農業機械学会誌63(5):80~85,2001 研究論文 RTK-GPSとFOGを使用したほ場作業ロボット(第2紗 一一作業計画マップによるほ場作業の自律化 木瀬道夫*'・野口伸*'・石井一暢窯'・寺尾日出男*’ 要 ヒー ロ ロボットトラクタが通年でほ場作業を行うには,作業に応じて経路,走行速度,PTO,3点ピッチの操 作などを設定・変更しなくてはならない。このような軌道生成と作業計画の2つの問題を解決するため に,経路情報のみならずPTOのオン・オフ,変速段数などのロボットへのコマンド情報を含んだ,「作業 計画マップ」を考案した。 開発したシステムはナビゲーションセンサにRTK-GPSと光ファイバージャイロスコープ(FiberOp‐ ticalGyroscope;FOG)を採用した。無人ロータリ耕うん作業を行った結果,1.5m/sの作業速度で目標 経路からの偏差が6cm(rm.s・値)で作業することができた。 キーワードユ作業計画マップ,(急場作業ロ宗ツト,RTK-GPS,FOG FieldMobileRobotnavigatedbyRTK-GPSandFOG(Part2)* Autonomousoperationbyapplyingnavigationmap- MichioKISEM,NoboruNOGUCHI*',KazunobulSHII鑿1,HideoTERAO*’ Abstract AnAutonomoustractorthatisabletoutilizeforalltypeofoperationsonficldsrequirestravel inarelativelywidespeedrange,andhastohaveamissionplannerthatcontrolsPTO,transmis‐ sion,andenginespeedaswellaspathplannenlnthispaper,theNavigationmap,whichhasnot onlydesiredpathbutalsosettingsofPTO,transmission,enginespeed,andotherfunctionsas commandstothetractorwasinventedinordertoworkoutbothproblemsofoperationplanning andpathcontroL ThedevelopedsvstemadoptedanRTK-GPSandaFOGasnavigationsensorsltcould autonomouslyperformrotarytillagewith6cmerrorfromscheduledpathatL5m/sbyapplying thenavigationmap. [Keywords]Navigationmap,autonomoustractorRTK-GPS,FOG 》畑 I緒 本研究は畑作・水田作・粗飼料生産におけるすべての トラクタ作業に対応できる汎用性の高いほ場作業ロボッ トの開発が最終目的である。既に農用移動ロボットの研 *2000年4月第59回農業機械学会年次大会(新潟大学)にて -部講演 *l会員,北海道大学大学院農学研究科(〒060-8589札幌市北区北 9条西9丁目TELOll-706-3884) GraduateSchoolofAgriculture,HokkaidoUniversity,Kita‐ 9,Nishi-9,Kita-ku,Sapporo,Japan’060-8589 究開発は国内外を問わず盛んに行われてきた。幾つか例 を挙げると,行本らnによる耕うんロボットの開発,井 上ら2)によるGPSとジャイロのセンサフュージョン, 長坂ら3)による自動走行田植機の開発などがある。行本 らの耕うんロボットはナビゲーションセンサに自動追尾 式トータルステーションと地磁気方位センサを用いて, 矩形区画のほ場をロータリ耕うんするものであり,ほ場 の区画データをロボットに与えることによって自ら経路 計画を行い,往復耕と回り耕を行うシステムである。こ れらの作業を0.5m/sの走行速度,目標経路に対して5 木瀬・野口・石プ|:・寺尾:RTK-GPSとFOGを使用したほ場作業ロボット(第2報) 81 cm以下の誤差で走行できる自律走行システムである= 井上らのシステムはDGPSと光ファイバージャイロの 霞測データにカルマンフィルタを通11]してil1ll位精度の向 上を図り,目標経路に対して10cm以下の誤差でロータ リ圧復耕を実現している。反坂らはRTK-GPSとFOG を航法センサにH1い,水田というiilI進性の維持が困難で あるほ場において.目標直線経路からの偏差が10cm以 下と高い直進'性を有した'二|動走行''''1111機を開発した。こ の他にもマシンビジョンによる作物列追従')や,草地 における自動走行車両の開発月〕などの試みがなされてい 反|]lLlrMl業システム概略図 FigⅢSchem〔IticdiagriII1]ofthero1)otsystem る戸 しかしこれらのロボット・目(11走行ZlrlTliiはいずれもあ 度(最大,もしくは手釛設定値の2段階).PTOのオ る特定の作業を対象に開発されたものであり,このまま ン・オフ,ブレーキのオン・オフがコンピュータでコン 他の作業に転用することは困難である。例えばロータリ 耕うんは区画を塗りつぶせばどのような径路を走行しよ うとも基本的に自由であるが,薬剤散布作業など作物列 が存在する作業では作物列によって走行経路が制限され トロール可能である。またこれらの制御項目はすべて観 測でき,その他にミッション油圧異常の警告,燃料が 13%以下になると残量警告を発することができる≦さら に安全対策として車体外部にエンジン非常停止ボタンを る.目標経路の生成のみならず,走行速度,3点リンク 配し,またリモコンでもエンジンを停止することができ ヒッチやPTOの操作も作業に合わせて設定・変更する る。これらの機能はトラクタに搭載された車両コント 必要があり,耕うんロボットをそのまま薬剤散布作業に ローラが制御する。ll1l1hiコントローラはCAN-BCS'に 適用することはできない。逆にマシンビジョンを用いた よって外部機器と通信されるため,制御コンピュータだ ナビゲーションシステムを作物ダ|]のない耕うんや播種な けでなく,他のECUによっても制御することができる。 どの作業に適用できないことは「lIU1である。 2.航法センサ そこで本研究は作業の種類ごとに[|標経路や変速段 RTK-GPSには()株)トリンブル製卯1s750を採用した。 数などの情報を持つ,「作業計山マップ」をGIS〔;)によっ MS750の計il1ll精度は2cm、サンプリング周波数は20 て作成することによって,軌道と|{成と作業司I11Llの2つの Hzである。RTK-GPSで取得したデータは,緯度,経 問題を解決することを試みた。’二1標経路を点列を11]いて 度シ位置データの質(得られた解がFIX解(リアルタイ 表現し,それぞれの点に変速段数や3点リンクヒッチ, ムキネマティックiH'|位による解)かどうかを表わす),走 PTO操作などを属'性として付加することで,作業計画 行速度である。 マップの変更によって様々な作業を行うことを可能にし GPSから得られた位置情報はWGS-848)系の緯度・ た。さらに目標経路が点列で構成されていることから, 経度で表されるため,恒両制御に利用するためにはこれ 曲がった経路を表現することも可能である。これによ らを距離系座標に変換する必要がある。本研究では緯 り,矩形ほ場以外での作業や格納I1li-Iま場間の移動など 度・経度座標をNIMA(NationallmageryandMapp‐ 任意経路の走行も可能となる。また播種時の走行軌跡を ingAgency)によって定義されたCTM(Universal 次回以降の目標経路とすることによって,さらに精度の TransverseMercalorGrid)ヨ)に変換することで、単位 高い自律走行も実現できる。本研究では開発したシステ によって:表現された絶対座標を得た。UTMではメルカ ムのアルゴリズムと無人耕うん作業の結果について報告 トル図法に基づいて平而に投影された世界地図を,緯度 方向に8度経度方向に6度のグリッドに分割し,それ する。 Ⅱ自律作業システム ぞれのグリッド『'1位で座標変換を行う。 車両方位の計il1llにはFOG(JAE,JG-35FD)を採用し 1.システム構成 た。JG35-FDは時'''1ドリフト(15./h,0.01二の分解能で 図1に本研究で構築した自律作業システムの概略を示 車両の相対方位を計il1'|することができる。 した。自律作業システムはロボットトラクタ,航法セン またGPSアンテナをキャビンヒ部に取りつけたこと サであるRTK-GPSとFOG,傾斜lWi正用の姿勢角計測 からGPSデータの傾斜補正を行う必要かある'''1唇この センサIMC,さらにこれらを統括する制御コンピュー ため姿勢角装置IMU(JAEJCS-7401A)をキャビン内 タによって構成されるc 部に装着したc ロボットトラクタは市販車((株)クボタMD77)を ベースに(株)クポタがロボット車ITIji用に改造を加えたも lll作業計画マップとロボット制御アルゴリズム のである。制御項目として,操舵,iiii進・停止・後退の 1.作業計画マップの構成 切り替え,変速,3点リンクヒッチの昇降,スロットル開 図2に作業計画マップの,概念図を示した。作業計画 農業機械学会誌第63巻第5号(2001) 82 ピゲーションポイント ● codeの内■ ● 3 “ 区間 作 巣区間 7 ラTnPlU【 PTOPTOのオン・オフ 0 声蓮田使月ヨ声迺■ 4 ● ■ 鶴彊瀞認) 蹄 、 作栗状皿 (作乗中, 行程番号ポイントカ咽する行租の缶 号 エンジン回転数丘大値か手動放定lE --111鶏:詩 0 ● 作乗状伍 個 ● [・]ハごapqH 名三一一コ ● ● ● 43.0748 項目脱明 IF or ● ● 43.075 /:; =OIA,/゜",,c・血,) (ら ロ ● IDngtudc3点リンクヒツチピッチの上下位矼 ナビゲーションマップ 43.0742 図2作業計画マップ概念図 Fig2ConceptofNavigationmap マップは3次元ユークリッド空間E3の部分集合Qとし て定義される。 Q={助|(CieE3,0<i<」v}(1) 43.074 141.3352141.3356141.336l4L3364 Longituder] 図3耕うん作業の作業計画マップ Fig3ANavigationmapforautonomousrotarvtillage ただしCUi=(JaA,Jwzj,CO`ei)は緯度,経度,コードを 要素とする点であり,またNはその個数である。 コードは64ビット整数で表わされる。コードには図 中の表に示される6種類のデータがビット単位で記号化 されている。・作業状態,行程番号といった作業内容に関 センサフュージョン初期化 一一 する情報は旋回位置の検出と作業計画マップの抽出に用 いられている。またスロットル開度,変速段,PTO,3点 作業計画マップ抽出’ 二可云壹扇下= 計測 ピッチはロボットへの動作命令を表わし作業に応じて これらを設定・変更することで多様な作業に対応でき 車両 停止 る。 作業計画マップの生成法は2つの方法がある。一つは GISソフトウェアを用いる手法である。これはほ場に作 業幅に応じて平行な経路をコンピュータ上で生成するこ とによって行う。本手法は耕うん,施肥,播種・移植な Yes 方.操 絶対 もう一つは実際の走行軌跡を目標経路とする方法であ る。播種以降の作業は播種時の軌跡を記録して作業計画 Close CIosegtPoint ロボットを使用する場合にも有効である。 れるナビゲーションポイントのコードの作業状態データ コード の NC 亟瘤 の の検索 ことができる。また播種を有人で行い,その後の作業に ぞれの行程の始点から7m,終点から7mの部分に含ま 舵 幽祠 マップとすることで,さらに精度の高い目標経路を得る 耕うん作業である。本図からも明らかなように,作業計 画マップには旋回のための目標経路が存在しない。それ NC 両 両停止中? 車両莞 進 どの目標経路があらかじめ存在しない作業時に使う。 図3に耕うん作業用に生成した作業計画マップを示し た。一番右が第一経路であり,全部で4行程のロータリ し晦職 乢螂 RX? 2.作業計画マップの生成 T了う>』(2 行程終了? S #塑」 、NC 旋回? NC 廻旦塗エードーマ扇 行程終了? には旋回を表わすフラグが記号化されており,この旋回 フラグを復号したときロボットは旋回ルーチンに移行す る。本作業計画マップは自作したGISソフトウェアに 図4マップベースガイダンスのフローチャート よって生成した。これは第1行程の始点と終点を与える 後,外部I/Oスイッチの合図によりロボットは発進す ことによって,その経路に等間隔で平行な経路を生成す る。ロボット発進後すぐにセンサフュージョンのための ることができる. 初期化を行う。これは本研究がRTK-GPSとFOGのセ Fig4Flowchartofmapbaseguidance 3.自律作業アルゴリズム ンサフュージョンによって絶対方位を算出しているため 図4に本システムによる自律作業のフローチャートを である。この手法については第1報で既述した。次にこ 示した。作業計画マップや作業内容の初期設定を行った れから作業する行程の作業計画マップを,全行程作業計 木瀬・野口・石井・寺尾:RTK-GPSとFOGを使用したほ場作業ロボット(第2報) 画マップから抽出する。その後制御ルーチンに移行す る。RTK-GPSとFOGによって車両位置と相対方位を 計測する。このときRTK-GPSから高精度測位を表わす F'X解が得られなければ、ロボットはF,X解が得られ るまで作業を停止する。F,X解が得られれば車両の絶対 方位を算出し,後述の方法により目標操舵角を決定,操 舵を行う。次に作業計画マップQの巾から現在位置に最 も近いナビゲーションポイント(C1osestPoint)を:検索 する。そのナビゲーションポイントのコードを復号し 復号されたデータに基づいて変速段数,3点リンクの操 作などロボットの動作を決定する。さらに現行程の終端 位置に到達したかどうかを作業状態フラグによって チェックする。現行程の終了ならば,総行程数と比較し て全行程を完了したかどうかを調べる。次行程のある場 合は旋回動作に,全行程を完了した場合はロボットは停 止,作業を終了する。 83 1V “芒1={⑪ザ|艸(|`Uドーワ||ルザニQ鑿,`J津`・(;'}(4) ただし1.||はベクトルのノルムを表わす。 すると閉空間[u)a,Cu団は以下の式で表わされる。 [CJ8,,⑩82]={ごヒース①8,+(1-ス)①&’ 0ニスニLrEE2}(5) ここでとは①:]と①:2問の内分点を表わす。以上から横 方向偏差dは以下の式で求められる。 α=min{|ヒーワ||}(6) kjfu,`jf糊] 2)方位偏差 方位偏差△①はH標方位と車両の絶対方位の差で定義 され △。=。-の‘(7) で与えられる。よって△のを得るためにはまずロボット の目標方位の。を求めなくてはならない。今作業計画 マップの方向が①:→LUZ2にあると仮定する。式(6)を満 4.ステアリングコントローラ 車両の操舵制御において、操舵角を目標径路に対する 車両の横方向偏差と方位偏差の関数として表わすことが 一般的であるⅡ)。以下に本研究における横方向偏差と方 位偏差の定義とその算出アルゴリズムについて記述す る。 たすどをこ'…とし,さらに制御パラメータとなる前方 注視距離Lをある既知量として導入して,以下の2式を 満たすナビゲーションポイント①漣Q*から検索する。 L,=||⑳t懲一`…||+±||②ナー⑳M|≦し(8) j妄。+I L2=ⅢH〃"J'十螢||`0Mき,|ごL(9) 1)横方向偏差 先に定義したナビゲーションポイント①,から,コー ド(code『)を省いた⑩ヅー(lali,/0,町)をfLl定義し2次元 ユークリッド空間E2の部分集合である作業計画マップ Q*を以下のように定義する。 Q拳=(①了①?=E`'0<i<』V}(2) 図5にステアリングコントローラのアルゴリズムを示 した。本図はRTK-GPSによるUTM座標系であり,Y 軸方向が北を指している。のはY軸に対するロボットの 絶対方位,。‘は目標方位,そして。,△。がそれぞれ本 研究で定義する横方向偏差と方位偏差である。 現在のロボットの位置ベクトルを刀EE2とすると,刀 からQ案の中の最も近い点u):!と次に近い点CUZ2は以下 のように求められる。 ⑭t,=(のブ'mli,(|,"r-刀||地にQ鯵}(3) i=1 ノーC2+l すると2点LUjfとLuハを結ぶ線分」この位置ベクトルEの 動く範囲は,以下の式で表わされるE2の部分空間三と なる。 己={ElfE圧,ビースCu汗(1-1m向,’0ニス≦l)(1O ここで△L=L-Llとおくと,以下の式を満たすベクト ル員二二が,前方注視距離Lを考慮した目標点である。 |晶一Lqj11|=△L(11) したがって、’三|標方位のばば, …=(荒告f」噸 …蔦-((詣芋}’Ⅷ ただし。'はY軸方向の単位ベクトルである。 以上から方位偏差“は式(7)によって求めることがで きる。 3)操舵角 操舵角6は横方lt1Iliiii差αと方位偏差△○を用いて以下 Nonh の式によって決定される。 y 6=α,。+QgAd(M) ここで,α”α2は制御ゲインである。L,α,,α2を走行 OPmI[MmnnbDT 速度別に適したルックアップテーブルを用意すること で,様々な作業速度に対応できるようにした。今回は1.5 m/s(作業中)と0.2m/s(旋回後の幅寄せ)の2つの走 X 図5ステアリングコントローラのアルゴリズム Fig.5Algorithmofthestceringcontroller 行速度に対して,それぞれ,L,α,,α2の組を用意した。 これらの値は走行試験によって試行錯誤的に決定した。 本手法は従来の手法とは異なり,逐次目標点を更新す 農業機械学会誌第63巻第5号(2001) 84 6 43.0748 step2 Stepl 43.0746  ̄ 。 ::000:0::。00::。068,8 ユ) で 己 圖43.07“ 43.0742 43.074 141.3354141.3358l413362 Longitude[。] 図7耕うん作業走行軌跡 m 『ノ Ⅶ ホ‐lI--I-土 7 這且ご●揖盟〕ご旨⑪ト曰U ….………………’i s且つ:8つ:庭 step3  ̄ Fig7Aguidancetrajectoryofautonomousrotarv tillage 図6旋回アルゴリズム Fig6Turningalgorithm 5.旋回アルゴリズム 図6に旋回アルゴリズムを示した。本手法は切り返し ■■ 左旋回の場合を示している。旋回アルゴリズムは以下の 00 動作を有した前進と後退を併用した方式であり,本図は -00 る。 50521012 目標経路が直線でなくても操舵角を計算することができ ・}』C■□唾c一℃8霞[員]【『。旨』シロつ一旬』。】3 ることによって目標方位を修正しながら走行するため, ’八 -- ̄ ==  ̄ ニーニー:--ノミ-.-- し、_ノJv~v、ヘヘ/'二V〕、ハニヱZ二一三三 、 _=当= - ̄--- /、囚一へ_=竜一三 ~--'---、■'== ニーーヱ庁一一一一 OIO203040 506070 T1avビltinlC[sec] 3つのステップで構成される。 1)旋回速度まで減速し,7m戒進したあと最大舵角  ̄ 一一一 図8自律耕うん作業|}寺の横方向偏差と方位偏差 Fig.8AIatcraldeviationandaheadingerrorin で車両方位が90度変化するまで左旋回する。 autonomousrotarytillage 2)以下の式で計算される距離後進する。 uD 6=2γ-2() ここでγはステップ1)で観il11lされる実際の旋回半径,zc PTOのオン・オフが作業計画通りに動作し,作業計画 は行程幅である。 マップの有効性が確認できた。 3)最大舵角で車両方位が90度変化するまで左旋回 する。 以上の3ステップで旋回行程は完了し,l)と3)の旋 図8は第3行程における旋回終了直後からの横方向偏 差と方位偏差の推移である。横軸が走行時間,縦軸が偏 差であり,着色部分は作業中であることを表わす。旋回 回半径が等しければ理論上は旋回終了位置が次行程の目 終了直後の偏差は]8cmと大きい。この偏差は作業を開 標経路上の点となる。本方式では実際の旋回半径を再計 始する7m地点までに完全には収束せず,作業開始地点 算し,後退距離を路面変化に応じて修正している。これ で8cmの偏差が存在した。しかしその後は偏差が収束 により,傾斜や路面状態による最小旋回半径の空間的変 し安定して走行できた。また車両方位偏差は旋回終了 化を補籔債できる。さらに作業終了から7m直進する間に 後100.と大きかったが,作業中のr,、.s・値は1.0゜と 目標経路に対してフィードバック制御により幅寄せを行 なった。以上のことから作業中の直進'性は維持できたこ う。 とがわかった。 1V自律作業試験 表lに各行程の走行精度を示した。一番左の値が目標 経路に対する車両の横方向偏差のr、、.s・値,2列目がそ 北海道大学農学部附属農場において,図3で示した作 の最大値,3列目が目標経路に対する車両の方位偏差の 業計画マップを適用した無人ロータリ耕うん作業を行っ rm.s、値を表わしている。これらは旋回後7mを除いた た。その作業軌跡を図7に示した。このとき設定走行速 作業中の値を用いて算出した。横方向偏差に関してどの 度は汀作業中が1.5m/s,旋回中が0.2m/sとし,これら 行程もrm.s・で8cm以下の偏差で走行した。これは従 の速度変更は作業計画マップに基づく変速と機関回転数 来の有人耕うん作業と比較しても遜色ない精度である。 の制御によって実現される。本図から的確な位置で旋回 方位偏差に関してもrms・で20.以下で走行することが を行ったことが分かる。また変速や作業機の昇降, でき,高い直進性を得た。しかし横方向偏差の最大値は 木瀬・野口・石井・寺尾:RTK-GPSとFOGを使用したほ場作業ロボット(第2報) 表l自律耕うん作業走行結果 路からの偏差がr・ms・値6cmと高い直進'性を得た。し TablelResultsoIautonomousrotarytillage Path# rnLs、of mteral deviation に、。 hcadingerror [cm] ●●●● I111 15 r] 2009 111 87, 6 rm.s,of 2485 1234 Total Maximllm latcrml deviation 85 1.3 かし旋回終了後の偏差が大きく,作業開始までにこの偏 差を収束させることができなかった。この問題を解決す るには,オンラインで幅寄せ経路を生成するといった新 たな旋回法,’幅寄せ法を考案する必要がある。 参考文献 ])Yukumoto,0,11atsuo,Y、:Navigationtechnologyfor tillingrob()1s,Proceedingofmobilelnt、symposiumon ilgriculuIrKIIBus-syslemLBSandPA,59-94,1997 2)井上慶一,大塚寛治,杉本光穂,村上則幸,黎文:自律 すべて作業開始地点で記録されたものであり.図8で明 らかとなった旋回とその後の幅寄せの精度の問題を裏づ ける結果がここでも得られた。 本試験はロータリ耕うん作業の速度としては速い1.5 m/sに設定した。これは本システムが耕うん以外の農作 業にも応用できる可能性を示すものである。 V摘要 本研究は畑作・水田作・粗飼料生産作業におけるすべ てのトラクタ作業に対応できる汎用性の高いほ場作業ロ ボットシステムの開発を最終目的としたC l)航法センサとしてRTK-GPSとFOGを用いた。 また供試ロボットトラクタはほとんどの機能をコン ピュータで制御することができる。 2) ̄作業計iiliiマップ」と呼ぶ||標経路や変速段数な どの情報を持つ作業マップをGISによって作成した。こ のシステムによって異なった作業に対しても対応できる と考えられる。 3)作業計画マップは緯度,経度,コードを要素とす るナビゲーションポイントの集合で構成される。コード には各ナビゲーションポイントにおけるエンジン回転 数,変速段,PTO,ピッチ操作といったロボットへの動 作命令や,行程番号などの作業内容に関する情報が記号 化されている。 4)構築したシステムの検証実験を行った。ロータリ 耕うん作業を行った結果、1.5m/sの作業速度で目標経 走行のためのGPSとジャイロのカルマンフィルタによるセ ンサフユージヨン技術(第1報),農機誌61(4),103-114, ’999 3)長坂善禎,谷脇篝,大谷隆二,飯田一人,佐々木泰弘:自 動走行田械機の開発(第1報),農機誌61(6),179-186,1999 4)Pinto,F、,Reid,LHeadingang]eandoffsetdetermina‐ lionusingI〕rincipalcomponelltaI1alysis,1998America】1 SocietvofAgriculluralEngineersMeeting,PaperNo. 983113,1998 5)木瀬道夫,野l」伸,石)'二‐暢,寺尾日出男:DGPSを利用 した農用移動ロボットのナビゲーション,農機誌62(6),145- 153,2000 6)碓井照子:GISの現状と農学の課題,システム農学会誌16 (2),89-96,2000 7)FreimaI1n,R、:AutonavigationandlmpIememtCont‐ rolledProcessAutomationonlSO-CANBasis,Proceed- ingsofElectronicFarmCommllnicationwithLBS,65-87. 2000 8)NationallmageryandMappingAgency(NIMA):De partmentofDefenseWorldGeodeticSysteml984,NIMA TechnicalReportTR83502ThirdEdition,2000 9)DefenseMapl)ingAgency(DMA):TheuI1iversalgrids: Universa]TransverseMercatorにTM)andUniversal PolarStereographic(UPSLDMATechnicalManual DMATM8358.2,1989 10)水島晃,野口伸,石井一暢,寺尾日出男;自律走行Zli両 のGPS位置計測に関わる傾斜補正,農機誌62(4),146-153, 2000 11)行本修,松尾1湯介,野口伸,鈴木正肚:耕うんロボット システムの開発,農業機械学会誌,60(4),29-36,1998 (原稿受理:2001年6月1日・質問期限:2001年11月30 日)
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