特 集 女 性 運 転 者 に よ る 交 通 事 故

Institute for Traffic Accident Research and Data Analysis
特
集
財団法人 交通事故総合分析センター
INFORMATION
イタルダ・インフォメーション
発行者:大堀太千男
発行所:
(財)交通事故総合分析センター
発行月:2006年1月
〒102-0083 東京都千代田区麹町6-6
麹町東急ビル5階
2006
No.60
女
性
運
転
者
に
よ
る
交
通
事
故
財団
法人
交通事故総合分析センター
Institute for Traffic Accident Research and Data Analysis
2006 No.60
特集
女性運転者による交通事故
近年、女性の運転免許保有者の増加指数は男
性を上回り、女性が交通事故を起こす割合も、
年々増加しています。今回のイタルダ・インフォ
メーションでは、第 1 当事者車両(原付以上)の
女性運転者による交通事故にはどのような特徴
があるのか実態を分析して、どのような点に注意
すれば交通事故を未然に防止できるかについて
まとめてみました。
Contents
主な内容
1
2
交通事故件数の経年変化
女性の運転行動の特徴 〜女性の交通事故の推移と男性との比較〜
2-1 女性は安全運転をしているのか
2-2 女性は車の使い方が男性と違うのか
3
4
2
No.60 [女性運転者による交通事故]
事故例の紹介
まとめ
ITARDA INFORMATION
1
Section
交通事故件数の経年変化
図 1 は、平成 7 年から平成 16 年までの男女
別・当事者別の交通事故件数の経年変化を、平
成7年を100とする指数で表したものです。こ
増加しています。一方、男性の交通事故は平成
13年をピークに横ばい状態となっています。
平成16年の交通事故件数をみると、第1、第
れを見てわかるように、女性の交通事故は第1
当事者、第2当事者ともこの10年間で40%以上
2当事者合計で全体の約3割(496,016件)を女
性が占めています。
図1 男女別交通事故件数の経年変化(H7〜H16)
(指数)
1当266,245件
150
女(1当)
女(2当)
男(1当)
男(2当)
140
130
2当229,771件
1当634,874件
120
平成7年=100
110
2当426,605件
100
H7
H8
H9
H10
H11
図2は、平成7年から平成16年までの男女別
の免許保有者数の経年変化を、平成7年を100
とする指数で表したものです。女性の免許保有
者はこの10年間で22%増加しています。その
H12
H13
H14
H15
H16
ことがよくわかります。
平成16年の免許保有者は、女性が約3,323万
人、男性が約4,502万人で、免許保有者全体の
約4割を女性が占めています。
増加は男性よりも多い割合で年々変化している
図2 男女別免許保有者の経年変化(H7〜H16)
(指数)
125
33,226,722人
女
男
120
115
平成7年=100
45,020,226人
110
105
100
H7
H8
H9
H10
H11
H12
H13
H14
H15
H16
[女性運転者による交通事故] No.60
3
図3は、平成7年から平成16年までの男女別・
当事者別の免許人口1万人当たりの交通事故件
数の経年変化を表したものです。
および免許
女性の場合、事故件数の増加
(図1)
保有者数増加
(図2)
の割合が男性より高いのです
が、免許人口当たりの交通事故件数では少々事情
が異なり、男性の約半分となっています。平成16年
の男性の第1当事者の場合は140件ですが、女性
は80件と少ないことがわかります。一方、推移という
観点では男女ともほぼ同様であることがわかります。
図3 男女別免許人口1万人当たりの交通事故件数の経年変化(H7〜H16)
︵
免
許
人
口
当
た
り
交
通
事
故
件
数
:
件
/
1
万
人
︶
160
140
120
100
80
60
40
男(1当)
女(1当)
20
0
H7
2
Section
男(2当)
女(2当)
H8
H9
H10
H11
H12
女性の運転行動の特徴
H13
H14
H15
H16
〜女性の交通事故の推移と男性との比較〜
この章では、女性の交通事故を天候別や昼夜別のように項目ごとにとりあげ、事故件数を条件ごとに
分類し構成率を示しました。そして、平成7年から平成16年までを並べることによって、その経年変化が
わかるようにしました。さらに、平成16年については同じ項目の男性の事故の割合も示しました。
2-1 女性は安全運転をしているのか
(1)天候別交通事故件数の割合
天候別では、全体の8割を「晴・曇」が占め
ています(図4)。「雪」は約1%と非常に少な
いのですが、わずかずつですが増えています。
女性と男性の比較では「晴・曇・雨・霧・雪」
それぞれで同様な割合を占めており、天候別で
は顕著な男女差はみられません。
図4 天候別交通事故件数の割合
(%)
100
90
80
70
60
50
40
30
20
10
0
1.0%
1.5%
1.0%
1.1%
1.2%
1.5%
0.9%
1.2%
1.2%
1.4%
12%
13%
15%
13%
13%
12%
12%
15%
12%
12%
23%
24%
22%
27%
23%
23%
22%
23%
26%
21%
20%
霧
雪
雨
曇
晴
64%
62%
64%
57%
62%
63%
65%
64%
58%
66%
67%
H7
H8
H9
H10
H11
H12
H13
H14
H15
H16
H16
女性
4
1.3%
13%
No.60 [女性運転者による交通事故]
男性
ITARDA INFORMATION
(2)昼夜別交通事故件数の割合
昼夜別では、全体の75%前後を「昼」が占
めていますので、おおよそ4件の交通事故のう
ち 3 件が昼間に発生していることになります
(図5)
。各年の「昼・夜」ともほぼ同様な割合
です。
女性と男性の比較では、女性は「昼」の割合
がやや高く、「夜」の割合がやや低くなってい
ます。このことから、女性は昼間に多く車両を
利用する傾向があることがわかります。
図5 昼夜別交通事故件数の割合
(%)
100
90
夜
25%
26%
26%
26%
25%
26%
25%
25%
25%
24%
30%
75%
74%
74%
74%
75%
74%
75%
75%
75%
76%
70%
H7
H8
H9
H10
H11
H12
H13
H14
H15
H16
H16
昼
80
70
60
50
40
30
20
10
0
女性
(3)事故類型別交通事故件数の割合
事故類型別では、「出会い頭」事故が一番多
く、全体の約3割を占めています(図6)
。その
次に多い「追突」事故が10年間で約7%増加し
ています。一方「出会い頭」
、
「人対車両」事故
については2〜3%減少しています。
女性と男性の比較では、女性の場合、やはり
「出会い頭」事故が一番多くて31%を占めてい
男性
ます。二番目に多いのが、29%を占める「追突」
事故です。
「出会い頭」と「追突」は10年前に
は10%近い差がありましたが、「追突」が7%
増加してほとんど差のない状態になっていま
す。このまま女性の「追突」が増加していくと、
男性で一番である「追突」と同じ構成率(33%)
になる傾向があることがわかります。
図6 事故類型別交通事故件数の割合
(%)
5%
5%
5%
5%
5%
5%
6%
6%
6%
6%
6%
100
90
9%
9%
9%
9%
9%
9%
9%
10%
9%
9%
80
16%
15%
15%
15%
14%
14%
15%
14%
14%
14%
33%
33%
33%
32%
33%
32%
31%
31%
31%
31%
列車
12%
14%
70
60
他の車両相互
右左折
24%
50
出会い頭
追突
40
30
車両単独
正面衝突
22%
23%
24%
26%
26%
27%
28%
28%
29%
29%
33%
3%
9%
3%
9%
3%
9%
3%
9%
3%
8%
3%
8%
H12
H13
H14
H15
H16
人対車両
20
10
0
4%
4%
3%
11%
11%
10%
3%
10%
3%
9%
H7
H8
H9
H10
H11
女性
H16
男性
[女性運転者による交通事故] No.60
5
(4)危険認知速度別交通事故件数の割合
危険認知速度とは、原付以上の運転者が相手
方車両・人・物件等を認め、危険を認知した時
点の速度をいいます。危険認知速度別では、こ
の10年間の推移として「51km/h以上」が減少
している一方で、「10km/h以下」の低速度の
領域での増加が顕著(29%→36%)です(図7)
。
女性と男性の比較では、女性は「10km/h以
下・ 20km/h 以下」が占める割合が高く、
「50km/h以下・51km/h以上」の割合が低いこ
とがわかります。女性は走行速度を抑えた運転
をしていると考えられます。
図7 危険認知速度別交通事故件数の割合
(%)
90
80
70
3%
4%
100
3%
3%
3%
3%
3%
3%
2%
2%
7%
7%
7%
7%
7%
6%
6%
6%
6%
6%
15%
15%
15%
15%
15%
14%
14%
14%
13%
13%
17%
17%
17%
26%
25%
18%
18%
18%
17%
16%
16%
6%
41〜50km/h
14%
31〜40km/h
15%
21〜30km/h
16%
60
11〜20km/h
50
40
26%
26%
26%
25%
26%
26%
26%
26%
23%
〜10km/h
停止中等
30
20
51km/h〜
8%
29%
30%
31%
31%
32%
33%
34%
35%
35%
36%
32%
10
0
1%
1%
2%
1%
1%
1%
1%
1%
1%
1%
2%
H7
H8
H9
H10
H11
H12
H13
H14
H15
H16
H16
女性
男性
(5)飲酒程度別交通事故件数の割合
飲酒程度のうち「酒気帯び」とは、政令基準
値(平成14年5月以前は呼気1リットル中0.25mg、
平成14年6月以降は呼気1リットル中0.15mg)以
上をいい、「基準以下」とは、政令基準値未満
をいいます。
飲酒程度別では、平成12年と13年に「酒酔
い」「酒気帯び」が減少し、以後再び増加して
いるのがわかります。その一方で、平成13年に
は「検知不能」が大幅に増加しています(図8)
。
また、平成14年には「基準以下」が激減してい
ます。これは平成14年6月の飲酒運転厳罰化の
影響が大きかったと思われます。
女性と男性の比較では、女性の場合「酒酔
い・酒気帯び」の交通事故の割合が男性よりや
や低く、「検知不能」の割合が高くなっていま
す。女性は飲酒運転であっても、飲酒程度の軽
い事故が多いといえます。
図8 飲酒程度別交通事故件数の割合
(%)
100
90
80
70
60
50
40
30
20
10
0
8%
35%
8%
34%
7%
37%
7%
36%
6%
16%
38%
16%
28%
35%
18%
14%
18%
19%
10%
19%
50%
52%
50%
52%
60%
52%
45%
63%
66%
52%
41%
7%
6%
6%
5%
4%
4%
3%
4%
5%
4%
5%
H7
H8
H9
H10
H11
H12
H13
H14
H15
H16
H16
No.60 [女性運転者による交通事故]
検知不能
基準以下
酒気帯び
酒酔い
35%
女性
6
21%
男性
ITARDA INFORMATION
2-2 女性は車の使い方が男性と違うのか
(1)道路形状別交通事故件数の割合
道路形状別では、各項目とも同様な傾向を示
。
「交差点(大)(中)
(小)」
しています(図9)
と「交差点付近」で全体の約6割を占め、
「単路」
が全体の約4割を占めています。
「その他」とは、
踏切や一般交通の場所をいいます。これは件数
こそ少ないものの増加傾向にあります。
女性と男性の比較では、女性の場合「交差点
(小)」での割合が高く、「単路」での割合が低
くなっています。女性は道幅の狭い交差点で、
事故が多い傾向があることがわかります。
図9 道路形状別交通事故件数の割合
(%)
1%
1%
1%
2%
2%
2%
2%
2%
3%
3%
2%
100
その他
90
80
単路
38%
38%
38%
38%
38%
38%
39%
39%
40%
39%
8%
3%
8%
3%
8%
3%
9%
3%
9%
3%
9%
3%
8%
3%
8%
3%
8%
3%
8%
3%
27%
27%
27%
27%
27%
27%
26%
26%
26%
26%
43%
交差点付近
70
60
50
40
交差点(大)
交差点(中)
9%
4%
交差点(小)
25%
30
20
10
0
24%
23%
23%
22%
22%
22%
22%
22%
21%
21%
H7
H8
H9
H10
H11
H12
H13
H14
H15
H16
17%
H16
女性
男性
(2)当事者種別交通事故件数の割合
当事者種別では、この10年間で「軽乗用車」
が大幅に増加している一方で、「普通乗用車」、
「軽貨物車」、「原付」ともに減少しています
(図10)。女性が多く利用する軽乗用車での事
故件数が普通乗用車に迫る勢いをみせているの
が特徴です。
女性と男性の比較では、「軽乗用車」の事故
の割合が非常に高いのは前述のとおりですが、
「大型貨物車(政令大型を含む)
」
、
「貨物車(普
通、軽)」、「自動二輪車」の割合は低くなって
います。女性は大型(乗用車・貨物)や自動二
輪車をほとんど運転しないという傾向がわかり
ます。
図10 当事者種別交通事故件数の割合
(%)
6%
7%
6%
6%
6%
6%
6%
6%
5%
5%
4%
100
90
13%
12%
11%
80
2%
2%
2%
10%
2%
70
17%
18%
20%
21%
9%
2%
8%
2%
23%
25%
7%
2%
26%
7%
1%
28%
6%
1%
30%
6%
1%
31%
原付
9%
14%
9%
60
特殊車
軽貨物車
普通貨物
50
大型貨物車
40
30
自動二輪車
軽乗用車
60%
60%
60%
61%
60%
59%
59%
58%
57%
56%
57%
普通乗用車
20
大型乗用車
10
0
H7
H8
H9
H10
H11
H12
女性
H13
H14
H15
H16
H16
男性
[女性運転者による交通事故] No.60
7
(3)曜日別交通事故件数の割合
曜日別では、いずれの日の傾向にも目立った
変化がないことに気づきます(図11)
。
割合は女性も男性も十数%でほぼ同様ですが、
「土・日」は女性の割合がやや低くなっていま
す。女性は土・日より平日にやや多く運転する
傾向があることがわかります。
女性と男性の比較では、「月〜金」の事故の
図11 曜日別交通事故件数の割合
(%)
100
14%
13%
14%
13%
13%
14%
13%
13%
13%
13%
14%
16%
16%
16%
16%
16%
16%
16%
16%
16%
16%
16%
15%
15%
15%
15%
15%
15%
15%
15%
15%
15%
14%
15%
15%
15%
15%
15%
15%
15%
15%
15%
15%
14%
15%
15%
15%
15%
15%
15%
15%
16%
15%
15%
15%
16%
15%
15%
15%
15%
15%
15%
15%
15%
15%
15%
10%
10%
10%
11%
11%
10%
11%
10%
10%
10%
12%
H7
H8
H9
H10
H11
H12
H13
H14
H15
H16
H16
90
80
60
20
10
0
水
火
月
40
30
金
木
70
50
土
女性
日
男性
(4)居住地別交通事故件数の割合
居住地別では、全体の約95%を「居住して
いる都道府県内」が占めており、それが同様な
割合で推移しています(図12)
。
女性と男性の比較では、女性は「居住してい
る都道府県内」での事故の割合が高く、「居住
していない都道府県」で低くなっています。女
性は自宅周辺の比較的近距離での事故が多いこ
とが特徴です。
図12 居住地別交通事故件数の割合
(%)
4.4%
4.4%
4.5%
4.5%
4.5%
4.5%
4.4%
4.5%
4.4%
4.3%
12.2%
100
居住都道府県外
90
居住都道府県内
80
70
60
50
95.6%
95.6%
95.5%
95.5%
95.5%
H7
H8
H9
H10
H11
95.5%
95.6%
95.5%
95.6%
95.7%
H12
H13
H14
H15
H16
87.8%
40
30
20
10
0
女性
8
No.60 [女性運転者による交通事故]
H16
男性
ITARDA INFORMATION
(5)通行目的別交通事故件数の割合
通行目的別では、
「通勤通学」がやや減少し、
「その他」が増加しています。全体の5割を「飲
食買物」
、
「訪問送迎」が占めています(図13)
。
女性と男性の比較では、男性の「業務」が
25%であるのに対して、女性の「業務」は6%
と非常に低いことがわかります。女性は「飲食
買物」
、
「訪問送迎」の割合が高く、女性は、プ
ライベートでの事故が多いのが特徴です。「そ
の他」とは、遊戯・荷物運搬・受講・通院・帰
省等です。
図13 通行目的別交通事故件数の割合
(%)
100
90
80
13%
14%
14%
15%
16%
25%
26%
26%
26%
27%
17%
18%
19%
20%
21%
26%
26%
26%
26%
25%
17%
飲食買物
観光娯楽等
60
16%
29%
29%
28%
29%
28%
40
28%
28%
28%
28%
27%
8%
通勤通学
業務
14%
30
7%
6%
6%
6%
6%
6%
6%
6%
5%
5%
20
19%
19%
18%
17%
17%
17%
16%
16%
16%
16%
7%
7%
7%
7%
6%
6%
6%
6%
6%
6%
H7
H8
H9
H10
H11
H12
H13
H14
H15
H16
10
0
その他
訪問送迎
70
50
20%
女性
25%
H16
男性
(6)人的要因別交通事故件数の割合
女性と男性の比較では、「発見の遅れ」、「判
人的要因別では、この10年間で「発見の遅
れ」
、
「判断の誤り」ともにあまり変化はないの
ですが、
「操作上の誤り」がやや増加し、
「その
他」がやや減少しています(図14)
。
断の誤り」
、
「操作上の誤り」の割合が男女とも
ほぼ同程度であり、人的要因の面では男女差が
みられませんでした。男女とも事故の約7割が
「発見の遅れ」となっています。
図14 人的要因別交通事故件数の割合
(%)
100
2%
2%
1%
1%
1%
1%
6%
7%
7%
7%
7%
7%
8%
8%
8%
8%
8%
18%
18%
18%
18%
18%
18%
18%
18%
18%
18%
18%
90
80
その他
操作上の誤り
判断の誤り
70
発見の遅れ
60
50
40
73%
73%
74%
74%
74%
74%
74%
75%
74%
75%
74%
H7
H8
H9
H10
H11
H12
H13
H14
H15
H16
H16
30
20
10
0
女性
男性
[女性運転者による交通事故] No.60
9
3
Section
事故例の紹介
(1)事例1 出会い頭事故
A車(女性・30歳代・普通乗用車)は晴天の
午前7時頃、時速約20kmで進行中、前方の十
字交差点に一時停止標識があるのを認めた。そ
付)と衝突した。付近の道路には高さ1.1mの
ガードレールが設置されていたため、A側から
の見通しが非常に悪く、Aは衝突するまでBの
存在に気付いていなかった。Bは衝突後転倒し
た際にヘルメットが脱落して、路面から約2m
下の側溝まで転げ落ちる際に頭部に受傷したと
推定される。Bは頭蓋骨骨折等で死亡した。
のとき交差する道路の左右を見たが、進行車両
が見えなかっただけなのに、来ていないと思い
込み、一時停止することなく交差点に進入し、
左方から進行してきたB車(男性・30歳代・原
図15 事例1 出会い頭事故
B4
A4
B1
B2
B3
A3
A2
ガードレール
A1
(2)事例2 追突事故
(男性・70歳代・自転車)を認めた。その後A
は助手席上の物を取ろうとしたため脇見運転と
なり、危険認知も回避行動もないままBに衝突
した。Bは大脳損傷等で死亡した。
A車(女性・30歳代・軽乗用車)は晴天の午
前8時頃、時速50kmで直進中、100m前方の道
路左側の外側線付近を同方向に進行中のB 車
図16 事例2 追突事故
A4
A3
B2
B1
10 No.60
[女性運転者による交通事故]
A2
A1
ITARDA INFORMATION
(3)事例3 正面衝突事故
A車(女性・10歳代・原付)は晴天の午後7
時頃、幅員5mの往復1車線道路で、前照灯を下
向きにして時速30kmで走行していた。先行し
ていた車が左折の合図を出したので、その車を
追い抜こうと対向車線の安全を確認せずに右に
進路変更した。Aが右車線に進入して少し走行
した時、時速 60km で対向してきた B 車(男
性・20歳代・普通乗用)と正面衝突となった。
Aは骨盤骨折の重傷を負ったが、幸いにもフル
フェイス型ヘルメットを着用していたため頭部
への受傷はなかった。
図17 事例3 正面衝突事故
ガードレール
A3
B1
4
Section
A2
B2
A1
まとめ
最後に、表1に「女性事故の特徴」をまとめ
てみました。
この表は、
「天候別」
「昼夜別」などの項目ご
とに、「女性事故として件数の多いもの」、「男
性と比較して構成率の高いもの」
、
「増加の割合
が著しいもの」を表しました。
表1 女性事故の特徴
項目別
件数が多いもの
対男性で多いもの
増加が多いもの
天候別
晴天
曇
雪
昼夜別
昼
昼
事故類型別
出会い頭
出会い頭
追突
危険認知速度別
10km以下
10、20km以下
10km以下
飲酒程度別
酒気帯び
検知不能
検知不能
道路形状別
交差点
交差点(小)
その他
当事者種別
乗用車
軽乗用車
軽乗用車
金曜
曜日別
金曜
水、木曜
居住内外別
居住都道府県内
居住都道府県内
通行目的別
飲食買物
飲食買物
その他
人的要因別
発見の遅れ
発見の遅れ
操作上の誤り
[女性運転者による交通事故] No.60
11
女性事故の特徴としては
○昼間の市街地における小交差点での出会い頭事故が多い。
○20km/h以下の低速度領域での事故が多い。
○特に軽乗用車や普通乗用車での飲食買物、訪問送迎など私的目的が多い。
○土日より平日の事故がやや多い。
○人的要因では、発見の遅れが多いが、操作上の誤りが増加傾向にある。
○悪天候の運転がやや苦手。
以上のことから、女性が運転する際の注意点として(男性にもあてはまる点が多いですが)
、
○信号機のない交差点での安全確認は、
「さっき一度見たから」といって安心するのではなく、二度
でも三度でも確実に行い「安全運転イコール安全確認」という意識をもって運転しましょう。
○ハンドルを握ったら運転以外のことを考えないようにして、運転に集中しましょう。
○可能であれば、ベテランドライバーを助手席に乗せて、自分の運転の悪いクセを指摘してもらい、
練習を繰り返すことによって慣れることが大切でしょう。
○悪天候では極力運転を避けるように心掛け、やむを得ず運転する際には、安全確認を十分に行い
ましょう。
○他車(特に自動二輪車、原付、自転車)には、
「思いやり・譲り合い」の精神で接し、いつも気持
ちにゆとりのある運転をしましょう。
Institute for Traffic Accident Research and Data Analysis
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このパンフレットは、平成17年用年賀寄附金により作成しました。