応用物性工学 講義ノート 2014.11.18 第 4 回 固体中の電子(教科書 p. 86-128) 【目標】 ① エネルギーバンドの成り立ちが説明できる ② ブリルアンゾーンが説明できる ③ フェルミ・エネルギーが説明できる ④ 状態密度が説明できる ⑤ 有効質量が説明できる 温度が上がると kBT 分だけ電子が熱励起される 6.1 水素原子中の電子のエネルギー 水素原子の電子の全エネルギー En 𝐸𝑛 = − 𝑚𝑞 4 1 13.6 = − 2 [𝑒𝑉] 2 2 2ℏ 𝑛 𝑛 6.2 水素分子中の電子のエネルギー 原子核間距離 r0 において、1s 軌道にスピ ンが反平行に入るとき、電子の全エネル 分子軌道法の描像 ギーは極小となり、安定になる 原子数 N の場合は、N 本に分裂する 応用物性工学 講義ノート 6.3 結晶中の電子のエネルギー 体積 1 cm3 の結晶について考える。原子数 N は~1022 個。 6.4 結晶中のポテンシャル・エネルギー 𝑨 𝒁𝒒𝟐 𝑽 = − 𝒓 (𝑨 ≡ 𝟒𝝅𝜺 ) 𝟎 𝒓 = ∞ → 𝑽 = 𝟎 (真空準位) 真空中に置かれている水素原子核を考える 応用物性工学 講義ノート 同様に真空中に置かれた Na 原子 1 個について考えると、 結晶内部ではポテンシャル間相互作用によって変形が起こる。このとき形成されるポテンシャ ルの山よりも価電子(3s)の全エネルギーのほうが高い。→3s 軌道からなるエネルギーバンド中 を自由に動き回る。 応用物性工学 講義ノート 6.5 固体中の自由電子 (箱型ポテンシャル) 粒子性 運動エネルギー 運動量 𝐸= 𝐸= 𝑚𝑣 2 2 波動性 𝐸 = ℎ𝜈 = ℏ𝜔 (𝜔 = 2𝜋𝜈) 𝑝 = 𝑚𝑣 𝑝= ℎ 2𝜋 = ℏ𝑘 (𝑘 = ) 𝜆 𝜆 ℏ2 2 𝑘 2𝑚 自由電子の E-k 曲線 6.7 ブリュアンゾーン模型 k についての 3 次元空間中で、k の値をとることが許されている領域 ブリルアンゾーンの端で起こること 自由電子の運動が結晶格子中でのブラッグ回折(垂直入射・反射)により妨げられる。 応用物性工学 講義ノート 1 次元格子のブリルアンゾーン 𝑘𝑥 𝑛𝑥 = 𝜋 2 (𝑛 ) (𝑛𝑥 = 0, ±1, ±2 ⋅⋅⋅) 𝑎 𝑥 2 次元格子のブリルアンゾーン 𝑘𝑥 𝑛 𝑥 + 𝑘𝑦 𝑛𝑦 = 𝜋 2 (𝑛 + 𝑛𝑦2 ) (𝑛𝑥 , 𝑛𝑦 = 0, ±1, ±2 ⋅⋅⋅) 𝑎 𝑥 3 次元格子のブリュアンゾーン 𝑘𝑥 𝑛𝑥 + 𝑘𝑦 𝑛𝑦 + 𝑘𝑧 𝑛𝑧 = 𝜋 2 (𝑛 + 𝑛𝑦2 + 𝑛𝑧2 ) (𝑛𝑥 , 𝑛𝑦 , 𝑛𝑧 = 0, ±1, ±2 ⋅⋅⋅) 𝑎 𝑥 応用物性工学 講義ノート 温度が上がると kBT 分だけ電子が熱励起される フェルミ・エネルギー 電子の存在確率 1/2 のエネルギー フェルミ-ディラック分布関数 f (E) 絶対温度 T でエネルギー準位 E を電子 が占める確率 𝑓(𝐸) = 1 𝐸−𝜇 exp ( )+1 𝑘B 𝑇 μ:化学ポテンシャル T=0 K のμ=EF (フェルミ・エネルギー) T>0 K でもμ≅EF なので、 𝑓(𝐸) = 1 𝐸−𝐸F )+1 𝑘B 𝑇 T=0 exp( ⇒ EF は電子の存在確率 1/2 のエネルギー T>0 𝐸F = ℏ2 𝑘F2 2𝑚 kF:フェルミ波数 半径 kF の球 ⇒フェルミ球 フェルミ球の表面 ⇒フェルミ面 状態密度 結晶の単位体積あたり、単位エネルギーあたりの量子状態の数 格子定数 L の立方体の箱(単純立方格子)を考える。 体積 V=L3 𝜋 𝐿 第 1 ブリュアンゾーンは − ≤ 𝑘 ≤ 𝜋 𝐿 なので、三次元 k 空間に 2π おける 1 辺の長さ 2π/L の箱 ( L )3 にひとつの状態がある。 L3 V ⇒ この k 空間単位体積中の状態数は (8π3 ) = 8π3 応用物性工学 講義ノート フェルミ球内に許される k 点の数 𝑉 4𝜋 3 𝑘𝐹3 𝑘 = 𝑉 𝐹 8𝜋 3 3 6𝜋 2 フェルミ球内に量子状態数が N 個存在するとき、k 点数にスピン自由度(↑↓)2 をかけて、 𝑁=2 𝑘𝐹3 𝑘𝐹3 𝑉 = 𝑉 6𝜋 2 3𝜋 2 単位体積あたりの電子数 n(電子密度)は 𝑛= 𝑁 𝑘𝐹3 = 2 𝑉 3𝜋 となり、フェルミ波数 kF は、 1 𝑘𝐹 = (3𝜋 2 𝑛)3 [cm-1] また、フェルミ速度 vF は、 𝑣𝐹 = ℏ𝑘F = 1.157 k F [cm/s] 𝑚 フェルミエネルギーEF は、 𝐸F = 𝑚𝑣F2 = 0.284 × 10−15 𝑣F2 [eV] 2 フェルミ温度 TF は、 𝑇F = 𝐸F = 1.16 × 104 𝐸F [𝐾] 𝑘B エネルギーE 以下の状態数を N(E)とすると、 𝑁(𝐸) = 𝑉 3 𝑉 2𝑚 3/2 3/2 𝑘 = ( ) 𝐸 3𝜋 2 3𝜋 2 ℏ2 状態密度 D(E)は、エネルギーE+dE 間の状態数なので、N(E)を E で微分して 𝐷(𝐸) = 𝑑𝑁(𝐸) 𝑉 (2𝑚)3/2 √𝐸 = 𝑑𝐸 2𝜋 2 ℏ3 応用物性工学 講義ノート 電子数密度 n が既知である場合(例:Na 2.65×1022 cm-3 @5 K) フェルミ波数 kF = 9.22×107 cm-1 フェルミ速度 vF = 1.07×108 cm/s フェルミエネルギーEF = 3.23 eV フェルミ温度 TF = 3.75×104 K 有効質量 自由電子のエネルギーは ℏ2 2 𝑘 で表わされる 2𝑚 結晶中の電子のエネルギーを、k=0 近くで表わすと、 𝐸(𝑘) = ℏ2 2 𝑘 2𝑚∗ ここで、m*は有効質量(実効質量、バンド質量)と呼ぶ。
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