気血津液学説 - 大阪医療技術学園専門学校

大阪医療技術学園専門学校
東洋医療技術教員養成学科
講義ノート
気血津液学説〔気〕(簡略解説)
奈良上眞
参考文献 呉敦序 主編:中医基礎理論,上海科学技術出版社,1995,中国上海.
気血津液
気血津液
人体の生命活動を維持する基本物質
気
途絶える事のない運動エネルギー・
極めて微細なエネルギー物質
血
血脈(血管内)を循環する赤い液体
津液
人体の正常な液体の総称
気 の 生 成 (気の主要な来源)
先天の精気
(先天の精・先天の気)
後天の精気
(後天の精・後天の気)
自然界の清気
水穀の精気
(穀気)
(水穀の精微物質)
父母の生殖により受け継いだ精
自然界の清気・水穀の精気
肺呼吸によるガス交換
飲食により摂取する栄養物質
気 の 生 成 と 臓 腑 の 関 係
肺は気を主る
肺呼吸により自然界の清気を吸入
(呼気により体内の濁気を排泄)
脾胃は気血
生化の源
摂食により栄養物質の供給
(胃で腐熟消化・脾で運化)
腎は
生気の源
腎は精気を貯蔵
腎が貯蔵する精気:先天の精気・後天の精気
先天の精気
+
後天の精気
‖
腎中の精気
先天の精気:人体の生命の基礎 後天の精気:自然界の清気と水穀の精気が源
・過剰な精気は腎に貯蔵
気の運動形式
気機(気の運動)
昇・降・出・入
出
入
昇
降
気の運動と臓腑関係
清陽
肝気:昇発 昇
肺気:粛降 降
脾気:昇清 昇
胃気:和降 降
肺気:宣発 出
腎気:納気 入
濁陰
気の運動形式
気機(気の運動)の規律
昇・降・出・入
気機の調暢:気の運動の平衡協調の生理状態 気機の失調:気の運動の平衡を失った病理状態
気機の不暢:気の運動の阻害
気滞:気の運動の阻害→停滞
気逆:気の上昇運動の過剰 気の不降:下降運動の障害
気陥:気の上昇不及・下降過剰
気脱:気の外出運動の過剰
気鬱・気結:気の外出運動の不及・内向運動の過剰
気閉:気結・気鬱の甚だしい状態 気の生理作用
推動作用
:
人体の血液循環・水液代謝
温煦作用
:
体温の恒常維持
防御作用
:
免疫抵抗力(発病を防ぐ抵抗力)
固摂作用
:
体内の液体物質の逸脱をコントロール
気化作用
:
新陳代謝
栄養作用
:
脾胃の消化吸収機能よる水穀の精微物質
気の生理作用
推動作用
:
人体の成長発育・
各臓腑経絡の生理機能の促進
人体の血液の生成・循環の促進
津液の生成・循環・排泄の促進
気の循環→血の循環
気の循環→津液の循環
気の生理作用
温煦作用
:
気の温煦作用の維持
体温の恒常維持
各臓腑経絡の生理活動の促進
血・津液の循環促進
人体の気=人体の陽気
陽気→気化→生熱
陽気過多→生熱・多
陽気不足→生熱・少
気が有余→火熱
気が不足→寒涼
気の生理作用
防御作用
:
免疫抵抗力(発病を防ぐ抵抗力)
気の防御作用
外邪の侵入を防御・外邪を駆逐
気の防御作用が正常
邪気が侵入し難い
発病し
難い
気の防御作用が減弱
邪気が侵入し易い
発病し
易い
気の生理作用
固摂作用
血液の固摂
:
体内の液体物質の逸脱をコントロール
血液の血脈外への逸脱防止→血脈の正常な循環
汗液・尿液・唾液・胃液などの固摂
分泌量や排泄量の制御 体液の逸脱防止
精液の固摂
早泄・遺精の防止
気の生理作用
固摂作用
:
体内の液体物質の逸脱をコントロール
気の固摂機能の減弱
体内の液体物質の逸脱
血
気不摂血
津液
気不摂津
自汗・多尿・小便失禁
流涎・泄瀉
精
気不固精
遺精・滑精・早泄
気
気虚・衝任不固
各種出血
滑胎
気の生理作用
気化作用
:
新陳代謝
精・気・血・津液の新陳代謝・相互転化
飲食物の消化吸収
汗液・尿液の排泄
化と変
:
化:物之生
変:物之極
気の生理作用
栄養作用
:
食物の摂取
脾胃の消化吸収機能よる水穀の精微物質
脾胃の消化吸収
気
(宗気・榮気・衛気)
榮気+津液
水穀の精微物質
血
気の分類
元気
宗気
(別名:原気)
(別名:上気海・膻中)
榮気(營気)
衛気
(別名:榮血・榮陰)
(別名:衛陽)
臓腑の気
経絡の気
元 気
1.基本概念
別名:原気
人体の最も基本的な、最も重要な根源的エネルギー
腎の気:元陰の気・元陽の気
2.生成:腎精より化生(代謝)
腎精により化生(代謝)する腎気を総称して「腎中の精気」という。
腎中の精気;先天の精気を基礎にし、後天の水穀の精気で補う。
3.分布:三焦を循環
元気;腎→三焦を循環→全身(五臓六腑・皮膚(腠理))
元 気
4.効能
1)元気:人体の成長発育を推動
各臓腑・経絡・組織器官の生理機能の調節
人体の生命活動の原動力
2)元気の人体の成長発育を推動:
人体の出生→成長→壮年→老年→死の自然の規律と
腎精の盛衰と密接な関係がある。
例;青年期は腎精が充実…筋骨が壮健・生殖能力が旺盛
老年期は腎精が衰退…筋骨の衰退・生殖能力の衰退
元 気
4.効能
3)各臓腑・経絡・組織器官の生理機能の調節:
命門;元気の根源
元気;命門の火・命門の水
命門の火;五臓の陽気→臓腑の温煦・推動機能の促進。
命門の水;五臓の陰気→臓腑の滋養と潤沢を強め、内熱を抑制する。
命門の水と命門の火と陰陽平衡;気化作用の調節・体温の恒常維持・
臓腑機能の調節→健康の確保。
宗 気
1.基本概念
別名:上気海・膻中
2.生成:
肺のガス交換(吸気)による清気
脾胃の消化吸収機能による水穀の精気
3.分布:基本的には全身へ分布。
宗気;胸中に集まる→心肺
肺→咽喉・気道
下注→丹田(下気海)→下肢
心→心臓→血脈→血の循環 胸中で結合→宗気
宗 気
4.効能
1)気道を走行・呼吸を司る
言語・音声・呼吸の強弱と宗気の盛衰と関係がある。
臨床所見;発音や呼吸が微弱→肺気不足・(宗気不足)
2)心脈を貫き→気血の循環
宗気;心脈の中に注入→心臓の拍動を助ける→血液循環を促進。
気血の循環と宗気の盛衰は関係がある。
臨床所見;①虚裏の拍動(左乳下の動悸・心尖拍動)・脈象の状態→
→宗気の旺盛・衰弱。
②宗気不足→血瘀。
榮
気 (營 気)
1.基本概念
1)別名:榮血・榮陰
2)血脈中に栄養を含有する気→榮気。
3)榮気は血脈中を循環し、血に化生(代謝)→榮血。
4)榮気と衛気は相対する表現。
榮気は血脈内を循環;「内」は陰に属す→榮陰。
衛気は血脈外を循環;「外」は陽に属す→衛陽。
2.生成:
脾胃の消化吸収機能による水穀の精微物質から化生(代謝)。
榮
気 (營 気)
3.分布:十二経絡・任脈・督脈→全身・五臓六腑
1)十二経脈の循環:中焦(脾胃)→太陰肺経→陽明大腸経→陽明胃経→
→太陰脾経→少陰心経→太陽小腸経→太陽膀胱経→少陰腎経→
→厥陰心包経→少陽三焦経→少陽胆経→厥陰肝経→太陰肺経→‥‥‥
2)任脈・督脈の循環:厥陰肝経→額部→頭頂部→項・背部を下降
→尾骨 督脈を循環
缺盆→太陰肺経
生殖器→腹部→任脈を循環
3)人体の循環(肺経~肝経);50周/日(1周/28分48秒)
4.効能:
1)血液の化生;榮気が血脈中に注入し、血液の組成成分のひとつと成す。
2)全身への栄養;榮気が経脈の流注の循環に伴って全身へ栄養。
衛 気 1.基本概念
1)衛;保護の意味。
2)衛気;血脈外を循環する気。
3)衛気と榮気は相対する表現。
衛気は血脈外を循環;「外」は陽に属す→衛陽。
榮気は血脈内を循環;「内」は陰に属す→榮陰。
4)衛気の性質;活動性が強い・流動性が速く滑らか。
2.生成:
脾胃の消化吸収機能による水穀の精魅物質により化生(代謝)。
3.分布:
①体表を循環。
②衛気は血脈外を循環 ・ 榮気は血脈内を循環。
衛 気 4.効能:
1)温煦作用;衛気の温煦→人体の体温恒常維持
→人体の正常な生命活動の重要な条件のひとつ。
2)調節作用;衛気は汗孔の開閉を司る→
→汗液の排泄の調節(発汗の調節)→体温の恒常維持。
3)防御作用;衛気は皮膚・腠理を温煦・栄養
→腠理(汗孔)の開閉・皮膚の柔和潤沢 →外邪の進入を抵抗。
衛 気
4.効能:
4)衛気の循環と昼夜;
ヒトは覚醒時…衛気は体表を循環。
ヒトは睡眠時…衛気は体内(五臓)を循環。
衛気は体表に稀少→外邪の抵抗力が低下→風寒の邪を受ける→感冒。
5)衛気の不足;
外邪に対する防衛機能の低下・
病後の快復が悪い・体温の低下傾向・腠理(汗孔)の開閉の制御不能→自汗。
6)衛気の循環異常;
衛気が陽分(陽の部位)の循環時間が長い→睡眠時間が少ない。
衛気が陰分(陰の部位)の循環時間が長い→睡眠時間が多い。
臓腑の気 腎中の精気→(化生)→元気→(五臓に分布)→五臓六腑。
五臓 (陰気)→五臓の陰→五臓の津液と血液の化生(代謝)の促進。
五臓の滋養潤沢と内熱の抑制。
(陽気)→五臓の陽→臓腑の気の代謝速度の促進。
五臓の活動と温煦の促進。
その他の気の概念
邪気:致病の六淫(風邪・寒邪・湿邪・熱邪・(暑邪)・燥邪・火邪)
正気:人体の生理機能と抵抗能力。
四気:漢方薬の寒・熱・温・涼。
その他にも気候や効能、性質など多くの意味がある。
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講義ノート
気血津液学説〔血〕(簡略解説)
奈良上眞
参考文献 呉敦序 主編:中医基礎理論,上海科学技術出版社,1995,中国上海.
血 の基本概念
血脈中を循環→全身への栄養と滋潤
血脈:血液循環の通路(別名;血府)
血液(血):血脈に於いて全身へ循環→
生命活動の為の栄養物質の供給。
出血:血脈外へ逸脱(「離経の血」)
血 の生成
水穀の精微は血液の基本物質:精→気→血
『黄帝内経霊枢・決気』:
「中焦受気取汁、変化而赤、是謂血.」
気→榮気(水穀の精微→気)
汁→津液
榮気+津液→血液(血)
脾胃:気血生化の源.
病理;長期に渡る食欲不振・脾胃の運化機能の低下
→血液(血)の生成不足→血虚の病理状態。
血 の生成と臓腑の関係(1)
脾胃
心
生理:脾胃は後天の本・気血生化の源。
病理:中焦(脾胃)の虚弱→消化吸収機能の低下
→生化の源の不足→血虚。
生理:心主血脈(心は血脈を主る)。
① 栄養物質の循環→全身・臓腑へ栄養の供給
→正常な機能活動の維持→血液(血)生成の促進。
② 水穀の精微物質→脾の昇清作用→心肺へ
→肺の吐故納新の後→心脈へ注き込まれる
→赤く色変化→血液(血)に変成。
文献:『侶山堂類辨』:「血乃中焦之汁、流溢於中
以為精、奉心化赤而為血」
( 心は血液の生成に参与) … ⇩
『黄帝内経素問・陰陽応象大論』:「心生血」
血 の生成と臓腑の関係(2)
肝
腎
『黄帝内経素問・六節藏象論』:
「肝……其充在筋、以生血気。」
生理:肝は五行中の木に属す→春日は生発の気
→絶えまない気の発生→脾と心の生血機能を助ける
生理:腎による血液(血)の生成の作用
① 腎中の精気は元気を化生
→脾胃の水穀の精微を化生する作用を促進
→奉心化赤為血。
② 腎藏精(腎は精を藏す)
→精と血液(血)は相互に変化する
→血液(血)は精を養う→精は血液(血)に変化する
→「精血同源」。
血 の循環と臓腑の関係(1)
生理:血液が正常に循環する条件
① 血液(血)の含有量を充分に満たす。
② 脈管(血脈)内をスムーズに循環。
③ 全身の各臓腑の正常な生理機能の促進。
心
心主血脈(心は血脈を主る)
生理: ① 心は血液循環の推進力(血脈は血液循環の通路・
血液(血)は心気の推動のもとで血脈中を循環)
② 心臓と血脈、血液(血)でひとつの相対的な
独立した系統を構成。
③ 血液(血)は心気の推動に依存し、
血脈を過て全身へ循環し、滋養・濡潤する。 血 の循環と臓腑の関係(2)
肺
脾
肺朝百脈(肺は百脈を朝ず)
生理:心気の推動作用は血液(血)の循環の基本動力
→ 血液(血)の循環は気の推動作用に依存
→ 肺主一身之気(肺は一身の気を主る)
・肺司呼吸(肺は呼吸を司る)
→ 全身の気機の調節
→ 心を助ける→血液(血)の循環の推動と調節。
脾主統血(脾は統血を主る)
生理:五臓六腑の血液(血)は脾気の統制・固摂作用に依存
→脾気が健全、気血が旺盛→気の固摂作用が
健全→血液(血)の血脈外への逸脱を防ぐ。
病理:脾気の減弱、気血の不足→気の固摂作用の障害
→血液(血)が血脈外へ逸脱→各種の出血。
血 の循環と臓腑の関係(3)
肝
肝主藏血(肝は藏血を主る)
生理:肝は血液(血)の貯蔵と血液量の調節の機能を備える
① 肝の疏泄機能→気機が調暢(伸びやか)→
→血液(血)の循環の調暢(伸びやか) 。
② 肝藏血の機能→血液(血)の不足を防止する作用。
血液(血)の正常な循環の条件:
① 推動力→血液(血)の循環の動力。
② 固摂力→血液(血)の逸脱を防止。
(①と②の協調平衡を維持→血液(血)の正常な循環)
病理:① 推動力の減退→血液(血)の循環が緩慢→血瘀。
② 固摂力の減退→血液(血)の逸脱→出血。
血 の生理機能(1)
全身の臓腑組織への滋養・濡潤:
① 血盛(血量の充足) →形盛(身体が健全)。
血衰(血量の不足) →形萎(身体が衰弱)。
② 血液(血)の全身への循環→全身の各臓腑組織へ栄養の供給。
文献:『難経・二十二難』:「血主濡之」
③ 全身(内臓・五官・九竅・四肢・百骸)へ滋養・濡潤→正常な生理機能。
例;血液(血)の作用→正常な嗅覚・視覚・聴覚・発声など。
文献:『黄帝内経素門・五臓生成篇』:
「肝受血而能視、足受血而能歩、
掌受血而能握、指受血而能摂」
血 の生理機能(2)
全身の臓腑組織への滋養・濡潤:
生理;血液(血)の滋潤・濡潤→顔面の紅色潤沢・肌肉の
豊満壮実・皮膚の潤い。
病理;血液(血)の滋養・濡潤作用の減弱→臓腑の生理機能
の低下。
・顔面不華や萎黄色・皮膚乾燥・肢体の麻痺
・運動機能の低下。
文献:『景岳全書・血証』:「故凡為七竅之霊、為四肢之用、
為筋骨之和柔、為肌肉之豊盛、以至滋臓腑、
安神魂、潤顔色、充榮衛、津液得以通行、
二陰得以調暢、凡形質所在、無非血之用也。」
血 の生理機能(3)
神志の活動
血虚や血液(血)の循環障害→神志の異常所見の出現。
① 心血虚・肝血虚→驚悸・不眠・多夢など精神的不安。 出血(失血)→煩躁・恍惚・昏迷など精神的不安。
② 血と神志活動は密接な関係がある。 文献:『黄帝内経霊枢・榮衛生会』:「血者、神気也。」
『黄帝内経霊枢・ 平人絶谷篇』:
「血脈和利、精神乃居。」
血液(血)の供給が充足→神志活動も正常。
大阪医療技術学園専門学校
東洋医療技術教員養成学科
講義ノート
気血津液学説〔津液〕(簡略解説)
奈良上眞
参考文献 呉敦序 主編:中医基礎理論,上海科学技術出版社,1995,中国上海.
津 液 の 基 本 概 念 (1)
津液:人体の一切の正常な水液(体液)
各臓腑組織の内在する体液と正常な分泌液
例;胃液・腸液・涕(鼻水)・泪(涙)・唾。
血液以外の体内の正常な体液
津液の分布部位:臓腑・器官・組織など全身。
津液の作用:① 滋潤濡養作用。 ② 津能載気;全身の気は津液に依存して循環。
③ 榮気+津液→血。(津液は血を化生する物質のひとつ)
津液:人体の生命活動を維持する基本物質。
津 液 の 基 本 概 念 (2)
性質
流動性
分布部位
生理作用
滋潤作用
濡養作用
津
稀薄
大
体表皮膚・肌肉
孔竅・血脈へ滲入
液
粘性
小
関節・臓腑・脳・髄
津液の生成:水穀の飲食が源→脾胃の運化機能に依存。
津と液は循環および代謝過程中に相互に補充転化。
津液の病理:津と液は病理過程中に相互に影響。
① 津の病理状態…「傷津」
② 液の病理状態…「脱液」
津 液 の 生 成 (1)
津液の代謝過程の概要
『黄帝内経素問・ 経脈別論』:「飲入於胃、游溢精気、上輸於脾、
脾気散精、上帰於肺、通調水道、下輸膀胱、水精四布、五経併行」
脾胃
生理:脾胃は後天の本・気血生化の源。
病理:中焦(脾胃)の虚弱→消化吸収機能の低下
→生化の源の不足→血虚。
脾胃
運化
生理:1)胃は受納腐熟を主る→游溢する精気に依存
→水穀の精微物質を吸収。
2)脾は運化を主る→脾気の昇清に依存
→胃腸で吸収した穀気と津液は肺へ上輸→全身へ輸布。
小腸
主液
生理:1)小腸は清濁を泌別→飲食物の大部分の栄養物質は水分を
吸収→脾へ上輸→全身へ輸布。
2)水液の代謝産物→腎→膀胱。 3)糟粕→大腸へ下輸。
津 液 の 生 成 (2)
大腸
主津
生理:1)大腸は小腸より下注した飲食物の残渣と余剰した水分を受ける
→その中の水液を吸収する→食物残渣を糞便に形成
→体外へ排泄。
胃・小腸
大腸
生理:1)胃・小腸・大腸で吸収した水穀の精微(津液)→
→脾で上輸(脾の昇清作用)→「脾気の散精」作用→
→全身へ布散。
津 液 の 輸 布 (1)
津液の輸布の依存する臓腑(生理効能): 脾 ・ 肺 ・ 腎 ・ 肝
脾(運化作用)・肺(宣発作用・水道通調作用)・腎(水を主る)・
肝(疏泄作用)
脾気
散精
生理:1)脾胃は水穀の精微を主る→転輸作用→
→津液が肺へ上輸→肺の宣発・粛降作用→津液を全身へ輸布
→臓腑・形体・諸竅へ潅漑。
2)脾胃は水穀の精微を主る→転輸作用→
→直接、津液は四周へ布散し全身へ至る。
脾は「潅漑四旁」の効能がある。
肺主
行水
生理:1)肺は行水を主る(肺主行水)・水道を通調する(通調水道)・
水の上源(水之上源)。
2)肺は脾の転輸による津液を受けた後→肺の宣発作用→
→津液を輸布→人体上部と体表へ至る。
3)肺の粛降作用→津液を輸布→腎と膀胱および人体下部に至る。
津 液 の 輸 布 (2)
腎主
津液
『黄帝内経素問・ 逆調論』:「腎者水臓、主津液」
肝主
疏泄
生理:1)肝は疏泄を主る(肝主疏泄)→気機を調暢→気行則津行
→津液の輸布環流の促進。
三焦
決瀆
生理:1)三焦は「決瀆之官」を為す。
これは、体内に流注、輸布する津液の通道である。
決瀆(けっとく);溝を開いて水を通す、水利を通ずる意味。
生理:1)腎中精気の蒸騰気化作用:胃の「游溢精気」・脾の散精・
肺の通調水道・小腸の清濁分別の動力・津液輸布の推動。
2)肺より下輸した腎の津液→腎の気化作用→
→「清」は蒸騰→三焦を経過→肺へ上輸→全身へ布散。
3)肺より下輸した腎の津液→腎の気化作用→
→「濁」は尿液と化す→膀胱へ注入。
(漢方用語大辞典,創医会学術部主編,燎原.)
決瀆之官;①三焦を指す。 ②閉塞を開通する機能を指す。
(漢方用語大辞典,創医会学術部主編,燎原.)
津 液 の 排 泄 (1)
津液の排泄と津液の輸布は主に肺・脾・腎などの臓腑の総合作用に依存する。
:肺(宣発作用・水道通調作用)・脾(運化作用)・腎(水を主る)
汗・
呼気
尿
糞便
生理:1)肺気の宣発作用→津液を体表皮毛へ輸布→陽気を蒸騰させ
汗液を形成→汗孔より体外へ排泄。
2)肺は呼吸を主る;肺は呼気時に津液(水分)を排泄する。
生理:1)尿液は津液代謝の最終産物である。その形成は肺・脾・腎等の
臓腑と密接な関わりで形成される。但し、腎の役割が最も多い。
2)腎の気化作用と膀胱の気化作用は相互に協力→尿液を形成→
体外へ排泄する。
3)腎は人体の津液代謝のバランスを維持する要の作用である。
4)水は陰を為し、其の本は腎にある。
生理:1)大腸から排泄する水穀の糟粕で形成される糞便と共に僅かな
津液が排泄させる。 病理:1)腹瀉時、大便中に水分を多く含み、大量の津液を排泄
→津液を損傷
津 液 の 効 能 (1)
滋潤と
濡養
作用
生理:1)津液は豊富な栄養物質を含有。
2)津液は液体物質であり、滋潤作用や濡養作用を有する。
3)津の性質が稀薄→滋潤作用が顕著。
液の性質が粘性→栄養作用が顕著。
事例:1)津液が肌表に布散→皮膚毛髪を滋養。
2)津液が孔竅に流注→眼・鼻・口などを滋養・保護。
3)津液が臓腑に灌注→内臓を滋養。
4)津液が骨髄に滲入→骨髄・脳髄・脊髄を滋養。
5)津液が関節に流注→関節の屈曲伸展の運動を潤滑。
血液へ
化生
生理:1)津液は孫絡を経て、血脈へ滲入→
→津液は化生して血液の基本成分のひとつと成る→
→濡養と血脈を滑利する作用がある。
文献:『黄帝内経霊枢・癰疽』:「中焦出気如露、上注溪谷、而滲孫脈、
津液和調、変化而赤為血」