この情報を手掛かりに診療が始まります。Doorway information

Doorway information
★Doorway information の概要とサンプル
ここでは Doorway information についての情報、そしてその効率的な対策に関して述べていきます。ま
ずは Doorway information の全貌を把握する必要があります。以下にそのサンプルを載せましたので、
それを一度眺めてみましょう。これと同じ紙が診察室のドアの内側にも貼ってあるので、もしその内容を忘
れてしまっても試験中に見直すことができます。またカルテを書く際にも同様の情報をパソコン上で簡単に
見ることができますのでご安心ください。
DOORWAY INFORMATION
Robert Smith is a 50 y/o man who complains of chest pain
Vital Signs
1, Temp: 37.0℃ (98.6°F)
2, BP: 134/84 mm Hg
3, HR: 80/ min
4, RR: 12/min
Examinee Tasks
1, Obtain a focused history
2, Perform a relevant physical examination. Do not perform rectal, pelvic,
genitourinary, inguinal, hernia, female breast, or corneal reflex examinations.
3, Discuss your initial diagnostic impression and your workup plan with the patient.
4, After leaving the room, complete your patient note on the given form.
これは Doorway information のサンプルです。本番もこれと殆ど一緒と思っていただいていいでしょう。
さて、このサンプルを詳細に見ていきましょう。
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★Doorway information の説明
DOORWAY INFORMATION
Robert Smith is a 50 y/o man who complains of chest pain
→ここでは患者の名前、年齢、性別、主訴が与えられます。言うまでもなくこの部分は非常に重要なので
紙に書き写しましょう。この主訴の部分が場合によっては、異なった来院理由になっている場合があります。
例えば、Drug refill に来ている場合や、就職前の健康診断に来たとかです。患者本人ではなく家族が
相談に来る場合もあるそうですし、telephone のケースの場合も、家族が相談のため電話をかけてきてい
るという旨がこの部分に書かれています。Telephone encounter に関しては後で詳しく説明しています
のでそちらを参照してください。
Vital Signs
1, Temp: 37.0℃ (98.6°F)
2, BP: 134/84 mm Hg
3, HR: 80/ min
4, RR: 12/min
→ここでは基本的に体温、血圧、脈拍、呼吸数が与えられますが、その限りではありません。場合によって
は SpO2 等の値も与えられます。診察室で自らバイタルサインを測定し直すこともできますが、如何なる場
合であってもこの Doorway information に書いてあるものを信用して診断するようにしましょう。全てを
紙に書き写す必要はありません。バイタルに明らかに異常があるものだけをさっと書き写しましょう。
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Examinee Tasks
1, Obtain a focused history
2, Perform a relevant physical examination. Do not perform rectal, pelvic,
genitourinary, inguinal, hernia, female breast, or corneal reflex examinations.
3, Discuss your initial diagnostic impression and your workup plan with the patient.
4, After leaving the room, complete your patient note on the given form.
→ここでは受験者がやるべきタスクが書かれています。多くのケースでは上記の 4 つのことが書かれています
が、異なるケースもあります。必ずこのタスクを注意深く読む習慣を身につけましょう。実はいつもと違ったこ
とが書かれていることがあるためです。ケースによっては身体診察を求められません。その場合は上記 2 のよ
うなことは書かれていません。大事なのでもう一度言いますが毎回 Examinee tasks を確認しましょう。
★Doorway information に関する戦略
部屋に入る前に与えられた情報から、鑑別疾患と聞くべき質問を考える必要があります。そしてそれらを
事前に紙にメモしてから部屋に入ることで問診がスムーズにいきます。もし何も考えないですぐに部屋に入
ってしまうと聞くべきことが分からなくなって焦り、英語自体も怪しいものになってしまい非常に危険です。全
部で 15 分という短い時間を、ここで長く使うのを躊躇われる気持ちはよくわかりますが、全体の流れを良く
するためにもここで落ち着いて考え準備することが大切なのです。しかしアメリカ人達は驚くほど早く部屋に
入っていきます。開始 5 秒くらいで入る人もいます。ここで焦って、彼らにつられてはいけません。FA や
Kaplan の参考書には入室までに 30 秒から 1 分程度の時間をかけると書いていますが、1 分では全然
足りない場合もあります。上記に挙げたことを書き写し、全症例で聞くべき質問の語呂を書き、それに加え
て主訴ごとに聞きたいことを簡単にメモしてから入室するようにしましょう。通路に一人取り残されるのは不
安だと思いますが、こうすることで問診はスムーズにいけると思います。これが日本人のやり方だと思いま
す。
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※重要事項:メモ用紙には英語以外の言語を書いてはいけません。もし明らかにたくさんの英語以外の
言語がメモ用紙に書いてあると罰せられる可能性があります。
以下に、もし僕が上記の Doorway information を見た場合に入室前にするだろうメモのサンプルを載
せておきます。参考にしてください。メモ書きの意味は後述します。
上記を踏まえてここでどう具体的に入室前の準備をするかさらに具体的に踏み込んでいきます。ここで書く
べき事項をまず以下に列挙します。尚、上のメモ書きの番号は以下の説明の番号と対応しています。
①、患者の名前、年齢、性別、主訴、バイタルサインなどの Doorway information からの情報
②、現病歴に関する語呂:OPDCSF(LIQR/ABCCCDO)AAA
③、主訴毎の語呂:CHEST P など
④、その他重要情報に関する語呂:PAMFOSWADSADTOES
⑤、主訴毎の鑑別疾患:CHEST PAIN など
⑥、主訴に関連する診察部位
⑦、カウンセリング
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上記 7 つを入室前に書くことが理想です。一つ一つ解説していきます。
①、既に述べましたが入室前に必要な情報はメモしておきましょう。
②、OPDCSF(LIQR/ABCCCO)AAA とは現病歴に関して漏れなく聞くための語呂です。Kaplan では
これとは違うものを使いますし、巷ではそれ以外の語呂も色々と使われているようですが、個人的にはこれ
が一番しっくりきたためこれを最後まで使っていました。その内容は以下の通りです。
O Onset
A Amount
P Progression:
B Blood
D Duration
C Color
C Constant / Intermittent
C Consistency
S Settings
C Content
F Frequency
O Odor
L Location
A Alleviating
I Intensity
A Aggravating
Q Quality
A Associated
R Radiation
全症例で OPDCSFAAA を使います。主訴が痛みでも黄疸でも何でもいけます。例えば、Progression
を聞くときには、Is it getting worse?等と聞けばいいだけです。そして主訴が痛みだった場合には LIQR
を加えます。また主訴が液体のもの、例えば血尿や喀痰だった場合は ABCCCDO を加えます。これを覚
えてメモしておくことで現病歴に関する大事な情報を聞き漏らすが危険性が無くなります。それぞれの項目
の聞き方は各自後述のフレーズ集をご確認ください。そして最後に Associated とありますが、ここでは
Review of system(ROS)をするように関連症状を聞きます。この関連症状を広く聞く方法として、Do
you have any other problems?という聞き方がありますが、この質問で他に困っていることを教えてく
れる患者もいれば、あるにもかかわらずノーと答える患者もいるのです。つまりその隠された情報を得るため
には事前に想定される症状や関連事項を考えておき、specific に聞かなければならないのです。実際本
番でも、ノーと答えたあとに症状を絞って聞くとイエスと答えた患者がいました。そこで主訴毎に聞くべき質
問事項を語呂にして覚えるのが一つの対策と言えます。3 をご覧ください。
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③、ここでは主訴毎に聞くべき質問の語呂をメモします。例えば胸痛の場合は CHESTP
という語呂があります。以下のような内容です。
C cough
H hemoptysis/ heartburn
E emesis/ diarrhea/ edema over ankle
S SOB/ sweating/ syncope/ similar episode before
T temperature/ tenderness on the chest (costochondritis-trauma)/ Tenderness of
legs (DVT)
P palpitation
上記のように胸痛に関連しうる関連症状をまとめでて語呂にし、その頭文字をとって作ったのが CHESTP
です。このような語呂を覚え、患者に的を絞った質問をすることで隠された情報を探し当てることができ、
鑑別診断に非常に重要な情報を得ることができます。このマニュアルには数十もの語呂をネットから拝借、
または僕が自作し載せてありますが、全主訴ではありません。余力がある限り暗記しておいたほうが良いで
しょう。間違いなく鑑別に役立つ情報が効率よく手に入ります。しかし、語呂自体の精度が完璧だとは思
っていませんので必要に応じてご自身で修正されてください。全部覚えることができない方は、必要だと思う
分だけ覚えてください。例えば、heel pain を主訴で来院された方に聞くべき質問事項で、その鑑別診断
をぱっと出すことができる方がどれほどいるでしょうか。恐らく多くはいないはずです。そのように練習する中で
自分にとっての弱点を見つけていき、その都度必要な語呂を覚えていきましょう。
④、ここでは現病歴以外の重要情報に関する語呂をメモしていきます。そこで奴に立つのが
PAMFOSWADSADTOES という語呂です。以下が内容になります。この語呂は患者が思春期以上の
年齢の場合に適用されるもので、もし患者は思春期にも満たない小児の場合は PAMIFBIGDEAL とい
う語呂が使われます。
★成人用:PAMFOSWADSADTOES
O OB/GYN
P Past medical/surgical history
S Sexual
A Allergy
M Medication
W Weight
F FH
A Appetite
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D Diet
F Family history
S Smoke
B Birth history
A Alcohol
I Immunization
D Drugs
G Growth
T Travel/Trauma
D Daycare center
O Occupation
E Eating habit
E Exercise
A Activity
S Stress/ social
L Last checkup
★小児用:PAMIFBIGDEAL
P Past medical/surgical history
A Allergy
M Medication
I Ill contact
つまり既往歴やアレルギー歴など全症例において重要な情報を纏めた語呂です。これもネット上には違っ
た形の語呂や、内容も多少異なった語呂を見つけることができます。僕にとってはこれが一番しっくりきたた
めこれを終始使用していました。基本的に全症例で全部聞いたほうがいいですが、時間の兼ね合いもあり
ますし多少の取捨選択は必要だと思います。例えば交通事故後に運ばれてきた人に渡航歴は聞く必要
性は低いでしょう。またこの中で体重に関する部分だけやや他のものとは異質で、現病歴に近い性質があ
りますので、出来れば ROS を聞く際に一緒に聞いたほうがいいかもしれません。もちろん後で聞いても問
題にはならないとは思いますが。この語呂は確実に覚えましょう。Kaplan と全く同じ語呂を覚えないと、
Kaplan のテストではカルテに確実に記載したのにもかかわらず、何故か採点されず、毎回「Kaplan の語
呂を覚えましょう」というアドバイスを頂きますが気にしなくていいです。
⑤、ここでは主訴毎の鑑別疾患をメモしていきます。胸痛であれば CHEST PAIN です。鑑別疾患は問
診、診察を進めていく上で死活的に大事になってくるので必ず主訴毎に鑑別疾患がたくさん頭に浮かぶよ
うに準備していきましょう。CHEST PAIN の内容は以下です。
CHEST PAIN
C Costochondritis /Cocaine abuse
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H Herpes zoster/ hyperventilation
E Esophagitis/ Esophageal spasm/ GERD
S Stenosis (AS)/ Sickle cell anemia (Acute chest syndrome)
T Trauma
P PE/ pneumonia/ pneumothorax/ pericarditis/ pancreatitis
A Angina/ aortic dissection/ aortic aneurysm
I Infarction/ IV disk disease
N Neuropsychiatric disorders
この語呂だけで、胸痛の鑑別疾患が 20 程度挙がります。もちろんややレアなものも含まれていますので、
全症例で全疾患の可能性を考える必要性はありません。Doorway information から得られる年齢や
性別、バイタルサインだけでもある程度絞れると思います。主訴に対する鑑別疾患の語呂を覚えていれば
さっとメモしましょう。これを書いていくことで、問診中も様々な重要な鑑別疾患を考えながら進めていくこと
ができます。鑑別疾患が頭にあれば聞くべき質問も当然忘れず聞くことができます。質問事項の語呂と同
様に、このマニュアルには鑑別疾患の語呂も多数載せてありますので是非ご活用ください。
⑥、ここでは主訴に関連する診察部位を事前にメモしていきます。そこまで重要ではないかもしれませんが、
個人的に好んでメモしていました。例えば胸痛であれば、入室前に「胸部診察を全部する」と決めてから
入室していました。そこで紙にさらっと Cardiovascular(CV), Lung と書いてから入室しました。そうする
ことで身体診察の際に迷いなく行うことができます。もちろん入室前に鑑別が全く上がらない場合も多いの
ですが、ある程度は決めておいたほうがスムーズに進めることができると思うのです。練習する中で気付くと
思いますが、FA に書いてあるような身体診察を限られた時間で全部行うのは現実的ではないのです。右
下腹部であれば腹部診察一通りと psoas sign や Rovsing sign を行うなど決めていく必要があります。
事前にメモ用紙にする予定の診察部位を書き込んでおくと、質問もそれに焦点を合わせて出来ますし、
少なくとも体系的な診察を行うことができるでしょう。しかし、これに関してはマストではなく個人の好みによ
ってするしないを決めていいでしょう。
⑦、最後にカウンセリングに関してメモします。CS では喫煙や過度な飲酒などを患者がしている場合には、
その習慣をやめるようにカウンセリングをする必要があります。もちろん入室前にはカウンセリングの必要性の
有無に関しては知る由もありませんが、事前にメモ用紙にカウンセリング用のスペースを用意しておくことを
お勧めします。何故ならカウンセリングは非常にやり忘れることが多いためです。問診の中で喫煙に対して
カウンセリングが必要と判断しても、時間に追われて問診、診察をする中でカウンセリングをし忘れてしまう
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ことが非常に多いのです。やり方はいくらでもありますが、事前にカウンセリング用のスペースをメモ用紙に用
意しておき、そこに必要に応じて「smoking」「alcohol」と書き込んでおくことでし忘れることを防ぐのに役
立ちます。カウンセリングに関する詳細はまた後述していきます。
★患者が成人していない場合の Doorway information
・アメリカでは 18 歳未満の子供(実際患者になり得るのは思春期のみ)を診察する時には親に許可と
る必要があります。基本的に Doorway information に、「患者の親から既に口頭で許可を得ている」
と書かれていますが、Kaplan によると以下の様に書かれている場合もあるとのことです。真偽は疑わしい
ですが一応念のためのその場合の対応策を載せておきます。
DOORWAY INFORMATION
Parent referred daughter/son to see you.
→この場合ではまだ許可を得ていないため許可を取る必要があります。部屋に入ったら子供(患者)に、
今日病院に来ていることを親は知っているかどうかを尋ねます。そして、電話を探し、黄色いボタンを押すと
親に繋がります。これは電話のケースと同様です。そして以下のように告げます。
→I have your daughter/son with me and I just want to verify that I have permission
to take care of her/him today.
→こんなケースが本番であるとは思えませんが万が一の為に確認しておいてください。
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