木村 恒介展アートニュース

木村恒介
展
KIMURA KOHSUKE
24
吸
月 日︵月︶
6:00p.m.
11
の呼
日︵木︶∼
4
エ ー テ ル
月
9
光 素
23
年
水曜日、 月 日
︵日︶休館 10:00a.m.
∼
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クリ エイ シ ョン の 未 来 展
第1回
清 水 敏 男 監 修
1∼3.「ある景色の呼吸」 W5000×D6000×H2500mm(空間サイズ) インスタレーション 開港都市にいがた水と土の芸術祭 2012( 新潟)
エ ー テ ル
光素
の
呼吸
木村恒介
清水敏男(美術評論家 学習院女子大学教授)
1982 栃木県に生まれる
2007 武蔵野美術大学 造形学部 建築学科卒業
鏡はマジカルな存在である。磨き込まれ
とがこうした言説の前提となっている。故
エーテルとはギリシャ神話で神々の住む
テル」という言葉が登場した。それは電磁
2009 東京藝術大学大学院 美術研究科 るものは何もない。
先端芸術表現専攻修了
2009 ∼ 2013 APT(土屋公雄アートプロジェクトチーム)
空海のいう仏の心鏡とは、こうしたカオ
た表面に光が反射し世界が映し出されるに
に現世においても鏡は磨き込まれ澄み切
天空を神格化した神アイテルと同根のこと
波を媒介する物質である。
すぎないのに、そのこと自体が不思議である。
ったものを人々は求めるのである。
ばだ。アイテルは神々が吸う澄み切った光
光も電磁波もそれらは常に変幻している。 ティックな宇宙からは超越した寂な世界の
古代中国の銅鏡の裏面には四神が彫刻さ
ところがここに全く常軌を逸した鏡があ
り輝く大気の神である。
宮沢が見た春の朝の太陽の光。光は刻々と
鏡であり、そこに映っているのは変幻する
れ「天円地方」が表されているのは、小さな
る。木村恒介の鏡である。
もともと天空の上方にある大気であった
変化しひとときも同じ相にとどまってい
この物理的世界ではなく、不変の真理を映
鏡であってもひとつの宇宙に匹敵するよう
木村恒介の鏡はこれまでの歴史に現れた
エーテルを、やがてプラトンは四元素(地、
ない。もともと太陽の光は熱核融合から放
す明鏡である。それはもちろんアイテルの
な魔力をもっていたことの証であるかもし
どの鏡とも異なる。鏡はゆっくりと振動し、
水、火、風)を超越した五番目の元素とし、
出される光だ。ひとときも太陽はじっとし
住む「れいろうの天の海」と同じ場所にあ
れない。
そこに映る映像はひとときも休まること
アリストテレスは天体を構成する要素と
ていない。常にさまざまな粒子がとびかい
るのだろう。全く曇りのない鏡が曇りのな
マジカルな鏡は磨かれ澄みきった状態で
なくつねに動き続けている。世界は歪み、
考えるにいたった。
反応している。その実相はカオティックで
い真実を映しているのだ。
あらねばならない。
鏡を覗き込む人々の像はつねに動き変化
エーテルという言葉の旅はさらに続く。
ある。
しかし天の下方の真理はカオティックで
空海は著書
『即身成仏義』
でこう述べている。
する。
エーテルはやがて宇宙をみたす要素とされ、
鏡はどれほど磨いてもその映し出す宇宙
ある。鏡を磨けば磨くほど対象物がよく映
背面にモーターが仕掛けられているにす
光や電磁波を媒体すると考えられた。宮沢
自体がカオティックであるならば、私たち
るのであれば、そこに映し出される真理は
展覧会
円明の心鏡高く法界の頂きに懸かって
ぎないのだが、この簡単な仕掛けが表すも
賢治がエーテルと言ったのはこの意味で
が覗き込んでいる鏡の像もまた当然にカ
混沌としたものとなってくる。木村の歪ん
2014 混流温泉文化祭
2013 ハクリビヨリ #05
アートサイト岩室温泉 2013
名鉄米野木駅前モニュメント
(APT)
2012 開港都市にいがた 水と土の芸術祭 2012
六本木アートナイト2012
2011 Tokyo Midtown Award 2011
勝どきビュータワーエントランスモニュメント
(APT)
2010 松戸アートラインプロジェクト2010
2009 創造と破壊 Noman s [email protected]フランス大使館
港で出合う芸術祭 神戸ビエンナーレ2009
日本海政令市にいがた 水と土の芸術祭 2009(APT)
東京藝術大学修了制作展
2007 武蔵野美術大学卒業・修了制作優秀作品選抜展
寂にして一切を照らして不倒不謬なり。
のは何か。それはカオティックな宇宙である。
のことだ。つまり光を媒体する要素として
オティックである。赤いリンゴが赤く映り
だ鏡も、よく磨かれた鏡も、混沌とした宇
是の如くの円鏡、何れの仏にか有るざ
宮沢賢治の詩『春と修羅』につぎのような
のエーテルである。ただ宮沢はエーテルを
込むように、カオティックな宇宙はカオテ
宙を映すという点では同じなのだ。
受賞
らん。
一節がある。
媒体ではなく光の素、つまり光そのものと
ィックに映り込む。木村の鏡は実は宇宙を
いや木村の鏡のほうが、より明確に私た
考えている。春の風にさらされた糸杉が天
歪めているのではなく、もともと宇宙は木
ちに宇宙の真理を開陳してくれている。磨
くだける雲の眼路をかぎり
空からとどく春の光を吸収しているので
村の鏡が映し出しているように歪んでい
き込まれた鏡の前で混沌とした宇宙を見
れいろうの天の海には
ある。
るのだ。
ることは困難だ。私たちはそれほど鋭い目
心鏡とはすべてを映し出す如来の心の鏡
聖玻璃の風が行き交ひ
エーテルの存在はアインシュタインの相
アインシュタインは光素を闇に葬ったが、 を持っている訳ではない。木村の鏡の前に
であり、円明とは円満で明らかな鏡である。
ZYPRESSEN 春のいちれつ
対性理論によって一蹴され科学から消え去
相対性理論によれば光も時間も重力の影響
立ったほうが容易に宇宙の真理に到達す
完全無欠な鏡のような智慧がどの仏にそな
くろぐろと光素を吸ひ
った。しかしエーテルは 20 世紀の SF に生
下にある。私たちはもちろんそのようなこ
ることができるのである。
わっている、というのである。
その暗い脚並からは
き延びた。私がエーテルという言葉を知っ
とに気づかずに暮らしている。宇宙規模の
混沌とした宇宙の光の呼吸。われわれも
ここで鏡が歪んでいたり曇っていたりす
天山の雪の稜さへひかるのに たのは 10 代半ばに熱中したアメリカの SF
出来事や微細な素粒子レベルの出来事に
木村の鏡の送り出す光素を吸おうではないか。
(宮坂宥勝監修『空海コレクション2』
ちくま学芸文庫 pp.124-125)
エーテル
エーテル
2011 Tokyo Midtown Award 2011「準グランプリ」
東京ミッドタウン特別賞
2009 アートインコンテナ国際展入賞
2007 武蔵野美術大学卒業制作優秀賞
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清水敏男 Toshio Shimizu
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TOSHIO SHIMIZU ART OFFICE 代表取締役、学習院女子大学・大学
院教授、キュレーター、美術評論家。1953 年東京生まれ。ルーヴル美
術館大学修士課程修了。東京都庭園美術館、水戸芸術館現代美術セ
ンター芸術監督を経て、現在は展覧会やアートイベントの開催、パブリッ
4.「海抜ゼロ」
APT(土屋公雄アートプロジェクトチームとして制作) W1000×D1800×H1500mm 鉄 日本海政令市にいがた水と土の芸術祭 2009(新潟)
5.「linenes scape」#-006「sunrise」 W700×H250mm インクジェットプリント 2013
6.「linenes scape」#-007「sunset」 W700×H250mm インクジェットプリント 2013
7.「記憶のシルエット」 APT W5000×D3500×H4000mm ステンレス 2011 勝どきビュータワー
(東京 )
クアートのプロデュースを中心に活動している。最近の主な活動に、
「上海
作家 E.E. スミスによる『レンズマン』シリー
我々は気づくことはない。しかし宇宙の実
かれ澄みきっているものであり、そこには
この「光素」ということばに「エーテル」と
ズでのことだ。レンズを装着した宇宙の平
相は常に変化し混沌としている。あらゆる
ドタウン・アートワーク」、
「豊洲フロント・アートワーク」、
「名古屋ルーセン
はっきりとこの世界が映し出されているこ
いうルビがふってある。
和を守るヒーローの話の中に頻繁に「エー
ところに歪みがつねに生じ固定されてい
ューザ川崎・アートワーク」、
「多摩川アートラインプロジェクト」等がある。
ることは想定されていないだろう。鏡は磨
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万国博覧会日本産業館トステムブース・アートディレクション」、
「東京ミッ
トタワー・アートワーク」、
「いわて県民情報交流センター・アートワーク」、
「ミ
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