福山市民病院医療安全管理指針 基 本 理 念 医療は患者と医療従事者の信頼関係、ひいては医療に対する信頼の下で、患者さまの救命や健 康回復が最優先で行われるべきものである。この基本理念に基づき、医療の安全を確保し信頼を 高めなければならない。医療の安全を確保するためには、医療は個々の医師のみによって提供さ れるものではなく、様々な職種からなる「人」、医薬品・医療機器をはじめとする「物」、医療機 関という「組織」といった各要素と、組織を運用する「ソフト」等を含めたシステムにより提供 されており、このいずれが不適切であっても医療サービスは適切に提供されないことから、個々 の要素の質を高めつつ、システム全体を安全性の高いものにしていくことが重要である。また、 事故の予防には、 「誤り」に対する個人の責任追及よりも、起こった「誤り」に対して原因を究明 し、その防止対策を講じなければならない。医療の信頼を確保するためには、医療従事者は「医 療を受ける主体は患者本人であり、患者さまが求める医療を提供していく」という患者の視点に 立った医療の実現が課題であることを認識しなければならない。また、患者さまとの情報共有が 医療安全対策の一つの鍵であり、医療従事者と患者の信頼関係の醸成につながることから、患者 の要望を真摯に受け止め、必要な情報を十分提供することや、患者が納得して医療を受けられる ように患者が自ら相談できる体制を整え、患者さまが医療に参加できる環境を作り上げなければ ならない。 当院においては,2000年より事故防止を中心に医療安全対策を進めてきた。2005年よ り導入された電子カルテはもとより、2009年より構築されたデータ・ウェア・ハウスの有効 活用により医療情報収集・分析を行い、アウトカムを明らかにし、医療従事者間および患者―医 療従事者間での情報共有などを進め、お互いの信頼を深めるとともに、医療の標準化、医療安全 対策にこれら医療情報技術を役立てて行かなければならない。 病院長のリーダーシップのもと、患者の安全を確保しつつ良質な医療を提供するため、全職員 がそれぞれの立場からこの問題に積極的に取り組むものとする。その中心となり目的を達成する ため,当院に病院全体の安全管理を担当する者(以下「医療安全管理者」と言う。)、および医療 安全管理者を補佐する者(以下「医療安全推進者」と言う。)を置き、医療安全管理委員会、医療 安全推進委員会、安全管理室を設置する。それぞれの規定は別途設ける。 なお、本指針における「医療事故」とは、医療の全過程において発生した人身事故一切を包含 し、医療提供者の過失の有無は問わず、不可抗力と思われる事象も含むものとする。 以下の指針においては,患者・家族の敬称は省くものとする。 医療安全とは、患者の安全、就業者の安全、施設・設備の安全から成り立つものである。 それぞれの安全は、下記の委員会・部署が掌握し、すべての安全は医療安全管理委員会が掌握 するものとする。 1 [患者の安全管理] ・ 安全管理室:医療事故の防止ならびに防止策の検討。医療事故対応。 ・ 医療安全推進委員会:ヒヤリ・ハット事例の検討ならびに医療安全の啓蒙活動 ・ 薬事委員会:適正な薬物療法の推進ならびに副作用調査・報告、安全な薬物使用のため の啓蒙活動 ・ 医療機器安全管理委員会:医療機器の保守・点検および不具合などの調査、医療機器安 全使用のための啓蒙活動 [就業者の安全管理] ・ 安全衛生委員会:就業者の健康管理ならびに公務災害の対応 [施設・設備の安全管理] ・ 防災委員会:消防に係わる安全管理 ・ 庶務課(管理担当) :施設・設備の保守・点検、 ・ 医療ガス安全管理委員会:医療ガス設備の保守・点検ならびに安全管理 医療事故ならびにヒヤリ・ハット事例に対する対応 (職員の責務) 第1条 職員は,業務の遂行にあたっては,常日頃から患者への医療,看護等の実施,医療機器 の取扱いなど医療事故の発生を防止するよう細心の注意を払わなければならない。 (報告) 第2条 職員は,自己の行為で医療事故を引き起こしたときは,応急措置またはその手配,拡 大防止の措置及び直属上司等への口頭報告等,所要の措置を講じた後,速やかに事故報告書 を医療安全推進担当者を経て、医療安全推進者及び医療安全管理者に提出しなければならな い。入力したFDは安全管理室に提出する。 2 すべての職員は,当院内で次のいずれかに該当する状況に遭遇した場合にも,速やかにヒ ヤリハット報告を入力し医療安全推進担当者、また安全管理室に報告しなければならない。 (1)医療事故には至らなかったが,発見,対応等が遅れれば患者に有害な影響を与えたと考 えられる場合 (2)その他,日常業務の中で患者にとって危険と思われる場合 3 本条第 1 項及び前項に掲げる報告は,医療安全を確保するためのシステムの改善や教育・ 研修の資料とすることのみを目的としており,報告者はその報告によってなんら不利益を受 けることはない。 具体的には,①院内における医療事故や,危うく事故になりかけた事例等を検討し,医療 の改善に資する事故予防対策,再発防止策を策定する。②これらの対策の実施状況や効果の 評価・点検等に活用しうる情報を院内全体から収集することを目的とする。 4 委員会の委員は,報告された事例について職務上知り得た内容を正当な事由なく第三者に漏 らしてはならない。 5 報告書の様式等の具体については、別途定める。 2 (安全管理マニュアル等) 第3条 各種医療行為等について安全性を図るためには標準化が必要であることから,作業手順 の統一化マニュアル(医療事故防止マニュアル、輸血マニュアル、感染予防マニュアル、褥 瘡対策マニュアルなど)をそれぞれの委員会等で整備する。また,入院治療に対しては、入 院時診療計画(クリニカルパス)を積極的に導入するものとする。 2 マニュアルは,関係部署共通のものとして整備・周知し、必要に応じて見直すものとする。 3 マニュアルは,作成・改訂の都度、医療安全管理委員会に報告するものとする。 (研修) 第4条 委員会は,概ね 6 月に 1 回,全職員を対象に医療安全管理のための研修会を実施する。 また必要に応じて各部門での研修会を開催する。 2 研修は,医療安全管理の基本的な考え方,事故防止の具体的な方法等を全職員に周知徹底す ることを通じて,職員個々の安全意識の向上を図るとともに,当院全体の医療安全を向上さ せることを目的とする。 3 職員は,研修を極力受講しなければならない。 4 医療安全管理者は,本院内で重大な事故が発生した場合等,必要に応じ臨時に研修会を開催 する。 5 委員会は,研修を実施した時は,その概要を記録し,2 年間保管しなければならない。 (事故発生時の対応) 第5条 事故発生時の対応を以降のごとく定める。 Ⅰ.事故発生部署での対応 いかなる事故でも、患者の生命および健康と安全を最優先に考え行動する。 1.状況の把握と対処 事故の第一発見者は、患者の状況を把握しリスクレベルの判断をする。 患者のバイタルサインなどからその緊急度を判定し、それに応じ何を優先させるか、速や かに判断し行動する。対応の遅れは患者の生命や予後に大きな影響を及ぼす。 1)患者の安全確保と救命処置 ① 第一発見者は、声をあげて他の医療スタッフ(看護師・医師)の応援を求める。 ② 直ちに必要な一次救命処置を開始する。 ③ 到着した医師の指示のもとに二次救命処置を行う。 ④ 患者に救命処置を行う際には、必ず説明をする。絶えず言葉をかけ、患者を一人にしな い。 2)報告・連絡について 医療事故に関わるフローチャート及び、医療事故発生時、夜間・休日の主治医不在時の 3 対応ルートに従って連絡する。 (別紙参照) 報 告 者:当事者 報告内容:事故発生時より、報告時点に至るまでの経過を時系列に沿って簡潔に客観的 に記載する。 報告を受けた管理者は、電話での状況確認に時間を浪せず現場に駆けつける。 2.緊急の対処 大きく二つに分ける。心肺停止と痙攣、失神等発作的な患者事故である。 コード1(コードブルー) :心肺停止に対して全館対応をする。 コード2:患者事故に対して主治医を中心とした対応をする。 ・コード1(コードブルー)に関して 対象:突然の意識消失、呼吸停止、心停止を病院職員が確認した場合。 (平日8:30~17:15の場合) 手順: ①発見した職員は直ちに電話交換手(院内電話 PHS 1000)に「こちらは**館 の**階病棟の**室です。患者が急変しました。コードブルーを放送してく ださい。」と連絡する。 ②交換手は「コードブルー、コードブルー、医師は**(具体的な場所)にお集 まりください。 」と全館に通じる緊急放送を最優先して直ちに2回、20~30 秒間の間隔で繰り返す。 ③医師は直ちに**(場所)に向かう。発生病棟看護師は緊急カート、心電図モ ニター、除細動器を持って駆けつける。除細動器あるいは AED のない場所での 発生の場合は、最寄の備えのある部署の看護師が持って駆けつける。 ④上級医は現場を統括して、中心となって蘇生術を実施する。 ⑤患者の容態にしたがって、救命救急センター、集中治療室に収容する相談、連 絡を行う。 ⑥現場にいる看護師は主治医に連絡する。 ⑦主治医は速やかに事故報告マニュアルに従い連絡する。 準備:救急カート、心電図モニター、除細動器(あるいは AED) 除細動器配置部署:生理検査室、心臓リハビリ室、放射線科、RI室、手術室、 救急外来、救命救急センター、新2階血管撮影室 新館3階病棟、本館4階病棟 AED配置部署:内科外来、泌尿器科外来、内視鏡室、透析室、本館3階病棟、 本館6階病棟、新館5階病棟、新館2階家族待合室前 本館7階、本館5階、新館6階、新館4階、本館1階中央待合 救急外来自動販売機前、小児科外来(小児用にセット) 、 リハビリテーション、 4 (夜間17:15~8:30・休日の場合) 手順: ①発見した職員は直ちに警備員(院内電話 PHS 1000)に「こちらは**館の* *階病棟の**室です。患者が急変しました。コードブルーです。」と連絡する。 ②連絡を受けた警備員は、直ちに管理当直医、循環器当直医、外傷系当直医、 救急一般当直医、管理当直師長(もしくは管理日直看護師)に「**館**階 病棟の**室でコードブルーです。 」と連絡する。 ③連絡を受けた医師および管理当直師長(もしくは管理日直看護師)は直ちに* *(場所)に向かう。発生病棟看護師は緊急カート、心電図モニター、除細動 器を持って駆けつける。除細動器あるいは AED のない場所での発生の場合は、 連絡を受けた管理当直師長(もしくは管理日直看護師)が持って駆けつける。 (または電話で設置部署に持参を依頼する。 ) ④上級医は現場を統括して、中心となって蘇生術を実施する。 ⑤患者の容態にしたがって、救命救急センター、集中治療室に収容する相談、連 絡を行う。 ⑥管理当直師長(もしくは管理日直看護師)は状況把握しだい主治医に連絡する。 ⑦主治医は速やかに事故報告マニュアルに従い連絡する。 ・コード2に関して 対象:痙攣、失神、ショック等で患者が呼吸、循環、意識がある場合 手順: ①発見した職員は、入院患者の場合は主治医を確かめて最寄の看護師に連絡する。 近くの連絡すべき部署が不明な場合には、平日・夜間・休日を問わず、院内 PHS 3198(日当直の師長、副師長、総合案内係りがPHS持参)に連絡する。 ②連絡を受けた看護師は、主治医か担当科の医師に連絡する。夜間・休日につい ては,管理当直医に連絡する。 ③連絡を受けた医師・看護師は現場に直行して指示を与える。 ④患者の容態にあわせて救命センター等に収容する事を相談する。 3.患者・家族への対応 1)患者への説明 意識がない場合・・・発生時に呼名しても反応がなく意識がない場合には、直ちに救命 処置を開始する。 意識が回復し状態が落ち着いた早い段階で、起こった状況やその 後に行った処置と今後の経過などについて主治医から説明する。 意識がある場合・・・発生時に呼名に対して反応がある場合は、患者に絶えず言葉をか け必要な処置などの説明を行い、患者に同意を得て処置を行う。 2)家族への連絡 5 主治医または現場にいる当該科の医師、もしくは看護師のうちできるだけ上席者が連絡 をする。 家族の気持ちを考慮しつつ、あえて急いで来ていただかなければならない理由を明確に 伝え、至急来院していただくことを主眼にして伝える。 3)家族への説明 主治医もしくは当該科の上席医師により、事故の事実関係を説明する。 説明に当たっては素直に事実を説明する。言い訳や憶測は厳に慎む。 その時点で医療過誤が明らかである場合は、素直にお詫びをすると共に、患者の健康回 復に全力を尽くすことを説明する。 説明は複数の医療従事者同席のもとで行い、看護管理者も必ず同席する。 (事故当事者は 同席しない) 説明終了後、直ちに時刻・説明内容・説明者をカルテに記載する。 4.医療安全管理者への報告 患者の生死や、健康に重大な影響を及ぼす可能性のある重大医療事故については、直ちに 医療安全管理者へ決められた手順に従って報告する。(平日日勤帯は、安全管理室 PHS 3109 を通して。 ) ※ 医療事故防止に関わるフローチャートは誰もが見えるところに明確に表示する。 Ⅱ.医療事故時の記録 重大医療事故発生時には、記録を経時記録に変える。 1.記録の留意点 医療事故が発生した場合、入院時点までさかのぼって記録物の提出が求められる。 すべての公文書は医療訴訟等で証拠となることを認識しておく。 通常の記録も、情報開示を踏まえた記録とする。 2.初期対応時の記録 初期対応時の記録の担当者は、初期対応現場のリーダーが指示する。 原則看護記録に随時記録する。難しい場合は、担当者を決め一貫した事実を書き留める。 時間の確認:日頃より基準となる時計を定め定期的に時間を合わせておく。また、計器類 (モニター)の時刻も保守点検時に合わせておく。 記 録 内 容:治療・処置・ケアーについていつ・どこで・誰が・何を・どのように実施し たか、指示者ならびに実施者の氏名、及び患者の反応・状態、患者・家族へ の説明内容などを客観的・経時的に記載する。 3.初期対応終了時の記録 事故発生時は事実の認識が錯綜し混乱しやすいので、初期対応に関わった医師、看護師な どが全員で相互に事実を確認する。 初期対応が一段落しても、患者の状態が安定するまでは経時的記録を続ける。 6 4.記録上厳守すべき原則 ① 事実のみを客観的かつ正確に記録する。想像や憶測、自己弁護的反省文、他者の批判、 感情的表現などは書かない。 ② 誤解のない表現を用いる。 「~と思われる。 」 「~のように見える。 」などのあいまいな表現はしない。 ③ 患者・家族への説明や、やりとりも必ず記録する。(誰にどのような説明をしたか、そ れに対して患者及び家族はどのように発言や反応したかなど。) 5.事故報告書 事故再発防止のための指導や原因の追跡、今後の予防についての検討のため、速やかに事 故報告書をマニュアルに従い提出する。 記 載 者:事故発生の直接の原因となった当事者が明確な場合は当該本人。 その他の者が事故を発見した場合には、発見者が行う。 報告の様式:FD で事実経過がわかるように入力し、安全管理室へ提出する。 Ⅲ.組織管理者・医療安全管理者の役割と責任 大事故発生時には、医療安全管理者による緊急会議を開催し、情報の共有化を図り組織として の方針を明らかにする。医療安全管理者はそれぞれの役割と責任範囲を明確にし、自ら率先し て行動する。 1.医療事故発生時の対応体制 重大事故が発生し対処を誤ると、それまで培ってきた信用に致命的ダメージを受けるので、 危機管理の視点に立った迅速な決断と行動が必要となる。 [危機の対応の要点] ① 緊急対応行動の適切さ ② 効果 ③ 決断と行動のスピード これを可能にする体制づくりと実行の責任は医療安全管理者にある。重大な医療事故が発 生した時は、組織の意思決定に関わるトップレベルの管理者を招集して、緊急会議を開催 し、対策を指揮する。 2.組織管理者の社会的責任 病院長は危機管理先人者として次のような社会的責任を果たさなくてはならない。 ① 発生した事故の事実を正確に把握し、患者さま・こ家族にそれらを伝える。 ② 誤りについては、誠意を持って謝罪する。 ③ 原因の分析とともに事故発生後の対応を行う。(被害拡大防止) ④ 事故発生後の対応が十分であったか検証し、原因に対しての再発防止、対応の不備に 関しての改善に努める。 3.緊急会議の招集 重大事故発生時には、医療安全管理者は事故調査員(院長・副院長・診療部長・参事・事務 7 部長・庶務課長・安全管理室室長・看護部長を含めた 10 人以内)を選定し、事故調査委員 会を設置し、緊急会議を開き、情報の共有と当面の対応を協議する。 緊急会議では、事故の影響範囲と起こり得る事態の予測を行う。 組織管理者は以下のような事項について方針を決定し、役割分担して指揮に当たり、被害 の拡大防止と組織の再生を図る。 ① 患者・家族への対応 ② 院内職員への対応 ③ 他の患者・家族への対応 ④ 各関係機関への報告(行政関係・警察・保健所・関係団体) ⑤ 報道機関への対応 ⑥ 事故当事者および当該部署への対応 4.事故の公表 [公表基準] ①患者を死に至らしめ、又は死に至らしめる可能性があるとき、永続的な障害や後遺症が残 るとき、事故調査委員会の審議において事故の発生原因に明らかな医療過誤が認められる 場合 ②医療過誤のあるなしにかかわらず、事故調査委員会の審議結果が公表により再発防止に繋 がる場合。 病院長は、事故調査委員会の審議結果を受け公表について意思決定する。ただし、委員会審 議の時間的猶予がないときは、病院長の判断で公表する。公表の場は院長が判断する。 Ⅳ.具体的な対応策 1.患者及び家族への対応 医療機関の過失により死亡あるいは重篤な障害が残る事故が発生した場合、患者・家族の 怒りや悲しみは計り知れないものがある。このことに十分配慮し、ご家族の待機場所など 最大限の誠意をもって接する。 患者及び家族への対応は主治医及び看護師長が中心となり、説明内容を整理しておく。 ①できるだけ早い段階で主治医あるいは担当科責任者が説明にあたる。 ②医療従事者の過失が明らかな場合は、早期に謝罪する。 ③何らかの医療行為が引き金になって患者が急変した場合にも、その事実を伝える。 ④原因の究明後は改めて事実経過を説明する。 ⑤患者から要求があったら必ず速やかに誠意を持って対応する。 2.院内職員に向けての説明 医療安全管理者は、事故発生後は速やかに、事故発生の事実と経過を説明することが望ま しい。 事故の事実と、入院・外来患者及び家族に対する説明内容を伝え、職員が同じ対応を行え 8 るように周知する。その際、患者及び事故当時者が特定されないようにプライバシーに十 分留意する。 3.他の患者への説明 担当科責任者叉は、看護師長は、事故発生現場の他の患者に対しても、速やかに説明でき る範囲で事実を伝える。さらに「安全に十分注意して医療・看護を行っている。」「再発防 止をはかる。 」ことなどを話す。 マスコミに報道された場合は、特に重要である。 事故の報道後、外来、入院患者、家族などから苦情が増えることがあるが、組織の対応方 針に基づき丁寧に対応する。 4.行政機関への報告 任意の報告であるが、できるだけ速やかに事故の事実関係を報告する。 報告者:病院長 報告先:所管保健所 5.所轄警察署への報告および捜査への対応 1)報告(届出) 医療事故によって患者が死亡するような事態が発生した場合、刑事事件として業務上過 失致死傷罪の対象となる可能性を有している。倫理的な観点より、自主的かつ速やかに 警察署に報告する。病院の判断による。 2)捜査への対応 過失の有無や責任を問う際の判断基準は、事故当時の医療水準ないし看護水準である。 警察の要請に応じて以下のような対応をする。 ① 現場保全 関連の医療機器、医療器材、薬剤などは他に使用しないで保管しておく。 ② 現場検証 事故発生場所の検証への立会い、事故時の状況再現行動。 ③ 関係者の事情聴取 窓口担当者を決めて警察署からの要請に対応する。 事情聴取の前に、顧問弁護士とともに対応を整理しておく。 [聴取内容例]:被聴取者の経歴と現在の役割 ・ 組織の管理体制 ・ 各種業務基準 ・ 業務の実践 ・ 業務手順など各種マニュアル ・ 教育計画と実践 ・ 医療機器、機材の運用 ・ 当事者の経歴と受けた教育、評価 ・ 当 事者の勤務実績 ・ 事故に至るまでの業務 ・ 実践と勤務との事実 関係 ・ 事故に関連するすべての記録 ④ 要請資料の提出 6.ご遺体の解剖 医療事故が疑われる事案で患者が死亡した場合には、死体検案・司法解剖が行われる。死 体検案の場合は、施設内での場所の提供が必要となる。 9 司法解剖が行われる場合には、通常の死亡の場合と異なり死後の処置は行わず、解剖が行 われる場所に搬送される。家族にはそのことを説明し理解を得る。搬送する際には丁寧に ご遺体をお見送りする。 7.報道機関への対応 重大医療事故は社会的にも大きな問題であり注目が集まる。事態の推移や原因・対策など を報道機関を通じて公表することは、同様の事故を他施設で繰り返さないために事故がお きた施設の社会的責務でもある。 しかし、一部では、取材攻勢により患者や家族のプライバシーが損なわれたり、他の患者 の迷惑や通常の医療業務に支障が生じることも見受けられる。このような事態を避けて、 正確な情報が公表されるためには、以下の点に留意した報道対応が重要となる。 ① プライバシーの保護 患者や家族のプライバシーの尊重を最優先する。 事故の公表については必ず事前に話して承諾を得ておく。もし了解が得られない場合 には、そのことを報道陣に伝え、公表に当たっては厳重にプライバシーを守り個人が 特定されないようにする。 ②報道機関への対応窓口の一元化 対応:事務部長 ・受付窓口は一元化し、迅速な対応をする。 ・専門的な質問に答えられるように対応チームを編成し、説明できるよう準備してお く。 ・報道機関への対応に際しては、簡単な記録を残しておく。 ③記者説明会 対応:事務部長・病院長 事故の社会的重大性によっては、記者説明会を開いて説明し、また質問に答えること が必要である。 公表する目的は、再発防止に寄与するためである。 ④取材対応のルール 対応:事務部長・病院長 報道関係者からの取材は、職員の通勤途上や病院に出入りする人にも及ぶので、対処 策をあらかじめ職員に徹底しておく。 取材には最大限対応する方針をとり、他の患者さまの迷惑や通常の医療業務に支障が 生じないよう、報道機関に協力を求める。 Ⅴ.民事手続き上の証拠保全 1.医療事故では民事控訴の可能性もある。その際に証拠のほとんどが医療機関側にあるため、 証拠の改ざん・紛失・破棄を防ぐために裁判所が証拠を確保しておくための裁判上の手続き が、証拠保全である。 10 証拠保全には強制力はないが応じないと控訴に発展した場合、カルテの証拠価値が下がり、 結果として医療機関側に不利に働くこともあるので、できる限り協力することが望ましい。 2.証拠として提出を求められる主なもの 診療録 医師の指示票 投薬記録 検査結果表 手術承諾書 手術記録 心電図 X 線写真 診療に関わる書類 病棟看護管理日誌 看護記録 医療機器 保険診療報酬請求書控え Ⅵ.事故当事者および院内職員に対してのサポート 事故により重大な結果を招いた場合、事故当事者のみならず当該当部署全体も、自責の念と 周囲の反応による影響もあり、精神的に混乱状態に陥る可能性が大きいため、十分な配慮が 必要である。 1.事故当事者へのサポート 1)事故発生直後は、できるだけ現場から離す。その際必ず誰かが付き添い、一人 にさせない。 2)当事者のプライバシーを守る。 3)患者及び家族への対応は直属の上司が行う。 4)上司は当事者と面接し、体調管理に目を向けた勤務調整と必要時休養を与える。 5)必要時、精神的に動揺が激しい場合は、直属上司から事故当事者の家族に状況を伝え、 家族からのサポートをお願いする。 6)当事者から、どのような支援が必要かを聞く。 7)専門家(精神科医師)のカウンセリングなどのサポートを受ける。 8)状況により長期的対応も考慮し、長期の体制も整えていることを説明し当事者に安心 感を持たせる。 9)同僚による事故の共有を図る。 10)上司から当事者に現状や経過について継続的に説明をする。 11)上司は当事者が今後、何をしていかなければならないか、また対応について 相談にのる。 12)必要時、弁護士によるサポートを受ける。 2.当該当部署へのサポート 1)必要時応援要員を考慮する。 2)提出書類の作成支援を行う。 3)現場検証・事情聴取対応への支援を行う。 面談による心の健康相談 心の健康相談窓口について ①福山市職員のための心の健康相談窓口のお問い合わせ、お申し込みは TEL082-236-1234(専用電話)へ・・・・予約制 11 ②福山市民病院の臨床心理士(PHS 3736) 、精神科医師(PHS 3730)に相談。 Ⅶ.事故調査 医療事故が発生した場合には、速やかに原因を調査・分析し、再発防止の対策を講じる必要 がある。安全管理室に委ねる。 1.情報収集 ①事実確認 ②関連する情報の収集 ③情報の整理 2.原因の分析 事故の根本的原因について、なぜそういう事態が起きたかを深く掘り下げて分析する。事 故の背景要因についても多方面から分析し、組織として対策を講じることが必要である。 3.事故調査結果報告書作成 事故の再発防止および医療安全の質の向上に役立てる。 4.社会的責務としての公表 事故調査結果は今後の再発防止、医療の安全性の向上に広く役立つと考えられる事例につ いては、ホームページなどを通じて公表する。 日本医療機能評価機構 医療事故防止事業部が行っている医療事故情報収集事業に参加、 報告する。 5.教育・研修 事故調査結果は、現場へフィードバックし、医療安全教育・研修に活用する。 医療側の過失によるか否かを問わず,患者に望ましくない事象が発生した時は,可能な限 り,総力を結集し,患者の救命と被害の拡大防止に全力を尽くさなければならない。 また,当院のみでの対応が不可能と判断された時は,遅滞なく他の医療機関の応援を求め、 必要なあらゆる対応をするものとする。 (閲覧) 第6条 患者及びその家族等から,本指針の閲覧の求めがあった時は,これに応じるものとする。 照会に対しては,医療安全管理者が対応する。 (指針の見直し) 第7条 医療安全管理委員会は,本指針の見直しを議事として取り上げ検討するものとする。 2 本指針の改正は,医療安全管理委員会の決定により行う。 (附 則) 1.この指針は,2003年1月10日から施行する。 2.2005年9月1日改定 3.2007年5月10日改定 4.2008年4月改定 12 5.2010年4月改定 6. 2010年10月改定 13
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