第3章 温室効果ガスの現況と削減目標 1 排出の現況と特徴 温室効果ガス排出量の推移と特徴を示します。現況値は、把握できる最も新しい年度である 2010 年度(平成 22 年度)の値を採用します。 (1) ガス種類別の総排出量推移 基準年度の 1990 年度から 2010 年度までのガス種類別の総排出量は次のとおりです。 (単位:千 t-CO2) 種別 1990 年度 (H 2 年度) 2000 年度 (H12 年度) 2005 年度 (H17 年度) 2009 年度 (H21 年度) 2010 年度 (H22 年度) 二 酸 化 炭 素 12,084.2 11,470.9 10,996.7 10,097.3 12,156.9 ン 24.9 20.4 18.8 18.1 18.6 一 酸 化 二 窒 素 209.5 217.4 114.5 113.9 113.9 ハイドロフルオロカーボン 9.0 20.2 32.0 56.7 63.0 パーフルオロカーボン 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 六 ふ っ 化 硫 黄 6.7 1.4 0.5 0.0 0.4 12,334.3 11,730.3 11,162.5 10,286.0 12,352.8 -- △4.9% △9.5% △16.6% +0.1% メ タ 合 計 基準年度比 2010 年度の排出量は、基準年度の 1990 年度に比べて 0.1%の増となりました。 温室効果ガス排出量を、 二酸化炭素とその他 5 ガス (二酸化炭素を除いた残りの 5 種類のガス) とに分けて、推移を図 12 に示します。 (千 t-CO2) 14,000 12,000 10,000 その他5ガス 8,000 二酸化炭素 6,000 4,000 2,000 0 基準年度 2000年度 2005年度 2009年度 2010年度 (H2 年度) (H12 年度) (H17 年度) (H21 年度) (H22 年度) 図 12 温室効果ガス排出量の推移(二酸化炭素とその他 5 ガス) - 15 - (2) 排出部門別推移(二酸化炭素のみ) 温室効果ガスのうち、二酸化炭素について、排出部門別の推移を示します(図 13) 。 (単位:千 t-CO2) 部 門 1990 年度 (H 2 年度) 2000 年度 (H12 年度) 2005 年度 (H17 年度) 2009 年度 (H21 年度) 2010 年度 (H22 年度) 産 業 部 門 10,038.5 9,389.7 8,658.9 8,070.3 9,887.7 運 輸 部 門 619.6 728.8 761.7 712.1 659.3 民 生 部 門 869.2 823.6 925.5 772.7 803.6 エネルギー転換部門 103.4 77.6 89.6 86.2 93.9 工業プロセス部門 359.7 355.2 456.1 409.9 641.8 廃 棄 物 部 門 93.8 96.0 104.9 46.1 70.6 12,084.2 11,470.9 10,996.7 10,097.3 12,156.9 合 計 (千 t-CO2) 廃棄物部門 14,000 工業プロセス部門 エネルギー転換部門 12,000 民生部門 運輸部門 10,000 8,000 6,000 産業部門 4,000 2,000 0 1990年度 (H2 年度) 2000年度 (H12 年度) 図 13 2005年度 (H17 年度) 2009年度 (H21 年度) 2010年度 (H22 年度) 二酸化炭素の部門別排出量の推移 図 14 に市、県、国の部門別二酸化炭素排出量割合(平成 22 年度実績)を示します。排出量の 81.3%を産業部門が占めていることが本市の特徴で、国の産業部門比率 35.4%と比べると、非常 に大きいことがわかります。 平成 22 年度実績 運輸部門, 5.4% 和歌山市 民生部門, 6.6% 産業部門, 81.3% 和歌山県 運輸部門 10.9% 産業部門, 71.2% 民生部門 11.3% エネルギー転換部門 全国 産業部門, 35.4% 0% 10% 産業部門 20% 運輸部門 運輸部門, 19.4% 30% 40% 民生部門 50% 60% エネルギー転換部門 民生部門, 32.6% 70% 80% 工業プロセス 図 14 和歌山市、和歌山県、全国の部門別二酸化炭素排出割合比較 - 16 - 6.8% 90% 廃棄物 100% 次に、排出量の上位を占める産業部門、運輸部門及び民生部門について、排出状況の特徴を示し ます。 ① 産業部門の特徴 平成 22 年度の値 9,887.7 千 t-CO2 は、基準年度 10,038.5 千 t-CO2 と比べて 1.5%の減です。 製造業の占める割合が非常に高いことがわかります。 (単位:千 t-CO2) 内 1990 年度 (H 2 年度) 訳 農 林 水 産 業 2005 年度 (H17 年度) 2009 年度 (H21 年度) 2010 年度 (H22 年度) 40.6 16.1 17.1 18.0 17.5 建 設 業 105.5 58.2 60.0 53.0 54.9 製 造 業 9,892.4 9,315.4 8,581.8 7,999.3 9,815.3 10,038.5 9,389.7 8,658.9 8,070.3 9,887.7 合 ② 2000 年度 (H12 年度) 計 運輸部門の特徴 平成 22 年度の値 659.3 千 t-CO2 は、基準年度 619.6 千 t-CO2 と比べて 6.4%の増です。 内訳を見ると、家庭用及び業務用の自動車の排出量が高くなっており、なかでも家庭用の自動 車の排出量が基準年度と比べて大きく増えています。 しかし、平成 17 年度以降、平成 21 年度、22 年度と二酸化炭素排出量は下がる傾向にあり、平 成 21 年から実施されたいわゆる「エコカー補助金」や、その後のガソリン価格上昇により、ハ イブリッド車や軽自動車などの低燃費車両への更新が進んでいるものと考えられます。 (単位:千 t-CO2) 1990 年度 (H 2 年度) 2000 年度 (H12 年度) 2005 年度 (H17 年度) 2009 年度 (H21 年度) 2010 年度 (H22 年度) 自動車(家庭用) 279.6 376.1 407.0 389.3 362.2 自動車(業務用) 184.9 200.8 216.3 218.7 203.9 道 52.0 32.6 43.9 38.1 36.8 舶 103.1 119.3 94.5 66.0 56.4 619.6 728.8 761.7 712.1 659.3 内 訳 鉄 国 ③ 内 船 合 計 民生部門の特徴 民生部門全体を見ると、平成 22 年度の値 803.6 千 t-CO2 は、基準年度 869.2 千 t-CO2 と比べて 7.5%減少しています。 しかし、オフィスや商店などの「業務部門」と、住宅の「家庭部門」の内訳をみると、 ・業務部門では現況値 399.8 千 t-CO2 は、基準年度 538.9 千 t-CO2 と比べて 25.8%の減少 ・家庭部門では現況値 403.8 千 t-CO2 は、基準年度 330.3 千 t-CO2 と比べて 22.3%の増加 という、対照的な結果となりました。 - 17 - (単位:千 t-CO2) 1990 年度 (H 2 年度) 2000 年度 (H12 年度) 2005 年度 (H17 年度) 2009 年度 (H21 年度) 2010 年度 (H22 年度) 民生部門(業務) 538.9 465.0 496.0 392.7 399.8 民生部門(家庭) 330.3 358.6 429.5 380.0 403.8 869.2 823.6 925.5 772.7 803.6 部 合 門 計 まず業務部門ですが、大規模小売店舗や大型オフィスビルなどは省エネルギー法の適用を受け、 エネルギー使用合理化のための計画を策定・実行することで、温室効果ガスの排出を抑える取組 が行われています。 一方、家庭部門では、家庭内で使用する個々の電化製品などは省エネ型の製品が次々に開発さ れて、平成 21 年度のいわゆる「家電エコポイント制度」も契機となって、より省エネ型の製品 への買替えが促進されました。しかし、パソコン、加湿器、温水洗浄便座、食器洗い乾燥機、床 暖房など、基準年度当時にはあまり普及していなかった機器類の普及が進み、またテレビやエア コンなどは一家に 1 台が 2 台、3 台と保有台数が増える傾向にあります。さらには世帯数の増加 に伴い、冷蔵庫や洗濯機などの機器は総保有台数が増え、エネルギー使用量の増加の要因になっ ていると考えられます。 - 18 - 2 将来推計 (1) 推計方法 将来の温室効果ガス排出量を予測します。 マニュアルに準じ「現状すう勢ケース*」と呼ばれる方法で、温暖化対策をこれ以上追加で実施 しないと仮定して算定しました。 伸び率は、平成 23 年 3 月策定の和歌山県地球温暖化対策実行計画(区域施策編)における将 来推計の方法を参考に、排出各部門の主な要因となる指標の将来予測を利用して、今後の排出量 を予測しました。 部 門 主な要因となる指標 将来予測方法 産 業 部 門 製造品出荷額 生産活動の変化 運 輸 部 門 自動車保有台数 総保有台数と、軽自動車台数の変化 民 生 部 門 (業務)業務系事業所*の床面積 事業活動の変化 同 (家庭)人口、世帯数 人口及び世帯数の変化 廃 棄 物 部 門 人口推移 人口の変化 現状すう勢ケースとは 現在の状況から、新たな地球温暖化対策を実施しないと仮定し、排出要 因となる数字の変化予測から温室効果ガス排出量を推計する方法です。 業務系事業所とは 民生部門(業務)の対象となる商業、サービス業、事務所、学校、公的 機関等を指します。 ここでは、排出量算定時に県排出量からの按分に用いる、「ホテル・旅 館、事務所、銀行、劇場、病院」の延べ床面積の推移を見て、将来推計を 行います。 - 19 - (2) 部門別将来推計 現況の 2010 年度に対し、短期目標年度の 2017 年度における各指標の増加予測を示します。 ① 産業部門 製造品出荷額の推移を示します。2011 年(平成 23 年)までの実績値を元に、後年を横ばいと 想定して、現況の 2010 年比を求めると 12.1%増となりました。 →以降、推計値 (億円) 20,000 15,000 10,000 5,000 0 1997年 1999年 2001年 2003年 2005年 2007年 2009年 2011年 2013年 2015年 2017年 和歌山県企画部企画政策局調査統計課「指標からみた和歌山県のすがた」より 図 15 製造品出荷額推移及び将来推計 ② 運輸部門 自動車保有台数の推移を示します。2011 年(平成 23 年)までの実績値を基にして、ここ数年 の傾向から、総台数は微増すると予想されますが、軽自動車の伸びが続くなど、より燃費の良い 自動車の割合が増えていることを考慮し、温室効果ガス排出量は 2010 年(平成 22 年)からほぼ 横ばいと予想しました。 (万台) →以降、推計値 25 軽自動車(貨物) 20 15 軽自動車(乗用) 10 乗用車(小型) 5 乗用車(普通) 0 H2年 H5年 H10年 H15年 H20年 H21年 H22年 H23年 H24年 H25年 H26年 H27年 H28年 H29年 図 16 自動車保有台数の推移及び将来推計 - 20 - ③ 民生部門(業務) 業務系事業所床面積の 2012 年度(平成 24 年度)までの実績値を元に、後年度の伸びを横ばい と想定して、現況 2010 年度比を求めると 6.2%増となります。 (千㎡) →以降、推計値 4,000 3,500 3,000 2,500 2,000 2005年度 2007年度 2009年度 2011年度 2013年度 2015年度 2017年度 和歌山県総務部総務管理局市町村課「市町村税政の概況(資料編)」より 図 17 業務系事業所床面積の推移及び将来推計 ④ 民生部門(家庭) 国立社会保障・人口問題研究所の将来推計(平成 24 年 1 月推計)によると、この基本計画の 目標年度である 2017 年(平成 29 年)には 355,000 人になると推計されています。 年少人口(15 歳未満)と生産年齢人口(15 歳以上 65 歳未満)の減少により、総人口は減少傾 向が続き 2010 年度比で 4.1%減、老齢人口(65 歳以上)の比率がさらに増加する見込みです。 一方、世帯数は引き続き増加傾向を示す見込みであり、それにより温室効果ガス排出量は微増 を示すと考えます。 (万人) 40 30 375,591 人 370,364 人 360,000 人 355,000 人 22.1% 25.9% 29.9% 30.6% 20 (万世帯) 16 15.5 15 64.4% 61.4% 58.3% 65歳以上 57.9% 15歳~64歳 10 14.5 15歳未満 13.5% 12.7% 11.8% 11.5% 平成17年 2005 年 平成22年 2010 年 平成27年 2015 年 平成29年 2017 年 0 14 第 4 次和歌山市長期総合計画後期基本計画より 図 18 人口の推移及び将来推計 - 21 - 世帯数 ⑤ 廃棄物部門 人口推計に比例するものと考えます。 ⑥ 温室効果ガス排出量推計 各部門で想定した伸び率を利用して、2017 年度(平成 29 年度)の温室効果ガス排出量を推計 した結果、現況値の 2010 年度(平成 22 年度)比で 10.8%の増、基準年度の 1990 年度(平成 2 年度)と比べると 11.1%の増と推計されました。 (単位:千 t-CO2) 部 1990 年度 (H 2 年度) 門 2005 年度 (H17 年度) 2010 年度 (H22 年度) 2017 年度 推計 (H29 年度) 2017 年度推計 2010 年度比 増減率 産 業 部 門 10,038.5 8,658.9 9,887.7 11,084.1 12.1% 運 輸 部 門 619.6 761.7 659.3 660.0 0.1% 民 生 部 門 869.2 925.5 803.6 840.5 4.6% う ち 業 務 (538.9) (496.0) (399.8) (424.6) 6.2% う ち 家 庭 (330.3) (429.5) (403.8) (415.9) 3.0% エネルギー転換部門 103.4 89.6 93.9 93.9 0.0% 工業プロセス部門 359.7 456.1 641.8 719.5 12.1% 廃 棄 物 部 門 93.8 104.9 70.6 70.6 0.0% 12,084.2 10,996.7 12,156.9 13,468.6 10.8% 250.1 165.8 195.9 250.0 27.6% 12,334.3 11,162.5 12,352.8 13,718.6 11.1% 二酸化炭素合計 その他5ガス 合 計 - 22 - 3 削減目標 (1) 短期目標 短期目標年度 2017 年度(平成 29 年度)における削減目標は次のとおりです。 総排出量で 基準年度(1990 年度)比 6%削減 部門別の目標値は、次のとおり定めます。 部門 運 輸 部 評価方法 目標値 門 車両 1 台当たりの排出量 基準年度比 6%削減 民生部門(家庭) 人口 1 人当たりの排出量 基準年度比 6%削減 民生部門(業務) 対象部門の事業所床面積当たりの排出量 基準年度比 6%削減 なお、排出量の大部分を占める産業部門、それに関連の深い工業プロセス部門及びエネルギー 転換部門については、大規模事業所の省エネルギー法*、温対法及び和歌山県地球温暖化対策条例 に基づくエネルギー管理はもちろんのこと、一般社団法人 日本経済団体連合会では従前の「環 境自主行動計画<温暖化対策編>」を継承した「経団連低炭素社会実行計画」などにより、業界 独自で温暖化対策を積極的に進めています。また、廃棄物部門は、市が策定した「一般廃棄物処 理基本計画」により、ごみの分別と減量を推し進めることで、温室効果ガス排出量の削減に取り 組んでいます。 (2) 中期目標及び長期目標 国の温室効果ガス排出量削減目標は、2020 年(平成 32 年)に 2005 年(平成 7 年)比 3.8%減 と掲げられましたが、その後については、エネルギー基本計画の見直し中でもあり、依然見通し が立っていません。 本計画における中期及び長期目標については、国の中期及び長期の温室効果ガス削減目標が示 された後に改めて設定するものとします。 省エネルギー法 正式名は「エネルギーの使用の合理化に関する法律」で、石油危機を 契機として昭和 54 年に制定されました。 「内外のエネルギーをめぐる経済的社会的環境に応じた燃料資源の 有効な利用の確保」と「工場・事業場、輸送、建築物、機械器具につい てのエネルギーの使用の合理化を総合的に進めるための必要な措置を 講ずる」ことなどが定められています。 - 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