CLUB NETWORK To m o ji O NO Z U K A Vitamin Talk 小野塚 知二 神野 直彦 vs 植田 和男 N a o h i k o Close Up J I N N O 熊本県 Lecture Update Post EMP Post EMP Salon Contribution v s K a z u o U E D A 蒲島 郁夫 知事 西村 淸彦/下山 淳一 伊藤 慎介/堀内 勉 小山 修/吉野 孝行 柴田 優 Mandala Talk Ikuo KABASHIMA 8 Vo l . Contents Re: 経済史から アベノミクスを考える Vitamin Talk 小野塚 知二 世界経済の今後を見通す 二つの視点 4 Mandala Talk 神野 直彦 植田 和男 EMPower 第8号 CLUB NETWORK 「東京大学エグゼクティブ・マネジメント・ プログラム」 (東大EMP) 東大EMPは、将来の組織の幹部、特にトップにな る可能性のある40代の優秀な人材を主たる対象に VS して、東京大学が持つ様々な分野における最先端 8 目標の政治とは Close Up —行政の新フロンティアを目指して— 蒲島 郁夫 12 Lecture Update 講義アップデート 西村 淸彦 下山 淳一 の知識と思考を自らのものとし、深い智慧や教養 に基づいた洞察力、実際的で柔軟なコミュニケー ション能力と実行力を併せ持つ、高い総合能力を 備えた人材を育成することを目指している。 To m o ji O NO Z U K A Vitamin Talk 小野塚 知二 神野 直彦 vs 植田 和男 N a o h i k o Close Up J I N N O 熊本県 Lecture Update Post EMP Post EMP Salon Contribution v s K a z u o U E D A 蒲島 郁夫 知事 Mandala Talk Ikuo KABASHIMA 8 西村 淸彦/下山 淳一 伊藤 慎介/堀内 勉 小山 修/吉野 孝行 柴田 優 Vo l . 「EMPower ∼智慧に力を∼」の心 EMPowerは、人に権限を付託し責任を与え、最前線でより早く、より自律的に活 躍する場を与える意味で使われる。EMP同窓生として、学問の場に醸成されてい る「人類の智慧」に力を与え、現実社会を動かす原動力となりたいという思いか 16 ら、EMP同窓会「EMP倶楽部」の会報の名前として、このEMPowerが選ばれた。 EMPの活動を通し、EMPの修了生たちが集まり、人を、社会を、国を、そして 世界を力づける。 「人類の智慧」に力を与え、我々全員で次のレベルに上り、希望 Future EMP 「EMP倶楽部」HPリリースで 認知度UP! 17 Post EMP 伊藤 慎介 堀内 勉 に溢れる未来を切り開く。それがEMPの力、EMP Power、EMPowerの心である。 EMPower Vol.8をお届け致します。 今号は昨今の世界経済と我が国経済の大きな潮流を踏まえ、金融・経済政策を中 18 心に編集致しました。巻頭インタビューでは、小野塚知二先生に経済史の視点か ら昨今の経済動向とその政策の効能分析含めた視座を頂きました。イタリア・トリ 小山 修 吉野 孝行 Post EMP Salon エステに長期滞在中の小野塚先生にEMP修了生が海外取材をさせて頂く初めての ケースとなりました。曼荼羅トークでは、リーマンショック後の世界経済、特に我 が国のアベノミクスは正しい方向に進んでいるのか。地方財政審議会会長の神野 直彦名誉教授と、日本銀行政策委員会審議委員として金融政策の実務にも携わら れた植田和男教授に誌上対談して頂きました。 EMP club Event 東北弾丸研修旅行 新講義フィーチャーでは、蒲島郁夫熊本県知事に熊本県知事公邸にてインタビューさ 20 せて頂き、現在二期目の熊本県政で目指している政治を語って頂きました。また、9期 から登場した新講義の紹介として、モデレータの方々が二つの講義を紹介しております。 EMP倶楽部が発足した2009年9月以来5年目を迎え、200名を超える修了生のネット ジュネーブとロンドンから 柴田 優 Contribution 21 ワークを更に発展させていく取組みとして、EMP倶楽部ホームページが開設されまし たので、その開設主旨と今後の展望についても纏めました。先号に引続き、修了生 自身がスピーカーとして人生を語るPost EMPから2名のスピーチを紹介致します。ま た、修了生もグローバルに活躍しております。6期修了生の柴田優さんから 「ジュネー TIME CAPSULE EMP事務局より 表紙写真:伊藤国際学術研究センター/ 香山壽夫建築設計事務所 撮影 2 ■ EMPower Vol. 8 From Alumni 22 ブとロンドンから」と題し寄稿頂きましたので併せてご紹介致します。 今号も、どうぞご高閲ください。 EMPower 編集部 EMPower Vol. 8 ■ 3 イタリアのトリエステに長期滞在中の小野塚先生へのインタビュー、6/ Re: Vitamin Talk 「経済史からアベノミクスを考える」 Interview 小野塚 知二が語る 歴史研究は、まず今をどう見るかです。 今があるから昔のことを研究する意味がある。今の問題意識から100年前、200年前をどう見るのか。 それができないと、歴史研究は役に立たないモノ好きの学問になってしまいます。 (小野塚教授) にバランスよく成長でき、健全だったと しても、いまやそれに戻ることはできま せん。そのことを知るためにも、第一次 大戦前の「長い19世紀」と第一次大戦後 と「短い20世紀」の対比はとても大切だ と思っています。 話を再びトリエステに戻します。経済 が分断されてインバランスを拡大させつ つある時代に、どういう風に社会が生き 残るかを考えたときに、トリエステは先 進地域なんじゃないかと思うのです。20 世紀に入って、この町はイタリアの辺境 になり、経済的にも衰退し、人口も減り からデュッセルドルフ赴任となった8期生 正田周さんに夏休みも兼ねて飛んで頂きました。小野塚先生・正田さんに感謝 ︵編集長︶ 20 !! 小野塚:まず、トリエステは今回の主題 イギリスの歴史家エリック・ホブズボー 由は、欲望の釣り合いが取れなくなって にもかかわるので説明しますが、ここは ムは、近現代を「長い19世紀」と「短い いるからです。第一次大戦前は、世界の に頼って生産をどんどん増やす産業構 第一次世界大戦の前と後で、どのように 20世紀」とに時期区分しました。前者は 様々な地域で、欲望の強さ、欲望の動く 造から、コーヒー産業のような文化を背 世界経済が変わったのかを考える上で非 1789年のフランス革命から第一次大戦ま 速度が、ほぼ同じレベルだったのです。 景にしたビジネスや様々な介護、協同な 常によい場所です。 での約130年間で、後者は第一次大戦後 ところが、現在は、欧米や日本など先進 ど新しい社会のあり方の模索が行われ この町は2500年ほど前から、アドリア から冷戦体制終結までの約70年間です。 地域では、経済成長への欲望は非常に強 たのです。 海の港町として栄えてきました。14世紀 大事なことは、前者は世界経済がバラン くはなく、だいたい今と同じような生活 からオーストリアの支配下に入り、ヨー スをとりながら発展できた、つまりどこ ができればいいと思っているところがあ 正田:21世紀に入り、中国をはじめとす ロッパの主要な玄関の一つとなりました。 か一国に黒字がたまり、別の一国に赤字 ります。それに対して、BRICS等の新興 る新興国の台頭や、欧米の金融・財政 また、アジアやアフリカで取れたコーヒー がたまるという構造がなく、均衡して発 経済地域は、欲望が強く、その速度が非 危機を経て、世界経済には潮流の変化 豆の主要な集積地でもありました。ハウ 展した時代だということです。 常に速いのです。このように、経済成長 が見られます。我々は今、大きなパラダ スブラントや、日本でもお馴染のイリー 現在の世界経済をすごく単純化してい を渇望している新興国と欧米や日本のよ イム転換を迎えているのでしょうか? 等コーヒー豆の会社が創られ、コーヒー うと、アメリカの巨大な赤字を中国の巨 うな国々との間では、うまくバランスがと 小野塚:今が何から何へのパラダイム は重要な商売となりました。今でも街中 大な資金力でファイナンスしている状態 れていないので、19世紀的な経済に戻ろ 転換なのかを正確に言うためには、少 にカフェがあり、平日でも朝から皆カフェ です。それに対して、19世紀の世界経済 うとしても、無理だということです。 なくともあと20年は経てみないと分かり 代です。つまり、ここではアメリカが一 いのが今の状況だと私は考えています。 に座っています。カフェでは色々な文化 というのはバランスがとれていました。19 第二の理由は、通貨量のコントロール ません。過去100年の歴史を遡っていく 方的な資金供給者で、ほかの国は一方的 こういう時代の転換期を、人類はこれ が栄えます。イタリアの現代文学を切り 世紀の世界経済の基軸通貨は英ポンド です。19世紀には通貨量は非常に厳格に と、1990年代は世界中で通貨不安や金融 に資金を受け取らないと経済が回らない まで何度も経験しています。これまでは 拓いたイタロ・ズヴェーヴォはこの町の で、確かにイギリスは膨大な貿易赤字が コントロールされていました。第一次大 破綻があった時代、1980年代は世界的な というインバランスが発生しており、19 人類は転換後の姿をイメージし、それを 人でしたし、20世紀の最も重要な作家の ありましたが、海運業、保険業、金融業、 戦前の世界経済は、国際金本位制によっ 低成長の時代でした。1970年代はドル・ 世紀的な循環的な成長パターンが1920年 共有することで新しい時代に乗り込んで 一人であるジェイムズ・ジョイスも第一 資本輸出などの貿易外収支で、貿易赤字 て、通貨への信認と為替の安定がうまく ショックとオイル・ショックという二つの 代には壊れているのです。 いきました。例えば中世から近世は、ル 次大戦前のこの町を拠点として、 『ユリシ を補ってあまりある黒字を稼いでいまし 図られていました。しかし、最近の20年 混乱の時代です。1960年代は、一見する こうやって見てくると、21世紀に入っ ネッサンスという形で人間の欲望を解放 −ズ』などの名著を執筆しました。大戦 た。ですから、国際収支でいうと、イギ 間は、世界のどこかで常に金融不安や通 と人々の所得が増えて生活が豊かになっ て世界経済がおかしくなっているのでは する文化が起きました。近世から近代へ 後、この町に戻ってきたジョイスは、昔 リスは黒字国だったのです。そして、そ 貨破綻が起こっています。世界はドル・ てきた時代に見えますが、実はアメリカ なく、第一次大戦後ずっと不安定と不均 移る時代では、アダム・スミスの経済学と のトリエステではないと感じ、この町を の黒字の部分を海外に再投資したため ショックと金融ビッグバンを経て、通貨 が貿易赤字と財政赤字という“双子の赤 衡の中で動いてきたのです。単にその不 道徳哲学を基礎にして、リカード、ジョン・ 離れます。ジョイスの眼を通じても、第 に、海外の国々では鉄道や工場や港湾施 のパンドラの箱を開けてしまいました。 字”をどんどん増やして、ドルへの信認 安定と不均衡のあり方が、時代によって ステュアート・ミル、マルクス、マックス・ 一次大戦前後の変化が確認されることは 設ができたり、ブラジルのコーヒー園が 今となっては、19世紀の世界経済に戻る が低下した時代です。第二次大戦後の 違っていただけのことです。 ヴェーバー等の19世紀社会科学が成り 大変興味深いです。 できたりと発展しました。つまり、赤字、 のは無理なのです。 1945年から1950年代はヨーロッパや日本 経済史的にはこの不安定で不均衡な時 立っていきました。そして、近代から現代 なぜこの町は大戦後に衰退したので 黒字がたまるのではなく、お金とモノと人 第三の理由は、19世紀の人々が想像 は戦後復興の時代で、経済の浮き沈み 代はそろそろ終わって、もう一度何らかの へ至る、私が「介入的自由主義」と呼んで しょうか。戦前にはオーストリア=ハン が世界を循環することによって、世界経 しなかった、物的な成長や人口増加の限 が大変激しかったです。第二次大戦前の 形でバランスのとれた安定的な経済のシ いる時代は、国や社会や団体が個人を「幸 済が発展していたのが19世紀なのです。 界が、今は分かっているということです。 1930年代は、まさに大恐慌の時代です。 ステムやスタイルが確立されなければい 福」へと誘導していく仕組みが、ヨーロッ 欲望のインバランスに対して解決策のな そして1920年代、つまり第一次大戦後の ガリー帝国を通じて各地と結び付いた港 でしたが、戦後はイタリア領になったも 4 ■ ました。しかし、そういう中で人口増加 小野塚 知二 Tomoji ONOZUKA 東京大学大学院経済学研究科 教授 東京大学経済学部卒業、同大学院経済学研究科博士課程単位取得。経済学博士。 政治経済学・経済史学会 理事代表、社会経済史学会 理事。 主な研究テーマは、近現代イギリス社会経済史とイギリス労務管理史・労使関係史で、そのほかに、機械産業史、 音楽社会史、食文化史、兵器産業・武器移転史、ヨーロッパ統合史、などの諸分野でも仕事をしている。 けない時期だと思います。しかし、新しい パやアメリカで準備されました。 のの、イタリアの辺境に追いやられ、ど 正田:今、同じように均衡のとれた経済 いことが、今は理性的な知として非常に 10年間は、アメリカからヨーロッパをは 時代について「次の時代はこうなる」とい しかし、今、この現代(=20世紀)は ん詰まりの盲腸のようなところになった には戻れないのでしょうか? よく分かってきているのです。 じめ世界に対して資金が供給されること う信頼できる姿が描けないのです。新し 長続きしないだろうと直観的に感じてい ためです。 小野塚:理由は三つあります。一番の理 このように、19世紀の世界経済が如何 で、かろうじて世界経済が動いていた時 い経済・社会システムを誰も描けていな るものの、 「パラダイムはどう変わるのか。 EMPower Vol. 8 EMPower Vol. 8 ■ 5 Re: 東日本大宮支社にて新幹線の利用促進などをしています。鉄道博物館と縁が深く、ご要望の多いナイトミュージアム再度開催を目指します。ご期待ください。︵1期生 惠良 文人︶ JR Vitamin Talk インタビュアーの正田氏(8期)とホテルのロビーで。デュッセルドルフ駐在の正田氏が、滞在先のトリエステで取材。 6 ■ 興しました。 ます市場が広がりました。市場が広がれ いうのがアベノミクスの成長戦略に問わ るかを考えていかないと、本当の成長戦 もう一方の消費主導型の成長戦略とし ばますます価格が下がるという好循環が れる最大のポイントだろうと私は思いま 略は無理だと思います。 ては、1930年代後半にフランスの人民戦 欧米に続いて日本でも1950年代の後半か す。そこできちんとした将来像が示せな 線政府によって採られた政策があります。 ら60年代にかけて実現しました。 ければ、成長戦略は安定的な軌道に乗ら 正田:最後に、EMPへの期待をお聞か 人々に夏のバカンスを与え、できる限り消 以上見てきたように、成長戦略には二 ないでしょう。課題発見ということの意 せください。 費をさせる、そのことで需要が増えれば つのパターンがありました。消費主導型 味はここにあります。 小野塚:これは非常にはっきりしていて、二 経済も上向くだろうという考え方です。ア の方が効果は遅いけれども黄金の成長パ 労働改革がなければ、大衆需要は保証 つあります。一つは、EMPに来る人たちは メリカのルーズベルト政権が採った1936年 ターンであるということがお分かりいただ できません。ブラック企業ばかりがのさ エリートだということです。エリートというの 以降の中期ニューディール政策も消費主 けたかと思います。しかし、今は第二次 ばるような社会では、大衆需要は伸びま は、エリート意識を持っているということで 導型成長戦略です。人々の所得の保障、 大戦後と異なり、自動車や家電は誰もが せん。更に、仕事と勉強と個人生活の3 はなくて、常識を疑える人ということです。 雇用保証のための公共事業、農民所得の 持っていますので、欲しいものといえばコ つのバランスが取れた、ワーク・ライフ・ 世の中の多くの人が当たり前だと信じてい 補償のための農業調整法といった政策で、 ンピューターや携帯ぐらいですが、それ スタディー・バランスともいうべき新しい ることを、違うのではないかと疑問を提起 消費を下げない仕組みを作りました。 らはたいした値段ではありませんから、規 働き方や暮らし方の開拓がなされるべき できる、その力をEMPの人たちは持ってい ところが、これらの消費主導型成長戦 模的に同様の効果を生みません。ほかに です。日本でワーク・ライフ・バランス ます。常識に棹さすということですが、そ 次の時代は何を原理にして動く世の中な がありました。ひとつは投資主導型の成 略は、経済史的にいうと、投資主導型に も条件がありますが、どれひとつをとって の改革が進まない最大の理由は、正社員 のためには知識や理論が必要です。EMP のか」ということが、なかなか見えない 長戦略、もうひとつは消費主導型の成長 比べて、短期的な効果は弱かったことが も、戦後の高度成長と同じ状況を実現す の首を切るのが難しいからだと言われて の人に期待したいことはそういうエリートの 状況にあります。現代が終わろうとして 戦略です。 分かっています。なぜか、消費主導型で るのはすごく難しい状況にあります。 います。それに対して、ヨーロッパでは 役割です。 終われないのが現在です。 投資主導型の成長戦略を最初に採った は結局賃金が下がらないので、企業は雇 では今のアベノミクスがどのような成 正社員は日本よりもずっと首を切られ易 もう一つは、同窓会です。EMP出身 のはイタリアです。ムッソリーニのファ 用のインセンティブが低くなります。雇 長戦略の方向に向かっているかというと、 いのですが、ワークシェアリングを始め、 のエリートたちが、東京大学という場を 正田:わが国では、過去に例をみない シスト政府は「産業復興公社(IRI) 」とい 用のインセンティブがないと、結局、新 明瞭に投資主導型の方に向かっていま 色々な働き方があり、常勤と非常勤、あ 核にして、何百人も集って自由に意見や 規模で、 “異次元”の経済政策が実行に う投資をするための公社を作り、イタリ 規投資もできないですよね。しかし、投 す。円安による輸出競争力向上が前向き るいは正規と非正規の間の賃金格差、男 情報を交換できるわけです。これまで 移されています。経済史的に見てアベノ アの弱かった産業や金融の仕組みを抜本 資主導型にも問題がありました。内需が に期待されていますが、国内大衆消費の 女の賃金格差も日本に比べて非常に小さ 日本になかったエリートのクラブのよう ミクスをどう評価されますか? 安倍政 的に強化していく政策を採ります。これ 増えないことです。投資環境が整い、企 基盤となるような雇用や生活の安定とい いのです。ですから、男が家事や介護を なものとして重要な役割を果たせるよう 権が歴史から学んでおくべきことは何で により1920年代から30年代にかけてイタ 業はどんどん投資し、生産量も増えます う意味では、統計からは測れないブラッ して女性も働くという暮らしの可能性が になる時期と、日本が本当に経済的にも しょうか? また、第三の矢である成長 リアは急速な経済成長をとげます。イタ が、賃金が増えないですから消費が増え ク企業の増加や、生活保護という国民の いくらでもあるわけです。 政治的あるいは外交的にも、もっと大き 戦略において議論が始まっている労働シ リアに続いて、ソ連も投資型成長戦略で ません。 最低限を守る仕組みの不安定化があり、 日本の大企業の労働組合も正社員の雇 な問題に立ち向かわなければいけない ステムの変革は、我が国に何をもたらし 第一次大戦後の経済破綻からの脱却を目 そうなると、この投資主導型の成長戦 むしろ不安感の方が増えていると言って 用を守ることだけを第一目標に考えてし 時期というのが、どちらが早いか時間の ますか? 指しました。スターリン時代の第一次五 略が辿るパターンは三つです。一つは輸 もいいかもしれません。 まうと、いつまでも政策も法制も変わら 競争のようなところがあると思います。 小野塚:アベノミクスについては、大胆 カ年計画、第二次五カ年計画がこれに相 出依存型の経済で、これは近隣窮乏化政 そうすると、アベノミクスの成長戦略とい ないのではないでしょうか。組合と経団 EMPにはものすごく期待しています。 な金融緩和をしながら、財政規律が必要 当します。ナチス・ドイツも投資主導型 策となりますので、周辺国との摩擦が起 うのは、まだ当面は、消費主導型の分厚 連と政府、そして有識者たちが日本の雇 だとする整合性のない政策の寄せ集めと 成長戦略を採りました。ドイツは1930年、 きます。二つめは軍事化です。政策的に い効果を持つ方向にはいかなくて、せいぜ 用・生活システムをいかに抜本的に変え いう批判があります。私もそうだと思い 31年に世界大恐慌で大きな被害をこうむ 軍事産業にシフトすれば、軍隊が兵器を い投資に刺激を与えられる方向が整いつ ますが、今はこうした思想的混乱の中か ります。しかもヴェルサイユ条約の中で 買い、需要がどんどん出てきます。イタ つあるという状況に過ぎないと言えます。 ら新しい経済・社会システムが模索でき 賠償金支払いという負担も負っていまし リア、ソ連、ナチス・ドイツも軍事化の こういう風に歴史に学んでみると、投 ればいいわけで、このような混乱状況の た。その経済的な苦境の中で、当時ナチ 方向に行きました。三つめは誰も消費し 資主導型、輸出依存型、軍事化依存型 中でアベノミクスに政策思想的な一貫性 スの経済政策を担ったヒャルマル・シャ ない無駄なものばかりを生産してしまう ではなく、大衆的な裾野の広い需要拡大 を求めること自体、そもそもナンセンス ハトとナチスの経済官僚が考えたのは、 パターンで、ソ連が典型です。統計上は によって成長軌道に乗せなかったならば、 であり、実験をしているのだと考えるし 投資環境を整えることでした。 「冶金学 生産量が増えるのですが、誰も消費でき 安定的な成長軌道がないことが分かりま かないというのが私の立場です。 研究所(MEFO) 」といういわばトンネル ないようなものが膨大に倉庫に積まれて す。輸出市場にばかり乗り込んでいく経 20世紀の歴史を振り返ると、趨勢とし 機関のようなものを政府が作り、手形を しまう非効率な経済になります。 済政策を行ったではまずいわけで、内需 ては、この100年間は、明らかに金融緩 発行します。この手形が、事実上の国債 それに対して消費主導型は、投資主導 でまず成長基盤がなければいけません。 和の方向に動いているわけで、そういう みたいなもので、そこにおカネをつぎ込 型につきものの副作用がありません。これ そして、物的成長とか人口増加ではいま 中で、より一層、大胆な金融緩和をする むやり方で大胆な金融緩和と財政出動を が本当に定着したのは第二次大戦後で、 や勝負できないわけですから、日本人が のは歴史の必然性があると言えるのかも 行いました。これによって、アウトバー 人々の生活が安定すると同時に、消費が 将来の経済や社会や人生のイメージを、 しれません。 ンを作り、様々な工業への投資を行い、 拡大しました。この成長パターンでは自動 もっと安定的な希望を持って語れるよう 経済史的に見ると、デフレ脱却を目的 更に1935年にはヴェルサイユ条約から抜 車とか家電製品といった高嶺の商品の値 な状況を作ること、すなわち日本人が暮 とする成長戦略には、大別して二つの型 けて再軍備を始め、兵器産業を大々的に 段が下がり、消費に伴う大量生産でます らし、学び、働く環境がどうなるのかと EMPower Vol. 8 (聞き手:8期生 正田 周、編集:8期生 関根 千津、4期生 永尾 英二郎) EMPower Vol. 8 ■ 7 Mandala Talk EMP修了から4年、私の職務は国内エネルギー販売で不変ですが、取扱製品が化石燃料から太陽電池へと大転換。北海道から鹿児島まで﹁Made in Japan﹂技術の普及に奮闘中です。︵2期生 小山 征弘︶ Re: を回すことなのですが、金融が古い産業 因を突破する社会構造に変えていかなけれ いものは望めば切りがないですから、医療 や株式に金を回し続けると、それが必ず ばいけないと思います。 費で面倒を見る必要はありませんが、他方、 タミフルはインフルエンザが治れば、ニーズ バブルにつながることになります。そうな 【世界経済の今後を見通す二つの視点】 神野 直彦 vs 植田 和男 リーマンショック後の世界経済、特に我が国のアベノミクスは正しい方向に進んでいるのか。地方財政審議会会長 の神野直彦名誉教授と、日本銀行政策委員会審議委員として金融政策の実務にも携わられた植田和男教授に 誌上対談していただきました。 求められる「量から質の経済への転換」 神野 直彦 Naohiko JINNO 東京大学名誉教授、地方財政審議会会長。日産自動車株式会社退職後、大阪市立大学経済学部助教授、東京大学経済学部助 教授、同教授を経て、1996年から2009年3月まで東京大学大学院経済学研究科教授 (2003年から2005年まで同研究科長) 。 2008年10月より現職。2009年から2010年まで関西学院大学教授。現在、総務省 地方財政審議会会長。 ■ 医療も成長ビジネスだと言いながら、混 は埋まるもので、金に任せて飲みまくる人は て、どこに金を回すか民主的に決定せざ 合診療の問題など障害があり、本当にこ いません。その区別は、それぞれの社会で るを得ない。いわゆる政策金融とか基礎 のまま社会保障費だけ増えて良いのかと 決めれば良いと思います。 研究とかインフラストラクチャーといった 思いますが。 基本的な部分を国が整備するということ 社会保障というのは、いわば 「家族関係 政府の役割について、どうお考えですか。 は、第三の矢の成長戦略で出てくるのか の社会化」です。家族関係という共同体的 1873年にウィーンの株式市場が暴落して もしれませんが、今のところ出ているのは な関係の中で、生産世代が労働能力を失っ から23年間、世界的に物価が下がり続ける 規制緩和と減税だけですよね。 たり、まだ身につけられない世代を扶養す という大不況がありました。結果的には重 るということです。この世代間の扶養を個人 化学工業化で乗り越えるのですが、危機 最近の成長戦略は短期的で手軽ですが、 の責任でやるのは大変なので社会化しよう が起こると経済学のパラダイムシフトが起こ 本当は時間がかかってリスクも大きいは というわけです。つまり、医療費や教育費を ります。そのときに生まれたのが財政学で、 ずですが。 個人個人で負担するか、公的に負担するか 「市場経済」と 「政治」だけでなく、それにも 世界的に眺めても、従来型の重化学工 の話で、社会全体で見れば、負担すべきコ う一つ、無償労働を前提とした家族などの 業はかなり行き詰まっていて、新興国にお ストの総額は同じということです。 いても単にキャッチアップしているだけです。 購買力に応じて配っても良いもの、つまり ことが重要だという考え方です。市場経済 1929年の大恐慌のときの新興国はドイツと お金持ちは多くもらえるけども貧しい人はもら というのは社会全体を動かすエンジンには かアメリカで、彼らは、重化学工業という新 えなくて良いというサービスは、市場に委ね なりますが、舵をどちらかに切っていくという しい産業分野で、イギリスのような繊維業 れば良いですし、他方、貧富に関わらず必 ハンドルの役割は果たせません。これは民 を中心とした覇権国に挑戦したのですが、 要に応じて配るべきというサービスは、市場 主主義的なプロセスを通じて政治でやるか、 人間の歴史という視点で見たときに、今 原理から外して財政の論理でやるしかあり 市場経済のもう一つの対比である私的な家 は進歩と呼べるような次の産業を創れて ません。そうするとモラルハザードになるとい 族関係の中でやるか、この3つくらいの面を いないと思います。 う人もいますが、ニーズというのは 「欠けてい 考えておかないと駄目でしょうね。 なぜ今それが必要かというと、次の二 るところ」という意味なので、そこが埋め合 つのことが決定的な制約要因になってい わせられれば止まるものです。それに対し グローバルに見ると、リーマンショック るからです。一つは自然環境の制約で、 て、市場に任せても良いものが欲望なので 以降修正はされているものの、基本的に 人間が自然から有用物を取り出す活動が すが、これは際限なく膨れ上がるものです。 は新自由主義的な方向に進んでいると 経済だとすれば、そろそろ大量生産・大 例えばバイアグラのように、本来ニーズでな 思いますが。 アベノミクスに対する評価をお聞かせいただ です。それが逆に円安になるということは、 されたからです。それに対して、安全面で 量消費という無駄ができなくなっていま けますか。 ある意味でアベノミクスのアナウンスメント効 見るとヨーロッパの方が優れています。それ す。この制約はなかなか市場原理だけで 何度説明を聞いてもアベノミクスの経済 果ということになるのでしょうね。それに対 は規制が強いからで、これは戦略的規制と は解決できませんし、そもそも環境は市 論理は理解できないですが、デフレからの する思惑が入るから。 いう言葉で言われていて、人間というのは障 場原理に乗っていません。もう一つは人 害を乗り越えるために工夫をこらす素晴らし 間の絆の破壊で、家族とかコミュニティと 脱却を掲げること自体は間違いではないと 8 ると、政治というか多くの人が知恵を絞っ 思います。只、国民が期待している景気回 産業の新陳代謝を進めていくと、必ず規制 い能力を持っているのだということです。 いった無償労働も、市場原理に乗ってい 復とは、インフレにしてくれとか株価を上げ 緩和の話とセットになります。 それから、もう一つ重要な点は、1929年 ません。こうした愛情やいたわりがないと てくれとかいうことよりは、雇用や賃金の安 今やろうとしている政策は規制緩和です の世界恐慌のときには金本位制だったので 人間の社会は成り立たないのですが、今 定、生活の安定ということではないかと思 よね。財務省的に言うと、金がかからない 市場のメカニズムが効いたことです。これに はこちらの方も崩壊してきています。 います。ですから、インフレで注意すべき やり方です。本当は、例えばNASAにしても よって、衰退産業には資金が回らなくなって、 そうした中で次の産業をどうすべきかとい なのは、賃金がついていかないと、それが 軍事産業にしても、最初からそれを狙った 市場からの退出を促すことになったのです うと、知識社会と言っても良いのですが、知 国民の期待と一致しない可能性があるとい わけではなくても、やってみると思わぬところ が、一方で大恐慌のような非常にドラスティッ 識をベースとした産業に変えていくということ うことです。 から新産業が出てくることがあります。情報・ クな犠牲を払うことになりました。 です。モノを作るにしても、自然に存在して 実は、アベノミクスの少し前から株価が上 通信産業がよい例です。 今は金本位制ではなくて、どんどん資金 いる原材料に対して、知識を大量に加えて、 がり始めて、円も安くなり始めていました。日 また、規制緩和をすると新しい産業が出 を入れるので、市場のメカニズムが働かなく 量を質に変えていく構造にしていく、つまり、 本株を買っているのは主に外資で、そうする てくると言いますが、例えば日本の自動車の なっています。本来、今のメカニズムで想定 今の範疇で言うと、知識集約産業とかサー と普通であれば円は上がる方向になるはず 低公害技術が発達したのは、規制が強化 されているのは、金融が新しい産業に資金 ビス産業を軸にして、これら二つの制約要 EMPower Vol. 8 「社会」を加え、これら3つのバランスを保つ Naohiko JINNO EMPower Vol. 8 ■ 9 Mandala Talk 日曜の夜、 ﹁半沢直樹﹂も評判ですが、私は﹁八重の桜﹂にはまっています。夏休みは、山内先生の﹁名将と参謀﹂を読み返し、会津を旅します。︵5期生 平間 久顕︶ Re: Kazuo UEDA 必ずしもそうではないのではないでしょう 差や貧困を伴わない経済成長の方に舵 庸の徳と言ったら良いのかもしれませんが、 一つめと二つめの対応が必要な状況ではな か。ヨーロッパを見ていただくと、通貨を統 を切り始めました。韓国では、今まで財 世界はそういう方向に向かっているというの くて、三つめの実体経済の力がまだ弱いと 合した結果、国内格差と同時に国家間格差 閥を優遇して走らせるという政策を打っ が私の認識です。にも関わらず、日本だけ いうことだと思います。第一の矢は、それに が問題になって、その反省の機運が起きて てきましたが、市民運動家がソウル市長 がまだ成長成長と言っていますが、これは も関わらずマネーを増やして特に国債を大 います。その根底にあるのは、市場経済を になり、朴槿惠はハンナラ党 (偉大な国 いつか来た道なので、仮に成長戦略を掲 量に買うという政策ですが、それに対して 拡大し過ぎたためにショックアブソーバーが 家の党)を、セヌリ党 (良き社会の党)と げるとしても、格差や貧困を伴わない成長 為替や株があんなに反応したのはやや驚 上手く機能しなくなったという反省です。フラ 改名しました。 を指向すべきだと思います。それからもう一 きです。マーケットが壊れそうなときの金融 つ重要なのは、 「意味の充実」と言いますか、 緩和には効果があって、それが2008年から ンスのトタルとかロレアルの社長たちが金持 ちに税金をかけて再分配すべきと言い始め 結局、折衷的なところに答えがあるというこ 私は 「量から質の経済」と言っていますが、 2009年のアメリカだと思いますが、日本はそ たり、アメリカで言われているバフェット・ルー とですね。 知識を使って量を質に変える経済を作って ういう状況ではありません。ですから、Fed ルやスティグリッツの 『世界の99%を貧困にす そうです。私から申し上げたいのは、 「分 いくことで、先ほど述べた自然環境の破壊 で言えば2008年から2009年にやったことと る経済』もそうです。中国では、習近平がも かち合い」ということです。スウェーデン語で や人間の絆の破壊という二つの制約条件を いうよりは、それ以降にやったことと同じこ はや成長戦略ではなく発展戦略、つまり格 いう 「ラーゴム」 、即ち、適切なバランスや中 克服する必要があると思います。 とを日銀が今回大規模にやったのだと思い ます。それに対して誰が反応したかを見る と、少なくとも最初の半年間はほとんど外 世界中で高まる「高インフレリスク」 植田 和男 Kazuo UEDA 東京大学大学院経済学研究科 教授。東京大学理学部卒業、同経済学部学士入学、同大学院修士課程修了。マサチューセッツ工科大 学博士課程修了Ph.D.。経済学博士。カナダ・ブリティッシュコロンビア大学経済学部助教授、大阪大学経済学部助教授、東京大学経 済学部助教授、教授を経て2005年から現職。その間、大蔵省財政金融研究所主任研究官、日本銀行政策委員会審議委員も務める。 る疑似エクイティとして、根雪のように回収 格が上がるという経験則をイメージしてい 何が牽引役になるかというのは、正直分 しない貸付けを続けていたのが、不良債 たということではないかと思います。 からないんじゃないですかね。ひとつ言え 権問題と金融庁検査や国際的な金融規制 るのは、日本の中で競争力がある分野とい から、ここ十数年できなくなってしまい、そ インフレ率以上に金利が上昇するリスクが高 部の地域、一部の労働市場については柔 マネーを供給することによってインフレが発 うのは、製造業の一部、サービスのごく一 れを代替するものがまだ出てきていません。 いる方向についてどう受け止めていらっしゃ まってくると思います。 軟にして、それに参加しないでまあまあの感 生する、ということではないと。 部、それと潤沢な金融資産があるというこ それがどのくらい日本経済の足腰を弱めて いますか。 後者については、インフレ目標を達成する じでいいという人はそれで済むような、ハッ それについては懐疑的です。理由は二 とではないですか。これを活用して何がで きたかを定量化するのは難しいですが、そ 全体として良いとか悪いとか単純化して だけでは駄目で、いわゆる第三の柱で、様々 ピーな二極分化のようなものを考えられるか つあって、一つは、必ずしも実体経済に きるかということですが、政府がこの産業 ういう面があるのは事実だと思います。 な既得権益に切り込まないといけません。 どうかですが、只、それを東京と地方で二 お金が向かわないということです。金融危 と決めて育成すれば上手くいくかというと、 アメリカやヨーロッパには、お金持ちが 機のときに積極的にお金を使う人はいな 具体的には、仮にアメリカのようなダイナミッ つに分けるというのは必ずしも良くないかもし なかなか難しいのではないかと思います。 いることによってリスクのある投資への資 の回復がまだ完全ではありませんが、回復 クな経済にしようとするなら、労働者を自由 れないですね。地方であっても世界トップク いわけで、アメリカも少し前までそうでした かつての高度成長期のようなキャッチアッ 金が出てきますが、これが日本では全く事 のために打った政策のツケをどうやって払う に解雇する権利を企業が持つという 「労働 ラスの企業との競争に参加するということで し、日本でも95∼96年以降はずっとそうで プの過程とは違いますから。 情が違っていて、資産といっても現金では のかというところが、これからの課題だと思 市場の改革」と、様々なステークホルダーの 活力が生まれてくることもあるでしょうから、 した。もう一つは、短期金利は既にゼロ付 それでも、アメリカのインターネットとか なく企業オーナーの自社株や不動産が多 います。ほとんどの国で、金利はゼロ近辺 中で、特に労働者の利益に配慮している企 形式基準で分けてしまうのは良くない気が 近まで低下してしまっているので、いくらマ 航空機産業の競争力が元は軍事技術か く、しかも株価も地価も下がってしまったと にあり、財政赤字が膨らみ国債残高が増え 業の行動原理を、より株主の方に重点を置 しますけど、その辺が難しいところですね。 ネーを増やしても金利が下がらないという らきているという国情の違いは別としても、 いう背景があります。 てしまっている。更に、増税の余地が限ら くように変えていくという 「コーポレートガバナ ことです。 広い意味での公共インフラ的な部分にお れている中で、財政の問題を解決する一つ ンスの改革」が必要になります。そうすると、 金融を緩和してマネーを供給すれば株価や 一般によくある誤解は、中央銀行が紙 いて政府がやれることは残っていると思い 基礎研究に対するお金も絞られています。 の有力な方法がインフレーションであるとい 経済の効率性は上昇すると思いますが、社 地価は上がる、という意味で、第一の矢と 幣を刷ればインフレになるのではということ ます。どの分野が一番重要かを決めるの 特に理科系の一部については、そう言 済について言えば、世界的な金融危機から 会政策としてそういうことを本格的に進める いうのは正しいとお考えですか。 ですが、お金をいくら刷っても皆さんが持っ は、難しいと思いますが。あるいは、醒め えると思います。他方、資金の効率的な配 ネーの供給量が膨大になっていることの両 のが日本に合っているのかどうかという問題 経済が縮んでいるときにマネーの量だ ている国債と等価交換をするだけですか た見方ですが、日本経済自体を強くすると 分という意味では、東京大学一つをとって 方から、潜在的には世界経済に高いインフ に直面すると思います。 け増やしても、株価や地価が上がるとは限 ら、単純に言えば人々の購買力は増えない いうよりは、まだお金があるうちに、有望な 見ても、本当に世界のトップと肩を並べる りません。アメリカで資産価格が反転して わけです。ですから、焦点は長期金利を 投資先である海外に投資しておくというモ ためには、もっとスリム化して予算配分にメ 先生ご自身は、新自由主義的な経済政策を いるのには、三つのことがあると思います。 下げられるかどうかだと思います。それも、 デルにもう少し力を注いでもいいかもしれま リハリをつけないと駄目だと思います。その アベノミクスからの出口戦略が難しいとこ どう受け止めていらっしゃるのでしょうか。 一つめは、資本注入のような金融仲介機 実は日本銀行はこれまでも色々な手段でか せんね。既に製造業は、ある意味でそれ ためには、学生数も大幅に減らしてしまっ ろですね。 海外との競争が厳しくなっている中で、 関への対策を素早く打った。二つめは、民 なりやってきていて、これ以上下げられたと をやっているのだと言えると思います。 ても良いと思います。改革の努力はそれな アベノミクスの成否のポイントの一つは、イ 現状維持を目指すだけであれば、結果的 間の金融取引がなくなってしまったときに しても、そこから出てくる政策緩和効果は ンフレ率を2%の目標にまでもっていけるかと に色々な面で競争に負けて現在の生活水 Fedが間に入って資金を供給した。それか 小さいだろうと見られていたのですが、そ 産業の新陳代謝という面で言うと、再チャ た労働市場の話と関係しますが、大学とい ら三つめは、危機後の停滞が5年間続い れでも今回国債を大量に買ったら市場は大 レンジを含めてリスクマネーをもっと供給す うところは一旦教授になってしまえば首を きく反応したということですね。 るなど、まだまだ金融にできることがある 切られないという前提で動いていますから、 のではないでしょうか。 それをスクラップすることができなくなって しまうという問題があります。 うこと、大幅な金融緩和をしたままでありマ レリスクがあると言えると思います。 いうことですが、もう一つはより実態的な問 ■ お考えをお聞かせいただけますか。 経済学者として、今の世界経済が向かって 言うのは難しいと思いますが、先進国の経 10 国人で、大量に金融緩和をすると資産価 準も維持できなくなると思います。したがっ りに行われているものの、最初にお話しし 題として、経済は本当に良くなるかということ て、経済あるいは労働市場のある部分につ たと言っても、アメリカには人口増加とイノ です。前者についてはまだ分からない状況 いて、より適材適所で能力に応じてという方 ベーションを基礎とした経済の活力があっ ですが、インフレ率や金利が上昇してくるに 向に行かないといけないと思いますが、そ たということです。 経済の面から、我々が進むべき方向とその 特に中小企業向けのエクイティ性の資金 つれて、日本国債を売ろうという誘因が増し、 れを日本全体に広げるというのではなく、一 日本のここ1、2年の状況は、今述べた 牽引役について、また、国の役割について、 が出なくなっています。昔は銀行がいわゆ EMPower Vol. 8 (6期生 堀内 勉、5期生 鶴田 浩久) EMPower Vol. 8 ■ 11 Close Up 本年7月からワシントンDCの在米国日本大使館で勤務しております。少しでも我が国のプレゼンスを上げるべく、足と口を駆使して、しっかり﹁営業﹂していきたいと思っています。︵7期生 田口 芳郎︶ Re: は、東大の歴史上初めてとのことです。 講義フィーチャー 目標の政治とは ― 行政の新フロンティアを目指して ― 蒲島 郁夫 Ikuo KABASHIMA 熊本県知事(平成20年4月就任) ハーバード大学大学院修了(政治経済学博士) 昭和40年熊本県立鹿本高校卒業後、地元農協に勤務。 昭和43年農業研修生として渡米。 昭和49年ネブラスカ大学農学部卒業後、 ハーバード大学大学院に進学。 筑波大学社会工学系教授、東京大学法学部教授を経て、現職。 平成24年に再選され、現在二期目。 政治学から生まれた「蒲島県政」 地方自治体としての熊本県をどう導いているのか? 12 ■ ん割る人は、たくさん皿を洗う人なんで 私が県政を任されたときの一番大きな課 政治学者と政治家とのギャップ すね。だから、皿を割ることを恐れない 題は、この財政再建でした。そこで、ま で、失敗を恐れずにチャレンジしようと。 ず私がやったのは自身の給料を100万円 政治学者から政治家へ転身されたわけ 今考えると、行政のセオリーと反対の カットしたことです。知事の給料は124 ですが、そこでギャップを感じられたこ ことをやっています。繰り返しになりま 万円です。私が一期目に県に返したの とはありますか。 すが、行政というのはなるべく継続性を は給料と退職金でだいたい4,000万円く 蒲島:政治学者にはプレッシャーがあ 尊重する。それからリスクをとらない。 らいだったと思います。しかし、この決 りません。一方、政治家である知事は、 「皿を割ることを恐れるな。 」ということ 断によって、3つのすばらしいことが実 有権者、関係団体、議会からのプレッ を私が言うことができたのは、自分自身 現できました。まず、県の職員が給与 シャーがある中で、現実的な政策を行わ が行政出身ではなかったからではないか カットに応じてくれたこと。これによっ なければなりません。そこには、理想と なと思っています。ただ、責任は私がと て、3∼7%の給与カットができました。 現実の絶妙なバランスが必要と感じて る、そして自分の任期中に結果を出すと 二番目に県民が本当に「熊本県は大変 います。政治学者には自分の知識や研 いうことをずっと言い続けてきました。 だ、財政難だ」ということを分かってく 究に従う「精神の自由」があり、この自 これが「熊本県政」から「蒲島県政」に れたことによるアナウンスメント効果。 由は政治家にはありません。政治家の 変わったきっかけです。 三番目に私への政治的信頼を得ること 立場で、 「精神の自由」をいかに保つか、 そして、従来の行政というのは指導、 ができたことです。つまり、蒲島知事は いかに理想と現実のギャップを埋めるか 規制、管理、そういうことが主な仕事な お金のために仕事をしているのではない ということに難しさを感じました。 んです。そうすると、必ず継続性とか、 ということを認知してくれた。これはと また、政治家にとっては選挙が制約 没個人ということになっていきます。こ ても大きいです。この3つのことを獲得 条件になります。私の場合には、幸いに れは、行政の本質かもしれないけど、そ することで、財政再建に道筋をつけるこ も政党に過度に依存せず、お金をかけ れは違うと思います。政治と行政は、県 とができたのです。具体的には、平成20 ない選挙をしたので、選挙後、 「精神の 民の総幸福量を最大化することを目標 年に1兆円以上あった借金が、一期目が 自由」を保つことができました。しかし、 にしなければならないと考えます。した 終わったときには、1,000億円返すことが 一般に、政治学者が政治家への転身を がって、従来の行政の手法ではなく、 「個 でき、借金が1兆円以下になって貯金も 図ろうとすれば、大きなジレンマを抱え 人の総幸福量の最大化」を目標とするこ 82億円まで伸ばすことができました。 ることになるでしょう。 とを、徹底して職員に訴えました。これ もう一つの大きな問題として、熊本県 により、行政におけるパラダイムシフト には川辺川ダム建設計画をどうするかと を熊本県で成功できたのかなと思ってい いう問題がありました。熊本県では、こ EMPowerでは、EMP倶楽部並びにEMP 高校卒業後、地元の農協に就職しま から大学に残ってはどうかと言ってくれ 受講を検討している方々に向けて、8期 した。しかし、夢をあきらめきれず、第 ました。そこで、どうせ学問をやるので に新たに登場した講義の中から、特に 二の夢、つまり将来阿蘇で牧場主になる あれば、一番好きな学問をしたい、一番 印象に残り、紹介したい講義をフィー 夢を実現させるために、農協を辞め、農 勉強したいのは何だろうと考えたら、政 選挙についてのお話もありましたが、昨 ます。 の計画を巡り、40数年来の対立が続いて チャーさせて頂いております。最初の質 業研修生としてアメリカに渡りました。 治学だと思い当たり、政治学の勉強をす 年4月に知事選を経て、熊本県知事とし そして、自分の県政をやりながら、3 いました。私の知事就任時、川辺川ダム 問ですが、蒲島知事は、政治学者から しかし、研修生とは名ばかりで、実際に るため、ハーバードに行くことにしまし て二期目に入られました。 「蒲島県政」 つの政治があることに気づきました。 をめぐる状況は、次のようなものでした。 政治家になられましたが、その原点は何 は、安い労働者として奴隷みたいに使わ た。よくあのハーバード大学が一度も政 の特色は何でしょうか。 でしょうか。 れました。農業も大変だなと考えている 治学を勉強したことのない私を、奨学金 蒲島:行政というと、継続性や安定性を 「蒲島県政」の特色 「決断の政治」、 「対応の政治」、 「目標の まず国土交通省は当然ダムを作る、それ 政治」です。これは、それぞれが政治で から県議会は圧倒的に自民党多数です 蒲島:原点はやはり「夢」です。私が生 ところにネブラスカ大学で3カ月間の学 付きで受け入れてくれたなと思います。 重視します。でも、それではだめだと私 すが、内容が異なります。 「決断」とは、 から、当然川辺川ダムを作る、県庁幹部 まれたのは昭和22年1月。家族は旧満州 科研修があり、そこで初めて学問に触れ 普通はハーバード大学のドクターを取る は思っています。 「熊本県政」といった それによりものごとを動かすこと。 「対 もダム建設に賛成です。そういう状況下 国から一文無しで引き上げ、その10人 ました。農業の労働と比べると、勉強す のに6年ぐらいかかりますが、私は3年9 らそれだけで思考停止するので、 「蒲島 応」というのは、自分が考えたこともな で私は川辺川ダムを考えなければならな 兄弟の8番目の息子として生まれました。 るだけで生きていけるというのは何と楽 カ月で修了することができました。なぜ 県政」と呼ぼう。そして知事が替われば いことが起きた場合に、どう対応する かった。それで、私は検討する時間を6 そして、お金がないものですから、子供 だろう、もう少し勉強したいと考え、24 かというと、4年しか奨学金がなかった 次の人の県政ということでいいじゃない か。そして「目標」というのは常に掲げ、 カ月間もらい、最終的に川辺川ダムの建 たちは新聞配達をして家計を助けまし 歳のときにネブラスカ大学の農学部畜産 ものですから、早く修了しないと生きて か。その代わり、 「蒲島県政」の中では3 言い続けることによって県民が同じ方向 設計画を白紙撤回しました。仮に、私に た。学生時代は、成績が良くなくて、小 学科に入りました。同大学では、豚の精 いけないわけですね。自分自身を追い詰 つのことをみんなで考えよう。まず、 「で を向くこと。 豊富な行政経験があれば、そんな決断 学校の6年間のうち、通知表で「5」をも 子の保存方法を研究しました。そして、 めることも学問にとっては大事なのかな きないと思うな。どうしたらできるかを らったのは一回だけ。ただ、三つの大き 25歳のときに奨学金をもらうことができ と思っています。その後、筑波大学の な夢を持っていました。一つめの夢は小 たので、熊本から婚約者を呼び寄せて はできなかったかもしれません。やっぱ 考えろ。 」二番目は「国に頼る行政をやめ 決断の政治 り「国家に対する反逆」というのは地方 講師になったのは33歳、そして平成9年、 よう。国に頼るな。それから他県と比べ 一期目で、一番大変だったのは熊本 政治家から見ると大変なことでした。た 説家になること。本を読むのがとても好 結婚し、結婚生活を送りながら同大学を 50歳のときに東京大学法学部の教授に るな。 」国に頼ったり、他県と比べたりす 県が厳しい財政危機にあったことです。 だ、この白紙撤回をした直後に地元の新 きだったものですから。二つめの夢は牧 卒業したのは28歳のときです。 就任して、61歳のときに東大法学部を辞 ると、熊本はそんな悪くないわけですか 実際、私が就任した平成20年には、借 聞社が世論調査を実施したところ、85% 場主になること。三つめの夢は政治家に その在学中、ネブラスカ大学での指 めて、そして熊本県知事に立候補しま ら、思考停止に陥ってしまう。三番目は 金が1兆693億円ありました。そして貯金 が「私の決断」を支持する、83%が「私」 なることです。 導教授が、お前は研究者に向いている した。現職の教授が選挙に出たというの 「皿を割ることを恐れるな。 」皿をたくさ がわずか53億円しかありませんでした。 を支持するという結果になり、民意の支 EMPower Vol. 8 EMPower Vol. 8 ■ 13 Close Up 昨年 Re: 月にシカゴに赴任して早9カ月。アメリカ中西部を駆け回ってます。アメリカは広い!︵7期生 須藤 直之︶ 11 持によって、この白紙撤回は成功しまし になりますが、隣の県で発生した直後に です。発生時、私はソウルにいました 超高齢化社会への対応 りそうですか。 これにより、多方面にわたる効果が期待 た。今はダムによらない治水を考えてい 私が本部長になったのです。何故、こ が、急遽予定を切り上げ、熊本に引き 切り口を少し変えて、EMPで議論され 蒲島:最近、くまモンを通して考えるこ されます。道やダムを作ることよりも、 ます。 の段階で本部長に就任したかと言うと、 返しました。帰路の飛行機で、今回の るテーマに関連していくつかお尋ねし とは、くまモンが新たな共有空間を創造 「第二のくまモン」という、お金をかけず 対応の政治 大胆な政策ができるからです。まず、宮 災害への対応三原則を考え、帰熊直後 ます。今後、日本は世界に先駆けて、 しているということです。人種、年齢の に便益を生む存在を創り出す行政をやっ 崎県と熊本県の間を通っている道を全て の対策本部で職員に指示しました。三 超高齢化社会を迎えることになり、課 差別がない、一切の規制がない、その ていきたいと考えています。 政治には思ってもいないことが起こる 塞ぐ。そして、道に穴を開けます。道に 原則とは「被害に遭われた方々の痛みを 題先進国とも言われます。熊本県は、 空間で、みんなが自由に発想して、社 ものです。私が知事になって最初に起 穴を開けて消毒液をこの中に注ぎ込むわ 最小化する」 、 「単なる復旧ではなく、創 全国的にも高齢化が進んでおり、いわ 会活動をしたり、経済活動をして儲けて 最後に、講義、議論を通してEMP受講生 こったのが口蹄疫の発生です。これは けですね。でも道に穴を開けると大変な 造的な復旧・復興を目指す」 、そして「そ ば、課題先進県のひとつ。この超高齢 いく。固定された県境や国境にとらわれ に期待すること、伝えたいことは何ですか。 宮崎県で発生しましたが、私はもともと ことが起こります。そこを車両が通ると の復興を熊本の更なる発展につなげる」 化社会の到来に熊本県ではどのように ない、新たな共有空間を創造することで 蒲島:皆さんが学ばれたことは、日々古 畜産学を勉強していたため、口蹄疫とい 事故が起きてしまいます。そこで、パト です。でも、これは難しいんですね。県 対応されていますか。 多くの実りが得られる。くまモンを通じ くなっていきます。だからこそ自分自身 うのはすごく恐ろしい病気だと理解して カーの配置が必要になるわけですが、私 庁の職員は、早急な復旧を目指して対 蒲島:なぜ長寿を恐れるか。その大き て、熊本県はその空間を持つことになり で新たに創造していってほしいと思いま いました。東大法学部教授だった頃は、 が本部長となることで、警察も速やかに 応に追われています。そんなときに知事 な要因のひとつは認知症にあります。 ました。既に、1万件以上のくまモンの す。創造的に考える糧として、過去の ネブラスカ大学での畜産学の勉強は無 協力してくれました。これによって、熊 が現れて、 「創造的な復興」だと言うか 認知症対策については、熊本モデルを 商標使用申請があり、多くの企業や団体 人たちがどう考えたか。私がお話したこ 駄であったと思っていましたが、知事に 本への口蹄疫の侵入を防ぐことができ、 ら戸惑います。でも、わが熊本県庁のす 構築し、3つのレベル(社会、医療、施 が加わっています。将来的には、企業が とは私にとっては最新のことですが、そ なったらすごく活きてきました。口蹄疫 九州の他地域、更には日本各地への蔓 ごいところはそれをちゃんと実行に移し 設)で対応しています。一期目の「長寿 利益を出し、熊本県も有名になり、その れも既に歴史の一コマです。皆さん自身 が発生した直後に私が本部長となって、 延を阻止することができました。 たことです。 を恐れない社会」の形成から一歩進め 利益の一部を熊本県に還元しようという が歴史を作るためには、それを超えてい これに対応しました。普通は口蹄疫が 二番目の事例は、昨年の7月12日に阿 創造的復興ということでは、白川とい て、二 期目は「長 寿を楽しむ 社 会」づ 動きが出てくればもっといい。共有空間 かなければなりません。皆さんには、歴 県内に入ったときに初めて知事は本部長 蘇地域を中心に起きた大水害への対応 う河川が氾濫しましたが、とにかく将来 くりに取り組んでいます。くまモンも における理想的な行政の可能性が熊本 史を超えるための創造性を獲得してほし 介護施設を訪問するなど、その役割を 県にあると感じています。 い、そして自分なりの夢をもって進んで 担っています。 「第二のくまモン」については、阿蘇 ほしいと思います。 県民の総幸福量の最大化を体現するくまモン そして「第二のくまモン」は生まれるのか? TPPへの参加交渉が始まるなどグローバ 総幸福量最大化のための4つの要因(経 ル化が加速し、競争が激しくなっていく 済的豊かさ、品格と誇り、安全安心、夢) ギーを感じさせます。総幸福量の最大化 へのプラスの効果に加えて、その存在 を目指す5つの軸からなる創造空間は、精 達成のために、地方自治体として、どう そのものが幸せになる。これを満たすも 神の自由と情熱的な生産活動を誘発する 進んでいくべきとお考えですか。 のを「第二のくまモン」と呼んでいます。 のだと思いました。今後の「蒲島県政」の 歩みに期待しています。 り、三番目は安全安心、四番目は夢で 蒲島:アジアの活力を熊本に導入して 多くの障害を乗り越えて、本年5月に阿 の河道を一部変更しようと考えました。 した。加えて、そのトンネルが、将来、 す。この4つの要因が、県民の総幸福量 いかなければいけないと考えています。 蘇が世界農業遺産に認定されましたが、 しかし、ここには多くの家があります。 熊本と大分を結ぶ中九州横断道路に活 の最大化に結びつくものではないかと アジアとつながるためにいろんなことを 普通だったら、堤防を高くするぐらいが 用されることが決まり、 「全ての道は熊 思っており、そこに影響を与える政策 やっていかなければならない。グローバ 復旧ですが、そうではなく、この川の 本に通じる」という、私の夢を実現させ を行っています。 ル化に対応できる人材を育成するための 流れを変え、埋め立てた部分は、将来、 る大きな役割を果たすことにもなりま 英語教育や交流人口の拡大をやってい 有効に活用しようという大胆な発想をし した。その意味では、創造的復興と更 きたい。また、くまモンが創造する空間 ました。これは城づくりや街づくりの名 なる発展の事例として、とにかく転ん を通じて、国境を越えて、海外と交流で 手と謳われた加藤清正が肥後の国(熊本 でもただでは起きないという形で「対 県)でやった河道の修正と同じくらいの 応の政治」を行ったのが、この二つの インパクトがある事業と言われ、県庁の 事例なのです。 大変難しい仕事ですが、創造的復興を 「決断の政治」 、 「対応の政治」に加え、 「目標の政治」というのがとても大事だ もう一つは、この大水害により阿蘇地 と思っています。それでは目標の「y」 方で発生した崖崩れへの対応です。被 は何か。それは「県民の総幸福量の最 害を受けた道を単に復旧しても、将来の 大化」です。そして、そのためには、4 再発の不安を取り除けません。そこで、 つの要因があると考えています。一番 新たな発想のもと関係機関と協議・調整 目は経済的豊かさ、二番目は品格と誇 EMPower Vol. 8 「県民の総幸福量の最大化」 y=f ( E, P, S, H ) y = 県民の総幸福量の最大化 四つの要因 ちに立ち退きを要求しなければいけない 目標の政治 目標の政治 (8期生 赤井 厚雄、関根 千津、堤 茂) きるのではないかと思っています。 地域経済と第二のくまモン 先日、デトロイト市が破たんしました。 企業を県外から誘致し、地域経済を発 展させようとするモデルは多くの地方自 E = Economy(経済的豊かさ) 治体が行っていますが、そこには大きな P = Pride(品格と誇り) リスクが存在することが改めて認識させ S = Security(安全安心) られた事例です。今後の方向性として、 H = Hope(夢) 地域のリソースを活用する観点からご意 ※客観的なもの (E)だけでなく、主観的なもの (P,S,H) も重要 蒲島知事のお話は不思議と大きなエネル 中で、県民の幸福量の最大化という目標 した結果、トンネルが通ることになりま 合言葉に取り組んでいます。 ■ りうると思っています。先ほどお話した に向かって憂いがないように、危険個所 職員からしてみると、200軒以上の人た 14 の世界農業遺産認定が、その存在にな グローバル化への対応 見を伺えますか。また、知事が提唱され ておられる「第二のくまモン」は見つか EMPower Vol. 8 ■ 15 Lecture Updates ▲ 5月に社長就任以来、挨拶回りにかこつけて、ゴルフと酒に溺れる日々。EMPの空気が懐かしい。︵7期生 高橋 秀雄︶ Re: Future EMP 講義アップデート 西村 淸彦 先生 下山 淳一 先生 経済∼資産バブルと経済政策 :元中央銀行幹部の視点から∼ 超伝導科学技術の特徴と最新動向 Jun-Ichi SHIMOYAMA 東京大学大学院工学系研究科 応用化学専攻 准教授 昨年12月の衆議院選挙を経て経済の再生を最優先に掲げた 安倍政権が発足し、アベノミクスとよばれる経済政策が導入さ 「EMP倶楽部」HPリリースで認知度UP! サイトが7月29日よりリリース 7/29に「EMP倶楽部」HPがリリース。コンセプトと制作秘話を語る∼ れました。 本講義では、そのアベノミクスの三本の矢のうち、一本目の 「EMP倶楽部」の「住所」を作ろう! 矢である「大胆な金融緩和」政策の途中経過を評価し、その政 めのツールとして活用して頂くことはもちろんのこと、EMP倶 策の背景にある考え方についての経済学的観点からの整理や、 本年7月29日に、 「EMP倶楽部」のHPがリリースされました。 楽部の設立主旨である「会員相互の親睦を厚くし、東大EMPの 近い将来検討すべき課題の提示が行われるなど、EMPらしい切 EMPの同窓会も8期修了により200人の修了生の活動がますます 発展に寄与することを目的とする。 」に基づいてEMP全体のブラ り口での取り上げが行われました。特に自らが日本銀行副総裁 盛んになっていく中、本企画は大沢幸弘同窓会会長の「HPのな ンディングの向上にも役立てていきたいと考えています。 として金融・経済政策の渦中にあった西村教授の経験を踏まえ い団体は住所のない団体と一緒だよね。HPを作成しよう!」の フェーズⅠについては、認知度アップを優先して「親しみや た、政策決定プロセスにおける情報の重要性、その絶対的な不 一言で始まりました。 すさ」と「アクセスのしやすさ」に重点を置いて開発を行いまし 確実性、にもかかわらず経済という生き物に関ってそれをよりよ 超伝導の基礎的なサイエンスや歴史から、超伝導ケーブル 思えば、 「EMPサロン」 「EMPスクール」 「研修旅行」 「役員 たが、修了生の増加に伴い期待される今後の活動を、より具体 く制御していこうとする中央銀行の取り組みについてのお話は、 を中心とした応用の世界、そして、先生ならではの視点から超 会」 「2金会」 「バーベキュー大会」と様々な活動が広がっている 的かつ臨場感あふれるものとして外部に発信する「パブリックリ 金融政策に限らず様々な分野の意思決定に携わるEMP受講生 伝導技術の実用化における本質的課題について講義いただき 一方で、全体のスケジュールを正確に把握している人がほとん レーションシップ」を具現化するためのアイテムにしていきたい にとって興味深いものでした。 ました。 どいないという状況になっており、 「まずはみんなで情報を共有 と思います。 また、本講義の中心テーマは経済現象としてのデフレ・イン 超伝導になる素材は珍しくなく、周期律表でいえば、希ガス、 化できるプラットフォームを作成しよう、そしてもっと東大EMP フレという現象、さらにはバブルと呼ばれる現象の根本を正確 人工元素以外は皆超伝導になるといってもよいくらいです。し とEMP倶楽部の活動を広く認知してもらおう」をコンセプトに 皆さんのご意見でHPを進化 に理解し、その応用問題として現在われわれが直面する経済現 かし、超伝導の利用が難しいのは、低温技術が必須であること Web委員会が立ち上げられ、作成に着手致しました。 フェーズⅡについての今後の構想ですが、フェーズⅠ作成で 象を正しく捉える視座を手に入れることにあり、そのために以 です。また発現機構が複雑なため、応用に使える材料を見つけ 下のようなポイントで議論が行われました。 るのが困難で、1911年に超伝導現象が発見されてから、金属系 目指すはHARVARD?? 握等について検討していきたいと思います。その他修了生皆さ (1)バブルの背景について理解する。 超伝導材料が開発されるまで50年もの空白がありました。この 最初はどのようなHPを目指すのか?のコンセプト作りにおい んから広くご意見を募り、すぐにはHARVARDまでは辿り着 (2)日本のバブル・世界のバブルで何が起こり、バブル現象が 歴史の中で、1962年に超伝導リニア計画を国鉄がつくったこと て、HARVARDのHP等を見ながら「重厚感があった方がいい かないまでも、少しずつでもより使い易いものに進化させてい は驚きですが(金属系超伝導材料は当時まだ黎明期) 、新しい技 ね」とか「EMPスクールの動画も配信しよう」など想像膨らまし きたいと思います。そして我々がHARVARDのHPを参考にし 術に貪欲に投資しようとする時代だったのかもしれません。 つつディスカッションを重ねましたが、 「今日はこのくらいにし たように、今後HPを作成しようとする誰かに「ああいったもの いを、とくに人口の増加傾向のもとで起こった過去と、減少 実用的な性能を持つ超伝導材料を得るためには、ナノスケー て、続きは次回にしましょう。あれ?次の役員会っていつだっ を作りたい」と思われるようなコンテンツの充実を図っていき 傾向のもとでの現在・近未来の現象という視点から比較する。 ルでピン止め効果を持たせる粒界や析出物を制御・導入する必 け? その前に皆が集まる行事があったっけ?」と、足元のスケ たいです。 要があります。例えば単結晶Siの製造に使われる超伝導磁石に ジュールにさえ共通の理解がないことに気付き、フェーズⅠはコ また、皆様の会社で関連リンクへの掲載ご希望の方がいらっ は、微細な不純物が超伝導材料に仕込まれています。超伝導 ンテンツも絞ってスピード重視で立ち上げ、その後皆さんのご しゃれば是非お申し出下さい。最後に、本HPの作成にご協力頂 現在進行形の経済現象と経済金融政策をしっかりとした経 は、アナログ技術の集大成で、簡単にコピー&ペーストができ 意見を頂きながらフェーズⅡへ拡大していこうというステップに いた方々と、開発業務を請け負って頂き、期待通りの制作をし 済学的枠組みにもとづいて検討し議論するという今回のセッ ない、非常に競争力の強い技術といえます。 しました。 て下さった株式会社エスアイアソシエイツ様に深く御礼を申し ションはEMPらしい意欲的な取り組みでしたが、経済学の理 送電は、超伝導が期待される応用の一つです。そのメリット また、認知度向上というテーマについては、HPのアクセス制 上げたいと思います。 論の最先端、または、金融政策決定のプロセスの改善や組織 は、まず低電力損失ですが、長距離、大電力送電の超伝導化は、 限をかけずに誰でも閲覧可能にすること、TOPページの写真も 論など重要なテーマが含まれていることもあり、次年度以降の 壮大な事業になるため、高人口密度大都市エリアでの需要逼迫 親しみやすい授業風景とすることで対応しました。修了生の中 プログラムでさらに深堀されていくことが期待されるものと感 対応として高密度送電が実用には近いと考えられます。超伝導 には、積極的にEMP倶楽部の活動に参加している人もいれば、 じました。 (8期 赤井 厚雄) ケーブルの実系統接続プロジェクトが世界的にも進んでおり、 「仕事も忙しく一旦遠ざかってしまったけど、時間もできたので 日本の技術が多く入っています。国内でも東京電力旭変電所で また活動に参加したい。でもどのようなイベントがあるのか分か 昨秋に始まり、9カ月以上問題なく運転されています。 らない。東大EMPのHPにアクセスしようにもパスワードも忘れ 超伝導を電力システムに導入するには、超伝導線材があるだ てしまった。 」といった人もいると思います。そのような方に是 けではだめで、電力システムとしての開発、すなわち低温技術、 非このHPをご覧頂き、身近なイベントから参加して頂くきっか 周辺電力技術(超伝導と常電導の接続、分電など)を含めたトー け作りに活用して頂きたいと思っております。 経済にどういう影響を与えたか、を振り返る。 (3)今起こりつつあるといわれているバブルと過去のバブルの違 (4)特に日本において今起こりつつある現象に経済政策(含む金 融政策)で何ができるか、また何もできないのか、検討する。 Kiyohiko G.NISHIMURA 東京大学大学院 経済学研究科 教授 意見が出されつつ積み残しとした動画配信、イベントの出欠把 (4期生 細川 展久) タル技術が必要です。これができないと、日本は単なる超伝導 線材の輸出国になってしまうことが危惧されます。今後さらに 16 ■ EMPower Vol. 8 「EMP倶楽部」設立主旨具現化のアイテムとして 実用化を進めるには、このような認識をもって国の政策に反映 本HPを前述のようにEMP活動への参画のきっかけとしたり、 させていく動きが必要です。 (8期生 関根 千津) 既に積極的に活動していらっしゃる方々の親睦を一層深めるた http://www.empclub.org/ EMPower Vol. 8 ■ 17 Post EMP 昨年末にニューヨークに赴任しました。業務に追われる日々ですが、日本などとの違いも感じて日々刺激を受けています。︵7期生 伊東 誠︶ Re: EMP修了生自身が「スピーカー(講話者) 」となり、修了生同士で親睦を深めながら学ぶ場である Post EMP。前号に引き続き、今回はその第6回、第7回のご紹介です。 5/16 06 8/21 伊藤 慎介 07 第6回のゲストスピーカーはEMP7期生の伊藤慎介さん。 第7回のゲストスピーカーはEMP6期生の堀内勉さん。 経産官僚として数々の産業プロジェクトに携わってきた伊藤さん 日本や世界が大きく変化する中で、金融、不動産、教育・NPOの に、日本の航空機産業を題材として、従来のモノづくりの発想で 分野で、15年単位でワークシフトされてきた波乱の人生について、 はとても競争できなくなっている状況をお話しいただきました。 沢山の思い出の書籍と絡ませながら語っていただきました。 危機的な状況にある日本の製造業 自分のビジネス・キャリアにおけるキーワード 通商産業省に入省してからの14年間、IT産業、自動車産 これまでの社会人人生を踏まえて、自分なりに決めている仕事の 業、電機産業、重電産業、航空機産業など様々な製造業を ルールというものはあるが、その内、幾つかを挙げると、先ず、自 見てきました。その経験を通して今言えることは、日本の製 分も他人もハッピーになれることを指向している。自分のためだけ 寄稿したダイヤモンドオンラインの記事をご覧いただきたい ですが、潜在的な実力はあるのに、それを活かしきれていな いという非常に残念な状況にあります。 (http://diamond.jp/ に働くというのも、他人に尽くすだけというのも、どちらも長続きし Shinsuke ITO (株)産業革新機構 企画調整グループ企画調整室 参事。1999年、通商産業省 (現・ 経済産業省)入省以来、リチウムイオン電池の技術開発プロジェクト、日本版スマートグ リッド構想、インフラ輸出、クールジャパンの海外展開等、様々なプロジェクトの立案・ 実施などに従事。6月まで航空機武器宇宙産業課 課長補佐。現在出向中。 articles/-/34702) ないと思う。 次に、自分の信じていないことはしない、つまり、何処かおかし いと思いながら、仕事だからとか止むを得ないからとかいった後ろ Tsutomu HORIUCHI 森ビル(株)取締役専務執行役員(CFO兼アカデミーヒルズ担当) 、学校法人田村学園 監事、一般社団法人ダイアログ・ジャパン・ソサエティ理事、多摩大学大学院客員教 授、公益社団法人経済同友会幹事、特定非営利活動法人ISLアルムナイ会幹事・企画 部長、東大EMP倶楽部広報委員長、特定非営利活動法人IOCAアドバイザー他 向きな理由で何かをするのは止めようと決めている。同様に、お金 PostEMPでご紹介した航空機産業については、航空機産業 で産業構造を変えられ、ビジネスモデルが立ち行かなくなると のために自分の信条と違うことをするのは止めようということは心が 具体的には、志をもって一生懸命頑張っているNPOなどで、 自身を理解していただきたいということよりも、これほど日 いう経験をした日本の電機産業と重なります。 けている。お金の効用自体を否定する訳ではないが、自分の行動 財務面が理由で軌道に乗っていないところと、ある程度人生の 原理がお金という別の要素でぶれるのを避けたいということだ。 つじつまが合って時間的にも余裕がある、金融のノウハウを持っ 本が強そうな産業であっても決して安心できない状況にある ということを皆様に分かっていただきたかったというのが本 自閉症の組織文化を壊そう た銀行OBなどの中高年とを上手くマッチングして、お互いがハッ 日本人が想像している以上に世界は急速なスピードで進化・ Post EMPでスピーカーを務めた感想 ピーになる 「良循環」を生み出すためのプラットフォームを作れ 変化しています。一方、日本の組織文化は、身内ばかりに目を 自分の人生経験について話すのだから、言いたいことを忘れ ないかと考えている。これまで、金融機関と企業財務の両サイ 航空機産業の現状と課題 向ける「自閉症」とも言える状況にあります。日本が世界の中 るとか、言いよどむということはないと思っていたが、意外に自 ドから金融に携わってきたが、経済社会における金融の重要性 航空機産業の歴史は、戦前にさかのぼります。現在公開さ で生き残っていくためには、自閉症から脱却し、組織外や海外 分のことを話すのは恥ずかしいもので、スムーズに話せなかっ と実際に金融が社会で果たしている役割との間にギャップを感 れている『風立ちぬ』からもお分かりのように、戦前の日本は に積極的に出ていく姿勢が欠かせません。EMPの卒業生とそ た。しかしながら、自分の経験を元にこれからの社会のあり方 じていて、これを何とか少しでも良い方向に持っていけないだろ 世界有数の航空機技術と産業を誇っていました。しかし、敗 ういう動きを日本全体で生み出していきたいものです。 について話した部分、特に資本主義に関する部分では、参加者 うか、そうした意味で、何か新しい仕組みを作れないだろうか 戦をきっかけにGHQの命令で航空機に関する一切の取り組み との議論が多いに盛り上がったので、その導入として自分の半 と思っている。 は禁止されました。その後、朝鮮戦争が勃発し、日本におい 生について語ったのは良かったと思う。 音でした。 て米軍機を修理したい米国の意図で禁止令は解除され、戦後 の日本の航空機産業は二度目の歴史を歩み始めることになりま Impression 日本の金融危機やリーマンショックを受けて、本当に資本主 義とは人間にとって何なのかをずっと考え続けているが、多くの Impression す。当初は防衛省向けのみであった航空機産業は、初の国産 ■ 大空を翔る思いと裏腹のムラ社会 ビジネスマンが同じ思いを共有しているのだということを、改め ■ 人生で選択肢を迫られたときのために 民間機であるYS-11をきっかけに民間機分野で急成長し、現在 宮崎駿監督作品の『風立ちぬ』を観て、伊藤さんが航 て実感した。 堀内さんの経歴を拝見させていただいたとき、 「歩んできた ではボーイング社の最新鋭機である787機の主翼や胴体を担う 空機作りに携わる技術者は皆さん自分の飛行機を飛ば までに至っています。 したいという夢を持っていると話していたのを想い出し 今後の抱負 1990年代に起こった銀行関連の事件や鬼籍に入られた方等 その一方、この20年間、航空ビジネス全体は規制緩和をきっ ました。大空を翔る夢は同じでもモノ作りでは徹底的に スピーチの中で、リンダ・グラットン教授の 『ワーク・シフト』という の話をうかがい、 “御自身の悟性を用いた”ことによる、ごく自 かけとして大きく変貌しました。エアラインではLCCが重要な 拘ってしまう技術者魂は、重工と名の付く企業の利益を 本を引用して話したように、自分のビジネスマン人生を15年単位で 然なリアクションであったと思いました。後で、鶴田さんから、 プレイヤーとなり、これによってGEがリードする航空機リース あまり生まない部門で夢を細々と育んでいますが、一度 三つに区切って、70歳頃まで働こうと思っている。そして、今、最 あの世代の銀行マンは皆、同様な経験をしていると言われま 事業が急伸しました。また、香港、台湾、中国、シンガポール 失った航空産業を復活させ、さらには大きく変革を遂げ 後の15年をどう働くかについは、次の三つのことを考えている。 して、二度、ビックリでした。私は、ここまで、幸いというか不 道が随分と異なるなあ。 」というのが第一印象でした。しかし、 などはMROと呼ばれる航空機修理事業の世界的な拠点を構築 ている航空機産業において、業界の中心的存在に成って 一つめは、アカデミーヒルズの仕事の延長として、港区を 「世界 幸というか、そこまでの事件には出くわすことなく、考えに考え しています。まさに、米国が生み出した新しいビジネスモデル いく為には、オールジャパンの力の結集や、ビジネスモ の知の拠点」にしようということ。二つめは、個人的な知識欲から、 抜いて、こちらにしますという選択肢には出会っておりません。 が航空ビジネス全体の産業構造変化をもたらし、その中で日本 デルの革新等、本質的な課題が見え隠れすることが分か 改めて大学で経済思想や哲学を勉強し直そう (できれば海外で)と まだまだ人生は続きますので、そのような機会に出会うだろう は相対的に出遅れる状況となっています。 り、非常に有意義なお話しをお聞かせいただきました。 いうこと。三つめは、 「カネと暇はあるが夢がない中高年」と 「夢と ことを期待していますが、そのときには、今回の堀内さんの話 時間はあるがカネがない若者」をつなげようということだ。 を思い出したいと考えております。 (7期生 楯 直人) この現象は、半導体、パソコン、テレビ、スマホなどの分野 ■ 同じ修了生だという安心感と信頼感の中で、様々な話しが語られ議論されるPost EMPの様子は、まさに東大EMPならではの場です。今年も、 各期の運営委員の方々とともに、1~2カ月に一回程度のペースで実施してまいります。ぜひ気軽に参加してみてください! 堀内 勉 造業は危機的な状況にあるということです。詳しくは4月に 18 Post EMPで お待ちしています! EMPower Vol. 8 (2期生 河本 達哉) EMPower Vol. 8 ■ 19 Contribution Post EMP Salon 6月から日本取引所グループの大阪証券取引所で執行役員を拝命し、東京オフィスで企画を担当しております。大阪出張も多く、読書の時間が増えました。 ︵8期生 市本 博康︶ Re: 4/16 10 小山修氏「世界経済の環境認識と日本の方向性」 from Geneva and London 元三井物産(株)常務 元(株)三井物産戦略研究所代表取締役社長兼所長 小宮山・元東大総長が の周期で伸びと横這いを繰返し、現在は2017年までの停滞 都心での先約を中座して 期の終盤で次のイノベーションの萌芽が見え始める時期に 来られ、小山氏の講義を あたる。効率化路線の限界に直面した日本は、「機能の文明 傾聴されるという異例の 的産業からブランド・デザインの文化的産業へ」等、再立国 展開となった。偶然にも の三つの方向性を示された。 講師の小山氏が工学部と 淡々とした口調が徐々に熱を帯び、ぶっきら棒なくらい アメフトの後輩で旧知の間柄の由。 の話し方の中に奥深いお人柄が垣間見えるような春爛漫の 冒頭、ハイリスク&ローペースのTightrope Growthが続 一夜であった。Soft Powerで再立国を目指すべく、日本に くとの世界経済の展望が紹介された。米国は移民層の活力 乾杯! (6期生 松井 俊明・4期生 大沢 幸弘) 「貧困Engine」が成長に貢献する。米国株式市場は17年半毎 5/30 11 吉野孝行氏「ネットワークの将来の経営」 ネットワンシステムズ(株)代表取締役社長・社長執行役員 柴田 優 u M a s a r ドンから ン ロ と ブ ー ネ ュ ジ ひとつではない欧州、異なる 文化の国々を統括する方法は? 二つの都市から見える景色 世紀のミラノ公国との戦争でスイスが獲得し 所である。学校はもちろん、不動産仲介 から車の保険、ホームセキュリティーまで日 2011年末から2012年3月にかけて顧客 た土地だ。北イタリアと連携し国際的に活 動するが、 「俺たちとイタリア人を一緒にする 本人が日本語で対応する。日本人医師が 日頃仕組みを理解しな 期に、シスコジャパンでご苦労された経験談等貴重なお話 企業の顧問として欧州での買収案件をまと い ま ま に、 ス マ ホ や P C を伺うことができた。 め、今春からジュネーブとロンドンの双方に な」とスイス人であることを誇りにする。同じ いて通訳する病院もある。この環境は中近 等 で「繋 が っ て」い な い インターネットにあらゆるものが「繋がって」いくInternet オフィスと住居を構え 「複数居住」を実践 州内でも隣の町から嫁をとるだけで 「なぜル 東やアジアからの移住者でも同じで、ハイ と不安になる典型的文系 of Thingsといわれる時代に突入している現在、依然ITを箱 することになった。なるほど異なる場所に ガーノ出身なのにロカルノに嫁いだのか」と ドパークの傍らに巨大なアラブ人街が出現 ミーハー人間の私にとっ 物として捉える傾向のある日本の経営者に対し、情報コミュ 身を置くと異なる風景が見えてくるもので、 話題になるほど郷土色が強い土地だ。 し、パキスタン人だけのベンチャーもある。 て、 ネ ッ ト ワ ー ク 業 界 ニケーションのツールとして、ITを再定義し、投資効果の定 両方とも欧州の国際都市なのに、ジュネー 26の州の連邦制であるスイスは各州が 外国人は特別な存在ではない。 を代表するネットワンシステムズの吉野社長のお話は、日 量化を唱えつつ、ネットワーク機器を核に、ネットワークイ ブとロンドンから見える世界は随分と違う。 課税権を持つ地方自治が進んだ国である。 冷戦後の東欧ロシア、統合欧州への米 本のインターネットインフラの歴史と今後の方向性を垣間 ンフラの構築を支援する社長の視線の先には、情報やコミュ その保守的で自立した住民が3カ国語を話 国投資、近年は中近東アジアの新興国な 見ることのできる有意義なものであった。平日の早い時間 ニケーションが瞬時に縦横無尽に駆け巡るフラットな「分散 ジュネーブ、会議室での喧噪 し、周辺国と国際交流を進める。地域 ど、異文化や異民族を資本の力で自国に の開始にも関わらず集まった熱心な参加者とともに、終始 社会」の見取り図がはっきり見えているように感じた。 現在、欧州5カ国で事業会社を経営し 密着の文化と国際性が融合しているのだ。 (6期生 松井 俊明) アットホームな雰囲気の中で、日本のネットワークの創成 ているが、共通言語は英語である。フラ 女王陛下の国、イギリス 話する時代になった。20年前には考えら ロンドンの郊外にあるウィンザーは19世紀 欧州で日本人が活躍するには れない変化で隔世の感がある。 のビクトリア女王の居城で、今でもエリザベ 日本企業もロンドンを拠点に欧州に投 ジュネーブの本社では全員英語とフラン ス女王が週末に利用する。周辺の5000エー 資し、各国の現地経営陣に経営を委ね 全に津波でやられ、かろうじて使用できる3階のみで研究を継 ス語を話し複数国籍の社員も多いが、会 カー (港区に相当) に及ぶ公園や森林も王 るケースが多い。コミュニケーション能力 本原燃(株)様の施設と岩手県大槌町にある東京大学大気海洋 続されていました。道田豊教授の案内の元、震災当日の状況 議ではしばしば感情的に衝突する。オラ 室が信託管理する。軍の指揮官として近衛 に関わらず資本の力で統治できるからだ。 研究所の見学に行ってきました。昼前に八戸に集合しそこから や現在の研究状況、これからの展望等をお伺いしました。何よ ンダ人の口癖は 「自分はオランダ人だから 兵パレードを謁見する女王陛下の姿を見る しかし、日本人は資本による統治は苦手 2日間バスで合計460㎞を移動するというハードスケジュールに りも印象的だったのは逞しく研究を続ける学生たちと道田教授 単刀直入に言うが…」原理原則を重視し、 と、この国のオーナーはいまだ王室だと実感 である。本領を発揮できるのはやはり生 もかかわらずEMPならハードなのは当たり前と考える10名の有 の大槌町に対する深い愛情で個人的にはこれなら大丈夫、絶 イエス・ノーの答えを求めるスタイルだ。 する。首相は一段下の一般席に列席し、まる 産や研究の現場だと思う。スイスの工場 志が集まり、東北弾丸研修旅行となりました。 対に復興できると勝手に確信していました。 これに対し饒舌なフランス人は長々と理屈 で資本家と雇われ社長の関係に見える。 で言葉が通じないイタリア人と日本人の技 1日目の日本原燃施設ですが基本的に原子力の将来を担う学 ハードな2日間でしたが参加者には日本の“今”と“未来”を でかわし、 「こんなアングロ・サクソン的な ロンドンからはシンガポール、オーストラ 術者同士が白板に書かれたデータを頼り 生しか見学は受け入れていないという事でしたが、EMPはれっ 見つめる貴重な機会になったのではないでしょうか。 発想では上手くいかない」と対立する。思 リア、インド、南アフリカなど世界中が視 に最新技術を議論するのを見て、ここに 想や歴史的背景だけでなく、民族の遺伝 野に入るが、これら英国連邦54カ国のう 日本人が活躍できる素地があると感じた。 のだれよりも若い高梨さんに引率され見学を行いました(学生 的特性や言語構造も原因ではないかとさ ち16カ国は今でも英国王を君主とする。こ 言語の異なる大陸欧州では日本人は対等 ですので引率が必要なのだそうです) 。広大な敷地の中をバス え感じる。欧州は対立する民族が一定の の統治の文化が国際社会での英国の存 であり、知識や教養、理念によって尊敬 で移動しながら低レベル埋設地、高レベル管理施設、再処理 規範で結ばれているのだ。 在感の源といえる。企業経営での株主と されることができるのである。 日本原燃(株)施設、東京大学大気海洋研究所を廻る東北弾丸研修旅行 7/26(金) 、27(土)と2日に渡って青森県六ヶ所村にある日 きとした学生団体であるという山田先生の口添えの元、参加者 (7期生 廣吉 康平) 工場中央制御施設、使用済燃料施設とほぼすべての施設を見 ■ 取り込むが、融合することなくモザイクの ように共存させる。 ンス人同士でも日本人が入ると英語で会 EMP club Event 20 T A S H I B A 経営陣の関係も同じで、多国籍企業の多 学させてもらい(濃縮工場はさすがにNGでした) 、最後に意見 スイスの不思議 くは各国の事業を資本家や金融投資家の 交換も行う予想外に(?)豪華な見学コースでした。 永世中立国のスイスは平和なイメージが ように統治し、経営は現地に任せる。 2日目の大気海洋研究所は驚愕のスタートでした。まず到着 あるが、その中世は周辺国同士の戦争によ した際にバスの運転手さんに“さすがにここじゃないんじゃな る領土争いと民族対立の血に塗られた歴史 多国籍化が進むロンドン い”といってしまうほどの外観、それもそのはず、1・2階は完 でもある。イタリア語圏のティチーノ州は16 ロンドンは日本人に取って住みやすい場 EMPower Vol. 8 柴田 優 6期生 1965年6月22日生まれ。1989年3月慶応義塾大学経済学 部卒業。1989年ゴールドマン・サックス入社、ニューヨーク 本社M&A部門勤務、2004年にリーマン・ブラザーズに移 籍、同社経営会議メンバー、2008年からJPモルガン、投 資銀行副会長を経て、2010年から国際投資や経営助言専 門のクロスポイント・アドバイザーズの設立に参画。2012年 より顧客企業の欧州法人へ出向、買収先経営に参加。 EMPower Vol. 8 ■ 21 From Alumni 一緒にサステナブル・ライフスタイルについて考えましょう 6/ Re: TIME CAPSULE 富士フイルム㈱メディカルシステム事業部長に就任しました。医療システムデザイン良循環化をライフワークにしていきます。︵8期 後藤 禎一︶ 27 10年後のための記録 日 黒 つが悪い指導者、いっぱいいるでしょうね。〈ひ〉 つ上げるの? 今でしょ! (←あぁ、既に古い。 ) 〈ず〉 参 2 程度でお願いしますということでしょうか?〈ひ〉 的な発言。もう政治家は黙ってて (怒) 。 〈ず〉 中 ロ 本中を巻き込んだ体罰問題、そもそも罰を与えることが教 育なのか?罰は本来罪に対して与えられるものであって、 スポーツでのミスは絶対に罪ではないはず。正論を言われてば 院選の自民党圧勝により3年ぶりのねじれ解消。って“解 消”ってニュアンスに少し違和感が、そもそもねじれるこ とを前提とした参議院では? ネジは効きすぎるから釘をさす 韓との関係は悪化の一途を辿っていますが、中国から のPM2.5問題は、切るに切れない隣国の関係を映し出し ています。11PMの頃は平和だったなぁ。〈ず〉 田新日銀総裁によるインフレ目標と異次元緩和、いわゆる 黒田ショックで、円安、株高→株式乱高下。経済というの は難しい。消費税増税の延期話まで持ち上がって…。じゃ、い 020年オリンピック招致問題、猪瀬知事のトルコ批判問題、 柔道連盟の不祥事続出で消えたかと思いきや、トルコでの デモ弾圧があって、再び互角?と思ったら麻生総理のナチス礼賛 シア・ウラル地方で隕石爆発。けが人1000人以上。恐竜 絶滅に結び付いたのも隕石という説が濃厚で、地球の温 暖化問題すら宇宙的にはコップの中の嵐でしかない。ウゥラ ルー、ウゥラルー、ウゥラウラで、ウゥラルー、ウゥラル、ウゥ 安 倍内閣が環太平洋戦略的経済連携協定 (TPP)への交渉参 加を正式表明。国民の多くにとっては良いことのはずなのに、 問題が先鋭化するのは、既得権益層の支持を自民党が受けている から。TPPはとってもパワフル、ポリティクスの略なのか。〈ず〉 ラウゥラよ。古くてすみません。〈ず〉 元 CIAのスノーデン容疑者。米政府が個人情報を集めて いることを暴露。オバマ政権には大きな打撃でした。 「まぁ、そのくらいやってるでしょ」という感じなのは日本的 富 士山の世界文化遺産登録が三保松原も含めて実現。富士 な受け止め方?〈ず〉 登山が昨年比3割アップだって。富士山は富士山なのにね (by登山道のリス) 。〈ず〉 〈ず〉=1期生 東 智徳 〈 / ひ〉=7期生 廣吉 康平 大 量生産・大量消費の産業構造の中で、既成品が棚に並び、 地球を次の世代に受け継ぐ使命があると考えました。 『大地に責 いつでも・何でも簡単に手に入ってしまうこの時代に、持続 任を持つこと』が、私たちの信条。ワークショップを通じて、自 可能なサステナブル・ライフスタイルが注目されています。文字通 然の恵み、手作りの楽しさ、各段階で私たちの生活をサポートし り、地球環境に負荷をかけない選択を取り入れた生活のことです てくださる人たちの努力、そして地球環境の大切さをより多くの人 が、この動きが少しずつ社会に広がりつつあります。 たちに感じていただき、持続可能な社会に貢献していきたいと考 えています。 サンタフェ ナチュラルタバコ ジャパン社では、その動きを少しで ■ EMP事務局より 2008年にスタートした東大EMPも、今 ラム構成、講義の進め方、リキャップ等々、 源泉のひとつは、間違いなく同窓会です。 も後押しすることを目的に、 SHARE THE LOVE for JAPAN SHARE THE LOVE for JAPAN は、今後も様々なイベン というプロジェクトを始めています。自然や手仕事といった、いま トに登場し、ワークショップを中心とした活動を行っていく予定 年10月にとうとう第10期を迎えます。途 だんだんとEMPらしい形が見えてきたよう 発展していく同窓会の活力をどのように 失われつつある 「本来の生活」を見つめ直すプロジェクトです。東 です。次回は10月20日、日比谷公園で行われる 「土と平和の祭典 中、東日本大震災による休止などもあり、 に思えます。常に進化し続けるプログラム プログラム全体に反映させていくのかは、 日本大震災で被災された有機農家の支援活動として2011年に始 2013」。少しでも興味を持っていただければ、ぜひご参加くださ ここまでの道のりは必ずしも平坦ではあり に完成はあり得ませんが、劇的な変化の EMP事務局としての大事な課題であると まったこのプロジェクトは、今年6月に活動内容・領域を広げ新た い。楽しくサステナブルとは何かについて考えてみましょう。 ませんでしたが、同窓生の皆さんをはじ 時代から、ゆるやかな発展の時代に入っ 認識をしています。 めとする多くの方の協力で、ここまでたど ていくことでしょう。 今夏には、六カ所村の視察や熊本県視 り着けたものと思います。第10期は通過 しかし、同窓会のネットワークは違い 察ツアーなどにも参加させていただき、同 点のひとつに過ぎませんが、これを励み ます。平均すれば毎期25名ずつ拡大して 窓会活動の一端に触れることができました。 にさらなる発展を目指したいと思います。 いくと同時に、各修了生がそれぞれの組 引き続き、同窓生の皆さんから多くのことを 振り返ってみれば、最初の5年間はEMP 織や活動において影響力を増していく同 学ばせていただき、プログラム運営に活かし らしさを求める試行錯誤の連続でした。 窓会は、加速度的にそのポテンシャルを ていきたいと思います。 教養と智慧を中心としたユニークなプログ 深めていくことでしょう。EMPの魅力の (東京大学EMP特任助教 高梨 直紘) にスタートいたしました。 SHARE THE LOVE for JAPAN では、サステナブルなライ フスタイルは必ずしも難しくなく楽しみながら考えていくものと捉 え、身近なテーマを取り上げています。去る8月4日 (日)には 「ピザ 作りワークショップ」を代々木公園の東京朝市・アースデイマーケッ トにて開催しました。 自分で生地を作り、食材をトッピングし、石窯で焼いて食べるという 工程の中で、食材がどこから来て、どのように料理になるのかを楽し みながら学ぶこの企画。参加者は 「自分の手で作るのは楽しい」 「こ れを機にちょっとしたひと手間を生活に取り入れたい」など感想を述 編集後記 べてくれています。 巻頭インタビュー・PostEMP 曼荼羅トーク Re:ツイート 永尾 英二郎 4期生 鶴田 浩久 5期生 和田 拓己 2期生 巻頭インタビュー 講義フィーチャー 講義フィーチャー・広告 広告 編集長 河本 達哉 2期生 今号は初の海外取材に始まり、先生方のお時間 の調整が出来なかったこともあって誌上対談、熊 本県知事公邸でのインタビューと、夏の休暇シー ズンにお忙しい先生方を追いかけて紙面作りをさ 関根 千津 8期生 巻頭インタビュー 正田 周 8期生 堤 茂 8期生 髙橋 秀雄 7期生 タイムカプセル デザイン 東 智徳 1期生 大石 卓 3期生 せて頂きました。お時間を頂きました先生方、厳 しい日程で原稿作成頂いた編集委員と修了生の みなさまに感謝申し上げます。 22 ■ EMPower Vol. 8 曼荼羅トーク 堀内 勉 6期生 編集・印刷(株)ブレインズ・ネットワーク http://www.brains-network.com このワークショップの特徴は、地球のことを考えたアイテムが揃え られていることです。 まず、用意された食材は、プロジェクトが支援している有機農家 が作った夏野菜。そして石窯は、サンタフェ ナチュラルタバコ ジャパンの社員自らが、職人の指導のもと、自然素材を使い手 作りで完成させたもの。木のテーブルやイス、お皿は、間伐材 で作ったもの。そして会場に野菜を運んで来たトラックは、白い 中古のトラックを社員がオレンジ色にペイントしたもので、バイオ ディーゼル燃料で走行しています。会場では、原料となる使用済 み植物油の回収活動も行っています。 サンタフェ ナチュラルタバコ ジャパンは、農業を行う会社として、 サンタフェ ナチュラルタバコ ジャパンについて。 1982年、3人の若者がかつてネイティブアメリカンが大地との絆の確認のために楽しんだと言 われるタバコ文化を再び興したいと米国ニュ-メキシコ州にて創業。無添加のタバコ、ナチュ ラルアメリカンスピリットを世に送りだす。以来独自の持続可能農法による契約農家との取り 組みや、タバコの有機栽培、工場の廃棄物ゼロ化など、ユニ-クな活動を続けています。 EMPower エンパワー第8号 平成二十五年九月十四日発行 EMP倶楽部 〒一一三 〇〇三三 東京都文京区本郷七 - 一 伊藤国際学術研究センター二階 印刷 ㈱ ブレインズ・ネットワーク - 三 -
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