「3G携帯電話端末市場の展望」(PDF/86KB)

3G 携帯電話端末市場の展望
―2003 年度上期国内市場と世界の 3G 端末市場動向―
□NEC が 3 年連続首位、カメラ付き携帯への買い替え需要で市場はミニバブル
携帯電話サービスの加入者は 2003 年 9 月末で 7,859 万 4,700 件。この 1 年間で 651 万件
増加し、人口普及率は 61.6%に達している。SIM カードが普及し、一人で複数の携帯電話会社
に加入することが多い海外ではさらに高い普及率を示している国も多いが、一人一件の契約が
当たり前の日本ではこの普及率はかなり上限に近づいていると見るべきだろう。今後は、中学生
や小学生に至る若年層、高齢者層への普及がさらに高まると見られるが、数年前までのような新
規加入契約者の激増は期待しにくい。
しかし、新規加入者が伸び悩む中で 2003 年度上期の国内携帯電話の総出荷台数は、カメラ
付き携帯電話の新製品ラッシュで前年同期比 27.5%増の 2,569 万台に大幅増加、上半期(4〜9
月期)としては過去最高の市場規模に膨らんだ。とりわけメガピクセルカメラなど話題も多く、ユー
ザーがこぞって買い替えに走り、需要を押し上げた。主力メーカーも予想外の市場拡大に対応
しきれず、カメラ部材を始めとする部品の確保に手間どりシェアを下落させる現象も見られた。03
年度前半だけで総出荷台数が 2,500 万台を突破しており、例年の見通しから判断すれば 5,000
万台の大台への期待が膨らむが、この勢いが下期まで継続するという可能性は薄い。携帯電話
事業者が新規加入者獲得のための販売促進インセンティブを抑える傾向にあり、04 年度にかけ
て新規加入者の伸び悩みが見込まれる、またカメラ付き携帯端末への買い替え需要が一段落
(03 年 9 月末で約 6 割の普及率)したことで上期ほどには市場が爆発しないと予想できるためだ。
したがって、年度末の 2 月から 3 月にかけて毎年起こる事業者向け出荷の駆け込み需要は、停
滞する可能性もある。今年度上期はいわばカメラ付き端末のミニバブル現象と捉えているメーカ
ーが多く、03 年度全体での大台到達はむずかしいだろう。マルチメディア総研では、04 年度以
降は買い替えサイクルの安定化により高い成長は望めず、市場は 5,000 万台未満でしばらく停
滞すると予測する。
1
表1.携帯電話出荷台数の推移および3G端末の出荷予測
2001年度
台数
構成比
国内出荷台数 PDC(ドコモ、ボーダフォン、au、ツーカー)
3,731
86.7%
(方式別)
cdmaOne(au)
562
13.1%
CDMA2000 1X(au)
0
0.0%
FOMA(ドコモ)
10
0.2%
VGS(ボーダフォン)
0
0.0%
合計
4,303 100.0%
前年比伸び率
▲10.1%
*2003年度以降は予測値
万台
6,000
5,000
4,000
PDC
cdmaOne
CDMA2000 1X
FOMA(ドコモ)
VGS(ボーダフォン)
3G
19%
2002年度
2003年度
台数
構成比
台数
構成比
3,241
79.1%
3,860
78.2%
92
2.2%
0
0.0%
731
17.9%
870
17.6%
29
0.7%
175
3.6%
3
0.1%
30
0.6%
4,096 100.0%
4,935 100.0%
- 20.5%増
▲4.8%
2001年度 2002年度 2003年度 2004年度 2005年度
3,731
3,241
3,860
3,220
2,400
562
92
0
0
0
0
731
870
1,020
970
3G
10
29
175
550
1,060
22%
0
3
30 3G 180
480
35%
2004年度
台数
構成比
3,220
64.8%
0
0.0%
1,020
20.5%
550
11.1%
180
3.6%
4,970 100.0%
0.7%増
台数単位:万台
2005年度
台数
構成比
2,400
48.9%
0
0.0%
970
19.7%
1,060
21.6%
480
9.8%
4,910 100.0%
▲1.2%
VGS(ボーダフォン)
FOMA(ドコモ)
CDMA2000 1X
cdmaOne
PDC
3G
51%
3,000
2,000
1,000
0
2001年度
2002年度
2003年度
2004年度
2005年度
□05 年度には 3G 端末が 51%に拡大
日本市場では 05 年度末に 9,100 万人の総加入者が見込まれ、そのうち W-CDMA 加入者が
2,030 万人、CDMA20001X 加入者が 1,890 万人で 3G 加入者が全体の 43%を占めるだろう。3G
携帯電話端末市場は、02 年度に CDMA2000 1X の登場で 763 万台を記録したが、03 年度はN
TTドコモ、ボーダフォン向けの 3G 端末も増えるため、前年比 40.9%増の 1,075 万台まで増える
見込みである。このうち CDMA2000 1X 端末が全体の 8 割を占め、NTTドコモの FOMA 端末も
175 万台の出荷が見込まれる。03 年度下期は W-CDMA 端末出荷が増え、いよいよ 3G 時代の
到来を実感させるだろう。04 年度には全端末出荷のうち、3G 端末は 35%を占め、05 年度には過
半数の 51%へと拡大することが確実だ。日本市場は世界に先駆けて 3G 端末の商品ラインナップ
を充実させており、ビデオ電話や GPS 利用などアプリケーション面でも注目を集めることになろ
う。
メーカー別のシェアを見ると、01 年度上期から首位に立ったNECが 3 年連続で首位を守った。
NECは、NTTドコモ向けに出荷した N504iS、N251iS、N505i がいずれもヒット商品となり、総合力
でトップの座を堅持した。特に N504iS は発売当初のバッテリー発熱トラブルにも関わらず売れた。
使い勝手の良さとユーザーの信頼が需要を支え、過去最大級のヒット商品となった。シェアは前
年同期比 4.9 ポイント増の 23.7%で 2 位との差を 7 ポイントに広げている。
2 位のパナソニックモバイルはNTTドコモ向けの P504iS、P505i がスリムなデザインで人気を
博し前年比 14.7%増の 430 万台を出荷、16.7%のシェアを確保した。しかし、首位NECの独走と
追い上げが目立つ中堅メーカーの台頭で、シェアを落とす結果となった。
3 位のシャープはボーダフォン向けのカメラ付き携帯電話で不動の地位を築き、その商品力
が買われて 02 年度にNTTドコモ向けでもシェアを伸ばしてきた。しかし、他メーカーもカメラ付き
携帯端末を続々と発売してきたため優位性が後退し、03 年度上期は伸び悩んだ。その結果 03
年度上期は 276 万台、10.7%へとシェアを落とし、2 位パナソニックモバイルとの差も広がった。
2
表2.2003年度上期国内携帯電話出荷台数シェア
NEC
パナソニックモバイル
シャープ
三菱電機
ソニー・エリクソン
東芝
三洋電機
富士通
その他
合計
2002年度上期
台数 順位 シェア
379 ①
18.8%
375 ②
18.6%
296 ③
14.7%
148 ⑥
7.3%
154 ⑤
7.6%
130 ⑧
6.5%
135 ⑦
6.7%
177 ④
8.8%
221
2,015
-
その他
富士通 7.2%
6.8%
11.0%
100.0%
156
2,081
-
7.5%
100.0%
2002年度合計
台数 順位 シェア
853 ①
20.8%
730 ②
17.8%
512 ③
12.5%
341 ⑤
8.3%
263 ⑧
6.4%
368 ④
9.0%
318 ⑦
7.8%
334 ⑥
8.2%
377
4,096
-
9.2%
100.0%
2003年度上期
台数 順位 シェア
608 ①
23.7%
430 ②
16.7%
276 ③
10.7%
248 ④
9.7%
235 ⑤
9.1%
231 ⑥
9.0%
182 ⑦
7.1%
175 ⑧
6.8%
184
2,569
-
7.2%
100.0%
前年比
シェア増減
60.4%増
14.7%増
▲6.8%
67.6%増
52.6%増
77.7%増
34.8%増
▲1.1%
4.9%増
▲1.9%
▲4.0%
2.4%増
1.5%増
2.5%増
0.4%増
▲2.0%
▲16.7%
27.5%増
▲3.8%
−
国内携帯電話出荷台数推移
02/上期
02/下期03/上期
NEC
23.7%
三洋電機
7.1%
万台
3,000
2,500
2,000
東芝
9.0%
ソニー・
エリクソン
9.1%
三菱電機
9.7%
台数単位:万台
2002年度下期
台数 順位 シェア
474 ①
22.8%
355 ②
17.1%
216 ③
10.4%
193 ⑤
9.3%
109 ⑧
5.2%
238 ④
11.4%
183 ⑥
8.8%
157 ⑦
7.5%
1,500
パナソニック
モバイル
16.7%
379
375
296
148
154
130
135
177
221
474
355
216
193
109
238
183
157
156
608
430
276
248
235
231
182
175
184
1,000
その他
三洋電機
三菱電機
富士通
ソニー・エリクソン
東芝
シャープ
パナソニックモバイル
NEC
500
シャープ
10.7%
(注1)2003年度上期とは2003年4月〜2003年9月の6ヵ月間における国内出荷台数
(注2)PHS専用端末は含まれていない
(注3)パナソニックモバイルの正式社名はパナソニックモバイルコミュニケーションズ
NEC
パナソニックモバ
シャープ
東芝
ソニー・エリクソン
富士通
三菱電機
三洋電機
その他
0
02/上期
02/下期
03/上期
(注4)ソニー・エリクソンの正式社名はソニー・エリクソン・モバイルコミュニケーションズ
(注5)シェア増減は(03年度上期シェア−02年度上期シェア)で算出
4 位に躍進したのは三菱電機で、前年比 67.6%増の 248 万台、シェアも 9.7%へと拡大している。
躍進の原動力は従来の主力であった D505i に加えてボーダフォン向けのプリペイド携帯電話 エ
ンジョルノ が 100 万台に迫る出荷を記録したためだ。
5 位以下のソニー・エリクソンは SO505i でデジカメスタイルのメガピクセル携帯という新コンセ
プトを打ち出し、業界に一石を投じた。東芝もボーダフォン、au 向けのカメラ付き携帯でヒット商品
を連発、3 位グループに食い込む可能性を示している。伸び著しい中堅各社はキャリアーではと
くに好調な au 向けでの実績つみ上げが目立った。3 位シャープから 8 位富士通までは混戦模様
で、ヒット商品が出れば一挙に順位が変動することになりそうだ。
01 年度まではNEC、パナソニックモバイルの 2 強時代が続き、02 年度にはシャープがカメラ付き
携帯端末で猛追し 3 強の可能性をうかがわせた。しかし 03 年度上期についてはNECの総合力
が目立ち、カメラ付きで先行する優位性を失ったシャープが伸び悩むという構図となっている。
03 年度上期のカメラ付き携帯電話は全体の 88.2%に当たる 2,267 万台に達した。今年度下期も
9 割近い端末がカメラ付きになり、もはやカメラ付きというだけでは全く差別化にならない。カメラ
機能の高度化・高画素化、ムービー機能の高度化はさらに進み、いずれはデジカメ市場との競
合も避けられないレベルになるだろう。また、地上波デジタル放送の開始により、テレビ機能や、
ゲーム機能を取り込む動きも顕著だ。今後はこれらの機能の高度化だけでなく、スタイリッシュ携
帯のコンセプトを打ち出したデザイン携帯に進む方向性もあり、ますます機種の多様化、セグメン
ト化が避けられなくなるだろう。
3
表3.タイプ別携帯電話出荷台数
カメラ付携帯電話
2001年度上期
2001年度下期
2002年度上期
2002年度下期
2003年度上期
台数
台数
台数
台数
台数
構成比
構成比
構成比
構成比
構成比
台数単位:万台
2003年度下期予測
台数
構成比
82
3.4%
215
11.3%
679
33.7%
1,722
82.7%
2,267
88.2%
2,112
その他
2,326
96.6%
1,680
88.7%
1,336
66.3%
359
17.3%
302
11.8%
254
10.7%
合計
2,408 100.0%
2,081 100.0%
2,569
100.0%
2,366
100.0%
万台
2,500
1,895 100.0%
2,015 100.0%
89.3%
タイプ別携帯電話出荷台数
02/上期02/下期
03/上期03/下期
01/上期01/下期
カメラ付
82
215
679
1,722 2,267
2,112
その他 2,326
1,680 1,336
359
302
254
2,000
1,500
その他
カメラ付
1,000
500
0
01/上期
01/下期
02/上期
02/下期
03/上期
03/下期
□世界の 3G 端末市場は 05 年に 1 億台を突破
W-CDMA は今のところ日本のNTTドコモが市場を牽引しているが、ハチソン3Gがイタリアを
始め世界6ヶ国でサービスを開始しており、徐々に 3G 加入者を増やすことになりそうだ。マルチ
メディア総合研究所では、世界の 05 年末加入者総数を 16 億 4,500 万人と推定しており、このう
ち 16%にあたる 2 億 6,500 万人が 3G サービス契約者になると見込んでいる。3G 携帯電話サー
ビスを方式別に見ると 05 年末の CDMA2000 1X 加入者が 1 億 6,000 万人、W-CDMA が 1 億
500 万人となるだろう。さらに 07 年末には加入者総数が 19 億 7,000 万人と 20 億人に迫る規模
に達し、うち W-CDMA が 3 億 1,000 万人、CDMA2000 1X が 3 億人とこの年に初めて W-CDMA
が CDMA2000 1X 方式を逆転すると推定する。その後は GSM 携帯電話市場のユーザー続々と
W-CDMA に移行してことが確実なため、最終的には世界市場のうちの 6 割程度は W-CDMA 方
式に変わっていくことになりそうだ。
携帯電話端末市場は 02 年に全世界で 4 億 2,000 万台が出荷され、03 年は 9.0%増の 4 億
5,800 万台が出荷される見通しだ。02 年のメーカー別シェア 1 位はノキアで、1 億 5,200 万台(シ
ェア 36.2%)、2 位がモトローラで 6,700 万台(同 15.9%)、以下サムスン 4,100 万台(同 9.8%)、
シーメンス 3,600 万台(同 8.5%)と続く。日本勢はソニー・エリクソンが 5 位に食い込んでいるもの
の、その他のメーカーはまだ 2〜3%台の低いシェアにすぎず世界市場で生き残るためには 3G
端末で高いシェアを確保していくことが絶対条件だ。今のところ、NEC やパナソニックモバイルは
世界的に見ても W-CDMA 端末のトップベンダーとして先行しており、3G サービスの普及如何で
は二桁台のシェアを得ることも決して夢ではない。
世界の携帯電話端末市場はアジア市場の爆発的増大により、04 年以降も成長が期待でき、
07 年には 6 億 4,000 万台の出荷となりそうである。このうち 3G 端末市場は 03 年に 4,700 万台、
05 年 1 億 3,500 万台、07 年に 2 億 7,000 万台と全体の 42%を占めるようになり、遅れていた 3G
への世代交代が一挙に進むと思われる。
4
表4.世界の携帯電話端末出荷台数予測
単位:百万台
2002年
方式
2003年
2004年
2005年
2006年
2007年
出荷台数 構成比 出荷台数 構成比 出荷台数 構成比 出荷台数 構成比 出荷台数 構成比 出荷台数 構成比
1G/2G/2.5G
CDMA2000 1x
393
94%
411
90%
408
83%
401
75%
382
66%
370
58%
27
6%
44
10%
53
11%
70
13%
94
16%
122
19%
W-CDMA
0.2
0%
3
1%
32
6%
65
12%
102
18%
148
23%
合計
420
100%
458
100%
493
100%
536
100%
578
100%
640
100%
(注)W-CDMAにはTD-SCDMA方式が含まれる。
2002年 2003年
2004年 2005年
2006年 2007年
1G/2G/2.5G 世界の携帯電話端末出荷台数予測
393
411
408
401
382
370
CDMA2000 1
27
44
53
70
94
122
W-CDMA
0
3
32
65
102
148
百万台
700
600
500
400
0.2
27
3
44
32
53
65
70
102
94
148
122
W-CDMA
CDMA2000 1x
1G/2G/2.5G
300
200
393
411
408
401
382
370
2002年
2003年
2004年
2005年
2006年
2007年
100
0
■本件に関する問合せ先
株式会社マルチメディア総合研究所 主席研究員 斉藤 和 E-mail:[email protected]
TEL:03-5777-0161 FAX:03-5777-0163 URL:http://www.m2ri.jp/
〒105-0011 東京都港区芝公園 1-2-4 エスティビル
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