(1,3‐ジメチルブチル)‐N`‐フェニル‐1,4‐フェニレンジアミ

SIDS in HPV programme & CCAP
SIAM 18, 20/04/2004
初期評価プロファイル(SIAP)
N‐(1,3‐ジメチルブチル)‐N'‐フェニル‐1,4‐フェニレンジアミン
物質名:N-(1,3-Dimethylbutyl)-N'-phenyl-1,4-phenylendiamine(6PPD)
化学式:C18H24N2
CAS No.:793-24-8
SIAR 結論の要旨
ヒトの健康
6PPD のトキシコキネティクス及び代謝に関して、入手可能な実験データはない。経口及び経皮ばく露後
の全身毒性の状況は、これらの経路による 6PPD の主要なバイオアペイラビリティーを示している。
6PPD の急性毒性は経口投与で中程度であり、皮膚塗布では低い。ラット経口 LD50値は雌 893 mg/kg bw、
雄 1005 mg/kg bw であった。中毒症状は、消化器官及び呼吸器系における病理学的変化を伴う、自発運動
抑制、下痢、緩徐呼吸、低体温症、並びに腹臥の体位であった。ウサギにおける経皮 LD50 は>3000 mg/kg bw
であった。中毒の症状は食物摂取量の減少、自発運動抑制、並びに嗜眠であった。
6PPD の皮膚刺激性は低い。6PPD は眼にわずかな刺激性がある。本物質は実験動物及びヒトに皮膚感
作性を誘発することが明らかになった。ヒトにおける陽性のパッチ試験結果は部分的にパラ位の交差感作性
に関係があるかもしれない。
ラットによる反復経口投与で確認された 6PPD の主要な標的臓器は、肝臓(重量の増加、脂肪及び空胞の
変性)、並びに血球(貧血、リンパ球減少症、並びに血小板増加症)である。28 日から 48 日間のばく露期間に
わたる強制胃内投与試験において、NOAEL 6 mg/kg bw/日、及び LOAEL 25 mg/kg bw/日が両性の肝臓重
量の約 10%増加、並びに雄の空胞肝臓変性(2 匹/12 匹)、唾液の分泌量増加に基づいて得られた。13 週から
24 ヶ月間の混餌試験から、雌雄ラットとも NOAEL 75 mg/kg bw/日及び LOAEL>75 mg/kg bw/日が、13
週間試験の 2500ppm(約 150 mg/kg bw/日 : 慢性試験における最高用量である l000ppm(約 75 mg/kg bw/
日)よりも高い)で観察された貧血に主に基づいて得られた。混餌試験における高い NOAEL 及び LOAEL
は、強制胃内投与で用いられたコーン油のような脂肪親和性媒体なしに投与された 6PPD の制限されたバイ
オアベイラビリティーを考えると理解しやすい。
In vitro で、6PPD はバクテリア及び哺乳動物細胞試験系において変異原性を示さず、ラット初代肝細胞
における不定期 DNA 合成も誘発しなかった。6PPD は in vitro CHL 細胞において染色体異常を誘発した。
6PPD は in vivo 細胞遺伝学試験または小核試験で染色体異常は誘発されなかった。よって、 in vitro 試験
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で報告された染色体異常誘発性は in vivo では確証されなかった。In vivo 試験において得られた明白な陰性
の結果により、6PPD がヒトに染色体異常を誘発する懸念はない。
基本的に考証が不十分であるが、6PPD の混餌による長期投与試験は、6PPD のラット発がん性を示唆
しなかった。
ラットにおいて、経口投与量 100 mg/kg bw/日まで、生殖能に有害影響は観察されず、経口投与量 250
mg/kg bw/日(最高用量)まで催奇形性及び発生影響の兆候もなかった。妊娠期間中のばく露は 30 mg/kg bw/
日まで(最高用量)の用量でウサギに発生または催奇形性、並びに母体毒性がなかった。
環境
6PPD は融点が 50℃の茶色い固体であり、沸点が 370℃と推定されている。水にはほとんど溶解しない
(1 mg/L(20℃))。蒸気圧は 6.85×10-3Pa(25℃)、logKow は 4.68 と推定された。本物質の引火点は 200℃で
ある。6PPD は環境水中で安定ではなく、半減期は好気性条件で 1 日より少ない。主要な分解生成物は 4
‐ヒドロキシジフェニルアミン、N‐フェニル‐p‐ペンゾキノンモノイミン、並びに 1,3 ‐ジメチルブチル
アミンである。Mackay レベル I に従うと、6PPD の最も分布しやすい標的区画は土壌(95%)であり、次に
水(2%)、底質(2%)である。測定されたヘンリ一定数 1.84Pa・m3/mol は本化合物が地表水から中程度の揮発
性があることを示唆している。光化学的に生じた OH ラジカルとの反応により、大気中で迅速な光分解が起
き、半減期は 1 時間であると推定される。光が照射する地表面及び大気中で、環境中の紫外線の吸収により
6PPD は直接光分解されるだろう。
6PPD は易生分解性ではないが、環境中で迅速に分解する。BOD に基づく OECD TG 301C 試験(易生
分解性試験)において、わずかに約 2%の 6PPD が生分解した。HPLC 分析で、約 92%の 6PPD が 28 日
以内に消失していたことは、6PPD が他の物質に転換されたことを示唆している。OECD TG 301C に従っ
たもう 1 つの呼吸測定(respirometer)試験において、6PPD の 13‐40%が 28 日以内に分解された。ミシ
シッピ一川の水でのダイアウエイ(die‐away)試験において、6PPD は定量的に消失した(22 時間以内に
97%)。推定される半減期は生物学的に活性な河川水において 2.9 時間、滅菌した河川水において 3.9 時間、
並びに滅菌した脱イオン水で 6.8 時間である。
logKow 推定値、は 6PPD が生物蓄積性があることを示唆している。6PPD はある環境条件下で不安定で
ある。いくつかの分解生成物について生物蓄積性試験結果が入手できる。Cyprinus carpio における生物濃
縮係数は分解生成物の N‐フェニル‐p‐ペンゾキノンモノイミン(培養中の濃度が 6.83μ g/L または
0.683μg/L)については<1.2‐23、1,3‐ジメチルブチルアミン(培養中の濃度が 0.2 mg/L または 0.02 mg/L)
については<1.7‐17 と測定され、全ヒドロキシジフェニルアミンについては、BCF が 30 と推定された。
これらのデータはこれらの代謝物に生物蓄積性がないことを示唆している。
魚について、急性毒性値が最も低かったのは OECD TG 203 に従った試験における Oryziaslatipes で
観察された。96 時間 LC50 は 0.028 mg/L(有効濃度)と測定された。ミジンコの LC50/EC50最低値は OECD
TG 202 に従った試験において Daphnia magna で 48時間 EC50が0.23 mg/L と測定された。Daphnia
magna を用いた“分解毒性“ 試験において、短期間(24 時間)経過した 6PPD 溶液は Daphnia magna に対
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する毒性を失うことが示された。新しく調整した 6PPD 溶液は、48 時間 NOEC O.25 mg/L、並びに 48 時
間 LC50 0.51 mg/L を示した。室温の好気的条件下で 24 時間撹拌すると、試験溶液(6PPD 及び分解生成物
を含む)の毒性は顕著に減少した。調整後時間が経過した 6PPD の 48 時間 NOEC は 1 mg/L(最高ばく露
濃度)より大きかった。藻類試験において、緑藻類 Selenastrum capricornutum を用いた米国 EPA のボト
ル試験で 96 時間 EC50 が 0.6 mg/L(有効濃度)、並びに 96 時間 EC1o が 0.2 mg/L であった。報告された
試験で観察された毒性は、試験物質が不安定であるため、分解生成物によるものと同時に、6PPD により引
き起こされたものと考えなければならない。
ばく露
6PPD の全製造量は 2001 年に約 130,000t/a であると推定される。6PPD は、ゴムの劣化防止剤(優れ
たオゾン劣化防止剤)として用いられる。用途の主な領域はゴム部門で、製造量の多くはタイヤになる。
6PPD の環境中への放散は製造、ゴム工業における使用、並びにゴム製品の使用中及び廃棄中に発生する。
担当国において、6PPD は閉鎖系で 4‐アミノジフェニルアミン(CAS No.101‐54‐2)から製造される。
製造廃棄物は焼却処分される。
6PPD はタイヤの磨耗、ゴム表面からの揮発、並びに埋め立てられたゴム廃棄物からの消失により、ゴム
製品から環境中に放散される。環境モニタリングデータはない。新しいタイヤ周辺においてでさえ6PPD は
周辺大気から検出されなかった。
担当企業の製造工場において、ばく露の指標であると思われる先駆物質及び関連物質の作業場大気サンプ
リングは、作業者の空気中 6PPD へのばく露は製造中に極僅かであることを示唆している。ゴム工業の作業
場領域において、ほとんどの作業場濃度は極僅か(最高値が 6.6 mg/m3)であった。担当会社の作業者におい
て、ヘモグロビン付加物は検出できなかった。
6PPD はイタリアのゴム工業作業者 21 人の尿サンプルの 15%(最高は 1.3μg/L 尿)で検出された。もう
1つの調査において、ゴム工業作業者の尿サンプル中の 6PPD 濃度は 1982 年から 1987 年で<1 から
300μg/g クレアチニン(最高値が 580μg/g)であった。
勧告
本化学物質は追加研究の候補である。
勧告の理論的根拠並びに勧告された追加研究の特徴
ヒトの健康
本化学物質はヒトの健康に有害性(皮膚感作性、貧血)を示唆する。そのため、諸国はばく露評価を実施し、
もしばく露が示唆されれば、作業者及び環境を通したヒトばく露のリスク評価が勧告される。
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環境
本化学物質は環境への有害性を示唆する。6PPD の環境への放散はゴム製品の使用の際と同様にオゾン劣
化防止剤としての 6PPD の使用からゴム工業において製造中に発生するかもしれない。そのため、ばく露評
価及びもしばく露が示唆されれば、環境リスクアセスメントが勧告される。これは分解生成物の同定及び特
性について追加調査することも含まれる。
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