中国オンライン動画広告市場の成長とその活用

30 January 2013
JIJI News Bulletin
SHANGHAI
時 事速報
第7回
中国オンライン動画広告市場の成長とその活用
野村総研(上海
上海)諮詢有限公司
近年、インターネットユーザーの増加およびデータ通信技術の発展とともに、オンライン動画事業者
が成長し、オンライン動画が新たなプロモーション媒体になりつつある。一部の企業もこの新たな媒体
を伝統的なテレビ広告を補完するものとして積極的に活用している。
◇テレビを上回ったオンライン動画の視聴時間
中国のオンライン動画は、成長の一途をたどっている。中国互聯網中心「第30回中国互聯網発展状
況統計報告」によると、2012年のユーザーは4.5億人で、前年同期比で38.
5%増加している。
また、
パソコン(PC)経由とモバイル経由のユーザーはともに右肩上がりで増加し、ネットユーザー総数に占
める割合はそれぞれ、65.1%と27.
7%となっている。その背景には、国内の多くの動画サイトが正
規のドラマ、映画と娯楽番組などを無償提供していることが大きい。
また、12年のCSG精準研究集団「短視頻研究報告」によると、ネットユーザーのオンライン動画
サイトの1日平均視聴時間は約1.8時間でテレビの約1.7時間を上回り、1週間の平均利用回数も
5.53回で、テレビの5.40回より多かった。特にマイクロ動画と呼ばれる20分以内のショート動画の
1週間の利用回数は9.6回に達し、他のオンライン動画を大幅に上回っている。
一級都市におけるネットユーザーの場合、スマートフォン、タブレットPCなどのモバイル経由での利
用率も高くなっているのも特徴として挙げられる。
◇政府の規制をトリガーに事業者の大型化、寡占化が進展
市場の急成長の背景には、08年より政府主導で行われているオンライン動画市場に対する管理監
督強化が果たした役割が大きい。オンライン動画プロバイダー許認可の交付、有力なプレーヤーには北
京オリンピックの中継資格、オンライン動画コンテンツ著作権が付与され、一連の活動を通じ、業界の
発展を健全化していった。
その結果、11年の中国オンライン動画広告の市場規模は前年比で123%成長し、48.3億元に
まで達した。現在、中国におけるオンライン動画のプロバイダーは、以下の三つのタイプに分類される。
(1)優酷網(Youku)
、愛奇芸(Iqiyi)、捜狐視頻(Sohu)などの動画共有サイト系
(2)PPLIVE、PPstreamなどのストリーミングメディア系
(3)激動網(Joy)、第一視頻(V1)などのコンテンツ配信VOD(ビデオオンデマンド)プロバイダー
系
IT調査機関の易観によると、12年第3四半期における動画共有サイト系の優酷網、愛奇芸、捜狐
視頻の上位3社の市場シェアは中国オンライン動画市場全体の41.
7%となっており、業界の寡占化も
進みつつある。
◇テレビ広告にかかる規制も追い風に
オンライン動画広告の急成長には、伝統的なテレビ広告を取り巻く環境も少なからず影響している。
11年、中国広播電視総局は
「限広令」
「限挿令」
「限娯令」
を打ち出し、放送時間、
放送内容、放送回数
(娯
楽番組の1週間の放送回数を3回以内とする)などの規制を強化した。一連の規制により、テレビは、広
告を行う難易度とコストが高まり、その結果、オンライン動画をはじめとする新興メディアとの連携を強
化する方向に転じた。オンライン動画業界の規範化も相まって、業界横断的な協力も進み、結果として
ユーザーのオンラインメディアの活用の動きが強まった。
◇ますます注目されるオンライン動画広告活用
オンライン動画広告活用には、三つのメリットが挙げられる。
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(1)表現の自由度が高く、また、インターネットが介在していることで、消費者とインタラクティブに交
流でき、直接消費者を「体験の場」に誘導することができる。また、
それに伴う口コミ効果も期待できる。
優酷網によると、消費者購買行為に対する影響度について、オンライン動画広告はテレビより8ポイン
トも高いという結果を発表している
(2)テレビなどの伝統的な広告と比べ、コスト面での優位性を有する。優酷網によると、視聴率1%
あたりの費用をテレビと比較すると、北京と上海におけるテレビ広告費はオンライン動画広告費のそれ
ぞれ2.5倍、5.
7倍かかるとされる。
(3)マーケティングへの活用が容易であること。サイトにおいてユーザー分析がしやすいため、ター
ゲットが絞りやすい。また、
伝統的な広告では広告測定が難しい部分においてもオンライン動画の場合、
利用者の特性を効率よく分析でき、自社のマーケティング戦略に直接生かすことができる。
オンライン動画広告を積極的に活用する企業事例として、サムスンが挙げられる。11年末、中国市
場における取り組みとしてスマートフォンの新製品「Galaxy(ギャラクシー)S2」のマーケティング
を制作した。当該製品は若年層をターゲッ
を行うため、12年新年を祝うマイクロ映画
「你好 。我很好」
トとしていたため、土豆網(Tudou)、娯楽チャンネル、映画チャンネルなどに集中してコンテンツを
放映した。合わせて、土豆網のマイクロブログ(Weibo)を活用しながら、リアルでのプロモーション
活動も積極的に行った。
その結果、12年6月まで当該サイトへのアクセス回数は1億回を超え、12年2月まで当該商品も
2000万台の販売量に達し、前機種の「Galaxy S」より7カ月早く当該販売量を達成するという
成果を得た。当時結婚が話題となった俳優と歌手を映画の主演として起用したこと、それと連動した形
で「一般カップル人気投票」などのキャンペーンを行い、視聴者との 体験の場 を構築したこと、
マイク
ロブログを活用しながら、
リアルでのプロモーション活動も積極的に行ったことなどが成功のポイントと
して挙げられる。
プロモーションコストが高騰し、多くの企業でかけられるコストが限られる中で、既存のメディアと新
興メディアをどのようにミックスさせるかについては、企業にとってますます重要となる。
(顧問助理・胡軍華)
中国の自動車リコール、1
中国の自動車リコール
、12年は
2年は7
75%増
5%増
中国のニュースサイト中国新聞網が29日、国家品質監督検査検疫総局のデータとして伝えたところによる
と、2012年に中国で自動車メーカーが実施したリコール(回収・無償修理)は113件、320万3000台
に達し、対象車両台数は前年比75.3%増加した。
また、12年に同総局に寄せられた自動車品質関連の苦情件数は9%増の9640件。このうち、駆動伝導
系統に関する苦情が最も多く、全体の35.8%を占めた。エンジン(21.4%)と電装品(10.2%)がこれ
に続いた。
(時事)
蘇州・江蘇省
江蘇省の不動産販売面積、1
江蘇省の不動産販売面積
、12年は
2年は1
13%増=南京は
3%増=南京は9割増
割増
中国のニュースサイト新華網が29日、江蘇省統計局のデータとして伝えたところによると、同省の2012年
の分譲不動産販売面積は9019万平方メートルとなり、前年比13.2%増加した。都市別では、省都・南京が
93%増の765万平方メートルと急増。南京の1平方メートル当たりの平均販売価格は1万2688元だった。
また同省では、不動産関連消費も伸び、建築・内装材と家具類の12年売上高は35.3%、34.1%それ
ぞれ増加。省の社会消費品小売総額の伸び(15%)を大きく上回った。
(時事)
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