中国におけるSNSマーケティングの取り組み

22 May 2013
JIJI News Bulletin
SHANGHAI
時 事速報
第11回
中国におけるSNSマーケティングの取り組み
野村総研(上海
上海)諮詢有限公司
◇マーケティングコストが高騰する中国EC市場
2003年に端緒を開いた中国の電子商取引(EC)市場は、毎年50%以上の成長率で伸びており、
12年には1兆3000億元に至った。市場が急成長すると同時に、プレーヤーが乱立し、価格競争の激
化による収益悪化は避けられず、多くのEC事業者やメーカーのEC販売の課題となっている。さらに 、
イ ンターネット広告の価格やB2Cプラットフォームのプロモーション費用が高騰しているため、広告と
SEM(サーチ・エンジン・マーケティング)をメーンとするECマーケティングの効率が低下しつつある。
このような状況の中で、多くのEC事業者とメーカーは急速に普及してきているSNS(ソーシャル・ネッ
トワーキング・サービス)に注目している。SNSとは、インターネット上で人と人とのつながりをサポート
する新興ソーシャルメディアのことである。その代表として、中国ではミニブログ(微博)、ソーシャルネッ
トワーキングサイト、ソーシャルネットワーキングアプリケーションなどがある(下図参照)。
直近の中国EC市場では、SNSを活
中国における主要 SNS 一覧
SNS の分類
主要な機能
代表的なサービス
用したソーシャルプロモーションが頻繁
ミニブログ(微博) ●利用者は、短い文章や写真、 新浪微博(Sina Weibo)
に行われており、ソーシャルECサイトも
あるいは動画などの外部リンクの 騰訊微博
出現しつつある。EC市場のソーシャル
URL などを投稿する
(Tencent Weibo)
メディアの取り組みは今後注目すべきで
●ミニブログ内の利用者間でコ
ミュニケーションを取れるように
あろう。
もなっている
●会員制のコミュニティー型サー
ビス。人と人とのコミュニケーショ
ンを促進する
●主に、プロフィル機能、メッセー
ジ送受信
(私書箱)機能、ユーザー
相互リンク機能、ユーザー検索機
能、日記(ブログ)機能、コミュ
ニティー機能を有する
ソーシャルネット ●主にスマートフォン・タブレッ
ワーキングアプリ ト向けに開発された、チャットな
ケーション
どのリアルタイムのコミュニケー
ションを行うためのインスタント
メッセンジャー
●グループチャットや写真、テキ
スト、外部リンクの情報などを利
用者間共有できる機能も有する
ソーシャルネット
ワーキングサイト
人人網
◇微博マーケティングが本格化へ
開心網
3億人の登録者数を突破した中国の
ミニブログ(微博)は、巨大なユーザー数
と情報量を擁する最も活発なソーシャル
メディアである。各企業、団体、社会機
構が公式アカウントを開き、充実した情
微信(WeChat)
報発信によって多くのフォロワーを獲得
連我(LINE)
し、商品やサービスの宣伝を図るケース
はもう珍しくなくなってきた。
12年4月、中国EC市場の最大手、淘
宝網(Taobao)は5.86億元で登録
者数が最も多い新浪微博の親会社であ
る新浪の約18%の株式を買い取ること
による戦略的提携を行った。これまで多
くのEC事業者とメーカーは微博の口コミ宣伝を活用してきたが、両社の戦略提携はEC業界が本格的
にSNSマーケティングに取り組んでいくというマイルスト−ンと考えられるであろう。
淘宝網は今後、新浪微博とアカウント連動やデータ交換、オンライン決済などの分野において提携す
ることが予想される。その目的は、新浪微博のトラフィックを淘宝網へ導くことによる売り上げ拡大であ
る。また、アカウント連動による顧客分析から特定商品のリコメンド機能や特定顧客層向けの情報発信
などのような細分化したマーケティングも期待できる。淘宝網にとって、高成長維持のために、
「高いト
ラフィックを武器に高いプロモーション費用を徴収する」という従来のやり方から脱却するという課題
を克服する有効な手段の一つである。また、淘宝網のTmall(B2Cプラットフォーム)に出店してい
るメーカーにとっても、今回の淘宝網と新浪微博の戦略提携を機に、自社のSNSマーケティングの仕組
みを整えながら、よりEC販売の拡大につなげていく工夫が必要だろう。
時事通信社
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◇微信によるプレシジョンマーケティングの取り組み
約5億人のユーザーを有するQQ(中国本土において最も普及しているインスタントメッセンジャーソ
フト)を提供する中国の大型IT企業、騰訊(Tencent)は11年初めに微信というスマートフォン向
けのインスタントメッセンジャーアプリケーションを発表し 、わ ずか2年で登録者数が3億人を突破し
た。当初インスタントメッセンジャーの機能しか搭載されていなかったが、12年には新しい「 友達圏」
(友達全員向けの情報共有機能)と「QRコード認証」機能が付け加えられた。
この二つの機能はEC事業者にとってとても魅力的である。
現在淘宝網で出店している多くの店舗
(B
2C、C2Cともに)は微信のQRコード認証を通じて既存顧客と直接的なコンタクトポイントを作り、
随時商品情報や販促情報を発信している。また、商品の問い合わせ、注文、アフターサービスが微信で
行われる場合もある。さらに、既存顧客が微信の「友達圏」機能を通じて店舗からの情報や自分が購入
した商品の写真・口コミを友人と共有することより、新規顧客の開拓も実現できる。
大量のネットユーザーに向け、コストをかけてプロモーションするより特定した顧客へのアプローチ
がより効率的であり、今後成熟しつつあるEC業界の大きなトレンドとなるだろう。
◇ソーシャルECサイトの出現
微博、
微信のほかには、
ソーシャルECサイトも注目すべきだろう。従来のECサイトより商品カテゴリー
や顧客層を絞り、商品に関する情報や口コミの共有を実現させる仕組みを作り、商品販売へつなげるの
が特徴である。現在、最も多いのは20代女性をターゲットにしたアパレル、化粧品販売のソーシャルE
Cサイトである。
多くのソーシャルECサイトは、顧客が自社サイト経由で淘宝網などの販売サイトで購入した場合に注
街)
文金額に応じたコミッション収入で稼ぐビジネスモデルである。現在業界トップ2社(美麗説、
の年間コミッション収入は5000万元以上と言われている(2社経由の淘宝網の売り上げは100億元
以上)。明確なユーザー像を持つソーシャルECサイトは、EC事業者やメーカーにとってプロモーショ
ンコストが節約できる費用対効果の高い有効な仕組みと考えられる。 (コンサルタント・林梧 )
東方鉄塔、江蘇省鎮江で不動産工事受注=
東方鉄塔
江蘇省鎮江で不動産工事受注=60
60億元で
億元で
21日付の中国紙・上海証券報(A3面)などによると、深セン証取の中小企業ボードに上場する工場用鋼
構造物・鉄塔メーカーの青島東方鉄塔(山東省膠州市)はこのほど、江蘇省鎮江市で不動産開発プロジェクト
を共同受注した。受注総額は60億元。工期は最長38カ月を予定する。
都市再開発の一環で、約530ムー(1ムー=約6.
7アール)の用地に総床面積105万平方メートルの住宅
団地などを建設する。内訳は立ち退き住民用住宅が23万平方メートル、
分譲住宅が60万平方メートル。また、
床面積22万平方メートルの複合商業施設を建設する。
(時事)
南京駅のメガソーラー、2
南京駅のメガソーラー
、2年間放置=配電システム整備遅れ−江蘇省
年間放置=配電システム整備遅れ−江蘇省
21日付の上海紙・東方早報(A18面)によると、高速鉄道が発着するターミナル駅として2011年6月開
業した江蘇省南京市の南京南駅で、屋上に設置したメガソーラー(大規模太陽光発電所)が2年間放置され
ていることが、中国国家審計署(会計検査院に相当)の調査で分かった。送電網につなげるための配電システ
ムの整備が遅れ、売電価格交渉もまとまっていないことが背景にあるという。
南京南駅のメガソーラーは、約12万平方メートルの屋上を利用し、太陽光パネル3万枚を設置する計画で、
駅周辺の1万世帯の消費を賄える第1期は駅開業直前に完成した。投資額は2億7670万元。最終的な発電
電力量は年間912万キロワット時を見込み、建物と一体化した太陽光発電施設として世界最大規模になると
いう。
(時事)
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