皮膚がんは予防できるの? 岡山医療センター 皮膚科 安井 陽子 本日のお話 皮膚がんの原因 紫外線について 紫外線と皮膚がん 紫外線以外の皮膚がんの原因 早期に発見するために 皮膚がんの原因 皮膚がんの原因 紫外線 慢性ヒ素中毒 放射線(慢性放射線皮膚炎) 長期にわたる皮膚病 重度のやけどやけが ヒト乳頭腫ウイルス(イボのウイルス) ・・・など 皮膚がんの原因 紫外線 慢性ヒ素中毒 放射線(慢性放射線皮膚炎) 長期にわたる皮膚病 重度のやけどやけが ヒト乳頭腫ウイルス(イボのウイルス) ・・・など 紫外線について 紫外線とは? オゾン層 で吸収 ・地表に到達する太陽光線全体のうち、 UVBが0.5%、UVAが6.3%、可視光線が38.9%、赤外線が54.3% を占める。 地表に届く紫外線に影響する因子 ①オゾン層 ➡地上約25kmを中心 に、15~35kmの成層 圏に分布し、太陽光 線のうち、UVCのすべてとUVBの一部を吸 収している。 ➡日本上空のオゾン量は南へ行くほど少なく、 春より秋に減少する。 地表に届く紫外線に影響する因子 ②季節と天候 ➡紫外線量は、7~8 月にピークを持ち、 12~1月が最低値を 示す。 理論上、夏至が最も紫外線量が多くなるはずだ が、梅雨の影響で6月は少し減少する。 また、1日のうちでは、正午を挟んだ2時間の間に、 1日の紫外線量の約60%が地表に届く。 紫外線と皮膚① UVA(長波長紫外線:320~400nm) → 皮膚に与える作用は弱いが、地表 に到達する太陽光線中に多量に含 まれている。 UVB(中波長紫外線:290~320nm) → 皮膚に対する作用が強い。 hicee.jp 武田薬品 ホームページより引用改変 紫外線と皮膚② UVA(長波長紫外線:320~400nm) → ・光アレルギー(薬剤性光線過敏症) UVB(中波長紫外線:290~320nm) → ・ビタミンD3合成 ・光老化(シミ、しわ) ・日光皮膚炎 ・免疫抑制 ・光発癌 hicee.jp 武田薬品 ホームページより引用改変 紫外線の有益性 ビタミンD3合成 ➡紫外線(UVB)により、皮 膚でビタミンD3合成の調 節をしており、さらに肝臓・ 腎臓での代謝を経て、腸 管からのカルシウムの吸 収を促進している。 ※しかし、日光を長時間浴 び過ぎても、ビタミンD3は増えない!! 「RICHBONE」 豊かな骨推進委員会 HPより 紫外線による皮膚障害 光老化 ➡ 長年にわたり日光曝露を受けた皮膚にみられる。 顔、手背に、小色素斑や脂漏性角化症(老人性いぼ) が次々と発生する。同時に、しわも目立つようになる。 紫外線による皮膚障害 光老化 ➡ 長年にわたり日光曝露を受けた皮膚にみられる。 顔、手背に、小色素斑や脂漏性角化症(老人性いぼ) が次々と発生する。同時に、しわも目立つようになる。 太陽光線の中でも特にUVBは、皮膚の細胞のDNAを 傷つける作用が強い。皮膚の細胞は傷を自動的に修 復する機能を持っているが、反復して傷つけられるうち に、未修復となるDNAが増え、光老化が起こる。 紫外線による皮膚障害 光老化(シミ) ➡ 紫外線の刺激により、色素細胞で はメラニン産生が更新するだけでなく、 色素細胞数も増加する。 このため、既存のシミは色調が濃くな り、顔や手背など、常に紫外線にさらさ れている皮膚には、新たなシミが生じ る。 紫外線による皮膚障害 光老化(しわ) ➡ 紫外線に曝露された皮膚では、真皮のコラーゲン線 維の断裂が起きる。若い間は、線維が切断されても、新 しく合成されていくが、老化に伴い合成能が低下し、しわ が生じる。 紫外線による皮膚障害 光線性皮膚障害=日焼け ①サンバーン ➡UVBが真皮まで達した結果、毛細血管が炎症反応と して充血を起こし、皮膚が真っ赤になったり、水ぶくれ ができたりする。 ②サンタン ➡UVA照射を受けた皮膚の細胞が、色素細胞でのメラ ニンの産生と色素細胞の数の増加を促し、皮膚が浅 黒く変色する。 紫外線による皮膚障害 光免疫抑制 ➡ UVBに照射されることで、皮膚に存在する免疫担 当細胞が影響を受け、皮膚での免疫力が落ちる。 このため、急性障害としてはウイルス感染症が起こっ たり、慢性障害として皮膚がんが発症することがある。 紫外線と皮膚がん 皮膚がんと紫外線 頻度の高い3大皮膚がん ①基底細胞がん ②有棘細胞がん ③悪性黒色腫(ほくろのがん) ➡発生の一因として『紫外線』が考えられている。 紫外線による皮膚がん発生モデル 皮膚 DNA損傷 遺伝子変異 ・がん抑制遺伝子の不活化 ・がん遺伝子活性化 免疫抑制 皮膚がん 紫外線による皮膚がんの発生 ~がん抑制遺伝子の不活化・がん遺伝子の活性化~ UVB 皮膚の細胞 がん抑制遺伝子 がん細胞 の 増殖 がん遺伝子 紫外線による皮膚がんの発生 ~免疫抑制作用①~ UVB 皮膚の細胞 IL-10 プロスタグランジンE2 免疫抑制 がん細胞 の 増殖 紫外線による皮膚がんの発生 ~免疫抑制作用②~ UVB 皮膚の免疫担当細胞 免疫抑制 がん細胞 の 増殖 皮膚がん予防のポイント① 太陽光線に含まれる紫外線を上手 に防御することが最も重要です!! 紫外線以外の 皮膚がんの原因 頻度の高い3大皮膚がん ①基底細胞がん ②有棘細胞がん ③悪性黒色腫(ほくろのがん) ①基底細胞がんの原因 紫外線 外傷 放射線(慢性放射線皮膚炎) 瘢痕(傷やけがのあと) ヒ素 (慢性ヒ素中毒) ①基底細胞がんの原因 紫外線 外傷 放射線(慢性放射線皮膚炎) 瘢痕(傷やけがのあと) ヒ素 (慢性ヒ素中毒) 慢性放射線皮膚炎 【発生原因】 少量の放射線が長期にわた って反復照射された部位に 生じる。 【症状】 照射ご数週~数か月後より、 ゆっくりと薄いかさぶたができたり、皮膚が薄くなったり、 脱毛が起こる。数十年を経て、皮膚の委縮や色素沈着・ 脱失が起こる。 数年~数十年後に、皮膚がんが発生することがある。 ①基底細胞がんの原因 紫外線 外傷 放射線(慢性放射線皮膚炎) 瘢痕(傷やけがのあと) ヒ素 (慢性ヒ素中毒) 慢性ヒ素中毒 長期にわたって、経口、経気道的に比較的少量のヒ素化合 物にさらされる場合に起こる慢性中毒症。 全身の皮膚に色素沈着がおこるとともに、皮膚が白くなる 脱色素斑も合併する。手のひらや足の裏などの皮膚には、 角質が増えてたこ状になる。 慢性ヒ素中毒 長期にわたって、経口、経気道的に比較的少量のヒ素化合 物にさらされる場合に起こる慢性中毒症。 全身の皮膚に色素沈着がおこるとともに、皮膚が白くなる 脱色素斑も合併する。手のひらや足の裏などの皮膚には、 角質が増えてたこ状になる。 長期にわたってヒ素にさらされたあとには、皮膚がんも発生 する。井戸水の経口的曝露による一般住民の慢性ヒ素中 毒症もあり、問題になることがある。 有棘細胞癌の原因 慢性的な物理刺激 慢性的な炎症反応 紫外線 放射線 化学発癌物質(ヒ素、タールなど) ヒト乳頭腫ウイルス(イボのウイルス) 有棘細胞癌の原因 慢性的な物理刺激 慢性的な炎症反応 紫外線 放射線 化学発癌物質(ヒ素、タールなど) ヒト乳頭腫ウイルス(イボのウイルス) 慢性的な炎症反応 ~有棘細胞がんが発生しやすい状態~ 熱傷瘢痕(やけどのあと) 褥瘡(床ずれ) 慢性膿皮症 早期病変(前がん状態) ➡日光角化症 白板症 ボーエン病 有棘細胞癌の原因 慢性的な物理刺激 慢性的な炎症反応 紫外線 放射線 化学発癌物質(ヒ素、タールなど) ヒト乳頭腫ウイルス(イボのウイルス) 悪性黒色腫(ほくろのがん)の原因 外的刺激が関与して いると考えられている ➡打撲、靴擦れ、紫外線など *生涯の日光曝露量とは正の相関はなく、間欠 的な短期間での大量の日光曝露と相関すると 考えられている。 皮膚がん予防のポイント② 慢性の刺激、炎症をなるべくさける。 農薬などからの有害物質との接触を なるべくさける。 早期発見するために 皮膚がんになりやすい状態とは? 紫外線や、その他の外的刺激を受けやす い部分は、皮膚がんの好発部位です! それでは、もっとも皮膚がんのできやすい部 分はどこでしょう? 皮膚がんの好発部位 顔です!! 基底細胞癌の約70% 有棘細胞癌の約40% 悪性黒色腫の約10% ➡理由は、もっとも紫外線の当たる部位だから 皮膚がんの早期発見のために① まず、紫外線によく当たる、顔、後頸部、手 背、前腕などに、不整な形の赤い発疹や、 盛り上がったいぼのようなものがないか、 自分で時々チェックしてみましょう。 治らない傷はありませんか? 小さいころのやけどのあとに、突然傷ができ て治らなくなったり、なかなか治らない床ずれ などはありませんか? 古い傷だから、と、長い間放置したりしていませ んか? 皮膚がんの早期発見のために② 慢性の刺激や炎症も、皮膚がんを生じや すい状態を作ります。 数年~数十年前のやけど外傷のあとから 皮膚がんが生じることもあるため、古傷に 突然変化が起こるようなときは、早めに皮 膚科にご相談ください。 皮膚がんは予防できるの? 残念ながら、皮膚がんの発生の原因が 100%解明されているわけではないため、 全ての皮膚がんを予防することはできませ ん。 しかし、過剰な紫外線を避け、皮膚がんの できやすい状態を知っておくことで、紫外 線による発がんのリスクを下げることや、 早期発見、早期治療にはつながります。 ご清聴ありがとうございました。
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