時事速報3月10日掲載

10 March 2015
JIJI News Bulletin
BEIJING HUABEI
時 事速報
(第40回)
ことわざから学ぶ、独禁法リスク・マネジメント
北京市大地律師事務所 / 日本部
パートナー弁護士 法学博士 熊 琳
中国には「居安思危(安きに居りて危うきを思う)」
(『春秋左氏伝』
)、
「亡羊補牢(羊を亡いて、牢
を補ふ)
」
(『戦国策』
)という、
ことわざがございます。
「居安思危」は
「平安無事なときこそ危難に備え、
用心を怠らない」ことを指し、
「亡羊補牢」は「被害に遭った場合でも、速やかに対策を行えば、損
失を免れる」ことを指すもので、いずれもリスク・マネジメントのあり方を説くものでございます。
さて、春節を間近に控えた2015年2月9日、中国の国家発展改革委員会(以下、
「発改委」という)
は、米半導体大手・クアルコム社に対し、総額60.88億人民元(約1150億円)という、中国の
独占禁止案件における最高額を大幅に塗り替える制裁金を科すことを決定しました。今回は、このク
アルコム社を例に、上記二つのことわざが、現代における日系企業の中国ビジネスにとっても、重要
な教訓となることを、感じ取っていただければと思います。
◇事案の概要
本件で発改委は、クアルコム社が無線通信規格に必要な特許ライセンス市場とベースバンドチップ
市場において、以下のような市場支配的地位の濫用行為(独禁法違反行為)があったことを認定しま
した。
(1)著しく高額な特許使用料の徴収:具体的には、次の2点です。
・特許リストの提供を拒み、期限切れの特許についても使用料を徴収。
・ライセンシーの持つ特許を、無償でクアルコム社に提供するように要求。
(2)抱き合わせ販売:無線通信規格に必要のない特許ライセンスを抱き合わせて販売。
(3)不合理な条件の付加:ベースバンドチップの販売に関する特許ライセンスの締結にあたり、異
議申し立てをしないことをベースバンドチップ供給の前提条件とする。
◇注目すべきポイント
1.他国での独占禁止案件が、中国での調査の引き金に
一般的に発改委による調査は、通報をその端緒としています。しかし近年は、海外で独占禁止違
反による処分を受けた企業が、後を追うように発改委による調査を受けるケースも多く見られていま
す。今回のクアルコム社に対する調査も、同社がこれまでにアメリカ、EU、日本、韓国等で処分を
受けていることと、無関係ではないでしょう。
このため、中国国外で独占禁止取り締まり機関による調査、処分を受けたことがある企業について
は、中国国内でも調査を受けるリスクが考えられますため、速やかな調査と改善が求められます。
2.知的財産分野における独占禁止取り締まり
本件でクアルコム社は、市場の支配的地位を獲得、利用する手段として、特許などの知的財産権
を利用しています。実際に、発改委が認定したクアルコム社の違法の事実は、その全てにおいて知
的財産権が関係しています。本件において、発改委がどのような事実に注目し、これをいかに評価し
たかを確認することは、中国において特許などの知的財産権ビジネスを展開する際の、法的リスクの
有無を判断するヒントになると思われます。
3.取り締まり機関とのコミュニケーション
結果的にクアルコム社は、中国市場における致命的なダメージを回避することに成功しました。す
なわち、特許使用料の総額は下がったものの、中国市場における主要な利益を維持することに成功し
たものです。また、今後同社は発改委が命じた是正措置に基づき、新たなビジネスモデルを展開する
ことになりますが、新モデルの合法性にはお墨付きが与えられ、再度独占禁止の調査を受ける可能
性は低く、かえって同社の中国ビジネスは安定性を増す、との見解もありました(実際に同社の株価は、
制裁金額の発表後に上昇いたしました)。
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このような結果は、クアルコム社が本件の調査過程において発改委と積極的、適時、有効なコミュ
ニケーションを行い、会社経営陣が何度も発改委を訪れるなど、十分な意思疎通を図っていたことと、
無関係とは考えられません。
◇教訓とすべきは
今回の案件は、まさに「居安思危」
「亡羊補牢」が当てはまるものだと言えましょう。すなわち、
企業は独占禁止調査に遭遇する前に「日頃から用心を行い」
、調査に遭った際には「速やかに対策を
講じ、被害を防ぐ」ことこそ重要ということです。そして、可能な限り企業の損失を減少させつつ、
これを逆手に取って、今後の中国ビジネスをさらに安定させることができれば、これこそ「禍を転じて
福と為す」というものではないかと存じます。
チャットアプリの陌陌、14年は2540万ドルの赤字=上場後初の決算
中国のニュースサイト中国新聞網が6日伝えたところによると、スマートフォン用チャットアプリを手掛ける
中国の陌陌科技は5日、2014年12月の米ナスダック上場後初となる決算を発表した。14年の売上高は
4480万米ドルと、前年より13倍以上の伸びを見せた。一方、純損益は2540万ドルの赤字で、前年の
1740万ドルから45%拡大した。
14年10∼12月期に限ると、売り上げは前年同期比8倍の1860万ドル。純損益は前年同期の310万
ドルから250万ドルに縮小した。顧客の増加や、検索機能など有料サービスの利用拡大が業績の改善に寄
与した。12月時点で毎月利用するアクティブユーザー数は前年同月比2.
1倍の6390万人。
(時事)
健康産業に積極投資へ=中国・復星集団
7日付の中国紙・京華時報(27面)によると、中国の複合企業、復星集団の郭広昌会長は5日、
「将来、
健康産業は爆発的成長期を迎え、復星は特にこの分野の投資を重視する」と述べた。
同社は既に上海の高級高齢者介護施設に投資していると紹介した上で、将来の投資の重点は医療サービ
ス、医薬、介護、美容などの分野だと指摘した。
(北京時事)
北京・天津
ケーブルTVの歌華有線、増資で33億元調達へ=コンテンツ強化
7日付の中国紙・上海証券報(4面、77面)によると、上海証取に上場するケーブルテレビ運営会社の
北京歌華有線電視網絡(北京市)は、親会社や機関投資家など10社を対象に新株約2億2073万株を発
行し、最大33億元を調達する方針だ。調達資金は海外からの映画やテレビドラマなどのコンテンツ購入や
クラウド事業に充てる予定。
10社のうち、同証取に上場するインターネットテレビ(IPTV)大手の百視通新媒体(上海市)や映画
大手の中国電影は増資に応じる見込み。
(時事)
天津製バルサ板を初輸出
世界最軽量の木材といわれるバルサ材を原料とした軽量バッキングボードがこのほど、中国天津経済技術
開発区出入境検験検疫局の検査に合格し、ベトナムに出荷された。天津製のバルサ材が輸出されるのは初
めて。5日付の城市快報が伝えた。
バルサ材は計3箱、76.
93キロで、価格は590.34米ドル。風力発電所のブレードや航空宇宙産業の
材料として使われる。
(時事)
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