<参考記事-1> マイアミ空港で航空保安官が乗客射殺 ∼New York Times 紙(2005 年 12 月 7 日)より抄訳∼ 離陸前のジェット機に搭乗していた連邦航空保安官が、一人の男性を搭乗ブリッジまで追いかけた後に射殺した。関 係者によると、男性は手荷物の中に爆弾を所持していると主張し、静止して床に伏せるよう命じたが応じなかったとい う。 ジェット機はアメリカン航空 924 便、ボーイング 757 型機で、コロンビアのメデリンからフロリダ州オーランドへ向かう途中、 マイアミ国際空港に予定通り着陸中に事件が起こった。 2001 年 9 月 11 日のテロ攻撃により航空保安官が増員されて以来、航空保安官が発砲したのは初めてのケースと みられる。関係者によると、この件とテロ活動の直接的な関連を示すものはないが、他の空港では予防措置として監 視が強められている。 当局の身元確認によると、射殺された男性はオーランド地域出身の米国籍 Rigoberto Alpizar(44 歳)とみられる。 マイアミ地域のテレビ局が Alpizar 氏とみられる男性の写真を公開している。男性はコートとネクタイを着用しており、一 人の女性とポーズをとりながら笑った姿で写真に収められている。 その晩空港で開かれた記者会見で関係者が述べたところによると、Alpizar 氏は同日の早朝、エクアドルのキト発便で 到着し、最終目的地であるオーランドに向かう 924 便に女性とともに搭乗したという。 ゲートに駐機中、「爆弾を持っているといった脅し文句を彼がある時言い出した」と、マイアミ空港担当の連邦航空保 安局所属の James.T.Bauergは発言。 Bauer 氏によると、複数の航空保安官が接近したところ彼は機外へ逃亡し、保安官の指示に従わず、脅迫的と思わ れる動作をしたため発砲したという。 「保安官が発砲し、射殺されたのは彼のとった行動が原因である」と Bauer 氏は言う。 Bauer 氏によると、現場には爆発物専門家が招集されたが、爆発物は発見されなかった。しかし後に、彼のカバンを 予防的に滑走路上で破壊処理した。 アメリカン航空の広報担当 John Hotard 氏によると、搭乗していた 2 名の航空保安官のうち 1 名が(Bauer 氏談)、 ターミナルへ続く「ボーディングブリッジ上で男性が騒いでいる」と聞きつけた。保安官たちは機外へ出て男性と対峙し、 発砲した。 後に開かれた記者会見での当局発表は微妙に異なっている。この会見によれば、騒ぎは機内で起こり、機外の搭乗 ブリッジへ出た乗客を航空保安官が追いかけ、そこで発砲が起こったという。 国土安全保障省の広報官 Brian Doyle 氏は、男性が手荷物の中に爆弾を持っているとほのめかしたのはそれより前 だと述べている。航空保安官チームが男性と対峙したのは D-42 ゲートで駐機中であったという。 「その乗客はすぐに機外へ出て、搭乗ブリッジを通ってターミナルへと向かおうとした」と Doyle 氏はいう。チームは男性を 搭乗ブリッジまで追いかけ、床に伏せるように命じたという。 「男性は手荷物の中に手を入れたように見えたため、航空保安官たちは訓練どおりに行動した」と Doyle 氏は言う。 「個人を制圧する目的でチームとして発砲した。9/11 以来、航空保安官が任務で火気を使用したのは初めてのケー スだ。」 連邦当局によると、現地警察がこの件を殺人事件として捜査しているという。この件とテロなどの大きな陰謀との関連 を示す証拠はないが、捜査は継続中である。 9/11 以降に登用されたある連邦航空保安官(レポーターへの証言は禁止されているため彼の氏名は公表できない)に よると、彼らの武力行使は「基本的に他の捜査官、警察官などの法執行官と同じ」だとのこと。 「乗客やクルー、飛行機の安全を脅かすものがあれば、自己防衛のためにどんな手段でも使うべきだ。」と彼は言う。 「航空保安官がバッグに手を入れるなと命じたのに、その男が従わずに手を入れようとしたのなら、それは銃器を使用す べき状況だ。」 運輸保安局は連邦航空保安局へのすべての電話記録を調査したが、繰り返されるメッセージに対して局の広報官の 返答はなかった。 その夜のアメリカン航空の発表では、「他の 113 名の搭乗客に被害や危険はなかった」という。 Associated Press 通信が伝えた機内の目撃証言によると、「男性が機外へ向かって走り出した時には女性が後を 追っていた。その女性は、男性に精神障害があることを叫んでいた」という。 乗客の Mary Gardner さんがマイアミの WTVJ のインタビューに答えたところによると、男性は飛行機の後部から通路を 走っていったという。「彼は半狂乱で、両腕を振り回していた」とのこと。 Gardner さんによると、男性の後を女性が追いかけており、彼女は「私の夫です!私の夫です!」と叫んでいた。 Gardner さんはテレビのインタビューに答えて、その女性が「夫には双極性気分障害があり、薬を飲んでいない」と言っ ていたと述べている(A.P.通信)。 発砲直後のテレビ映像では、黒い制服の警備員たちが飛行機のそばの滑走路上を走っていく姿が映し出されている。 飛行機から離れたところでは、医師たちが空のストレッチャーを走らせていた。 テレビカメラには、一見して問題のなさそうな荷物を滑走路上で爆破する爆発物処理班の姿も映し出された。これは、 男性の爆弾を所持しているという発言を受けての予防的措置です。 Jamie Clifford さんは、マイアミ空港からサンフランシスコ空港へと向かう別の便に搭乗するところだった。彼女は発砲の 音は聞こえたが、その現場は見えなかったという。 「私は発砲が起こったゲートのちょうど真向かいのゲートにいました。私の便の搭乗を待っていたのですが、突然、たくさん のソーダ缶が床に落ちたような音が聞こえました」と彼女は電話で語ってくれた。「すると空港職員が私たちの方にやって きて、ターミナルの反対の端の方へ移動するように指示しました。でも、その原因は何なのかは教えてくれませんでした。 一人の職員が別の職員に、発砲があったと話しているのが聞こえました。」 メデリンを発ち、マイアミに途中着陸した後オーランドへと向かうこの便は毎日運行されている。アメリカン航空のウェブサ イトによると、メデリンを予定より 4 分早い a.m.9:06 に離陸し、マイアミには予定より 9 分早い p.m.12:16 に着陸した。 オーランドへ向けて、p.m.2:18 にマイアミ国際空港の D-42 ゲートから離陸する予定だった。 924 便の乗客は全員マイアミ空港で降ろされ、旅の途中で入国・通関手続きをすることになった。
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