キャリア・インサイトの活用 大学等における実践例

活用事例
キャリア・インサイトの活用
─大学等における実践例─
こころとキャリアのカウンセリングオフィス結 代表 山本公子
ゆう
はじめに
ることもある︶。
結果プロフィールは視覚化され、コ
は実施・採点・整理に時間がとられる。
示された職業例の内容を知らない場
合も、職業名をクリックすれば、コン
パクトな職業情報が得られ、併せて関
連する興味領域と能力の特徴、関連す
キャリア・インサイトを組み込んだ
ても、自分の興味パターンに合えば﹁知
る。学生が知らなかった職業名であっ
しかし就職活動で出版社の人に直接話
進学等がある。
悩みなど、メンタル面の問題、大学院
面接対策等就職活動の進め方、就活の
か る 学 生 で あ れ ば、 無 理 せ ず 自 分 の
ドバックすることができる︵時間のか
味の評価﹂﹁総合評価﹂
まで行い、フィー
られる学生であれば﹁能力の評価﹂
﹁興
な い が、 直 接 喜 ば れ る こ と を し た い ﹂
の仕事は直接読者に喜ばれるわけでは
や指示はできそうにない。また、編集
いていない。他人のスケジュール管理
のとは違う。事務的な作業が多く、向
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職業研究 2014 夏季号 だ け 自 己 理 解 を 深 め て も ら う。 ま た、
学生は職業経験が少なく、将来の可能
メントもあるので、おおよその方向性
りやすく、相談後には﹁方向性が絞れ
性を探ることになるので、職業適性の
相談では必要に応じて、能力、職業
た﹂
﹁自信につながった﹂
﹁新しい面に
がわかりやすい。学生の納得感が高ま
中高年齢層︵MC︶まで幅広く利用で
興味、性格、価値観等、各種の適性検
も目を向けたい﹂といった肯定的な感
把握はウエートが大きい。
きる総合的なガイダンス・システムと
査 や チ ェ ッ ク リ ス ト を 利 用 し て い る。
﹁職業適性診断システム
キャリア・
インサイト﹂は、若年層︵EC︶から
して、相談に活用しやすいツールであ
また、インターネットを使うツールは
想が多い。
ペーパーテストは相談枠約
大学における学生や大学院生を対象と
相談個室内で利用できない。
分の中で
る。筆者の場合、主な活用場面は、①
したキャリア・コンサルティング、②
トツールの一つとして導入、③カウン
業経験のある成人︶のキャリア・コン
ノートパソコンは、相談個室内に持ち
らなかったけど、それも考えてみよう﹂
る資格情報も得られるのは便利であ
サルティングである。ここでは①②で
込んで簡単に実施できる。実施後即結
セリングルームへの来談者︵大半が職
の活用方法、事例を紹介する。
が好きで文章を書くことに興味があ
文 系 学 部 の4回 生 女 子。﹁ 昔 か ら 本
●事例
と視野が広がることがある。
がら説明をし、感想を聴きながら、じっ
くり相談を進めることができる。
相 談 時 間 内 で は、
﹁適性診断コー
ナー﹂を利用することが多い。
を聞いたことで変わっていく。
る ﹂ と 出 版・ 広 告 関 係 で エ ン ト リ ー。
価値観・行動特性︶を一つワンポイン
分あれば、適性評価︵能力・興味・
トで行ってアドバイスできる。
〝 自 己PRの 書 き 方 〟 と い っ た 就 活
ペースでしてもらうか、ペーパーテス
そうして仕事を一つひとつ理解し、現
﹁ 漠 然 と 思 い 描 い て い た、 本 好 き な
ノウハウを求めている場合でも、自身
トを持ち帰り、じっくり取り組んでも
実 に 落 と し 込 め た。 そ れ か ら は、﹁ 人
分あれば、あまり悩まずに答え
の職業に対する考え方、適性や価値観
らう。そもそも検査より傾聴を優先す
約
の理解といった基本を確認し、できる
るもの、エントリーシート、自己PR、
幅広く対応している。就職活動に関わ
就職や進学といった進路や生き方まで
キャリア相談︵個別相談︶は予約制で、
学生︵大学院生、既卒生を含む︶の
大学におけるキャリア・コンサ
ルティングでの活用
果が得られるので、一緒に画面を見な
●個別相談での利用方法
大学院の臨床心理科目で、アセスメン
50
るものが大半であり、適性理解に関わ
15
30
特集●キャリア・インサイトを活用したキャリア・ガイダンス
ア・コンサルティングプロセスを体感
う。比較的短時間で、職業適性を調べ、
することができる。
スペシャリスト、負けず嫌い﹂の特徴
彼女の感想は次のようだった。
大学から直接進学した人と、社会人
的、I研 究 的、A芸 術 的 の 順 に な り、
﹁興味と自信が客観的にわかった。エ
経験を経て入学した人がいるので、EC
と接する、自分に興味がある、手を使
ントリーしている人材分野や化粧品な
とMCを比べることができた。了解を得
キャリアプランを考える一連のキャリ
職業マッチングは、1位と3位の領
ど、この方面でよいとわかった。価値
て、結果プロフィールを見せて、話し合っ
が示された。
域で美容部員、エステティシャン、絵
観や行動特性では、自由がよいことや、
た。プロフィールは視覚化され、特徴が
C慣習的は最下位で、事務的作業を好
本作家が、2位と3位の領域で雑誌編
多くのことをするよりも一つのことを
わかりやすく比較しやすいので、この
う﹂ことで、自然派化粧品、食品︵添
キャリア・インサイトECは適性や
集者、作家、デザイナー等の職業が示
やりたいと思った。落ち着いてできる
ようなグループワークにも適している。
まないことが改めて示された。
方向性の確認として、能力、興味、価
された。なお、1位S社会的と4位E
こと、ゆっくり、きっちり向き合う特
加物のない︶
、 体 に い い も の、 エ ス テ
値観、行動特性、総合評価まで、2回
企業的の領域の職業例に﹁キャリア・
徴があると前からわかっていたが、当
等に希望を変更していった。
などリラックスできるもの、人材会社
に分けて行った︵結果例は、
図1、
2︶
。
カウンセラー﹂等がある。
結 果 は は っ き り し た 傾 向 が 見 ら れ、
では、
﹁人の役に立つ﹂が満点であり、
基礎的志向性のプロフィール︵詳細︶
時は仕事と結びつけてなかった。就活
が、
働く場の希望は、
産業領域、
若者キャ
心理職やカウンセラー希望ではある
クライエントの目指す方向性と合って
をしていて、自分の揺るがないところ、
いた。
反面﹁自分を表現する﹂が非常に低く、
能力の評価︵図1︶は、ボランティ
観、職業や人生経験が反映され、本人
リア支援、子ども対象と異なっている。
フィードバックでは一緒に結果を見
の気づかない面や、ふだんの印象と違
本当の性格、自分にとって大切なもの
ながら話し合って、よいところを引き
う面も現れた。自分の特性をはっきり
﹁ 人 に 指 示 す る の は 苦 手、 ノ ー が 言 え
出すことや、その人ならではのストー
と認識し、職業と結びつけて考える機会
ア&サポートが1位で、職業例には美
リーを将来に向かって作り上げられる
はあまりないので、客観的な結果を踏
結果には各人それぞれの興味、価値
よう支援することを心がけた。彼女が
まえて、将来どんな場でどのように働
は変わらないと感じることができた﹂
自己理解を深め、目指す方向に自信を
きたいか、方向性や将来の可能性を考
ない﹂とのこと。また、行動特性では
高め、就活を頑張ろうと思えたことを
えてもらう機会になった。
容部員、エステティシャン等がある。
確認し、その回の相談を終えた。
めてという人が多いが、キャリア・イ
リア・カウンセリング用のツールは初
サイトの学習を取り入れている。キャ
援︶の講義において、キャリア・イン
臨床心理各論︵ライフキャリアの支
きる。皆さんも気軽に試して、魅力あ
便でありながら、意義深い使い方がで
できるのではないかと考えている。簡
工夫して相談への効果を高めることが
の一部を紹介した。使い方やワークを
以上、キャリア・インサイトの活用
おわりに
ンサイトは、前もっての知識なしで直
る使い方を発見していただきたい。
専門職向け講義での活用
感的に扱えるので、まず体験してもら
職業研究 2014 夏季号
7 ﹁個人プレー、改革、組織人、リーダー、
図2
職業興味の評価︵図2︶は、S社会
図1