Title 黒人作家, CHARLES WADDELL CHESNUTT Author(s) 市川

Title
黒人作家, CHARLES WADDELL CHESNUTT
Author(s)
市川, 紀男
Citation
[岐阜大学教養部研究報告] no.[34] p.[145]-[163]
Issue Date
1996-09
Rights
Version
岐阜大学教養部英語研究室 (The Faculty of General Education,
Gifu University)
URL
http://repository.lib.gifu-u.ac.jp/handle/123456789/3948
※この資料の著作権は、各資料の著者・学協会・出版社等に帰属します。
岐阜大学教養部研究報告第34号 ( 1996)
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黒人作家, CHARLES WADi)ELL CHESNUTT
市
川 紀 男
英語研究室
(1996年 6 月28日受理)
CH A RL ES W A D DEL L CH ESN U TT
A N A FRI CA N -A M ERI CA N A U TH OR
K azuo I CH I K A W A
I
1980年代か ら1990年代にかけて アメ リ カ南部の文芸思潮は, ロ ーカ ル ・ カ ラ ーの黄金期を
迎えた。 ローカ ル ・ カ ラ ー [文学卜とは, MerriU MaguireSkaggsによる と, 「南北戦争の
終結から世紀末までの間にアメ リ カ南部で書 き表さ れた数多 く の著作物に対する総称である。」
その特徴は, 彼は続けて言 う , 「主 と し て物語る こ とであっ て予言する こ と で はない, 語 り
であっ て象徴で はない, 性格描写であっ て心理分析で はない。」 彼は明 らか に ロ ーカ ル ・ カ
ラ ー を ロマ ンスや心理主義的 リ ア リ ズムを基調 と した束北部の文学に対比 さ せている。 ロー
カ ル ・ カ ラ ーは, 彼 も指摘 している よ う に, 「モ ダニズムの規範 に合わないゆえに」, つ ま り
当時のヨ ーロ ッパ文学史の波に乗っ てい ないゆえに, これら19世紀後半の [ アメ リ カ南部の]
作品を20世紀では正 し く 評価で きず, と きには 「けなす」 ( denigrate ) ためのレ ッ テ ルと
も な っ た。「
十
しか し ロ ーカ ル ・ カ ラ ーは本来南部文学 に特有な ジ ャ ンルで あ っ たわけで はない。 ア メ リ
カ全土に起 こ っ た文学運動で あっ た。 そ の背景には歴史の大 き な流れに飲み込 まれた ア メ リ
カ人のさ さ やかな抵抗があ り, 郷愁があ っ た。 すなわち, 南北戦争後南部の北部への再編成
お よ び西漸への拍車 と と も にアメ リ カ は, 産業の発達, 科学技術 の進歩, 交通通信網の整備,
富お よび労働力の集中化, 都市化な どの大変動期 を迎えた。 そ れ によっ て人 び と の生活様式
は画一化 さ れ, 個人 と してのアイ デ ィ ンテ ィ ティ を失いかけて い く のを痛感 した。 この よう
な と き, 広大 なアメ リ カ大陸の各地か ら もた ら さ れる地方色豊かな風物, 習慣, 性格は, 都
会人の失われつつ あ る古里への郷愁 をあお っ たので ある。 なかで も, 南北戦争で敗北 し た結
果北部政府の政治的, 経済的再編成に屈せ ざる を えなかっ た南部 は, 自己防衛機構か ら最後
の砦 と して南部伝統の家族制度√つ ま り 旧南部の大農園制家族 を理想化 し た 「南部家族 ロマ
ンス 」2を旗印に, 南部精神文化の優位性 を主張 してやまなかっ た 。 その主張が文学に向かっ
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た と き, 南部は 「南北戦争後 「特異な」 よ り後進的な地帯のアメ リ カ 的原型」3と な り, ロー
カ ル ・ カ ラ ー [文学] への国民の渇望を癒す分野 と役割を担う ものと して脚光をあびるに至っ
たので あ る 。4
犬
そのう え南部は1877年に再建期の終了を迎える と と もに, 北部による再建期政策が誤 りで
あっ た とい う 南部見解 を正当化 し, あわせて 自らの進歩的態度をア ッ ピール し よ う と して,
元奴隷にその視点か ら黒人方言で語 らせる独特の物語構築を生み出した。 このローカ ル ・ カ
ラ ーのサブ ・ ジ ャ ンルが 「南部文学における新 しい 「和解主義的」 傾向」5と し て歓迎 さ れ
た。 と い う のは, 当時最大の読者層を形成 していたボス ト ンやニ ュ ーヨ ーク な どの束北部の
大都市地域の住民が, 工業化, 商業化, 都市化の波に飲みこ まれ, 大量生産と物質文明に埋
没 しつつあ っ たため, 従来理想 と し て掲げて き,た ピュ ーマ 耳ズ ム精神や個人主義思想 に危機
感 をお ぼえ る に至 っ たか らで あ る 。 また敗戦に追い込んだ南部 に対 し√そ し て解放 し て やっ
た と 自負す る黒人にたい し て , 複雑 に屈折 した感情 を抱 きつつ も関心 を も っ ていたか らで も
ある。 だか ら と いっ て彼 ら は象徴的にあるいは内面的に深 く 掘 り下げた重厚な ロマ ンス には
食傷気味にな っ ていた ので , む し ろ よ り単純な実生活 に基づ く 軽い短編 を望 んだ6と い う 事
実 も忘れて はな ら ない。
そ の よ う な読者傾 向 に応 じ た南部作家 の代表者 と し て , Joe1 Chandler Harris ( 1848-
1908) , ThomasNelsonPage ( 1853-1922) , CharlesWadde11Ch6snutt ( 1858-1932) の 3 人
があげられる。 彼 ら には確かに時流に乗 じた流行作家の側面 も見受け られるが, 他面視点を
下層階級に置 き, 社会 を底辺か ら, そ して弱者の立場か ら見定める手法 を定着 さ せてい る点
で意義深い。 こ の下層階級への視座の設定は, その後の南部文学の拡大, 重層的発展に貢献
し, 20世紀 に入っ て南部ルネ ッ サ ンス 開花の一因と も な っ たか らで あ る。
‥
私は上記 3 人の作家の黒人語 り手による物語を比較 しつつ, 各作家が南部精神の基盤 と も
い う べ き 「南部家族 ロマ ンス」 の概念 を どのよ う に受け と め, どのよ う に対処 しているかを
みてい く 。 今回はCharlesWadde11Chesnutt を研究対象 とす る。
H
19世紀後半の南部は依然 と して階級社会 を堅持 していた。 と い う よ り南部人は敗戦による
自己防衛機構か ら階級意識 を一層強化 した。 社会階級 を決定す る基本概念 は家族の血筋 と地
域社会内で の居住年数ない し世代数で あっ た。7 階級 と いっ て も南部社会 には 2種類 あ っ て ,
一つは白人 と黒人を区別する
class
caste と称する もの, も う 一つはcaste内での階位 を示す
で あ っ た 。 caste の 壁 は 乗 り 越 え ら れ な い が , class 間 の ハ ー ド ル は 上 層 部 ほ ど 高 く
なっ ていた ものの, 必ず し も越え られないほどで はなかっ た よ う だ。8
づ
と こ ろ で Charles W adde11Chesnutt は黒 人 だ っ た 。 と い っ て も外 見 上 は 白人 と 変 わ ら な
かっ た と い う 。 彼の祖父 W adde11 Cadeは白人で , ノ ース ・ カ ロ ラ イ ナ州 Fayettevilleの
「裕福 な奴隷所有者」 9と して タ バ コ栽培 を営んで いた。 彼 は自由黒人女性 で家政婦 を し て い
た Ann Che血 utt と の 間 に 5 人 の 子 供 を儲 け た が , そ の 一 人 が Charles の 父 と な る Andrew
Jackson Chesnutt ( 1833-1920) で あ っ た 。 A ndrew は進 取 の 気 性 に 富 ん で い た と み え て , ∇
青年のこ ろ ( 1856年) 他の志 を同じ く する 自由黒人たち と小 さ なグループ を組んで, よ り よ
い就職口を求めて オハイ オ州 に旅だ っ た。 彼はそのグループの中にいた同 じ く 黒 白混血の女
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性 AnneM aria Sampson と 親 し く な り , Clevelandで結婚 し た 。 そ こ で 1 年後 に生 ま れた
のが Charlesである。 しか し Andrew は南北戦争後 ( 1866年) Fayettevilleに戻 り, 白人の
父 (法律上 は認められていない) Wadde11Cadeから家を与え られ, また財政的援助を得て,
食料品店を 開業 した。10彼は CumberlandCountyの郡長 ( county commissioner) お よび治
安判事 りusticeof thepeace) をも務めた。11
Charles Chesnutt の家 系 は黒 人 階 級 に 属 し て い た が , 戦 前 か ら 自 由 黒 人 で あ り ,
白い血
が入っ てい るので 「よ り よい階級」 12と みな さ れ, また父親が郡の要職 に就 い て い た こ と な
どを考え合 わせ る と , 黒人の中で もかな り上流で意識の高い階級 に属 していた と みて よいで
あ ろ う 。 Charlesはまた, 「読書が好 き で聡 明な」 同僚教師13で やは り 黒 白混血 の女性14
SusanPerry と結婚 し て い る。
他方, 白い血 と黒い血 と は Charlesを と り ま く 社会環境で激 しい対立 を繰 り広げてい た ば
か りで な く , 彼の内的世界で も陰に陽に葛藤 を繰 り返 し, 彼のアイ デ ィ ンテ ィ テ ィ その もの
を危機的状況に陥れていた。 なぜな ら, 彼のよう な黒白混血児は白人か ら は 「反自然的な交
配人種」 と して蔑視 さ れ, 黒人か ら は羨望 と怒 りの目で見 られる 15と い う 「二重の社会 的負
荷」 16を被 っ て, 宙吊 りの存在状態に追い込まれたか らである。 そ の結果, 彼 は自己存在の
意義 と所属場所 を求めて さ ま よ う 精神的放浪者 と なる ( 後に黒白を越えた人間一般の存在を
志向す る まで に至るが) 。
二
Ⅲ
上記のよ う な黒白混血児の存在上の問題点を複雑微妙に内包 させ, 1899年に出版 さ れるや
人気 を博 し た作品 TheConjureWom(m゛ を研究対象 とする ( こ れは本 の形式で 出版 さ れた
彼の最初の作品である) . しか し この作品が好評を得たのは, 黒人を語 り手 と し, 説話体 を
基盤 と し た南部 ロ ーカ ル ・ カ ラ ー作品の も う 一つ の例 と見な さ れたか ら にす ぎない. 彼がこ
のよ う な形態の物語を書いたのには理由があっ た.
.- . . ・
・
彼は1881年 3月26日の日記に 「作家になるのは私の一生の夢です」 と記 した後で, 作家志
望の 「動機 の混在」 ぶ り を次のよ う に述ぺているo
I
‥
.
l want fame; l want money; l want to raisemy children in a different rank of life from
that l sprang from . ln my present vocation [ of teaching] , l would never accumulate a
competency, with all theeconomy and prudence, and parsimony in theworld. ln law or
mgdicine, l would becompelled to wait half a life-timeto accomplish anything. But literature pays-
the successful ・ T here is a fascination about this calling that draw s a
scribbler irresistiblytowardhisdoom ‥‥ ltistheonlythingl candowithoutcapita1,
under m y present circumstances, eχcept teach. M y threemonths,vacaton is before me
after the lapseof another three, and l shall strike for an entering wedgein theliterary
world, w hich l can drivein further afterwards. 18
上
彼の金銭欲 の根拠 は明白だ。 1872年頃父の食品店が破産 し, 彼 自身1878年 には結婚 して相次
いで二人の子供 を儲 ける こ と になっ たか らで ある。
,
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しか し彼の名声欲に関 しては単純には割 り切れない ものがある。 これを解 く 鍵 は1880年 3
月16日付 けの彼の 日記文にある。 そのなかで彼は, 再建期 にノ ース ・ カ ロ ラ イ ナ州で黒人参
政権 を唱える政党グループのリ ーダー と な り, 最高裁判所判事 を も勤めたオハイ オ州出身者
Albion W , Tourg6eが 小 説 FooFs Errand ( 1879) を 出 版 す る や 「驚 く ほ ど の 人 気 」
を博 し
たので大量の印税 を受けた こ と であろ う と推測 した後で, 人気の原因について次のよ う に分
析 し て い る。
N ow , JudgeTourg6e sbook isabout thesouth [ gic] , - them anners, customs, m odes
of thought, etc・, which are prevalent in this section of the country. Judge Tourg6e is
a Northern man, who haslived at theSouth sincethe`w ar, until recently. Heknows a
great deal about the politics, history, and lay s of the South ‥ ‥ N eilrly all his stories
are more or less about colored people and this very feature is one source of their
popularity. 19
南部の黒人に関する物語が 「人気め根源」 と なる理由について 「北部の人びと ( 読者) の
心には南部の黒人にはな にかロマ ンテ ィ ッ ク な と こ ろ があ る と 映る」 こ と を挙 げ, 「そ の よ
う な黒人は毎 日つ き合っ ているわれわれにと っ て はつ ま らな く 下品に映る にす ぎないのに」
とつけ加 えて いる。 そ こ には Tourg6eのよ う な北部人作家 は現実 を正 し く 見て い ない と す
る彼の不満が隠さ れている。 そのよう な北部作家 よ り 自分の方がいかに正確 ・ 適切に南部黒
人のみな らず白人階級 さ え も描 く こ と がで きるかを綿々と書 き連ねてい る こ と か ら も, その
辺の心情が う かがえる。
And if JudgeTourg6e, with his necessarily limited intercoutseWith colored people, and
with his limited stay in the South, can write such interesting descriptions, such vivid
pictures of Southern life and character as to make himself rich and famous, why could
not a colored m an, w ho has lived am ong colored people all his life; w ho is fam iliar w ith
their habits, their ruling passions, their prejudices; their wholemoral and social condition; their public and private ambitions; their religious tendencies and habits; 一why
could not a colored man who knew all this, and who, besides, had possessed such opportunities for observation and conversation with the better class of white men in the
south [ sic] astounderstandtheir modesof thinking; whowasfamiliar withthepo11tical history of thecountry, and especially with all thephasesof theslavery question;
一why could not such a man, if he possessed the same abm ty, write a far better book
about 仙e SouththanJudgeTourg6e‥. haswritten? 20
こ う し た Tourg6eと の比較を通 して南部に関す る よ り正確 な知識への 自信 を得 た こ と が
彼を して名声 を求めて作家の道へ と向わせる こ と になっ た。 また当時彼が黒人バラ ー ドの収
集 と 出版 に関心 を持っ ていた こ と も彼の文学に一定の方向性 を与える一助 と なっ た。 1880年
頃大 きな宗教復興運動が起 こ っ ていて , 黒人たちが熱心に集会で歌っ ているバラ ー ドや聖歌
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を収集 し た ら, 単なる好奇心か ら だけで も北部の文学者 に う ける か も知れない と彼は考えた。
反面, その独針 1
生と と もに素朴 さ と力強 さ に魅せ られる こ と に もなっ た。21
彼が黒人バ ラ ー ドや聖歌の もつ文学的特質を小説へ応用 し よ う と思っていた1880年代には,
主 と し て Joe1 Chandler Harris と ThomasNelson Pa倉e が そ の創 作 活 動 に お い て 南 部 黒 人
による説話体物語形式 を樹立 しつつあっ た。22 す な わち , Harrisは UncleRemus を語 り 手
と し た動物世界 についての物語 を, そ し て Pageは UncleSam, UncleEdinburg, UncleBilly
な どを語 り手 と した旧農園生活について の物語 を次つ ぎに新聞, 雑誌な どに発表 し, 好評 を
えていた。23 こ のよ う な文学的状況からすれば Chesnutt が, そ の説話体形式 に 「文学界参
入への く さ び」 を打ち込むこ と は容易だ っ たはず だ。 事実彼 は1887年 に UncleJuliusの語
り に よる物語
TheGoopheredGrapevine を TheAtlaTtticM o几thり に発表 し た の を皮切
り に, 1889年 まで に 4編の UncleJulius物語 を雑誌 に発表 し てい る 。 次い で Harrisが従来
単品 と して発表 した物語を中心に収集 し編纂 した民話集 U几deRemus; HisSo几gs artd his
S叩流gS ( 1880) を出版 し, 続いて Pageがやはり従来雑誌 に発表 して きた単品を収集 し て
本の形 に し , 加 で:心 行僧i㎡αj Or, 訂αΓ
seG 皿 α㎡ 0 £加r & o庇 s( 1887) の タ イ ト ルで 出
版す る と, こ れに倣 う かのよ う に Chesnutt も UncleJulius物語 と して雑誌に発表 し て き た
単品を収集 し, 新たに書き足 した ものを も付け加えて短編集 The Conjure Woma几 ( 1899)
を上梓 した。 ち なみに, これ ら 3作品はいずれ も各作家の処女作で√ しか も代表作になっ て
いる。
犬
『
し か し Chesnutt は他方で は, ローカ ル ・ カ ラ ーが 目指す単な る奇 なる も のの叙述 を越 え
た 「 目的小説」 (novel of purpose) を志向していた。24 1880年 3 月29日の 日記で彼の将来の
著作 目的について次のよ う に書いている。
The object of my writings would be not so much the elevation of thecolored people as
the elevation of the whites, 一 for l consider the unjust spirit of caste which is so
insidious as to pervadea wholenation, and so powerfu1、as to subject a whole race and
all connected with it to scorn and social ostracism 一l consider this a baiヽ
rier to the
m oral progress of the A merican people; and l would be one of the first to head a
determined, organized crusade against it. 25
も ち ろ ん, Pageや Harrisの上記の作 品に も 自分の所属す る社会階級 を擁護す る意図が う
かが える。 すなわち, Pageは上流階級出身なので旧南部農園社会体制の有益性 を , そ し て
Harrisは中流階級者 と して中 ・ 下層階級の存在意義をそれぞれ提唱 している。26 し か し なが
ら Che・ utt は, 黒人 と して人種差別や偏見 を アメ リ カ南北両部で経験 し た こ と 27を 考慮す
れば当然 と い えるのだが, アご
メ リ カ社会の枠外 に身を置いて, その視座か ら社会の不正 ・不
平等 を指摘 し, それを是正 し よ う と決意 している 。 こ の点で彼は他の二人 と大 きな違い を示
して いる。
二
犬
また上記 3作家の作品を比較す る と き, 指摘 し ておかなければな ら ない重要な相違が も う
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一つある。 それは黒人語 り手の身分である。 SylviaL. Render によれば, 黒人奴隷には4 つ
の階級 - personal attendants, houseservants, artisans, andfieldhands- が存在 し た 。28
それに従 え ば, UncleSE
im を は じめ ln 0 1e V1rg1孔1a に登場 す る 語 り 手 はす べ て 各主人の
personal attendant な い し body∠
servant で あ り ,
U ncle R emus は 女 主 人 に 仕 え る house
servantで あっ た と い う こ と になる。 それに対 して UncleJuliusは ( 戦前は) field handで
あ っ た 。29 fieldhandは野良仕事以外 には用 のな い奴隷 で , 主人 と の 関係 が最 も疎 遠 と な っ
た。 それだけに主人から非人間的な待遇を受けやすかっ た といえる。 fieldhandは他の上位
階級の奴隷か ら さ え軽蔑 さ れた。 したがって 主人か ら houseservant や personal attendant
に抜擢 さ れる こ と はだれ もが望むこ と で あ っ た。30 そ こ で field handsの間 に競 争意識 が高
じて生臭い熾烈な争い も起っ た ( Hot-Foot Hanniba1 中の Hanniba1と Jeff と が主人の
house-boy になるために争 う例を参照) 。 しか し Juliusは当時はまだそのよ う な上昇意識に
捕 らわれる傾向をみせる こ と な く , ひたす ら奴隷制度下で の主人た ち の身勝手な仕打ち と 同
僚黒人たちの不遇を見つめ続けた (彼 も作者同様, 黒白混血児31なので宙づ りの存在状態に
あっ た と考え られる) 。
■
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㎜
上記の よ う な語 り手の身分の相違は, 彼 らの主人に対す る態度の相違 と な っ てあ らわれる
こ と にな る 。 す なわち , UncleSam は主人の偉大 さ , 寛大 さ , 親切 さ な ど すべ て の徳性 を
回顧 し賞賛 し てい る。 UncleRemusは女主人の優 し さ , 気配 り に深 い感謝 の意 を表 し て い
る 。 し か し UncleJuliusは主 人 た ち の 身勝 手 な ふ る ま い や 卑 劣 な 仕 打 ち を 暗 に で は あ る が
告発 し, 同時に白人意識の啓発 を 目論んで いる。
V
Chesnutt は自己の目的を成就す るために どのよ う な創作技法 を工夫 し て い るか探 っ て み
る こ と にす る。
Juliusは姓を McAdoo と言い, 戦前はノ ース ・ カ ロ ラ イ ナ州 Patesville ( Fayetteville
の虚構名/) の農園主 DugaP McAdooの農園で働いていた奴隷だっ た。 しか し戦後になって,
皮肉に も, 新 しい農園主の御者に雇われ, 戦前のいわゆる
houseservant
の地位 を得 る
こ と になる。 彼は代わ り に, UncleRemusが農園主の子供に昔物語で 楽 し ませ た よ う に,
新 しい主人夫婦 を戦前の地方色豊かな昔物語に誘い込み, 彼 らの退屈な南部滞在をロマ ンテ ィ ッ
ク な魔術の世界で補 う役割を請け負 う 。 RichardH. Brodheadも指摘 して い る よ う にj 2 本
来な ら彼 は解放 さ れた わけだか ら , 新 し い 農 園主 と 契約 を 交 わ し て tenant farmer か
sharecropper にで も なっ ていたはずだ。 さ ら にい えば, 1890年代 は公民権剥奪法, 人種差
別法な どが制定 さ れ, 黒人 リ ンチがう ず巻いた時期だっ た。 こ う した歴史的現実に逆 ら って
旧南部農園制の残滓的環境 を導入 し, 老黒人を廃墟 と化 した戦前の農園に しがみつかせて回
顧物語 にふけ させ る設定は, ま さ し く Pageの
M arseChan にお け る Unde Sam の世界
だ。 そのう え UncleRemusの物語で強者 ( Brer Fox, Brer W olf, etc. ) の傲慢 や身勝手 な
ふる まいを制 し, 自己の知恵 と 自主性を認めさせ よ う と弱者 ( BrerRabbit) が用いた ト リ ッ
ク は, UncleJuliusの主人に対す る ト リ ッ ク に引 き継がれた観があ る 。 Chesnutt が Harris
や Pageと 同列に し て評価 さ れた と して も無理か らぬ こ と だろ う 。
しか し, 当時の文学的環境 ない し制度 を想起す る こ と も必要だ。 「1880~ 90年代 のア メ リ
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ヵ で は文化水準の高い文学諸制度が文学的威信 ( 名声) 機構 を完全に独 占していたので , 当
時作家 と して名をなすためにはこ のよ う な諸制度に基づいて 自己確立を しなければな らなかっ
た」。33 そのよ う な諸制度が南部に求めた ものは, 「昔 日への愛着 と社会的平等権利欲求の欠
如」 を基本的な信条 とする 「田舎の黒人一
元奴隷で依然 と して忠実な従者」゛ -
を登場
させて 自らの方言で南部の旧態以前た る 地域性 をユーモ ラス にあるいは感傷的に語 らせる ロー
カ ル ・ カラ ーのサブ ・ ジ ャ ンルで あっ た。 したがっ て, 二従来 Chesnutt め短編 を い く 編か載
せた主要 な米文学誌 TheAtla飢icMoRthり の新 し い編集員 で ノ ース ・ カ ロラ イ ナ 出身の
W alter Hines Pageか ら 既 成 ジ ャ ン ル 内 で し か も voodooism に 彩 ら れ た 新 奇 な
conjure
storiesに限定 した短編集の出版を提案 さ れた と き ( 1898年) , 35Chesnutt は自分の年齢や家
族のこ と を考え, さ らに名声欲 と金銭欲 も加わっ て妥協せざる をえなかっ た。 とい う のは,
Chesnutt はこ のサブ ・ ジ ャ ンルを容認 して なかっ た こ と は次の事実か ら明 ら かだか ら だ。
当時彼は 「 「迷信の領域」 についての方言物語は書 き終えて し まっ た と考えて い た」 し ?
また彼は以前, 教育者 と して生徒 に√第一に標準 ( 知識人の) 英語を教えて黒人英語の使用
をやめ させ, 第二に科学的知識 を学ばせ て黒人特有の迷信 を捨て させてい た か ら だ 。37 そ れ
に彼の文学理念 ぱ UnclePeter sHouse ( 1885) 以来 「南北戦争後の南部黒人を価値 と 威
厳 を兼ね備えた人間」 と して扱 う こ と を 目指 していたか らだ。 彼はも と も と文学上ステ レオ
タ イ プ化 さ れた黒人像 -
「こ っ けいなばか りで教育の し よ う もな く , だが彼 ら の以前の
「だんな様」 に どっ て は愛すべ き忠実な家臣であるか, あるいは怠け者で酒ばか り く ら っ て
カ ミ ソ リ を振 り 回すヤクザ者」゛ -
を受け入れてはいなかっ た。
Chesnuttが妥協 し た と い っ て も, 新 たな骨法 を も っ ての出発 を意味す る も ので はな く ,
す で に雑誌 に発表 さ れだ
The Goophered Grapevine ,
Po Sandy ,
The Conjurer s
Revenge といっ た小品の延長線上に創作を重ねる こ とであっ た (彼は6週間で新 し く 6編
の物語を創作 した とい う 39) 。 すなわち, これら 3編はも と も と妥協の産物だっ たのである。
あ り て い にい え ば, Joe1Chandler Harris や Thomas Nelson Pageが樹 立 し た 文学 形 式 を
換骨奪胎 してで きた作品と いっ て も よい。 Chesnutt の真意はあ く まで奴隷制度の非人間性
お よびその もた らす道徳的堕落を訴え, 白人の意識を啓発す る こ と にあっ た。 この 目的を効
率 よ く 成就す るために, 彼は人物 と物語の構成に特殊な工夫 を凝 ら した。
まず人物の構成 と して, 戦後の農園主 に旧南部農園主で はな く , オハイ オ州出身 い っ て も New England Yankeesの家系 40で あ る が ー
と
の北部実業家 を配置 し た。 こ の 実業
家 ( John) を して病弱な妻 ( Ahnie) の転地療養のため, ぶ どう栽培事業をノ ース ・ カ ロ ラ
イ ナ州の中部にある小 さ な町 Patesvilleに移 させる と い う 設定 を試みてい る 。41 こ れは一方
で は彼 ら を北部の規範的夫婦 に設定す る こ と によっ て, 南部の奴隷制度や上流白人階級の行
動規範 に対 し距離 を保たせ る手段で あ り, 他方で は北部読者 を彼 らの視座 に近づ きやす くす
る こ と によっ て取 り込 も う と い う 戦略 と もなっ ているのである。 すなわち John を ニ ュ ー ・
イ ン グラ ン ドの血 と精神 を受け継いで懐疑的, 分析的かつ実利的性向の持ち 主 と し , Annie
を感受性が強 く 主情的性向の持ち主, しか も夫に対 して強い影響力を もつ妻 と して提示 して
いる 。 こ のよ う な性向の異なる二人に voodooism の魔術 を と もな う た奴隷制度下の惨状物
語を突 き付 けた ら, どのよ う な反応状況 を作 り出すか。 Johnは奴隷制度の不条理 には理解
を示すが, 物語 自体 には懐古趣味に満ち た娯楽物語 と して楽 し むか, あるいは利益追求のた
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めの策略物語で はないか と疑念 を抱 く かで ある。 こ れに対 し Annieの方 は奴隷制度の非人
間性を訴える Juliusには同情的理解 と態度で応対 し, 一方で物語 に対す る夫の理性的判断
に同意 しつ つ も, 他方で は夫の理屈付 けに反対 し て本能的にそ の真実性 を主張 し て独断的行
動に走 る。 ここ に作者 Chesnuttが妥協の陰に定めたねらいがあっ た。 す な わち黒人の魔術
のよ う な 「迷信の領域」 は否定 さ れなが ら 「感情 と情熱の領域」42を真実 と し て語 り , 南部
にお ける黒人差別や白人の行動規範を北部読者層に仲介者 を通 し て段階的によ り伝達 しやす
く す る のにあずかっ て効果 を発揮す る必須の手段 を見出す こ と で あ っ た。 また魔術物語 をす
る黒人 ( JuliusMcAdoo) に, 物語に 「方向性 と一貫性」 ( 12) を与え る語 り の技法 を植 え
つけ, さ ら に黒人方言 一
を帯びた ー
特に心の 「琴線に触れる」 よう な 「哀愁のこ もっ た抑揚」 (40)
を 「黒人を魂で理解す る」43 方向ぺ白人の聞 き手 を誘い込む一種の呪文 と して
確立す る こ と であ っ た。
物語の構成上の工夫 と して は, 各編 をサ ン ド ウィ ッチ構造を もつ
framestory の形式
を基盤に し ている。 すなわち 「私」 (John) による標準英語での黒人物語導入の状況説明お
よび物語 に対す る コメ ン トが outer narrativeと し て, そ し て 中間部 に UncleJuliusに よ る
黒人方言で の過去の物語が inner narrativeと して配置 さ れてい る。 こ れ は南北戦争後 の南
部を皮相的 ・ 物理的現実に基づいて理解せん と し た北部白人知性の枠組みに対 して, 黒人の
記憶 と創造力 とが一種魔術的サーチ ラ イ ト のよ う に作用 し, その枠組みの内面を照射する こ
と によっ て知性の奥にある感性を 目覚めさせ, 心的リ ア リ テ ィ による南部理解に導 く 戦法 と
いえ よ う 。 また outer narrativeと inner narrativeと の間にあ る現在 と過去 と い う 時間差 も
Juliuasの話法のイ ンパ ク ト に よ っ て心情 的 には限 り な く 不分明 にな る 点 に も注意すべ き
だ。
十
VI
Chesnuttが 自己の文学的戦略 を成就す る ため, Julius, Johnお よ び Annieにそ れぞ れ ど
のよ う な役割を演 じ させ, どのよ う な社会的意義を担わせているかを, 3 人の相互関係の変
化に着 目し て 狐 eCo海『 eWoz71皿 のなかで具体的に検討 してみる。 こ の作品は 7編の短編
で構成 さ れているが, そのう ぢ
TheGoophered Grapevine ,
Po Sandy お よ び
The
Conjurer sRevenge はそれぞれ1887年, 1888年, 1889年に雑誌に発表 さ れた もので, 1898
年に書かれた残 りの 4編 と の間には制作年代に10年ほど間隙がある。44
最初の作 品 TheGoopheredGrapevine で は, John と Annieが始めて Juliusに遭遇 し
た と きのこ とが述べ られている。 それは彼 らがぶ どう 栽培事業に適 してい るか見定めるため
に戦争で荒廃 した旧 McAdoo農園を訪れた と きの出来事である。 Johnはその と きの Julius
の様子を 「立派そ う に見える有色人」 (8) と述べた後で, 次のよ う に描写 している。
W hilehe [ Julius] had bgen standing, l had observed that hewasa tall man, and, though
slightly bowed by the weight of years, apparently quite vigorousンHe was not entirely
black, and this fact, together with the quality of his hair, which was abgut six inches
long and very bushy, except on the top of his head, wherehe was quite bald, suggested
a slight strain of other than negro blood. There was a shrewdness in his eyes, too,
黒人作家, CHARLES WADDELL CHESN UTT
153
which was not altogether A frican, and which 。‥ was indicative of a corresponding
shrewdness in his character. ( 9-10)
Juliusを脳天が禿げあが り少々腰が曲が っ た老黒人 と紹介すれば, 誰 し も当時人気のあ っ た
U ncle R emus を 想 起 し た で あ ろ う
( 事 実 初 版 本 の 表 紙 に は左 右 2 匹 の う さ ぎ の 間 に 挟 ま れ
た Uncle Remus ら し き 老 黒 人 が 描 か れ て い る 45) 。 し か し Chesnutt は John に Julius の 肌
色お よび髪質に非ア フ リ カ 的特徴 を指摘 させている。 南部白人な ら少 しで もア フ リ カ 的特徴
が認め られれば黒人 と見倣 し特別視 し な いで あろ う か ら, Johnに北部 白人意識 の代表的役
割 を担わせている こ と は明白だ。 また彼 を して Juliusの 目に
shrewdness を見抜 かせ,
それを性格 と 関連 さ せて 「抜 け 目な さ」 と解釈 させてい る と こ ろ から, 彼の北部的な実利的
判断傾向を指摘 している。 しかし反面, 従順な南部奴隷 Remusから峻別すべ き ( 戦後の)
Juliusの特質 一
自己利益 , 自己実現 -
を示唆 している こ と にも注 目すべ きだ。
Johnは Juliusに対 し て, 少な く と も最初 は, 相反す る二重の態度 を と ら ざ る を え な かっ
た 。 す な わぢ黒い血 に対 す る 蔑視 な い し 無視 と 白い 血 に対 す る 警戒 で あ る 。 Johnが
McAdoo農園のぶどう 畑 を買お う と した と き, Juliusはそ のぶ ど う 畑が魔法 をかけ ら れた
い き さ つ を物語 り, 買 う のはやめた方が よい と進言 した。 Johnは彼の物語の矛盾 をつい た
(33) 後 「一種の超俗的優越感」46を も っ てそ れを無視 し, 畑 を購入す る。 しか し Juliusがそ
れまで長い間荒れ果てたぶ どう 園の一角に一家を構え, わずかなぶどう の収益で生計を立て
て きたのを知っ た と き, 彼は Juliusを御者 に雇い, ぶ ど う か ら の収益以上 と 彼が信 じ る給
与を与える こ と に した と い う 。 こ れは憐潤の情か ら とい う よ り , むしろ盗みによる経済的損
失を警戒 したか らであろ う 。 彼が Juliusの魔術物語 を私利私欲 か ら の思いつ きで はな いの
かと疑っ ている こ と か ら もわかる ( 35) 。
他方 Juliusの動機や考えは直接 に表現 さ れる こ と はな く , Johnの語 りか ら判断す る し か
ない 。 そ れに よ る と Julius も Johnに対 し て は警戒心 を も っ て接 す る と こ ろ か ら始 ま る 。 そ
れはおそ ら く , 戦後農園主か ら解放 さ れた我が身が, た と え北部人と はいえ, 再度農園制が
復活 し隷属 させ られる こ とへの強い疑念 と不安に由来す るのだ ろ う 。 彼は Johnが 自分 の生
活圏に踏み込んで きて, 自分ない し家族の生活を侵す こ と のない よう , まず Johnの進 出に
反発す る。 しか しそれが不可能 と わかる と , 戦法を変えて Johnが申し出た御者の仕事 を受
け入れて彼に従っ た と見せかけて, よ り巧妙な語 り による ト リ ッ ク を用いて彼 を洗脳 し よ う
とす る作戦にで る。 その切 っ掛 け と な る のが Johnの妻 Annieで ある。 彼女は Juliusの物語
に感性的に反応 し, 心情的に受容す るレ つ ま り 「魂で理解す る」 傾向の持ち主だか らだ。 し
か も彼女が Johnに対 し大 きな影響力 を持 っ ている こ と も素早 く 見抜 い た。 Annieは Julius
の最初の魔術物語を聞き終えた と き√「その話本当なの ? 」 と 「疑いつつ も, しかし真剣に」
(33) 尋ねた。 こ こ には彼女が理性から感情による南部理解へ傾斜する含みがある。 こ れに
対 し てJohnの方は Juliusの物語に共感的反応を意識 して も, そ れを理性 と科学精神 で打 ち
破る と い う 北部精神に捕 らわれている。
第 2話の Po Sandy で こ れ ら三者間の心的態度は一層明確 にな る。 Annieは 「あ る秘
術的理由から, 通常の南部の様式に従っ て台所を住居から裏庭 に切 り離 したい」 (37-38) と
いい だす。 Johnは も ち ろ ん彼女 の願 い を 聞 き入れ る 。 た だ し経 費 を 節 約 す る た め に敷 地 内
154
市
川
紀
男
にある廃校舎 を取 り壊 して建築材の一部 と し, 不足分 を購入するこ と にする。 木材購入に行っ
た製材所での待合時間に, 御者を勤める Juliusが奴隷制度下で悲惨 な 目にあ う 奴隷夫婦の
話をする。 夫 ( Sandie) は主人によって 1か月 く らい次つ ぎと他の農園に働 き手 と して貸 さ
れた。 これを阻止するため, 夫は魔法使いの妻 (Tenie) に木に変えて も ら っ た。 と こ ろが
彼女が留守の間にその木は切 り倒 さ れ製材 さ れて, 最後には校舎の木材になっ た。 その校舎
の中で妻は焦がれ死んだ。 その校舎は戦争で廃校 になる と亡霊がで る よ う になっ た と い う 。
Juliusの物語 に対す る 聞 き手の反応 に注 目し て みる。
万
A nnie had listened to this gruesome narrative with strained attention.
W hat a system it was,
sheeχd aimed, when Juliushad finished,
things were possible!
W hat things?
under which such
十
I [ John] asked, in alnazenlent.
A re you seriously considering the
possibility of a man s being turned into a tree?
Oh, no,
she replied quickly,
with a dim look in her fine eyes,
not that;
Poor Tenie!
and then she murmured absently, and
( 60-61)
Annieは共感的反応, 直感的洞察, 同情 と い う よ う に感性 による理解 と判断を示 し, し か も
率直に表出す る。 物語が もつ非科学性, 非現実性 にはこ だわら ない。 それ に対 し て Johnの
方は科学的精神 に基づ く 知的理解 と判断を権威の象徴 と考えているかのよ う に, 見下す よ う
なあ ら捜 し に終始す る。 と はいっ て も, 結局 Annieめ要望に従っ て Johnは校舎の木材 の使
用 を断念す る。
一方 Juliusは, Johhの留守中に Annieに交渉 し て 旧校舎 を 自分たちの宗教活動 の場所 に
借 りる こ と にす る。 彼は, 従来の黒人教会 (theSandyRunColoredBaptist Church) か ら
禁酒問題で分裂 した仲間と と もに分派を作 り(62) , しか もその 「指導者兼執事」47 に収 まっ
ていたので ある。 解放後彼の自己実現のための上昇志向 と巧妙な手口が一層明確 になる。
こ う 見て く る と, Annieは, Juliusと Johnと の間の理解 をすすめる媒介役 を果た し て い
る こ と が わか る 。
第 3話
MarsJeemssNightmare になる と , 3者間の関係が一定方向に向か っ て 安定
した発展を約束 している よ う にみえる ( この物語は1898年に書かれたこ と に注意すべ きだ) 。
Johnの Juliusに対する総体的評価は,・ 「多 く の点で役立っ て い る し, また い ろ い ろ楽 し ま
せて も く れるので, 私の妻 も私 も彼を大変気にい っ て い る」 (65) と な っ て い る。 Johnは
Juliusを有益 と判断 し た理由と して地元の土地柄 についての実用的知識 一
地質, 生産物, 狩猟場, 釣 り場 -
道路 , 水路,
や馬, 犬な どの家畜の管理に優れて い る点 を挙 げて い
る(64) 。 こ れは裏を返せば, Juliusが自己実現のためには主人の意に報いる こ と を得策 と実
感 し, 誠意 を見せて奉仕 したか ら にほかな ら ない。 彼 ぱ Johnを利益追求に奔走するカ ーペ ッ
ト ・ バガーの類 と見抜いたか ら だ。 John も 自分の真意 を見透かれ, 軽蔑 さ れ る の を恐 れる
かのよう に, Juliusの上記のよ う な実用知識は 「自然 と接 した単純な生活」 (64) と 「農地
を所有 して いる とい う よ り農地に所属 している と呼べる よ う な特別な個人的態度」 ( 65) の
せいだ と見下す判断 を忘れない。
黒人作家, CHARLES WADDELL CHESNUTT
155
こ う した 主従関係のなかで , Juliusは17才 く らいの孫 を連れて きて Johnに雇 っ て く れる
よ う 願い出る 。 Johnは外見か ら判断 して あ ま り気乗 り し なかっ たが, Juliusに押 し き ら れ
て し ま う 。 と こ ろ が案の定, その孫の怠 け癖, 不注意√無責任ぶ り が暴露す る 。 John は孫
を く びにす る。 それに対 して Juliusは機会 を と ら えて, 奴隷 を虐待 し た農園主が魔法 をか
け られて奴隷 にさ れ自分の奴隷監督 に酷使 さ れる羽 目に陥っ た話 を し, 教育の機会 も与え ら
れない無知 な 「黒 ン坊」 に厳 しい一点張 りで斟酌する寛大な心を持たない白人は悪夢を見や
す く な る し , 可哀想 な人び と に親切 に し て 善意 を尽 く す 白人は確実 に繁栄 し , 出世す る
( 100) と結論づける。
それを聞いて, まず Annieは 「大変奇妙な話」 だ と か 「 ま っ た く あ り え ない」 と かい う
意見を述べ るが, それを 「微笑みなが ら」 言って る( 100) 。 これは夫 と使用人の両者 に対す
る彼女の配慮 と考え られる。 すなわぢ夫の権威 を失わせまいと して彼の意見を先取 り してバッ
ク ア ッ プす る レ と 同時 に使用人 に対す る彼女本 来の同情 的理解 を示 し て い る ので あ る 。
Johnはと い う と , 彼は使用人に 「物語の教訓」 まで指摘 して も ら っ た こ と で 感謝の辞 を述
べるが, そ の後す ぐに 「 と こ ろで, お まえはそれ (物語) をすべてお まえ一人でで っ ちあげ
たのか」 ( 101) と質問 して使用人の心を傷つけ, 悲 し ませる こ と になる。 Juliusは, しか し
なが ら, 反 撃 と し て主人の留守の間に Annieに頼 んで孫 を再度雇 っ て も ら う こ と にす る
(彼の隠然た る したたかぶ りが一層強化 さ れた こ と に注意すべ きだ) 。 こ れを知 っ た と き,
Johnは 「家庭に権力の闘争がある と使用人たち に思われた く なかっ たので」 ( 102) 反対 し
なかっ た と い う 。 彼 は南部の家庭 におけ る父権制 を見習い, 機能的必要性か ら従わざる を え
ない と心得 た よ う だ。
十
こ の 3者 の関係の進展 は次の第 4話
TheConjurer sRevenge で逆行す る。 それは, こ
の作品が第 3話 よ り10年 く らい前 に書かれた こ と に起因す る よ う だ。 Johnが農場拡大 にあ
た っ て ロバ を買いたい と いっ た と こ ろ , Juliusはロバは黒人が魔法で変え られた家畜だか ら
と い う 理由で反対す る。 Johnはそ んな話だれ も信 じ る こ と はで きない と一蹴す る し, Annie
さえも
W hy, UncleJulius! ‥ . what ridiculousnonsense!
と 「厳 し く 」 謐責する( 107) 。
しか し Johnは外交的配慮 と 日曜 日の午後の退屈 しのぎに, 結局 Juliusに 「農園伝説」 を語
らせる こ と になる( 108) 。 そ こで Juliusは豚 を盗んだか どで conjureman にロバに変身さ
せ られた奴隷の話をする。 物語の後, Johnは初めか ら余興以外なに も期待 し て なかっ たの
で何 の批評 も してい ないが, Annieは彼 の物語 には厳 しい評価 を下す。
That story does not appeal to me, U ncle Julius, and is not up to your usual mark.
lt
is n t pα£yid ic, it has no 肌or㎡ that l can discover, and l can t seewhy you should te11
1t. ( 127. Theitaticsaremine.)
と こ ろ で , こ のセ リ フ には彼女が Juliusと John と の間の仲介役 を果た し てい る こ と を 実証
す る表現が含 まれてい る こ と に注意すべ きだ。 す な わぢ
pathetic は Juliusの, そ し て
mora1 は Johnのそれぞれ心的機能の原点 を示唆す るか らだ。
し か し Juliusは正面 きっ て反駁す る こ と はせず, む し ろ 誠 に心 も と な い理屈 を述べ て 自
己の知性の欠如 を見せつ ける。 だが 「 し か し こ の世は奇妙な世界, ど う と も ご 自分のご判断
156
犬
市
川
紀
男
次第」 と 「疲れた溜め息ま じ り に」 ( 129) 付け加えて,
する こ と を忘れない。 つづ く Juliusの提案 -
pathetic な人間状況 を 自ら演出
ロバのかわ り に馬 を買 う 案 -
に, John
はまん ま と のせ られ大損 をす る。 そ し て Juliusは新品のス ーツ を召す こ と になる。
第 5話以降は 3者の関係の進展 という 観点からみれば第 3話に続 く 。 いずれ も1898年の作
品 と あれば当然 と いえる。 第 5話
Sis Becky sPickaninny で は, Jリliusの物語に対 して,
Johnが Annieのう つ病を治療する心理療法と して役立つこ と は認めて も, 所詮単なるお伽
話にす ぎない と評価する と, Annieは 「真実性の刻印」 ( 159) もあ る と い っ て Juliusの肩
を もつ と と も に, Johnを説得す る挙 にで る 。 つづい て 第 6 話
TheGray Wolf s Ha nt
で は, John自身 Juliusの物語への心情 的理解へ大 き く 傾斜す る。
But even the wildest [ story] w as not without an element of pathos, 一 the tragedy, it
might be, of thestory itself ; theshadow , never absent, of slavery and of ignorance; the
sadness, always, of life as seen by the fading light of an old man s memory. ( 168)
再再度 Juliusの利益擁護のためので っ ち あげにす ぎない と い う 疑念 に悩 ま さ れつつ も で あ
る。
第 7 話 Hot-Foot Hannibal で は ,
Julius は ,
Annieの 妹 Mabe1が 恋 人 Malcolm
Murchison と仲違い して離別寸前 にな っ てい るのを見て , 物語 と ひそ か な計略的行為 と Johnに は疑え る ー
と によ っ て彼 女 を救 う と い う 行動 に出る 。 こ れ は Juliusの利益追
求や人種対立意識 を超越 した人間性 に根 ざ し た動機か ら発せ られた行動で あ ろ う 。 最後 を飾
る にふ さ わ し い物語 と いえ よ う 。
以上の考察か ら, JulesChametzky が UncleJuliusの物語 の特徴 と し て 指摘 す る 「回避
の伝統, 間接的言動お よび巧妙な 白人操作」48は, そのま ま Juliusの行動基準 で も あ る 。 す
なわち√回避や間接的言動は奴隷制度下で培 われた 「黒い血」 の, そ して 白人操作 は同 じ人
種への所属意識を覚醒 させる 「白い血」 の行動パ タ ー ン と いえ よ う 。 この両者 を有機的に結
合 さ せて 白人対処法 を考案 し生活の知恵 と し たのが, Juliusの 「こ と ばによる ト リ ッ ク」 と
い う こ と になる。 黒人の平等存在 をア ッ ピールする新 しい型の役 目を担 っている といえよう。
Johnは 「Juliusの物語の 「公式の」 解釈者」 であるが, 彼の 「合理主義, 物質主義, 人
種偏見お よ び南部習俗への無知」49の故 に, Juliusの物語お よ び動機 に関す る彼 の理解 と 評
価は極めて 限定 さ れて いるか, または歪 曲さ れている と いわざる を えない。 彼の視点 と見解
は, 戦後南部に移入 し た北部実業家の典型例であっ た。 そのよ う な能力 において彼 は南部精
神を北部の一般大衆に伝 えるパイ プ役 を果た しているのである。 ただ彼の南部把握の限界な
い し偏見は補足ない し修正 さ れる必要があ り, それを行 う 人物 と して感性的反応 と 同情的理
解を示す彼 の妻 Annieが配置さ れてい る 。 こ の意味で彼女 も も う 一人のパ イ プ役 を担 っ て
いる といえ る。 その背後には, 南部理解 には彼女のよ う な感性的受容態度が不可欠である こ
と を賢明な北部読者に読み取っ て欲 し い と願 う 作者 Chesnutt の熱い期待がう かがえる。
Ⅶ
最後 に, 作者は JUliUSの口を借 りて真 の南部理解 を訴えて い る が, 南部の実態 と あ るべ
黒人作家, CHARLES WADDELL CHESNUTT
157
き姿を どう捉えているのか追求 してみよ う 。 それにアプ ローチする糸口と して, Juliusが語
る物語 (inner stories) のテ ーマ を探っ てみる と, 「家族の絆を断ち切 られる奴隷の悲劇」
であ る と見いだすのはたやすい。 しか も奴隷の家族崩壊の原因は主 と して農園主が経営能力
の欠如や気 ま ぐれか ら奴隷 を非人間的に取 り扱 う こ と にある と読み取る こ と もむずか し く な
い。 その典型的な例は第 2話の
Po Sandy の夫婦間にみ られる。 奴隷の Sandyは主人の
経営不振か ら妻 を他の女 と交換 さ れ, いわれのない悲 しみを味わさ れる。 しか し彼は新 しい
女 Tenieと親 し く な り, やがて結婚する 。 と こ ろ が今度 は主人の浅薄な配慮か ら Sandy は
次から次へ と主人の親戚に農園労働者 と して貸される こ と になる。 彼がた ま りかねて木や切
り株 にで も な っ て少 し の間で も家庭 に と ど ま り た い と 願望 を述べ る と , そ れ を 聞い た妻
Tenieは, 魔法使いだ っ たので , 彼 を木 に変え, 夜だ け人間に戻 し て二人で家庭生活 を楽 し
むこ と になる。 しか しその家庭生活 も長続 き し なかっ た。 と い う のは, Tenieが他の農園に
病人の世話に行かさ れてい る 間に, 変身 した Sandyの本が切 り 倒 さ れて校舎 の木材 に さ れ
て し ま う か らだ。 最後に Tenieもその校舎の中で悶え死ぬこ と になる。
も う 一つの典型例は第 5話
Sis BeckysPickaninny の親子 ( 母子 ) 間に見 ら れる 。
field hand の Becky は , 夫 が 主 人 の競 馬 で あ け た 損 失 の 穴 埋 め に 売 り 飛 ば さ れ て し ま い , 小
さ な子供 を慰みにさ さ やかな家庭 を営んでいた。 と こ ろが主人は道楽か ら競馬馬を彼女 と交
換 して し ま う 。 彼女は子供か ら引 き離 さ れ, 見知 らぬ農園で一人嘆 き悲 し んで暮 ら さ な けれ
ばな ら な く なる。 一方子供 も毎晩母親が帰っ て来ないのを知る と泣 きだ し, そのう ち食事 も
と ら な く なる。 子守女は心配にな っ て魔法使いに交渉 して , 子供 を母親に会わせるために鳥
に変えて も ら う 。 子供は母親のい る農園に飛んで行 き, 庭で悲嘆に身をやっ して働 く 母親の
姿を認めるや一心に鳴きはじめる。 彼女の方 も鳥の鳴き声に子供の授乳時の甘え声を聞き取っ
て喜ぶ。 しか し これは姑息な手段で しかな く , 真の解決 一
母子 と してめ再会 -
で はな
い。 そ こ で子守女は魔法使い に根本的な解決を願っ た 。 魔法使 い は馬 と Becky の交換 自体
を元に戻す細工を考案する。 それは魔法の薬によって馬の足膝を故障させ, Beckyを病気に
させ る こ と で あ る。 こ の策略は結局は成功 し, 主人同士の取 り引 きを撤回させ, 母子の家族
生活 を回復す る。 七か し母子が悟 っ た こ と は, 家族 を維持す る ためには自らの自由を買い取
らな ければな らない と い う こ と で あっ た。
Juliusはた と え婚約中の男女 を扱 う 物語 に して も, 二人の恋愛関係 にで はな く , あ く まで
結婚 し て家庭 を営むこ と に焦点 をおいて いる。 こ の例 を第 7話
Hot-Foot HannibaPy の奴
隷登場人物 Chloe, Jeff お よび Hanniba1の 3者間 ( いずれ も field hand) にみる こ と がで
きる。 こ こで も農園主夫婦の気 ま ぐれが奴隷たちの運命 を悲劇に導 く 発端になっ ている。 す
なわち女主人が Chloeを houselnaidに登用す る と , 夫の方 も houseboyが欲 し い と い い だ
す。 し か も Chloeの気持ち を無視 して, 彼女の好 きな Jeff で はな く Hanniba1を選び, 勝手
に彼女 と の結婚 を約束 して し ま う 。 これが切っ掛け と なっ て Chloeと Jeff は Hanniba1の奸
計に嵌め ら れて所帯 を も て な く な る 。 Jeff は Chloeか ら誤解 に よ る復讐 を受 け, そ し て
Chloeは真実 を知っ て悔恨 にか られ, 二人はそれぞれ絶望のす え入水 自殺の道を選ぶ こ と に
なる。
上
し か し こ のテ ーマ に合致 し そ う も な い物 語が あ る 。 そ れ は第 1 話
The Goophered
Grapevine で あ る。 field hand と し て M arsDuga1 ( Juliusの主 人 ) め農 園 に買 わ れ て き
市
158
川
紀
男
た Henryは, 以前に家族 を もっ ていたか どう かわから ない。 自分の家族 につ いて悩 む様子
も な い。
Hewuz er olenigger, er decolor er a gingy-cake, en ball ez a hoss-apple on detop er his
head. He wuz a peart ole nigger, do , en could do a big day s wuk. ( 18)
このよ う に Henryは屈託な く 元気に働 く 頭頂のはげ上がっ た老黒人 一
児-
厳密 には黒 白混血
と 紹介 さ れて い る。 Juliusの話に よれば, 盗難防止用 に死 を招 く 魔法 を かけ ら れた
農園のぶ どう を彼は知 らずに食べて し ま う 。 死か ら逃れるために毎年春 に剪定 さ れるぶ どう
の枝か ら染み出る汁 を禿げ頭に塗る よ う 魔法使いに指示 さ れ, 彼は従 う 。 と こ ろが汁を塗 ら
れた頭にはふ さ ふ さ と巻 き毛が生 え夏中彼 は精力がみな ぎ り, 秋 にぶ ど う の収穫が終わる頃
になる と頭髪が抜け落ちて彼は老体に戻 る (23) 。 これを知っ た Mars DugaP は Henry を春
に高 く 売 り, 秋 に安 く 買い戻 して金儲けをす る。 しか し こ の金儲け法は長 く っ づかなかっ た。
とい う のは, ぶ ど う 絞 り機 を売 り に きたヤ ンキーにだ ま さ れてぶ ど う の木は枯 ら さ れ, それ
につれて Henry を も死なせて し ま う か らであ る。
この物語 は一見 し て農園主が奴隷 を金儲 けの手段 に し て酷使す る物語のよ う にみえ, お よ
そ家族観 と は無縁 にお も えるが, MarsDugaPとHenry と の心的関係 に注 目す る と き, 父 と
息子の関係 を彷彿 さ せる ものがみえて く る。
Henry nebber say nuffin bout degoopher ter his noo marstersy caze he know hegwine
ter be tuk good keer uv de neχ w inter, w en M ars D uga1 buy him back . ( 27-28 )
Henryは冬場 にな る と働 く エ ネルギーを失 う ばか りで な く , リ ュ ーマチ に苦 し まなければな
らない。 そ んな と き彼 は MarsDuga1 に リ ュ ーマチ部分 に擦 り 込 む よ う に と ウイ ス キ ー を
与え られ, また元気づけにタバコや欲 しい食べ物はなんで も も らえる( 27) 。 彼は主人に対 し
父親の温情 を感 じ取 っ て も不思議はないだろ う 。 主人が
Beaver Crick に も う 一つ農園を
購入す る と き, 積極的にわが身の売買を受容す るのも, 父親への甘えを排 してその恩に報い
んとす る成熟 した子供の配慮 と同一の心情か らであろ う (28) 。 自分の無力, 無能, 無気力か
ら従属性, 従順 さ を前面 に押 し 出 して主人の温情 にす が る 一般 的奴隷根性 は語 り 手 Julius
の本望で はなかっ たはずだからご
¥
一方 M arsDuga1 も !E
lenry を失っ た こ と に悲 しみ と怒 り を抱かず にはい られなかっ た。
M ars D ugaP tuk on might ly bout ! osin his vimes en his nigger [ Henry] in de same
year ; en he sw o dat ef he could git holt er dat Y ankee he d w ear im ter a frazzle, en
den chaw up de frazzle. ( 32) し
も ち ろ ん M arsDugal の悲 し み と 怒 り は金儲 けの手段 を失 う た こ と に 向 け ら れ て い る こ と
は否定で きない。 しか し彼は奴隷に対 して父親のよ う な家族保護精神を持っていた。 したがっ
て彼は奴隷が悪事 を働けば家長 と して罰す る こ と はあっ て も, 農園経営不振のため奴隷 を無
黒人作家, CHARLES WADDELL CHESNUTT
159
慈悲に家族 を分散 して売買す る よ う な こ と はな か っ た 。 主人につ い て Juliusが
good marster befo de wah, en l wa n t soP erway.
( 136) と か , あ る い ぱ
l had a
M ars D uga1
did n keer ter take de mammies way fum dey chillun w les de chillun wuz little.
( 141)
と述べてお り, さ ら に奴隷市場で母親 と 別れて売 られるのを嫌がっ て泣いている娘 をみて母
子 と も ど も購入 し た こ と を報 じている 51こ と か ら証明 さ れる。 こ こ に旧主人の父権 的奴隷家
族擁護精神 を高 く 評価する Juliusの姿勢が窺われる。
Juliusの家族主義的な考え方は注 目に値す る。 あ ま り言及 さ れないが, 彼にも家族がある。
Johnによる と, 彼は主人 ( John) の屋敷の一角に小 さ な家を構え, 家族一緒に住んでお り,
自分 は主人の農園で働 き, 娘が料理人 と して, 他のメ ンバー もそれぞれ能力 に応 じて主人の
家の手伝い を させている とい う 。52 おそ ら く 孫 Tom の と き と 同 じ よ う に ( Mars Jeemss
Night叫are ) , 各 自に仕事を得てやる と き彼は物語で 主人 を と い う よ り はそ の妻 を説得 し
たので あろ う 。 そ こ には強大な権力 を も っ て家族 を統率せん と し た彼の父親 と し ての 自覚が
窺われ, それは南部伝統の父権性社会の反映にほかな らない。 この点で は彼の家族観は旧来
の奴隷制度下の黒人家族制度 一
父親は責任あ る権力 と統率力 を持 ち え な か っ た s -
を
逸脱 して, む し ろ伝統的な南部白人社会 の家族制度 を志向 していた と いえる 。 彼 には白い血
が混 じっ ていて 白人の精神構造 と上昇志向 ( と く に戦後には) が兼ね備わっ ていた こ と は前
述 し た。
また彼が旧主人 MarsDugaP のぶ どう の木の根元 を掘っ て石灰 や灰 を詰 め込 んで 本 を枯
ら したヤンキー (31) に対 して, 南部の経済基盤を根 こそ ぎに し, 南部社会体制に崩壊 を も
た ら した宿敵 と い う 見方を旧主人 と共有 していた こ と は, 新 し く 侵入 し て きた北部人 John
に対す る警戒心か ら も判断で きる。 裏を返せば, 彼 は南部の農園経済 ・社会体制 を基本的に
は容認 し ていた こ と にな る。 その体制を支えたのは父権性家族で あっ たはずだ。 南部家族は
父親の絶対的権力 と経営方針の も と に成 り立っ て いた。 た と え家庭内で母親の実務権 限が大
きか っ た と し て も, 父親の権威 を侵す も ので はなかっ た。 しかる に John と Annieの家庭 で
はAnnieの方が強い発言力 を も って いる 。 こ れを知 っ た Juliusは, 彼 ら の夫婦 関係 を 自己
の要求実現には好都合 と映っ た ものの, そ こ にはまた南部家族体制を破滅に導 く 危険な因子,
すな わち家庭紛争ひいて は悲劇 を招 く 原因を看取 し, 警告 している よ う に も思え る。 た と え
ば Po Sandy に お い て , 「大 変 便 利 に し つ ら え た 屋 内台所 」 ( 37) が あ る に も か か わ ら ず ,
Annieが Johnに 「南部様式に従っ た」 (38) 屋外台所 も欲 しい と ねだ り, 夫 は妻 に従わざ
る を えなかっ た。 それを聞いた Juliusは, 妻 Tenie ( 魔法使い) の先導 に よ り夫 Sandy を
木に変えた結果, 悲惨な運命をた どらざる をえなかっ た黒人奴隷の物語をする。 彼ぱ HotFoot H anniba1
で は さ ら に 踏 み 込 ん だ 行 動 を と る 。 A nnie の 妹 で 気 性 の 激 し い M abe1 が
たわい も ない嫉妬か ら誇 り高い南部紳士の婚約者 に取 り返 しのつかない暴言 を吐いて , 婚約
破棄寸前に追い込まれる。 これを知った Juliusは, 彼女 ( と姉夫婦) に女性側の誤解か ら
悲劇 に導かれた婚約者の物語を聞かせ, 彼女に我 を折七
) て婚約者 を迎容れる道を開いてやる。
U ncle Juliusが 容 認 す る と い う よ り 信 奉 し て い る と も い え る 白 人 の南 部 家 族 体 制 を , 作 者
Chesnutt 自身は どの よ う にみて い る の だ ろ う か 。 彼 は最初期 の雑 誌掲 載物 語
Peter s H ouse
( 1885) 54で , 農 園 主 の 「二 階 建 て の 白 い 家 」 ( 168)
を,
Uncle
奴 隷 解 放 以 来 自分
160
市
川
紀
男
も所有 し てみたい と ひたす ら願 う 黒人 Peter を扱っ ている。 そのよ う な白い家は, 戦前の幼
少期から彼にと っ ては 「権力, 繁栄お よび幸福の象徴」 ( ! 68) だっ たからだ。 彼は解放後懸
命に働いて金を儲 けた。 彼は奴隷時代 に農園主たちが貯めた金で土地 と家を買っ ていたのを
思い出 し て, 「私だっ て土地を買い家 を建てていけないわけはないだろ う 」 ( 169) と 考 え る
に至っ たか らだ。 そ こで彼は 「二階建ての白い家」 の建築の夢 を実現すべ く 邁進 した。 しか
し彼は, 白人によ る妨害, と く に KKK に よる面白半分の嫌が らせ, 果て はやっ と 建 て かけ
た二階屋への放火 を被 っ た。 それで も彼は く じ けなかっ た。 さ ら に, 彼は建築中の家の屋根
か ら落ち て肋骨 と足の骨 を折っ て も, 計画をあ き らめなかっ た。 臨終に際 して も, 息子 に未
完成の家 を完成 さ せる よ う に頼むので あ っ た。
Uncle Peter が 実 現 を 目指 し た 旧 南 部 邸 宅
( ante-benum mansion)
の よ う な 家 の建 設 と
農園主の家庭 に見 られた よ う な父権性家族の創造は, 作者 Chesnutt の現実で の行動 に も見
受け られる。 彼は家族の擁護を最優先事 と考えていた。 それは彼が天職 と した著作活動 を犠
牲に して も よ り多 く の収入を望める速記の仕事に専念 して家計を維持 した こ と や, 55 家族 と
く に子供 たち を人種差別か ら守る ために師範学校の校長職 まで放棄 して北部への移住 を決意
した こ と 56な どによっ て実証 さ れよ う 。 また彼はオハイ オ州の Clevelandに永住す る こ と に
なるが, こ こ に1889年に 「立派な内装つ きのヴィ ク ト リ ア朝建築様式家屋」 を購入 し移 り住
んだ。 彼の重要な作品はほと ん どすべて この家で書かれた と い う 。57 こ こ で の彼 の生活 は次
のよ う に述べ られて いる。
ln the new house, as in the old, Charles Chesnutt devoted his evenings to the children.
E ach night before they went to bed, heread them his own childhood favorites: M other
Goose, A Zice 加 W o71& rZαxxd, G㎡ Z加召r s 7yaびd s, and other d assics. W hen the children
had gone to sleep, Chesnutt turned to his own writing. 58
そ して1904年には木々で囲われた高級住宅街に 「1890年代の裕福 な家」 と いわれた 「優雅な
家」59を購入 してついの住家 と し, 「彼の上品な社会的かつ知的な優越感」町 こ浸 る生活 を満
喫 したのである。 さ ら に付言すれば, 1880年代の終わ り頃妻 と も ど も Clevelandで 「 も っ と
も排他的な黒人社会組織 Socia1Circleに参加す る よ う 招待 を受けた」61彼 は, 1910年には 「 8
年前 に加入 を拒否 さ れた Clevelandの権威あ る Rowfant Clubに最初の黒人会員」 と し て迎
え られ, 「この名誉 を大変誇 り に していた」 と い う 。62 こ こ に彼の夢の軌跡 を見る ご とがで き
る。 その夢 と はと り もなお さ ず 「南部家族ロマ ンス」 その ものの追求であ り, 実現であっ た
とい っ て も過言で はなかろ う 。
つ ま り彼 はこの 「南部家族ロマ ンス」 に 「権力, 繁栄お よび幸福の象徴」 と して家族構成
の基本的概念 を見出 し たので あ り, こ の概念 を人種や階級 に関わ り な く 誰 もが平等 に実現で
きる社会の建設を 目指 した といえ よ う 。 裏を返せば, 彼は John と Annieに代表 さ れる北部
の家族 一
弱い父親, 強い母親そ して子供がいない ー
に反対 し, あわせて人間の価値 と
尊厳 を軽視 し, 経済行為 を重視する北部社会の政策に異 を唱えている こ と になる。
黒人作家, CHARLES WADDELL CHESNUTT
161
注
1
M err111 M aguire Skaggs,
V arieties of L ocal Color,
in 77ze jl islory o/゛ So砥 ylerz
l
£ 汲 ?Γα缶 re, ed. L ouis D . R ubin, Jr. ( Baton R ougeand L ondon: L ouisiana StateU niversity
Press, 1985) , p.219。
2
R ichard H . K ing, A So晩 んern 召en㎡ ssαnceバμxe C㎡ 缶 r㎡ Åωαたen泌g o/` 哨 e A m erfca4
SOUth, 1930-1955 (OxfordandNew Y ork: OxfordUniversity press, 1980) , pp. 26-38参照。 要
す る に King のい う 「南部家族 ロマ ンス」 と ぱ thevisionof theSouthaslong being onehuge
plantation fam ily ruled by pow erful w hite patriarchs w ho protected both the gracious
w hite w om en and the childlike, contented black slaves w ho w ere their charges.
( Charles
R . W ilson and W illiam F erris, eds・, £ ncycZo7) ㎡ 伍 o/`So砥 加 m C㎡ 缶 re [ Chape1 H ill and
L ondon: T he U niversity of N orth Carolina Press, 19891, p. 1104) の こ と で あ る 。
3.
Charles W . Chesnutt, 77xe Co司 乙
£re W om 四 皿 d OI yler Co司 x
xre 77ales, ed. R ichard H .
Brodhead ( Durham and London: DukeUniversity Press, 1993) , p.5 . こ の テ キ ス ト は,
Brodhead が 7・ e Co司 『 e Wom 肋 を 作 者 と 出版 編 集者 と の妥 協 の 産物 と 捉 え ,
作 者 の本 来 の意
向に近づ ける ため当時採用漏れ した短編 8 編 を追加 して編集 した もの。
4.
W illiam L . A ndrew s, T he L iterary C (lreer oJ ( ; harles W ,. Chesnutt ( Baton R ouge and
L ondon: L ouisiana State U niversity Press, 1980) , pp. 68-69参 照
5.
1bid. , p. 43.
6.
J . V . R idgely, Ⅳ伍 d ee唐 ん-Ceπ缶 ry So晩 んern £ ilerarMre ( L eχington: theU niversity press
of K entucky, 1980) , pp. 89-91参 照 。
7.
A 111son D avis, B urleigh B . G ardner and M ary R . G ardner , D eep Sou峨 こ A Socid
A M hropologicat Study oj` Caste (m d Class ( L os A ngeles: the U niversity of California,
1941) , p.64.
8.
9.
j
1bid. , p. 9 arid p. 251.
丿
Cliff T hom pson, CんarZes C九esπx
x琵 ( N ew Y ork and Philadelphia: Chelsea H ouse
Publishers, 1992) , p. 17. また Andrews, TheLiterary Career, p. 1脚注 1参照。
10.
1bid. , pp. 20-21. A ndrews, T he L iter(lり Career , pp. 1-2 。
11.
Sylvia L yons R ender, CんαΓXes W . Cyxesn晩 £ ( Boston: T w ayne publishers, 1980) , p. 18.
12.
A ndrew s, T he L iterary Career , p. 7.
13.
T hom pson, CんαΓZes Cんes71M £, p. 28.
14.
F rances R ichardson K elleT, A n A m erican Crusade;・ 771e £ iye o/` CんarZes WaddeZX
几
ユ
Chesnutt ( Provo, Utah: Brigham Young University Press, 1978) , p.63.
15.
, A ndrew s, T he Literary Career , p. 6.
16.
1bid. , p. 4.
17.
Charles W . Chesnutt, 771e Co司 ££re W om απ ( A nn A rbor : T he U niversity of M ichigan
Press, 1899) 。 引用はすべて同版によyJ, 本文括弧内にその頁数を示す。
18.
R ichard H . Brodhead, ed・, T heJour几d s o/`CんarZes W. CyxesnM £ ( D urham and L ondon:
D uke U niversity Press, 1993) , pp. 154-155 ( M arch 26, 1889) 。
市
162
川
紀
男
19.
1bid・, pp. 124-125 (March 16, 1880) 。
20.
1bid. , p. 125.
21.
1bid. , ppj 21-122 (March 11, 1880) お よび Andrews, TheLiterary Career, p. 10.
22.
R ichard H . Brodhead,
+
lntroduction to 7`7xe Co可 ££re W om 皿 皿 d a 加 r Co可 乙
£re 7 ㎡ es,
p. 5.
23.
Harrisの最初の作品ぱ
UncleRemusasa Rebe1 ( 1877年に TheAtlanta C凹 硲 aぷ 凹 に
発表) で あ り, Pageの最初の作品ぱ MarseChan (1884年に TheCeMury M(1gazineに発表)
であ る。
24.
25.
26.
A ndrew s, T he L iterary Career , pp. 12-13,
・Brodhead, ed・, T heJourn,d s, pp. 139-140 ( M ay 29, 1880) 。
K azuo lchikaw a, 「中 流 階 級 作 家 , JOE L CH A N D L E R H A R R I S」 ,
『岐 阜 大 学 教 養 部 研 究 報
告』 第31号 ( 1995) , pp. 78-79参照。
27.
北 部 で の 人 種 差 別 や 偏 見 に つ い て は A ndrew s, T he L iterary C(1reer , p. 13, 南 部 で の そ れ ら に
つ い て は , Thom pson, CylαΓXes C九es71M £, p. 36参 照 。
28.
㎜
■
■
Render√CyzαΓZes 皿 Cんes4晩£, p. 52. し
29.
771e Co司 乙
£re W om αn α7xd O哨 er Co司 x
xre t aZes, p. 124 ( D ave s N eckliss ) 。
30.
lbid・, p. 140 ( A D eep Sleeper ) の 事 例 参 照 。
31.
Julius は text で ぱ
not entirely black
( 9) と が
suggested a slight strain of other than
negroblood (9-10) と言及されている。 またThompson, Cんα
Γ
ZesC加s,l晩£でぱ amulatto
form er slave ( 43)
32.
Brodhead,
33.
1bid. , p. 12.
と 述べ ら れて い る 。
lntroduction,
p. 14.
j
34.
1bid. , p. 5.
35.
1bid. , p. 16 お よ び A ndrews, T he Literary Career, p. 34.
36.
T hom pson, C九arZes Cんes71晩 £, p. 59.
37.
Brodhead,
38.
T hom pson, C九αΓles Cねesn晩 £, p. 39.
39.
Brodhead,
40.
77xe Co可 びre W om ayl α4d O哨 er Co可 lxre 7 αXes, p. 195 ( The M ark6d T ree ) 。
41.
A lbion W . T ourg6e が や は り オ ハ イ オ 州 出 身 で , 病 弱 な 健 康 を 回 復 す る た め ノ ー ス ・ カ ロ ラ イ
lntroduction,
lntroduction,
p. 13.
犬
p. 16 お よ び A ndrews, T he L iterary Career, p. 34.
ナ州に事業場所を移 したのと共通する と こ ろがある (ル Fo01sErΓ
αy
xd [Cambridge, Massachusetts an d L ondon: T he B elk nap P re臨 of H arvard U niversi ty press, 1 879 1, pp . iχ-χ) 。
42.
A ndrews, T he Liter(1ry Career , p. 21・
43.
Sylvia L yons R ender,
Charles W adde11 Chesnutt
gΓαρんy vol. 7・Sj A m erfcα71 Sllor£-& ory
W ri£ers,
in l )id io71αΓy o/` £ i£era瓦y 召泌 -
招 卯 j 夕j θ,
ed.
B obby E 11en K im be1
( DQtroit: GaleResearchlnc. , 1989) , p.75.
44.
Brodhead,
lntroduction,
p. 16 お よ び A ndrews, T he L {terary Career , p. 35.
45.
R ender,
46.
A ndrew s, T he Literary Career , p. 52.
Charles W adde11 Chesnutt,
p. 75.
黒人作家, CHAR LES WADDELL CHESNUTT
163
47.
77xe Co可 x
xre W om α几 ayld Oがxer Co可 l£re 7 αles, p. 137.
48.
R ender,
49.
lbid. , p. 80.
50.
た と え ば Thomas Nelson Page, 加 OZe W rが㎡a.・ Or, M arse Cy
lan and O£んer & or加s
Charles W adde11 Chesnutt,
p. 80・
(Nashville: J. S. Sanders& Company, 1887) , p.5 にある次の文を参照。
[A ] ldo dey didstep aroun rightpeart when olemarster was lookin at em, dyar
w arn
nyar han
o n d e p l a ce b u t w h a t , 6 f h e w a n te d a n y th i n
, w o u l d w a l k u p to d e b a ck
poach, an say he w arn to see de m arster.
51
7加 Co司££reWomax
l and OI加r Co可l£re7αles, p. 126 ( DavesNeckliss )
52
lbid。 pp. 136-137 ( A D eep Sleeper ) .
53
W ilson and F erris, eds・, E ncyclopedi(1 に あ る 次 の 2 文 を 参 照 。
A lthough m ostslavechildren lived in nuclear fam ilies, theconstant w ork dem anded of
parents k ept them apart from offspri ng w ho w ere l ook ed after collectivel y by w om en
too ol d for pl anting and chopping . ( p . 15a3 )
Black m others supplied m odelsof strength and endurancefor their offspringバ p. 1550)
54.
U ncle Peter s H ouse in 77加 S加 r£瓦 d io几 o/ ( :7zarles WI Cんes,ll££1, ed.
Sylvia L yons
Render ( Washington, D. Cj: Howard University Press, 1981) 。 こ の段落 にお け る 引用 はこ の
テ キス ト に よ り文中の括弧内に頁数を示す 。
55.
T hom pson, CylαΓles Cんesna琵, p. 36 , p. 65 and p. 76参 照 。
56.
lbid. , pp. 36-37.
57.
lbid. , p. 48.
58.
lbid. , p. 49.
59.
1bid. , p. 77.
60.
A ndrew s, T he L iterary Career , p. 7.
61.
Thom pson, C九αΓZes Cyles几は 1, p. 50.
62.
lbid. , p. 91.