NIA Letter vol.5 (2015年発行)...2.1MB ・異文化との共生を目指して

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■特集 異文化との共生を目指して
〜イスラームを知る〜
●「滞日ムスリムとの共生をめざして」
新潟国際情報大学 教授
小山田 紀子 氏
●イスラーム文化を理解する4つ
のキーワード
2
■ちょっと聞き耳インタビュー特別版
国際交流員特集
■NIAインフォメーション
発行元/公益財団法人新潟県国際交流協会
Niigata
International
Association
特 集 異文化との共生を目指して 〜イスラームを知る〜
近年、訪日外国人旅行者(インバウンド)が急増していることを受け、あたたかくおもてなしをするため
の受け入れ態勢の整備が急がれています。「食」や「自然」などの観光資源が豊富な新潟県においても、
2014年度の外国人延べ宿泊数は137,206泊で、2年連続で過去最高を更新しました。また、旅行者だけでな
く長期的に滞在する外国人も増加している今日、共に暮らす私たちにとって、日本流のおもてなしだけでは
なく、異文化に対する正しい理解が求められています。
今号では、新潟県との関係が深いアジア地域、特に経済成長が著しい東南アジア方面に多いイスラーム教徒の文化を知ること
で、異文化に対する理解を深め、共に生活していくために必要なことについて考えます。
」
「滞日ムスリムとの共生をめざして
新潟国際情報大学 教授 小山田 紀子
グローバル化の進む現代世界にあって、国境を越える人の移動が活発化し、日本においても外国人人口が増加している。
2014 年現在 212 万人余りの外国人が日本に住み、多文化社会の到来が示唆されている。これらの外国人の中には約 10 万人の
ムスリム(イスラーム教徒)が、すでに日本で学び、働き、生活している。そして、近年は激動する中東情勢への関心から、日
本のムスリムに関する報道や本の出版も増えている。日本におけるイスラームの可視化は新聞やテレビの報道や、実際に町で見
かける、髭を生やしたイスラーム服の男性の姿やスカーフを頭に巻くムスリム女性の姿だけではなく、とくに日本に 80 余りの
モスク(イスラームの礼拝施設)が存在することからもうかがえる(新潟県内にもすでに2つのモスクがある)。
日本のモスクの歴史をさかのぼると、1930 年代に神戸モスク・名古屋モスク・東京モスクが、インド人やロシアからのタター
ル人亡命者などによって建てられた経緯があるが、戦後は 1980 年代前半には全国に4つしかモスクはなかった。1980 年代後
半になると、バブルによる外国人ムスリムの流入に伴いモスクの開設が始まった。しかし 1999 年には、まだ 14 であったモス
クは 2000 年代に建設ラッシュが起こり、2010 年には 67 を数えるに至った。その後ニューカマーのムスリムも増え、2014 年
現在 80 ものモスクが国内に開設されている。モスク建設のピークを過ぎた今、これからはモスクの数はそれほど増加しないと
予測されているが、モスクを中心に形成された滞日ムスリムコミュニティーの内部的活動の維持のみならず、対外的な活動すな
わち日本社会への働きかけも求められてくるであろう。
ムスリムの日本滞在の長期化や定住化によって、このモスクで活動する留学生や日本で働く人々、国際結婚によってムスリム
となった日本人も含めた多様な国籍の人々がイスラームの名のもとに集まり、信仰の実践のみならず、異郷に住むムスリムの生
活を支える中心として、モスクはさまざまな機能を果たしている。家族を形成し日本で暮らすムスリムにとっての次なる課題と
しては、子どもの進路やイスラーム教育の問題があり、さらにはモスク運営を担う後継者の人材育成も課題である。
これらの問題に取り組むにあたっては、滞日ムスリムコミュニティーと日本社会との関係構築が重要となってくる。受入社会
である日本人にとっては、イスラーム理解をどのように進めていくかが大きな課題と言えよう。具体的な例を挙げれば、地域の
学校教員がモスクを訪問してイスラームについて学び、学校でもムスリムを含む外国人と日本人との多文化共生教育への模索を
試みている。大学との交流については学生と教員のモスクへの訪問とそこでのムスリムとの交流がイスラームの学びのきっかけ
となり、イスラームやモスクの研究をして卒業論文を作成する日本人学生も出てきている。このように開放的なモスクへの訪問
は、日本人のイスラームに対するネガティブなイメージや偏見を払拭し、イスラーム理解への一歩を踏み出すきっかけになるの
ではないだろうか。学校や職場や公共の場などでは、ムスリムに配慮した、礼拝施設の提供のような政策がすすめられるべきで
あるし、また観光立国をめざす日本としてはレストランや宿泊施設でのハラール食品の提供などが考えられよう。今や日本人の
隣人となりつつあるムスリ
ムとの共生をめざして、異
文化理解をめぐるさまざま
な努力がわれわれに求めら
れる時代となりつつある。
小山田 紀子 氏
新潟国際情報大学国際学部教授
津田塾大学大学院国際関係学研究科博士課程単位取得満期退学、博士(国際関係学)
。吉
備国際大学社会学部助教授を経て、現職。専門は、マグリブ近現代史。大学院在学中、プ
ロヴァンス大学留学、1980年代にアルジェ大学での調査研究、アルジェリア農村調査等を
行う。共訳書にバンジャマン・ストラ著『アルジェリアの歴史』(明石書店)など。
1
イスラーム文化を理解する4つのキーワード
「イスラーム」とはアラビア語で“服従・帰依”を意味し、
「平和となる、平和を得る」という言葉に由来します。
今号ではイスラームを理解するための基本用語を知るとともに、県内の関連情報もお伝えします。
※ここでは一般的なイスラーム文化について説明しますが、厳密さには個人差があるため、相手の考えを尊重しながら丁寧にコミュニ
ケーションを取ることが大切です。
1 ムスリム
イスラーム教徒を意味するアラビア語で、本来「(神に)帰依するもの」の意味です。ムスリム人口は、中東、アフリカ、東南アジア
などを中心に、世界人口の約5分の1を占めるともいわれています。イスラームというと中東をイメージする方も多いかもしれません
が、世界で最もムスリムが多い国はインドネシアです。
新潟県在住ムスリムショートインタビュー
ワカバヤシ・インダさん
(新潟市在住
ヤコブ・ヤフヤさん
インドネシア出身)
(南魚沼市在住
1.日本に来たのはいつ頃ですか?
2003年に仕事で来日し、今の主人(日本人)
と出会って結婚しました。主人は私と出会って
からイスラームに興味を持つようになり、改宗
しました。
インドネシア出身)
1.日本に来たのはいつ頃ですか?
国際大学で経営学修士を取得するため、2014
年9月に初めて日本に来ました。
2.新潟県のどんなところが好きですか?
世界60カ国以上から学生が集まる国際大学が大好きです。地元
の方、学生、教授、職員などたくさんの方と交流ができます。私が
ムスリムだと知るとイスラームについてよく質問されますが、説明
することも好きです。また、地域の方のおもてなしも好きです。手
伝いを頼まれれば快く引き受けてくれます。言語の障害を越えてコ
ミュニケーションでき分かり合えます。日本の文化にも興味があり
ますが、技術の進歩とともに伝統を守っているところも好きです。
2.新潟県のどんなところが好きですか?
新潟市に住んでいますが、車の運転ができなくても交通の便が良
く困らないところです。また私は日本食が大好きなのですが、新潟
は食べ物が特においしいところが良いです。
3.普段の食事はどうしていますか?
最初はインドネシア料理ばかり作っていましたがとても手がかか
るため、だんだん日本食の方が多くなってきました。最近ではきん
ぴらや煮物など日本料理が中心です。
3.普段の食事はどうしていますか?
よく学食で食事をとります。学食はハラールとそうでないものを分
けているので心配いりません。時々他のインドネシア人学生と一緒に
料理をします。国際大学以外のレストランへ行く時は、日本人の友達
に頼んで、豚肉を避けるようにしています。
4.ムスリムとして、新潟での生活で不便に感じることはありますか?
新潟での生活に特に不便は感じていません。欲を言えば外食した
い時に利用できるハラールレストランが増えると良いと思います。
今あるハラールレストランはカレー料理が中心なのでもっとバリ
エーションが増えると良いですね。そして空港・ショッピングモー
ルなどに礼拝できる場所ができるといいなとは思います。
4.ムスリムとして、新潟での生活で不便に感じることはありますか?
一日5回の礼拝、金曜日の集団礼拝の時間が取りにくいところと、
礼拝室はアパートの一室を使用しているので大学から遠いことが不
便です。駅やレストラン、公共の場所に礼拝所があればよいと思いま
す。私はラーメンが大好きですがハラール対応のラーメン屋さんはな
かなかありません。ハラールレストランがもっと増えると良いですね。
5.様々な文化を持つ方々が住みやすい新潟県にするためには、ど
うすればよいと思いますか?
インドネシアはイスラーム教、キリスト教、仏教など色々な宗教
があり、互いを尊重しながら生活しています。それぞれの宗教の祝
日は違う宗教の人も皆がお休みなので、カレンダーには赤い日が多
いですよ
(笑)
。日本も、インドネシアのカレンダーのように様々な
文化を受け入れられるようになると良いですね。
5.様々な文化を持つ方々が住みやすい新潟県にするためには、ど
うすればよいと思いますか?
国際大学のある浦佐は文化的な理解があるところだと思います
が、国際イベントがもっとあるべきだと思います。また日本にはユ
ニークなお祭りなどがたくさんあるので、観光地に外国語のパンフ
レットを設置すると良いのではないでしょうか。また、街中にも外
国語での標記(駅、学校、博物館など)が増えると良いと思います。
2 ハラール
3 ラマダン
イスラームの暦で第9月をラマダン月と呼び、この1か月間、
日の出から日没までの間ムスリムは飲食を断たなければなりませ
ん。ムスリムにとっては神聖な時期です。
ラマダン期間中の日没後初めてとる食事
を「イフタール」と言い、家族や友人が集
まって楽しく過ごします。イフタールでは
空腹後の体の負担を軽減するため、デーツ
(ナツメヤシの実)から食べ始める習慣が
あります。
イスラーム法で許された項目を「ハラール」と呼びます。ア
ルコールや豚肉及び豚由来成分や、イスラーム法に則って処理
されていないものは「ハラム」と呼び、食することが禁じられ
ているので、ハラール認証のない牛肉
や鶏肉も食べることができません。厳
密には調理器具もハラール専用のもの
を使用しなければなりません。
冷凍ハラール肉は業務用スーパー等
で入手でき、それ以外の食材も通信販
ハラール認証マークがついた
食材。
売で購入することができます。
クルアーン(コーラン)にも「神が与えた食物」
と
して登場するデーツ。とても甘い。
2
国際大学(南魚沼市)学生食堂のハラール対応について
学生センター事務室長
信田
万代シルバーホテル
(新潟市)
のムスリム対応について
グレチェンさん
宿泊課マネージャー
国際大学には2015年9月1日現在350名
の留学生が在籍しており、その3分の1がム
スリムです。3年ほど前より、アフガニスタ
ンやインドネシアからの留学生が増えてきた
ため、学生食堂でハラール食を提供するよう
になりました。学食のスタッフは専門家の指
導を受け、特別な調理場、調理器具など、す
べてハラールの規則に従って作っています。
もちろんハラール認証された食材を使い、特
別なデザートやスナックなどは購買でも販売しています。
学食が提供するものの90%はハラー
ルです。ハラールは日本ではまだ一般
的ではないため、利用者からは感謝の
声が寄せられています。最近では近隣
のスーパーでもハラール肉やインスタ
ントカレーなどを扱い始めました。
国際大学の学食は営業中であればど
なたでも歓迎いたします。大人数でご
利用の場合や、お弁当などが必要な場
合は事前にお電話をいただければ準備
をしてお待ちしています。
>国際大学 南魚沼市国際町777番地 TEL:025-779-1111
渡辺
賢さん
万代シルバーホテルの年間外国人利用客は約2,000名(2014年
度)で、そのうちムスリム対応のお客様は約420名です。主に製油
所のオペレーション研修に来られる団体のお客様で、約1か月ほど
滞在されます。
昼食、夕食はムスリム専用メニューで対応しており、牛、鶏、羊
肉などは必ずハラール認証ミートを提供しております。お客様(地
域)によっても味付けや好みが変わるので、事前打合せをして可能
な限り対応しています。朝食は一般のお客様と同じバイキングなの
で、豚肉(エキス含む)等には表示をして提供しております。また
客室に皆様が集まれる談話室を造り、礼拝所としても提供しており
ます。
お客様には好評をいただいてお
り、ここ数年毎年ご利用いただいて
おります。
通常メニューではありませんが、
事前予約をいただければいつでも提
供できます。最近では当社の取り組
みを知り、団体でハラールの食事の予約が入ることもあります。
今後はもっと認知していただき、ムスリムの方が安心してご利用
いただけるホテルを目指してまいります。
>万代シルバーホテル 新潟市中央区万代1丁目3番30号
TEL:025-243-3711
4 モスク
アラビア語で「マスジド(ひれ伏すところ)」といわれるイスラーム教の礼拝堂です。ムスリムは1日5回の礼拝を行うほか、男性
ムスリムには毎週金曜日にモスクで集団礼拝を行うことが義務付けられています。
近年日本でも首都圏を中心に、外出先でも礼拝ができるよう、空港、駅、商業施設などで、カーペットを敷きキブラ(聖地メッカの
方角)を確認できる静寂なスペース(礼拝室・prayer room)を設ける動きが進んでいます。
新潟県内には2002年に中古車販売業に従事するパキスタン人を中心に建てられた新潟モスク(新潟市北区)と、新潟大学近くに建
つアンヌールモスク新潟(新潟市西区)の2ヵ所のモスクがあります。このうち、アンヌールモスク新潟で、代表者ムハンマド・ヒッ
シャムさんにお話を伺いました。
アンヌールモスク新潟(新潟市西区)
聖地メッカの方角を向いた礼拝所
中国語や韓国語のクルアーンも
住宅街の中の3階建てのアンヌールモスク新潟は、2009年に新潟
大学のムスリム留学生が中心となり県内外からの寄付によって設立さ
れ、2011年に宗教法人化しました。
このモスクに集まるのは主に留学生や研究者で、国籍別ではマレー
シア出身者に次いでバングラデシュ出身のムスリムが多く集まりま
す。毎週金曜日の集団礼拝や土曜日のミーティングなどにこのモスク
が利用されています。
礼拝前には専用の洗い場で手足や頭などを決められた手順で清め、
女性用と男性用に分かれた礼拝室で、キブラに向かって礼拝します。
礼拝室には1日5回の礼拝時間が確認できる便利な時計や、様々な言
語に翻訳されたクルアーン(コーラン)も設置されています。
3階には文化的・イスラーム的活動のための大広間があり、イス
ラームに関する勉強会やラマダン期間中のイフタール(左記ラマダン
の解説を参照)のパーティなどが行われています。イフタールのパー
ティにはムスリム以外の方も自由に参加することができます。
また、モスクの北東には専用の入口から入るハラール食品の倉庫が
あります。
近隣にこのようなモスクがあればよいのですが、近くにモスクのな
いムスリムたちは、自分たちで臨時の礼拝所を設けて集まっています。
また、外出先でも礼拝ができるよう、最近はムスリム用の便利なス
マートフォンアプリも開発され、一日の礼拝時間やキブラをいつでも
どこでも手軽に確認することができます。
>アンヌールモスク新潟 新潟市西区五十嵐1の町6776-43
3
礼拝前に体を清めるための洗い場
一日の礼拝時間が一目瞭然!
専用入口から入る食料庫には、珍しい
ハラール食品が所狭しと並んでいる。
NIAインフォメーション
さらに深く異文化を知るために…
国際理解セミナー「アジアを知る!」を県内各地で開催します!
県内4地域で全10回の国際理解セミナーを開催します。日本との関係が特に深いアジア地域について、歴史、文化、経済等、さま
ざまなテーマを取り上げ、各分野の専門家が詳しく、分かりやすくお話しします。
知っているようで知らないアジアの一面に触れる良い機会です。ぜひお近くの会場に足をお運びください!
(参加費無料・要申込み)
日時
講師
テーマ
新潟東リトルシニアリーグとの交流会
新潟市
南魚沼市
柏崎市
上越市
10/25(日)
14:00~15:30
新潟県立大学
教授 権 寧俊
北東アジアの
「朝鮮人社会」と日本
11/1(日)
14:00~15:30
新潟大学
教授 白石
11/3(火・祝)
14:00~15:30
新潟国際情報大学
教授 小山田 紀子
11/8(日)
14:00~15:30
にいがたNGOネットワーク
理事 原 千賀子 氏
わたしを突き動かしたもの
~ネパールにかけた想い~
11/15(日)
14:00~15:30
新潟大学
非常勤講師
大黒屋光太夫の見たロシア
11/29(日)
14:00~15:30
新潟県立大学
教授 櫛谷 圭司
10/2(金)
18:30~20:00
国際大学
副学長 信田
10/24(土)
13:30~15:00
新潟産業大学
教授 詹 秀娟
10/17(土)
13:30~15:00
新潟県立看護大学
准教授 渡辺 弘之
10/31(土)
13:30~15:00
元 国立医療研究センター
研究所長 倉辻 忠俊 氏
氏
典之
イスラーム教徒の生活と文化
~異文化理解のために~
氏
昌弘
氏
駅南貸会議室
KENTO
定員:54名
新潟大学
駅南キャンパス
「ときめいと」
定員:60名
(公財)
新潟県
国際交流協会
025-290-5650
新潟の環日本海交流
~これからの課題~
氏
智人
問合せ・申込先
遊牧伝統と都市化のはざまで
~現在モンゴルの実像~
氏
中谷
会場
氏
氏
氏
中国の今後について
国際大学
102教室
定員:80名
台湾の食とお茶
柏崎市市民プラザ
201
定員:25名
(公財)
柏崎
地域国際化協会
0257-32-1477
上越市市民プラザ
第2会議室
定員:50名
(公社)
上越
国際交流協会
025-527-3615
ベトナムに生きる
ハンセン病の人びと
現代ネパールにおける
地震と国際協力
国際大学
研究所事務局
025-779-1112
ート
NIA活動レポ
2015 SUMMER 新潟県国際交流プラザフェアを開催しました。
夏休み期間中、新潟県国際交流プラザでは世界各国の写真や絵画をとおして異文化を知
ることができるパネル展を開催しました。7月25日(土)から8月9日(日)は各国の世
界遺産の中から数十点を展示した世界遺産写真展、8月10日(月)から31日(月)はアジア各国・地域の子どもたちが描いた絵日記展を開
催するとともに、8月1日(土)はロシア、8月29日(土)はベトナムの親子で楽しむ特別講座を開催しました。各日ともたくさんの親子連
れが参加し、それぞれの国の文化や子どもたちの夏休みの過ごし方などに関する講話を聞いた後、色鮮やかなロシア模様の紙のボールや、エ
キゾチックなベトナム風梅の花など、珍しい工作に挑戦しました。
ホストファミリー実践講座2015「ようこそ、我が家へ!」を開催しました。
8月9日(日)は長岡で、22日(土)は新潟でホストファミリーに興味を持つ方と、日本でのホー
ムステイに興味を持つ留学生や外国語指導助手を対象としたホストファミリー実践講座を開催しまし
た。
(公財)AFS日本協会新潟支部の講師によるホームステイの基礎知識や実践に関する講話のほか、
10月開催のホームステイ体験のガイダンスや、参加者による交流会を行いました。
4
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特別版
★質問 事 項
現在、新潟県国際課ではアメリカ、ロシア、韓国、ベトナム、中国、モンゴルからの国際交流員が勤務して
います。CIR(Coordinator for International Relationsの略称)とも呼ばれる彼らの仕事は多岐に渡り、
新潟県が実施する国際交流事業における通訳・翻訳、また学校などにおいて母国の文化を紹介する講座なども
行っています。この夏に3年の任期を終えたアメリカ出身の国際交流員カイ・ウィズナーハンクス氏に新潟で
の生活を振り返っていただくとともに、4名の国際交流員へのインタビューを通してその素顔をご紹介しま
す。本人作の似顔絵と写真を比べてみるのもおもしろいかも!?(新任のアメリカ、モンゴル出身の交流員紹
介は次号以降の本誌にて掲載予定です)
1.自己PRをお願いします。
2.あなたの母国のここが自慢!と言えるのはどんなところですか?
3.日本での生活で文化や習慣の違いに驚いた事はありますか?また新潟のお気に入りを教えてください。
4.外国語学習や異文化コミュニケーションをする上でのアドバイスをご自身の経験を交えてお願いします。
オリガ・ホワンチュック(ロシア)
1.ウラジオストク出身で、日本の文化や芸術に子どもの頃から触れ合い、日本の美術史を習うことにしました。現
在、加賀友禅作家でもあり、和服の歴史の専門家になりました。和裁と洋裁もしています。アルゼンチンタンゴを
やっています。それをきっかけに、世界中に友達が増えたので、海外旅行も多くなりました。
2.ロシア人の人柄が自慢です。特にロシアの極東地方の住民はやさしくて心が広い人だと言われています。ロシア
は今でも世界一大きい国で、豊富な文化を持っています。
3.日本は治安が良いので、とても安心できる国です。そして、体の不自由な人のために市内のインフラが整備さ
れていることに、とても感心しました。ゴミが資源として扱われていることにも感心します。新潟のお気に入りは海で
す。海水浴、海の幸、海の風と匂い、海に沈む夕日。
4.言語は文化の一つです。習っている外国語の国の文化を勉強し、尊敬しないと言葉もうまくならないと思います。自然
には悪い色がない。全ての色がユニークで大切です。人間もその色の一つです。恐怖や先入観を棄てて、お互いに敬
意、好奇心、思いやりを持てば、異文化コミュニケーションもうまくいくと思います。
韓
智安(韓国)
1.去年4月に新潟に来る前は、韓国で日本語の通訳や翻訳の仕事をしていました。長く日本に関わってきたので、
日本が外国だという認識はあまりありません。やさしい新潟のみなさんのおかげで毎日楽しく生活しています。
最近はまっているのはゲームです。15年前のPS2が最後だったので、今のゲームを見て驚いています。技術の
発展って、すごいですね。
2.韓国は世界で一番インターネット環境が整っている国で知られています。ソウルや釜山などの都市部では無料の
Wi-Fiスポットも多く、本当に便利です。また、おいしい食べ物の出前サービスが多いのも自慢です。寿司やピザ
だけでなく、あらゆるメニューの出前注文ができます。しかも24時間営業のお店が多いので、食べたいものをい
つでも頼むことができます。
3.韓国と日本は近い国であるだけに、驚くような大きな違いはあまりないのではないかと思います。あえて挙げて
みると、日本人はなぜそんなに長い時間正座ができるのかということと、多くの弁当にスパゲッティが入っていると
いうことくらいですね。同じく焼きそばパンにも最初は戸惑いました。炭水化物にまた炭水化物?と思いました。今
は好きですが。
4.「外国語学習に王道なし」ですね。地道に単語や文法を勉強して、たくさん聞いてたくさんしゃべってみるほかない
と思います。とにかくその言語に触れる機会を増やすのも大事ですね。失敗を恐れずチャレンジです。相手への関心
や思いやりがあれば、多少言葉は通じなくてもコミュニケーションはできるでしょう。
グエン・ティ・ミン・ゴク(ベトナム)
1.昨年8月に赴任しました。幼い頃から日本文化に関心を持っていたので、日本での生活を体験できてとても嬉し
いです。新潟では仕事を頑張りながら、暇な時に趣味であるショッピング、旅行、ピアノなども充実させていま
す。今後とも皆さんにベトナムのことを紹介させていただく一方、新潟のことをもっと理解していきたいと思い
ますので、どうぞよろしくお願いします!
2.ベトナム人のフレンドリーさ、ベトナムのきれいな観光地、食文化などです。特にベトナムの屋台料理は種類が
豊富で、値段が安くてとてもおいしいです。そのおいしさは一言では言えないので、どうぞベトナムに行って食
べてみてください!
3.一番驚いたのは日本人のおもてなしの心です。特に、サービス業に従事している方々の顧客に対する気遣いは、
外国人にはサプライズでしょう。また、日本の結婚式は進行が完璧に決められていて驚きました。新潟は、実家のハイフォ
ン市と同じく港町なので、両地域の似ている和やかな雰囲気がとても気に入りました。また、おいしいお米やお酒、そして
シーフードを挙げなくてはいけないでしょう。ノドグロ寿司は間違いなく日本一おいしいと思います。
4.その外国のことを理解する意志があることが一番大事なことだと思います。特に、外国人とコミュニケーションする際、相
手の意見や話によく耳を傾けると、相手との文化的なギャップを理解できるでしょう。自分から積極的に話しかけたり、自
国の文化などについて相手と共有したり、自主的に研究した方がいいと思います。
インタビュー特集は6面に続きます
5
劉
麗(中国)
1.私は大学で日本語を4年間勉強しましたが、来日は初めてです。忍耐力、積極性を持って新たなことを吸収しな
がら力を尽くしたいと思っています。また、仕事で生かせる力を保つため、栄養のバランスがとれた料理を作る
ことを楽しんでいます。体がほしがる栄養を十分とって、健やかな体を作って、元気に仕事をするのは最高だと
思います。
2.中国は5千年あまりの歴史がある文明を有し、古代四大文明の一つに数えられます。世界遺産に登録された場所
は48か所もあり、ほとんどが大人気の観光スポットで、万里の長城、故宮博物館、四川省の九寨溝、ラサのポタ
ラ宮、西安の秦始皇帝陵兵馬俑、杭州西湖、黄山、泰山などです。機会があれば、ぜひ一度お越しください。
3.一番印象深かったことは、日本人の優しさと礼儀正しさです。お店の店員さんは親切に商品説明をし、式典のよ
うに丁重に商品を渡してくれます。バスの運転手さんは辛抱強く質問に答え、乗客が降りる時、丁寧にお礼を言
います。それは日本のサービス業界が誇れる精神だと言えます。道を尋ねると知らない人が10分以上もかけて送ってく
れることが何度もあることに、すごく感心しました。
4.外国語を学習する目的と言えば、外国語で母語話者の人とコミュニケーションすることでしょう。同時にそれは一番効果
的な勉強法でもあると思います。私の場合、日本に来る前に日本語の言葉や文法を何年間もこつこつ覚えてきましたが、
最初は正しく聞き取れず話もうまくいきませんでした。日本に来て、周りの日本人とやりとりすると語学力はもちろん、
日本人特有のコミュニケーションにもだんだん慣れるようになると思っています。
新潟での3年間の思い出
前新潟県国際交流員
カイ・ウィズナーハンクス(アメリカ)
初めて新潟へ来てから3年の月日が経ち、新潟で過ごした日々は私の人生の中でかけがえ
のないすばらしいものとなりました。新潟へやって来た当日、私は担当者から冬の新潟での
生活は楽ではないと言われ、「中には憂鬱になってふさぎこんでしまう人もいるので気をつ
けた方がよい」との忠告を受けたのです。しかし、実際は全くの正反対であり、新潟での毎
日はすばらしい冒険に満ちあふれ、記憶に残る特別な場所となったのでした。佐渡金山や上
越のスキー場、越後湯沢の山々、新潟市内の海岸など、滞在中は県内のいろいろな所を訪れる機会に恵まれ、どこもお気に入りの
場所となりました。また、佐渡金山からの小道や静かにくつろげる信濃川の岸辺のような、隠れた名所を探し出したのも良い思い
出です。そして、新潟の人々はいつも本当に私をあたたかく迎え入れてくれたのでした。外国で暮らすという事は決して簡単な事
ではありませんが、皆さんに歓迎していただき、大変助けられました。ラーメン屋のご主人や、近所の小学校の子どもたち、誰も
がみな親切にもてなしてくれたのです。
今後、新潟と新潟の人々を懐かしく思い出すのと同時に、これまでの交流員としての仕事も懐かしむことになるでしょう。翻訳
の仕事はとても楽しく、新潟についての知識を高める事にも役立ちました。また、通訳の仕事は時に緊張と不安を伴い大変でした
が、様々な国の様々な分野で活躍されている権威ある方々との仕事は、大いに刺激となり勉強となったのです。そして、私が最も
やりがいを感じていた仕事は、新潟に暮らすALT(学校等に派遣される外国語指導助手)が日々抱える悩みを聞き、彼らの助け
になる事でした。日本で生活する事は容易ではないかもしれませんが、すばらしい経験になり得るという事、そして彼ら自身の幸
せをつかむための力になる事は、大変誇らしく思えたのです。新潟の人々、地域と、新潟をふ
るさとと呼ぶALTをつなぐ架け橋として、やりがいのある仕事であり貴重な機会に恵まれまし
た。
最後に、数々のすばらしい思い出と経験をさせていただいたすべての
新潟の皆様に感謝を申し上げます。将来どこへ行こうとも、新潟は私に
とっていつまでも心に残るふるさとです。
編集
後記
今回の特集はいかがでしたか?異文化に普段あまり触れる機会のない私たちにとって、それ
らの文化を持つ人々に対し近寄りがたいイメージを抱くこともあるかもしれませんが、互いの
文化を正しく理解し尊重し合うことで、より良い未来の多文化社会が形成されていくのではな
いでしょうか。
今回ご協力いただいた皆様、あたたかく取材を受け入れてくださったアンヌールモスク新潟
代表のムハンマド・ヒッシャムさんご夫妻に本紙面を借りて重ねてお礼申し上げます。
■発行:公益財団法人新潟県国際交流協会
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