2‐ビニルピリジン - 日本化学物質安全・情報センター

SIDS in HPV programme & CCAP
CoCam 2, 17/04/2012
初期評価プロファイル(SIAP)
2-ビニルピリジン
N
物質名 : 2-Vinylpyridine
CAS No. : 100-69-6
SIARの結論の要旨
物理的及び化学的特性
2-ビニルピリジンは、標準温度で不快で気分が悪くなるような匂いを有する無色の液体である。測定沸点
及び融点は、それぞれ-100 ℃以下及び161.7 ℃である。実験値から推定される25 ℃の蒸気圧は、4.56
×10-1 kPaである。オクタノール及び水の分配係数(log Kow)は1.54であり、測定水溶解度は20 ℃で26.7 g/L
である。pKa= 5.06の測定解離定数は、2-ビニルピリジンがpH6及び9の環境において中性種(neutral species)
として主に存在することを示す。
ヒト健康
ほ乳動物における2-ビニルピリジンの吸収、分配、代謝又は排泄について、特別な研究はみつけられなか
った。しかし、急性経口及び経皮毒性試験において、死亡が生じた。したがって、2-ビニルピリジンは消化
管から、及び皮膚を通して容易に吸収されるとみなされる。
2-ビニルピリジンの経皮LD50は、ウサギにおいて640 mg/kg bw、モルモットにおいて0.16 mL/kg(160
mg/kg bw)であった。ラットにおける経口LD50は、> 50及び< 300 mg/kg bw(OECD TG 423)の範囲にあ
り、毒性の臨床所見は、過剰な流涎、軟便、足及び耳介の発赤、口及び肛門周囲の汚れ、切迫呼吸、虚脱、
衰弱、振戦、血管拡張及び食欲不振を含んだ。2次的情報により、ヒトにおける2-ビニルピリジンの吸入ば
く露は、頭痛、吐き気、緊張感及び食欲不振を含む全身におよぶ所見を引き起こした。
ウサギにおいて、未希釈の2-ビニルピリジンは、重篤な眼刺激性及び皮膚腐食性を引き起こした。モルモ
ットにおいて、重篤な皮膚刺激性を引き起こした。2次的情報により、2-ビニルピリジンは、ヒトにおいて
皮膚、眼及び呼吸器刺激性を引き起こした。
OECD TG 429と同様のマウス局所的リンパ節試験において、2-ビニルピリジンは感作性であった。限定
された情報のみを提供する試験において、中程度の感作性がモルモットにおいて観察された。2件の事例報告
は、2-ビニルピリジンがヒトにおいて皮膚感作性を誘導する可能性を示した。
1
一般社団法人
日本化学物質安全・情報センター
2-ビニルピリジンの反復投与経口毒性は、ラットにおける信頼できる4試験において調べられ、特に28-
及び92-日試験において適切に実施された。当該物質の腐食性により、それぞれの反復投与試験のNOAEL
及び/又はLOAELは、局所及び全身影響について個別に評価された。
28日試験は、GLP準拠の下で哺乳動物における反復投与毒性試験についての日本のガイドラインに従って
実施された。当該物質は、ラットにおいて14日間の回復期を含む4週間にわたり、0(溶媒、コーンオイル)、
12.5、50及び200 mg/kg bw/dayを7日/週で、5又は10匹/性/用量を胃管強制によって投与された。0及び
200 mg/kg用量群から、5匹/性が回復群として設定された。死亡はいずれの性においても観察されなかった。
いずれの性における流涎及び雄における体重及び摂餌量の減少は、200 mg/kg bw/dayで観察された。相対精
巣重量は、200 mg/kg bw/dayを投与された雄において増加した。200 mg/kg bw/dayを投与された雌において、
絶対及び相対重量が減少し、相対肝臓重量が増加した。より高い用量で粘膜の肥厚とともに、前胃における
扁平上皮過形成及び粘膜下の浮腫が、50及び200 mg/kg bw/dayを投与されたいずれの性においても観察され
た。腺胃における粘膜下の浮腫及び/又は腐食が、50又は200 mg/kg bw/dayを投与された雌において観察され
た。胃に対する毒性学的影響に基づいて、本28日間反復経口投与毒性試験の局所及び全身影響のNOAELは、
ラットのいずれの性においても12.5 mg/kg bw/dayであると推定された。
92日間試験は、GLP準拠の下、EPA OPPS 870.31000(げっ歯動物においての90日間経口毒性)ガイドラ
インに従って実施された。コーンオイルに懸濁した2-ビニルピリジンが、0、20、60、又は180 mg/kg bw/day
(5日/週を92日間)の用量で胃管強制によりラットに投与された。痙攣及び唾液分泌過多が180 mg/kg
bw/day投与群で観察された。臨床生化学検査は、相対肝臓重量における増加を伴って達成された平均AST値
(60及び180 mg/kg bw/day)の用量依存的減少を示した。相対腎臓重量は、≧20 mg/kg bw/dayを投与され
た雄及び180 mg/kg bw/dayを投与された雌において増加した。胃上皮の過角化及び表皮肥厚が、20 mg/kg
bw/dayから用量依存的に増加した。20 mg/kg bw/dayでの雄における相対腎臓重量の増加及び胃上皮におけ
る病理組織学的変化に基づき、92日間試験の局所及び全身影響の両方のLOAELは、20 mg/kg bw/dayである
と推定された。
全ての利用可能な試験からのこれらの結果に基づき、反復経口投与毒性の局所及び全身影響の全体の
NOAELは、12.5 mg/kg bw/dayであると推定された。
Salmonella typhimurium及びEscherichia coliの複数菌株を用いた細菌復帰突然変異試験(Ames試験)
(化
学物質のスクリーニング変異原試験のOECD TG 471及び472及び日本のガイドライン)において、2-ビニ
ルピリジンは外因的代謝活性化を有するEscherichia coliにおいて明確な突然変異反応を示したが、
Salmonella typhimuriumにおける突然変異は、外因的代謝活性化の有無に関わらず、観察されなかった。
Salmonella typhimurium菌株を用いた他の3試験において、突然変異性は外因的還元性代謝活性化の存在下
でのみ観察された。さらに、in vitro染色体異常試験(OECD TG 473)は、代謝の活性化の有無に関わらず
両方で陽性の結果を示した。In vivoのデータは、特定されなかった。これらの結果に基づき、2-ビニルピリ
ジンはin vitroで遺伝毒性を有するとみなされる。
適切な発がん性試験は特定されなかった。
2
一般社団法人
日本化学物質安全・情報センター
生殖/発生毒性スクリーニング試験(OECD TG 421; GLP)において、ラット(12匹/性/用量)が0、
20、50、又は125 mg/kg bw/dayの用量で胃管強制によって2-ビニルピリジンが経口投与された。当該化合
物は雄に交配前14日から解剖前日までの42日間及び雌に交配前14日から交配及び妊娠中を通し授乳3日まで
(合計最大47日間)投与された。親動物の通常の毒性(前胃における扁平上皮の過形成及び角化亢進)が、
20 mg/kg bw/day以上で観察された。125 mg/kg bw/day群において、9匹の雌は死亡、又は、遅延出産による
妊娠22日目と授乳1日目の間で安楽死させた。高用量の残る3匹の雌は、総同腹仔の損失後、授乳1日目と4日
目の間に安楽死させた。有意に減少した体重増加量の抑制が、妊娠期間及び授乳0日目に観察され、連続的非
発情が2匹の雌に観察され、そして不規則な性周期が、125 mg/kg bw/day用量群の1匹の雌で観察された。異
常授乳及び喰殺が125 mg/kg bw/dayで観察された。雄において精子形成の変化が125 mg/kg bw/dayで観察さ
れたが、受胎率は有意に影響されなかった。50 mg/kg bw/dayにおいて、1匹の雌が異常分娩により安楽死さ
せられ、1匹の雌が授乳0日目に総同腹児の損失後に安楽死させられた。異常分娩の母動物において、全ての
児動物は死産であった。高用量の2群における授乳0から4日目の間に観察された児動物の死亡は、発生影響を
示唆する。児動物における体重は、20及び50 mg/kg bw/dayで、それぞれ授乳1日目及び4日目で対照動物よ
り少なかった。2-ビニルピリジン投与に伴う形態学的異常は、いずれの児動物においても観察されなかった。
50 mg/kg bw/dayでの異常分娩に基づき、生殖毒性のNOAELは、20 mg/kg bw/dayであると推定された。全
ての処置群における児動物の体重減少に基づき、発生毒性のNOAELはラットにおいて試験された最低用量の
20 mg/kg bw/dayであると推定された。
2-ビニルピリジンは、ヒトの健康に有害性な性質を有する(急性経口及び経皮毒性、皮膚/目/呼吸器刺激性、
皮膚感作性、反復投与毒性、in vitro遺伝毒性、及び生殖/発生毒性)
。OECD共同化学品アセスメントプログ
ラムの目的のために、ヒト健康の有害性を特徴付けるのに適切なスクリーニングレベルのデータが利用可能
である。
環境
空気中において、2-ビニルピリジンは、ヒドロキシラジカルによって分解されることが予想される。計算
半減期0.4日は、空気中におけるヒドロキシラジカルを伴う反応による間接的光酸化に関するAOPWIN(1.92a
版)によって計算された。
2-ビニルピリジンは、加水分解できる官能基の欠如により、加水分解されない。OECD TG 111による加
水分解試験は、水中に50 ℃、pH4、7及び9で5日後、2-ビニルピリジンの加水分解を示さなかった。
OECD TG 301C試験が、4週間にわたり、活性汚泥と2-ビニルピリジンを用いて実施された。被験物質の
濃度は、100 mg/L、活性汚泥の濃度は、懸濁した固形物として30 mg/Lであった。試験結果は、BODにより
0 %の分解を示した。その結果により、2-ビニルピリジンは易生分解性ではないとみなされた。
2-ビニルピリジンの生物濃縮についての試験情報は利用できなかった。オクタノール/水分配係数(log
Kow)1.54を用いて、生物濃縮因子4.82がBCFBAF(3.01版)で計算された。この化学物質が、生物蓄積す
ることは予期されなかった。
3
一般社団法人
日本化学物質安全・情報センター
フガシティーモデル(レベルⅢ)の計算は、等量及び継続的に空気、水及び土壌中に放出された場合、2-
ビニルピリジンが主に土壌コンパートメント(73.7 %)及び水コンパートメント(25.6 %)に分配される
ことを示す。1.80 Pa.m3/mole(25℃)のヘンリー定数は、2-ビニルピリジンは水から中程度に揮発するこ
とを示す。Log Koc=2.34の土壌吸着係数は、2-ビニルピリジンが土壌及び底質に低吸着性があることを示
す。
以下の急性毒性試験結果が、水生物種について確定されている;
魚類 [Oryzias latipes]:
96 h LC50 = 6.5 mg/L (設定、測定された濃度の全てが、設定の20 %
の変動以内であった、半止水式)、OECD TG 203
ミジンコ [Daphnia magna]:
48 h EC50 = 9.5 mg/L (測定、止水式)、OECD TG 202
藻類[Pseudokirchneriella subcapitata]:72 h ErC50 = 62 mg/L (測定、生長速度、止水式)、OECD TG 201
以下の慢性毒性試験結果が、水生物種について確定されている;
ミジンコ [Daphnia magna]:
21 d LOEC = 1.8 mg/L (測定、半止水式)、OECD TG 211
21 d LOEC(繁殖) < or = 0.22 mg/L (測定、半止水式、試験開始時全幼体数/親に基づく)、OECD TG 211
21 d NOEC(繁殖) = 0.90 mg/L (測定、半止水式、試験終了時生存する総幼体数/親に基づく)、OECD TG 211
21 d NOEC(繁殖) < 0.22 mg/L (測定、半止水式、試験開始時全幼体数/親に基づく) , OECD TG 211
藻類[Pseudokirchneriella subcapitata]: 72 h NOErC = 27 mg/L (測定、生長速度、止水式)、OECD TG 201
2-ビニルピリジンは、環境への有害性を示す性質がある(魚類、無脊椎動物及び藻類について1 及び100
mg/Lの間の急性水生毒性値、及び水生無脊椎動物について1 mg/L以下の慢性毒性値。)。この化学物質は、易
生分解性ではないと考えられ、生物蓄積の低い可能性がある。共同化学品アセスメントプログラムの目的の
ために環境有害性を特徴付けるのに適切なスクリーニングレベルのデータが利用可能である。
ばく露
日本(提供国)における2-ビニルピリジンの製造及び/又は輸入量は、958トン/年(2005年)、673ト
ン/年(2006年)、及び871トン/年(2007年)であると報告された。米国における2-ビニルピリジンの製
造及び/又は輸入量は、インベントリー更新報告によると2006年、100万と1千万ポンド/年(454 ~ 4,540
トン)の間であった。
2-ビニルピリジンは、結果として生じる中間体のアルコールの脱水に続き、水溶性ホルムアルデヒドと2
-メチルピリジンの処理によって製造される。
2-ビニルピリジンは日本において、自動車のタイヤコードの接着に用いられる樹脂、製薬及び界面活性剤
の原料として用いられる。2-ビニルピリジンはポリビニルピリジンポリマー製造のモノマーとして及び製薬
と同様に合成ゴム、写真用フィルム及びイオン交換樹脂にも用いられる。
4
一般社団法人
日本化学物質安全・情報センター
2004年度日本の環境省によって実施された化学物質の全国調査において、2-ビニルピリジンが6.2 ~ 18
ng/m3のレベルで、1ヵ所の環境大気に検出された。
日本のPRTR(化学物質排出移動量届出制度)制度により、大気及び公共用水に放出された2-ビニルピリ
ジンの報告された量は、2009年度それぞれ0.25トン及び0.94トンであった。敷地外に移動した2-ビニルピリ
ジンの報告された量は、2.7トンであり、汚水処理場への移動は報告されなかった。
上記の状況を考慮し、2-ビニルピリジンの環境ばく露は低いと予期される。
2-ビニルピリジンは日本において閉鎖系で合成ゴムに加工され、加工の間の顕著な放出は予期されない。こ
の化学物質は閉鎖系で製造されているが、作業者が直接この化学物質を取り扱う時、蒸気の吸入及び経皮経路
を介した職業ばく露が予期される。
2-ビニルピリジンが原料又は中間体として用いられるので、この化学物質への顕著な消費者ばく露は予期
されない。ある試験が2-ビニルピリジンのわずかな量がタバコ煙から検出されたと報告した。
[著作権および免責事項について]
[著作権]
本資料の著作権は弊センターに帰属します。引用、転載、要約、複写(電子媒体への複写を含む)は著作権の侵害となりますので御注意下さい。
[免責事項]
本資料に掲載されている情報については、万全を期しておりますが、利用者が本情報を用いて行う一切の行為について、弊センターは何ら責任を
負うものではありません。また、いかなる場合でも弊センターは、利用者が本情報を利用して被った被害、損失について、何ら責任を負いません。
5
一般社団法人
日本化学物質安全・情報センター