Clinical Case Study Unexpected Urine Drug Testing Results in a Hospice Patient on High-Dose Morphine Therapy Gary M. Reisfield1, Chris W. Chronister2, Bruce A. Goldberger2,3, and Roger L. Bertholf4* Author Affiliations Departments of1 Community Health and Family Medicine; and4 Pathology, University of Florida Health Science Center, Jacksonville, FL;2 Department of Pathology, Immunology, and Laboratory Medicine; and3 Department of Psychiatry, University of Florida College of Medicine, Gainesville, FL. *Address correspondence to this author at: Department of Pathology, University of Florida Health Science Center/Jacksonville, 655 West 8th Street, Jacksonville, FL 32209. Fax 904-244-4290; e-mail [email protected]. 臨床症例研究 高用量モルヒネ療法を受けるホスピス患者の、尿薬物テストの予期せぬ結 果 症例 手術不能の進行した子宮頸がんを有する 41 歳のアフリカ系アメリカ人女性が、ホスピス施設に入院した。患 者は、広範な局所腫瘍の浸潤、骨骨盤転移、および仙骨褥瘡による続発性の激しい痛みを患っていた。彼女の 疼痛緩和のために必要な薬として、モルヒネ硫酸による漸増投与スケジュールの治療を行った(一日平均 2 回 から 3 回投与)。徐放型硫酸モルヒネ(MSContin®、Purdue Pharma LP)400mg を 8 時間毎の経口投与と、即効 型硫酸モルヒネ(MSIR®、Purdue Pharma LP)180mg を 4 時間毎経口投与することを組み合わせて、血中濃度 を安定させた。患者は、赤血球輸血および両側内腸骨動脈塞栓のため入院し、致死的な膣からの出血が見られ たため、最後の 12 週間を入院ホスピスユニットで過ごした。亡くなる約 3 週間前、採尿し、モルヒネとその 代謝物の分析を行った。 GC-MS 分析によって、モルヒネの存在だけでなく、少量のヒドロモルフォンの存在 が明らかになった。 考えるポイント • なぜ医師は、オピオイド鎮痛薬を受けている患者に尿中薬物モニタリングを実施するのか? • 通常、モルヒネの予想される代謝物は何か? 1 • モルヒネ単独投与患者におけるヒドロモルフォン陽性の尿薬物検査の結果から、モルヒネをきちんと 飲んでいるか、もしくは処方されていないヒドロモルフォン摂取かどうか、どのように区別したらよいか? 考察 過去 20 年間に、慢性の悪性でない疼痛に対する慢性オピオイド鎮痛薬療法(chronic opioid analgesic therapy : COAT)が臨床に取り入れられることが多くなってきている。より自由なオピオイドが処方され、これらの薬 物の乱用や転用が、劇的に増加してきたことから予期せぬ事態を招いている。 薬物乱用と健康に関する最新の全国調査(1)によると、処方オピオイドの過去の年間乱用者数は 2,147,000 人 であり、処方または違法薬物の他の単一区分の新しい乱用者の数よりも多かった。さらに、これらのオピオイ ドのほとんどは、医師による有効な処方によるものであった。 2002 年まで、処方オピオイドはコカインやヘ ロインを上回り、薬物中毒の主要な原因として、死亡診断書に記載されていた(2)。 オピオイド乱用および転用の可能性について、これらの薬を処方する医師にとって懸念材料になっている。そ の結果、尿の薬物検査は、慢性疼痛の COAT で治療されている患者の治療管理計画の中で、ますます日常的な 項目になってきている。 オピオイド代謝に関する知識は、COAT において、尿薬物検査でオピオイド陽性を示した時の正しい解釈に重 要である。処方オピオイドには、処方オピオイドそのものが代謝物になるものがあるので、尿中代謝物は処方 オピオイドの生体内変換体、もしくは第二のオピオイド(図 1⇓)の不正使用を反映している可能性がある。 あるいは、ヘロインなどの一部の薬は、それらの迅速な代謝により尿中に検出されることはない。 ヘロイン 投与は、代謝物、6 - アセチルモルヒネ、モルヒネの検出によってのみ判定される。代謝物の存在により、処 方オピオイドが不正使用されたと解釈することができ、治療にオピオイドを使用しない損失も含めた懲罰的な 行為につながるので、臨床医が正確に尿薬物検査の結果を解釈することは不可欠である。しかし、COAT にお ける尿薬物検査を依頼する医師で、これらの代謝変換について認識しているのは比較的少数である(3)。 2 図 1 .コデイン、モルヒネ、その誘導体の代謝 コデインとその誘導体の脱メチル化は、CYP2D6 の酵素によって触媒される。ヘロインは、順次モルヒネに脱 アセチル化される。6 - アセチルモルヒネは、血清コリンエステラーゼ、主にブチリルコリンエステラーゼ (BuChE)によって最初に加水分解され、次に主に肝臓エステラーゼにより、モルヒネに加水分解される。モ ルヒネからヒドロモルフォン、コデインからヒドロコドン、ヒドロコドンからジヒドロコデインに変換する酵 素はまだ知られていない。モルヒネの約 75%は、ウリジン二リン酸グルクロン酸転移酵素に結合している。参 考文献: Cone et al. (5); Hall et al. (7); Chronister et al. (8); Oyler et al. (9). オピオイド鎮痛薬の最も一般的なモルヒネの代謝物は、UGT2B7 触媒、薬理学的に活性な 3 – グルクロニドや 6 - グルクロニドで、いくつかの不活性化代謝物もわずかに生じる。ヒドロモルフォンへのモルヒネの代謝は、 Cone らによって 2006 年に初めて報告され、モルヒネを処方された 13 名の外来患者のうち、10 名からヒドロ モルフォンが検出されたことを示した(ヒロドモルフォン:モルヒネ比は 0.015-0.024)(4)。最近、また同 じグループが、指定されていない"高用量"モルヒネを投与した 34 名の外来患者のうち 34 名全てに、この代謝 変換が生じていることを実証した(尿中ヒドロモルフォン:モルヒネ比は 0.002-0.020) (5)。さらに、最近、 Wasan らは、モルヒネ療法を処方された 32 名の外来患者の後向き調査の結果を発表した(6)。この研究では GC-MS を用いて、50μg/ L の検出限界で尿中ヒドロモルフォンを測定した。32 名の外来患者のうち 21 名にお いて、ヒドロモルフォンが検出された(尿中ヒドロモルフォン:モルヒネ比は 0.01-0.06)(Ajay Wasan, personal communication, October 17, 2008)。さらに、ヒドロモルフォンがクロマトグラフ分離の過程で形成す る影響を調べるために、25,000μg/ L までのモルヒネ濃度で測定したが、 ヒドロモルフォンは検出されなかっ た。しかし、両グループとも、尿中ヒドロモルフォンはオピオイドの不正使用に起因した可能性があるので、 条件付きの結果であると述べている。 3 症例の解決法 この患者のオピオイド鎮痛薬の投与計画は、著者の一人(GMR)によってホスピス、病院双方において完全に 管理されていた。少なくとも最後の 6 ヶ月間、 彼女は硫酸モルヒネ以外のオピオイドを投与されていなかっ た。また、シトクロム P450 2D6 または UGT2B7 の既知の阻害剤や基質も投与されていなかった。我々は、患 者らは、モルヒネ 1500 mg /日を超えるような高用量のオピオイド鎮痛薬治療を必要としていることに注意し なければならない。"典型的な"モルヒネ鎮痛薬ではないが、 特に終末期のケアにおいて、 ホスピス患者の 90%が、300mg/day のモルヒネ当量で管理されていることがわかった(7)。 患者の死亡約 3 週間前に、モルヒネとヒドロモルフォン濃度の測定のため、両側腎管のいずれかから採尿した。 防腐剤なしの標準的な採尿カップに採取し、測定まで 2-4℃で保存した。採尿時における血清中の腎および肝 機能の値は基準範囲内であった。 分注した尿検体を、酵素または酸による加水分解をせずに固相抽出し、 GC-MS で分析した。モルヒネとヒド ロモルフォンは、重水素化内部標準を使用した 5 点検量線で定量した。質量分析計は、選択イオンモニタリン グモードで作動させ、モルヒネとヒドロモルフォンはイオンの比率に基づいて同定した(8)。尿検体中のモ ルヒネ濃度は、171,000μg/ L であり、ヒドロモルフォン濃度は 104μg/ L であった。ヒドロモルフォン:モル ヒネ比は 0.0006 であった。モルヒネの濃度を検量線の範囲内するため、尿検体は 500 倍希釈した。 この患者において、尿中にヒドロモルフォンが残っていた可能性として、モルヒネからヒドロモルフォンへの 生体内代謝による変換よりも、むしろ硫酸モルヒネ製品中のコンタミネーションが考えられた。投与薬剤の純 度を決定するために、 MSContin®(徐放型硫酸モルヒネ)と MSIR®(即効型硫酸モルヒネ)の錠剤を、0.9%生 理食塩水に溶解し、再抽出してから、尿検体の場合と同じ方法で薬剤を分析した。これらの薬のように、モル ヒネが非常に大量に存在する場合、GC-MS カラムへの過負荷や、検体の分離物質と同定へ影響があるため、微 量なヒドロモルフォンの定量は困難である。ヒドロモルフォンの検出限界は、0.0125 mg 以下のヒドロモルフ ォンを含む即効型硫酸モルヒネ(30 mg 錠) と、0.125mg 以下のヒドロモルフォンを含む徐放型硫酸モルヒネ (100 mg 錠)で確認した。ヒドロモルフォンのコンタミネーションの上限は、尿中ヒドロモルフォン:モル ヒネ比(即効型 0.00042、徐放型 0.00125)に対応していた。 これらの知見から、この患者の尿中ヒドロモルフォンは、徐放型モルヒネ錠剤のコンタミネーションによるも のという可能性がなくなるわけではないが、以下の理由から今回のシナリオが考えられる。(a)即効性およ び徐放型モルヒネ錠剤のいずれにおいても、ヒドロモルフォンは検出されなかった。 (b)モルヒネ製剤のヒ ドロモルフォンのコンタミネーションに関する論文は報告されていない。 (c)ヒドロモルフォン:モルヒネ 比の可能な最大値は 0.00125 で、既報にある 60 名以上のすべてのデータではこの比率未満であるが、この患 者で検出された比率よりも大きかった。 結論 この症例では、ヒドロモルフォンを投与しない慢性的な高用量モルヒネ療法の隔離患者において、尿中のモル ヒネの微量代謝産物としてヒドロモルフォンが検出された。今回の調査結果は、 Core ら (4)(5)や Wasan ら (6)の研究結果を実証するものであった。 慢性モルヒネ治療の患者では、モルヒネと同様に少量のヒドロ 4 モルフォンを生じる尿薬物検査を慎重に解釈すべきである。なぜなら、 ヒドロモルフォンは、オピオイドの 不正使用の指標というよりもむしろモルヒネ代謝物の可能性があるためである。 覚えておくべきポイント • 患者に投与したモルヒネから、尿中モルヒネ濃度の 6%を超える可能性は低いが、少量のヒドロモルフ ォンが生成されることがある。多量だとヒドロモルフォン投与の可能性が高い。 • 他のオピオイドにおいても、類似した代謝変換体が報告されている。 • コデイン codeine → モルヒネ morphine、 • コデイン codeine → ヒドロコドン hydrocodone (9)、 • ヒドロコドン hydrocodone → ヒドロモルフォン hydromorphone、 • オキシコドン oxycodone → オキシモルフォン oxymorphone. • ポピーの種子には少量のアヘンが含まれており、アヘン陽性尿薬物スクリーニングと、モルヒネとコ デインの陽性確認になる。 • ヘロイン(ジアセチルモルヒネ)は、急速に 6 - アセチルモルヒネに代謝され、そしてモルヒネに代謝 される。スクリーニング検査も同様に 6 - アセチルモルヒネが存在するものの、モルヒネは、ヘロイン乱用者 の尿中に検出される唯一のオピオイドになりうる。 • 尿薬物検査を依頼する多くの医師は、正しく尿の薬物検査の結果を解釈するための、オピオイド代謝 に関する理解が不十分である。オピオイド代謝変換の知識が不十分だと、オピオイド乱用の冤罪になることが ある。 謝辞 Author Contributions: All authors confirmed they have contributed to the intellectual content of this paper and have met the following 3 requirements: (a) significant contributions to the conception and design, acquisition of data, or analysis and interpretation of data; (b) drafting or revising the article for intellectual content; and (c) final approval of the published article. Authors’ Disclosures of Potential Conflicts of Interest: No authors declared any potential conflicts of interest. Role of Sponsor: The funding organizations played no role in the design of study, choice of enrolled patients, review and interpretation of data, or preparation or approval of manuscript. © 2009 The American Association for Clinical Chemistry Previous Section 5 参考文献 1. Substance Abuse and Mental Health Services Administration (SAMHSA). Results from the 2007 National Survey on Drug Use and Health: national findings 2008:209 p. SAMHSA, Office of Applied Studies Rockville (MD). NSDUH Series H-34, DHHS Publication No. SMA08-4343. 2. Paulozzi LJ, Budnitz DS, Xi Y. Increasing deaths from opioid analgesics in the United States. Pharmacoepidemiol Drug Saf 2006;15:618-627. 3. Reisfield GM, Bertholf R, Barkin RL, Webb F, Wilson G. Urine drug test interpretation: what do physicians know?. J Opioid Manag 2007;3:80-86. 4. Cone EJ, Heit HA, Caplan YH, Gourlay D. Evidence of morphine metabolism to hydromorphone in pain patients chronically treated with morphine. J Anal Toxicol 2006;30:1-5. 5. Cone EJ, Caplan YH, Moser F, Robert T, Black D. Evidence that morphine is metabolized to hydromorphone but not to oxymorphone. J Anal Toxicol 2008;32:319-323. 6. Wasan AD, Michna E, Janfaza D, Greenfield S, Teter CJ, Jamison RN. Interpreting urine drug tests: prevalence of morphine metabolism to hydromorphone in chronic pain patients treated with morphine. Pain Med 2008;9:918-923. 7. Hall S, Gallagher RM, Gracely E, Knowlton C, Wescules D. The terminal cancer patient: effects of age, gender, and primary tumor site on opioid dose. Pain Med 2003;4:125-134. 8. Chronister CW, Gund AL, Goldberger BA. Rapid detection of opioids in vitreous humor by enzyme immunoassay. J Anal Toxicol 2008;32:601-604. 9. Oyler JM, Cone EJ, Joseph RE, Jr, Huestis MA. Identification of hydrocodone in human urine following controlled codeine administration. J Anal Toxicol 2000;24:530-535. 論説 Larry A. Broussard Author Affiliations Department of Clinical Laboratory Sciences, Louisiana State University Health Sciences Center, New Orleans, LA. Address correspondence to the author at: Department of Clinical Laboratory Sciences, LSU Health Sciences Center, 1900 Gravier St., 10th Floor, New Orleans, LA 70112-2262. Fax 504-568-6761; e-mail [email protected]. 疼痛管理をする研究室には、臨床および職場における毒性学(尿中の薬物の検出)と、治療薬モニタリング (非定型患者の薬物濃度を測定し、異常な結果を説明するなど)の側面を兼ね備える必要がある。American Pain Society、 American Academy of Pain Medicine、American Society of Interventional Pain Physicians のガイドライ ンでは、 コンプライアンスの確認と、違法薬や処方されていない薬物を使用していないか、患者を管理する 6 ために尿の薬物検査の使用を推奨している(1)、(2)。実験室の科学者は、薬物審議の選択や開発において 重要な役割を果たすことができる。考慮すべきことは、投与薬(オピオイド/アヘン)、悪用される可能性の ある非処方薬(メタドン、オキシコドン、フェンタニル、ベンゾジアゼピン、バルビツレート)、違法薬物 (アンフェタミン、大麻、コカイン、フェンシクリジン)、マスキング剤、利用方法(免疫学的スクリーニン グ、クロマトグラフの確認)、技術的な事項(分析感度と特異性、干渉、カットオフ濃度)である。 これら の緒問題に対処するために、研究室では疼痛管理薬の審査をすることがある。 薬物検査結果の解釈は、疼痛管理室のもう一つの重要な役割である。そして解釈するには、薬物代謝の知識が 必要である。Reisfield らが示した症例のように、モルヒネからマイナー代謝物のヒドロモルフォンへの明らか な代謝変換を実証した。この症例において、疼痛管理室として十分に考えられることは、 ヒドロモルフォン に関して、2 つの可能性を除くことである。それはヒドロモルフォンが、摂取したモルヒネにコンタミネーシ ョンしていたことと、ヒドロモルフォンが抽出/検出プロセス中に生成したことである。薬物動態学、薬力学、 薬理遺伝学の知識、実験•試験方法の分析パラメータは、結果を解釈するときに使用する重要なツールである。 謝辞 Author Contributions: All authors confirmed they have contributed to the intellectual content of this paper and have met the following 3 requirements: (a) significant contributions to the conception and design, acquisition of data, or analysis and interpretation of data; (b) drafting or revising the article for intellectual content; and (c) final approval of the published article. Authors’ Disclosures of Potential Conflicts of Interest: Upon manuscript submission, all authors completed the Disclosures of Potential Conflict of Interest form. Potential conflicts of interest: Employment or Leadership: None declared. Consultant or Advisory Role: None declared. Stock Ownership: None declared. Honoraria: None declared. Research Funding: None declared. Expert Testimony: L.A. Broussard, Southern Nuclear, Birmingham, AL. Role of Sponsor: The funding organizations played no role in the design of study, choice of enrolled patients, review and interpretation of data, or preparation or approval of manuscript. © 2009 The American Association for Clinical Chemistry 参考文献 7 1. Chou R, Fanciullo GJ, Fine PG, Adler JA, Ballantyne JC, Davies P, et al. Clinical guidelines for the use of chronic opioid therapy in chronic noncancer pain. J Pain 2009;10:113-130. 2. Trescot AM, Boswell MV, Atluri SL, Hansen HC, Deer TR, Abdi S, et al. Opioid guidelines in the management of chronic non-cancer pain. Pain Physician 2006;9:1-40. 論説 Douglas Gourlay1,2*, Howard A. Heit3 Author Affiliations 1Pain and Chemical Dependency Division, Wasser Pain Centre, Mount Sinai Hospital, Toronto, Ontario Canada;2 Centre for Addiction and Mental Health, Toronto, Ontario Canada;3 Georgetown University School of Medicine, Washington, DC. *Address correspondence to this author at: Centre for Addiction and Mental Health, 33 Russell Street, Toronto, Ontario, Canada M5S 2S1. Fax 416-595-6821; e-mail [email protected]. この症例では、尿の薬物検査の臨床的役割について、興味深い問題が挙げられる。まず最初に、インフォーム ドコンセント患者に実施される患者中心の薬物検査と、患者のために実施されるわけではないような規定の、 法的薬物検査の 2 つを区別することが重要である。検査のストラテジーは、これら 2 つの状況で明らかに異な る。 今回の症例の議論では、末期子宮頸がんの若い女性のケースで生じる、終末期医療のありふれた問題の解決に なる。 彼女の病歴は不完全であるが、疼痛緩和のため、徐放型および即効型モルヒネの投与スケジュールに 基づいて治療されていたことは明らかである。薬物検査を実施する理由は明確ではないが、尿中の少量のヒド ロモルフォンが、一時的な緩和治療計画を妨げる可能性がある。 尿中に処方されていないヒドロモルフォンが検出されると、治療チームにとっては懸念が生じるだろう。この ような結果が出た時の鑑別診断としては、投薬過誤、患者間の薬の転用、死期が近い、愛する人を救おうする 家族や友人による違法薬物の密輸の可能性がある。著者らはモルヒネのマイナー代謝物である解釈、これは 2006 年に Cone らによって報告された(1)もので、それが正しいとしているが、同様に一般論として、倫理 的な薬物検査の課題、特に終末期における薬物検査について、重要な課題を提起している。 残念ながら、患者や家族の既往歴に関する情報が少ないと、薬物乱用や中毒の危険性を評価しにくい。 緩和 ケアにおいてですら、これらの問題は重要な課題として残っている。リスク管理への "普遍的予防策"のアプロ ーチが、これらの質問の多くに答えている(2)。たとえば、特にオピオイドクラスの薬物を含む薬物乱用歴 があると、尿の薬物検査の解釈が難しいことがある。ホスピスの比較的制御された場所でも、緩和ケアにおい ては薬物乱用と中毒が生じうることを忘れてはいけない。規制物質の使用に関する倫理的な課題を提起するか もしれないが、人生の終わりにでさえ、このような問題が見落とされがちである。 今回の症例は、慢性的ながん以外の痛みであり、この尿の薬物検査の結果は、よくてオピオイド薬の中止くら いかもかもしれないし、あるいは、基本的なピオイド代謝経路を理解せず、患者を退院させてしまうかもしれ ない。マイナーな代謝経路に、微量なヒドロモルフォンが存在する可能性が示され、臨床状況を慎重に検討し、 8 問題解決に向けてチームで患者中心のアプローチをする重要性に気付く必要がある。したがって患者中心の治 療のために、尿薬物検査の実施を勧めたい(3)。 (訳者:谷 真理子) 謝辞 Author Contributions: All authors confirmed they have contributed to the intellectual content of this paper and have met the following 3 requirements: (a) significant contributions to the conception and design, acquisition of data, or analysis and interpretation of data; (b) drafting or revising the article for intellectual content; and (c) final approval of the published article. Authors’ Disclosures of Potential Conflicts of Interest: Upon manuscript submission, all authors completed the Disclosures of Potential Conflict of Interest form. Potential conflicts of interest: Employment or Leadership: None declared. Consultant or Advisory Role: D. Gourlay, Pharmacofor; H.A. Heit, Purdue Pharma, Abbott Laboratories, King Pharmaceuticals, Ortho-McNeil-Jansen, Cephalon, and Endo Pharmaceuticals. Stock Ownership: None declared. Honoraria: D. Gourlay, King Pharmaceuticals, Cephalon, and Purdue; H.A. Heit, Purdue Pharma, Abbott Laboratories, King Pharmaceuticals, Ortho-McNeil-Jansen, and Cephalon. Research Funding: None declared. Expert Testimony: None declared. Role of Sponsor: The funding organizations played no role in the design of study, choice of enrolled patients, review and interpretation of data, or preparation or approval of manuscript. © 2009 The American Association for Clinical Chemistry 参考文献 1. Cone EJ, Heit HA, Caplan YH, Gourlay D. Evidence of morphine metabolism to hydromorphone in pain patients chronically treated with morphine. J Anal Toxicol 2006;30:1-5. 2. Gourlay D, Heit HA, Almahrezi A. Universal precautions in pain medicine: a rational approach to the treatment of chronic pain. Pain Med 2005;6:107-112. 3. Heit HA, Gourlay D. Urine drug testing in pain medicine. J Pain Sympt Manage 2004;27:260-267. 9
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