世界寺子屋運動の現場⑫【アフガニスタン】

2006年3月1日発行(奇数月1日発行)通巻1102号 昭和26年11月24日 第三種郵便物認可
2006
3
1102
ISSN1340-6442
[発行]
(社)
日本ユネスコ協会連盟
会 長:児 島 仁
副 会 長:平 山 郁 夫・松 田 昌 士・加 藤 玲 子
理 事 長:野口 昇
世界寺子屋運動の現場 ⑫【アフガニスタン】
△
この冬マイナス 25 度を記録したカ
ブール。寒さは厳しいが、この数年、
旱魃に苦しんできたアフガニスタンに
“ 恵みの雪 ”
が、川や地下水路
とっては
を豊富な雪解け水で満たしている。
日本ユネスコ協会連盟カブール事務
所では、庭の井戸水をポンプで屋根に
上げ、料理や洗面などに利用している
が、その動力となる公共電力の供給は
週に 2 回だけ。自家用発電機は必需品
だ。昨年購入した12kW の大型発電機
は 3日に一度、規則正しく(?!)壊れ
るので、遂に 21.5kWのイギリス製発電
機を購入。厳寒から守るため、発電機
用の小屋も作ることになった。
その工事現場で
“おもしろいバケツ”
が目にとまった(写真:深さ30cm×底
の直径 17cm)
。聞けば古タイヤを利用
した再生バケツだという。卸業者が個
人や役所などから古タイヤを買い取り、
小売店経由で“ 古タイヤバケツ職人 ”
が特製はさみで裁断し、匠の技で縫い
上げる。価格はサイズ別に100 ∼ 300ア
フガニ($1∼$6)
。公用車の古タイヤ
が多く出る役所では、ラジオで売却量
と最低入札価格を放送し購入者を募る
システムもあるという。ちょっとやそっ
とでは漏れないし壊れない、便利でた
くましいリサイクル品だ。
(教育文化事業部:坂巻豊子)
©日本ユネスコ協会連盟
ユネスコ in Action 最近のUNESCOの動きと日本の協力 佐藤 禎一
ユネスコ活動のひろば
2
寺子屋のいま
TERAKOYA 全土に定着(ベトナム)
5
評議員会・理事会報告
7月19日を「民間ユネスコ運動の日」に
UNESCO MAB計画とその背景
6
8
世界遺産ノート
「知床」世界遺産認定証伝達式/バーミヤン
教育文化センターでワークショップを実施
メディアにのった各地ユネスコ協会の活動
12
イベントレポート
10
「ずっと地球と生きる学校プロジェクト」
出前授業レポート
14
国内外からの便り
アフガンからサラーム! No.9
お知らせ・募集
“ありがとう”のページ(募金協力者一覧)
15
16
18
世界遺産の現場(29)
アルベロベッロ(イタリア)
20
最近の
の動 きと日本の協 力
UNESCO
ユネスコ in Action プログラムの概要を中心にして、その働きぶ
りについて順次お話ししてゆきましょう。
ユネスコ in Action 評議員会・理事会報告
評議員会・理事会報告
はじめに
皆 様 よ く ご 存 じ の よ う に、 我 が 国 が
UNESCO に加入したのは、講和条約発効に
1 年先立つ 1951 年のことです(ちなみに国連
加盟は 5 年遅れて実現しております)
。我が国
がまず UNESCO の場において国際社会に復
帰することができましたのは、申すまでもな
く、仙台、京都から始まった民間 UNESCO
活動が世界のモデルとして高く評価されたこ
とと、さらには多くの識者が UNESCO 運動
を強く支持し、加盟運動を推し進められたこ
となどのおかげでありますが、政府はそのよ
うな動きに支えられ、積極的な働きかけを国
際社会に行い、当時の厳しい環境の中、実現
にいたったものであります。
以来、我が国は UNESCO 加盟国の中でも
積極的な役割を果たし、その活動の充実に大
きく寄与してきました。財政的にも米国に次
いで二番目の貢献を行っておりますし(米国
脱退中は一番の寄与国でした)
、邦人職員と
いう人的資源面を見ても、
現在正規職員 45 人、
アソシエートエキスパートその他の職員を加
えますとゆうに 70 人を超える日本人職員が、
パリの本部で、あるいは世界中の地域事務所
で、UNESCO のために働いているのです。
では、その UNESCO の最近の活動はどう
なっているのでしょうか。ここでは、教育、
科学、文化、情報といった分野ごとの主要な
世 界 遺 産 ノ ート
ユネスコ活動のひろば
イ ベ ント レ ポ ー ト
お 知 ら せ・募 集
分野ごとのUNESCOの主要事業
有名な UNESCO 憲章の前文には、
「戦争は
人の心の中に始まるものなので、心に平和の
砦を築かなければならない」と謳われており、
他の国連システムの諸機関と共に平和の構築
を目指すものであることが明らかとされてい
ますが、UNESCO のカバーする具体的な分
野は、教育、科学、文化、情報の 4 分野とな
っています。とはいえ、これらの分野は極め
て幅広い活動を含むものであり、ともすれば、
あれもこれもと手薄なまま手を広げる傾向が
過去にはありました。このため、特に 6 年前
に現在の松浦晃一郎事務局長が就任して以
来、プログラムの精選と資源の集中化を進め
ております。以下重点分野とされるプログラ
ムをご紹介してゆきましょう。
まず教育ですが、万人のための教
教育 育(EFA といわれます。Education
For All の略称)が最も重要だということが
できましょう。2000 年にセネガルのダカール
で、2015 年までに達成すべき 6 つの目標(※ 1)
が定められています。勿論これらのすべてを
UNESCO が実施できるものではなく、国連
ファミリーが一丸となって取り組むべき課題
ですが、UNESCO には全体をコーディネー
トする役割が与えられています。しかし、例
えば 100% の識字率の達成や男女間の格差の
撤廃など、残り少ない時間の中で達成するこ
とは、なかなか現実には容易でないものが多
いのです。例えば、サハラ以南のアフリカで
は、エイズで苦しむ国が多く、教師の補充も
ままならない国もあります。我が国は、通常
の分担金のほかに信託基金などの形で特別の
寄与を行っており、また二国間の援助におい
てもこれらの点に配慮がなされています。さ
らには我が国がモデルをつくっている寺子屋
運動なども、効果的な活動として高く評価さ
れていますが、今後さらに全体の行動計画を
ち密に作り、戦略的に目標達成を目指すこと
が望まれています。
日本政府UNESCO代表部特命全権大使 佐藤 禎一
2
ユネスコ 2006/3
教育の分野でもうひと
つ注目されているのは、
持続可能な発展のための
育というプログラム
寺子屋のいま教
で す。ESD(Education
for Sustainable
Development)と略称さ
れています。持続可能な
発展という考え方は、リ
オでのアジェンダ 21(※ 2)
などを受けて次第に定着
してきた概念ですが、国連本部において、我が国か
らの提案により、UNESCO をリード機関として 10 年
計画が設定され、2005 年から ESD 活動が始まったば
かりです。このほか、21 世紀を迎えて策定された新
千年紀目標や教育の質の充実を目指す活動などがあ
りますが、EFA という大きな目標のもと、その実質
化を図る配慮から展開されているということができ
ましょうか。
さらに、高等教育の質保証、という課題にも触れて
おかねばなりません。初等教育でさえ難しい状況に
あるのに、高等教育とは、という疑問があるかもし
れませんが、発展途上国の国々にとってはそれぞれ
の国での国民教育体制を確立したいという思いは強
く、また実際、この課題に取り組み始めている国々
もあるのです。一方高等教育は、その性質上国境を
超えたサービスが発展しつつありますが、その際、質
の低い教育サービスから学習者を保護することも必
要になってくるのです。このため、UNESCO では昨年
OECD(経済協力開発機構)と共同して、ガイドライ
ンを作り、質保証の体制づくりに取りかかりました。
国 内 外 科学の分野では、1999
か ら の 便 り 年にブダペスト
科学 で、UNESCO 主催の世界科学会議があり、
科学と社会のつながりを強めようということと、発
展国の科学の成果を途上国にも伝えていく努力が
必要なことなどが宣言されております。この分野で
は、世界中で深刻になりつつある水(淡水)の確保
という課題に積極的に関与しているほか、最近では、
UNESCO が太平洋地域において長年努力し、確立し
てきた津波の監視システムの整備といった具体的な
課題への取り組みが注目されております。
昨年の総会で生命倫理宣言(※ 3)が採択されました。
科学研究にとって予想されるさまざまな危惧への正
しい対応は、これから
もますます大きな課題
となってくることでし
ょう。今回の宣言は、
規範としての性質を持
つものではなく、いわ
ばこの課題への第一歩
を踏み出したものです
が、この重たい課題は
これからも熟考されて
ゆかねばならないもの
です。
文化に関する活動として知られているの
文化 は、世界遺産の指定事業でしょう。1972 年
の世界遺産条約(※ 4)に基づくこの活動は、世界の遺
産として認定された貴重な財産をどのようにして保
全するかという知恵を集め、守っていこうとするも
のです。我が国からは 2004 年に紀伊山地が、2005 年
に知床が指定され、合計 13 件の世界遺産が登録され
ています。ともすれば指定の際に大いに喧伝され、
耳目を集めていますが、実は大切なのはそれからで、
総力を挙げて世界共通の遺産を保全していかなけれ
ばなりません。また、2003 年にはこの条約を補完す
る意味でも大きな意義のある無形遺産条約(※ 5)が採
択されました。この面では日本のシステムは充実し
ており、お手本ともなり、また条約のリード役とも
なりましたが、消滅を心配する多くの途上国の要請
も大きく、多くの賛同を受けて条約の形となりまし
た。なお、この条約に先立つ形で人類の口承文化に
ついての傑作宣言事業が行われてきており、日本か
らは、能楽、人形浄瑠璃に引き続き、2005 年には歌
舞伎が指定されております。
2005 年の総会で採択された文化多様性条約(※ 6)は、
それ自体大きな意義を持つものですが、いわばこれ
までの文化関係条約群の締めくくり的な意味合いも
持っているということができましょう。多様な文化
の保護と促進は世界共通の緊急な課題であり、また
ひるがえって UNESCO 憲章を具現するものでもあり
ユネスコ in Action 世 界 遺 産 ノ ート
ユネスコ活動のひろば
これからのUNESCO活動
イ ベ ント レ ポ ー ト
UNESCO は 2005 ∼ 2006 年にかけて 60 周年
を祝い、またこの機会に将来の UNESCO 活
動について知恵を出し合うことにしていま
す。上記の諸活動を分野横断的な目で眺めて
みますと、関係する国連諸機関などの調整を
行う活動、世界を通じた国際規範を確立し、
お 知 ら せ・募 集
※1【6つの目標】①就学前教育を改善し拡大する ②2015年までにす
べての子ども、特に女子が質の高い初等義務教育を受けられるよ
うに保障する ③すべての青年と成人が適切な教育と生活技術プロ
グラムなど必要な教育を受けられるように保障する ④特に女性を
対象とする成人の識字率を2015年までに50%改善し、基礎・継
続教育を達成する ⑤2005年までに初等、中等教育における男女
格差をなくし、2015年までに女子も基礎教育を公平に受けること
ができるように保障し、男女間の公正を目指す ⑥教育の質の全面
的改善と、識字、算術、基礎的な生活技術の改善を行う
※2【アジェンダ21】1992年ブラジルのリオデジャネイロで開催され
た「環境と開発に関する国連会議(地球サミット)
」でこれまでの
「大量生産、大量消費、大量廃棄」の暮らし方を「循環型」
「持続
PROFILE
諸々の期待に応
える活動、紛争
後の復興に際
し、特に教育や
文化の分野でそ
の支援活動を行
うこと、そもそ
も紛争の元が相
互の正しい認識の欠如から来ていることが多
いことから、文明間の対話を組織的に展開す
ること、が主な柱となっていますが、これら
の遂行には、UNESCO 自身のガバナンス(統
治能力)の確立、ビジビリティ(知名度)の
向上などの問題を克服していくことも必要で
す。幸い事務局、執行委員会、総会共にこの
ような問題意識を共有し、UNESCO 活動の
改革、改善に取り組もうとしています。
その際注目すべきことは、我が UNESCO
活動は、ひとり政府だけではなく、多くの人
びとに支えられているという事実でしょう。
今日の国連機関は基本的には主権国家をメン
バーとする組織原理の下にありますが、特に
UNESCO などでは幅広いプレイヤーに支え
られて初めて効果的な活動ができるものであ
り、今後の UNESCO の在り方を考えるとき、
このことが、ひとつのキーイシュー(基本的
課題)となっているわけであります。その意
味では、今後とも皆様方の UNESCO 活動に
対する積極的な参画とご支援を期待するとこ
ろですが、あわせて皆様におかれましても、
UNESCO 活動の将来についての声を幅広く
寄せられることを望んでおります。
可能な開発」に変換すべきことが確認された。それを実現するた
めの行動計画がアジェンダ21
「生命倫理と人権に関する世界宣言」2005年第
※3【生命倫理宣言】
33回UNESCO総会で採択
「世界の文化遺産及び自然遺産の保護に関する条
※4【世界遺産条約】
約」1972年第17回UNESCO総会で採択
「無形文化遺産の保護に関する条約」2003年第
※5【無形遺産条約】
32回UNESCO総会で採択され、日本をはじめ30カ国の批准を得
たため、2006年4月に発効予定
※6【文化多様性条約】
「文化的表現の多様性の保護と促進に関する条
約」2005年第33回UNESCO総会で採択。今後30カ国の批准を
得て正式に発効
佐藤 禎一(さとう・ていいち)
1941年10月15日大分県生まれ。京都大学法学部卒業後、1964年文部省入省。初等中等教育局
教科書管理課長、高等教育局大学課長、官房審議官、文化庁次長、学術国際局長、官房長、文
部事務次官などを歴任。2001年より現在まで文部科学省顧問。2002年フランス共和国国家功
労勲章オフィシェ受章。2003年より国際連合教育科学文化機関(UNESCO)日本政府代表部特
命全権大使。
4
ユネスコ 2006/3
最近の UNESCO
の動きと日本の協力
ます。UNESCO は、国連組織の中でも文化
を所掌する唯一の機関であり、この分野で進
めてきた国際規範の一応の体系化ができあが
ったともいえます。内容の詳細を述べる余裕
評議員会・理事会報告
はありませんが、文化的表現の多様性の保護
及び促進をその目的とし、締約国の権利義務
を定め、教育啓発の必要性や途上国に対する
協力、国際ファンドの設置、紛争処理の仕組
みなどを定めています。この条約については、
評議員会・理事会報告
文化サービスが国境を越えることを巡って、
貿易面での取り扱いが論争の対象となったこ
ともありましたが、まさに文化活動の側面が
その核心をなすものです。条約上もこのこと
が明らかにされましたが、我が国の提案によ
って、付帯決議でもその趣旨が確認されてお
ります。
情報の分野では、従来情報コミ
情報 ュニケーション技術の各分野での
活用という観点から各種の活動が展開されて
きましたが、昨年チュニジアのチュニスで行
われた世界情報科学会議を機に、UNESCO
では、将来の知識社会に向け何をなすべきか
という観点に重点を置いた取り組みを進める
方向が打ち出されています。
寺子屋のいま
ベトナム
TERAKOYA
全土に定着
― 最終評価調査を終えて
昨年12月10日から20日まで、国立教育政策研究所生涯学習政策研究部の笹井宏益総括研究官(日本ユネス
コ協会連盟世界寺子屋運動専門委員会委員)を団長に、ベトナムでの寺子屋事業に関する最終評価調査を
行った。11ヶ村の寺子屋、2省(日本の県に当たる)3郡ならびに首都ハノイの関係機関を訪れ、100人以
上の関係者から話を聞き、寺子屋運動がどのような効果をもたらしたのかを探った。
国
2000年4月から3年間、日ユ協連が直接事業を
執行したライチャウ省は、現在ライチャウ省と
ディエンビエン省に分かれている。プロジェク
ト事務所のあったディエンビエンフーは、道路
に信号が立ち、高速インターネットも使えるよ
うになるなど、発展目覚ましい。何度も通った
片田舎のフォントー町は、新しいライチャウ省
の省都ライチャウ市となり、活気あふれる建設
ラッシュのさなかにある。泊まり慣れたホテル
から見えた牧歌的な風景が、
建設現場の重機たちに邪魔さ
れるようになったのは、少し
残念ではあるが。
プロジェクトが終了して3
内年近くになるが、建設した40
外 からの 便り
の寺子屋は今どうなってい
るのだろうか。期待と不安の
入り交じった気持ちを抱えて調査に出発した。
しかし、実際に11の寺子屋を訪れて、不安は喜
びへと変わった。笹井団長が何度か口にした
「地域に定着している」という言葉が、まさに
調査団全員の共通した感想だった。村人たちは
寺子屋を自分たちのものとし、工夫しながら有
効に活用してくれていたのである。ある寺子屋
では、成人向けの活動が少ない平日の日中を、
今まで村になかった幼稚園の教室として活用し
ており、少数民族の衣装を身にまとった可愛ら
しい園児たちが、私たちを迎えてくれた。また
収入向上プログラムの中で特筆すべきは、香辛
料兼漢方薬のタオクワー(カルダモン)の栽培
で、年間1億ドン(約70万円)の収入を得た農家
もあるということだ。識字教育は、寺子屋周辺
ではほぼ終了し、さらに山奥の小さな集落で行
われている場合が多い。すべての寺子屋を訪れ
たわけではないので、「万事問題なし」とまで
はいえないが、移動中、車窓から遠くに見えた
いくつかの寺子屋にも、子どもや大人の学ぶ姿
があったし、何より地元の人たちの自信あふれ
る語りぶりが、寺子屋がすでに私たち外国の支
援者の手を離れて自立していることを物語って
いた。
だが一方で、日本から多くの支援者も訪れ、
常に模範的な活動を展開していたムォンバン村
の寺子屋に、いまひとつ元気がないのが気にな
った。「この寺子屋はすでに、私たちがプロジ
ェクトの中で伝え得たこと
は、ほぼしつくしてしまい、
次の新たな段階へ上るための
『踊り場』にいる状態ではな
かろうか」。そう感じながら
も、そのために必要な、新た
な支援の手立てを十分持たな
いことに、自分たちの限界と
多少の無念さを感じつつ、いくつかの助言のみ
を残して村を後にした。
2006年1月1日、昨年5月に改定された教育法
が施行された。改定教育法は、コミュニティ学
習センター(寺子屋)を村の学校外教育の機関
として、国家の教育制度の中に位置づけている。
従来、関係者のやる気頼みだった寺子屋が、法
的な裏づけを持った恒常的なものとなったので
ある。いまやベトナム全土の寺子屋数は6000余。
政府は、2015年までとしていた全町村(1万余)
への普及目標を、2010年までと前倒しにするら
しい。
「これからは数の増加から質の向上へと重
点が移る」という言葉に今後を見据えた彼らの
やる気が感じられた。
「このような有益な支援を
してくださった日本の人びとに、心から感謝申
し上げたい」
。行く先々で私たちに託された、寺
子屋運動を支援してくださっている全ての方々
への感謝の言葉である。
(教育文化事業部:奥川浩士)
ユネスコ 2006/3
5
評議員会・理事会報告
月
日を
評議員会・理事会報告
に
世 界
遺 産 ノ1 年以上にわたる活発な議論を
ート
多くの会員による
経て、1 月 21 日(土)の第 440 回理事会では、毎年 7
月 19 日を「民間ユネスコ運動の日」とすることが決
まった。7 月 19 日は、1947 年に仙台ユネスコ協力会
が世界初の民間ユネスコ団体として、産声を上げた
日である。その日を記念して、全国各地のユネスコ
協会会員が一斉に活動し、広く一般の人たちに民間
ユネスコ運動のことを知っていただくことをねらい
としている。
今年の「一斉活動日」は 7 月 15 日
(土)
、16 日
(日)
、
17日
(祝・月)の 3 日間。それぞれのユネスコ協会や
都道府県ユネスコ連絡協議会が創意工夫を凝らし、
「民間ユネスコ運動の日」を掲げて各地でさまざま
な活動に取り組みながら、2007 年の民間ユネスコ運
動 60 周年に向けた、全国的な盛り上がりを期待し
たい。
ユネスコ活動のひろば
イ ベ ント レ ポ ー ト
お 知 ら せ・募 集
民間ユネスコ運動の日
趣 旨
1947 年 7 月 19 日、日本において、世界に先駆けて
民間ユネスコ運動が発足した。私たち、民間ユネス
コ運動の担い手は、世界の平和を希求し、全国一斉
に行動し、相互の連帯を強め、世界と未来世代に対
して、その存在意義を強くアピールすると共に、よ
り一層の協力・支援を求めるために「民間ユネスコ
運動の日」を次のように定める。
名 称
民間ユネスコ運動の日
7月 19 日
日本で起こり世界中に広がった民間ユネスコ運動
は、他に類例を見ない市民運動であるということを
認識する。
民間ユネスコ運動が基となって、ユネスコ加盟を果
たし、戦後日本が国際社会に復帰できたことを思
い起こし、将来にわたって平和な社会を築くための
活動を強化する。
ユネスコ 2006/3
実 施 方 法
7 月 19 日を含む(もしくはその直前の)土曜日・
日曜日・第 3 月曜日(祝日「海の日」
)を一斉活
動日とする。
日本ユネスコ協会連盟事務局は、
「民間ユネスコ
運動の日」のための資料やツールを提供する。
事 業 展 開 案
「民間ユネスコ運動の日」を中心として、下記に
例示したような全国共通の事業を展開し、一般市民・
マスコミへの広報普及活動を行う。
例①「平和の鐘(かね・おと)
を鳴らそうキャンペーン」
② 世界寺子屋運動・世界遺産等国際協力募金活動
③ユネスコ活動を普及するためのさまざまなイベ
ント開催(例:コンサート、講演会、チャリテ
ィーイベント、野外活動、絵画展など。各地ユ
ネスコ協会の独自プログラムも含む)
ユネスコ月(マンス)
従来から取り組まれてきた、
● ユネスコ憲章採択の日→11月16日(1945年)
● ユネスコ憲章発効の日→11月4日(1946年)
● ユネスコ創立総会の開かれた日→
11月1日から16日(1945年)
を含む11月を、これまでどおり「ユネスコ月(ユネス
コ・マンス)」とし、主としてユネスコ憲章並びにユ
ネスコ活動の現代的課題等について学習したり、
周知を図る月間とする。
月 日
目 標
6
全国一斉に取り組む具体的な活動を展開し、マスコ
ミ等を通じて民間ユネスコ運動について広報する。
第440回 理事会
2006 年 1 月 21 日
(土)
、東京の朝日東海ビル大手町
サンスカイルームで行われた第 440 回理事会では、
上述の「民間ユネスコ運動の日」に関する協議のほ
か、2006 年度の事業計画についても話し合われた。
そして、民間ユネスコ運動発祥 60 周年を機に、将来
への中長期的な展望や具体的な柱立てを、組織・活
動専門委員会が中核となり、他の専門委員会とも調
整しながら立案することを、同日午前中に開催され
た同委員会で合意に達した旨の報告が、野口理事長
からあった。また協議の中で、活動を支える財源確
保の重要性についても話し合われ、中期的な展開を
見据えながら、財務に関する専門委員会を発足させ
る必要があるとのことで意見の一致を見た。
第8回 評議員会
理事会に引き続き行われた第 8 回評議員会では、
まず「民間ユネスコ運動の日」に関する理事会での
決定事項について報告があり、6 月 2 日の総会で追
認の形をとることが説明された。続いて、野口理事
長から日本ユネスコ協会連盟の 2005 年度第 3 四半期
に実施された主な事業についての報告等があった。
また 2006 年度の事業計画に関する協議では、次の
ような意見が出された。
東京周辺の大学ユネスコクラブやユネスコ協会青
年部などでは、組織も旧来の枠組みを超え、イン
ターネットを活用した横のつながりが拡大しつつ
国 あるとの報告があった。また、運動全体の将来
内 外 からの 便り
性を考えた高校ユネスコ活動の重要性が強調され
た。現在、日本ユネスコ協会連盟は各分野での実
態調査を進めており、民間ユネスコ運動 60 周年に
向け、関連する専門委員会などが支援策を検討し
ていくことなどについても説明があった。
世界遺産活動に関連しては、国内で地元に世界遺
産登録地を持つユネスコ協会が意見交換をし、可
能な支援活動を検討するために必要な組織をつく
ることについて提案があった。
世界寺子屋運動については、
「児童・生徒による
リーフレット制作活動(D―プロジェクト)
」など
を通じて、学校の総合的な学習への参画と、さら
にそれを普及させていくことの重要性が提起され
た。また、日本国内のみならず、他国の民間ユネ
スコ運動団体にも募金の呼びかけを広げていくべ
きであり、もっと若い人たちのエネルギーを運動
に注いでほしいとの意見があり、60 周年を機にさ
らに盛り上げていくこととなった。
また、60 周年を目指した将来展望のなかには、会
員・組織の拡大についても強く意識する必要があ
るという意見も出された。
協議の後、今回は岩槻邦男東京大学名誉教授によ
る講演を伺った(8 ∼ 9 ページに概要)
。夕刻からは
新年の懇親会が催された。雪景色の東京で、全国各
地から集まった評議員らは、旧交を温めつつ日頃の
活動に関する意見交換を行った。
2006年度ブロック研究会 開催に向けて
1 月 22 日(日)東京都新宿区の日本青年館で来年度
の「ブロック別ユネスコ活動研究会」を主管する協
会・県連の代表者、ブロック代表理事・国内委員な
ど 33 名が集まり、準備や運営をどのようにすすめ
ていくか、各ブロックの準備状況について討議を行
った。
日本ユネスコ協会連盟では、2003 年度から組織・
活動専門委員会の指導で「運営の手引き」を作成し、
全国共通運営資料として主管する協会・県連に配付
すると共に、研究会の成果を深めるための事前会合
を開催してきた。全国大会とは異なり、会員相互の
研修の場としてのブロック研究会を、どのような運
営体制で役割分担するか、また資金確保やテーマと
プログラム内容をどのように構築していくかについ
て、情報の共有化をはかった。一方、2005 年度開催
ユ協からは、事前に参加者に資料を配布して当日の
討議の密度を高める工夫をしたこと、分科会の時間
を充分にとったこと、青少年のユネスコ活動振興策
のために発表者を他ブロックから招いたことなど経
験談も述べられた。
今年の研究会では従来どおり日本ユネスコ国内委
員と、日ユ協連事務局からの報告の時間を設けるこ
とに加えて、① 青少年の活動発表の場を必ず 10 分
以上確保すること、② 資料には必ずユネスコ憲章の
記載を徹底していくこと、新たに制定された ③「民
間ユネスコ運動の日」の普及をはかること 等が提案
され決定した。
また現段階での全国各地の準備状況も紹介され
た。科学に焦点をあて講師に有馬朗人氏を決定した
中部西、
「
“ もったいない ”が今新しい」をテーマに
ESD 研修を決めた中部東、参加者 1000 人を集める
計画の関東、運営体制をがっちり固め、有名な講師
交渉に意欲的な北海道、基調講演にかえて平和の大
切さを説くミュージカルの上演を決め、青年部中心
の運営体制を組んでいる中国など、2006 年度も日本
各地で創意工夫あふれる研究会の開催が期待されて
いる。
ユネスコ 2006/3
7
評議員会・理事会報告
UNESCO
MAB計画とその背景
現在UNESCOが自然科学の分野で力を入れている活動は多岐に
世 界 遺 産
ノ ート
(※1) や「国際水文学計画
」
わたる。
「政府間海洋学委員会(IOC)
(※2)と並び、長年にわたって取り組まれてきた計画のひとつ
(IHP)
」
が「人間と生物圏計画」
(英語の頭文字を使ってMABと呼ばれる)だ。
この「MAB」は、平たくいえば、自然と人間のより良い付き合い方を研
究する世界的なプロジェクトで、世界自然遺産とも密接なつながりがある。
去る1月21日に開催された日本ユネスコ協会連盟第 8 回評議員会では、東京大学名誉教授で、
長年にわたり日本国内におけるMAB計画に携わってこられた岩槻邦男先生(兵庫県立人と自然の
博物館長)に、その意義や背景などについてのご講演をいただいた。
(文責:編集部)
そのなかからポイントを2つ紹介する。
ユネスコ活動のひろば
イ ベ ント
レ ?ポ
ート
MABとは
そしてBRとは?
MAB とは Man and the Biosphere Programme
( 人 間 と 生 物 圏 計 画 ) を 指 し、1970 年 の 第 16 回
UNESCO 総会で承認され、1971 年に発足した。
「生
物圏における生態系の構造と機能を研究し、資源に
及ぼす人の営為を調査し、その結果が人に及ぼす影
響を確かめ、これらの事象に関する情報を集成し、
普及活動を行う」ことを目的としている。
また、BR とは Biosphere Reserve(生物圏保存地
域)のことで、
MAB が設定する自然保護地域を指す。
この保存地域の設定では「核心地域(core area)
」
、
「緩衝地帯(buffer zone)
」
、
「移行住地域(transition
area)
」を線引きし、重要地域保全のための核をつ
お 知 ら せ・募 集
くることとなっている。後の世界自然遺産の登録に
際してもこの考えが援用されているほか、日本でも
国立公園などで保全の遂行の根拠とされている。
1976 年から BR(生物圏保存地域)登録が始まり、
現在 102 カ国 482 地域が指定されている。UNESCO
が主導することによって、国境を越えた指定や、世
界自然遺産との関連付けなどが可能となり、日本に
は 1980 年に登録された(
「白山(石川県)
」
、
「志賀高
原(長野県)
」
「
、大台ケ原・大峰山(奈良県・三重県)
」
、
「屋久島(鹿児島県)
」の 4 地域がある。また、我が
国の信託基金も活用されて、東アジアや東南アジア
で各地域ネットワークが構築されており、外務省の
信託基金で環太平洋地域のマングローブ研究による
保全が進められるなど、アジア各国で MAB の認知
度は高く期待も大きい。
BR の思想を先取りしていた日本
日本人は宗教心がないのではと海外からいわれる
ことがあるが、数軒で構成されているような小さな
集落にさえ、自然崇拝を表す祠やそれを護る「鎮守
の杜」が必ず見られ、日本人が伝統的に八百万の神
への畏敬を通じて自然とどのように接してきたのか
を伺い知ることができる。
また日本では典型的な農村の風景の中に、人と
典型的な里山
(兵庫県川西市一庫)
講演こぼれ話
世界自然遺産との関連のなかで候
補地としてよく名前があがる富士
山は、通常私たちが「富士山」と聞
いて思い浮かべる 五合目から上 よ
り、むしろ裾野を含めた地帯に生
物の多様性や地質の面白さが見ら
8
ユネスコ 2006/3
(写真提供:岩槻邦男)
富士山
れる。富士山が世界自然遺産として
登録されることが困難な状況にあ
る一因には、その裾野にすでに人
が住み、さまざまな形で多くの土
地が使用されており、保全できる
状況にないことがあげられる。
新幹線の車窓から望む富士の姿 (写真提供:岩槻邦男)
自然が共存するため、前述の BR(生物圏保存地域)
における「核心地域」
「緩衝地帯」
「移行住地域」に
相当するものが見られることに気づく。国土のほ
ぼ半分を占め、人が通常足を踏み入れない「奥山」
、
緩衝地帯として薪炭材を得たり山菜採りなどで住民
の出入りが見られる「里山」
、そして国土の約 20%
を占めるといわれる平地や谷、川周辺に築かれてき
た「人里」である。近年生み出された BR(生物圏
保存地域)の思想を、実は日本では太古の昔から先
取りしていたのである。
気候変動や絶滅危惧種などを見ても明らかなよう
に、生物圏に生じる人為の影響は、近年、減少する
どころかますます深刻さを増している。MAB が果
たすべき役割は、創設当初より、むしろ増大してい
国るとさえいえる。BR
内 外 か ら の思想の中で日々の生活を営
の 便り
んできた日
本人とし
て、M A B
の活動に是
非とも関心
を持ってい
ただきたい
と願う。
屋久島
©日本ユネスコ協会連盟
屋久島
©日本ユネスコ協会連盟
※1【政府間海洋学委員会(IOC)
】日本の提唱で 1956 年に設置され
た国際海洋学諮問委員会の活動を引き継ぎ、国際協力による地球
規模での科学調査を推進し、海洋学に関する知識や理解を深める
ことを目的に設置
※2【国際水文学計画(IHP)
】砂漠の緑化計画などで知られる「ユネ
」を引き継いだもので、
スコ国際水文学10年計画(1965∼1974)
環境保護を含めた水資源利用方法をベースに水資源の科学的・技
術的な発展を目的とした国際的な政府間共同調査事業
豊かさのための技術をご提案。
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ユネスコ 2006/3
9
世 界 遺 産 ノ ート
「知床」世界遺産認定証
伝達式
ユネスコ活動のひろば
昨年 12 月 19 日、東京・霞ヶ関の外務省講
堂で、
「知床」の世界遺産認定証の伝達式が行
われ、松浦晃一郎 UNESCO事務局長から高
橋はるみ北海道知事および午来昌斜里町長、
脇紀美夫羅臼町長に、それぞれ世界遺産登録
認定証のレプリカ
(複製)
が授与された。この複
製は日本ユネスコ協会連盟の世界遺産募金に
よって制作されたもので、
北海道および2町のほ
か、
環境省や
林野庁の現
地 機 関、北
海道ユネス
コ連絡協議
会にも贈ら
れる。
松浦事務
局長は祝辞
松浦晃一郎UNESCO事務局長
(左)
と脇紀美夫
羅臼町長
の な か で、
「世界遺産に登録されたことは素晴らしい。
しかし登録以来、すでに知床には多くの観光
客が訪れるようになったと聞いている。観光
開発と世界遺産の保護のバランスを取ること
は世界的にも大きな課題となっている。知床
もぜひ貴重な自然を守り続けてほしい」と強
調。また、伝達式に出席した町村信孝・前外
務大臣はそれを受け、
「知床が世界遺産にな
ったときには、これで北海道の観光が活性化
されると喜んだが、今の話を聞いてそういう
単純なことではないということがわかった」
と述べた。また、認定証を授与された高橋知
事は、自身が今回の世界遺産委員会に出席し
たことを振り返り、
「知床の審議の前に、既
に世界遺産リストに登録されているものの保
全状況に関する審査が行われていた。その議
論を聞きながら、世界遺産に登録されるとい
うことの重み、意義が改めて感じられた。こ
れからも知床の自然が守られていくよう努力
していきたい」と述べた。伝達式には日本ユ
ネスコ協会連盟の野口昇理事長も出席し、民
間ユネスコ活動としての世界遺産への取り組
みを述べた。
イ ベ ント レ ポ ー ト
お 知 ら せ・募 集
10
ユネスコ 2006/3
世界遺産認定証には、
「世界遺産リストへ
の登録は、その文化遺産または自然遺産が顕
著で普遍的な価値を有することを保証する。
これらの遺産は全ての人類のために保護を必
要とするものである」と記されている。この
認定証はユネスコから当該国政府に 1 通のみ
送られるが、日本ユネスコ協会連盟では日本
の世界遺産について認定証の複製を制作し、
自治体などに贈っている。
バーミヤン教育文化センター
でワークショップを実施
昨年11月にオープンしたバーミヤン教育文
化センターで、早くも人材育成のワークショ
ップが開かれた。ワークショップは、日本の
独立行政法人・文化財研究所が主催して11月
24日から30日にかけて行われた。文化財研究
所は長年にわたってバーミヤンの調査を行っ
ており、昨年11月から12月にかけては、オー
プンしたばかりのセンターを拠点に、発見さ
れた遺物片の保存修復作業などを行った。
ワークショップには、カブール国立博物館
の職員のほか、情報文化観光省の考古学研究
所職員、アフガニスタン東部のガズニや、バ
ーミヤンからの博物館の担当者、合わせて8
名が招かれた。研修は文化財研究所の専門家
4名が担当し、文化財の保存処置や保存環境
について講義を行ったほか、実際にバーミヤ
ンで発見された壁画片やコーラン、仏典の断
片を用いた実習が行われた。文化財の洗浄や
梱包、保管の方法に加え、写真撮影の理論や
技術についての研修があったが、なかでもコ
ーランや仏典という紙を扱う技術が習得でき
ワークショップで記録保存の実習を受ける参加者 ⓒ文化財研究所
ⓒ文化財研究所
れ、それらを
それぞれの地
元で保存、展
示して住民の
ため役立てる
ことが望まれ
ている。
今回ワー
クショップに
担当者が参加
したガズニや
バーミヤンに
は、まだ国立
博物館がない。しかし将来、博物館ができた
ときには、このワークショップで学んだ知識
が役立つことだろう。文化財研究所は2006年
もバーミヤンで調査を行う予定であり、その
ときには再びバーミヤン教育文化センターで
ワークショップを行う予定だ。
実際に機材を用いての写真撮影実習
国
たのは、アフガニスタンの専門家にとって大
きな収穫だったようだ。
現在、アフガニスタンでは国立博物館の
建設、整備を進めようとしている。内乱前に
あった博物館の多くはタリバンによって破壊
され、収蔵されていた文化財のほとんどが略
奪、
損傷されてしまっている。
カブールにある
内カブール国立博物館はすでにギリシャ政府な
外 からの 便り
どの支援で修復され、保存修復のための設備
なども整えられてきているが、地方ではなか
なか博物館の整備が進んでいない。また、博
物館で文化財を保存したり展示するには、保
存修復の技術に加えて、多数の文化財を管理
するための目録作成や、わかりやすい展示の
手法などさまざまな専門的知識が必要だが、
アフガニスタンではそのような知識をもつ専
門家がほとんどいなくなってしまっている。
しかし、1500年以上も前からシルクロードの
要衝として栄えてきたアフガニスタンには、
国中に貴重な文化財が存在していると考えら
(教育文化事業部:岩本由美子)
ユネスコ 2006/3
11
ユネスコ活動のひろば
メディアにのったユ協活動
ユネスコ活動を広める最も効果的な手段のひとつが、テレビやラジオ、新聞などの
メディアに取り上げられることだ。今回は、地元メディアの協力を得て、地域に根
ざした広報活動を展開する4つのユネスコ協会を紹介する。
イ ベ ント レ ポ ー ト
山口県
萩
ユネスコ協会
テレビ・ラジオを
使った
地域ユネスコ協会
広報活動より
日替わりで毎日1年間の放送が実現した
放 送 局:萩ケーブルネットワーク
放送日・時間:ほぼ毎日(週4回程度)、4∼5分
放 送 内 容:ユネスコ世界寺子屋運動、書きそんじハガキキャンペーン
お 知 ら せ・募 集
ビデオ制作では、内容がマ
萩ユ協では、毎年1月∼2月
ンネリ化しないよう気をつけ
末にかけてケーブルテレビで
ている。例えば今年の放送で
「萩ユネスコ協会からのお知
は、ベトナムでの支援活動が
らせ」を放送している。
昨年のベトナム教育法改正に
きっかけは1998年度の「書
つながったことを報告し、支
きそんじハガキキャンペー
援活動の成果と協力してくだ
ン」。1998年12月の理事会
さった市民の方々への感謝の
で、ケーブルテレビを活用し
気持を伝えた。
て書きそんじハガキ回収の呼
放送の反響は大きい。何よ
びかけを行っては、という意
出演中の萩ユ協有田(右)
、岡野両理事
り、当ユ協が書きそんじハガキ
見が出た。そこで、かねてよ
を集めている、ということを大勢の市民に知って
り文化的活動でテレビ出演の多かった岡野芳子理
いただくことができた。出演している両理事は、
事と有田知永理事が担当となり、テレビ局と交
見知らぬ人から「はがきの人」と声をかけられる
渉。その結果、「萩ケーブルネットワーク」
(萩市
こともある。テレビ局側からも「素晴らしい活動
中心部から島根県境まで広範な放送エリアを持
なので年間を通じて PR してほしい」との要望が
つ)が、無料での放送を受諾してくれた。両理
あり、日ユ協連制作の寺子屋運動のビデオ(6 巻)
事が出演するビデオは、1999年1月∼2月末まで放
を提供。その結果、日替わりで 1 年間、ほとんど
送されることになった。以来この放送は毎年継続
毎日の放送が実現した。将来新しいビデオができ
的に行われ、今年は8回目の放送ビデオが収録さ
れた。
たら、それも放送したいとの要望を受けている。
熊本
ユネスコ協会
地域密着型番組で絵画展への応募が増えた
放 送 局:NHK熊本放送局
放送日・時間:ほぼ年間を通し、月∼金の午後5時∼6時「ひのくにYOU」の中で1分間
放 送 内 容:
「わたしの町のたからもの」絵画展への応募作品の中から1日2作品を紹介
放送が始まったきっかけは、熊本ユ協の顧問の
ひとりでもある、NHK 熊本放送局長からの「わ
たしの町のたからもの」絵画展事業に協力した
い、との申し出だった。NHK 熊本放送局では地
域密着型の番組制作に取り組んでいる。絵画展
の趣旨や熊本ユ協の広報活動のねらいと、番組制
作の目的が合致したことから、放送実施が決まっ
た。番組は平日の夕方、
1 時間放送される「ひのく
にYOU」
。
この中の「ひのくにギャラリー」という
1 分間のコーナーで、
「わたしの町のたからもの」
絵画展への応募作品から 1日 2 作品が紹介される。
12
ユネスコ 2006/3
放送が始まって約 2 年、番組制作担当者から、放
送日程などに関する連絡がほぼ 1 ヶ月ごとに入る
と、作品、児童名、放送日といった内容を、当ユ
協が放映1週間前までに各学校に連絡している。
この放送によって、絵画作品が広く県民に紹
介されるようになり、事業の知名度がさらに上が
ったようだ。映像を通して、ユネスコ活動が広く
県民の目に届く意味は大きい。また、出品した子
どもたちやその家族の方々は放送を大変楽しみに
し、録画して喜んでおられるという声も寄せられ
ている。絵画展への応募数も増加してきている。
富山
ユネスコ協会
年1回のイベントのようすを複数のメディアで紹介
放 送 局:富山シティエフエム、FMとやま、上婦負ケーブルテレビ
放送日・時間:各局ごとに異なる
放 送 内 容:イベント「ユネスコ平和と音楽の集い」
国 内 外 からの 便り
富山ユ協では、ユネスコ活動の啓発や会員同
士の交流を図るため、2003年から「ユネスコ平和
と音楽の集い」を年1回開催している。テーマは
「平和とエコ社会の実現はまず家庭から、地域か
ら、国際交流から!」。参加者のショートスピー
チと音楽とを交互に披露し、市民を交えて話し合
う演出がメディアの関心をひいた。また昼食は、
リラックスした雰囲気でユネスコの趣旨を理解し
ていただくため、バイキング形式にして参加者と
の交流を図っている。
このイベントのようすを複数のテレビ・ラジオ
が取材し、放送した。富山シティエフエムはイベ
ント開催2週間前、アナウンサーとイベント参加
予定者との質疑応答を約20分間、音楽を交えなが
ら放送。またFMとやまでも事前PRが放送された
ほか、上婦負ケーブルテレビでは、20分程に編集
山口県
宇部
ユネスコ協会青年部
した当日の取材テープが1日4回、1週間にわたり
流れた。
自然環境保全や健全な家庭づくり、地域の連帯
といった社会的な課題に取り組むことが、ひいて
は世界平和につながる。そう考えてこのイベント
が誕生した。地域の大学教授や県内在住外国人な
ど有識者に出演していただき、とっつきにくいテ
ーマでも、パワーポイントなどを使ってわかりや
すく説明することにより一般の市民が気軽に意見
交換できる雰囲気づくりを心がけている。テレビ
やラジオを通じてこのようすが広く公開されるこ
とは、協会にとって大きなPRであり、また会員
同士の活性化にもつながっている。
今後は他関係機関とのコラボレーションや、公
平で中立な放送局への取材・広報協力の呼びかけ
も検討し、より効果的な広報活動を展開したい。
自由な番組作りでユネスコ活動をアピール
放 送 局:コミュニティーFM局「FMきらら」
放送日・時間:2005年4月∼9月の毎週月曜日、19時∼20時
放 送 内 容:世界遺産保護活動、ユネスコ世界寺子屋運動
「FMきらら」は、誰でも番組に出られるという
気軽なコミュニティーFM。宇部ユ協青年部のメ
ンバーがこの「FMきらら」のパーソナリティーだ
ったことから、番組を利用した広報活動が検討さ
れた。1回目は、宇部ユ協創立50周年を記念して、
2004年に30分番組を半年間、続いて2005年には、
再び半年のシリーズを再開。今度は30分から1時間
に拡大しての放送だった。
放送内容は、毎回日本の世界遺産をひとつ取り
上げて紹介するほか、「あなたの宝物は何ですか
?」というコーナーでは、身近にある大切なモノ・
人をリスナーより募り、それにまつわるエピソード
を紹介した。エピソードが採用された人には、青
年部お手製のエコバッグを進呈。さらに、イベント
情報やユネスコに関するニュースも取り上げた。
「FMきらら」では、番組使用者が放送時間を買
い取るシステムになっているため、自由に番組を
作ることができた。番組1回分は約1万円。そこを10
万円で3ヵ月計11回の放送ができるよう交渉した。
この10万円は「草の根助成金」より拠出した。
ユネスコについてご存知ないリスナーにとって
は、世界遺
産への興味
が番組を聴
いていただ
くきっかけ
となったよ
うだ。その
番組に出演中の宇部ユ協青年部・植野麻
紀子副部長(左)と、パーソナリティーを務
結果、世界
める伊藤美礼部員
遺産保護活
動や世界寺子屋運動といったユネスコ活動につい
て、地域の方々の理解が深まったと思う。
コミュニティーFMという媒体は、自分たちが暮
らしている地域で運営され、出演する青年部メン
バーもリスナーも地元の人間。だから、具体的な
地域での活動を知っていただけるチャンスだと思
う。一方、番組を構成するにあたっては、一般の方
にわかりやすく、しかも興味を持っていただけるよ
う、ユネスコ活動について深く知る必要があり、と
ても勉強になった。このような媒体が地元にある
ユ協では、若い人たちの自由な発想でぜひ活用し
ていただきたい。
ユネスコ 2006/3
13
イ ベ ント レ ポ ー ト
U
N
D
E
S
D
/
国
連
持
続
可
能
な
開
発
の
た
め
の
教
育
の
10
年
「ずっと地球と生きる学校プロジェクト」出前授業レポート
主催:読売新聞社 日本ユネスコ協会連盟
「エネルギーと地球温暖化」
。倉敷市立玉島南小学校(協力:倉敷ユネスコ協会)では6年生(3クラス)102人
お 今回のテーマは
知 ら せ・募
集
たにそと
を対象に、また姫路市立谷外小学校(協力:姫路ユネスコ協会)では5年生49人を対象に、それぞれ中国電力と関西電力の協力
を得て出前授業が行われた。なお、両校の出前授業のようすは2005年12月21日の読売新聞朝刊でも大きく取り上げられた。
/
10
/
18
・
19
・
11
倉敷市立玉島南小学校
講師:土井 伸一郎さん
(中国電力倉敷営業所)
2
11 姫路市立谷外小学校
/
「乾電池は、なぜ乾いた電池
と書くの?」そんな土井さんの問
いかけに子どもたちは興味津々。
実際には“乾いていない”電池の
しくみを知る実験に続き、土井さ
んのわかりやすく楽しい説明が続
く。次に手回し発電機を使って電
球をつける実験を行った。子ども
4人の班で必死に力を合わせ顔が
赤くなるまでハンドルをまわして
も、電球1個の明かりをつけるの
がやっとの状況。普段、何気なく
使っている電気をつくるのが実
は大変なんだということを改めて
知る。また、土井さんは溶け始め
た氷河のスライドなどを見せ、発
電所で電力をつくるために石油や
石炭を燃やすと大量の二酸化炭素
(CO2)が発生し、地球温暖化が
進んでしまうことを説明。次回授
業までに自宅の電気製品の消費電
力と1日の使用時間を調べること
が宿題になった。
第2回目の授業は、自宅の電気
製品の年間電気使用量から、1年
間のCO2の排出量を算出すること
から始まった。杉の木1本が1年間
に吸収するCO2量は14㎏。例えば
テレビを毎日4時間見ると1年間で
杉12本分、169㎏のCO 2を排出し
ている計算になる。「こんなにす
ごい数の木が必要なんだ∼」とい
たるところで子どもたちの驚きの
声があがる。省エネについて考え
る機会を得て、子どもたちが自分
たちの視点で日々の生活を見直す
きっかけが生まれた。
7 講師:浦元 麻裕実さん
藤尾 健二さん
・
24
(関西電力姫路営業所)
第1回目の授業は「エネルギー
って何かな?」という問いかけか
ら始まった。スライドを使いテン
ポよく出される浦元さんの質問に
子どもたちも楽しそう。でも地球
温暖化のことや、車の排ガスなど
が原因となる酸性雨の被害、石油
や天然ガスなどの資源に限りがあ
るという話になると、子どもたち
の表情も一変し深刻さを増した。
CO2を出さない太陽光や風力発
電では、現在の消費電力をつくろ
14
ユネスコ 2006/3
日ユ協連職員による授業も
11月2日の倉敷市立玉島南小学校と、11月24日の姫路
市立谷外小学校で行われた授業では、各企業の授業内
容を受けた形で、日本ユネスコ協会連盟の川上千春職
員による授業も行われた。
姫路市立谷外小学校の授業には神戸ユネスコ協会青
年部代表の小山晟さんをはじめ、足立亜由美さん、谷
川有希さん、山脇麻里さんの4人が応援に加わった。
UNESCOについての紹介の後、世界寺子屋運動のビデ
うとしたら何百倍もの土地が必要
になるといった課題があることを
知り、子どもたちは無駄をなくす
ことの大切さを改めて実感する。
その後、すでに取り組みが始ま
っている省エネ製品の開発例とし
て電気自動車が紹介された。校庭
で排ガスの出るマフラーがないこ
となど構造の説明を受け、実際に
試乗をし、教室で学んだことを体
験した(写真)。
第 2回目の授業は前回からの宿
題で取り組んだ「家庭での節電」
について、子どもたちの発表から
始まった。テレビゲームや暖房を
我慢するなど一人ひとりの涙ぐま
しい努力と工夫、家族の協力の甲
斐あって、学年 49人で約448キロ
ワット時(電気代で約 1 万 306 円
分)の節電に成功した。さらに、
学校単位、全国単位で計算し、各
自の心がけがまとまれば、大きな
成果を生み出すことが数値で示さ
れ、協力することの大切さも知る
ことができた。詳しい授業内容は:
http://esd.yomiuri.co.jp
オやスライドを用いて、バングラデシュとネパールに
住む同世代の子どもたちの暮らしぶりが紹介された。
子どもたちは国旗を見て国名を当てるなど、アジアの
国のこともある程度は知っているようす。しかし、こ
のとき上映したビデオやスライドは新鮮だったらし
く、水道や電気のない生活や、ビデオで見たサディカ
ちゃんの1日と自分たちの1日の時間の使い方を比べて
みて、その違いに驚きの声が上がった。
国 内 外 からの 便り
����������������
.
No
9
絶品!
ド左
ル上
マか
カら
レ時
ー計
、回
アり
イに
ハ、
ナプ
ムリ
モ
シ
、
コ
マ
チ
、
郷土料理が
識字教室の教材に
日本ユネスコ協会連盟カブール事務所 山下 陽子
零下25度に達する極寒のアフガニスタンか
ら、今年も「サラーム!(こんにちは)
」
。
さて、日本で冬の料理の定番といえば鍋です
が、アフガニスタンでは油料理が筆頭にあげら
れます。日本では健康上、油を控える人が少な
くありませんが、こちらでは寒さを乗り切り、
氷点下でも冷めにくい料理を作るため植物性の
油をたくさん使います。
カブール市8地区にあるCLC(※)の識字教師ジ
ャミラ先生(女性・43歳)は、料理の腕が自慢。
子どもの頃から南はカンダハル、北はマザリシ
ャリフ、東はジャララバードと各地を転々とし、
さまざまな郷土料理に精通しています。その知
識を活かして授業に料理を盛り込もうと考えま
したが、アフガニスタンには難しい文字ばかり
の料理本しかありません。そこで、8地区の女
性有志数名と共に、写真解説を付けたアフガン
郷土料理本の作成を提案しました。
企画の内容は、デザートを含む8品からなる
郷土料理。しかし、カブール在住2年の私も聞
お
料
理
三
人
組
。
右
端
が
ジ
ャ
ミ
ラ
先
生
いたことのない料理ばかりです。
「皆が知って
いるものを本にしてもしょうがないでしょ。毎
日来るから、私たちの書いた原稿の計量とプロ
セス確認、写真撮影をよろしく」との“指令”
がくだり、日ユ協連カブール事務所の台所は8
地区CLC副教材作成部隊に占拠されてしまいま
した。中国の月餅を巨大化したようなコマチ、
野菜をくり抜いて子牛肉を詰め込んだドルマカ
レー、巨大餃子のようなアイハナム、そしてイ
ンドのサモサに似たプリモシなど、どれも多彩
な薬味と油を活かした逸品ばかり。繊細な味付
けと対照的なのが豪快な分量で、基本量はアフ
ガンの大所帯を反映した10人前です。どれも調
理に平均3時間はかかりますが、おしゃべりを
していればあっという間。夫のことから政治ま
で辛口トークが飛び交っていました。ここで書
くのははばかられるような色っぽい話題もあっ
たようで、通訳を迫る私に、現地男性職員のヤ
マくんが「僕の口からはとてもいえない…」と
赤面する場面も。
こうして、アフガン郷土料理副教材の原稿作
成と撮影は無事終わり、現在は編集作業が進行
中。3月の新学期には完成し、CLCの識字・料
理教室で使われる予定です。
※【CLC】Community Learning Center の略で、寺子屋と同義
ユネスコ 2006/3
15
お 知 ら せ・募 集
TBS番組「世界遺産」10周年
テレビ番組「世界遺産」
(協力:日本
ユネスコ協会連盟など)は、日本が世
会期中には秋 篠宮 妃 紀子殿下も訪
されました。国際 統括官付名で各局・
れ、バーミヤンやカトマンズなど、展示
課・文化庁などに協力を呼びかけ、省内
されている写真を熱心にご覧になりま
にポスターや書きそんじ回収 BOXを設
した。
置。1月10日から1月末日までの間に1637
界遺産条約を批准した4 年後の1996 年
会場では総額43万5333円にのぼる募
4月14日、TBS(東京放送)全国 28 局
金が寄せられ、今後日ユ協連を通してア
ネットで放映が開始されました。
ジアの危機遺産を守る活動に役立てら
ソニー株式会社が創業50周年記念事
業の一環としてスポンサーとなり、毎週
世界遺産リストから1カ所を取り上げ、て
いねいに紹介してきた同番組も、スター
トして来る4月に10周年を迎えます。
今後10周年記念イベントなども開催さ
れる予定です。
http://www.tbs.co.jp/heritage/index-j.
html
映像・写真展
「世界遺産からのSOS∼アジア
危機遺産からのメッセージ∼」
1月14日から2月5日まで、東京・上野の東
京藝術大学大学美術館で標記展覧会が
日ユ協連らの主催で開催されました。
れます。なお、この映像・写真展は今後
全国9カ所を巡回する予定です。
インドスタディツアー参加者決定
今年も「ユネスコ青年交流信託基金」
枚が集められました。
D−プロジェクト WEB上での投票開始
「児童・生徒がつくるユネスコ・世界
寺子屋運動リーフレット制作」キャンペー
ンは、国際理解教育の一環として20 03
年より展開しています。2005年度の参加
小・中・高等学校21校から今年も力作が
の助成を得てインド・スタディツアーが実
出揃い、3月10日までインターネット上でコ
施されます。ユ協の推薦を受けた 58 名
ンテストを開催しています。最優秀作品
が全国から応募。審査委員会による厳
は、2006年度当協会連盟書きそんじハガ
正な審査の結果、高校生 6 名、大学生
キキャンペーン用リーフレットとして活用
9 名、青年社会人 5 名の計 20 名が参加
されます。
することとなりました。平井花画(日ユ
協連理事)団長のもと、3月26日に成田
を発ち(3月25日は成田で前日研修会)、
4月5日に帰国する予定です。
寺子屋運動プロジェクト地のカルナー
タカ州ゴカックを訪問するほか、地元の
子どもたちの作品をご覧いただき、ぜ
ひ一票を投じてください。
http://www.d-project.jp/2005/contest/
05/index.php
ご存知ですか?
「ユネスコ情報マガジン」の無料配信
世界遺産の中でも、武力紛争や自然
大学生との交流、世界遺産の地アグラ訪
災害、都市開発などによって重大な危機
問、インドユネスコクラブ連合との交流
日ユ協連では 2000 年 6月より無料の
がおよんでいる遺産は、
「危機にさらさ
など多彩な内容。2月には2泊3日で事前
メールマガジン「ユネスコ情報マガジン」
れている世界遺産リスト(危機遺産リス
勉強会を実施し、ユネスコ活動の若い担
をほぼ毎月配信(不定期)
しています。
ト/現在の登録物件数34)」に登録され
い手として心を引き締めて準備をしまし
当初 492 名の購読者数でスタートした同
ます。この展覧会は、そのうち約3分の1
た。帰国後はそれぞれの地元で報告会
マガジンは 2006 年1月末現在 4007名と
を占めるアジアの危機遺産を救い、未来
を開催し、D−プロジェクト参加校を訪
なり、内容もさらに充実。トピックスや
の世代へ「私たちに何ができるのか」訴
れるなど世界寺子屋運動の“語り部”と
情報カレンダー、日ユ協連事務局求人情
えるため開催されました。
なります。次号の機関誌では参加者から
報、プレゼント情報など盛りだくさん。
の報告を掲載する予定です。
ご希望の方は、以下の日ユ協連 WEB サ
日本ユネスコ国内委員会事務局でも実施
“書きそんじハガキキャンペーン”
の広がる輪
イトよりお申し込みください。
https://www.unesco.jp/contents/comu/
mail.html
今年も、文部科学省内に設置されて
第62回 日本ユネスコ運動全国大会 in花巻
いる日本ユネスコ国内委員会事務局で、
今年の全国大会は宮沢賢治や新渡戸
ユネスコ・世界寺子屋運動支援のため
稲造ゆかりの岩手県花巻市で開催され
の書きそんじハガキキャンペーンが実施
ます。テーマは「『考えていますか となり
のひとを』∼平和と共生の明日に向かっ
て∼」。
前国際日本文化研究センター所長山
折哲雄氏による「文明の共存を考える」
と題した基調講演に続き、コーディネー
ターに山折氏、パネリストに㈶日本総合
研究所理事長であり、㈱三井物産戦略
研究所所長でもある寺島実郎氏、そし
て法政大学教授王敏氏、日ユ協連会長
児島仁の3 名を迎え、シンポジウム「平
和と共生の明日に向かって、そして国際
理解」が開かれます。
16
ユネスコ 2006/3
2日目の分科会は「世界寺子屋運動
『すべての人に教育を』
」
、
「世界遺産活
2005年度∼2006年度 スケジュール(予定)
3/4
第441回 理事会
3/25∼4/8
5/13
ユネスコ青年交流信託基金スタディツアー inインド
●「地域草の根活動振興助成金」選考・決定 ●「絵で伝えようわたしのまちのたか
らもの絵画展」参加ユ協募集 ●「平和の鐘を鳴らそう」参加ユ協募集
第9回 評議員会、第442回 理事会
6/2
第443回 理事会、第57回 総会(花巻市)
6/3・4
第62回 日本ユネスコ運動全国大会 in花巻
◆日時:2006年6月3・4日
7/19
民間ユネスコ運動の日
(なお、第57回総会並びに第443回理事
7/27∼29
第6回 UNESCO東アジアこども芸術祭(モンゴル・ウランバートル)
8/2∼5
第52回 全国高校ユネスコ研究大会(沖縄県)
8/6∼9
第38回 ユネスコ子どもキャンプ (兵庫県)
9/16
第10回 評議員会、第444回 理事会
9/23∼24
北海道ブロックユネスコ活動研究会(札幌)
9/30∼10/1
中部東ブロックユネスコ活動研究会(松本)
9/30∼10/1
中国ブロックユネスコ活動研究会(萩)
10/21∼22
中部西ブロックユネスコ活動研究会(富山)
10/28
近畿ブロックユネスコ活動研究会(長浜)
11月
世界寺子屋運動書きそんじハガキキャンペーン開始
11/18∼19
九州ブロックユネスコ活動研究会(佐賀)
11/18∼19
四国ブロックユネスコ活動研究会(丸亀)
11/25
第445回 理事会
12/2∼3
関東ブロックユネスコ活動研究会(埼玉県)
日程未定
東北ブロックユネスコ活動研究会(青森県)
動『世界遺産と地域遺産』
」
、
「平和と国
際理解『非戦 先人が求めた世界』
」
、
「青
年とともに『伸びようユネスキャン』
」の
4つのテーマで行われます。ふるってご
参加ください。
(詳細は1月号付録参照)
会を前日の2日に同じ会場で開催)
◆場所:花巻市・花巻温泉ホテル千秋閣
◆申し込み締切り:2006年4月20日
まだ間に合う!
書きそんじハガキキャンペーン
年賀ハガキの書きそんじに焦点をあて
た“ 書きそんじハガキキャンペーン”を
実施中です
(2006 年1月号で既報)
。
キャ
ンペーンには全国 72 のユ協から参加申
し込みがありました。写真は、紀伊國
屋書店で配布されたチラシを見て、全国
から送付された書きそんじハガキの山。
キャンペーン期間は 3月31日まで。
◆申し込み・問い合わせ:
日ユ協連 教育文化事業部
次号「ユネスコ活動のひろば」の情報募集
編集部では機関誌ユネスコ5月号の
「ユネスコ活動のひろば」に掲載する情
報を募集しています。テーマは「他団体
との協働」
。他団体と共にさまざまな活
動を実施しているユ協について取り上げ
る予定です。
上記のテーマに添った活動を次号で
4月
2007年
1/20
第11回 評議員会、第446回 理事会
3/3
第447回 理事会
ご活用
ください!
構成団体会員への助成金
事 業 名
2006年度 地域草の根活動振興助成金
第9回「わたしの町のたからもの」絵画展
事業概要
ユネスコ協会の活動を広くアピールする
ために、地域に根付いた社会貢献活動を
行っている団体に対し、各地ユ協として
支援を行う為の助成金。また各地ユ協が
行う地域社会貢献活動に対しても助成
世界遺産のみならず、身近な文化遺産
や自然遺産を大切にする心を育むため、
小・中学生から「わたしの町のたからも
の」をテーマにした絵画を募集し、絵画
展を行う
①事業助成金として1協会に対し10万円を
拠出 ②応募した子どもたち全員へ参加賞を
助 成 金・ 1事業に対して15万円を上限として、助 贈呈 ③日ユ協連会長賞、あいおい損害保険
特 典 成金を交付
株式会社賞の賞状と記念品を贈呈 ④全国の
優秀作品の中から全国審査優秀賞を選定し
受賞者を東京で行われる表彰式へ招待
申請分野・ A)地元諸団体が行う地域社会貢献活動
条 件
B)各地ユ協が行う事業
実施スケジュールに併せて事業を実施で
きること
申 請 者
ユネスコ協会
ユネスコ協会
申請期間
第一次:2006年2月∼3月10日
第二次:2006年4月∼5月末
第三次:2006年8月∼9月末
2006年2月∼3月末
実施期間
協賛団体
2007年3月31日までに事業を終了すること 2007年3月31日までに事業を終了すること
NT Tグループ
あいおい損害保険株式会社
※詳細はユネスコ協会便(毎月、月初めに各ユ協に送付)でお送りする要項を参照下さい。
発表したいというユ協は、以下の項目に
従って情報をお寄せください。
①事業内容(できるだけ具体的に)
②きっかけや動機
③苦労した点・工夫した点
④良かった点
⑤今後の課題や目標など
文字総数500字以内にまとめ、活動内
容がわかる写真と共に日ユ協連 広報
室 川上までお送りください。
◆締め切り:3月15日
ユネスコ 2006/3
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トンガリ帽子の家が連なるメルヘンの町
連 載
世界遺産の 現場[29]
アルベロベッロ︵イタリア︶
南イタリアはプーリア地方のイトリア
谷一帯では、白壁に平らな石灰石を積み
上げただけのキノコ型の屋根をよく見
かけます。トンガリ帽子を思わせる不思
議な屋根の家は、紀元前から西ヨーロッ
パに伝わる古代住居トゥルッリで、現在
でも住居として使われています。
町の名はアルベロベッロ。目抜きのマ
ルテロック広場からキノコ屋根の密集す
る奇妙な光景を目にすると、 おとぎの
国 にでも迷い込んだような錯覚にとら
われます。
トゥルッリ(trulli、単数形はトゥルッ
ロ)とは「部屋ひとつに屋根ひとつ」
という意味で、ちょうどバンガローや
ヒュッテが発展したようなもの。1 軒の
家トゥルッリは、いくつかのトゥルッロ
の集合体でできているのです。
広場を中心に東西ふたつの地区に約
1000 軒のトゥルッリがありますが、飲食店やみやげ物屋は西
側のモンティ地区に集結しています。
トゥルッリの居並ぶ石畳の道は、くねくねと曲がりくねっ
て起伏の多い坂道になっています。素朴な木製とびらのつい
ているもの、ドアをとった開放的なショップなど、それぞれ
思い思いの意匠で軒を連ねています。
どの店もテラスを設けていて、道行く人に観覧や撮影をす
すめています。テラスを利用してショッピングや飲食をして
もらおうというのが狙いで、利用料はいりません。
誘われるままに何軒かのテラスに上がってみました。コン
クリート製もあれば、物干し場のようなものもあって、眺め
はそれぞれ一長一短。自身で何ヵ所か体験して、ベスト・ビュ
ウ・ポイントを発見されることをおすすめします。
世界遺産の中では、文化遺産のおよそ 80% が宗教芸術です。
アルベロベッロのように、住居史や巨石文化史にその意義を
置き、しかも景観として美しい遺産は、イタリアでも他に類
を見ない稀有なものです。
(写真・文 さいとうなんぺい)
©さいとうなんぺい
さいとうなんぺい・1934年9月、東京神田生まれ。雑誌・新聞記者を経て、フリーランスライターとして世界の各都市から辺境の地まで単身で駆け回る。
現在は世界遺産を中心に取材活動中。23年あまりにわたる世界遺産歴訪は280ヶ所を越す。http://www.saitownanpei.com/
読者の声
月号より
1
●毛利氏と児島会長との対談を興味深
く拝読しました。読後、毛利氏の「文化
としての科学技術」というお話と、いわ
ゆる「産業遺産」と呼ばれる文化財が世
界遺産に含まれていることに、共通点が
あることにも気づきました。ユネスコの
柱のひとつである科学は、ローカルな民
間活動を展開しにくい分野だと感じてい
ましたが、この対談によって科学に親近
感を覚え、新たな気持ちになりました。
(北海道:伊藤真洋)
●「ユネスコ」は 11 歳の私にはわかりに
くい。字を大きくしたり、フリガナをふっ
たり、絵や写真も増やしていただけると
よいです(できるだけ)。
(岩手県:小野寺若葉)
●1月号で最も注目したのが「寺子屋の
いま」のサディカ、そしてソナバリーと
チンダでした。2002 年、撮影のために
数日間、一緒に過ごしただけなのに、
まるで親類の子のように身近に感じま
す。しっかり女の子らしく育っているこ
とに、喜びと同時に驚きを禁じ得ません。
彼女たちのこれからが、彼女たちが望
み、描く未来になってほしいと強く願い
ます。
(大阪府:上野卓彦)
皆さまからのお便りをお待ちしております。
封筒のリサイクルハガキをご利用ください。
訃
報
おご
祈冥
り福
しを
ま
す
伊藤 育さん
神戸ユネスコ協会会長
1 月 18 日逝去 享年 70 歳
村田 正斎さん
岐阜県高山ユネスコ協会会長
1 月 23 日逝去 享年 93 歳
編 集 後 記
◆「国連・持続可能な開発のための
(UN Decade of Education
教育の10年
f or Sustainable Development :
」が2年目に入った。日本が呼び
ESD)
かけ、UNESCOが主導する。機関誌
「いっ
でも何回か取り上げてきたが、
たい何?!」と困惑ムードが漂う。
◆日ユ協連では読売新聞社と共にこ
のESDを「ずっと地球と生きる」た
めの教育と意訳した。地球が抱える
課題を知り、出来ることから手を携
えて行動しよう。そんな思いが込め
られている。
◆その思いはまさに、民間ユネスコ
運動がこれまで取り組んできた、さま
ざまな活動の理念に通じていること
(K.C.)
に気付かされる。
社団法人日本ユネスコ協会連盟は、ユネスコ憲章の精神に共鳴した人びとによって1947年、世界にさきがけて仙台で始められた、民間ユネスコ
運動の日本における連合体でNGO(非政府組織)です。現在全国に約300のユネスコ協会があります。
3
2006年3月1日発行 通巻第1102号
発行 ●社団法人 日本ユネスコ協会連盟 発行人・野口昇 編集人・鈴木幹夫 ●購読料 800 円/1年(発送料込)
東京00150−9−56030 〒 150-0013 東京都渋谷区恵比寿1−3−1 朝日生命恵比寿ビル12階
第 3 種郵便物認可(奇数月1日発行)
TEL 03(5424)1121 FAX 03(5424)
1126
再生紙を利用しています