロポエチン受容
体作働薬をはじめとする赤血球増多効果を有する薬
の不正使用が問題となっている。これらの使用を検
出するために,従来の尿を用いた検査だけではなく,
血液から得られる複数の検査値を長期間に亘って個
人毎に追跡し,その値の変動を調べる新手法も導入
されている。筋力増強については,以前から用いられ
ている蛋白同化ステロイドの他に,成長ホルモンおよ
びその放出因子が新たに濫用されている。
一方で,禁止されている薬や方法を治療上必要と
するアスリートもいる。この場合には,
「治療使用特例
に関する国際基準」が定められており,適切な治療に
よってアスリートの健康を守る仕組みがある。
日本ではここ数年,年間5−9件程度のアンチ・ド
ーピング規則違反事例がみられているが,禁止物質
に関する知識不足と思われる例も複数含まれている。
東京オリンピック・パラリンピック大会の公平・公正性
を支えるために,幅広い領域に亘る医療関係者のア
ンチ・ドーピング活動への協力が不可欠である。
類骨や新生骨の形成を促すことが基礎研究で明らか
にされている。一方,骨折や骨切り術では骨膜が温
存され血行の途絶はないが,骨移植では血行が遮断
された遊離状態になる。また骨の欠損部には補填材
料が使用されることもあり,仮骨延長では延長速度
に応じた骨形成が必要となるなど,骨形成に及ぼす
HBOの効果は修飾される。HBOの骨形成促進作用
に関する臨床報告は極めて少ないが,臨床における
様々な骨形成パターンを用いた動物実験が行われて
いる。高気圧酸素療法(hyperbaric oxygen therapy;
HBO)は,骨折,骨接合, 骨移植,仮骨延長などの
動物実験モデルにおいて,X線像,骨密度,骨塩量
などの解析からHBOは骨量を増加させ,また骨の破
断試験から骨強度を上げ,骨形態計測から類骨形
成や石灰化速度を亢進させることが明らかにされてい
る。一方,臨床では,骨折の多様性や治療法の違い
などからHBOの有効性を示すことは難しいが,仮骨
延長法や骨移植などでHBOの有効性が報告されてい
る。一方,遷延性骨癒合などに対し電磁波や超音波
による保険診療が行われているが,HBOは骨形成を
初期の段階から促進し,創傷治癒を妨げる血行障害
や感染にも治療効果があることから難治性骨折など
の切り札として保険適応が期待される。
29
日本高気圧環境・潜水医学会雑誌
教育講演2
救急医療におけるHBOTの意義と将来
エビデンスレポート
その他の疾患
増野智彦
合志清隆
日本医科大学付属病院 高度救命救急センター
琉球大学病院
救急医療における高気圧酸素療法(HBOT)の対
国際的にみた高気圧酸素治療の適応疾患は,臨
象となる疾患は,急性一酸化炭素中毒,空気塞栓,
床試験を中心とした科学的根拠に基づき決められて
減圧症,ガス壊疽や骨髄炎などの重症感染症,難治
いる。本学会の適応疾患は国際基準に準拠したもの
性潰瘍等であるが,HBOT治療のエビデンスが十分に
であるが,厚生労働省の保険診療の基準と若干の差
確立されておらず治療方針の標準化が図られていな
がみられている。この差異を埋め合わせ適正な保険
いこと等の理由により,救急疾患に対するHBOT施
診療を行なう必要があり,その一環として他の委員会
行が広く普及しているとは言えない状況である。一方,
と連携しながら学術委員会にて科学的根拠を明確に
頭部外傷や,Preconditioning等の領域にてHBOTの
することを目的に「エビデンスレポート」の作成を進め
有効性に関する新たな基礎的・臨床的報告が散見さ
ている。
れており,今後新たな救急適応疾患の拡大につなが
る可能性も感じられる。
臨床試験を基盤として科学的根拠を国際的に発信
することの重要性はいうまでもなく,わが国で急性一
HBOTを積極的かつ迅速に導入することにより生
酸化炭素中毒を対象として臨床試験が計画ないし実
命・神経学的予後を改善できる症例は少なくない。一
施されている。さらに,新たな治療結果を国際的に
方,患者が呼吸や循環補助を必要とする重症な症例
影響力のある機関に示すことも必要と考えている。そ
であった場合,HBOTの効果が期待できるとしても,
の一例として,わが国で行われた超急性期の脳梗塞
チャンバー内で使用できる器機の制限や施行に伴うリ
を対象とした臨床試験の結果をCochrane Libraryの
スク等から積極的な導入に躊躇することも多い。特に
担当者に送り,脳卒中の病態を含めた議論したこと
第一種装置では重症患者のHBOT施行はほぼ困難で
も影響して,この疾患に対する高気圧酸素治療の有
ある。第二種装置では呼吸・循環管理や急変時対応
効性の評価が変更されている(Bennett MH. 2005,
のための医師付き添いが可能であり,ある程度の重
2014)。
症急性期患者の治療が可能であるが,第二種装置を
学術総会では,減圧障害を除いた疾患での高気圧
持つ施設が全国的に限られていること,多くのマンパ
酸素治療の科学的根拠(エビデンス)を紹介する予定
ワーを必要とすること,第二種装置内であっても使用
である。
できる医療機器に多くの制限があることなどが,急性
期救急症例に対するHBOTの普及を妨げる原因にな
っていると考えられる。
今回,救急疾患に対する現在のHBOTの位置づけ
および重症患者を含む救急患者に対するHBOTの展
望につき,文献的考察を含め報告する。
30
Vol.51 Supplement, Sep, 2016
第 51 回日本高気圧環境・潜水医学会学術総会
エビデンスレポート
潜水関係
Annual review
高気圧酸素療法HBOTの効果(臨床編)
堂本英治
和田孝次郎
(財)
神奈川県警友会 けいゆう病院病理診断科
減圧症(以下,DCS),動脈ガス塞栓症の両者を含
む減圧障害(以下,DCI)を対象として,現時点におけ
る臨床及び研究面での知識の集積を企図するもので
ある。
臨床面では,本学会誌上において,2015年「高気
圧酸素治療(以下,HBO2)エビデンスレポート」が開
始され,その中で小島は,
「減 圧症(decompression
sickness)
」について報告している。これはDCSに関
わる各論点を網羅した論文で,当時のエビデンスの
優れた集約結果である。同論文以降,本報告まで
の間に,①DCSに対する治療遅延の許容範囲,②
Patent Foramen Ovale(以下,PFO)
とDCIとの関連,
③Cutis Marmorata(以下,CM)とDCIの関連等につ
いて,興味ある報告がなされている。研究面では,
④血液中のmicroparticles(以下,MP)とDCSとの関
連,⑤血中トランスサイレチン(以下,TTR)がDCSの
バイオマーカーとなり得る可能性について報告がなさ
れている。
① 治療遅延の許容範囲については,Hadannyらは,
48時 間 以 上の 遅 延 はDCIの 予後に 有 意な 影
響はなく,米海 軍テーブル 6と 2ATA,90分の
HBO2の両者間にも,予後に関する有意差はな
いとしている。同時に1964年以降の同検討に関
する論文12編をreviewし,僅かに 2つの報告で
早期治療の有用性が指摘されていると報告して
いる。Leeらは,HBO2の遅延はI型DCSの最終
的な症状遺残には影響がないことを,小島らは,
軽症DCSに関しては 1週間を越える待期治療が
許容される可能性があることを報告している。
② PFOとDCIの 関 係 に つ いては,2015 年Diving
and Hyperbaric Medicine誌に特集が組まれてい
る。PFOのあるダイバーでは重症DCIを生じやす
く,治療に長期間を要すること,PFOのサイズに
よってDCI発症のリスクが異なること等を報告し
ている。併せて,南太平洋潜水医学会
(SPUMS)
と英国スポーツ潜水医学委員会(UKSDMC)の
共同声明とGermonpreによるEditorialを掲載し
ている。
③ CMとDCIの 関 連 については,Germonpreらと
Kemperらが,それぞれ独立して,CMが単なるI
型DCSではなく,中枢神経系DCSの一表現型
であるとの仮説を提唱している。
④ Thomらは,減圧に伴って増加する0.1-1.0μmの
血中MPが,SCUBA潜水後に上昇し,好中球の
活性化と関連することを,初めて人を対象とした
研究で証明している。
⑤ Lautridouらは,ラットのDCSモデルを用いて,
非DCS群とDCS群を比較し,DCS群ではTTR
が著減することを,proteomics手法を用いて証明
しており,今後,
DCSのバイオマーカーとなりうる
可能性を提唱している。
以上,主として直近2年の潜水関係の論文を集約
して,提示させていただきたい。
防衛医科大学校 脳神経外科
HBOTは様々な臨床応用がなされており,新たな治
療適応の拡大も見受けられる。その中で,頭部外傷
後症候群に対する効果やスポーツ外傷に対する効果
についての報告が目立ってきている。肯定的なレポー
トばかりでなく,否定的なものもあり,今後議論がさ
らに増していくものと考える。一方,従来から適応と
されている糖尿病壊疽への効果,放射線治療後壊死
の予防効果,放射線治療後合併した機能障害に対す
る効果,についてのRCT論文が散見される。その中
で糖尿病壊疽に伴う肢切断に対するHBOT予防効果
や放射線治療後の慢性腸機能障害に対するHBOT
改善効果にたいして否定的な論文が提出されており,
治療現場からの反響を集めている。他方,Cochrane
reviewでは症例数が十分でないとの注釈付きではあ
るが,遅発性放射線障害にたいする予防効果や,糖
尿病壊疽にたいする皮膚保護効果について好意的な
表現での記述となっており,さらにこの分野での議論
が進むものと考えられる。他には,一酸化中毒に対
するヨーロッパでの治療状況の報告がなされている。
HBOTの適応基準が明確でなく治療プロトコールもバ
ラバラな状況であるとの報告であり,治療現場が混乱
している状況が伺える。米国の施設状況についての
報告もなされており,緊急でHBOTが行える施設が少
なくなっていることに警鐘を鳴らしている。
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日本高気圧環境・潜水医学会雑誌
Annual review
Annual review 2015-2016:
基礎編 − HBOT・潜水医学
Vol.51 Supplement, Sep, 2016
シンポジウム1
透析症例の救肢戦略 SWAT∼ HBOの使命
松井 傑
(医)桑園中央病院 救肢・創傷治療センター
伊古美文隆
防衛医科大学校 防衛医学研究センター
4月からの診療報酬改正で人工透析患者の下肢末
2015 ∼2016年に発 表された学術論文を,Diving,
Hy perbaric Oxygen therapy, decompression,
physiology, underwater blastをキーワードとし,これ
らを単独もしくは組み合わせてPubMed上で渉 猟し
た。恣意的ではあるが,これら文献の中から,学術
的に興味深いもの及び実用的な観点から重要性の高
いと思われるものを選択して紹介したい。
内容は多岐にわたるので,以下のとおり5つに分類
整理した。1.潜水生理,2.減圧症,3.高気圧酸
素治療・ガス生物学,4.水中爆傷,5.その他(疾病,
飽和潜水など)。
最初の,潜水生理では,素潜りにおける反射につ
いての検討,舌咽頭吸入法の循環動態への影 響,
圧自体による白血球機能の変化などが報告されてい
る。比較生理学的な観点からは,ペンギンの肺と気
嚢の潜水における役割,クジラ呼吸機能,クジラに
おける血液の対向流による熱交換機構,アザラシ肺
胞表面活性物質の解析などがあった。
2番目の減圧症においては,減圧症の診断もしくは
重症度判定を視野に入れた指標物質の検索,気泡
の形成と一酸化窒素の関係,減圧症に対する抗血小
板薬の効果などの報告があった。指標物質としては,
血漿中の蛋白であるトランスサイレチンやマイクロパー
ティクルと呼ばれる小胞が挙げられている。
3番目の高気圧酸素治療・ガス生物学に関しては,
高気圧酸素と血糖値の関係,一酸化炭素中毒に対す
る光治療の可能性,反復する高気圧酸素曝露による
脳外傷後のアストロサイトーシス軽減などが報告され
ていた。さらに,希ガス・メタン・水素といった生体内
で比較的安定とされてきたガスの生理作用及び治療
応用への可能性についての報告が散見された。
4番目の水中爆傷に関する文献には,浅海面に敷
設された地雷の効果,過去の症例から水中爆発の
腹部臓器や肺損傷に対する特性の解析などが見られ
た。
5番目のその他には,中国における 480 m 飽和潜
水,浸水性肺水腫の病態とシルデナフィルの有効性
に関する検討,素潜りによる動脈ガス塞栓症の症例
などがあった。
以上の事項について,事実の羅列のみに留まるこ
となく,研究の背景や今後の潜水医学に対する意義
という見地から,最新の知見を提供できれば幸いで
ある。
32
梢動脈疾患重症化予防の評価への加算が新設され
た。虚血肢救済の扉がやっと開いた感がある。
2011年11月に発足した当院下肢救済チームは 2012
年7月には第1種高気圧酸素治療装置を導入し2014年
8月には救肢・創傷治癒センターに発展し透析症例の
救肢に立ち向かっている。
北 海 道大 学医学部 形成 外科,市立札 幌 病院 形
成外科 循環器内科と救肢連携HSS-Lineを構築し
SWAT*を武器に救肢の最後の砦として活動を続けて
いる。SWATの中でHBOは重要な役割を持つ。
動脈硬化,石灰化を伴っている透析症例の難治創
の背景には炎症性サイトカインの存在がありサイトカイ
ン=MIA症候群との戦いにHBOを欠くことはできず,
有効で是非試みるべき治療法である。
血管の状況から,もはや血管形成術の適応のない
症例であっても救肢は可能であった。
またPADの 一 病 変としての下肢 虚 血, そして引
き続いて起こり得る心血管イベント予防を考えると
HBOは生命予後の鍵と言えるかもしれない。しかし
HBO単独で治癒させることは不可能で,創傷を治
癒に導く適切な血液浄 化(溢水の除去,透析膜の
選定,LDL-A)
,形成外科,循環器内科,血管外科
との連携,腎臓リハビリーテーション,Maintenance
debridementなど学際的協力が必要である。
救 肢の最 終兵器HBOとSWATについて報告した
い。
SWAT*:Strategical Wound care and Advanced
Technique 戦略的創傷治療術
第 51 回日本高気圧環境・潜水医学会学術総会
シンポジウム1
高気圧酸素治療時の末梢動脈疾患の組織
酸素化について
シンポジウム1
2型糖尿病における第二種高気圧酸素療法
の役割:重症下肢虚血での検討
川口達也2) 徳森美佳1) 乗松由香1)
桐木園子 高木 元 久保田芳明 太良修平
1)
1)
東 浩司 長野準也 楠 勝介
2)
宮本正章 清水 渉
1) 済生会松山病院 ME部
2) 済生会松山病院 脳神経外科
日本医科大学付属病院 循環器内科
【目的】動脈硬化は生物が避けて通れない加齢現象で
【 目的 】高 気 圧 酸 素 治 療( 以 下HBO)前 後で 末 梢
動 脈 疾 患に対して下 肢の 組 織 酸 素 飽 和 度Tissue
Oxygenation Index(以下TOI)を測定し,その変化お
よび推移を検討したので報告する。
【方法】
TOIの測定には赤外線組織酸素モニタNIRO200NX(浜松ホトニクス社製)を使用し,両下肢に 2
ヶ所のプローブを貼付してHBO前後のTOI変化率を
あるが,心臓から最も遠い臓器である下肢閉塞性動
脈硬化症(ASO)においての血行再建術は煩雑であり
下肢生存率は低率である。更に 2型糖尿病(DM)は
動脈硬化を促進させる病態と考えられ,ASOとDMを
併存した病態ではその予後も他の疾患に比べ乏しい
状況である。我々は重症下肢虚血患者に対してバイ
算出した。HBO装置はBARA-MED(ETC社 製)を
パス術,カテーテル治療および血管再生治療を行い,
使用した。
その周術期における付加的な高気圧酸素療法の臨床
【症例1】65歳男性。糖尿病,高血圧のある閉塞性動
効果を検証した。
【方法】日本医科大学において加療
脈硬化症(以下ASO)
,左足趾壊疽により入院した。
を行った下肢潰瘍もしくは安静時疼痛のあるASO連
2.3ATA/60分/空気加圧でHBO開始したが,左足趾
続73例を登録。血行再建術不可能な症例を含め第二
切断術を施行し53回で治療終了した。
種高気圧酸素療法(HBO)
を行った患者と行わなかっ
【症例2】
65歳男性。糖尿病のあるASO。左右第5趾
た群に分け後ろ向きに予後調査を行った。主要評価
の黒色 壊死にて 2.0ATA/60分/酸 素加圧でHBO開
項目は下肢切断率と生命予後としDMの有無で層別
始した。両第5趾切断術を施行し,その後空気加圧
解析した。
【結果】平均69±9歳,
ABI0.63±0.3,糖尿
/2.3ATAとしたが,左第1,2,4趾・右第5趾切断術施行
病既往57例(78%)において,平均追跡期間4.9±0.7
し2.5ATAとした。43回で治療終了した。
年の下肢生存率は 64.3%,生存率は 49.3%と低率で
【症例3】
77歳女性。慢性糸球体腎炎にて維持透析
中。ABI低値にて下肢動脈エコーを行いASOと診断
され,循環器内科で血管内治療(以下EVT)を施行
した。EVT前後でHBOを行いTOIの変化を測定した。
2.0ATA/60分/酸素加圧でHBOを開始し,その後8
回空気加圧とした。
【結果】いずれの症例もHBO前後で各測定部位のTOI
は有意に上昇した(p<0.05)。治療回数を重ねたTOI
の推移は症例1でHBO前は低下したがHBO後は変化
あった。一方HBOの有無で層別解析を行うと,HBO
群においては有意に下肢切断が回避され(p=0.002,
Log-Rank Test)
生命予後も保たれた(p=0.046)。更
に下肢切断と死亡を複合評価項目とすると有意差が
最大であった(p<0.001, Log-Rank Test)。同様の傾
向はDM患者においても認められた(p=0.002, LogRank Test)。多変量解析では血液透析症例が独立
予後規定因子であった(p=0.02比例ハザード分析)。
なかった。症例2はHBO前後ともTOIは低下した。症
【結 論】CLI症例におけるHBOの有用性が認められ
例3はEVT前後で病 変 部のHBO前TOIは低下した
た。これはDM患者においても同様であったが,一方
が,TOI変化率が著明に増加した。
透析症例へのアプローチの重要性が明らかになった。
【結語】赤外線組織酸素モニタを用いてHBO時の下肢
組織酸素化が確認できた。TOIの推移によりTOIの
積極的な血行再建とHBO加療による予後改善が望ま
れる。
推移が異なっていた。EVTによりHBO後の虚血部の
酸素化が改善していた。
33
日本高気圧環境・潜水医学会雑誌
Vol.51 Supplement, Sep, 2016
シンポジウム1
高気圧酸素療法による透析患者虚血肢皮膚
灌流圧の変化
シンポジウム1
2000年以後の当院での高気圧酸素治療を
行った骨髄炎の治療成績
村尾尚規 前田 拓 山本有平
田村裕昭 川嶌眞之 川嶌眞人 永芳郁文
北海道大学 医学部 形成外科
高尾勝浩 山口 喬 宮田健司
社会医療法人玄真堂 川嶌整形外科病院
近年,形成外科では,
「きれいに傷を治すこと」に
加え「治りにくい傷を治すこと」が重要なテーマとなっ
当院では1981年の開院以来,約740例の骨髄炎症
ている。高齢化社会,生活習慣病患者の増加によっ
例に対して高気圧酸素治療
(以下HBO)
を行ってきた。
て,下肢の糖尿病性潰瘍,虚血性潰瘍などの症例が
治療方針は,HBO,抗生剤の経口・点滴投与,創傷
増えている。血流が低下し,創傷治癒機構の破綻し
処置などの保存的治療を行い,難治症例に対しては
たこれらの創傷は治療に難渋し,時に下肢の切断を
余儀無くされる。透析患者の下肢潰瘍は糖尿病性か
つ虚血性であることが多いが,全身状態や血管の状
1週間ないし2週間の局所持続洗浄療法を検討する。
HBOは第2種装置にて2.0ATA,60分間での治療を1
日1回行っている。これまでの 35年間,基本的な治
療方針は変わらずに行っているものの,抗菌薬や創
態が悪いため血行再建が不可能なことや,切断術す
処置材料などの進歩,細菌の薬剤耐性の変化などに
ら適応が難しいことがある。我々は関連施設,透析
より,治療効果の単純な比較は難しいため2000年以
施設で医療ネットワークを構築し,透析患者の下肢救
降の症例を対象に治療成績を顧みた。
済に取り組んでいる。特に血行再建不能例・不応例
2000年1月から2016年9月までの症例数は 383例で
には積極的に高気 圧酸素療法(hyperbaric oxygen
あり,発症原因の内訳は外傷性(外傷後,手術,褥
therapy: HBOT)
を適応してきた。
2012年7月∼2015年3月までにHBOTを適応した透
析患者下肢虚血性潰瘍24例43肢について,皮膚灌
流圧(skin perfusion pressure: SPP)の変化を検討
した。治療終了後のSPPが 5 mmHg以上上昇したの
は11肢
(25%)
,5 mmHg以上低下したのは17肢
(40%)
創,皮膚潰瘍,抜歯後,放射線照射)297例(77.5%)
,
血行 性 例63例(16.4%)
, 薬 剤 性1例(0.3%), 不 明
22例(5.7%)であった。症状の改善で一旦治療を終
了したものの数年後に再燃で再治療を要したものは
その都度治療評価を行った。また,十分な治療が行
えないまま治療を断念した74症例は評価の対象外と
した。したがって評価対象症例数は 371例であった。
であった。HBOT開始時の年齢が低い方がHBOT終
371例中,局所持続洗浄療法を併用したものは101例
了後にSPPが上昇する傾向があり,年齢が高い方が
(27.2%)
,局所持続洗浄を併用しなかったものは 270
HBOT終了後もSPPが低下する傾向があった。LDL-
例(72.8%)であった。治療終了時に治療効果の判定
アフェレーシスを併用した方が,SPPは低下しにくいと
として,症状に重きをおいた基準によって,良:症状
考えられた。また,HBOT適応後もSPPが低下する場
の消失・ほとんど消失,可:症状の改善が見られる,
合,生命予後が悪かった。
不可:不変・悪化,の3段階で評価した。局所持続洗
我々の施設ではHBOTを単なる補助療法ではなく,
積極的な治療戦略の一つと捉えている。透析患者に
対しては,医療ネットワークの構築,HBOTの積極的
適応に加え,血管新生を促進するその他の治療を症
例,創傷によっていかに効率的に適応するかを今後
の課題としている。
浄の併用の有無別での成績は,局所持続洗浄未実
施群では良:209例(77.4%)
,可:40例(14.8%),不
可:21例(7.8%)であり,局所持続洗浄併用群では良:
80例(79.2%)
,可:17例(16.8%),不可:4例(4.0%)
であった。
来院時の重症度は一様でなく,重症例やHBO無
効例であれば持続洗浄に至ることが多い。したがっ
て,治療法別の治療成績を一概に比較することは難
しいが,2000年以後の当院での治療成績について検
討を加え報告する。
34
第 51 回日本高気圧環境・潜水医学会学術総会
シンポジウム1
末梢動脈疾患に対して高気 圧酸素治療と
デキストラン硫酸LDL吸着療法を含む集学
的治療が有用であった一例
シンポジウム 2
高気圧酸素治療装置への医療機器の持込み
に関する技術部会の取り組み
∼これまでの経緯∼
宮本聡子1) 大久保 淳1) 前田卓馬1)
石川勝清1) 小森恵子2) 春田良雄3)
山本素希1) 後藤啓吾1) 倉島直樹1)
小柳津卓哉2) 榎本光裕2) 小島泰史2)
柳下和慶2)
1) 東京医科歯科大学医学部附属病院 MEセンター
2) 東京医科歯科大学医学部附属病院 高気圧治療部
【はじめに】透析患者は健常者に比べて末梢動脈疾患
(PAD)の有病率が高く,さらに糖尿病患者ではPAD
のリスクは高く,HbA1cが1%増加するごとにPADのリ
スクは 26%増加するとの報告もある。そのうち約半
数は無症状とされるが,生命予後およびQOLの規定
因子として大きな影響を及ぼすため,適切な治療を行
うことが重要である。治療としては血行再建術や血管
内治療が多く施行されているが,潰瘍や壊死等の組
織欠損を伴う症例では感染を併発しやすく集学的な
創傷管理が求められる。
【 目的】末 梢 動脈 疾 患に対して, 高気 圧 酸 素 治 療
(HBO2)とデキストラン硫酸LDL吸着療法(DSAL)
を含む集学的治療が有用であった一例を経験したの
で報告する。
【症例・経過】65歳男性。199X年良性腎硬化症にて
腹膜透析導入し,200X年血液透析(HD)
へ移行した。
201X年1月左足背部の色調不良,浮腫を認め徐々に
増悪,Fontaine分類Ⅳ度にて下腿切断術の必要性を
指摘され当院形成外科へ入院となった。第1病日に足
背部の切開,排膿,デブリードメント施行し第2病日
にPTA(前脛骨動脈,腓骨動脈)
を施行した。さらに
第19病日,第68病日,第133病日にも同部位にPTA
を施行した。下腿切断が必要と判断されたが患者本
人が拒否をしたため,患肢の血流改善目的に第15病
日よりHDと直列にDSALを開始した。DSALは10回
を1クールとし入院中に2クール施行した。さらに第21
病日よりHBO2を開始した。HBO2 は第2種高気圧酸
素治療装置(中村鐵工所社製)を用いて,治療圧力
0.15Mpa,60分間の酸素吸入を1治療とし,第21病日
から第211病日まで週2∼3回ペースに計64回施行し
た。第29病日から3日間マゴット治療,第64病日から
3日間VAC療法を併用した。治療経過とともに徐々に
創傷部位が改善傾向となり,第212病日に軽快退院
となった。
【結語】
HBO2とDSALを含む集学的治療がPADの寛
解に寄与したと思われる。
1) 北海道大学病院 医療技術部 ME機器管理部門
2) 東海大学医学部付属病院 臨床工学技術科
3) 公立胸生病院
【経緯】
第47回学術総会に於いて,高気圧酸素治療室内
及び装置内への医療機器の持込みと使用に対して
「学
会として実際の臨床に使用できる指針を出す事」との
問題提起がなされ,第48回学術総会では「高気圧酸
素治療装置内で使用可能な機器・器材」のタイトルで
シンポジウムが企画され,技術部会の「医療機器安
全管理及び事故対策委員会」も事業として現状の把
握を目的としたアンケート調査を実施し調査結果を報
告した。アンケートは全国611施設へ郵送によって行
い,回収率は 47.4%であった。装置内持込物使用状
況の設問では現在使用中と回答のあった医療機器で
は輸液ポンプ 15施設・シリンジポンプ 14施設・人工呼
吸器14施設で使用されていることが確認できた。又,
持込まない施設,持込みをやめた施設の代表的な回
答は「メーカーの添付文書」
,
「学会の安全基準」であ
ったが,一方では本学会や安全協会によって安全性
が確認されれば,医療機器を持込み使用したいと回
答した施設も多くみられた。
第49回学術総会においては,前回アンケート調査
の結果を踏まえて調査内容をもう一歩踏み込み,機
器持込の変化,高気圧酸素治療で必要な医療機器,
使用しない理由等の詳細な部分についてアンケートを
行った。アンケート回収方法は 600施設へ 調査協力
を依頼し,回収方法はインターネットWebサイトによっ
て行い回収率は 36.3%であった。アンケート結果は
「高
気圧酸素治療と医療機器の安全性 ∼現状と問題
点∼ 」のタイトルでワークショップにて発表された。
2回のアンケート調査を通じて,重症患者の安全管
理を目的とした輸液ポンプや人工呼吸器の必要性が
臨床現場で求められている事が判明した。しかし,も
う一方では添付文書に高気圧環境下での使用禁止の
記載が有るために臨床現場での使用を中止してしまう
施設が有る等,持込医療機器に関する現状は明るく
ない。現状を鑑み積極的に機器の持込み実験を行っ
ている有志施設も有り,学会として何らかの具体的な
指針を示して頂ければと考える。
35
日本高気圧環境・潜水医学会雑誌
シンポジウム 2
高気圧酸素治療と医療機器の持ち込み
∼第2種高気圧酸素治療装置の現状と問題点∼
Vol.51 Supplement, Sep, 2016
シンポジウム 2
高気圧酸素治療における埋め込みデバイス
使 用の現状 報 告およびシリンジポンプの
電気的安全性(バッテリー関連)の検討
大久保 淳1) 後藤啓吾1) 山本素希1)
前田卓馬1) 宮本聡子1) 倉島直樹1)
山本遼太郎1) 盛本真司1) 小村 寛1)
小柳津卓哉2) 小島泰史2) 榎本光裕2)
川田慎一1) 改元敏行1) 尾崎修一1)
柳下和慶2)
有村敏明2)
1) 東京医科歯科大学医学部附属病院 MEセンター
2) 東京医科歯科大学医学部附属病院 高気圧治療部
高気圧酸素治療下で精密機器を持ち込むことは,
「所定の機能と安全性を備え,かつ,気圧変動に対
応できる精度が保障されていなければならない」と高
気圧酸素の安全基準第26条によって記されている。
本学で採用しているテルモ社製シリンジポンプや輸液
ポンプの機器添付文章には「高気圧酸素療法室内へ
は持ち込まないこと。爆発の誘因となる可能性がる」
と記してあり,さらに日本光電社製の医用テレメータ
WEP5204の本体及び送信機の取り扱い説明書には
「高気圧酸素療法室内では絶対に使用しないでくださ
い。爆発または火災を起こします」と記され,使用お
よび安全性が保障されていない。またガス駆動の搬
送用人工呼吸器であるスミスメディカル社製パラパッ
クの機器添付文書には高気圧環境下での使用に関し
ては記載されていない。しかし,シリンジポンプや,
生体情報モニタ送信機などを室内に持ち込み治療し
ているのが現状である。
そこで当院第2種高気圧酸素治療装置を用いて,
高気圧下での流量や駆動状況を確認した。シリンジ
ポンプには 35型やSS型などがあるが,加圧時は流
量が減少,減圧時は流量が増加し許容範囲(3%)外
であった。輸液ポンプにはTE-161SやTE-LM800A
などがあるが,TE-161Sの誤差は許容範囲(10%)内
であったが,TE-LM800Aは許容範囲5%と精度が上
がり,加圧時にのみ流量が増加し許容範囲外であっ
た。輸液ポンプは機種により流量特性が異なる為注
意が必要である。パラパックは,換気時間,呼吸回
数,換気量すべてにおいて設定値と実測値はかけ離
れていたが,値にばらつきは無かった。高気圧環境
下で使用する場合は各機器の特徴を理解したうえで,
医師の立会いの下使用する必要がある。
治療中の患者モニタリングは,ECGやSPO2は室内
に送信機を持ち込み,BPは電子血圧計H55を持ち込
み測定しているが現在トラブルなく経過している。
本シンポジウムでは本学でのデータを提示しなが
ら,会場の皆様と高気圧酸素治療と医療機器の持ち
込みについてディスカッションしたい。
36
1) 鹿児島市医師会病院 高気圧酸素治療室
2) 鹿児島市医師会病院 麻酔科
【はじめに】
高気圧酸素治療で使用可能な機器・機材について
は,安全基準第26条に「所定の機能と安全性を備え,
かつ,気圧変動に対応できる精度が保障されていな
ければならない」と記されている。
【埋め込みデバイスに関して】
過去に当院では,平成26年6月現在で安全協会に
登録されている169施設に対し,平成26年7月21日か
ら約1ヶ月間 の期間で web アンケート調査および,メ
ーカー8社に対し,ここ10年間に市場に出ている機種
の耐圧調査を実施している。このアンケート調査から,
当院で埋め込みデバイス装着患者にに対し高気圧酸
素治療を行う際のマニュアルを作成したので報告を行
う。
【シリンジポンプの電気的安全性(バッテリー関連)に関して】
対象として,当院で使用している「テルモ社製シリ
ンジポンプTE-331S【ニッケルカドミウムバッテリー】」
20台,
「テルモ社製シリンジポンプTE-351Q【リチウム
イオンバッテリー】」20台を使用し,バッテリーの電気
的安全性について過去の発表を元に追加検討を実施
したので報告を行う。
【結語】
埋め込みデバイス装着患者に高気圧酸素治療を安
心して行う上で,学会・安全協会からの指針やガイド
ラインの作成が望まれる。また,高気圧酸素治療で
のシリンジポンプの使用に関しては,メーカー,学会・
安全協会,医師,臨床工学技士が一体となって今後
も検討を行う必要がある。
第 51 回日本高気圧環境・潜水医学会学術総会
シンポジウム 2
求められる安全性情報
―医療機器の高気圧酸素治療装置内使用に
関する学会発表内容の分析評価と情報提供―
シンポジウム 3
SCUBA潜水直前の健康チェック
千足耕一 蓬郷尚代
東京海洋大学
1)
2)
鈴木信哉 髙倉照彦 菅野将也
2)
副島 徹 2) 石橋春香2)
1) 亀田総合病院 救命救急科
2) 亀田総合病院 ME室
高気圧酸素治療装置(以下,装置と略す。)は,一
人用の第1種装置と多人数用の第2種装置があり,第
1種装置は,空気で加圧して酸素をマスクで呼吸する
タイプと純酸素で加圧するタイプがある。効果的な高
気圧酸素治療を安全に行うためには,装置のタイプ
に応じた安全情報が適切に提供される必要がある。
平成19年施行の改正医療法により病院等の管
理者は,医療機器安全管理責任者の配置と従業者
に対する安全使用のための研修をし,保守点検の実
施及び安全性情報の収集が義務付けられた上で医療
機器の装置内使用となるが,ほとんどの医療機器の
添付文書には,装置内使用禁止と記載されている。
医療機器の装置内使用については,医療機器製
造販売業者には製造物責任法として,品質保証と安
全管理が要求されている。実際に装置内で使用され
る医療機器は存在するものの,医療機器製造販売業
者に正式な情報提供を求めた場合,高気圧環境を想
定した設計とはなっていない上,実機での検証も行っ
ていないことから,製品保証を含め,装置内での使
用は不可であるという医療機器製造販売業者からの
回答となり,安全使用に関する確かな情報を得るこ
とが困難である。
また,医療機器の安全性情報について厚生労働省
や医薬品医療機器総合機構からは,主に不具合情
報等の報告をもとに提供されるため,装置内の医療
機器使用について必要な情報が適切に得られる仕組
みとはなっていない。
一方,医療機器の装置内使用については,臨床上
の必要性から装置を保有する医療施設において主に
臨床工学技士が検討して学会等で多くの発表がある
が,発表された内容について,実際に使用する観点
から医療機関に対して安全性情報として提供できるレ
ベルまで検討される態勢となっているわけではない。
当学会の技術部会が中心となって学会発表内容の分
析評価,内容の情報提供について積極的な態勢を構
築することが望まれる。
レクリエーショナル・ダイバーの潜水直前における健
康チェック方法を模索するとともに,健康管理に対す
る意識や実態を調査した。
調査には,自記式の質問紙を使用するとともに,
簡易血圧計を用いて潜水前の血圧を測定してもらっ
た。
血圧は,年齢に応じて少しずつが高くなっている様
子が把握され,40歳を超えると個人差が大きくなるこ
とがわかった。喫煙習慣については,40 ∼ 50歳未満
の年代で喫煙者がやや多かった。飲酒習慣では,年
代による差は認められなかった。薬の服用に関して
は,40歳を超えると,血栓症予防の薬や血圧を下げる
薬を服用している者がいることがわかった。
年齢ごとに「ダイビングする前日にお酒やタバコは
控える」かについて尋ねたところ,年齢による差はな
かった。また,年齢別に運動習慣を尋ねた結果,年
代による差は認められなかった。
「経験したことのあ
る症状」についてのチェックでは,耳抜き不良が圧倒
的に多く79%,次いでリバースブロック10%,窒素酔
い 6%で,減圧症が 3%であった。性別による喫煙・
飲酒習慣の違いでは,男性の方が飲酒や喫煙の割合
が高いことが把握できた。
潜水直前における12項目のセルフチェックへの回
答結果では,体のだるさを感じている(4人),睡眠
が十分でない(13人),食欲がない(21人)
,飲酒に
よる体調不良(1人),身体の痛みがある(7人)
,手足
のしびれがある(1名),前回のダイビングの疲れが残
っている
(5名)
,ダイビングをする意欲が十分にない
(1
名)
という結果が得られ,ダイビング前のセルフチェッ
ク12項目で1つでも該当する項目があればダイビング
はせずに休養を取るべき,ということが推奨されてい
るにもかかわらず,実態が異なっていることが明らか
となった。
喫煙と飲酒では,飲酒についてのマネージメントが
甘いことが考えられた。トラブル経験に関しては 138
件のうち44.2%にトラブル経験があることが認められ,
トラブル経験者が多いということが把握できた。日常
的な運動習慣に関しては約50%が運動をしておらず,
性別や年代による差はなかった。
潜水直前のセルフチェックを実施するとともに自他
の心身の状態を観察して,潜水しても問題ないか判
断すべきであると考えられるが,潜ることを前提でセ
ルフチェックがおろそかになってしまっており,セルフ
チェックを厳格に実践しているダイバーや指導者は多
くはないように考えられた。
37
日本高気圧環境・潜水医学会雑誌
シンポジウム 3
中高年ダイバーの循環器疾患リスク評価の
重要性
Vol.51 Supplement, Sep, 2016
シンポジウム 3
呼吸器疾患発見のためのメディカルチェック
山崎博臣
1,2)
桐木園子
2)
高木 元 宮本正章
2)
1) 日本医科大学付属病院 総合診療科
2) 日本医科大学付属病院 循環器内科
山崎内科医院
2004年に出されたスクーバーダイバーのためのメデ
ィカルチェックガイドラインは基本的にRSTCのガイド
【背景】レジャー・スポーツダイビング産業協会の統計
によると,2010年のレジャーダイビングに関連する事
故や死亡の 8割は 40歳以上の中高年ダイバーによる
ものである。またアメリカDANのレポートでは,2010
年から2013年の間に死亡したダイバーの 21%に高血
圧,心血管疾患と糖尿病罹患歴があったとしている。
中高年ダイバーの増加に伴い,リスクファクターを有
するレジャーダイバーは定期的なメディカルチェックが
必要になると思われる。ダイバーの潜水適性評価に
有用と思われる循環器系検査法を紹介する。
【DAN
JAPANメディカルチェック・ガイドライン】循環器系に
ついては,虚血性心疾患治療歴,高血圧,ペースメ
ーカー植え込み後の患者は相対的に危険な状態,薬
物療法が必要な不整脈等は危険が高い状態であり,
運動負荷試験で 6-7METS以上の運動を禁止されて
いる患者は潜水に不適であり,13METS以上の耐容
能を推奨している。
【運動負荷試験】主な検査法とし
てマスター二段階負荷法とトレッドミル法がある。マ
スター二段階負荷法は,特別な機器は不要で簡便な
検査であるが,6.5METS程度の負荷と言われており,
個人の最大運動耐容能を評価することはできない。
トレッドミル法は心電図や血圧計を装着しモニタリン
グした状態で歩行運動をする。時間経過とともに負
荷がかかり,目標心拍数(最大運動耐容能)に達した
ところで運動を終了する。
【その他の検査】心臓超音
波検査:大動脈弁や僧帽弁弁膜症,卵円孔開存,肥
大型心筋症など心臓の形態異常を非侵襲的に観察す
る。携帯可能な機器もあり,事故現場でも活用され
ている。頚動脈超音波検査・足関節上腕血圧比・脈
波伝播速度:動脈硬化の指標として,健診の項目に
含まれることが多い。
【結論】循環器疾患で通院中の患者は,定期的にトレ
ッドミルを行い運動耐容能をチェックすることが望ま
しい。既往のない 40歳以上のダイバーも定期健診を
受け,異常を認めた場合は循環器系の精査を勧める
べきだが,コストとベネフィットについて議論が必要で
ある。
【参考】野澤 徹 ダイビング事故の傾向とその原
因について考える. Medical Information Network for
Divers Education and Research 論文54
DAN Annual Diving Report 2012-2015 Edition:
A report on 2010-2013 data on diving fatalities,
injuries, and incidents [Internet].
38
ラインを基にしたものである。危険性の高い状態とし
て自然気胸の既往,肺疾患が原因で起こった気胸の
既往,呼吸器疾患に起因して運動能力が低下してい
る方(例としてコントロールされていない気管支喘息,
慢性閉塞性肺疾患,肺機能検査の異常者)がある。
気胸の既往は問診でわかる。原因となるブラの存在
は胸部レントゲンで描出可能で胸部CTでさらに描出
率は上昇する。気管支喘息は肺機能検査で異常を示
すことはあるが正常なことも多い。コントロール状況
を確認するのには自覚症状,ピークフロー値,肺機
能,呼気中一酸化窒素,気道過敏性などで総合的に
行う。慢性閉塞性肺疾患は必ず肺機能検査で閉塞
性換気障害を示す。多くの肺疾患の潜水適性を決め
る上で肺機能検査は必須である。喫煙者では 70歳以
上で閉塞性換気障害を呈することはそれぞれ 24%,45
%におよび,非喫煙者でも15%に達する。60歳以上
の潜水死亡事故が極端に多いことが報告されており,
閉塞性換気障害との関連が示唆される。
胸部レントゲンは肺癌,器質的肺疾患,ブラを抽
出することに有効であり,胸部CTはさらにその検出
頻度は上がる。ただしブラを発見するために積極的
に胸部CTを施行するのは放射線暴露,費用の問題
から考え望ましくないと考える。ブラ以外の肺疾患の
潜水適性は肺機能検査で決まるため胸部CTは必須
ではない。肺機能検査は気管支喘息,気胸の既往,
ブラ以外の潜水禁止となる病態を発見できる。また
末梢気道狭窄の所見があれば気管支喘息を疑うこと
が可能で,咳の遷延,日によって変化する労作時の
息切れなどの詳細な問診により診断可能である。呼
吸器疾患発見のためのメディカルチェックは問診と肺
機能検査が重要で胸部レントゲンも必要と考える。自
然気胸の既往,生理的な閉塞性換気障害,運動能
力低下の扱いについても論じたい。
第 51 回日本高気圧環境・潜水医学会学術総会
シンポジウム 3
耳鼻咽喉科領域のダイバー検診
シンポジウム 3
高気圧作業従事者に対する減圧性骨壊死の
健康診断
三保 仁
三保耳鼻咽喉科
高尾勝浩 川嶌眞人 川嶌眞之 田村裕昭
山口 喬 宮田健司
メディカルチェックガイドラインに基づく潜水適正を
検診することを目的とする。スクリーニング検査,ス
クリーニングで異常があった場合に行う二次検査,問
診から必要な検査に分類可能。
1.問診:
(1)病歴及び手術歴:副鼻腔,中耳及び
内耳,頭頸部腫瘍。
(2)潜水障害の病歴:内耳型減
圧症,外リンパ瘻など。
(3)圧平衡障害の履歴:飛行
機搭乗,過去の潜水での中耳腔及び副鼻腔圧平衡
障害歴。
(4)内耳性めまいの病歴。
(5)誤嚥を起こし
うる疾患:反回神経麻痺,声帯麻痺,各種喉頭手術
歴,頭頸部腫瘍の病歴。以上に該当する場合,耳鼻
科医師による精査が必要。
2.局所所見:
(1)耳鏡検査:鼓膜,外耳道所見は
正常でなくてはならない。鼓膜穿孔がなくても萎縮
鼓膜は潜水不可。
(2)鼻鏡検査および鼻咽腔ファイバ
ースコープ:副鼻腔および中耳腔圧平衡障害を起こし
うる鼻ポリープ,重症のアレルギー性鼻炎及び副鼻腔
炎精査。後鼻孔ポリープおよび上咽頭腫瘍など耳管
咽頭孔の閉塞性疾患。
(3)口腔咽頭所見:マウスピー
スが保持できるような歯列,安定した入れ歯かどうか。
(4)喉頭ファイバースコープ:反回神経麻痺および声
帯麻痺,その他の誤嚥を起こす可能性。加齢を含め
誤嚥の可能性がある場合には,ファイバースコープ下
色付き水嚥下テスト,下咽頭食道造陰などで程度を
把握。
3.耳 科学的 機 能 検 査:
(1)ティンパノメトリー:A
Typeであることが必 要。B Typeは潜 水 不的確。A
Typeであっても萎縮鼓膜は不適格。C Typeで潜水希
望がある場合には,耳管機能検査にて中耳腔圧平衡
状態を評価。
(2)純音聴力検査:耳疾患の精査。老
人性および先天性難聴では全聾であっても,他項目
で禁止項目となる耳疾患が無ければ潜水可能であり,
難聴が全て潜水不適正ではない。ただし,突発性難
聴後遺症や片耳先天性難聴など,もともと聴力に左
右差がある場合には,耳潜水障害発生時に悪化の程
度が把握できないために,必須項目になる。
(3)耳管
機能検査:飛行機搭乗や過去の潜水にて,中耳腔圧
平衡障害の自覚があった場合に限り必須。
4.副鼻腔画像検査:単純レントゲン及びCTは,副
鼻腔手術歴,鼻ポリープを認める,慢性副鼻腔炎症
状を疑う場合に必須。結果が明らかに副鼻腔自然孔
を閉鎖する状態でなければ,潜水にて副鼻腔圧平衡
障害を発症した場合には,さらなる精査加療という
条件付きで許可。
社会医療法人玄真堂 川嶌整形外科病院
当院では高気圧作業従事者に対して減圧性骨壊死
(DON)の健康診断を行っている。DONの診断は画
像診断により行ない,発症率の高い肩,股関節,膝
のレントゲンと,必要のある場合はMRIを追加撮影す
る。DONの分 類は英 国Medical Research Council
s Decompression Sickness Panel(MRC)分類を改定
した太田-松永分類に基づいて行い,加えて普段行っ
ている潜水・作業の状況,すなわち深度・作業圧力,
頻度,労働年数,減圧方法,急性減圧症の既往を
本人から聴取しDONとの関連性を検討した。
1981年から2014年までの 受 診 者は 274名( 延 べ
531名)で,うち80名(29.2%)
,137か所のDONが発
見された。分類別ではA型42部位(30.7%)
,B型95部
位(69.3%)であった。DON発生群と非発生群で比較
したところ,発生群の平均労働年数が有意
(p=0.006,t
検 定)に長く,急性 減 圧症の発症 既往のある者に
DONの発生率が有意に高かった(p=0.0258、 χ2独立
性の検定)。
DONが進行すれば関節の変形を引き起こし,骨切
り術や人工関節への置換を強いられる可能性がある。
このような環境にある労働者は定期的な検診を受け,
万一DONが発見された場合には,早期に労働環境を
見直すことで今後の生活水準維持に役立つのではな
いかと考えられる。
39
日本高気圧環境・潜水医学会雑誌
シンポジウム 3
現在のダイバーの健康診断とその問題点
及び提言
シンポジウム 4
本学における一酸化炭素中毒患者に対する
HBOの実際とフォローアップの現状
小島泰史1,2) 柳下和慶1,2) 小柳吉彦1)
柳下和慶1,2) 榎本光裕1,2) 小柳津卓哉1)
小島朗子1) 鈴木信哉1,3)
小島泰史1) 大久保 淳3) 前田卓馬3)
1) (一財)日本海洋レジャー安全・振興協会(DAN JAPAN)
2) 東京医科歯科大学医学部附属病院 高気圧治療部
3) 亀田総合病院 救命救急科
【ダイバーの健康診断をめぐる現況】
職 業ダイバーは高気 圧作業安 全衛生規 則(高圧
則)で,エントリー時及び 6カ月に 1回の医師による
健康診断が定められている。一方,レジャーダイバ
ーに関しては,高圧則のような規則は存在しない。
Recreational Scuba Diving Council(RSTC)の ガ
イドラインを基本にしながら,Divers Alert Network
(DAN)JAPANが独自のガイドラインを2004年に作成
している。同ガイドラインは質問票,インストラクター
用ガイドライン,医師用ガイドラインの 3冊から構成さ
れている。ダイビング希望者は質問票で「はい」
があっ
た場合,インストラクターの判断を踏まえて医師受診
が求められる。このように,レジャー分野では潜水
開始にあたって,医師の健康診断が必須とはなって
いない。潜水事故分析から,過去のDAN USAの報
告と同様に日本でも40歳以上,男性ダイバーの死亡
例が多いことが指摘されている。
【問題点】
1. 高圧則の記載は簡単なものであり,潜水医学に造
詣の深くない医師にとって,具体的に必要な検査
を判断することは容易でない。
2. DANガイドラインは,質問票は詳細だが,具体的
な検査項目についての記載は少ない。
3. DANガイドライン作成は 2004年であり,その後改
訂されていない。
4. DANガイドラインでは,インストラクターがダイビン
グ希望者の医師受診必要性の有無を判断すること
になっている。
5. 質問票方式には限界がある(正しくない申告がなさ
れる可能性)。
【提言】
1. DANガイドラインは,作成から12年経過しており,
改訂が必要である。
2. 改訂版では,質問票及び必要な検査項目の提示
が望ましい。
3. レジャーであってもダイビング希望者は原則医師に
よる健康診断を受けるよう提唱すべきではないか
(特に中高年者において)。
40
Vol.51 Supplement, Sep, 2016
宮本聡子3) 山本素希3) 後藤啓吾3)
1) 東京医科歯科大学 医学部附属病院高気圧治療部
2) 東京医科歯科大学 スポーツ医歯学診療センター
3) 東京医科歯科大学 医学部附属病院MEセンター
一酸化炭素(CO)中毒に対するHBOについては,
体内のCO濃度の速やかな低減をもたらすことから,
CO曝露急性期でのHBOの適用については,一般的
には推奨されている。一方で,急性期でのHBO適用
による遷延型CO中毒や間歇型CO中毒の発症予防へ
の有効性については,依然議論がなされ,一定の見
解を得られていない。このため,急性期HBOの必然
性については,依然controversialである。
CO中毒に対するHBOの有効性研究が進捗しない
最たる原因は,対照群との比較研究の構築が困難で
あることのほか,十分なフォローアップが実現していな
いことがある。特に自殺に関連するCO中毒では患者
のコンプライアンスの問題からも十分なHBOを施行で
きず,更にフォローアップから脱落する例が多い。本
学でのプロトコールは,急性期での初回HBOのほか,
追加にて合計5回のHBOとしているが,急性期での高
いHBO料金も相まって,十分なHBOを実行できてい
ないのが現実である。
しかしながら,昨年より山口大学救急・総合診療医
学教室が拠点となり,CO中毒レジストリ研究(COP-J
study)
が開始され,全国レベルでの登録,フォローア
ップ体制が徐々に進捗しており,本学も共同研究施
設として参画している。
本シンポジウムでは,CO中毒に対するHBOの現状
と問題点を検討する上で,本学におけるCO中毒患者
に対するHBOの実際とフォローアップの現状を報告
し,フォローアップ改善のための問題点を議論する。
第 51 回日本高気圧環境・潜水医学会学術総会
シンポジウム 4
COP-J study参 加 施 設 に お ける急 性CO
中毒の治療方針からみたHBO治療の現状と
問題点
シンポジウム 4
一酸化炭素中毒による遅発性脳症の検討
土居 浩 山川功太 徳永 仁 望月由武人
吉田陽一
1,2)
藤田 基
3)
1,2)
東京都保健医療公社 荏原病院 脳神経外科
松山法道 鶴田良介
1) 山口大学大学院医学系研究科 救急・総合診療医学講座
2) 山口大学医学部附属病院 先進救急医療センター
3) 山口大学医学部附属病院 ME機器管理センター
【背景】一酸化炭素(CO)中毒の急性期における高気
圧酸素(HBO)治療の有用性は明確なコンセンサスを
得られておらず,
HBO治療の施行は各施設の治療方針
に委ねられている。
【 目的】急 性 一 酸 化 炭 素 中 毒レジストリー COP-J
study参加施設でのCO中毒の治療方針を把握する。
【方法】COP-J study参加施設76施設を対象に,CO中
毒急性期の治療内容とその後follow upについてWeb
上でのアンケートを実施した。
【結果】
76施設中48施設から回答を得た。HBO治療
装置の有無について,第1種装置を持つ施設が 21施
設(44%)
,第2種装置が10施設(21%),HBO治療装
置なしが 17施設(35%)であった。年間のおおよその
CO中毒患者数は,0-1人:12施設(25%)
,2-5人:18施
設
(37%)
,6-9人:10施設
(21%),10人以上:8施設
(17%)
であった。
急性 期 治療について,急性CO中毒 患者にHBO
治療を行う施設は 33施設(69%)で,行わない施設
は 15施設(31%)であった。HBO治療の適応として,
全例行う:8施設(24.2%),COHb濃度10%以上で行
う:11施 設(33.3%)
,COHb濃 度20%以 上で 行う:9
施設(27.3%)
,CO長時間曝露:17施設(51.5%)
,意
識障害がある場合:19施設(57.6%),その他:5施設
(15.2%)であった(複数回答あり)。HBO治療の最大
治療圧力は,2.0ATA:19施設(58%),2.5ATA:6施設
(18%),2.8ATA:8施設(24%)であった。最初の24時
間のHBO治療回数は 1回:12施設(38%),2回:11施
設(34%)
,3回:8施 設(25%), その 他:1施 設(3%)
であった。2日目以降7日までのHBO治療の回数は,0
回:6施設(19%),1-3回:13施設(41%),4-7回:11施
設(34%),その他:2施設(6%)であった。
CO中毒間歇型の治療を行っている施設は 17施設
(35%)であり,そのうちHBO治療を行うとした施設は
15施設(88%)
であった。
【結語】COP-J study参加施設におけるCO中毒の治
療方針を調査した。HBO治療の施行も含め,CO中毒
の急性期治療は一定したものはなく,各施設により
様々であった。今後急性期の治療法のエビデンスの
構築およびコンセンサスの確立が必要と考えられた。
【はじめに】一酸化炭素中毒の治療において,今回は
CO曝露後に起こる遅発性脳症に対して検討を加え
た。
【対象】1994年10月から2016年6月まで当院で加療し
た一酸化炭素中毒185例のうち,遅発性脳症を呈し
た 37例につき詳細な検討を加えた。モニタリングとし
ては通常のMRIに加え,MRS,SWIによる詳細な検討
を行った。一酸化炭素中毒でのタイプ分類は 1,通
常型(当初何らかの症状があり,治療によって症状改
善を認めるタイプ。2,遷延型(当初から意識障害を
きたして改善を認めず意識障害が継続する症例)
3,
間歇型(1のように症状改善し,発症から2∼3週後よ
り意識障害を認めるタイプ)のように 3分類した。
【結果】1,2のタイプアは除外し,3に対し検討した結
果,遅発性脳症を呈した症例は 37例あり,原因の内
訳は 28例が練炭自殺。1例∼排気ガス自殺。6例∼
木炭の消し忘れ(夏のバーベキューでのコンロをバン
ガローに持ち込み寝込む1例,キャンピングカー内で
七輪を焚いたまま寝込む1例,冬に火鉢を付けたまま
寝込む 2例,暖をとるため七輪を焚いたまま寝込む1
例,冬のビニールハウス内での木炭使用1例)。2例∼
中国のホテル内での寝込んでの事故(プロパンガス関
連?)で全例CO曝露時間が数時間以上であった。来
院時のCO濃 度に関しては 40以上の症例は認めず,
CO濃度に関しては遅発性脳症の発症との因果関係
は認めなかった。
【考案】曝露時間が短くCO濃度が 30以上の症例では
遅発性脳症は発生していないが,この場合HBO施行
回数は数回にとどめ,長期の入院は要さないと現在
考えており,またMRIによる脳病変のある場合にのみ
1週間以上の入院経過を追うことにしている。しかし
曝露時間の長期の場合は最低2∼3週間の経過観察
を要すると考えている。
41
日本高気圧環境・潜水医学会雑誌
シンポジウム 4
一酸化炭素中毒と労務管理 現状と課題
―潜在患者へのスクリーニングと早期対応―
シンポジウム 5
旭 川医 科大 学 病 院 の高 気 圧 酸 素 治 療 の
卒前教育と日常診療
前山英男
藤田 智
マシモジャパン株式会社
【背景・目的】火災を含む一酸化炭素(CO)による事
件,事故は絶えず発生し,消防職員によりその事案
が処理されている。平成26年中に火災発生4万3千件,
消防職員の出場人員は延べ約89万人,救助活動8万
8千件,消防職員の出場人員は延べ約111万4千人に
上り,常に一酸化炭素中毒(CO中毒)の危険に晒さ
れている。また,CO中毒による遅発性後遺症など労
災事案の特定が困難である。米国で既に運用されて
いるガイドライン「NFPA®1584:緊急活動時および訓
練時の隊員のリハビリテーションプロセスに関する基
準」が今後のHBO運用に役立つと考えるため,紹介し
たい。
【NFPA1584】米国では 2007年より本製品の販売を
開 始し,2008年には 米 国 防火 協会【National Fire
Protection Association:NFPA】にて「NFPA®1584:
緊急活動時および訓練時の隊員のリハビリテーション
プロセスに関する基準」の改定がなされ,隊員はすべ
ての災害および火災訓練において,有害な影響のあ
るリスクに直面した場合は一酸化炭素中毒に関する
評価の実施を推奨している。
【非侵襲的カルボキシヘモグロビン濃度測定
(SpCO)】
当社は世界初,非侵襲的かつ連続的にカルボキシヘ
モグロビン濃度(SpCO)測定を可能としたパルスCO
オキシメータ Rad-57™を開発,製品化した。本邦
では 2008年より販売を開始し,パルスオキシメータ同
様に持ち運び可能で,非侵襲的かつ簡便に測定でき
ることから,現在では救急車,ドクターカー,ドクタ
ーヘリ,海上自衛隊艦船,製鉄所など一酸化炭素中
毒(CO中毒)が発生する可能性の高い現場に対しトリ
アージを含め早期に発見,対応が行える組織への導
入が進んでいる。Rad-57™はCO中毒の疑いのある
傷病者,要救助者,CO中毒患者に対し非侵襲的かつ
連続的に簡便測定できる運用上の利点がある。
【結 語】一酸化炭素(CO)の暴露後,体内にCOが
滞留している危険性を考えた場合,早期に発見し対処
(HBO)することが一番の解決方法である。またCO
中毒は症状が見極めにくく見逃されやすい。従って全
ての消防職員は活動,訓練の後は必ずスクリーニング
を行い,また救急隊は初動(現着時)におけるスクリ
ーニング,トリアージが特に重要である。尚,日本に
おける本製品の採用は有事を想定して傷病者,要救
助者のための配備であるため,火災,救助等での一
酸化炭素中毒事案に対し,消防職員の公務災害での
使用が想定されていない。このことから各方面の早急
な配備,実施に期待したい。
42
Vol.51 Supplement, Sep, 2016
旭川医科大学 救急医学講座
当大学では,1996年に第2種高気圧酸素治療装置
が設置された。その後,高気圧酸素治療部は集中治
療部の一部門として位置づけられるようになった。運
転回数は年間おおむね 300回程度である。
医師は集中治療部の医師が兼任で勤務しており,
主に救急科の医師が業務にあたっている。CEは交代
で業務にあたっている。看護師は救急外来の看護師
が兼務で担当している。
非救急患者の安全性に関しては,各科の主治医が
マニュアルに沿って確認するとともに,CE,看護師が
最終的な確認を行っている。必要があれば救急科の
医師にコンサルトすることとなっている。
入院患者,外来患者の両方を治療対象としている。
使用している高気圧酸素装置に関しては,適宜メ
ンテナンスを行っているが,更新の予定はない。更新
する場合には,金額が大きいことから,大学単体で
の更新は難しいと考えている。
卒前教育においては,救急科が一酸化炭素中毒に
関する講義の中でHBOに触れている程度であるが,6
年生の選択で救急を選んだ学生は,体験加圧ができ
るようになっている。救急全体の講義数が多くないこ
と,教えるべき内容が多いことからHBOに関してはた
またま,HBOが必要な救急患者がいるときに臨床実
習に参加している学生には臨床の場で教えているが,
その機会が十分とは言い難いと考える。
現在専門医は 2名ですべて救急科の医師である。
時間内外を問わずCEは装置を扱うためにいる。医
師は,日中は主治医科の医師,夜間に関しては多く
は救急科の患者であることから救急科の医師がいる。
安全マニュアルに記載されているのは,停電,緊
急時についてである。
第 51 回日本高気圧環境・潜水医学会学術総会
シンポジウム 5
群馬大学での高気圧酸素治療教育
シンポジウム 5
東海大学医学部の高気圧酸素治療の卒前
教育と日常診療
齋藤 繁
群馬大学大学院 医学系研究科 麻酔神経科学分野
猪口貞樹
東海大学 救命救急医学
高気圧酸素治療が学生教育,卒後教育で十分に
解説されているとは言い難い。減圧症と急性一酸化
炭素中毒に関連した事項が医師国家試験に出題され
ることがあり,その治療の選択肢として登場するの
で,丁度薬品名を一つ記憶するのと同程度に認識さ
れているというのが実態と考えられる。我々の施設で
はHBO治療の窓口を麻酔科蘇生科に置き診療の運
営を行っている。独立したHBO治療部門ではないが,
「高気圧酸素治療室」という部署名が与えられ,兼務
者として人員が配置されている。定期的な運用状況,
安全管理,装置更新の検討は兼務者として配置され
た医師と臨床工学士,麻酔科蘇生科外来看護師で
行っている。
学部学生に対する医学教育は,麻酔科蘇生科の臨
床実習の必修ローテーションの中で行っており,配備
されてる1種,2種装置の臨床工学士による解説,原
理や注意事項に関するDVD講義,患者の治療に2種
装置内で同席する体験,などから構成している。他
施設での医学教育の状況や治療体制を正確に把握し
ている訳ではないので,今回のシンポジウムなどを通
じて,さらなる改善のヒントを得たいと考えている。
尚,当院での高気圧酸素治療の体制等は以下のと
おりである。
1)高気圧酸素室は当初から麻酔科の管理のもとに開
設された。高気圧酸素室の運営規約があり,医療
ガス安全管理委員会と合わせて会議が開催されて
いる。
2)HBO治療室の構成員は医師,看護師,臨床工学
士である。
3)非救急的適応の患者の安全性の確認者は麻酔科
外来医師となる。
4)HBO治療の対象は入院患者/外来患者の両方で
ある。
5)HBO装置の更新は病棟建て替えなどに合わせて
病院予算で実施される予定である。
6)卒前教育は麻酔科蘇生科実習の中で行っている。
7)高気圧環境・潜水医学会専門医は院内に2名おり,
麻酔科及びICUに所属している。
8)時間内,緊急ともHBO治療の際に装置近くには操
作者として臨床工学士がいる。
9)HBO装置の運用に関しては,事故時対応を含め
院内マニュアルに記している。
【沿革】東海大学医学部では,1975年の開院時より中
央診療部門に2種装置を有する高気圧酸素治療室を
設置し,兼任の室長と装置操作担当者(1980年より
専任)のもとで治療を開始しました。1998年より,所
属組織を救命救急センターに変更,救命救急センタ
ー長が責任者を兼務しており,2003年からは臨床工
学技術科に所属する複数の臨床工学技士が装置の
操作を担当しております。また2015年より治療室およ
び治療装置の改修工事を行い,2016年4月に新しい2
種装置へ更新しました。予算は,付属病院の予算で
す。
【卒前教育】卒前教育としては,医学部2年生の臨床
応用物理学で 2時間「高圧酸素装置とその適応①,
②」の講義を臨床工学技士(認定技師)
が行い,4年生
の救命救急科臨床講義のうち
「急性中毒」
「環境障害」
の一部として急性一酸化炭素中毒,減圧症に関する
HBO治療について教員が講義を行っています。また
5年生の救命救急センターでの臨床実習時に該当患者
があれば,見学を行っています。
【診療の現状】治療の対象は,入院・外来患者の両方
で,年間治療件数(2014年度)は 111例,急性一酸
化炭素中毒48例,間欠型一酸化炭素中毒2例,減
圧症10例,突発性難聴18例,難治性下腿潰瘍・壊
死11例,網膜動脈閉塞症13例などです。
装置の稼働状況や院内の取り決めなどについては,
救命救急センター運営委員会において,報告・審議し
ており,
「病院運営マニュアル」に記載されているほか,
必要に応じて院内に通知文書を発出いたします。院
内には高気圧環境・潜水医学会専門医2名(救急科専
門医)が配置されており,非救急的適応の患者の安
全性の確認,適応の可否は,原則として専門医にコ
ンサルテーションしています。
救急治療の際には,主治医・担当医が患者に付き
添い(非救急時には装置の外に待機),技師2名で治
療を行い,外来の非救急患者については,初回治療
時のみ同様の扱いを行っています。緊急時には,速
やかに救命救急センターより複数の医師が駆け付け
て対応する体制になっていますが,
HBO装置の事故に
関するマニュアルは現在未整備であり,今後の課題と
考えています。
43
日本高気圧環境・潜水医学会雑誌
Vol.51 Supplement, Sep, 2016
シンポジウム 5
信州大学における高気圧酸素治療の卒前
教育と日常診療
シンポジウム 5
琉球大学の高気圧酸素治療の卒前教育と
日常診療
今村 浩 新田憲市 三山 浩 高山浩史
合志清隆
琉球大学病院 高気圧治療部
小林尊志 望月勝徳 嘉嶋勇一郎
信州大学 医学部 救急集中治療医学
高気圧治療は1973年に開始され,1984年の移転で
当院 の高気 圧 酸 素 療 法(HBO)は 第1種 装 置 が
高度救命救急センター内に設置,施行されている。
2013年∼2015年の 3年間の施行患者数は 164名(男
性110名 女性54名,61±18歳)であり,診療科は救
急37%,消化器外科18%,眼科5%,循 環器内科,
脳外科,心臓血管外科,口腔外科各4%,産婦人科
3%,整形外科,形成外科,皮膚科各2%,その他4%
であった。試行回数は計963回であり,その内訳は
急性期66% 慢性期34%,時間内77% 時間外23%で
あり,入院97% 外来3%であった。
当院における現状は以下のとおりである。
① 独立したHBO治療部や運営会議はない。申し込
み,施行手順等に関する取り決めを救命センターで
作成,周知している。
② HBOの管理は救命センター所属の医師,看護師
およびMEセンター所属の臨床工学技士が行ってい
る。専属者はいない。
③ 救急,非救急ともに適応や安全確認は救命セン
ター医師が行っている。
④ 入院/外来患者両方に行っている。
⑤ 装置の次回更新は救命救急センターの予算で行
われる予定である。
⑥ HBOの卒前教育は救急医学系統講義の中の 「
環境障害」で行っているが,臨床実習の中では今の
ところ担当患者にあたらなければHBOに触れる機
会はない。
⑦ 現在専門医不在である。
⑧ 時間内のHBOは臨床工学技士が装置の傍らで
監視し,救命センター医師が加圧時と減圧時に立
ち会う体制としている。
⑨ 時間外は救命センター看護師が装置の傍らで監
視し,救命センター医師が加圧時と減圧時に立ち
会う。
⑩ 事故発生時のマニュアルは作成され,スタッフに
周知されている。
実臨床の中でHBOが行われているからにはその理
論的背景や適応,合併症等について医学生に標準的
な卒前教育を行う必要がある。標準的な教育を行う
ためにも大学病院においてはメディカルスタッフの専
従化を含め,適応,施行手順,安全管理等の体制を
整えることが望ましい。
44
現在の大型治療装置(14名用)が設置された。近年
の治療件数は 6900件(2012年),6500件(2013年)
,
5400件(2014年)
,3250件(2015年)であるが,装置
の老朽化が主な理由で治療件数に差があり,2015年
は機器破損で半年近くも治療を停止することになっ
た。その対策に1人用装置2台が設置され,大型装
置の復旧に伴い計3台の治療装置が稼働しているが,
さらに1人用装置の1台が新たに申請されている。院
内に高気圧治療委員会があり非定期的に開催されて
きた。担当スタッフは,常勤医師の1名と非常勤医師
が2名であり,看護師1名と臨床工学(ME)
技士2名で
ある。治療の説明は医師が行い,さらに看護師が追
加説明をしている。すべての物品の確認は医師,看
護師とME技士が行い,患者監視も同様である。入
院と外来の治療比は約2:1である。機器更新は病院
運営費から捻出され,老朽化対策で段階的な更新を
進めている。学生教育では講義と臨床実習で高気圧
医学を紹介している。高気圧酸素治療の専門医は,
救急部に3名
(すべて救急科専門医)と当部署に1名
(脳
神経外科専門医)である。治療の監視は大型装置で
はME技士と医師が行い,1人用装置では医師さらに
看護師が行うことが多い。治療マニュアルは本学会の
安全基準としており,個々の事例で具体的な説明と
指示を出している。
従来から米海軍病院との診療連携を行ってきた琉
球大学病院での診療は,術後の創傷治癒促進や重
症感染症が 4割を超えており,がんの放射線治療ない
し化学療法に応用していることが特徴である。また,
1人用装置は酸素加圧でリスクの高い患者を中心にオ
ーダーメイドの治療を行い,病状が安定すれば大型
装置へと移している。
第 51 回日本高気圧環境・潜水医学会学術総会
シンポジウム 5
全国大学病院高気圧酸素治療部(室)連絡
会の設置の必要性
パネルディスカッション1
第1種装置を減圧障害に対する治療手段とし
て位置づける必要性
鶴田良介1) 宮本正章2)
池田知純
1) 山口大学医学部附属病院 先進救急医療センター
2) 日本医科大学付属病院 循環器内科
東京慈恵会医科大学 環境保健医学講座
本学会では潜水や圧気土木作業(以下現場)後に
【背景】これまでに日本を代表する10校に,医学教育
で高気圧酸素(HBO)治療はどのように教えられ,診
療面で大学病院のHBO治療はどのように運営されて
いるかを呈示していただいた。
【目的】全国の大学病
院に在籍する医師と本学会の関わり,病院へのHBO
装置(1種/2種)の有無について調査し,本学会が
大学病院のHBO治療に果たす役割について考える。
【方法】高気圧酸素治療安全協会(以下,安全協会)
の資料をもとに,個人情報に触れない範囲で本学会
事務局に問い合わせ修正を加えた。
【結果】本学会医
師評議員,学会認定施設,安全協会のいずれかに
関わっている大学が25校あった。そのうち1種装置が
11校,2種が 9校,なしが5校であった。その他,HBO
装置を有する大学のうち本学会会員医師のいるもの
が10校,いないものが10校
(全て1種装置)
あった。
【提
言】以上の結果を踏まえて以下の提案を行い,理事会
で既に承認を得た。HBO治療の卒前教育の標準化
と安全かつエビデンスに基づく診療体制の確立をめ
ざし,全国大学病院高気圧酸素治療部(室)連絡会
を設置する。これは本学会または安全協会に関連し
た情報交換会である。参加者は当該施設の医師と可
能であれば医師以外(看護師,MEなど)の最低でも1
名ずつとする。設置基準は次のとおりとする。①本学
会の会員医師がいる施設の参加が原則で,新たな会
員医師のいる大学には参加を促す。②HBO装置の種
類または装置の有無は問わない。③開始2年(2017
∼2018年)は山口大学が議長を務め,その後は12校
が交替で議長を行う。④議長が議事録を作成し,こ
の会議での成果を本学会で発表するか,または学会
誌に報告する。⑤この会議の連絡・準備等の事務局
を学会事務局におく。⑥会議参加のためには学会参
減圧障害が発生した場合に第2種装置を用いた再圧
治療を行うこととなっているが,現場と治療施設の間
の距離が離れているために,必ずしも常に最適ある
いは有効な治療が行われているとは言い難い。そこ
で,演者らは 2012年に第1種装置を用いた治療の可
能性を探ってアンケート調査を行い,現場に近い1種
装置を用いれば状況が大きく改善することを示すとと
もに,1種装置を用いる上で生じる問題点も指摘した。
問題点の主なものとして,一般に1種装置を備える目
的は高気圧酸素治療が主で,治療する側に減圧障害
及び再圧治療の知識が乏しいこと,1種装置を用いた
再圧治療の経験が無いかもしくは乏しいこと,1種装
置を用いた治療が学会の治療指針として認められて
いないこと等を挙げられた。その後も,1種装置の使
用に関連してシンポジウム等が開かれて様々な議論が
成され,1種装置を用いた治療の限界について複数の
施設から指摘され,1種装置を用いた治療が容易では
ないことが示された。また,現在のところ再圧治療
の実質上の指針となっている米海軍の治療指針が実
態にはそぐわない,具体的には再圧開始から10分以
内で症状が消失あるいは改善する例を経験したこと
がない,との意見も出されたが,それは米海軍の指
針が一義的にはあくまで新鮮例を対象としていること
による見解の相違の可能性がある。そこで,発症直
後に再圧治療を実施して速やかに軽快した症例を提
示して,米海軍の指針に当てはまる例も存在し,発
症から再圧治療までの経過時間が短ければ重症例に
も拘わらず再圧治療のみで速やかに完治する例もあ
ることをあらためて示しておきたい。そして,そこにこ
そ1種装置を用いる理由があることを強調していきた
い。
加証が必要である。⑦オブザーバー参加も認める。
⑧5年後(2021年)に継続を含め,運用を見直す。
45
日本高気圧環境・潜水医学会雑誌
パネルディスカッション1
圧気や潜水作業における減圧障害の現状
Vol.51 Supplement, Sep, 2016
パネルディスカッション1
第2種装置へのアクセスが困難な地区での
第1種装置を持つ医療施設の現状
望月 徹
株式会社潜水技術センター
櫻庭直達
独立行政法人 労働者健康安全機構
厚生労働省「業務上疾病調」によれば,建設業に
釧路労災病院 臨床工学部 臨床工学技士
おける異常気圧下の疾病者数は1989-2015年で 76人
となっている。蜂須賀らは 1996-2004年に自社施工
の圧気作業10現場で 79人に減圧症を認めたが,全
て現場での再圧処置により完治したと報告している。
我々も,圧気作業後に減圧症の症状を訴えた 92人に
対し現場で空気再圧が行われ,症状残存により医療
機関搬送となった 2人のみが業務上疾病とされた事例
を経験している。これらから,圧気作業では現場に
設けられた多人数用再圧室での空気再圧(Table 1A,
2A)が優先され,疾病として報告されるのは一部にす
ぎない現状がうかがえる。
潜水作業に関して,我々は第42回学術総会でアン
ケート調査結果を報告している。回答者253名のう
ち減圧障害の既往を有する者は 82名で,47%の者が
医療機関を受診したのに対し,34%は現場で空気再
圧(フカシを含む)が行われた。潜水では一人用小型
再圧室が多く用いられているが,これは潜水漁業用
の船上減圧装置から派生したものであり,長時間に
及ぶ再圧は考慮されていない。そのため,小型再圧
室での処置に懐疑的な者が多く,結果的に医療機関
受診比率が高くなっている。今なおフカシが行われて
いるのも同様の理由によるものであり,
「黙って我慢し
た」ものも17%に及んでいる。
現場での再圧事例が多い理由には,第二種再圧治
療施設の偏在があげられる。一方第一種装置は設置
施設数が多く,現場から短時間での搬送が可能であ
る。また,条件を整備すれば第一種装置でも対処可
能なことが,Weaverらによって報告されている。これ
らのことから,第一種装置の活用を検討すべきであ
る。また,減圧障害の専門的知識を有する医師が少
ないことにも原因がある。現場での処置に際して医師
の支援を望む声は以前より多いが,その体制は整備
されないままである。
不適切な状況の継続は,慢性減圧障害へのリスク
を増長する懸念もあり,医療支援体制の充実が急が
れる。
46
【はじめに】当院の病院は北海道にあり,北海道を大
きく区分すると東西南北,4区分にされている。釧路
市は 4区分の中の東側である道東方面に入り,南東側
の北方領土側に近い海の街である。
当院は病棟数450床,診療科16科の地域連携支援
病院であり,地域医療連携総合センターが開設され
ており,他職種により医療提供できる管制塔的な役
割をしている。
【体制】当院の高気 圧酸素治療(以下HBO)は,治
療装置が第1種装置を2台保有しており,計7名の臨
床工学技士(以下CE)と麻酔科医にて管理対応して
いる,高気圧専門医はいなく,各診療科の医師より
HBO依頼が届き,麻酔科医師が窓口となり指示を受
け,24時間オンコール体制にてCEが対応している。
【問題点と現状】北海道の高気圧治療装置は,国内
でも第1種治療装置の設置数は他県と比較すると多く
100施設以上は設置しているが,第2種装置は計3施
設だけであり,道東地区の第2種装置の施設はなく,
第1種装置のみの施設である。
当院は,海岸域都市部ではあるが減圧障害での対
策は,未だ出来ていないのが現状である。又,減圧
障害の疑いなどで,第2種装置への施設搬送も陸路,
空路共に峠越えがあるなど,搬送時間も数時間もか
かりアクセスが困難な地域でもある。更に当事者より
HBOについての直接電話や治療の受け入れ,減圧障
害の相談などもCEに電話が来ている。今回,このよ
うな対応や相談も含め,第1種装置を持つ医療施設
での現状を報告する。
【結語】
HBOの全国的な治療装置の設置や治療件数
の減少,その他,広範囲である北海道地区での専
門技師や専門医の取得や配置などが少ないなど,オ
ペレータ側のCEも苦悩する場面もある。又,専門性
を必要とする減圧障害などは,更に治療の受け入れ
態勢や治療情報も乏しい為,減圧障害だけではなく
HBO全体の啓発活動や教育面を医師,他職種医療
者,企業向けに講演企画するなど,今後,HBOを知
り得る良い機会として医療者に要視して頂けるような
構築も必要であると考えられた。
第 51 回日本高気圧環境・潜水医学会学術総会
パネルディスカッション1
減 圧 症治療に於ける第一種装置と第二種
装置の使い分け
パネルディスカッション1
酸素加圧型の第1種装置による応急治療の
後に第2種装置で標準治療を行う施設間治
療連携
清水徹郎 赤嶺史郎 向畑恭子
南部徳洲会病院 高気圧治療部
鈴木信哉
亀田総合病院 救命救急科
沖縄県における減圧障害(DCI)の治療対象患者
の多くは県外・国外からの渡航者である。ゆえに長期
のフォローアップができないため短期で治療を完結さ
せる必要がある。減圧障害の救急対応可能な施設の
減少により,治療患者数は年々増加の一方で直近3
年間は年間30例前後で,2016年は 8月末の時点で40
例を超えている。また,当院は屋上にヘリポートを有
しているため,離島からのドクターヘリ搬送も受け入
れている。
当施設では主室4名収容可能な第二種装置1台と空
気加圧第一種装置1台を併用している。年間の高気
圧酸素治療(HBO)
は約2600 ∼2800例であり,減圧
症(DCS)に対する治療は初回治療としてUSNTT-6
を標準としている。
減圧症患者の多くは日中のダイビングの後夕刻過
ぎに発症し,夜間来院することが多い。この場合は
日常業務としてのHBOはほぼ終了しているため,こ
れまで推奨されている第二種装置での治療は問題な
く施行できる。幸いなことに,これまでⅡ型減圧症,
空気塞栓症の治療に際し,装置内で急変・気管挿管
などの経験はない。
減圧症治療施設の減少は第二種装置の維持費が
高額である事がその一因であると考えられる。日常診
療として十分な治療件数を担保した上で高気圧酸素
治療が「不採算部門」の不名誉なレッテルを貼られる
ことのないようにしたい。このためには各診療科協力
の下,地域の病診連携を密にして計画的に日常から
HBO件数を確保することが経営上重要な課題となる。
ゆえに,あらかじめ予約された治療をキャンセルする
ことはできるだけ避けたい。
日中,救急・非救急を問わず,再圧治療を施行す
るとなれば治療圧・治療時間の関係から通常の治療
と並行して行うことは,通常の第二種装置では無理
である。予定治療を第一種装置に振り分けて行うか,
再圧治療を第一種装置で行うかの決断に迫られる。
当施設では不穏・輸液の必要な患者に対するHBO
も少なくなく,むしろこの場合は第二種装置での治
療が必 須となる。一方,全身状 態の安定している
DCI症例は十分安全に第一種装置でUSNTT-6の最
大延長も可能である。第二種装置が使用中の場合,
躊躇なく空気加圧第一種装置でマニュアル通りのAir
breakを取りながらUSNTT-6を行うことは十分可能と
考える。
減圧障害の治療は,1960年代にそれまでの空気
再圧治療から酸素再圧治療に変わり標準化されてい
る。Goodmanらは深度や時間を変えた純酸素による
治療データから統計学的に必要最小限の治療表とし
て,2.8絶対気圧(ATA)で 30分の保圧と酸素治療時
間90分を導き出し,必要十分な治療表として,酸素
中毒予防の空気呼吸(以下エア・ブレイク)を間に入れ,
治療時間が 1.5倍と3倍になる米海軍治療表(以下治
療表)5及び 6を考案した。
治療表6は,治療表5で治療開始10分以内に症状
が消失しない四肢の疼痛,もしくはそれ以外の症状
に適用される標準治療であるが,2ATAで治療を行う
通常の高気圧酸素治療(以下HBO)よりも高い酸素
分圧を用い治療時間も長いため,第1種装置では酸
素中毒の配慮が必要であり,よく管理された施設で
は細心の注意を持って使用されている。
エア・ブレイクが出来ない酸素加圧型の第1種装置
では,治療時間の短いHart-Kindwall 治療表により
ある程度の効果が期待できるが,治療表6との比較
検討は少なく,動脈ガス塞栓症などの重症例では予
後が不良となる可能性がある。更に第1種装置では治
療圧を2.8ATAまであげることが出来ない機種もある
が,2ATAのHBOで治療された脊髄障害型の減圧症
では,初回治療で半分を超える症例で症状が残り,
症状消失もしくは症状が安定するまで平均6回の治療
を要するとの報告もある。
減圧障害の治療成績を左右するのは,重症度と発
症から治療までの時間によるとされ,発症2時間以内
であれば初回治療成績は良好であり,重症例では発
症から12時間を過ぎると予後が悪く,後遺症を考慮
すると4時間以内での治療が推奨される。
以上を鑑みて,近隣に第2種装置がない場合,治
療効果として不十分の可能性があっても直近の第1種
装置の応急的な治療にて安定化を図り,ついで第2種
装置のある施設に搬送して十分な治療を行うことが,
治療戦略の選択肢となり得ることを呈示する。
47
日本高気圧環境・潜水医学会雑誌
パネルディスカッション2
岐阜大学医学部附属病院における消化器領
域疾患に対する高気圧酸素療法の有用性と
その特徴
Vol.51 Supplement, Sep, 2016
パネルディスカッション2
肝胆膵外科における高気圧酸素療法
(HBO)
の有用性
平井一郎 高橋良輔 菅原秀一郎 福元 剛
土井智章 豊田 泉 山田法顕 小倉真治
岐阜大学医学部附属病院 高度救命救急センター
【はじめに】当院における高気圧酸素治療
(Hyperbaric
Oxygen Therapy : HBO)は第1種装置が高度救命救
急センター病棟内にあり,高度救命救急センター医
師が臨床工学技士とともに治療および管理を行って
いる。今回,当センターで施行したHBO症例のうち,
消化器領域に対するHBOの有用性について検討す
る。
【現状】2004年10月∼2016年9月に消化器領域疾患で
HBOを施行した患者総数は 62例。平均年齢54.0±
20.7歳(4-90歳)。男:女=32:30であった。内訳と
してはイレウスが 55例,腸管気腫症3例,重症急性
膵炎による腹腔内膿瘍が2例,痔瘻と直腸腟瘻によ
る感染性瘻孔が2例であった。62例の平均HBO回数
は 6.4回(1-33回)。イレウス55例のうち機能的イレ
ウスが 32例,機械的イレウスが23例であった。機能
性イレウス32例ほぼ全例でHBOにて改善がみられた
が,機械的イレウス23例中10例はHBOを含む保存的
治療では改善せず,イレウスに対する手術を必要とし
た。腸管気腫症全例はHBOで改善し,膿瘍・瘻孔全
例においても改善傾向が見られた。
【当院の特徴】当院は高度救命救急センターとして機
能しているため,重症外傷に伴うイレウス症例が22例
と多い(頭部外傷・脊髄損傷による麻痺性イレウス,
出血性ショック後の麻痺性イレウス,外傷に対する開
腹術後の機械的イレウス等)。また産科救急(弛緩出
血後,帝王切開術後等)に伴うイレウス症例が多いの
も特徴である。当院はがんセンターとしての役割もあ
り,いわゆる癒着性イレウスはもちろんのこと,癌終
末期で手術不可能なイレウス症例に対しても積極的
にHBOを行いQOLの改善を図っており,良い結果を
得ている。
【結語】当院においての消化器疾患に対するHBOは病
院の性質上,多岐にわたっている。当院の治療成績
からは消化器領域においてのHBOは保存的加療の一
助となる可能性が示唆された。今回の検討に文献的
考察を加えて報告する。
48
手塚康二 渡邊利広 木村 理
山形大学 第1外科
【はじめに】高気圧酸素療法(HBO)は消化器領域で
はイレウス,腸間膜気腫症などに行われているが,肝
胆膵領域での報告は少ない。HBOは病的組織の酸
素分圧を高めるばかりでなく,局所の浮腫が軽減し
血流障害も改善する。当科では特に感染性の疾患
や術後合併症に対して手術やIVRでのドレナージの
みでの治療効果が少ないと考えられた肝胆膵外科関
連疾患に対しても補助療法としてHBOを行ってきた。
HBOの有効性について報告する。
【対象】肝胆膵外科関連の 29例に対し,32回のHBO
を行った。肝膿瘍8例,肝切除後の離断面感染3例,
膵頭十二指腸切除術(PD)後の膵液瘻・腹腔内膿瘍
6例,膵体尾部切除術後の膵液瘻・腹腔内膿瘍7例,
十二指腸穿通による後腹膜膿瘍2例,急性胆嚢炎2
例,脾膿瘍1例であった。
【全 症例の結果】全症例でのHBO平均 施行回数は
11.7回(4∼28回)であった。HBO開始時に 38度以
上の発熱を伴う22例で発熱からHBO開始までの期間
は平均5.2日(0 ∼27日)であった。29例でHBOが有
効でなく,他の治療法が必要であった症例は 3例であ
った。よってHBOは 90%(26/29例)
に有効であった。
無効の3症例は胆管癌肝転移の膿瘍化例,膵体尾部
切除術後の膵液瘻の1例,脾膿瘍であった。
発熱例でHBO開始から最高体温が 38度未満にな
るまでの平均日数は1.6日(0 ∼ 5日)
であった。
29例でのHBO開始時と終了後の白血球数は平均
11,472μlから6,806へと有意に低下した(p<0.001)。
平均CRP値は 12.1mg/dlから2.3へ 有意に低下した
(p<0.001)。
また興味深い症例のHBO前後の画像を提示した
い。
【結語】
1. HBOは他の治療手段の補助的な治療法ではある
が,液状化していない肝膿瘍,十二指腸穿通の後
腹膜膿瘍,肝胆膵手術後でドレナージ困難症例に
有効である。
2. HBOは 90%の症例に有効であり,有効例では平
均1.6日で解熱し,平均11.7回後に白血球数,CRP
低下,画像所見の改善が得られた。
3. HBOは嫌気性菌のみならず,好気性菌にも有効
である。
4. 抗生剤,ドレナージなどで改善が得られない場
合にはHBOも考慮すべきである。
第 51 回日本高気圧環境・潜水医学会学術総会
パネルディスカッション2
高圧酸素治療が奏功した小児腸管嚢腫様気
腫症の一例
パネルディスカッション2
イレウスへのHBO効果は何故に違うか?
高橋悠希 戸部 賢 中林洋介 高澤知規 齋藤 繁
田典久 瀧 健治 爲廣一仁
日比野英利
中島正一 日比野秀夫
群馬大学医学部附属病院 集中治療部
札幌東徳洲会病院,聖マリア病院
【背 景】腸管嚢腫 様気 腫 症(Pneumatosis cystoides
【背景】イレウスには絞扼性・癒着性・麻痺性イレウス
intestinalis;PCI)は,腸管壁内に嚢腫様気腫が出現
があり,腸管内圧の軽減や温湿布による血流改善,
する比較的稀な疾患である。治療は,高濃度酸素吸
薬物による腸蠕動亢進などの保存的治療法がある。
入療法や高圧酸素治療での有効性が報告されてい
そのなかでも,HBOTは麻痺性イレウスや癒着性イレ
る。今回,PCIを発症した 2歳の小児に対して,高圧
ウスに効果的であるが,腸管にガスと液体が混在して
酸素治療を行い,奏功したので報告する。
いるためか,症例によってHBOTの効果が異なる。そ
【症例】
2歳5か月,男児。既往は1歳4か月時より全身
性若年性特発性関節炎としてトシリズマブおよびステ
ロイド治療を受けていた。突然の間欠的な腹痛と茶
褐色の嘔吐を認め,緊急入院となった。腹部単純X
線撮影で上腹部に拡張した腸管ガス像を認め,CTで
は結腸の拡張と腸管ガスの増加を認め,腸管閉塞を
疑い緊急手術となった。開腹手術を行ったところ,腸
閉塞の原因は回盲部を先進部とする腸重積であった
が,上行結腸から横行結腸の漿膜下と腸間膜に多数
の気腫性変化を伴っており,PCIの診断となった。腸
重積に関しては,Hanchinson手技にて整復した。術
後4日目より高圧酸素治療を2週間で10回行った(酸
素気圧2気圧×60分×10回)。手術後3か月目のCT
検査ではPCIは消失していた。
【考察】PCI発症のリスク因子は,消化管疾患,慢性
閉塞性肺疾患,喘息,化学物質,薬剤,ステロイド
長期投与があるようであるが,小児の発症は極めて
稀である。本症例では,ステロイドが投与されており,
腸重積症を発症していたがその関連は不明である。
過去のCTをふり返って確認すると,原疾患発症時(1
歳4か月)の画像においても,結腸にPCIに合致する
こで,イレウス症例の腸管内ガス量とHBOT効果につ
いて検討した。
【目的】イレウス症例での腸管内ガス量の比率がどのよ
うに推移するか,治療効果との関係を明らかにする。
【 対象・方 法 】受 診した 麻 痺性・癒 着 性イレウスで
HBOTを施行した患者と施行しなかった患者を対象
として,発症時から治療2週間の腹部単純レントゲン
写真を一定の大きさに印画紙に印刷し,腸管内ガス
の領域と液体領域を切り取り,その印画紙の重量を
測定して腸管内ガス量と液体量の比率を重量法で概
算した。さらに,それらの腸管内のガス量と液体量の
比率を治療果と比較した。
【結果】
麻痺性・癒着性イレウス100例
(HBOT群48例,
非HBOT群52例)で,拡張腸管のガス部分の比率は
治療効果とあまり関係なかった。
【考察】
2ATAの高気圧下で腸管内ガスの体積は縮小
するが,液体はほとんど体積を変えない。そこで,腸
管内ガスの割合が多いほどHBOTは拡張した腸管を
縮小させるので,液体量の多いイレウスではHBOTの
効果が得られにくいと考え,ガス含量の多いイレウス
ガス像が確認でき,ステロイドの影響とは言いきれず,
にHBOTは活用されるべきと推察していた。今回の
原疾患による炎症の可能性も示唆された。PCIの高
研究で,HBOTの有効な症例があることを考慮すると
圧酸素療法は,血液中の酸素分圧上昇により気腫内
治療経過中のガス含有率に予後との関係が認められ
の主成分である窒素に代わり吸収されやすくなると考
ず,
HBOT以外の治療法との併用が治療結果を左右し
えられ,数日から数週間ほど行われている例が多い。
ていると推察された。
今回は 2週間に計10回行って改善を認めた。
【まとめ】小児に発生した腸管嚢腫様気腫に対して高
圧酸素療法を2週間行い,気腫の消失を確認できた。
【結語】
HBOTの治療効果はイレウスのガス含気量に
影響すると推察されたが,イレウスの治療には他の併
用療法が大切であると示唆された。
49
日本高気圧環境・潜水医学会雑誌
パネルディスカッション2
放射線腸炎に対する高気圧酸素治療・放射
線膀胱炎との合併も含めて
パネルディスカッション3
晩期放射線有害事象に対するHBOの経験と
期待
中田瑛浩1) 吉田泰行2) 藤平威夫3)
唐澤久美子1) 若月 優2) 小此木範之3)
安蒜 聡4) 唐澤久美子5) 五十嵐辰男6)
伊藤晴夫
6)
1) 栗山中央病院 泌尿器科
2) 栗山中央病院 耳鼻咽喉科
3) 栗山中央病院 外科
4) 千葉県立大網総合病院 外科
5) 東京女子医科大学 放射線腫瘍学科
6) 千葉大学医学部 泌尿器科
腸壁は,膀胱 壁に比し薄く修復能力が弱い。従
って内視鏡凝固手技が十分に行えない。放射線腸
炎の病 変 組 織には,結合 織の増殖,血管拡 張浮
腫,線維芽細胞の増殖,毛細血管のフィブリノイド変性
壊死が生じる(Nakada T et al: Dis Colon Rectum
1993;36:962-965.)。
したがって,血管の支配領域の虚血,酸素分圧の
低下が推測される。高気圧酸素(HBO)治療は,そ
れらの病変の改善に有効であることが放射線膀胱炎
で示されている。放射線腸炎の患者に,HBO治療及
び,組織の修復能力を亢進すると推測される低タン
パク改善処置を試みた。
平均73歳の放射線腸炎患者に,HBO治療を絶対圧
2気圧1回90分にて施行した。若干の患者に対して,
HBO治療+低タンパク改善治療も同時におこなった。
87%で放射線 腸炎の改善がみられた。放射線 膀胱
炎,放射線腸炎の合併症例でも有効であった。
放 射線 障 害の本 態は,進行 性の閉塞性 動脈 炎
と見做されており, 虚 血 組 織 で 低 酸 素 状 態 の 軟
部 組 織 の 改 善 にprecapillary vesselの 発 育(Marx
RE et al:Am J Surg1990;160:519-524)collagen,
non-collagenous proteinの 代 謝 亢 進(Nakada T et
al:Plast Reconstr Surg 2006;117:646-651)が 重 要
な役割を果たすと推測されている。HBO治療を試行
すると十分な酸素が病変組織に取り込まれることが
知られている。しかしながら長期の成績は報告例が
少なく,有効性も短期間とする発表も散見するように
なった。自験症例では効果の得られない重篤な症例
もあったが,他に有効な治療法がほとんどなく,試
みる価値があるように推測された。
50
Vol.51 Supplement, Sep, 2016
1) 東京女子医科大学 放射線腫瘍学講座
2) 自治医科大学 医学部 放射線医学講座
3) 量子科学技術研究開発機構 放射線医学総合研究所
放射線療法は世界的にはがん患者の半数以上に使
われている治療法であるが,日本では理解が遅れ利
用率は 30%程度に留まっている。放射線療法は病巣
(主として悪性腫瘍)と正常組織の放射線感受性の差
を利用しており,悪性腫瘍などの増殖が盛んな組織
は放射線によるDNAの損傷を受けやすく細胞死に至
りやすい。正常組織の放射線感受性は一般的には低
いが,中には長期経過後にダメージが顕在化してくる
組織がある。その代表が小血管内皮である。進行性
閉塞性小血管内膜炎は組織の虚血,萎縮,壊死を
引き起こし,臨床的には,粘膜表面の毛細血管拡張
による下血や血尿,疼痛,便通障害,排尿障害,顎
骨壊死などを引き起こす。これらの変化が顕在化す
る症例は全体の1%以下に過ぎないが,不可逆性進
行性変化であり治療には難渋する。HBOは数少ない
治療の選択肢の一つであり,出血や疼痛に対する対
症的投薬,ステロイド投与と共に難治例に対して選択
されている。
今回,放射線医学総合研究所で,光子線治療ある
いは炭素イオン線を行った子宮頸癌症例で放射線性
直腸炎あるいは膀胱炎に対してHBOを行った 8例に
ついて遡及的に検討した。放射線療法は,光子線治
療 1例(外部照射50.8Gy+腔内照射13Gy)
,炭素イオ
ン線 7例(72Gy(RBE)5例,74.4Gy(RBE)2例)で,
CDDPが 2例で併用されていた。直腸炎あるいは膀
胱炎の出現時期は放射線治療開始から6か月∼8年2
か月,中央値1年,HBO開始時期は放射線治療開始
から6か月∼15年5か月,中央値2年であった。HBO
は 10回∼100回,中央値33回行われ,全例で症状
の改善を認めていた。
最近,Lancet Oncologyに骨盤放射線療法後の慢
性腸機能障害に対してHBOと擬似治療での無作為
比較第Ⅲ相試験が掲載された(2016 Feb;17(2):22433)。HBO群は酸素濃度100% 2.4気圧, 擬似群では
酸素濃度21% 1.3 気圧を用い,週5日8週間継続(合
計40回)して治療を行ったが,両群で腸関連症状の
改善に有意な差はなかったと報告された。この結果
は,過去における第Ⅲ相試 験(Int J Radiat Oncol
Biol Phys. 2008 Sep 1;72(1):134-143)の結果を覆
すものであったが,他に有用な治療がない中,放射
線腫瘍医としてはHBOの有用性に期待し,最適な施
行法についてご検討いただきたいと希望している。
第 51 回日本高気圧環境・潜水医学会学術総会
パネルディスカッション3
俯瞰:HBOに晩期放射線障害の解決を期待
してよい根拠を地球生物学から話してみよう
パネルディスカッション3
前立腺癌陽子線治療後の晩期障害に対する
高気圧酸素治療∼治療成績と診療の背景∼
岸 和史
丹羽康江1) 松田健太郎2) 名川博之2)
社会医療法人孝仁会 北海道大野記念病院
札幌高機能放射線治療センター
【はじめに】この発表は様々な学会やセミナーで取り上
げてきた内容のダイジェストを基本にしています。本
日の話の目的は,高気圧酸素治療(HBO)が晩期放
射線障害の治療に役立つ背景と理由を理解すること
で,HBOが有効でない場合に考えられることへの対処
方法も掴んでいただくことです。
溶存酸素の歴史を説明します。ヘンリーの法則で
は溶存する気体は気圧と正比例します。溶存酸素を
考えて以下の物語を考えてください。46億年前の地上
には酸素はほとんどなく,大気は重い炭酸ガスで覆
われ 90気圧あります。金星は今もそのままです。微
量元素の海水中への溶出後に有機物が発生し,最初
に繁茂した古細菌(嫌気性腐敗菌)は追って繁殖した
光合成菌が作る酸素で大量死します。5.42億年前の
カンブリア紀のあと,石炭紀に植物が繁茂し酸素は
増え,ジュラ紀のあと白亜紀に酸素濃度は 35% に達
します。二酸化炭素がまだ多く気圧が高く羽根のな
い鳥が空を飛べました。この白亜期の終わりに類人
猿が誕生しています。しかし類人猿はすぐに酸素濃
度が 15%程度にまで低下するイベントを経験します。
私たちの歴史は溶存酸素の減少の歴史といってよい
でしょう。それに抵抗するように,生き物はヘモシア
ニン,ヘモグロビンの進化や,循環系の発達を成し遂
げてきました。
極度の低酸素では血管内皮細胞は生存できず,し
たがって脈管を構築できません。はやすためには,
赤血球は来ないので溶存酸素に頼るしかありません。
いかにして溶存酸素を増加させるかは,太古の空気
圧と酸素分圧をお手本にするのが,経験のある範囲
内でベストの戦略と考えます。2気圧100%が自然かど
うかも議論すべきかもしれません。放射線障害がどの
ようにして健全な血管の新生を阻害し,どのような溶
存酸素があれば回復するかは講義のなかでお話しで
きるでしょう。
このダイジェストでは不妊,認知,腫瘍の発生に関
する最新の情報にも触れ,私たちが生まれ育った太
古の酸素環境について思いを巡らせてみたいと思い
ます。
大江与喜子2)
1) 医療法人徳洲会 宇治徳洲会病院 放射線治療科
2) 医療法人財団樹徳会 上ヶ原病院
【緒言】前立腺癌は放射線治療技術の高精度化や治
療モダリティの多様性により前立腺に限局して高線量
を投与できるようになった。しかし発生率は少ないも
のの難治性の晩期障害を生じる場合がある。諸外国
では晩期障害に対して高気圧酸素治療(HBO)の報
告は多いが陽子線治療に限定した報告はない。今回,
前立腺癌陽子線治療後の晩期障害に対するHBO の治療成績について報告する。
【症例】兵庫県立粒子線医療センターで 2004∼2012
年に前立腺癌への陽子線治療を施行し,血尿ある
いは血便を来たしHBOを実 施した 13例を対象とし
た。陽子線照射線量:74-80GyE/37-40回(中央値
74GyE/37回)であった。
(結果)晩期障害は直腸出血
7例,尿路出血6例であり,HBO総治療回数23-280
回(中央値80回)であった。CTCAE ver4.0で直腸出
血Grade2/1/0は,HBO開始時7/0/0,終了時1/6/0,
最終時0/2/5であり,止血率5/7(71%)であった。尿
路出血Grade3/2/1/0は,HBO開始時2/3/1/0,終了
時0/2/2/2,最終時0/0/1/5であり,止血率5/6
(83%)
であった。治療前及び治療期間中の内視鏡的焼灼術
の介入は,直腸出血2例(前1:治療中1)
,膀胱出血
2例(前1:前及び治療中1)。再燃率は 4例(31%),2例
がGrade2でHBOを再開しいずれも治癒/改善した。
【考察】上記の結果から,直腸出血,尿路出血とも高
い治療効果を示した。再燃症例が認められたが,再
治療により完治でき,かつより少ないHBO治療回数
で制御できた。内視鏡焼灼術がHBOに先行して行わ
れた場合でも治療効果を発揮していた。救急疾患と
比べ治療回数が長く,治癒までに時間を要すること
は一つの問題であり,今後新しい治療方針の検討が
望まれる。
51
日本高気圧環境・潜水医学会雑誌
パネルディスカッション3
放射線性放射性膀胱炎の本態と治療
―高気圧酸素治療の有効性と限界―
パネルディスカッション3
遅発性放射線障害を有する患者の臨床的
特徴と高気圧酸素治療に伴う合併症
中田瑛浩1) 吉田泰行2) 藤平威夫3)
榎本光裕1) 前田卓馬1) 小柳津卓哉1)
安蒜 聡4) 唐澤久美子5) 五十嵐辰男6)
大久保 淳1) 宮本聡子1) 山本素希1)
伊藤晴夫6)
後藤啓吾1) 小島泰史1) 大川 淳2)
1)
栗山中央病院 泌尿器科
2)
栗山中央病院 耳鼻咽喉科
3)
栗山中央病院 外科
4) 千葉県立大網総合病院 外科
5)
東京女子医科大学 放射線腫瘍学科
6) 千葉大学医学部 泌尿器科
【 はじめに】放 射 性 膀 胱 炎 の 治 療 に 高 気 圧 酸 素
(HBO)が有効であるとの報告がなされている。しか
し,長期間治療の成績は少なく,強い血尿が生じる
ので,時に救命処置が必要である。本疾患の特徴,
治療法について述べる。
【対象および方法】
1988.1∼2013.2放射性膀胱炎患
者87例を検索した。HBO治療は,絶対圧2気圧にて
90分/日施行した。病変部位の結合織蛋白の病態,
加齢による影響を測定した。若干のヒト皮膚潰瘍組
織も検索した。内視鏡的止血操作法などについて述
べる。
【結果および考察】
HBO治療を受けた潰瘍組織は線
維芽細胞が出現し,やがてCollagen(C)組織が増生
し潰瘍は治癒した。患者の膀胱組織は,
2年間のHBO
治療により,C含量は 109%増加し,13年後には治療
前レベルにもどった。同様な傾向がNon-Collagen-P
(NC-P)にも見られた。Elatin(E)含量は 2年後にも
変わらず,13年後には 36%上昇した。即ち,病状の改
善とともに,上記蛋白代謝亢進が推測された。血尿
は 86%の患者で改善し,81%で輸血を要したが,93%
で輸血が不要となった。苦痛の原因は,頻回の輸血
(r=0.88)
, 強 度の血 尿(r=0.74)であった。HBO治
療の無効例は照射線量が高く(78Gy以上)
,照射か
ら血尿までの期間が短く(2年以下)
,血尿からHBO
治療開始までの期間が長い(3年以上)傾向にあった。
血尿が生じたなら早期にHBO治療を開始すべきであ
る。血尿が軽微ならHBO治療,中等度ならアルム液
による膀胱潅流,輸血,進行例では経尿道的電気
凝固,内腸骨動脈塞栓,時には尿路変更術も必要で
ある。合併病変(膀胱癌,膀胱結石,前立腺疾患)が
偶然,見つかることもある。もし高気圧酸素治療で
血尿が改善せず,閉鎖神経反射が生じやすければ,
TURis膀胱ファイバー処置が極めて有効である。
【結語】本疾患に対するHBO治療は,C,NC-P,Eの代
謝亢進とともに病状が改善する。TURis膀胱ファイバ
ー治療は,重篤な血尿の改善に有効である。しかし,
不幸な転機を示す症例もあり,忍耐強い治療が必要
である。
52
Vol.51 Supplement, Sep, 2016
柳下和慶1)
1) 東京医科歯科大学医学部附属病院 高気圧治療部
2) 東京医科歯科大学大学院 整形外科学分野
【目的】当院では,遅発性放射線障害(late radiation
tissue injury :LRTI)
を有する患者に対して高気圧酸
素治療(HBOT)を施行している。今回,当院高気圧
治療部を受診したLRTI患者の臨床的特徴を明らか
にして,HBOTに伴う耳痛等の合併症の頻度や治療
経過を調査し,LRTI患者に対するHBOTの安全性に
ついて検討した。
【対象】
2016年3月から2016年8月まで当治療部のデ
ータベースに放射線性障害として登録した症例を抽出
し,診療録からLRTI の原疾患,既往歴,胸部画
像所見,呼吸機能検査,治療経過を調査した。
【結果】放射線性障害の登録は 25名(平均年齢65歳,
男性15名,女性10名)であった。原疾患として前立
腺癌9名,子宮体癌・頸癌8名,口腔内癌3名,咽頭,
食道癌4名,肛門管癌1名であった。原疾患以外の癌
既往が 6名と多く,リンパ節転移等の担癌状態は 3名
であった。放射線障害として出血性膀胱炎,直腸炎,
顎骨壊死が半数以上であった。呼吸機能検査を実施
した16名中4名に閉塞,拘束性障害を認め,胸部画
像でブラなどの異常所見を認めたのは 10名であった。
受診時無症状,自然気胸既往の2名を除いた 23名に
HBOTを施行した。平均治療回数は 24回であった。
HBOT施行時に耳痛を有した症例は 4名であった。8
名は,治療途中での耳痛や出血等で外来通院が困難
となった。重篤な合併症としてHBOT中に酸素中毒
様の症状と治療後の気胸があった。
【考察】LRTI患者は,原疾患以外の癌既往が多く診
療情報提供書の内容,画像所見を十分検討する必要
があった。ただし,担癌状態でも有害事象の治療が
優先する状況ではHBOTを実施していた。HBOTに
伴う耳痛は,当院で調査した過去の報告(15%)と同
程度であった。本症例の半数以上は,治療が長期化
しても合併症なく治療を終了しているものの,過去当
院での経験がなかった酸素中毒,治療後の気胸の発
症を認めた。LRTI患者の場合,LRTIに対する評価
に加え,HBOTに伴う合併症について十分なインフォ
ームドコンセントが必要となるであろう。
第 51 回日本高気圧環境・潜水医学会学術総会
パネルディスカッション3
放射線治療による皮膚障害に対する高気圧
酸素療法の有効性
パネルディスカッション3
当院における放射線障害に対する高気圧酸
素治療
平塚理沙1) 関根万里1) 土居 浩2)
大江与喜子 松田健太郎 名川博之
1) 公社荏原病院 皮膚科
2) 公社荏原病院 脳外科
今回我々は,高気圧酸素療法で治療した放射線皮
膚障害を4例経験した。1例は,60代女性。心筋梗塞
の心臓カテーテルを施行した後に背部に潰瘍を形成。
高圧酸素療法を約半月で 10回施行。潰瘍部は植皮
を行い,生着が良好となり上皮化した。2例目は,70
代女性。右乳癌の放射線治療後の同部位に皮膚潰
瘍が出現。外用薬を使用するも改善がないため,放
射線治療後約25年を経て高圧酸素療法を開始した。
ゲーベンやプロスタンディン軟膏などの皮膚潰瘍治療
薬を併用し,高気圧酸素療法を約2年4か月で計129
回施行し,潰瘍は上皮化した。3例目は,両側乳癌
の 40代女性。乳房温存治療で約1か月放射線治療を
施行。治療部位に一致して両側乳房の発赤・乳頭部
の潰瘍が出現した。アズノール軟膏を併用し,高圧
酸素療法を約3か月で計16回施行。潰瘍は上皮化し
た。4例目は,40代女性。右乳癌に対して,約1か月
放射線治療を施行後,頸部・腋窩には色素沈着,乳
頭部に皮膚びらんが出現した。アズノール軟膏を併用
し,高圧酸素療法を計10回施行。皮膚びらんは上皮
化した。高圧酸素治療は難治性の放射線皮膚障害
に対して有効である。
丹羽康江
樹徳会 上ヶ原病院
手術や化学療法不能の癌や末期癌に盛んに行わ
れた放射線治療であったが,照射技術や線源の進歩
によって著しく生命予後を改善している。しかし晩期
障害が発症すると,一旦癌から解放された患者にとっ
て,いちじるしくQOLを低下させる要因となっている。
放射線治療後の晩期障害として,骨髄炎,腸粘膜・
膀胱粘膜の出血,潰瘍等,時には出血が止まらず生
命に危険を及ぼすことさえある。しかし晩期障害が出
現してからは,放射線治療医の手を離れ,その障害
部位の専門分野の管理に任されることが多い。
高気圧酸素治療は,放射線によって壊死化した組
織に高濃度酸素を供給することによって,粘膜の修
復を促進し,出血や潰瘍の治療を目指す。
当院では,2009年から,放射線治療医からの紹介
に基づき放射線照射後の晩期障害に対して高気圧酸
素治療を開始し,良好な結果を得ているので報告す
る。同時期の高気圧酸素治療症例数222例中89例
が放射線障害であった。前立腺癌,または子宮癌治
療後の出血性膀胱炎,潰瘍が16例。出血性直腸炎,
潰瘍が 19例。頭頸部癌治療後の上(下)顎骨骨髄炎
が 23例。口蓋,舌の潰瘍,壊死が 9例,そのほか,
皮膚,食道,神経障害などであった。治療回数は,4
回以下の脱落を除くと18回から155回。100回以上が
10例。30から60回が最も多く33例であった。
急性期の病態ではなく,ほとんどすべての症例が,
泌尿器科や,消化器内科,耳鼻科で焼灼術等の前
治療を何度もされており,それでも難治性として高気
圧酸素治療にたどり着いた症例である。残念ながら,
治療中に癌の再発を見た例もあるが,良好な結果を
得た症例も多く,今後治療の標準化を目指したい。
53
日本高気圧環境・潜水医学会雑誌
Vol.51 Supplement, Sep, 2016
ワークショップ
杏林大学における高気圧酸素(HBO)治療
教育の現状と今後の課題
ワークショップ
臨床工学技士養成施設における高気圧酸素
治療教育の現状と今後の課題
中島章夫1) 須田健二1) 村野祐司2)
廣瀬 稔1,2) 小鷹丈彦1) 工藤元嗣1)
1) 杏林大学保健学部 臨床工学科
2) 杏林大学医学部付属病院 臨床工学室
中島章夫1) 木村主幸1)
1) 日本臨床工学技士教育施設協議会 教育委員会
2) 北里大学医療衛生学部 医療工学科臨床工学専攻
【背景・目的】臨床工学技士法制定から今年度で 30年
目となる。医療技術の進歩や臨床工学業務の発展と
【背景・目的】日本臨床工学技士教育施設協議会(以
ともに,教育現場での教育実態も変化してきた。本
下,協議会)では,教育水準の向上を目指して,加
WSでは,現在の臨床 工学技士(以下,CE)教育や
盟施設の座学・実習,臨床実習等の現状と問題点を
HBO教育の状況を下に,杏林大学,及び臨床実習
把握し,臨床工学技士養成教育の在り方等について
施設でのHBO治療に関連する教育の実態について紹
検討している。本WSでは,協議会で行った高気圧
介し,HBO分野における今後の学内教育,および臨
酸素治療(HBO)に関連する学内教育および臨床実
床実習の在り方等について協議したい。
習に関連するアンケート調査の結果を紹介し,今後の
【CE教育におけるHBO】
CE免許は,CE法第14条,及
びCE養成所指定規則に基づき,指定された年限・科
方々と検討したい。
目を履修した上で,CE国試に合格することで取得でき
【アンケートの内容・結果】アンケートは平成27年4月に
る。その試験科目は,CE国家試験出題基準(H24年
行い,加盟施設64校中25校から回答を得た(回答率:
版)にて9分野に分かれており,HBO治療は「専門科
33.8%)。座学については,88%の施設で呼吸療法の
目:生体機能代行装置学:呼吸療法装置」の中に原理
一部(2∼3コマ:90分/コマ)に設定し,72%の施設で
構造や安全対策,日常・定期点検項目として含まれて
いる。180問出題される国家試験にて,
HBO関連問題
は,臨床医学的内容含め毎年2∼3問が出題されてい
る。一方,CE養成を行っている大学・専門学校・専攻
科課程等は,現在全国で 72校(84施設),養成定員
数は 3,826名である。これら養成施設では,臨床工
学講座(全15タイトル:医歯薬出版)
が主に教科書とし
て使用されているが,HBO関連については「生体機能
代行装置学 呼吸療法装置(全257p)
」の中,酸素
療法含めて31p分記述されている。
【杏林大学でのHBO治療教育の実態】本学臨床工学
54
学内教育および臨床実習の在り方等について会場の
学内教員が担当するものの,うち66%は臨床経験を
有していないことが分かった。学内実習については,
32%の施設で実施(1∼4コマ)しているものの,HBO
装置や設備がないという理由から68%の施設で実施
していないことが分かった。臨床実習については,
学生全員が実施している養成施設は16%,一部の学
生が実施しているが 80%,実施していないが 4%であ
った。臨床実習期間は半日が 44%,一日が 48%,2日
以上が 4%であった。また,未実習生に対しては,時
間や実習施設の不足で実施していないという回答が
大半を占めた。
【考察・結語】養成施設ではHBOに関する座学や学内
科(定員40名)は,2006年4月に東京都で初めての大
実習および臨床実習について,質・量とも不足を感じ
学養成施設として開校し,今年で 11年目を迎える。
ているものと考える。また,臨床実習は実習施設の
養成所指定規則に基づいたカリキュラムの下,呼吸療
確保が難しいこともあり,実習自体を励行項目として
法装置関連の専門科目は,講義・実習を1科目ずつ行
受け止めているという意見もある。このような状況下
っている。HBO装置がないため学内実習は行ってい
で,教育レベルを維持するためには,養成施設側と
ないが,講義15コマ中約2コマで酸素療法,HBO関
して学内講義への業務経験者の招聘,業務未経験
連の講義を行っている。臨床実習では,本学付属病
者の研修体制などの努力が,日本臨床工学技士会や
院を含め関東内の 20施設中,自施設内でHBO装置
本学会技術部門および協議会としては教育用DVDの
実習を実施しているのは 8施設にとどまる。本WS で
作製(臨床実習前に必読)および最低限の臨床実習
は,これら学内講義や臨床実習でのHBO教育の実
指導項目の設定などについて早急に検討する必要が
態を紹介する。
ある。
第 51 回日本高気圧環境・潜水医学会学術総会
ワークショップ
日本臨床工学技士会におけるHBOT教育の
取り組みと当院の学生教育(臨床実習)
体制
ワークショップ
高気圧酸素治療における臨床実習の実際
赤嶺史郎1) 向畑恭子1) 清水徹郎2)
原田俊和1) 廣谷暢子2) 高倉照彦3)
1) 熊本大学医学部附属病院 医療技術部 ME機器センター
2) 公社)日本臨床工学技士会 高気圧酸素治療業務検討委員会
3) 公社)日本臨床工学技士会 高気圧酸素治療検定委員会
1) 医療法人 沖縄徳洲会 南部徳洲会病院 臨床工学部
2) 医療法人 沖縄徳洲会 南部徳洲会病院 高気圧酸素治療部
当院の臨床実習においては 2007年以降これまで計
14人を受け入れており,2017年からは 3つの養成校か
【はじめに】高気圧酸素治療(HBOT)
装置操作者の多
らの受け入れを予定している。臨床工学技士(以下:
くは臨床工学技士(技士)であり,公社)日本臨床工
CE)の臨床実習においては計180時間以上となってい
学技士会(日臨工)は平成24年HBOT技士業務指針
(HBOT指針)を作成した。多くの技士がこのHBOT
指針を基に,業務展開していると思われる。今回,
私は日臨工の担当理事の立場で日臨工の学生教育関
連活動に触れ,自施設の学生教育の一部を紹介しな
がらHBOT分野の学生教育を考えてみたい。
【日臨工の学生教育関連活動】学生教育と関わりのあ
る活動は日本臨床工学技士教育研究会と臨床実習指
導者研修会の開催である。HBOT分野では特に第25
るが,当院では,血液浄化・ICU(人工呼吸器)
・手
術室(人工心肺)
・医療機器管理を中心に,HBO・内
視鏡・心臓カテーテル・ペースメーカー・SAS外来と多
岐に渡ることから,HBOは他業務との兼ね合いによ
り例年3日間(約24時間)程度の時間配分で行ってい
る。しかし当院HBOは業務ローテーションのため指
導者の固定ができないことから,実習指導評価につ
いては独自に作成した評価基準(5段階評価)を活用
回日本臨床工学会の中でWS-9「高気圧酸素治療に
し,各実習日のHBO担当者サインを実習指導責任者
おける学生実習の現状‐養成校・実習指導者が求め
が確認することにより指導状況を把握している。実
るもの・求められるもの‐」を企画した。養成校側は
習指導項目は,保守点検(機械室含む)
・安全基準・
HBOT装置保有施設が少なく,実習施設確保に難渋
適応と効果・再圧治療の大項目4・小項目20となって
されるため,HBOT実習は必ずしも臨床実習に必要な
おり,最終日に簡易テストを行い実習指導後の理解
いとの意見もあった。指導者側からは第2種装置,第
度を確認している。実習生にとっては希少で大型の
1種装置保有施設から実習時間の問題や安全教育を
第2種装置はインパクトが強く,加圧体験や業務終了
中心に取り上げるため,恐怖心だけで業務に対する
後の手動操作を希望することも多いため,体験型の
興味がわかないなどの問題点もあがった。
実習内容も追加している。これまでの実習生へのイ
【当院での臨床実習】当院は 4校の養成校臨床実習
ンタビューから,養成校においては 1コマ程度の授業
生を受け入れている。HBOT実習時間はICUと合わ
でかつHBO臨床経験のない講師であるなど教育の不
せて半日程度である。HBOTにかける時間は約1.5時
備は否めない。しかしCEは他職種と比較すると圧倒
間であり,見学を中心に説明を加えている。内容は
的に少ない実習期間しか設けられていない中,養成
HBOTの原理としくみ,始業点検や酸素療法ならび
校で十分な教育を受けていなくても,臨床実習で経
に適応疾患などの効能,副作用・合併症,事故と注
意点などである。
【まとめ】養成校の基礎教育がどの程度なされている
か,HBOT装置保有施設がない状況での臨床実習の
在り方,HBOT装置保有施設での臨床実習にかける
実習時間の割合など多くの問題が存在する。養成校
卒業後,
HBOT分野に就職する新人の基礎力を培う上
で,学生教育の在り方を再考する余地があり,日臨
験していなくとも,卒後CEであればHBO装置の操作
は可能であることから,各HBO施設におけるオペレー
ターの教育体制の整備は必須であり,我々HBO臨床
実習施設の役割も大きい。今後はHBO臨床実習時間
の確保や実習時間の選定および実習内容の参考とな
るガイドラインの作成など,本学会や臨床工学技士会
および養成校における協議が必要である。
工として何ができるかを一緒に検討したい。
55
日本高気圧環境・潜水医学会雑誌
ワークショップ
臨床工学技士養成課程における高気圧酸素
治療教育の課題
―講義および臨床実習後のアンケートから―
濱田倫朗 坂上正道 管田 塁 堺 美郎
荒木康幸
社会福祉法人 恩賜財団
済生会熊本病院 臨床工学部門
【はじめに】臨床工学技士養成にあたり,臨床工学技
士養成学校養成所指定規則では実習施設にHBOT
装置を有することになっているが,年々設置施設が減
少し,条件を満たさない実習になる場合がある。また
HBOTの講義も呼吸療法装置学の1分野としての位
置づけで,学生の関心が高い項目ではないと思われ
る。当院では 4校の専門学校・大学から学生の臨床実
習を受け入れ,うち1校では非常勤講師としてHBOT
の講義を行っている。今回,HBOTの講義と臨床実習
後のアンケートで,学生の意識変化を調査して課題を
探り,対応策を検討したので報告する。
【対象と方法】アンケートは,2013年専門学校2年生43
名に対し16時間のHBOT講義後にその内容に関する
こと,そして2014年3年生37名の臨床実習終了時に
実習全般について実施した。これをもとにHBOTに
おける臨床実習の課題を明らかにし,実習時間と実
習内容の変更を検討した。また,2015年の講義では
内容にも工夫を加えた。
【結果】講義後62.8%の学生がHBOTに「興味がある」
と答えていたが,臨床実習後は 27.0%に減少し,働
きたい分野でHBOTを選んだ学生は 18.9%であった。
対応策として,実習時間を他の実習項目と調整するこ
とで,実習日数を1日から3日間に増やし,さらに実習
内容を見学中心の実習から体験型実習に変更した。
講義では,圧力変化の観察や圧縮熱・膨張熱など身
近に体験できる話題を提供することに努め,2015年の
講義後の「興味がある」は 79.0%に上昇した。
【まとめ】これまで当院でのHBOT臨床実習は 1日で,
見学と安全教育に重点を置いていたため理解が浅く,
興味よりも恐怖を覚えて帰る学生が多いと思われた。
実習時間の確保と装置での閉鎖空間体験やシミュレ
ーションとしての加圧・減圧操作など,実習内容の充
実により学生のHBOTに対する就業意欲改善につな
がることを期待したい。また講義では,日常生活で
経験できる事象と関連づけて説明することで興味が
わき,HBOTへの関心が高まると考えられた。
本ワークショップでは,臨床工学技士養成校にお
けるHBOTの講義や実習時間が減少傾向にある中,
学生が興味を抱き関心を持つような各施設での工夫
を共有し,HBOTの発展につながる議論を進め,関連
機関への提言につなげたい。
56
Vol.51 Supplement, Sep, 2016
一 般 演 題
日本高気圧環境・潜水医学会雑誌
一般演題1-1
千葉労災病院高気圧酸素治療における眼科
疾患への治療実績報告
Vol.51 Supplement, Sep, 2016
一般演題1-2
耳 管 機 能 検 査 計を用いた内 耳 気 圧 外 傷
(Inner ear barotrauma; IEB)
患者の耳管機
能評価
長見英治1) 久我洋史1) 小倉 健1)
堀川俊之介1) 岡崎 徹1) 牧之内 崇2)
北島尚治 北島明美 北島清治
1) 独立行政法人 労働者健康安全機構 千葉労災病院 臨床工学部
2)
独立行政法人 労働者健康安全機構 千葉労災病院 循環器内科(高気圧酸素治療専門医)
北島耳鼻咽喉科医院
近年,海洋スポーツの流行に伴いダイビング後のト
【背景】千葉労災病院(当院)における眼科疾患に対し
てHBOを実施した症例を後ろ向きに検討したので臨
床工学技士の視点から報告する。
【結果】
検討期間は2010年から2016年6月で,
7例
(男5)
,
年齢44∼78歳,
HBO回数は1回∼5回だった。糖尿病
(DM)および高血圧(HT)が 4例,HT2例,子宮筋腫
による血栓が原因と思われるのが1症例だった。
1症例は酸素加圧でそれ以外は空気加圧O2:10L/
minリザーバーマスク(RM)で実施した。
症 例 1:70 代 男(DM,HT)
, 糖 尿 病 性 網 膜 症:
2.5ATA酸素加圧3回:1回目左端の見える範囲が広が
り2回目左端の中央部分も見えるようになった。
症例2: 40代女(子宮筋腫),右眼網膜中心動脈分
枝閉塞,発症3週間後に来院,2.5ATA10L/min RM
3回:治療前後で変化なし。
症例3:60代男(DM,HT)
,左眼 網膜中心動脈閉
塞症:2.5ATA10L/min RM 1回:左側半分くらい見え
るようになった。
ラブルが増加傾向にある。内耳気圧外傷(IEB)は主
に潜水時の耳管機能障害に起因して生じる内耳障害
であり,難聴やめまいを生じ症状は重篤である。今
回我々はIEB患者の耳管機能について検討し興味深
い結果を得たので報告する。
症例はダイビング後にIEBを診断した16例である。
正常ダイバー20例をコントロールとしIEB群と比較検
討した。耳管機能検査にはJK-05(RION)を用いイ
ンピーダンス法で評価を行った。
IEB群の 8割で耳管狭窄症を認め,そのうちの 4割
でめまいを生じていた。IEB群の耳管機能は正常群
と比して有意に低く,バルサルバ後の耳管開大機能
が悪いほど重篤になりやすかった。
今回の検討でIEBが耳管機能障害と深く関連する
ことを定性・定量的に確認することができた。ただし
IEBは必ずしも耳管機能障害があるダイバーのみに生
症 例 4:70 代 男(HT), 左 眼 網 膜 動 脈 閉 塞 症:
じるわけでなく,ダイビング技術や体調,心理状況
2.5ATA10L/min RM 3回:若干視野の広がりがあっ
にも影響されるため,今後の課題としてそれらの点か
た。
らも検討していく必要があるだろう。
症例5:70代女(DM,HT)
,右眼 網膜動脈分枝閉
塞症,2.0ATA10L/min RM4回:症状は目立った改善
Kitajima N et al. Quantitative analysis of inner-ear
は無いが,瞼の重い感じは軽度改善した。
barotrauma using a Eustachian tube function analyzer.
症 例 6:70 代 男(HT), 左 眼 網 膜 動 脈 閉 塞 症,
2.0ATA10L/min RM 3回:直後に変化はなかったが
1週間後にGPで少し視野が残存
症例7:70代男(DM,HT)
,左眼網膜中心動脈閉塞
症,2.0ATA10L/min RM 5回:眼科的な視力検査で
の改善は認められなかったが,明るい方向がわかるよ
うになった。
【まとめ】視力低下の患者にとっては光が差す方向が
わかるだけでもADL・QOLは各段に上がるため,
HBO
がその一助を担うならば今後も可及的速やかに治療
を実施することが重要である。
58
Diving Hyperb Med. 2016 Jun; 46(2)
:76-81.
第 51 回日本高気圧環境・潜水医学会学術総会
一般演題1-3
高気圧酸素治療の初回治療時における耳痛
発生の検討
一般演題2-1
当院の高気圧酸素治療における現状と課題
―CEの役割―
前田卓馬1) 大久保 淳1) 宮本聡子1)
三春摩弥1) 吉岡 淳1) 石山智之1)
山本素希1) 後藤啓吾1) 倉島直樹1)
丸藤 健1) 斉藤大樹1) 田中隆昭1)
小栁津卓哉2) 榎本光裕2) 小島泰史2)
平井一郎2)
柳下和慶2)
1) 東京医科歯科大学医学部附属病院 MEセンター
2) 東京医科歯科大学医学部附属病院 高気圧治療部
【はじめに】高気圧酸素治療(HBO2)では時として加
圧時の耳痛発生が見受けられ加圧調整や治療中断な
どの対応が必要とされる。我々が行った先行研究で
は,HBO2施行中,耳痛発生は 558名中75名(13.4%)
に見られ,その内初回治療時が 44名(58.7%)と最も
多かった。
【目的】初回治療時の耳痛発生を抽出し検討すること。
【対象】
2014年2月から2016年8月までに新 患 にて
HBO2を施行した患者より,過去にHBO経験のある
患者を除いた,723名(男性430名,女性293名)
,年
齢45.2±21.5歳を対象とした。
【方法】治療記録より初回治療時の耳痛発生の有無を
後ろ向きに検討し,医師による問診時の耳痛リスクの
有無,加圧方法別における耳痛発生の有無を合わせ
て検討した。さらに自己耳管通気器具(以下オトヴェ
ント®:名優社製)の使用状況および,使用の有無に
おける耳痛発生の有無も検討した。
【結果】耳痛発生有は 90名(12.4%)
,平均年齢62.2
±17.4歳,耳痛発生無は 633名(87.6%)
,平均年齢
44.0±22.0歳であり,耳痛有において年齢が有意に
高値であった。問診時耳痛リスク別の耳痛発生率は,
リスク有36.4%,リスク無8.6%,加圧方法別の耳痛発
生率は,0.01MPa/minで加圧する通常加圧は 11.6%,
0.005MPa/minから開始し徐々に加圧速度の上がる加
圧は12.7%であった。オトヴェント®の使用は40名
(5.5
%)
,平均年齢59.6歳,未使用は 683名(94.5%)
,平
均年齢45.5歳と使用群で年齢が有意に高値であり,
さらに使用群では,問診時リスク有での使用が 35名
(87.5%)であった。オトヴェント®別の耳痛発生は,使
用有は 35%,使用無は11.1%であった。
【考察】加圧方法における耳痛発生頻度に差は見らな
かったが,問診時別でのリスク有とオトヴェント使用
群において耳痛発生率が高かった。オトヴェント使用
群は非使用群より年齢が有意に高く,また,耳痛リ
スク有においてオトヴェント使用率が高いことから耳
痛発生軽減を期待し,より高リスクな患者に用いられ
たと考える。
1) 山形大学医学部附属病院 臨床工学部
2) 山形大学医学部附属病院 第1外科
【目的】当院における高気圧酸素治療(以下HBOT)件
数は年々増加している。当院でのHBOTの現状を把
握し,診療科や対象疾患の推移とHBOTにおける課
題および臨床工学技士(CE)の役割について検討し
た。
【対象】平成24年4月から平成28年9月までに当院で
HBOTを施行した患者286名を対象とした。
【結果】男性188名,女性98名,年齢は 8歳から90歳
(平均63.6±16.6歳)だった。年度別の総治療回数は
平成24年度566件(一人あたり平均15回)
,平成25年
度771件(11回),平成26年度742件(12回),平成27
年度917件(13回),平成28年度(半期)405件(13回)
であり,年々増加傾向を示した。非救急適応におけ
る割合は 76.9%,74.2%,80.1%,77.1%,81.2%と大半
を占めていた。時間外対応件数は15件,16件,16件,
24件,9件だった。診療科別では,歯科口腔外科,第
1外科,第2外科,第1内科,整形外科,疾患は骨髄
炎,ガス壊疽,網膜動脈閉塞症,難治性潰瘍を伴
う末梢循環不全,イレウスの順に多かった。治療中
断件数は 6件,20件,8件,4件,2件で,耳抜き不良,閉
所恐怖症,気管切開患者の痰詰まりなどがあった。
また,テレメータ,体温計,カイロ,湿布,アルコー
ル綿,綿以外の化学繊維製の下着などの持ち込み禁
止物を発見した。
【考察】院内にHBO装置が配置されていることを知ら
ない医師が多く,HBOT適応患者は他施設へ転院さ
れていた。しかし,HBOTに関する勉強会等の積極的
な啓発活動を行ったことでHBOTの認知度が向上し,
治療件数の増加につながったものと考えられる。CE
が治療直前に徹底した身体検査を行うことで,持ち
込み禁止物を発見でき,安全なHBOTに寄与するこ
とが考えられる。
【結語】当院では年々HBOT件数が増加しているが,
救急適応の症例が少なかった。CEがHBOTに携わ
ることで治療件数の増加と安全の確保に寄与してい
ることが示唆された。
59
日本高気圧環境・潜水医学会雑誌
Vol.51 Supplement, Sep, 2016
一般演題2-2
認定施設更新を経て見えてきた当院における
治療実績
一般演題2-3
第2種装置・高気圧酸素治療における患者説
明に対してアンケートを実施した一考察
小川 駿1) 平井 誠1) 加藤晃典1)
阿部結美 寺田直正 佐々木 健 廣谷暢子
1)
2)
2)
横浜労災病院 臨床工学部
遠藤汐梨 村田純一 齊藤久寿
1) 札幌麻生脳神経外科病院 臨床工学科
2) 札幌麻生脳神経外科病院 脳神経外科
【はじめに】高気圧酸素治療(以下,HBO)を開始する
上で,患者に対する治療説明(以下,説明)は重要で
【はじめに】当院は,2016年7月に認定施設の更新を申
あり,この一端を臨床工学技士(以下,CE)も担って
請した。その際,認定期間であった 2013年8月1日か
いる。CEは,業務マニュアルに沿って耳抜き動作に
ら3年間の治療実績を作成し,初回認定時の2010年
重点を置いた説明を行っている。しかし,耳管機能
8月からの3年間の治療実績と比較したので報告する。
検査で問題がない患者でも耳抜き出来ずに耳痛を訴
【背景】当院では,SECHRIST社製第1種高気圧酸素
えることがある。今回,HBO終了患者に対して説明に
治療装置6台を所有し,2000年7月から365日体制で土
関するアンケート調査を行い若干の知見を得たので報
日も治療を行っている。
告する。
【結果】患者数1,732名(8.9%減少),治療回数20,
【方法】医師・看護師・CE(以下,医療者)からの説明
988回(9.1%減少),内訳は救急的適応1,347回(0.2
について,選択肢形式を用いてアンケート調査を行っ
%増加),非救急的適応19,
641回(9.7%減少)
であっ
た。
た。疾患別で見た結果,脳血管障害が27%と大きく
減少していた。増加したのが開頭術後意識障害・脳
名,女13名,年齢56±20歳)。
浮腫,脊髄神経疾患,急性脊髄循環障害であった。
【結果】医療者からの説明は,90%以上の患者が十分
【考察】治療回数が減少したが,救急的適応の患者数
理解出来たと回答した。HBO中に耳痛を訴えた7名
が微増であったことから,収入減少の影響も最小限
の患者も理解出来たと回答した。但し,医師からの
に留めることができた。脳血管障害の減少は,病床
説明において,13%がHBO目的を聞いていない,70%
の一部を回復期リハビリテーション病棟へ変更したこ
が副作用・合併症について説明がないと回答した。
とが一因だと言える。脳塞栓に関しては,患者数あ
CEにおいては,特に耳痛を訴えた全ての患者で
たりの救急的適応の平均回数が 5.7回で,入院後
HBO中の声掛けに対し,細かく声掛けして欲しいや,
早い段階で治療を実施しているため,若干の減少に
装置内では環境変化のため音声が聞きとりづらいと
留まったと考えられる。さらに医師の指示が出た時点
回答があった。
で非救急的適応でも,後日救急的適応に変更となる
【考察】説明を十分理解出来たと回答した患者でも耳
ケースも少なくはなかった。脊髄神経疾患の増加は,
痛を認めたことより,医療者と患者間に理解度の相
治療後の症状軽快から一定期間経過したのち,再度
異があることが示唆され,理解度の評価方法を検討
症状増悪時に治療を開始する患者が増加したためと
する必要があると考えられる。
考えられる。
医師からのHBO目的・副作用・合併症についての説
また,開頭術後の脳浮腫に対して積極的に治療を施
明がないと回答された部分は,医療者間で連携をと
行したことも,救急的適応数の維持に繋がっている
り,説明漏れをなくす対策が望まれる。
と考えられる。
【結語】これまでどおり6台の装置を有効活用しつつ,
さらに救急的適応の数を維持することが,今後も肝
要であると言える。治療開始時は非救急的適応でも,
60
【対象】
2016年4月∼7月間のHBO終了患者30名(男17
耳痛を訴えた患者から,声掛けの声量やタイミング
の指摘を受け,改めて装置内の環境変化を観察及び
シミュレーションして改善が必要な点を検討する。
【結語】説明内容や方法の再考及びマニュアルの改訂
後日救急的適応に変更された場合もあったので,入
を行う。今後アンケート内容を見直し,疾患別・年齢・
院後早い段階から治療を行うことも重要である。
男女についても検討して行きたい。
第 51 回日本高気圧環境・潜水医学会学術総会
一般演題2-4
当院における治療環境の患者満足度評価を
おこなって
新家和樹1) 天野陽一1) 間中泰弘1)
一般演題2-5
減圧障害は酸素吸入で改善する
∼沖縄県の取り組み∼
減圧障害に高気圧酸素治療は必要か?酸素
吸入のみでの対処
水谷 瞳1) 山之内康浩1) 伊藤達也1)
内藤明広2)
村田幸雄1 ∼ 3) 青木一雄2) 合志勝子1)
1) 刈谷豊田総合病院 臨床工学科
2) 刈谷豊田総合病院 乳腺外科
当院において高気圧酸素治療を受けられる患者は
年間約200名いる。私たちは治療をおこなううえで患
者から治療環境における不満をしばしば聞く。高気
圧酸素治療は高濃度酸素や高圧環境といった非生理
的特性のもとおこなっており,第一種装置に限ってい
えば狭い治療空間であるため治療環境としては決し
錦織秀治4) 合志清隆1)
1) 琉球大学病院 高気圧治療部
2) 琉球大学医学部衛生学・公衆衛生学講座
3) 国際潜水教育科学研究所
4) 中国ダイビング
【はじめに】減圧障害の治療は大型装置を用いた酸素
再圧治療が標準とされている。離島県である沖縄で
は離島で減圧障害が発症すると航空機搬送が一般化
してきたが,同時に低い気圧に曝すことは減圧障害
ていいものとはいえないのは容易に想像がつく。しか
の病状を一気に悪化させる危険もあり,実際に搬送
し,私たちは決められた治療環境のなかで少しでも
中の病状悪化も知られている。
患者の不満を軽減させる努めがある。
今回,我々は 5年前におこなった患者満足度調査
の内容を改訂したものを再度実施した。
減圧障害のファーストエイドとして酸素吸入の重要
性は科学的根拠をもって知られているが,本邦では
酸素は医薬品の1つとして使用制限を受けてきた。し
対象者は,2015年7月∼2016年1月に高気圧酸素治
かし,平成28年5月にダイビングを含めた水辺活動中
療をおこなった患者96名とし,意志疎通のできない
の水難事故でのファーストエイドとしての酸素使用が
患者および治療が途中終了してしまったためアンケー
トを実施できなかった患者を除く89名とした。アンケ
ート項目は①装置内温度②装置内の寝心地③テレビ
の見やすさ④テレビの音量⑤スタッフの対応⑥治療前
説明のわかりやすさの 6項目で,評価は良い,変わら
ない,悪いでの3項とした。
厚労省で承認された。酸素使用の承認によってダイビ
ングによる減圧障害の対処がどのように変わったか沖
縄県の事例で紹介する。
【現状の紹介】琉球大学病院に減圧障害で受診した5
名の患者に酸素吸入を行い,1∼2時間の酸素吸入さ
らに生理食塩水の補液によって全例に症状の緩和が
みられた。さらに離島の医療機関でも減圧障害で酸
アンケートの結果から前回対策を立てた②装置内
素吸入が行われ症状改善が得られている。また,離
の寝心地に関しては今回も良いとの結果が得られた
島から連絡を受けた際には,手持ちの酸素残量を確
(良い:37.1%,悪い:10.1%)。しかし,①装置内温度
認して潜水現場から酸素吸入を実施。その後は医療
および③テレビの見やすさに関しては患者から良い回
機関との連携のなかで酸素吸入と補液を行ってもら
答が得られなかった(①良い:67.4%,悪い:32.6%,③
い,症状改善が得られた。同時に役場や救急隊への
良い:33.8%,悪い:21.5%)。
連絡を行っている。
これらの結果に対して対策を実施したため報告す
る。
【まとめ】減圧障害に酸素療法が有効であることに異
論はないが,高気圧酸素治療の1つである酸素再圧
治療と大気圧下酸素吸入との治療効果を比較した報
告はない。減圧障害に対する酸素再圧治療の効果を
否定するものではないが,発症時のファーストエイドと
しての酸素吸入は症状改善度が高く積極的に推奨す
べきと考えられる。
61
日本高気圧環境・潜水医学会雑誌
一般演題3-1
高気圧酸素治療(HBOT)を行った脳動脈瘤
によるくも膜下出血(aSAH)クリッピング術
後脳血管攣縮症例の予後判別式の検討
一般演題3-2
創傷治癒遅延をきたした浅側頭動脈-中大脳
動脈吻合術後頭皮にたいする高気圧酸素療
法の有用性
濱田倫朗1) 坂上正道1) 管田 塁1)
和田孝次郎1) 吉浦 徹1) 藤井隆司1)
荒木康幸1) 米原敏郎2)
市川直紀2) 森 健太郎1)
1) 社会福祉法人 恩賜財団済生会熊本病院 臨床工学部門
2) 社会福祉法人 恩賜財団済生会熊本病院 神経内科
【目的】aSAHクリッピング術後に脳血管攣縮を認め,
HBOTを実施した症例の予後について,多変量解析
による判別式を算出し有用性を検討する。
【対象と方法】2013年1月から2015年12月にaSAHで緊
急入院し,クリッピング術後に脳血管攣縮でHBOT
を行った 28例と2016年7月までの 4例。退院時mRS
(modified ranking scale)0-4をA群(17例)
,mRS 5を
B群(11例)とし,血圧,心拍数(HR)
,尿量,血液
生化学検査,治療内容の2群間比較で特徴的な因子
を抽出し,多変量解析により予後の判別式を算出し
た。この式を4例に用いprospectiveに有用性を検討
した。
【 結 果 】A群は入 院 時, 術 後ともにPT_INRが 高く
(p=0.003,0.004)
,入院時Hbは低値(p=0.038)であ
り,クリッピング時とHBOTの 2,3回目のHRが少な
かった(p=0.009,
0.042,
0.012)。尿量は,術後3日目
とその3日間合計がA群で多かった(p=0.005,0.033)
が,水分バランスは維持されていた。血液検査では
A群でBUNが術後1日目とHBOT中,HBOT後で低値
(P=0.037,0.001,0.002),ALBはHBOT中とHBOT
後に高値(p=0.001,0.008)であった。多変量解析で
は独立因子として入院時PT_INR,クリッピング時の
HRが残り,判別式Y = 9.288 ‒ 21.058×PT_INR +
0.185×HR を算出した。Cut off 値 0.5で判別的中率
82.1%であった。4例のProspective study では,2例
(mRS3,4)がA群,2例(mRS5)がB群と正しく判別さ
れた。
【考察】脳血管攣縮は,純粋な血管収縮の域を超え多
元的な原因を有する。A群はPT-INRが高く,組 織
因子による凝固機序が働きにくい状態が示唆される。
また術後尿量が多くBUNが低値でHBOT中のALB
の高値,HRの低値は,血液循環量が保たれ入院時
のHb低値と併せ,血液粘調度が低く保たれていると
思われる。判別式では正しく予後判別ができたが今
後も検討が必要である。
【結語】判別式はHBOTを実施したaSAHクリッピング
術後の脳血管攣縮で,脳循環障害改善を目的とした
血行動態増強目的の血液循環量維持と血液希釈が
奏功しているかの判別に有用であると思われた。
62
Vol.51 Supplement, Sep, 2016
1) 防衛医科大学校 脳神経外科
2) 原田病院 臨床検査部高気圧酸素治療室
【目的】浅側頭動脈-中大脳動脈吻合術(superficial
temporal artery-middle cerebral artery bypass;
STA-MCA bypass)に 代 表 さ れ るextracranialintracranial bypass術は虚血症状を呈するもやもや病
や症候性脳主幹動脈閉塞あるいは狭窄症を対象に,
脳卒中治療ガイドライン2015において勧められている
(グレードB)手術方法である。その条件として周術期
合併症を起こさないことが求められている。しかしな
がら,頭皮を栄養する血管であるSTAをドナーとして
使用するため創傷治癒が遅延し,創部皮膚トラブルに
発展する危険性が報告されている。これらの合併症
を防ぐため,
2014年以降高気圧酸素療法(hyperbaric
oxygen therapy:HBO)を,創傷治癒遅延を認めた例
で積極的に行ったきた。このHBOが有効であったか
どうかを後方視的に検討したので報告する。対象お
よび方法:対象はHBOを導入した 2014年からの 2年
間の 30症例であり,コントロール群として,HBO導入
以前の症例30例について以下の項目について調査し
た。創傷治癒遅延を認めた症例数,および創トラブ
ルに至った症例数,並びにそれら患者の入院期間に
ついて比較検討した。
【結果】
HBO導入前群では術後に縫合部の発赤を伴
った症例は 9例(30%)認められ,その内,皮膚トラ
ブルを合併し外科的処置が必要となった症例は 2例
(7%)あった。1例は縫合不全による皮膚潰瘍を合併
したため,デブリードメント+再縫合を必要とした。も
う1例は縫合部の感染を合併したためデブリードメン
トと軟膏処置を必要とした症例である。両患者とも処
置により創部は改善したが入院期間がそれぞれ約4
週間,約2週間延長した。HBO導入後群で発赤合併
症例は 9例あったが,外科的処置を必要とした症例
はなかった。HBO導入前群発赤合併9例の入院期間
は 25.9±8.7(平均±標準偏差)
日であり, HBO導入後
群の発赤合併9例の入院期間は18.2±3.3であった。
HBO導入後群で有意に(p=0.03)入院期間の短縮を
認めた。
【考察】
HBOの急性末梢血管障害や難治性潰瘍を伴
う末梢血管障害に対する抗浮腫あるいは血流改善作
用は良く知られており,実際,凍傷,熱傷,あるい
は糖尿病性壊疽等の皮膚の創傷治癒促進を目的とし
て実施されている。今回我々は,STA-MCA bypass
術後に創傷治癒の遅延を認めた 9例に対してHBOを
行い,創部皮膚トラブルに至ることなく創傷治癒が得
られたことはHBOの頭皮に対する創トラブル回避効
果を示したものではないかと考える。
第 51 回日本高気圧環境・潜水医学会学術総会
一般演題3-3
高気圧酸素治療時の脳疾患の組織酸素化に
ついて(重症度別の検討)
一般演題3-4
硬膜外膿瘍を伴う化膿性脊椎炎に対する高
気圧酸素療法を併用した低侵襲治療
東 幸司1) 徳森美佳1) 乗松由香1)
橋本光宏1) 守屋拓朗1) 長見英治2)
川口達也1) 長野準也1) 楠 勝介2)
久我洋史2) 小倉 健2)
1) 済生会松山病院 ME部
2) 済生会松山病院 脳神経外科
1) 千葉労災病院 整形外科
2) 千葉労災病院 臨床工学部
【目的】高気圧酸素治療(以下HBO)時の脳疾患の組
【目的】硬膜外膿瘍を伴う化膿性脊椎炎に対して行っ
織酸素化について,赤外線組織酸素モニタを用いて
た高気圧酸素療法(HBO)を応用した低侵襲治療の
測定し,重症度別に分類し検討したので報告する。
治療成績を評価し,その有用性について検討したの
【対象】脳疾患20症例(平均年齢72.7歳,治療回数
177回)。組織酸素化測定部直下の脳の障害度を軽
症・中等症・重症の3段階に分類した。軽症6例(平均
年齢80.3歳,治療回数37回)。中等症5例(平均年
齢79.6歳,治療回数43回)。重症9例(平均年齢66.2
で報告する。
【対象】対象は硬膜外膿瘍を伴った化膿性脊椎炎13
例である。全例腰椎発生であった。年齢は 48歳から
83歳まで,平均70歳であり,男性8例,女性5例であ
った。5例に糖尿病を合併した。
【方法】膿瘍ドレナージによる培養あるいは血液培養
歳,治療回数73回)。また正常4例(平均年齢67.3歳,
にて起炎菌を同定した。起炎菌に感受性のある抗菌
治療回数24回)ついても検討した。
薬を投与し,さらにHBOを併用した。HBOは 2気圧
【方法】上記症例に対し両前額部に赤外線組織酸素
下に 60分を15回施行した。その上でさらなる手術治
モニタ(NIRO-200NX)のS型プローブを1個ずつ貼
療追加の必要性について検討した。白血球数,CRP
付しHBO前後にTOI(組織酸素飽和度)を計測した。
値の推移,有害事象の有無,最終的な転帰について
HBO装置はBARA-MED(ETC社製)を使用,酸素
調査した。
加 圧・2ATA/60分 間。TOI変化 率(%)=(HBO後−
HBO前)
/HBO前×100を算出した。またHBO前後の
平均TOIを算出しその推移を検討した。
【結果】HBO前後のTOIは正常で有意に上昇(変化率
5.83% ,p<0.05)した。軽症は健側患側共に有意に上
【結果】全例で炎症反応の改善を見た。白血球数は
治療前11.2±4.0×103/μl,HBO後5.8±2.3×103/μl,
最終観察時5.2±0.9×103/μl,CRP値は治療前11.4
±9.0mg/dl,HBO後1.2±1.7mg/dl,最終観察時0.1
±0.1mg/dlであった。いずれもHBO後に有意に改善
し,最終観察時まで維持していた。有害事象は特に
昇(健側4.66%,患側8.78%,p<0.05)した。中等症
認めなかった。最終的な転帰については12例は軽快
は健側で軽度上昇,患側で有意に上昇(健側変化率
し,追加手術は不要であった。炎症反応は改善した
1.49%,患側変化率5.05%,p<0.05)した。重症は健
が腰痛が残存した1例に後方固定術を追加し,腰痛
側患側共に有意に上昇(健側変化率9.31%,患側変
は軽快した。
化率11.36%,
p<0.05)した。
【考察】本研究において起炎菌に対する適切な抗菌薬
TOIの推移は,正常でHBO前は変化なく,HBO後
選択,膿瘍ドレナージ,さらにHBOを併用することで
では上昇した。軽症はHBO前後で健側患側共に下降
硬膜外膿瘍を伴う化膿性脊椎炎に対する高い感染制
した。中等症はHBO前後で健側は変化なく,患側は
下降した。重症はHBO前で健側は下降,HBO後は上
昇し,患側はHBO前で上昇,HBO後で下降した。
【結語】HBOにより正常脳及び脳疾患の組織の酸素
御効果が示され,その臨床成績は概ね良好であった。
HBOを応用した低侵襲治療は硬膜外膿瘍を伴った
化膿性脊椎炎に対する有用な治療選択肢の一つにな
りうると考えた。
【結語】硬膜外膿瘍を伴う化膿性脊椎炎に対する高気
化が図られていた。疾患の重症度により脳組織の酸
圧酸素療法を併用した低侵襲治療の治療成績は良
素化の程度及び推移が異なっていた。
好であった。
63
日本高気圧環境・潜水医学会雑誌
一般演題3-5
高気圧酸素治療期間中における血球変化
Vol.51 Supplement, Sep, 2016
一般演題3-6
MRIを用いたハムストリング肉離れ急性期に
対する初回高気圧酸素治療の有効性評価
細川加保1,4) 松上紘生1,4) 雑賀真也1)
古川英伸1) 吉野梨々子1) 南 ゆかり3,4)
柳下和慶1,2) 榎本光裕1,2) 小柳津卓哉1)
稲垣喜三2)
小島泰史1) 大久保 淳3) 前田卓馬3)
1) 鳥取大学医学部附属病院 MEセンター
2) 鳥取大学医学部附属病院 麻酔科
3) 鳥取大学医学部附属病院 高次集中治療部
4) 鳥取大学医学部附属病院 高圧酸素治療室
【背景】高気圧環境暴露後には,減圧に伴い気泡が
形成され血管内壁を損傷し,血小板凝集が起こり,
血小板が減少するとの報告がある。高気圧酸素治療
は,通常複数回実施されるが,治療期間中における
血小板などの血球数の変化に関する報告は近年少な
い。そこで,本院で高圧酸素治療を受けた患者を対
象に血球成分の変化を調査したので報告する。
【方法】2010年5月から2015年8月までに当院で高圧酸
素治療を受けた患者のうち,整形外科の感染症を伴
う創傷治癒患者と一酸化炭素中毒の患者を対象とし,
治療前,治療中,治療後のデータを比較検証した。
【結果】整形外科の患者は,男女比は 1.36:1で,男
性の年齢は 60.4±19.0歳,BMI21.7±3.7で女性の年
齢は 68.0±19.7歳,BMI20.1±3.4であった。一酸化
炭素中毒の患者は,男女比は 2:1,平均年齢69.3±
15.4歳,男性平均BMI19.0±3.4,女性平均BMI22.9
±1.2であった。
血小板数は,整形外科患者では,治療期間中盤
にかけて上昇し,終盤には開始時と変わらない値ま
で戻った。一酸化炭素中毒では,治療回数と共に増
加した。白血球数は,整形外科患者において治療期
間が進むにつれ減少し,赤血球数に関しては両群と
も治療期間中に変化はみられなかった。
【考察】整形外科の疾患に白血球の変化があらわれた
ことは,感染の寛解のためと考えられる。一方,血
小板の変化は治療後に減少すると思われたが,今回
の調査では,両群ともに血小板の上昇が観察された。
高気圧酸素治療では,酸素吸入での減圧であり,治
療も同日に繰り返し行うことはなく,減圧速度を十分
に管理していたため,血小板が消費されなかったと
考えられる。高気圧酸素治療を受ける患者で,血小
板数が少ない患者や多い患者の治療の際には,観察
が必要となる可能性がある。
64
宮本聡子3) 山本素希3) 後藤啓吾3)
1) 東京医科歯科大学 医学部附属病院高気圧治療部
2) 東京医科歯科大学 スポーツ医歯学診療センター
3) 東京医科歯科大学 医学部附属病院MEセンター
【目的】骨格筋損傷,肉離れに対する高気圧酸素治療
(HBO2)の有効性については,複数の基礎的報告が
散見され,損傷組織の酸素化,血管透過性の亢進の
抑制,浮腫の軽減,抗炎症作用,筋衛生細胞の増
殖と分化の促進などが報告されている。ラット骨格筋
損傷モデルでは,損傷直後での組織低酸素環境は1
回のHBO2にて著明に改善し,初回HBOの高い有効
性が示唆された。我々は肉離れ急性期症例に対する
HBOにおいて,HBO2直前直後での自覚的変化をVAS
にて評価し,特に初回HBO2での有意な改善を報告
した。スポーツでの軟部組織損傷の評価にMRIは重
要であり,昨今MRIによる新たな評価法が開発されて
いる背景から,今回ハムストリング肉離れ急性期症例
での,初回HBO2前後での改善度を主としてMRIにて
評価した。
【対象・方法】
全国レベル以上のアスリートでのハムスト
リング損傷11名を対象とした。平均年齢26.5±5.5歳,
身 長179.3±6.4cm,体重86.5±11.7kg,BMI26.8±
3.0,全例男性。損傷から3日以内で当院を受診し複
数回HBO2を施行した。初回HBO2 の直前直後にて,
3テスラMRI( 株式会社日立製作所社製TRILLIUM
OVAL)にて撮像した。撮影シーケンスは,水分と脂
肪との位相差を利用した脂肪抑制法であるFatSep法
を使用した。健側筋組織の信号強度を基準に肉離れ
損傷領域を定義し,複数の冠状像にて損傷領域面積
を,また軸写像にて断面積を測定し,HBO2前後で比
較した。また直前直後のVASとSLRを計測した。
【 結 果 】冠 状 像 面 積 は 初 回HBO前 後で 171.6 cm2,
192.5cm2, 軸 写 像 面 積 は 前 後 で 1326.2 cm2,
1315.0cm2 で, 前 後 で の 有 意 差 を 認 めな か った。
SLRは 54.6度から60.5度へ改善(p<0.01),歩行時
痛は 43.1点から29.1点に改善した(p<0.01)。軸写像
面積の改善度とVASでの歩行時痛の改善点とは相関
を認めた(R=0.58)。
【考察】ハムストリング肉離れ急性例に対する初回
HBO2では,MRI改善度とVAS評価に相関を認めたこ
とから,HBO2の腫脹軽減と疼痛軽減効果が示唆され
た。今回の対象はBMI値の高いスポーツ選手だった
が,本MRI装置はボア径が大きく圧迫感なくMRIを
実施可能だった。
第 51 回日本高気圧環境・潜水医学会学術総会
一般演題3-7
人体に於ける酸素濃度 その 2
一般演題3-8
脊髄型減圧症重症度分類の新たな試案
吉田泰行1) 中田瑛浩2) 井出里香3)
石山純三1) 岩崎正重1) 村松敏朗2)
山川博毅4) 星野隆久5)
1) 威風会栗山中央病院 耳鼻咽喉科・健康管理課
2) 威風会栗山中央病院 泌尿器科
3) 東京都立大塚病院 耳鼻咽喉科
4) 済生会横浜市東部病院 耳鼻咽喉科
5) おゆみの中央病院 臨床工学科
1) 静岡済生会総合病院 脳神経外科
2) 静岡済生会総合病院 臨床工学科
従来脊髄型減圧症重症度分類として用いられてき
たものにDick s scoreとBoussuges gravity scoreがあ
る。Dick s scoreは感覚障害と運動障害をそれぞれ
我々高気圧酸素治療に携わる者は,高気圧酸素
5段階に分類し,合計点(最高点10点)で評価する簡
と言う異常環境に人体を暴露する以上その異常環境
便さが優れているが,用語が不明確,感覚障害と運
に於ける人体の振る舞いを充分理解する必要が有る。
動障害を同等の点数で評価,膀胱直腸障害が評価
この様に考えると高気圧酸素治療医は高酸素環境ば
項目にない,などの点が実用の上で不適切という印象
かりに目が行くのであるが,
1気圧及びそれ以上の気圧
がある。Boussuges gravity scoreは自覚的異常感
(ピ
そして其の際の 20%以上の酸素濃度(正確には酸素
リピリ感など)を評価から外し,他覚的感覚異常,運
分圧)
の事だけでは無く,1気圧以下そして20%以下の
動障害,排尿障害に加えて,繰り返し潜水,再圧治
酸素濃度にも注意を向けるべきである。
療前の臨床経過(改善か不変か増悪か)なども点数に
演者吉田は産業医学・労働衛生にも関わり酸素欠
乏・低酸素を,そしてスポーツ医学にも関わり高所・低
酸素トレーニングを扱うのみならず,宇宙航空医学に
も関わり低圧・低酸素とも取り組んで来た。その中で
低圧・低酸素から高圧・高酸素迄の人体の振る舞いを
十分に理解する必要を感じ,関東地方会及び本学会
学術総会でもこの関係の演題を出し続けて来た。こ
の度第51回学術総会に際して特に「歴史の継承と新
たな挑戦」のテーマに沿うべくこの点から人体の低圧・
加え,最高点22点で判定する。Dick s scoreの問題
点は解消されるが,他覚的感覚異常は
「あり」か
「なし」
かのみで障害の程度は評価されず,軽微な他覚的感
覚異常と体幹・両下肢の全知覚脱失が同じ配点,運
動障害は 3段階に分かれるが,不全麻痺であれば軽
微な単麻痺もかなりの四肢麻痺も同じ配点になるな
ど,個々の項目の重症度を勘案しない評価の妥当性
に疑問が残る。
低酸素から高圧・高酸素迄の暴露に関して個人的な
脊髄型減圧症の重症度分類は,治療効果の予測
経験・見解を含めて考察したい。産業医学・労働衛生
のみならず,緊急再圧治療の必要性を判断する材料
での酸素欠乏・低酸素では通り一遍の知識の獲得で
としても重要であり,使いやすさと評価の妥当性が
あったが,本格的に低圧・低酸素を考察しだしたのは
求められる。今回我々は感覚障害を1∼4,運動障
高所トレーニング研究会であり,運動生理・スポーツ
害を1∼7,膀胱 直 腸 障 害を2∼4に点数化,最高
医学の諸兄との討論であった。ゲストとしてのH. ラス
15点の新たな分類を試作し,過去12年間65例の自
コーといった大御所やカーチャ・ハイネケンといった新
験例を3つの分類法で評価し比較検討した。その結
進気鋭の研究者との出会いは刺激的であった。一方
果,Dick s scoreは機能予後との関連性において劣り,
宇宙航空医学会での演題発表のみならず,認定医コ
ースでの実際の急減圧等の実体験も有意義であった。
また当時は余り意識しなかったが九州労災病院での
数々の高気圧体験(特に患者と一緒に何回もタンクに
Boussuges gravity scoreと新たな試案は共に重症例
の評価で良く相関したが,中等症以下の症例の評価
においては少なからぬ差違があった。
入った自験)も今となってははなはだ有意義な体験で
あった。これらの低圧・低酸素から高圧・高酸素迄の
体験を基礎に本学会学術総会での「新たな挑戦」の
一環としたい。
65
日本高気圧環境・潜水医学会雑誌
一般演題4-1
ストレーナー関連トラブルの原因検証
Vol.51 Supplement, Sep, 2016
一般演題4-2
高気圧環境が患者監視装置の計測値に及ぼ
す影響について
中山拓也1) 市場晋吾1) 鈴木健一1)
豊冨達智1) 鈴木絵梨1) 高木 元2)
石原雅也1) 澤田珠里1) 松葉理奈1)
桐木園子2) 太良修平2) 宮本正章2)
三本松和紀1) 折原和広1) 土居 浩2)
1) 日本医科大学付属病院 ME部
2) 日本医科大学付属病院 循環器内科
【背景・目的】2014年8月新棟開設に伴い,多人数用第
【目的】当院では高気圧酸素治療(以下HBO)に第2種
2種高気圧酸素治療装置「P-2200S型」
(以下,治療
装置を用い重篤な患者にも対応している。重篤患者
装置)を導入した。導入から現在に至るまでの約2年
の場合,HBO装置内へ患者監視装置(以下モニタ)の
間で計4件発生したストレーナー関連トラブルの原因を
持ち込みが必要となる。しかし現状ではメーカによる
検証する。
【方法】警報発生原因であるオートドレンのストレーナ
ーに着目し,原因物質からトラブルの要因を究明す
る。
【結果】2014年9月18日,
「冷却水断水警報」にて治療
動作検証がされていない。そこで我々は高気圧環境
がモニタ計測値に影響を及ぼすか検証した。
【対象と方法】対象は日本光電社製モニタBSM-2301
の 5台を用いA∼Eとした。 方 法はエクセルプラン
装置が動作不可能となった際にストレーナーを確認し
社製 生体情報シミュレータSimCube SC-5とOxSim
たところ,微粒コンクリート片が大量に付着していた。
OX-1(以下シミュレータ)を用い,1.0 ∼2.0ATAまで
その後,トラブルの有無に関わらず計5回ストレーナ
0.2ATA刻みで 6群とし,各群,ECG:70bpm,SpO2:
ーの清掃を実施しているが,2016年7月までの間ストレ
98%,NIBP:120/80mmHg,RR:20 回/分 に シミュ
ーナー関連トラブルは 3件発生している。当初の予想
レータを設定し計測した。6群間の統計学的検討は
以上にトラブルが続いたため精査したところ,ストレ
Kruskal Wallis testを用いP<0.05を有意とした。
ーナーに詰まっていた物質が,1回目にトラブルが発生
【結果】ECG,SpO2,RRの中央値は,6群とも70,98,
した際の原因である微粒コンクリート片とは異なって
20で 6群 間に有 意 差はなかった。NIBPの中 央 値
いた。2回目以降に発生したストレーナー目詰まりの原
因物質は,埃や砂などの環境物質が中心であった。
【考察】当時は新棟開設直後だった為,工事による残
骸が配管に残っていたと考えられた。そのため,スト
レーナー詰まりによるトラブルは続かないと予想され,
は,1.0ATA群:105/83,1.2ATA群:111/83,1.4ATA
群:106/83,1.6ATA群:111/84,1.8ATA群:111/82,
2.0ATA群:108/84で,
6群間に有意差はなかった。
【考察】6群間で全計測項目に有意差がなかった。こ
対策はしなかった。しかし,それ以降のストレーナー
の事から,高気圧環境がモニタ計測値に影響を及ぼ
詰まりの原因は高気圧酸素室内ではなく,冷却水を
す事は少ないと思われた。しかし高気圧環境はNIBP
供給している冷却塔にあった。今回導入された冷却
計測時の加圧ポンプ動作に影響すると思われる。測
塔は「開放型冷却塔」であり,冷却水と外部が触れ合
定には腕帯にかかる圧(環境圧−1気圧)以上の加圧
う構造である。そのため,外部からの埃や砂などの
ポンプ能力が求められる。2.0ATAでは1.0ATA+αの
環境物質が冷却水と混ざりストレーナーに流れる事で
能力が要る。今回NIBP値に有意差がなかったのは,
目詰まりが起こり,治療装置に冷却水が流れなくなっ
モニタの加圧ポンプがこの能力を備えていたからと思
てしまったと考えられる。臨床工学技士は治療装置
やその周辺機器だけではなく,設備側にも目を配る
必要がある。現在は 2週間に1回清掃を行っているが,
圧力計によるストレーナーの目詰まり把握の数値評価
も行っており,適切な清掃頻度を検討中である。
【結語】ストレーナー関連トラブルの原因を検証した。
66
1) 東京都保健医療公社荏原病院 検査科臨床工学部門
2) 東京都保健医療公社荏原病院 脳神経外科
われた。
【結語】大気圧下と2.0ATA下で全計測項目に有意差
はなく,2.0ATAまでの高気圧環境はモニタ計測値に
影響を与えないと考える。
第 51 回日本高気圧環境・潜水医学会学術総会
一般演題4-3
新型シリンジポンプにおける高気圧下での
流量特性
一般演題4-4
高気 圧環 境下における新型輸 液ポンプの
流量特性
山本素希1) 大久保 淳1) 前田卓馬1)
後藤啓吾1) 大久保 淳1) 山本素希1)
後藤啓吾1) 宮本聡子1) 倉島直樹1)
前田卓馬1) 宮本聡子1) 倉島直樹1)
小柳津卓哉2) 小島泰史2) 榎本光裕2)
小柳津卓哉2) 榎本光裕2) 小島泰史2)
柳下和慶2)
柳下和慶2)
1) 東京医科歯科大学医学部附属病院 MEセンター
2) 東京医科歯科大学医学部附属病院 高気圧治療部
【背景】高気圧酸素治療下で精密機器を持ち込むこと
は,
「所定の機能と安全性を備え,かつ,気圧変動に
対応できる精度が保障されていなければならない」と
安全基準第26条により記されている。さらにテルモ
社製シリンジポンプの機器添付文章に「高気圧酸素
療法室内へは持ち込まないこと。」と記されている。し
かし,高気圧下でのシリンジポンプの流量特性につ
いて,堂籠らは使用上問題ない事を報告し,我々の
先行研究においても同様の結果であった。現在本学
では,テルモ社製シリンジポンプSS型に更新されて
いるが,高気圧下での流量特性の報告は存在しない。
【目的】テルモ社製シリンジポンプSS型TE-SS800
(以
下SS型)の高気圧下での流量特性を調べること。
【方法・対象】対象は本学で使用しているSS型3台。
実験方法は,本学第2種高気圧酸素治療装置にて,
実験用table(最大 圧力0.15MPa・15分加圧・15分プ
ラトー・15分減圧・大気圧①)を作成した。50mlシリン
ジを使用し,流速5ml/hにて測定。トランペットカー
ブ,スタートアップカーブによる誤差を防ぐため,1時間
動作後から測定を開始し,全ての測定が終了するま
で開始と停止ボタンは使用せずに行った。流量の実
測は蒸発防止目的のサランラップで密閉した紙コップ
へ流し,大気圧下で「新光電子株式会社RJ-3200」
を用いて重量測定を実施した。尚,使用物品はテル
モ50mlシリンジ,トップエクステンションチューブ(X1L150),18G針,薬液は蒸留水を用いた。
【結果】高気圧治療前の理論値と実測値の誤差は 0
%であった。大気圧下での実測値と,加圧時,プラ
トー時,減圧時,減圧後大気圧下の誤差は,各々3.47%,-0.27%,+5.47%,+1.33%であり,気圧変動中
全体の誤差は+0.61%であった。
【結語】高気圧下でのSS型の流量特性は,我々の先
行研究と同様の傾向を示し,設定流量に対し加圧時
で低値,減圧時で高値と許容範囲外であった。気圧
変動中全体の誤差は+0.61%と少なく,シリンジポン
プの流量特性を充分理解した上での使用は可能であ
る可能性があると思われた。
1) 東京医科歯科大学医学部附属病院 MEセンター
2) 東京医科歯科大学医学部附属病院 高気圧治療部
【背景】高気圧環境下での輸液ポンプの流量特性につ
いては,堂籠らは圧力の影響はないと報告し,本学
の先行研究においても同様の結果であった。本学で
は 2016年3月より院内全ての輸液ポンプが新規機種
に更新された。しかし更新機種の高気圧環境下での
流量特性は不明であったため今回検討を行った。
【方法】対象はテルモ社製「テルフュージョン輸液ポン
プTE-LM800A」
4台。方法は実験用table(最大圧力
0.15MPa・15分加圧・15分プラトー・15分減圧・大気圧
①②)を作成し,本学第2種高気圧酸素治療装置にて
大気圧下と高気圧下での輸液ポンプの流量特性を流
速10mL/h(点滴筒エアー有・無)と50mL/h(点滴筒
エアー有)で測定した。大気圧下での1時間試運転後,
測定を開始した。測定中は停止ボタンを押さずに常に
動作させた。測定方法は,蒸発防止目的にラップフィ
ルムで密閉した紙コップへ流し,大気圧下で電子天
秤を用いて重量を測定した。
【結果】
(1)流速10mL/hエアー有(2)流速10mL/hエ
アー無(3)流速50mL/hエアー有における理論値と実
測値の誤差は,試運転後大気圧下では(1)+0.53%
(2)+0.80%(3)-1.01%(以下単位省略)
であった。こ
の 値を基 準とすると加 圧時(1)+5.44(2)
+3.84(3)
+5.90, プラトー時(1)+1.33(2)-1.32(3)-0.22, 減
圧時(1)+0.40(2)-0.93(3)-0.89,減圧後大気圧下
①
(1)
-1.46
(2)
-2.38
(3)-0.97,減圧後大気圧下②
(1)
-0.53(2)
-1.72(3)-1.37であった。
【まとめ】流量特性は加圧時に変化が大きく,特に点
滴筒にエアーがある場合は許容範囲(±5%以内)を超
えていた。しかし全体では許容範囲内に収まってお
り,流量特性を十分理解した上での使用は可能であ
ることが示唆された。
67
日本高気圧環境・潜水医学会雑誌
一般演題4-5
高気圧酸素治療装置内における吸引器破損
について
Vol.51 Supplement, Sep, 2016
一般演題5-1
高気圧酸素治療は血中炎症細胞を抑制し,
損傷骨格筋にマクロファージを誘導し,細胞
増殖と筋再生を促進する
鈴木絵梨 鈴木健一 黄川田弥生 内田千草
大和田恵子 豊冨達智 八重田知見
小柳津卓哉1,2) 榎本光裕2,3) 堀江正樹3)
少前貴康 中山拓也 市場晋吾
大川 淳1) 柳下和慶2,3)
日本医科大学付属病院 ME部
【目的】高気圧酸素治療装置内にて吸引器を使用中,
患者がホースを噛んでしまいその際に吸引ボトルが破
損した。発生時の現象を再現し対策を考察したため
報告する。
【方法】当院では,高気圧酸素治療装置はバロテック
ハニュウダ社製第2種高気圧酸素治療装置(BTH−
P2200S型)
,吸引器は株式会社小池メディカル社製
「ヨックスS401」を使用している。S401の吸引圧を設
定するコントローラーは真空計が付いておりメモリを見
ながら,圧力調整つまみを回し設定するタイプのもの
である。事象発生時はこのつまみが最大まで回され
ていた。今回,事象発生時を再現するため装置内圧
を2.8ATAに保持し,つまみを最大まで回し,吸引口
の閉塞・解放を繰り返した時のボトルの状態を確認し
た。
【結果】コントローラーは大気圧下では使用時につまみ
を最大まで回したとしても,最大吸引圧は−80kPaが
上限として調整される。対して,高気圧下では大気
圧下とは吸引の方法が異なり,装置内外の圧力差に
より吸引が行われるため,吸引圧は最高で-180kPa
以上となる。よって,装置内圧を2.8ATAに保持した
状態ではつまみを最大まで回すと真空計の針が振り
切れ,吸引圧力が測定不可能だった。吸引ボトルの
状態としては,亀裂等の破損は確認出来なかったが,
吸引口の閉塞時にはボトルの底が窪み変形が見られ
た。
【考察・結語】つまみを最大まで回した状態での吸引
口の閉塞はボトルの故障に繋がることがわかった。今
後また同じことを繰り返さないための対策として予備
ボトルのストックと,装置内での吸引を行う医師への
注意喚起の徹底を行った。その他に考えられる対策
として,コントローラーの真空計に許容の吸引圧力の
範囲を印付けし,視覚での注意喚起が考えられる。
また,事前に吸引圧力を決め,装置外にてその圧力
に設定したものを装置内に持ち込み,装置内では設
定を変更しないようにすることで破損を防ぐことがで
きると考えられる。
68
1) 東京医科歯科大学大学院 医歯学総合研究科 整形外科学分野
2) 東京医科歯科大学医学部附属病院 高気圧治療部
3) 東京医科歯科大学 スポーツ医歯学診療センター
【目的】骨格筋損傷の急性期においては,好中球が炎
症反応を惹起し,血中から遊走してきたマクロファー
ジが壊死組織を貪食する。一方,筋衛星細胞は自己
増殖し,融合しながら筋線維に分化し骨格筋が再生
する。HBO2が骨格筋損傷後に与える影響を調べるた
め,血中炎症細胞の動態と損傷部のマクロファージ・
細胞増殖活性・再生筋線維を解析した。
【方法】ラット後肢に重錘を落下させ下腿筋を圧挫損
傷し,対照群とHBO2 群(酸素加圧2.5絶対気圧・120
分間,損傷当日から1日1回施行)を作成した。損傷
3・6・24時間,2・3日後(各n=10)において動脈 血を
採取し,炎症細胞マーカーであるCD11b陽性細胞と
マクロファージマーカーであるCD68陽性細胞をflow
cytometryで評価した。また,損傷6・24時間,3・5・
7日後において下腿筋を採取し凍結切片を作製した。
抗CD68抗体と細胞増殖マーカーである抗Ki67抗体
を用いて免疫染色を行い,損傷部位の陽性細胞数を
顕微鏡で200倍10視野を観察し定量した。HE染色を
行い再生筋線維数を同様に定量した。
【結果】血中CD11b陽性細胞は損傷6・24時間でHBO2
群が有意に低く,血中CD68陽性細胞は損傷6時間
後ではHBO2 群が,損傷24時間後では対照群が有意
に低かった。損傷部のCD68陽性細胞数は損傷3日
目ではHBO2 群で有意に多く,損傷5日目では対照群
で有意に多く観察され,HBO2 群のピークは 2日早かっ
た。Ki67陽性細胞数は損傷1・3日後においてHBO2
群で有意に増加していた。再生筋線維数はHBO2 群
で損傷5・7日後において有意に増加していた。
【考察】
HBO2 はラット骨格筋圧挫損傷モデルにおい
て,損傷6・24時間後の血中炎症細胞の増加を抑制
した。損傷3日後には損傷部位へのマクロファージ浸
潤を早期化し,細胞増殖活性を促進し,損傷5日後
以降の再生筋線維数を増加させた。
第 51 回日本高気圧環境・潜水医学会学術総会
一般演題5-2
ラット頭蓋骨欠損モデルを用いた膜性骨欠
損治癒に対する高気圧酸素治療の促進効果
について
一般演題5-3
高圧ヘリウム・酸素混合ガス環境が事象関
連電位(P300)
に及ぼす影響
小沢浩二 岩川孝志 景山 望 藤井茂範
1)
1,3)
林 海里 高橋敏幸
2)
池川麻衣
1)
2)
海上自衛隊 潜水医学実験隊
2,3)
堀江正樹 小柳津卓哉 榎本光裕
柳下和慶2,3) 上野俊明1,3)
1) 東京医科歯科大学大学院 医歯学総合研究科 スポーツ医歯学分野
2) 東京医科歯科大学医学部附属病院 高気圧治療部
3) 東京医科歯科大学 スポーツ医歯学診療センター
【目的】高気圧酸素治療(HBO)は,スポーツ歯科医
【目的】高圧ヘリウム・酸素混合ガス環境が事象関連
電位に及ぼす影響を把握するために,440 msw飽和
潜水時に,視覚刺激によるオドボール課題を用いて
P300を誘発し,その潜時と振幅の変化等について検
討した。
学領域での外傷治療に対する応用は未だなされてお
【方法】研究参加者は 2回の 440 msw飽和潜水に参
らず,研究報告も殆どないのが現状である。そこで今
加した12名の成人男子職業潜水員であった。オドボ
回は,顎顔面骨と同じ膜性骨化様式をとるラット頭蓋
ール課題として緑色と赤色のLEDを4:1の割合で発
骨を用いて,骨欠損モデルを作製しHBO介入による
光させ,呈示率の低い赤色(標的刺激)に対して利き
治癒促進効果を検証したので報告する。
手で反応(母指によるボタン押し)させた。発光刺激
【方法】
7週齢Wistar系雄性ラット(n=32)に対し,皮
膚および骨膜を切開剥離して頭蓋骨を露出させ,ト
レフィンバー
(直径3.8mm,デンテック)を用いて,硬
膜を損傷しないように円筒形欠損を作製し,皮膚お
よび骨膜を縫合した。骨欠損モデル作製後,高圧高
の呈示間隔は 2秒(ランダム)とした。事象関連電位
測定用の電極はFz,Cz及びPzの 3部位に配置し,両
側耳朶連結を基準部位として導出した。また,眼球
運動モニタ用の電極を眼窩下縁に,そして利き手の
酸素暴露群(HBO群)
,常圧酸素曝露群,高圧空気
手掌母指球に筋電図測定用の電極を配置した。標
曝露群,無処置群の 4群に分けて処置を施した。高
的刺激の呈示回数は 30回とし,それらの呈示に合わ
圧環境は 2.5気圧とし,加減圧操作は 15分以上かけ
せて加算平均処理を行い,誘発成分を抽出した。な
て緩除に行い,120分×5日/週で,計2週間行った。
お,先行研究では深深度においてP300成分の欠落
実験終了後,屠殺処理ならびに試料採取を行い,組
現象が報告されていることから,測定を2回繰り返し
織学的評価およびマイクロX線CT(inspeXio SMX100CT,島津製作所)
による評価を行った。組織学的
評価は骨欠損中央部,中央から遠位300μmおよび
600μmの 3部位前頭断につき組 織切片標本を作製
て誘発成分の再現性を確認した。行動指標として,
標的刺激に対する選択反応時間を測定した。これ
らの測定を440 msw保圧第3日目に実施し,加圧前
し,H.E染色を行い,欠損面積に対する新生骨組織面
(0 msw)
の測定結果と比較した。
積の割合を算出して,統計学的分析を加えた
(one-way
【結果と考察】すべての研究参加者において,加圧前
ANOVAおよびTukey post hoc test, 有意水準:5%)。
と同様に 440 msw保圧中においても,FzからPzにか
【結果】HBO群の新生骨組織面積/欠損面積は平均
けて標的刺激の呈示から300 ∼400ミリ秒後に高振
38.5±12.0%であり,他の 3群と比較して有意に高値
幅の陽 性 成分(P300)が認められた。このように,
を示した(p<0.05)。またマイクロX線CTを用いた評
価でも,HBO群の新生骨体積/欠損体積は平均33.7
±5.5%となり,他の3群と比較して有意に高値を示し
た(p<0.05)。
深深度でのP300欠落現象は確認できなかったもの
の,多くの研究参加者でその潜時に遅延傾向が認め
られた。さらに,440 mswでは標的刺激に対する選択
【考察】本研究結果から,HBOは膜性骨の骨欠損治癒
反応時間にも延長が認められた。このような結果か
に促進的作用を及ぼすことが示され,顎顔面骨欠損
ら,440 mswでは視覚刺激の処理過程に何らかの変
症例に対してもHBO介入が効果的に作用することが
化が生じていた可能性が考えられた。
示唆された。
69
日本高気圧環境・潜水医学会雑誌
一般演題6-1
高気 圧酸 素治療での快適な環境づくりを
目指して
一般演題6-2
高気 圧 酸 素 治 療 室におけるJCI取得 後 の
外国人患者受け入れ状況
伊藤達也1) 天野 陽一1) 間中泰弘1)
向畑恭子1) 赤嶺史郎1) 大城安之2)
水谷 瞳1) 山之内康浩1) 新家和樹1)
清水徹郎3)
内藤明広2)
1) 刈谷豊田総合病院 臨床工学科
2) 刈谷豊田総合病院 乳腺外科
【はじめに】温熱環境における「快適」とは,熱的な不
快がないこと。暑くもなく寒くもなく,過ごせる状態
のこと。血流コントロールだけで体温を調節できる範
囲をこえた発汗や震えといったものは,人体にとって
一種のストレスとなり,これが「不快」へとつながる。
つまり,人体にストレスのかからない温熱環境が「快
適な環境」なのである。
温熱環境における快適さを考えるとき,
「気温」では
なく
「体感温度」が重要な指標となる。体感温度とは,
人間の肌が感じる温度の感覚を,数値に表したもの
である。大まかには気温であるが,実際には湿度や
風速等によって影響されやすく,一般的には風が強
いときほど体感温度は下がる。したがって,気温をそ
れらの数値で補正する形で計算される。
体感温度を算出する計算式に「ミスナール改良計
算式」という公式がある。これは気温,湿度,風速
の 3つの要素を考慮して算出される。算出方法は,
気温(℃)をt,湿度(%)をh,風速(m/s)をvとして,
以下のようになる。
体感温度=37−(37−t)
/(0.68−0.0014×h+1/A)
−0.29×t×(1−h/100)
A:1.76+1.4×(V^0.75)
このように,快適につながる要素の数値を特定し,
そのバランスをコントロールしていくことが快適な環境
づくりにつながると考える。
【経緯】当院では年間約2000件の高気圧酸素治療を
施行している。その中で時折,患者様から頂く意見
の中に治療中の装置内温度に関するものがある。現
在当院で使用している高気圧酸素治療装置には装置
内温度を調節出来るような機能は備えておらず,そう
いった意見を頂いた際の対処法としては主に換気量
や外気温(エアコンの設定温度)の調節である。しか
し,それが実際どこまで装置内温度に影響している
か不明瞭なのが現状である。
今回,高気圧酸素治療での「快適な環境」づくりを
目指す第一歩として換気量,外温度などが装置内温
度にどれ程影響するのかを調査したので報告する。
70
Vol.51 Supplement, Sep, 2016
1) 医療法人 沖縄徳洲会 南部徳洲会病院 臨床工学部
2) 医療法人 沖縄徳洲会 南部徳洲会病院 国際医療支援室
3) 医療法人 沖縄徳洲会 南部徳洲会病院 高気圧酸素治療部
医療の国際化に伴い,日本 在住の外国人や,訪
日した外国人の受け入れ可能な医療機関が増加して
いる中,当院では外国人患者に対しても安心・安全
な医療を提供するため,昨年JCI:Joint Commission
International(国際病院評価機構)
の認証施設となり,
今年度はJMIP:Japan Medical Service Accreditation
for International Patients(外国人患者受け入れ医療
機関認証制度)を取得した。高気圧酸素治療(以下:
HBO)においては,第1種装置と第2種装置を有し,
臨床工学技士(以下:CE)
の当直体制下,休日昼夜関
係なく24時間対応しており,年間約2,800件の治療を
行っている。沖縄県はスキューバダイビングなどのマリ
ンスポーツが盛んな地域であることから,再圧治療件
数も年々増加傾向にあるが,近年,嘉手納基地内米
国海軍病院のHBO閉鎖もあり,当院へ紹介または搬
送されてくる基地内の外国人患者数も増加している。
外国人の受け入れについては国際医療支援室が窓口
となっており,英語・中国語・韓国語の医療通訳が複
数名常勤している。再圧治療においては症状チェック
のため外国人患者とのコミュニケーションは必須だが,
HBO専門医は英語通訳不要であり,軍人の再圧治
療時は軍医が帯同するため特に問題はない。しかし
一般の外国人患者の場合,オペレーターであるCEに
英会話が堪能なスタッフはおらず,長時間の再圧治療
中,医師を治療室内に拘束し続けることは困難であ
り,医療通訳も休日・夜間の対応は困難な状況となっ
ている。そのため,言語サポートツール(見える通訳)
やHBO外国人患者対応マニュアルなどを活用し,全
職員対象の院内英会話教室にも随時参加している。
今後も外国人患者の受け入れ体制の向上を目指し,
各部署間での連携を強化しながら院内全体で取り組
んでいきたい。
第 51 回日本高気圧環境・潜水医学会学術総会
一般演題6-3
高気圧酸素治療における看護の役割
一般演題6-4
高気圧酸素治療の学生教育における現状と
課題
松田健太郎
医療法人財団樹徳会 上ヶ原病院 看護部
佐々木 健 阿部結美 寺田直正 廣谷暢子
横浜労災病院 臨床工学部
看護師における高気圧酸素治療(以下HBO)のイメ
ージは単なる治療法の一つにしか過ぎず,その内容
【はじめに】当院は第2種高気圧酸素治療装置を有し
はおろか言葉すら聞いた事のない看護師が多い。診
ており,養成校からの依頼を受け臨床実習(以下,実
療の補助業務の一つとなりがちなHBOに対する看護
習)を実施している。2014年より養成校1校(4年制大
の役割について述べる。
HBOが適応となる疾患には急性期の一酸化炭素
中毒から,慢性期の放射線治療における晩期障害
(放
学)から依頼を受けて,講義と実習および試験を行っ
ている。その現状と課題を報告する。
【現状】講義は 2年次に基礎と臨床に分けて90分の講
義を2回行った。
射線性潰瘍や骨髄炎)とさまざまなものがある。病期
実習は 4年次に計39名が 1班3名に分かれ,各班1
も疾患も異なっているが,HBOを受ける全ての患者に
日の実習を行った。始めに基礎的な知識の確認を含
対して,重要な看護の役割は①安全安楽に治療を受
めたアンケートを行い,回答内容に基づき各学生の知
けるための準備と患者教育,②HBOに関連したスト
識量に応じた復習を行いながら実施した。実習後に,
レスや有害事象の予防及び早期発見とその対応,③
理解度に関するアンケートを行った。全学生の実習終
予定された回数の治療が遂行できるよう心身へのサ
ポート及び全人的看護を行うこと,の3点である。
1点目の安全管理としては,支燃性の強い酸素の
了後に養成校にて試験を施行した。試験は講義内容
から基礎と実習で経験した臨床の選択問題,さらに
記述式を加えた全10問とした。
【まとめ】試験結果より基礎問題では圧力単位や単位
特性を理解し安全管理 に細心の注意を払うことが必
換算が約75%でできていなかった。臨床問題では実
要である。特に安全管理を怠る事は,HBOそのもの
際に体験した内容は 80%で解答できていた。記述式
の継続や更なる発展に大きく関わることである。その
問題は実践に即した問題としたが白紙だった学生が
ためにも,直接治療の場に立ち会わない看護師であ
若干名いた。
っても治療の意義や副作用だけではなく,治療環境
や,酸素の特性・圧力変化といったことを理解し安全
管理や患者教育に携わる必要がある。2点目として,
閉所での拘束感(第1種装置)や,圧力変化による鼓
基礎問題の正解率が低かったのは,講義から約1
年半の期間があり,実際に装置に触れても基礎的理
論が理解できていないからと推測される。臨床問題
の正解率が高かったのは,実際に体験した事による
と推測できる。以上のことから,講義と実習で学ぶ
膜・中耳への負担等々,心身へのストレスに対する予
ことが知識の定着に繋がることを再認識した。従っ
防や対策を考慮することも重要である。
て,実習ではより体験することに重点を置く内容とし,
3点目について,放射線治療後の晩期障害等に対
講義から実習までの期間を短縮することと,学生に
するHBOは場合によって,50 ∼80回以上と治療が長
は実習前レポートの作成をして復習をしておく事を提
期化することもある。そんな時,身体状態を観察・管
案する。
理するだけに留まらず,患者のモチベーションを如何
に維持させ,予定される治療回数を遂行できるよう
心(精神)へのサポートをするか,看護師の果たす役
【今後の課題】装置の設置施設が減少し従事する機会
が少なく,また平成27年度より養成校における監督
行政が各都道府県知事へと移り,各養成校でのカリ
キュラムが異なっている。実習カリキュラムの統一を
割は大きい。患者・医師・技師・看護師が一つのチー
図ることにより,実習施設間の格差が少なくなると考
ムとなってHBOを遂行出来るよう,看護師自らがその
える。
役割を意識すべきであると考える。
日本高気圧環境・潜水医学会,日本臨床工学技士
会の協力を得てカリキュラムの作成が望まれる。
71
日本高気圧環境・潜水医学会雑誌
Vol.51 Supplement, Sep, 2016
一般演題6-5
第2種高気圧酸素治療装置の更新を経験して
一般演題6-6
第1種高気圧酸素治療装置における感染管理
門馬陽平1) 柴崎よしの1) 相馬由利1)
後藤陽次朗 灘吉進也
1)
1)
1)
馬場照太 杉山 光 小森恵子
2)
若井慎二郎 猪口貞樹
社会医療法人共愛会 戸畑共立病院 臨床工学科
2)
1) 東海大学医学部付属病院 臨床工学技術科
2) 東海大学医学部 外科学系救命救急医学
【目的】2016年2月,日本臨床工学技士会より,「 医療
機器を介した感染予防のための指針」が公布され,部
署別医療機器感染対策指針として高気圧酸素治療室
【はじめに】当院は,1975年に開院し高気圧酸素治療
を始めて現在に至る。前年度の治療件数696回,救
急的適応204回,非救急的適応492回の治療を施行
している。開院当初より使用していた第2種高気圧酸
装置(以下装置)及び周辺機器の汚染状況を調査し,
今後の感染予防策を検討する。
素治療装置(エスペック社製:PHC-60)を2015年度
【方法】
装置内部の汚染度の定量化を目的にATP拭き
に第2種装置(バロテックハニュウダ社製:P-2200S)
取り検査を実施した。装置内部は15箇所(aからo)に
に損耗更新を行ったのでその経験を報告する。
区分し,更に周辺機器であるペイシェントグラウンドス
【更新・準備】
第2種装置を購入し約40年が経過し,メ
トラップ(以下ストラップ)をp,ペイシェントコールアッ
ンテナンスサービス期限が2015年9月末に終了するこ
センブリをqとし,治療前後に各箇所10回測定した。
とで当該年度中の更新が決定した。装置入れ替え6
カ月前に臨床工学技士をはじめとし,多職種のメン
バーで構成されたワーキンググループ(WG)が発足し
た。定期的に集まりスジュールを作成し必要な準備を
有意差はMann-Whitney Utestを用い,p<0.05を有意
とした。今回の調査で感染症保有届者はいなかった。
【 結果】ATP値(RLU)の中央 値( 治 療 前/治 療 後 )
整え,工事期間としては,2015年10月から2016年3月
は,a:76/455,b:69/1068,c:74/586,d:60/449,e:
までの 6か月間とし,工程中には,進行状況の報告,
47/513,f:79/779,g:57/455,h:83/391,i:92/349,
問題点などのディスカッションを行った。 治療停止1
j:83/407,k:85/560,l:108/515,m:81/565,n:
カ月前には院内の各診療科に高気圧酸素治療の長期
82/489,
o:95/551,p:189/5117,q:50/447であり,全
休止のお知らせを出し,院外においても救急搬送を
てにおいてp<0.05と有意な結果が認められた。
考慮して県央,県西部の消防署,保健所等にもHBO
診療長期休止の通知文書を提出した。その他,当院
に患者を紹介している施設や定期点検時,診療振り
替えを依頼している施設にも同様の通知文書を提出
した。また,損耗更新にあたって当院の運用・管理が
【考察】ATP値はテレビ設置位置の頭部側とストラッ
プで高値を認めたことから,飛沫や直接接触部など
患者の動作環境に依存すると考えられた。結果より,
漠然と装置内を清掃するのではなく,高値を示した
学会の安全基準に沿っているのか見直しを行った。
箇所を優先的に清掃することなどが重要である。日々
【結果】ほぼスケジュール通りに工程は進んだが,保健
変化する患者の感染状況を把握し,適切な予防策を
所の視察予定が数日遅れてしまったため,操作トレー
構築しなければならない。指針に従い,感染に対す
ニングを少し短縮することになったが問題なく予定通
る必要な知識習得と意識向上を図ることが,効率的
り4月1日に治療開始を迎えることができた。また,大
かつ安全な装置の提供に繋がると考えられた。
きなトラブルが起きることも無かった。運用・管理にお
いては,改善が必要な課題を見つけることができた。
【まとめ】WGでの多職種との協力や事前の準備・計画
がトラブルのない更新に繋がった。そして,高気圧酸
素治療の運用・管理を定期的に見直すことは,安全
な治療の施行に重要だと考える。今後も安全基準に
沿った運用を確保し,医療安全を第一に治療を施行
していきたい。
72
も言及された。今回,当院の第1種高気圧酸素治療
第 51 回日本高気圧環境・潜水医学会学術総会
一般演題7-1
当院におけるCO中毒に対するHBO施行の
現状と問題点
∼遷延型一酸化炭素中毒のリスクの検討∼
一般演題7-2
縦隔気腫によりHBOが早期開始できなかっ
た重度一酸化炭素中毒の経験
西山和芳 兵藤好行
1)
1)
1)
若井慎二郎 西野智哉 青木弘道
2)
JA愛知厚生連豊田厚生病院 臨床工学技術科
1)
小森恵子 猪口貞樹
1) 東海大学医学部 外科学系救命救急医学
2) 東海大学医学部付属病院 臨床工学技術科
【はじめに】自殺企図にて,重度一酸化炭素中毒とし
て搬送された症例を経験した。推定曝露時間が長く
縦隔気腫などの理由からHBOが早期施行できず予後
【はじめに】当院は第2種高気圧酸素療法(HBO)装置
を有し,急性一酸化炭素(CO)中毒に関して神奈川
県内のみでなく山梨,静岡東部からの受入れも積極
的に行っている。今回当院に搬送されたCO中毒症例
に関する検討を行ったので,文献的考察を交えて報
告する。
【対象】2012年10月から2015年9月の 3年間にCO中毒
で入院となった 127例,うちCPA症例や当初から間
不良と予想されたが,高次機能障害は残るものの退
院できるまでに回復し,その後の経過情報が若干で
はあるが入手できたので報告する。
【症例と経過】20代男性。自殺目的で車中にて練炭を
使用していたところを発見。前日より発見場所にて車
が停車していたところを目撃されており,推定曝露時
間は 24時間以上と予想された。補助換気下で救急
歇型として当院転院となった例を除いた120例を対象
搬送され,その後リザーバーマスクによる高濃度酸素
とした。
投与。来院時,対光・睫毛反射なし,CT,MRIにて両
【結果】平均年齢48.2±20.7歳,男女比は 81:39であ
側淡蒼球画像所見を認めた。また,縦隔気腫,誤
った。原因は練炭が 39例,火災が 31例であり,全
嚥性肺炎,敗血症があり即時HBOが施行できなかっ
体のうち自殺企図例は 45例を占めた。暴露時間は判
た。来院時のCOHbは 0.1%と低値であった。その後
明しているもので138.3±172.8分であった。106例に
入院加療にて縦隔気腫は落ち着き,レベルも改善が
HBOを施行しており,うち99例は当院のプロトコー
見られ,第5病日からHBO施行となった。5回のHBO
ル通り2回,意識障害が遷延した 5例に対し3回以上
を施行し,意思疎通などは問題なく行えるとことまで
のHBOを行った。トロポニン-I値は115例で測定して
改善するも,記銘力障害,見当識障害などは残存し
おり,うち異常値(>0.04ng/dl)となったのは 58例で
た。退院前のMRI所見でも両側淡蒼球に空洞状病変
あった。MRI検査は 98例で施行,異常所見を認めた
見られ,一酸化炭素中毒の慢性期所見と思われた。
のは 20例であった。一度意識が清明となってその後
KOSH立方体試験:計13点であった。家族の強い希
症状が再度出現する典型的な間歇型は 1例も認めな
かったが,意識障害が持続する遷延型を9例認めた。
うち全9例でトロポニン-I陽性となり,またMRIでは 5
例に異常所見を認めた。
【考察】今回間歇型の症例を認めなかったためその危
険因子を特定することはできなかったが,症状遷延
のリスクとしてトロポニン-I値がひとつの指標となるこ
とが示唆された。ただし今回120例のうち79例は他
望により自宅のある遠方でのリハビリを希望され第17
病日で退院となった。退院後の追跡調査では長谷川
式簡易知能評価スケールにて 18点という結果は得ら
れたが,画像評価などは困難であった。
【考察】本症例では来院時の意識レベルが悪く,画像
上の変化も見られる重度の症例であり,また縦隔気
腫などにより即時のHBOを施行する事ができなかっ
院紹介後詳細不明または外来自己中断しており,こ
た。しかし初期の酸素投与によりある程度の改善が
の中に間歇型が含まれている可能性がある。また軽
みられ,その後のHBOにより自立下での退院可能な
快したとされる症例の中にもMMSEなどの検査をして
レベルまで回復がみられた。また,半年後の追跡調
いない例があった。今後は電話予後調査や外来フォ
査でも詳細までは不明であるが,退院時所見と大き
ロー検査をプロトコール化し,より詳細なデータを収
な変化がなかったことより,HBOが症状の改善と予後
集することが必要と考えられた。
に何かしら寄与したのではないかと示唆された。
73
日本高気圧環境・潜水医学会雑誌
一般演題7-3
ヘリウムガス自殺に対する高気圧酸素治療
の実際
Vol.51 Supplement, Sep, 2016
一般演題7-4
誘因不明の動脈ガス塞栓症の一例
清水徹郎
土居 浩 山川功太
南部徳洲会病院 高気圧治療部
東京都保健医療公社 荏原病院 脳神経外科
症例は 50代男性,経験タンク数500本以上の上級
【はじめに】昨年の本会で声変わりのためのヘリウムガ
者である。浮上後の下肢のしびれにより脊髄方減圧
スボンベ(酸素混合)による脳ガス塞栓症の報告をし
症を疑われ,離島より航空搬送された。悪天候によ
たが,今回ヘリウム100%のガス缶からの吸引で自殺
り,搬送決定から数時間を経て当院に到着。前医で
した症例に対し高気圧酸素治療(HBO)
を施行した症
施行されたCTで門脈ガスを少量認めたが,頭部・胸
例を経験したので報告する。数年前から本邦での報
部には異常を認めなかった。到着時Th12レベルの知
告が散見するようになった。しかし状態が悪く治療の
覚低下を認め,USANTT-6を施行しほぼ軽快したが,
対象になった症例はなかったが,今回救命だけでな
もうろう感が残存した。翌日に施行した頭部MRIでは
く,かなりの回復を得られたので報告する。
diffusionにて多発性の微小脳梗塞像を認め,空気塞
症例:20歳男性,大学生。
栓症の所見と考えられた。右空間失認など高次脳機
既往歴:特記事項なし
能障害を認め,再圧治療の継続とリハビリテーション
現病歴:2016年3月17日大学の寮自室で,ネットで
を施行した。減圧障害の診療に従事していると,し
紹介されているヘリウムガス缶(ヘリウム100%)
を吸入
ばしば画像で門脈ガス血症に遭遇する。大量の門脈
し倒れているところを,父親が発見救急要請。某県
ガスが証明されても直ちに再圧治療を施行するとこれ
立救命センターに搬送。
らは消失する。一般に動脈ガス塞栓症は,急浮上,
【現症,経過】バイタルサインは安定していたが,意識
肺障害の併発,浮上直後に発症することが特徴とさ
レベルは不穏の状態。純酸素治療で加療後,翌日
れているが,本症例はその何れにも該当しない,無
当院に搬送。緊急にHBO(2気圧,1.5時間)施行し,
減圧潜水,安全停止の確実な施行が行われており,
その後連日HBOを施行。MRIDWIで脳内に多発の
また先天的な右左シャントの存在も否定された。いわ
高信号検出,広範囲に低酸素脳症をきたしたと思わ
ゆる減圧症(DCS)と動脈ガス塞栓症(AGE)は臨床
れるが,通常の低酸素脳症と異なる画像であった。
的に区別が困難で,減圧障害(DCI)として扱われる
しかしHBO連日施行し10日経過後より発語が出現,
ゆえんであるが,今回の症例は理論上何が誘因であ
MRIも劇的に改善傾向がみられた。20日終了後には
るが解らないままの発症である。もちろん航空搬送を
介助歩行も可能となり,高次脳機能障害は残存する
要したことは悪化因子と考えられるが,現状の沖縄県
が,自力歩行,食事も含め可能となり,発症後40日
の緊急再圧治療の問題点と合わせて報告としたい。
で回復期リハビリテーション病院に転院した。
【考案】通常の低酸素脳症と経過が異なり,発症後す
ぐに死亡する場合がほとんどであるが,もし救命でき
た場合はHBOによる治療が改善に寄与すると思われ
た。
74
第 51 回日本高気圧環境・潜水医学会学術総会
一般演題7-5
第1種装置で応急治療後,翌日搬送して第2
種装置の標準治療にて良好な予後が得られ
た動脈ガス塞栓症の一例
一般演題8-1
Guidelines for Prehospital Management
of Diving Injuries作成のためのInternational
Divers Alert Network(IDAN)
の取り組み
鈴木信哉1) 小山 敦2) 鈴木利直1)
小島泰史1,2) 柳下和慶1,2) 小柳吉彦1)
近藤夏樹1) 北井勇也1) 大橋正樹1)
小島朗子1) 鈴木信哉1,3)
髙倉照彦3) 菅野将也3) 副島 徹3)
3)
石橋春香
1) 亀田総合病院 救命救急科
2) いわき市立総合磐城共立病院 救命救急センター
3) 亀田総合病院 ME室
重症の減圧障害では,発症後早期の再圧治療が
ないと予後が不良となる。今回第1種装置にて応急治
療し安定化の後,発症から24時間後に長距離ヘリ搬
送後の第2種装置による標準治療にて良好な予後が
得られた症例を経験した。近隣に第2種装置がない
場合の対処として第1種装置の応急的な活用が推奨
できる。
61歳,男性 潜 水士。軟 式 空 気 潜 水で 最 大深度
26m,滞底時間22分の潜水後,両肩のかゆみと軽い
左側腹部痛があり,潜水約30分後にはしごを登った
後,急にめまいと両下肢脱力が出現し,直近の前医
に救急搬送された。前医来院時,めまい・嘔気・眼振
あり,左で回内回外・指鼻指試験がやや稚拙であり,
CT・MRIで所見がなかったが,小脳の空気塞栓症を
疑い,発症約3時間後に酸素加圧型の第1種装置に
て治療圧2.0ATAで減圧を含め2時間の高気圧酸素治
療を行った。補助療法としてリドカイン50mg/h持続
点滴及びメチルプレドニン250mgが投与された。この
治療により嘔気は軽減するもめまいが強いため,発
症約8時間後に治療圧2.4ATAで減圧を含め2時間30
分の 2回目の高気圧酸素治療を行い,めまい症状は
軽減した。前医の第1種装置は減圧障害標準治療で
ある米海軍再圧治療表6が実施できないため,翌朝
消防防災ヘリにより,当院へ転院搬送となった。来
院時,眼振と体動時のめまいがあり,立位可能なる
も動揺し,片足立ちは出来なかった。直ちに再圧治
療表6延長表による7時間の治療後,開眼右片足立
ちが可能となり,第3病日の再圧治療表6による5時
間の治療後,開眼左片足立ち可能,つぎ足歩行可
能,第5病日の再圧治療表6の治療では,sharpened
Romberg陰性となり,左右とも閉眼片足立ちは 5秒程
度まで可能となり,日常生活に支障を来さないレベル
まで回復した。第6病日の再圧治療表5の治療前後で
は症状の変化がなく,第8病日に軽快退院となった。
1) (一財)日本海洋レジャー安全・振興協会(DAN JAPAN)
2) 東京医科歯科大学医学部附属病院 高気圧治療部
3) 亀田総合病院 救命救急科
【目的】IDANはDAN JAPANを含む 5つのDANから
構成され,減圧障害を含むダイビング事故者に対し,
ホットラインサービスを通じて世界中で支援を提供し
ている。現在の診療ガイドラインは,減圧障害では緊
急再圧治療を要するといった,設備の整った病院で
の最適な治療を扱うものであり,潜水地及び救急搬
送時の医療資源不足との制約(専門医不在,再圧施
設無し)に対応していない。潜水は遠隔地で行われる
ことが多く,Guidelines for Prehospital Management
of Diving Injuries(設備の整った病院到着前の潜水
関連障害管理に関するガイドライン)の作成が必要で
ある。
【方法】2015年に各DANの専門家10名によるDiving
Injuries Management Committee(DIMC)が設 立さ
れた。DAN JAPANからは筆頭演者が参加している。
DIMCでは,症例検討を通じてDANが関心を寄せる
問題(questions of interest)を纏めた。以下に抜粋
する。
1. 遠隔地での減圧障害疑い症例に対して,
a. 常圧酸素投与のみで症状改善した場合でも再圧
治療施設への搬送が必要か。
b. 常圧酸素投与で症状改善後再悪化した場 合,
常圧酸素投与での対応は妥当か。
c. 症状・所見の把握をどのように行うべきか(医師
不在の場合を含む)。
d. short tableでの再圧治療は妥当か。
e. 代替治療としての水中再圧治療の是非。
2. 軽度の筋力低下を伴う減圧障害疑い症例の再圧
治療目的の民間機搬送は妥当か。
3. 軽症減圧障害に対する緊急再圧治療の適応の有
無。
4. 水中での適切な蘇生法。
そして,現存するエビデンスの見直し,ガイドライン
の策定,各学会との調整を目的とした,独立した外
部機関であるGuidelines Development Panel(GDP)
6名を任命し,各問題の議論を委ねた。現在GDPで
の議論が進行中であり,報告を踏まえて再度DIMC
で議論後にガイドライン作成予定である。
【結語】設備の整った病院到着前の潜水関連障害管
理に関するガイドライン作成のためのIDANの取り組
みを報告した。
75
日本高気圧環境・潜水医学会雑誌
一般演題8-2
沼津市にあるダイブサイトでの事故の傾向に
ついて
Vol.51 Supplement, Sep, 2016
一般演題8-3
高所ダム湖における大深度潜水作業
望月 徹1) 池田知純1) 三浦 卓2)
野澤 徹1,2) 苅部 徹1) 村田清臣1)
1) NPO法人アンダーウォータースキルアップアカデミー
2) 水中科学研究所
1) 東京慈恵会医科大学 環境保健医学講座
2) ジオテック株式会社
首都圏ダイバーの集まる伊豆半島最大のダイブサイ
【目的】我が国では高気圧作業時の減圧はZH-L16ア
トでの事故について報告する。当該地域は,毎年約
ルゴリズムを基準とするよう定められているが,当該
5万人のダイバーが訪れる屈指のダイブサイトである。
アルゴリズムによる標高530m,曝露圧力3MPaの圧
駿河湾に面し穏やかな湾を有しており,初心者講習
気作業では,約5%もの減圧症発症率が報告されてい
からテックダイビング講習,ショップによるツアー,バ
る。我々は,新冠ダム湖(標高390m)における水深
ディダイビングと活動も多彩である。サービス提供者
45mの潜水作業に際し,減圧症発症率を1%以下とす
は,潜水協会を組織し,緊急時の対応システムも構
築しており,事故が発生した場合の報告書も収集し
ている。以下は,2005年(平成17年)から2015年(平
成27年)までの期間で救急車出動を依頼し,報告が
あったものの集計である。
上記期間中の事故(死亡を含む)は 51件で,そのう
ち死亡は 13件であった。年平均で,事故は約4.6件,
るために方策を講じ,減圧性気泡の調査によってそ
の有効性を評価した。
【方法】当該潜水作業では,高所での大深度潜水に
加え,低水温(7℃)であり,低地からの通勤のため
高所順応時間が確保できない等の条件があり,高い
減圧症リスクが予想された。我々はヘリウム混合ガス
(トライミックス)潜水と酸素減圧法を用い,ZH-L16ア
ルゴリズムによる減圧計算では,安全率1.25による換
死亡は約1.2件である。事故のうち,男性が27件,女
算M値を使用した。また,高所補正はCross修正法
性が 16件,不明が 8件で,全体に占める割合は,そ
による米海軍海面等価表によった。減圧性気泡の調
れぞれ,52.9%,31.4%,15.7%であった。死亡者では,
査は超音波ドップラー気泡検知器により,浮上後60,
男性7件
(53.8%)
,女性4件
(30.8%)
,不明2件
(15.4%)
90,120分に前胸部にて実施した。検知気泡はスペン
であった。
サー・スケールによって等級分類し,先行研究から発
年代別でみると,10代では,3件(死亡1件:以下カッ
コ内死亡件数),20代では,5件
(1件),20代,5件
(1件),
症率1%以下の基準を被験者の 50%に気泡等級Ⅱ以
上が認められないこととした。
30代,10件(1件),40代,17件(5件),50代,
7件(2件),
【結果】7/4-9及び 9/5-10のうち延べ 10日間で調査を
60代以上,6件(2件),不明,3件(1件)であり,全体
実施した。期間中作業に従事した潜水者は男性21
に占める割合は,それぞれ,5.9%
(7.7%)
,9.8%
(7.7%)
,
名で, 年 齢は 42±7才( 平均±SD),BMIは 24.7±
19.6%(7.7%)
,33.3%(38.5%)
,13.7%(15.4%)
,11.8%
3.11kg/m2であった。潜水作業は 67回実施され,潜
(15.4%)
,5.9%(7.7%)
であった。事故および死亡者に
占める40代以上の割合は,それぞれ,62.5%と75.0%
(不明者を除く)であった。
ダイビング形態別では,死亡13件中,何らかの形
での講習の場合が,5件(38.5%)
,バディダイビング,5
件(38.5%)
,ファンダイビング,1件(7.7%)
,その他(作
水深度は 43.8±2.2m,滞底時間は 33.7±6.4分,最
低水温は 7.7±0.7℃であった。気泡は 25例(37.3%)
で検知された。内訳は等級Ⅰが 22例,等級Ⅱが 3例
であり,等級Ⅲ,Ⅳは検知されなかった。軽微なも
のを含め減圧症の症状は認められなかった。
【考 察】検 知 気 泡のうち等 級Ⅱ以 上は全 体 の 4.5%
(3/67)であり,設定した基 準値を大きく下回った。
業,単独など)
,2件(15.4%)
で,死亡原因では,13件
等級Ⅰを含めた全てについても50%を下回ることから,
中,2件(15.4%)が心筋梗塞(疑いを含む)
であり,10件
当該潜水作業における減圧症発症リスクは低く,対
(76.9%)
が溺水であった。
潜水事故は原因が分かりにくいといわれるが,より
詳しい事故原因の究明が必要であると思われる。
76
森野利哉2) 山崎 洋2) 柳澤裕之1)
策が非常に有効に機能していると推定できる。今後
データの解析を進め,安全性の確保と潜水効率の向
上を図る予定である。
第 51 回日本高気圧環境・潜水医学会学術総会
一般演題8-4
商業飽和潜水における潜水士の安全と健康
―エクスカーションと減圧―
一般演題8-5
水中酸素減圧が可能なマスクの開発
錦織秀治1) 玉木英樹2) 合志清隆3)
密本尚寛1) 芝山正治2) 榎本光裕2)
小柳津卓哉2) 小島泰史2) 柳下和慶2)
1) アジア海洋㈱
2) 東京医科歯科大学医学部附属病院 高気圧治療部
【目的】平成27年4月1日に高気圧作業安全衛生規則
(高圧則)が改正・施行され,海外ではすでに民間レ
ベルで広く行われている飽和潜水が日本国内でも今
村田幸雄4)
1) (有)中国ダイビング 潜水技術研究部
2) 玉木病院 総合診療
3) 琉球大学医学部付属病院 高気圧治療部
4) 琉球大学医学部付属病院 高気圧治療部,国際潜水教育科学研究所
【はじめに】改正高気圧作業安全衛生規則(改正高圧
則)
(施行令:平成27年4月1日)
では,純酸素使用の禁
後行われることが考えられる。飽和潜水は特殊な潜
止が削除されたことから,安全性の対策を講じたうえ
水方法により潜水効率を飛躍的に高められるという
で水中酸素呼吸(酸素減圧)が可能となった。しかし
利点があるが,潜水士が長期間高圧環境に曝露され
酸素減圧を実施するにあたり,使用者の教育を含め
るため健康面や安全面に十分留意した運用が必要と
たソフト面に加えて装置自体のハード面での課題があ
なる。
る。そこでハード面の一つの対策として水中で酸素使
我々は,高圧則改訂以前より国内外で実作業にお
ける飽和潜水を採用して通常の潜水では深度・作業
用が可能なフルフェイスマスクを開発したので,その
使用経験を含めて新たな装置を紹介したい。
量の面で困難な工事において実施してきた。これま
【現在の手法】現在のマスクは 1つの圧力調整器のみ
で行ってきた商業飽和潜水についての運用データを
であり,これを介して潜水士はオイル式コンプレッサ
精査し,得られた結果に文献的考察を加えて飽和潜
水における安全な運用方法を検討した。
【方法】我々が 1986年∼2015年にかけて国内外で行
った飽和潜水について減圧等の運用条件やこれま
での運用データを集計して分析した。減圧症の発症
率の比較対象としては,ノルウェー海域で1983年∼
1990年にかけて収集された商業飽和潜水におけるデ
ータを引用した。
【結果】我々が行った飽和潜水は 243件,延べ飽和潜
ーないしボンベの圧縮空気を吸入している。しかし純
酸素の吸入ではオイル式コンプレッサーのラインが使
用できず,酸素専用の別系統ラインが必要になる。そ
こでマスクないしレギュレーターの水中での交換が必
要になるが,この方法は安全面で問題が多い。
【新たな装置】新たに開発したフルフェイスマスクには,
圧縮された酸素と空気(ないし混合ガス)専用の 2つ
の圧力調整器が装着されており,陸上でのガスコント
水士数1378名,この間の減圧症の発症は 2件(1名)
ロールにより呼気ガスを酸素に切り替えたり戻したり
であった(発症率0.15%)。一方ノルウェー海域で行わ
することができる。これによってマスクを水中で外すこ
れた飽和潜水における減圧症発症率は 0.82%
(2662
と無く酸素減圧が安全に容易に可能である。さらに
人中22件)であった。
酸素の供給源を大容量の 7000L用ボンベないし酸素
【考察】ノルウェー海域の結果から飽和潜水の減圧症
ボンベカードルを想定しており,酸素と他のガスとの
発症率は飽和潜水中の潜水士が経験する圧力差との
取り違いの防止目的で酸素減圧用のホースの金具を
相関が報告された。我々の減圧症発症率が比較的低
く抑えられている要因として考えられるのは,1.最大
エクスカーションを基本的に行わない潜水計画,
2.同
じ潜水士による飽和深度を起点とした上下へのエクス
カーション潜水を行わない潜水計画が要因として考え
DISSとしている。
【おわりに】新たに開発したフルフェイスマスクは酸素
減圧が安全に行えるものであるが,この装置はフーカ
ー式潜水だけではなくスクーバ式潜水にも対応が可
られる。エクスカーション深度の選定方法や同じ潜水
能である。今回の改正高圧則の施行によって水中酸
士による飽和深度を起点とした上下作業の禁止を明
素減圧が可能になり,ハード面での安全性が一歩前
確に規定し運用することは飽和潜水士の健康を管理
進したことになる。しかし,酸素使用の安全教育を主
するために有用であると思われる。
体としたソフト面での対応が必要である。
77
日本高気圧環境・潜水医学会雑誌
一般演題8-6
シミュレーション飽和潜水時における筋力
発揮感覚に対する,一側肢への筋力提示の
効果
Vol.51 Supplement, Sep, 2016
一般演題8-7
潜水後に浸漬性肺水腫が疑われ,経過から
肺型減圧障害を併発していたと考えた一例
森島 亮1) 山見信夫2) 鈴木信哉3)
岩川孝志 小沢浩二 只野 豊 德永徹二
海上自衛隊 潜水医学実験隊
【背景】我々は過去の本学会において,シミュレーショ
ン飽和潜水(SAT)時において,筋力発揮感覚が低
下することを報告した。本研究ではこのような筋力発
揮感覚が低下するSATにおいて,一側肢の筋力をモ
ニターしながら筋力発揮を行い,同時に反対肢におい
大橋正樹3) 不動寺純明3)
1) 亀田総合病院 呼吸器内科
2) 医療法人信愛会 山見医院
3) 亀田総合病院 救命救急科
水に漬かると末梢の血液が肺循環に移動するとい
う生理的変化の中で,運動量の増大,冷水,高血圧
など心血管系の負荷により,浸漬性肺水腫が発症す
て同調させることが大気圧下と同様に可能か検討す
ることがある。息切れ,チアノーゼ,咳嗽などの症状
ることを目的とした。
を呈するが,肺型の減圧障害との鑑別が困難な場合
【方法】成人男性6名(平均年齢34.5±5.5歳)を被験
がある。今回,僧帽弁閉鎖不全症が誘因で肺水腫を
者として,大気圧下および深度200 ∼250mに相当す
発症したと考えられたダイバーが,発症翌日に呼吸状
るSATにおいて,発揮筋力の提示なしに「自らが想
態が増悪し,発熱と血中CRPの著明な上昇にもかか
像する最大筋力(MVC)の 30%および 50%」に相当す
わらず感染症が考えにくい臨床経過を示し,再圧治
る筋力発揮を,それぞれ 3秒間行わせた。引き続き,
療により呼吸不全が改善したため,減圧障害を併発
非利き手に対して発揮筋力値の提示を行いつつ,利
していたと考えた症例を経験した。
き手の 30%MVCおよび 50%MVCに相当する筋力発
揮を10秒間行わせた。この時,非利き手の筋力発揮
が 5秒を経過した時点で,利き手を用いて非利き手と
筋力発揮感覚を同調した状態を5秒間保持させた(利
き手の発揮筋力は提示しなかった)。目標とすべき
症例は 50歳代男性。波高2m,海水温20.4℃でウ
エットスーツを着用し,最大潜水深度18.7m,潜水時
間56分の空気スクーバ潜水を実施した。運動強度は
軽く体感温度はやや寒かった。安全停止深度5mにて
酸素レギュレータに1分間ほど替え,その後空気レギ
ュレータに戻して浮上開始したあたりから呼吸苦が出
30%MVC,50%MVCの筋力値を100%として標準化
現し,水面到着した。呼吸困難が増強して咳嗽,血
し,そこからのズレ(ΔF[%])により,筋力発揮感覚
痰が出現し,安静・酸素吸入で改善しないため,近く
を評価した。
の医療機関の救急外来を受診した。受診時,マスク
【結果および考察】筋力値の提 示なしに筋力発揮さ
6LでSpO2 96%,脈拍 138 /分,呼吸 24/分,呼吸
せた時 のΔFを, 大 気 圧 下およびSATで比 較する
音は両側減弱,神経学的所見はなかった。心エコー
と,30%MVC時にはSATが有意に高値を示しており
で重度の僧帽弁閉鎖不全があるも心機能は保たれ,
(p<0.01)
,
50%MVCにおいても高値を示す傾向にあっ
胸部CTでは両側にすりガラス影があった。潜水によ
た(p=0.08)
,このことはSATにおいて筋力発揮感覚
る肺水腫が疑われ,酸素投与で経過観察となったが,
が低下したことを示唆している。一方,非利き手へ発
揮筋力値の提示をした場合のΔFは 30%MVCにおい
ても50%MVCにおいても,大気圧下とSATに間に差
は見られなかった。このことから,SATにおいて筋力
78
鈴木利直3) 近藤夏樹3) 北井勇也3)
非定型肺炎の可能性も考慮して抗生剤の投与が開始
された。翌朝(第2病日)には酸素需要が一時的に改
善するも夜間に湿性咳嗽と頻呼吸があり増悪した。
利尿薬にて若干の改善が認められるも,第3病日に
は 39度の発熱とCRP上昇を伴い,胸部CTでは両側
発揮感覚の低下が生じても,本研究で行ったように
すりガラス影が増悪した。臨床所見・経過からは感染
一側肢に発揮筋力値が提示されれば,反対肢で筋力
症は否定的であり,肺型減圧障害の可能性が否定で
発揮感覚を同調させることは,大気圧下と同じように
きないことから転院となり,3回の再圧治療により著明
可能であると考えられた。
な改善がみられ軽快退院となった。
第 51 回日本高気圧環境・潜水医学会学術総会
演者・座長索引
【略号表】
招請講演
招請
特別講演
特別
教育講演
教育
Annual Review
AR
エビデンスレポート
ER
シンポジウム
S
パネルディスカッション
PD
ワークショップ
WS
一般演題
[あ]
青木一雄
O
演題番号
O2-5
青木弘道
O7-1
赤嶺史郎
PD1
東浩司
S1
阿部結美
O2-3
天野陽一
O2-4
O6-1
荒木康幸
WS
O3-1
有村敏明
S2
有賀徹
招請
安蒜聡
PD2
PD3
五十嵐辰男
PD2
PD3
池川麻衣
O5-2
WS
O6-2
O6-4
[い]
池田知純
PD1
伊古美文隆
AR
石川勝清
S2
WS 座長
石橋春香
S2
O7-5
石原雅也
O4-2
石山智之
O2-1
石山純三
O3-8
市川直紀
O3-2
O8-3
市場晋吾
O4-1
井出里香
O3-7
伊藤達也
O2-4
O6-1
伊藤晴夫
PD2
PD3
稲垣喜三
O3-5
井上治
教育 1
猪口貞樹
S5
今村浩
S5
岩川孝志
O5-3
岩崎正重
O3-8
PD1 座長
O4-5
O6-5
O7-1
O8-6
[う]
上野俊明
O5-2
内田英二
PD2 座長
79
日本高気圧環境・潜水医学会雑誌
内田千草
O4-5
宇都宮精治郎 O6 座長
[え]
榎本光裕
PD3 座長 S1
遠藤汐梨
O2-2
S2
S4
PD3
O1-3
O3-6
O4-3 O4-4 O5-1 O5-2 O8-4
S4
PD3
O1-3
O3-6
O4-3
O4-4
S4
PD3
O1-3
O3-6
O4-3
O4-4 O5-1 O5-2 O8-4
[お]
大江与喜子
PD3
大川淳
PD3
O5-1
大久保淳
S1
S2
大城安之
O6-2
大橋正樹
O7-5
大和田恵子
O4-5
岡崎徹
O1-1
小川駿
O2-2
小倉健
O1-1
小倉真治
PD2
小此木範之
PD3
尾崎修一
S2
O8-7
O3-4
小沢浩二
O5-3
O8-6
小柳津卓哉
S1
S2
折原和広
O4-2
[か]
改元敏行
S2
景山 望
O5-3
嘉嶋勇一郎
S5
加藤晃典
O2-2
加藤剛
O3 座長
鎌田桂
O4 座長
唐澤久美子
PD2
苅部徹
O8-2
川口達也
S1
川嶌眞之
S1
S3
S1 座長
川嶌眞人
S1
S3
招請座長
川田慎一
S2
丸藤健
O2-1
PD3
O3-3
[き]
黄川田弥生
O4-5
岸和史
PD3
北井勇也
O7-5
北島明美
O1-2
北島清治
O1-2
北島尚治
O1-2
木村主幸
WS
木村理
PD2
桐木園子
S1
S3
久我洋史
O1-1
O3-4
楠勝介
S1
O3-3
工藤元嗣
WS
O8-7
[く]
80
O4-1
Vol.51 Supplement, Sep, 2016
第 51 回日本高気圧環境・潜水医学会学術総会
久保田芳明
S1
倉島直樹
S1
S2
O1-3
O4-3
O4-4
O2-5
O8-5
AR 座長
[こ]
小池祥一郎
O7 座長
合志勝子
O2-5
合志清隆
ER
S5
小島朗子
S3
O8-1
小島泰史
S1
S2
S3
S4
PD3
O1-3
O3-6
O4-3 O4-4 O8-1 O8-4 S3 座長
小鷹丈彦
WS
S2
S4
PD3
O1-3
O3-6
O4-3
O4-4
O7-1
S2 座長
O8-1
O8-7
PD1 座長
後藤啓吾
S1
後藤陽次朗
O6-6
小林尊志
S5
小村寛
S2
小森恵子
S2
O6-5
小柳吉彦
S3
O8-1
小山 敦
O7-5
近藤夏樹
O7-5
O8-7
[さ]
雑賀真也
O3-5
齋藤繁
S5
斉藤大樹
O2-1
齊藤久寿
O2-2
堺美郎
WS
坂上正道
WS
櫻庭直達
PD1
佐々木健
O2-3
澤田珠里
O4-2
三本松和紀
O4-2
PD2
ER 座長
O3-1
O6-4
[し]
四ノ宮成祥
特別 1
柴崎よしの
O6-5
芝山正治
O8-4
清水渉
S1
清水徹郎
PD1
少前貴康
O4-5
O5 座長
WS
O6-2
O7-4
PD1
O7-5
[す]
菅野将也
S2
菅原秀一郎
PD2
杉山光
O6-5
管田塁
WS
O7-5
O3-1
鈴木絵梨
O4-1
O4-5
鈴木健一
O4-1
O4-5
鈴木信哉
S2
S3
鈴木利直
O7-5
O8-7
鈴木秀典
特別 2
須田健二
WS
[せ]
関根万里
PD3
81
日本高気圧環境・潜水医学会雑誌
[そ]
相馬由利
O6-5
副島徹
S2
O7-5
高尾勝浩
S1
S3
髙木元
S1 座長
高木元
S1
高倉照彦
WS
[た]
髙倉照彦
S2
高澤知規
PD2
高橋悠希
PD2
高橋敏幸
O5-2
高橋良輔
PD2
高山浩史
S5
瀧健治
PD2
只野豊
O8-6
田中隆昭
O2-1
玉木英樹
O8-5
田村裕昭
S1
爲廣一仁
PD2
太良修平
S1
S3
O4-1
O7-5
S4 座長
S3
O4-1
[ち]
千足耕一
S3
[つ]
田典久
鶴田良介
PD2
S4
S5
S5 座長
[て]
手塚康二
PD2
寺田直正
O2-3
O6-4
[と]
土井智章
PD2
土居浩
S4
堂籠博
S2 座長
堂本英治
ER
德永昭
教育 2 座長
德永徹二
O8-6
徳永仁
S4
徳森美佳
S1
戸部賢
PD2
豊田泉
PD2
豊冨達智
O4-1
PD3
O4-2
O7-3
O3-7
PD3 座長
O3-3
O4-5
[な]
82
内藤明広
O2-4
O6-1
中島正一
PD2
O6 座長
中島章夫
WS
中田瑛浩
PD2
PD3
長野準也
S1
O3-3
中林洋介
PD2
S4 座長
Vol.51 Supplement, Sep, 2016
第 51 回日本高気圧環境・潜水医学会学術総会
長見英治
O1-1
O3-4
中山拓也
O4-1
O4-5
永芳郁文
S1
名川博之
PD3
灘吉進也
O6-6
WS 座長
新家和樹
O2-4
O6-1
錦織秀治
O2-5
O8-5
西野智哉
O7-1
西山和芳
O7-2
[に]
新田憲市
S5
丹羽康江
PD3
[の]
野澤徹
O8-2
O8 座長
乗松由香
S1
O3-3
[は]
橋本光宏
O3-4
馬場照太
O6-5
濱田倫朗
WS
林海里
O5-2
原田俊和
WS
春田良雄
S2
O3-1
[ひ]
東幸司
O3-3
日比野秀夫
PD2
兵藤好行
O7-2
平井一郎
PD2
平井誠
O2-2
平塚理沙
PD3
廣瀬稔
WS
廣谷暢子
WS
O2-1
PD2 座長
O2-3
O6-4
[ふ]
福元剛
PD2
藤井隆司
O3-2
藤井茂範
O5-3
藤田基
S4
藤田智
S5
藤平威夫
PD2
不動寺純明
O8-7
古川英伸
O3-5
PD3
[ほ]
蓬郷尚代
S3
星野隆久
O3-7
細川加保
O3-5
堀江正樹
O5-1
堀川俊之介
O1-1
O5-2
83
日本高気圧環境・潜水医学会雑誌
Vol.51 Supplement, Sep, 2016
[ま]
前田拓
S1
前田卓馬
S1
前山英男
S4
牧之内崇
O1-1
増野智彦
教育講演 2
松井傑
S1
松上紘生
O3-5
松田範子
O2 座長
松田健太郎
PD3
松葉理奈
O4-2
松山法道
S4
間中泰弘
O2-4
S2
S4
PD3
O1-3
O3-6
O4-3
O4-4
O3-6
O4-3
O4-4
O3-6
O4-3 O4-4 O5-1 O5-2 O8-1
O6-3
O6-1
[み]
三浦卓
O8-3
水谷瞳
O2-4
密本尚寛
O8-4
南ゆかり
O3-5
三春摩弥
O2-1
三保仁
S3
宮田健司
S1
三山浩
S5
O6-1
S3
宮本聡子
S1
S2
S4
PD3
O1-3
宮本正章
S1
S3
S5
O4-1
特別 2 座長 S5 座長
向畑恭子
PD1
WS
O6-2
村尾尚規
S1
S4
PD3
[む]
村田清臣
O8-2
村田純一
O2-2
村田幸雄
O2-5
村野祐司
WS
村松敏朗
O3-8
O8-5
[も]
望月勝徳
S5
望月徹
PD1
望月由武人
S4
森健太郎
O3-2
森島亮
O8-7
森野利哉
O8-3
盛本真司
S2
守屋拓朗
O3-4
門馬陽平
O6-5
O8-3
O8 座長
S2
S3
[や]
84
八重田知見
O4-5
柳下和慶
S1
柳澤裕之
O8-3
山川功太
S4
山川博毅
O3-7
山口喬
S1
山崎博臣
S3
O7-3
S3
O1-3
O8-4 特別 1 座長 教育 1 座長
第 51 回日本高気圧環境・潜水医学会学術総会
山崎洋
O8-3
山田実貴人
O7 座長
山田法顕
PD2
山之内康浩
O2-4
山見信夫
O8-7
山本遼太郎
S2
山本素希
S1
山本有平
S1
O6-1
S2
S4
PD3
PD3
O3-7
O1 座長
O1-3
O3-6
O4-3
O4-4
[よ]
吉浦徹
O3-2
吉岡淳
O2-1
吉田泰行
PD2
吉田陽一
S4
吉野梨々子
O3-5
吉松弘喜
O3 座長
米原敏郎
O3-1
[わ]
若井慎二郎
O6-5
若月優
PD3
和田孝次郎
AR
渡邊利広
PD2
O7-1
O3-2
S3 座長
85
協 賛 企 業 ・法 人 一 覧
協 賛 企 業 ・法 人 一 覧
アステラス製薬株式会社
アス
トラゼネカ株式会社
アステラ
ス製薬株式会社
アボッ
ト ジャパン株式会社
アストラゼネカ株式会社
株式会社ウミ
ヒラ
アボット ジャパン株式会社
エア
・ウォーター株式会社
株式会社ウミ
ヒラ
栄研化学株式会社
エア・ウォーター株式会社
エーザイ株式会社
栄研化学株式会社
江洲整形外科クリニック
エーザイ株式会社
MSD株式会社
江洲整形外科クリニック
大森工業株式会社
MSD株式会社
小野薬品工業株式会社
大森工業株式会社
科研製薬株式会社
小野薬品工業株式会社
川崎エンジニアリング株式会社
科研製薬株式会社
協和発酵キリン株式会社
川崎エンジニアリング株式会社
医療法人啓信会
協和発酵キリン株式会社
株式会社小池メデ
医療法人啓信会 ィカル
五洋建設株式会社
株式会社小池メディカル
サ
ノフィ株式会社
五洋建設株式会社
大正富山医薬品株式会社
サノフィ株式会社
武田薬品工業株式会社
大正富山医薬品株式会社
田辺三菱製薬株式会社
武田薬品工業株式会社
株式会社中村鐵工所
田辺三菱製薬株式会社
学校法人日本医科大学
株式会社中村鐵工所
日本医科大学同窓会
学校法人日本医科大学
日本医科大学循環器内科学 げんてん会
日本医科大学同窓会
日本イ
ーライリリー株式会社
日本医科大学循環器内科学 げんてん会
日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社
日本メジフ
ィジックス株式会社
日本イ
ーライ
リリー株式会社
ノバルテ
ィスファーマ株式会社
日本メジフ
ィジックス株式会社
株式会社バイオセラピー
メディカル
ノバルティスファーマ株式会社
バロテックハニ
ュウダ株式会社
株式会社バイオセラピー
メディカル
ファイ
ザー株式会社
バロテックハニ
ュウダ株式会社
株式会社名優
ファイザー株式会社
ラジオメーター株式会社
株式会社名優
リンパ球バンク株式会社
ラジオメーター株式会社
リンパ球バンク株式会社
(五十音順)
(五十音順)
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高 気 圧 酸 素 療 法下 の 酸 素 供 給 量
お よび 酸 素 化 を 評 価
経皮血液ガスシステム TCM4 シリーズ 経皮酸素分圧測定装置
TCM400
経皮酸素分圧測定は、国際ガイドラインやコンセンサスで評
価されています。特に、Undersea and Hyperbaric Medical
Societyによるコンセンサスにおいて、効果判定指標のひとつ
として評価されています。
製造販売元
TCM400のO2センサは、
高気圧(4ATAまで)・高酸素状態(純酸素)下で
最新の製品情報はこちらをご覧ください
アキュートケア支援サイト
スパークテストを行い、
高気圧酸素療法時の安全性を確認しております。
www.radiometer.co.jp
www.acute-care.jp
ラジオメーター株式会社
本社 〒140-0001 東京都品川区北品川4-7-35
TEL:03-4331-3500(代表)
第 51 回日本高気圧環境・潜水医学会学術総会 プログラム
2016 年 11 月 24 日発行
第 51 回日本高気圧環境・潜水医学会学術総会 会長:宮本 正章
【総会事務局】
〒 113-8603
東京都文京区千駄木 1-1-5
日本医科大学付属病院循環器内科/高気圧酸素治療室
TEL:03-3822-2131
(代)
e-mail:[email protected]
【運営事務局】
合同会社エム・プランニングオフィス
TEL/FAX:03-3825-7968
e-mail:[email protected]
URL:http://jshum51.umin.jp