平成26年度 化学物質取扱者のための安全衛生講習会

平成26年度
化学物質取扱者のための安全衛生講習会
対象 化学分野関連研究室に新規に所属した教員と学生
場所 第一エリア1C210講義室
日時 平成25年4月8日(火)15時~17時
内容 1.化学実験室の衛生管理
(野本)
2.化学実験室の安全管理
(中本)
3.化学物質の管理
(長友)
4.実験系廃棄物の管理
(山村)
5.化学物質の危険性・有害性の調査法
(百武)
化学域安全管理委員会
化学実験室の衛生管理
担当:野本信也
環境安全管理室室長
労働衛生関係資格
衛生工学衛生管理者免許
第1種作業環境測定士
局所排気装置等定期自主検査インストラクター
酸素欠乏危険作業特別教育インストラクター
研究環境のどこにどの様な危険が内在しているかを知る。
この危険から身を守り、危険を未然に防ぐ手段を講じる事ができる。
総合科目 「安全衛生と化学物質」 1学期 月曜1限
大学院共通科目 「化学物質の安全衛生管理」 1学期 火曜3限
数理コロキウム 「安全教育」 5月15日 木曜6限
米国では安全管理体制も、研究者の安全意識も、日本より格段に進んでいる。
● 米国の研究室では、研究者や学生が自主的にお互いに危険な作業や操作に対して指摘し
合い、安全 を確保しようとする雰囲気がある。日本ではこのような光景は目にしなかった。
● 米国の大学では州や郡、および関係機関の視察が頻繁にあり、大学の研究や教育に対す
る規制に対 する公権力の強さを感じる。
● 米国の大学では、大学の安全管理組織による定期的な巡視があり、それに応じて研究者の
研究室に おける安全衛生確保へのモチベーションも高く維持されているように感じる。
● 米国の大学では、基本的に一人の研究者ごとに一台のドラフトチャンバーが与えられており、
安全衛生確保への設備環境のレベルの高さを感じる。
米国では高等教育機関に特化した安全衛生法規を持ち法体系でも成熟している。
OSHA Laboratory Standards : 大学等の高等研究教育機関に特化した化学物質の安全衛生管理に関する
法規(1990年)
環境安全衛生管理とはー(日本の)化学者の作業基盤ー
近隣への
影響
火災、爆発
漏洩、盗難
Crisの運用
危険物
の管理
怪我、薬傷
設備の損傷
高圧ガス
ボンベの
管理
消
防
法
高圧
ガス
危険
保安
作業場
法
の改善
毒劇物
の管理
漏洩、盗難
社会への
影響
安衛法
毒劇法
建基法
物
対 人
体
影
安全
衛生
影
響
環境
響
作業環
境測定
急性中毒
慢性中毒
安
衛 有害
法 作業場
の改善
環
響
境影
水濁法
下水
大防法
PRTR
道法 実験排水
対象物等
廃棄物処理法
の管理
の管理
実験系廃棄物の管理
PRTR法
不適切処理等
不法投棄
大気、地下水の汚染
環境への
影響
有害作業環境
キャンパス汚染
化学薬品等 危険・有害物質の使用者としての社会的責任を果たすために
第三者や学外利害関係者から見て、納得してもらえる管理を継続しなければならない
有害物質の環境安全衛生管理・・・常に意識すること
環境(化審法)
環境影響
環境影響
長期
急性
有
短期
発火
ベンゼン
衛生
(毒劇法 害
安衛法) 性
危
険 安全
性 (消防法)
慢性 爆発
長期
急性
有
短期
発火
有 クロロホルム 危
害
性
険
性
慢性 爆発
アセトン
害
性
危
険
性
慢性 爆発
環境影響
長期
急性
短期
発火
環境影響
長期
急性
有
短期
発火
危
CFCl3
害
性
険
性
慢性 爆発
化学物質による健康障害の発生メカニズム
化学物質を使う作業では,なぜ,どのようにして健康障害が起こるのか
化学物質を用いる作業により健康障害が発生する経路
発散形態 化
学
物
質 作業 ガス・蒸気 拡散 ミスト 粉じん 液体 固体 作
業
環
境
汚
染 経気道 経口 経皮 人
体
侵
入
代
謝
反
応
蓄積 排泄 健
康
障
害 健康障害の防止のために重要!
化学物質の発散→拡散→汚染→人体侵入→健康障害の
経緯を理解すること
化学物質による健康障害の発生メカニズム
化学物質を使う作業では,なぜ,どのようにして健康障害が起こるのか
空気中の化学物質の拡がり方
作業者 ばく露 濃度 発散源濃度 空気より重い気体状,粒子状物質の場合 拡散,空気と混合 粉じんの場合 二次発じん 発散源 滞留 滞留 ○汚染が床から広がることによって,部屋全体を汚染する危険がある。
○可燃性物質の場合,着火範囲が広がり,火災の可能性を大きくする。
自分が拡散した有害蒸気は他の人も吸う・・・その逆も
化学物質による健康障害の発生メカニズム
化学物質を使う作業では,なぜ,どのようにして健康障害が起こるのか
化学物質の人体侵入~経気道侵入経路~
○呼吸器系は全て粘膜質であるの
で,化学物質が吸収されやすい。
○肺胞は,表面積が広いために吸
収効率が高い。
鼻腔 気管 肺胞 最も多い侵入経路であり、
ドラフト・保護具の使用は必須
気管支 毛細血管 化学物質による健康障害の発生メカニズム
化学物質を使う作業では,なぜ,どのようにして健康障害が起こるのか
化学物質の人体侵入~経口侵入経路~
口腔 全身 食道 心臓 小腸から吸収された物質
は,門脈を経て肝臓を通
過した後,血流に乗り体
全体に運ばれる。
肝臓 門
脈
胃 肝臓の機能
1.グリコーゲンの生成・分解
2.アルブミンの生成,
アミノ酸の処理
3.脂肪代謝
4.胆汁の分泌
5.解毒作用
小腸 大腸 ○消化器系は全て粘膜質であるので,化学物質が吸収されやすい。
○栄養素を吸収する器官である小腸からは吸収効率が高い。
化学物質による健康障害の発生メカニズム
化学物質を使う作業では,なぜ,どのようにして健康障害が起こるのか
化学物質の人体侵入~経皮侵入経路~
化学物質
表皮 皮脂腺 真皮 汗腺 毛嚢 毛細血管 皮下組織 ○皮膚が薄く,毛根・汗腺が多い部分ほどよく侵入する。
かかと < 手のひら < 腕の内側 < 頭 < 脇の下 < 額 < あご
○高温条件下では汗腺や毛根が開いているので,吸収が容易になる。
化学物質による健康障害の発生メカニズム
化学物質を使う作業では,なぜ,どのようにして健康障害が起こるのか
化学物質の人体侵入~経皮侵入経路~
化学物質の吸収されやすさ: 脂溶性物質 > 水溶性物質
金属イオンより有機金属化合物のほうが吸収されやすい。
水銀塩(Hg2+) < 塩化メチル水銀(CH3-Hg+/Cl-) < ジメチル水銀((CH3)2Hg)
有害物質は単独より脂溶性物質と混合(結合)すると浸透しやすい。
有害部分 OH
皮膚への浸透性を増す部分(R)
-(CH2)14CH3
OH -(CH2)7-CH=CH-(CH2)5-CH3
-(CH2)7-CH=CH-CH2-CH=CH-(CH2)2CH3
-(CH2)7-CH=CH-CH2-CH=CH-CH=CHCH3
R -(CH2)7-CH=CH-CH2-CH=CH-CH2-CH=CH2
ウルシの皮膚炎誘発性成分,
ウルシオールの化学構造 皮膚から吸収された有毒物質は自然代謝ではなかなか解毒されない。
経口侵入に対しては防御システムが働くが,経皮侵入に対しては働かない。
経皮侵入に対して油断しないこと
ゴム手袋などの適切な保護具を使用すること
脂溶性:湿気で水解されフッ化水素になる
脂溶性物質の皮膚への到達を
数分遅らせるだけ
ゴム手袋を過信するな!
薄手のゴム手袋は、薬品が付着したら直ちに脱ぐ・・特に脂溶性物質
化学物質による健康障害の発生メカニズム
化学物質を使う作業では,なぜ,どのようにして健康障害が起こるのか
化学物質の人体における蓄積・代謝・排泄
人
体
化学物質 侵
入
代
謝
反
応
蓄積 排泄 健
康
障
害 ○臓器・組織への到達と蓄積のしやすさは,物質の種類により異なる。
脂溶性の有機溶媒は,脂質に富んだ神経系に蓄積されやすい。
カドミウムは,骨組織に蓄積したり,標的臓器の腎臓に蓄積したりする。
鉛は,骨に蓄積しやすい。
○人体は,侵入した化学物質(特に有機化合物)を,様々な化学変化(代謝)によっ
て,無毒化したり,排泄されやすい水溶性にする。
化学物質による健康障害の発生メカニズム
化学物質を使う作業では,なぜ,どのようにして健康障害が起こるのか
化学物質の人体における蓄積・代謝・排泄
心臓 肝臓の機能
全身 1.栄養分の貯蔵と運搬
ブドウ糖⇔グリコーゲン
アルブミンの生産⇒栄養分の運搬など
2.胆汁(消化液)の分泌
肝静脈 肝動脈 胆汁 門脈 小腸 心臓 全身 3.解毒作用
有害物質の酸化,還元,加水分解,抱合(硫 酸やアミノ酸などの水溶性物質が結合する)
尿素の生産(アンモニアの無害化)
エタノールの代謝
エタノール⇒アセトアルデヒド⇒酢酸
(アセトアルデヒドは毒性が高い)
○異物の代謝産物が,タンパク質や核酸などと共有結合し,肝毒性,組織壊死,
がん原性や変異原性の原因となる場合がある(代謝活性化)。
(多くの発がん物質は,それ自体ではなく代謝産物が発がん性を示す。)
○エタノール,クロロホルム,四塩化炭素などの有害物質の人体侵入は,重要な
臓器である肝臓に負担をかける。
化学物質による健康障害の発生メカニズム
化学物質を使う作業では,なぜ,どのようにして健康障害が起こるのか
化学物質の人体における蓄積・代謝・排泄
有害物質とその代謝産物・・第1相;酸化,加水分解など,第2相;抱合
O
OH
酸化
O
H
N
O
酸化
OH
抱合
O
n-ヘキサン
トルエン
O
H
安息香酸
N
H
N,N-ジメチル
ホルムアミド
2,5-ヘキサンジオン
馬尿酸
O
O
酸化
酸化
N
H
HO
OH
N-メチルホルムアミド
スチレン
マンデル酸
O
<どれかが発がん性物質である(白血病)>
OH
S
OH
OH
特殊健康診断では
尿中代謝産物を診
る
酸化・抱合産物
HN
COOH
OH
OH
O
ベンゼン
O
HOOC
OH
COOH
その他,多くの代謝産物
化学物質による健康障害の発生メカニズム
化学物質を使う作業では,なぜ,どのようにして健康障害が起こるのか
化学物質の人体における蓄積・代謝・排泄
化学物質の人体における蓄積について
人体に侵入した化学物質は,体外に排出されるまで,主に標的臓器に蓄積する。
親和性のある部分に蓄積・結合する。
脂溶性物質(有機溶剤等)⇒神経細胞(脂質に富む),脂肪細胞
金属イオン⇒タンパク質(配位能力のある官能基を持つ),骨組織
新陳代謝の遅い組織には蓄積が多い。
生物学的半減期: 体内に吸収された化学物質が体内で同化・異化されたり,体外に排出され
て半減するのに要する時間をいう。
○生物学的半減期が短い物質ほど体内からの排泄は速く蓄積性が低い。 長い順:Cd>Pb>Hg
生物学的半減期
トルエン
6時間前後
1,1,1-トリクロロエタン
8~9時間
マンガン
17日
鉛
約10年間
カドミウム
200 日から22 年
有機溶剤・特殊健康診断は、作業後1〜2日以内に行う
化学物質による健康障害の種類
化学物質による障害の型
化学物質による健康障害の種類
急性 毒性 慢性 毒性 刺激性・腐食性 窒息性 免疫反応感作性 神経障害性 肝臓障害性・腎臓障害性 皮膚障害性 造血器障害性 催奇形性・胎児毒性 発ガン性 内分泌かく乱性 急性中毒: ばく露してすぐに症状が現れる。
ばく露した物質の影響であることが明白な場合が多い。
慢性中毒: 発症までに長時間かかる。
原因が分からず対策が遅れることもある。
症状が現れる身体部位は,化学物質によって異なり,全身に作用する物質や局
所に作用する物質がある。
化学者は、慢性中毒を警戒せよ
化学物質による健康障害の種類
化学物質による障害の型
刺激性
作用部位: 皮膚,眼,呼吸器系。
障害: 急性の皮膚炎,水泡,びらん。咽頭浮腫,咽頭けいれん,肺水腫など。
○付着して障害を起こす液体の代表例は,塩酸などの酸である。
○以下の気体状物質を吸入すると呼吸器系の粘膜障害が起こる。
ハロゲン(Cl2,Br2など),ハロゲン化合物(HF,HClなど),アンモニア,二酸化硫黄,
酸の蒸気(塩酸,臭化水素酸,酢酸など),塩化リン類(PCl3,PCl5,O=PCl3など),
多くの有機溶剤。
○多くの刺激性物質は,いわゆる刺激臭を持つ。
○不快感のない匂いを持つ物質やほとんど臭わない物質もある。
腐食性
作用部位: 皮膚や粘膜。
障害: タンパク質を破壊して,潰瘍や壊死を招く。
○塩酸や硫酸などの無機系の強酸は腐食作用があるが,皮膚に付着した時の痛みのた
め認識しやすいため,小規模なばく露では被害は少ない。
○フッ化水素酸やシュウ酸は,付着した皮膚・粘膜に対する腐食性だけでなく,吸収され
やすいためにより大きい被害をもたらす。
○無機の強塩基(NaOH,KOH)は腐食作用が強い。付着した時の痛みがほとんど感じられ
ないために被害が大きくなることもある。
○水酸化バリウムは高濃度でなくても腐食作用が強い。
化学物質による健康障害の種類
化学物質による障害の型
窒息性
① 空気中の酸素濃度を低下させることにより,神経系を中心とした身体機能の
低下,意識消失,死亡に至らしめる有害作用。
② 肺での酸素交換(肺呼吸または外呼吸)を阻害する有害作用。
③ 臓器・組織での酸素交換(内呼吸または組織呼吸)を阻害する有害作用。
酸素濃度の低下による障害
○空気中の酸素濃度(約21%)が,18%以下になると低酸素状態の症状が現れ始める。 だるさ・眠気⇒歩行障害などの運動機能障害⇒意識喪失,死亡。
○ごく低酸素空気による障害は,進行が急であり,ひと呼吸ないし数呼吸で意識を失うこ
とが多く,致命率が高い。
○液体窒素の不適切な使用により事故が発生することがある。原因物質としては,その
他にドライアイス,LPガス,プロパンガスなどがある。
○被害者を救出する人の二次災害も多い。 酸素濃度
症状
常にこれ以上に保つ
全身脱力、倒れる、
逃げられない
一呼吸で死亡
18%
安全の下限界,換気が必要
16%
呼吸・脈拍増加,頭痛,吐き気
12%
めまい,吐き気,筋力低下
10%
中枢神経障害,意識喪失,嘔吐
8%
失神,死亡
6%
即失神,心拍停止,短時間で死亡
化学物質による健康障害の種類
化学物質による障害の型
神経障害性
体の神経系への障害をいう。末梢神経阻害,主に脳の機能に障害を与える中枢神
経阻害などがある。神経組織は脂肪成分に富むので,有機溶剤などの脂溶性物
質は神経系に移行しやすい。
末梢神経阻害
蒸気を吸うと数秒後に
脳に到達する
複数の末梢神経に障害を与える多発性末梢神経炎,メタノールなどによる視神経障害,
単独の神経に特異な障害が現れる場合などがある。
○メタノール: 視力低下,視野狭窄などを起こし,失明にいたることも多い。
○n-ヘキサン: 多発性末梢神経炎の例では,両手・両足の知覚麻痺,運動機能障害が起
こり,重症になると筋肉の萎縮,自立歩行不可に陥ることがある。
○鉛: 多発性末梢神経炎の例では,下垂手,下垂足が特徴である。
神経障害の初期症状(頭痛、めまい,吐気など)を見逃すな!
あれば対策せよ!
化学物質による健康障害の種類
化学物質による障害の型
神経障害性
中枢神経阻害
血液と脳(および脊髄を含む中枢神経系)の組織液との間の物質交換を制限する機構で
ある血液‐脳関門を化学物質が通過することにより,中枢神経系に障害が引き起こされる。
脂溶性物質は,血液‐脳関門を通過する。
障害: 麻酔作用,中枢神経抑制,けいれん,精神分裂など。
有機金属化合物は
神経障害が大きい
○炭化水素類,塩素化炭化水素類,エーテル類,アルデヒド類など: 中枢神経抑制による
麻酔作用。一般的には,炭素数が多いもの,ハロゲン原子数が多いものほど作用が強い。
○トルエン,キシレン: 興奮作用,多幸感・幻覚の作用。
○二酸化炭素: (3~4%)頭痛,めまい,(7%以上)麻酔作用,意識消失,呼吸停止。 ○有機水銀化合物(メチル水銀など): 無機水銀より中枢神経障害物質としての危険性が
大きい。四肢末端優位の感覚障害,運動失調,求心性視野狭窄,聴力障害,平衡機能障害,
言語障害,振せん(手足の震え)など。重症の場合,死亡にいたる。
○マンガン,メタノール: パーキンソン病症候群(人格変化,歩行障害,振せんなど)。
○二硫化炭素: 中毒性パーキンソン病症候群の原因となる。幻聴,妄想をきたす統合失調
症の症状。
化学物質による健康障害の種類
化学物質による障害の型
肝臓障害性
肝臓は小腸から吸収された物質の解毒を行うため,多くの化学物質によりその機
能が障害を受ける。
主な身体症状: 全身の倦怠感,発熱,黄疸など。
○ハロゲン系有機溶剤: 肝臓で分解される時,有害な活性ハロゲン化物を生じるために
肝障害を起こしやすい。
四塩化炭素(CCl4),クロロホルム(CHCl3),トリクロロエチレンなどによる。
肝臓に中性脂肪が蓄積,肝細胞が壊死,胆汁の排泄が阻害される障害がある。
○メタノールやエチレングリコールなどは,代謝の過程で酸を生じるため肝障害を起こし
やすい。
特に塩素系溶剤による
肝機能障害は非常に起こりやすい・・・常態化させないこと
化学物質による健康障害の種類
化学物質による障害の型
腎臓障害性
体内に侵入した有害物質は,直接または解毒作用を受けた後,腎臓を通り排泄さ
れる。この過程で,腎臓に有害物質の蓄積が起こり障害を受けることがある。
○四塩化炭素,クロロホルム,ジクロロベンゼンなどのハロゲン系化合物: 排泄物をろ過
する糸状体に障害を与える。
○鉛,カドミウム,水銀: 糸状体でろ過された後,近位尿細管で再吸収されその細胞に
蓄積して障害を与える。有機水銀より無機水銀のほうが,腎毒性が強い。
○エチレングリコールの代謝産物の一つにシュウ酸((COOH)2)があるが,これがシュウ酸
カルシウムとなり,尿細管中で結晶化することで腎機能を傷害する。
皮膚障害性
体内に侵入した有害物質が,全身あるいは特定の部位に起こす慢性中毒としての
皮膚障害。
○ヒ素: 皮膚の硬化,角化症,脱毛,色素沈着(黒皮症),皮膚ガンなど。
○硝酸銀,フタル酸: 色素沈着。
○アルキルフェノール: 皮膚が白色化する白皮症,白斑症。
○アクリルアミド: 掌や足底の皮膚のはく離。この症状は,神経障害に先立って起こる。
○塩化ビフェニル(PCB),ヘキサクロルベンゼン,ダイオキシン類: 顔面ににきび状の塩
素ざそう。
化学物質による健康障害の種類
化学物質による障害の型
造血器障害性
骨髄の造血幹細胞を起源とする血液中の血球(赤血球,白血球,リンパ球,血小
板)の生産を阻害する作用をいう。
○ベンゼン,エチレングリコール,2‐ブロモプロパン,トリニトロトルエン: 骨髄の造血機能
を抑制して,赤血球,白血球,血小板の減少をもたらし,再生不良性貧血を引き起こす。身
体症状は,息切れ,動悸,めまいのほか,免疫機能が抑制されることによる感染症にかか
りやすい障害が現れる。
○ベンゼンは白血病も引き起こす。
心臓・血管障害
その他の臓器・組織障害性
○クロロホルム,四塩化炭素,トルエン,メチルエチルケトン: 頻脈,不整脈。
○カドミウム,コバルト,鉛: 心臓の収縮力を抑制することによる心肥大,心筋変性。
○ホルムアルデヒド,アリルアミン,ジニトロトルエン,ヒ素: 動脈硬化。ヒ素は作用が強い。
精子形成障害
○次の物質は,精子形成を阻害する。
エタノール,エチレングリコールモノメチルエーテル,塩化メチル,カドミウム,2‐ブロモプロ
HO
パン。
O
化学物質による健康障害の種類
化学物質による障害の型
催奇形性・胎児毒性
胎児に対して有害な作用や出産した子供に異常を与える有害性をいう。
○次の化学物質は催奇形性・胎児毒性が認められるか,その危険性が高い。
エタノール,ベンゼン,トルエン,キシレン,ホルムアルデヒド,アクリロニトリル,メタクリル酸,
PCB,ダイオキシン類,鉛など。
発ガン性
○日本産業医学会による分類で発ガン性のある物質: 塩化ビニル,カドミウム,アスベスト
(肺ガン,中皮腫),ヒ素(皮膚ガン,肺ガン),ニッケル化合物(副鼻腔ガン,肺ガン),六価
クロム(肺ガン),エチレンオキシド,コールタール(皮膚ガン),1,3‐ブタジエン,ベンゼン(白
血病),ベンジジン(膀胱ガン),2‐ナフチルアミン,ビスクロロメチルエーテルなど。
○おそらく発ガン性があると考えられる物質: アクリルアミド,アクリロニトリル,ベリリウム,
ホルムアルデヒド,クロロメチルメチルエーテル(肺ガン),硫酸ジメチル,PCBなど。
○発ガン性物質に反復ばく露した場合の発症までの期間は,数年から数十年まで多様で
ある。
NH2
H2N
NH2
ベンジジン
Cl
2‐ナフチルアミン
O
Cl
ビスクロロメチルエーテル
取扱う物質の発がん性に関する情報は必ず調査すること
胆管がん:校正印刷会社の元従業員4人が死亡毎日新聞 2012/05/19 02時30分
校正印刷では、本印刷前に少数枚だけ印刷し色味や文字間違いなどを確認するが、印刷機に付いたイ
ンキを頻繁に洗うので結果的に洗浄剤を多用する。洗浄剤は、動物実験で肝臓にがんを発生させることが
分かっている化学物質「1、2ジクロロプロパン」「ジクロロメタン」などを含む有機溶剤。会社側は
防毒マスクを提供していなかったという。91〜03年当時、ジクロロメタンは厚労省規則で測定や発生源対
策が求められていたが、1、2ジクロロプロパンは規制されていなかった。
熊谷准教授は「これほど高率になると、偶然とは考えられず、業務に起因している。校正印刷会社は他に
もあると聞いており調査が必要だ」と話す。
印刷関連の従業員らの労働災害申請は計62人(うち38人は死亡)
大阪労働局が印刷会社の家宅捜索始める 2013.4.2 09:20 [westナビ]
印刷会社の元従業員らが相次いで胆管がんを発症した問題で、厚生労働省大阪労働局
は2日午前、従業員の健康被害の防止措置を怠ったとして、労働安全衛生法違反の容疑で、発端となった
大阪市中央区の校正印刷会社「サンヨー・シーワィピー」本社の家宅
捜索を始めた。裏付けができ次第、同社と社長(66)を書類送検する
方針。
厚生労働省の検討会は、洗浄剤に含まれる化学物質
「1、2ジクロロプロパン」に長時間、高濃度でさらされた
ことが発症原因となった蓋然性が極めて高いと結論づけた。
同社従業員の胆管がんによる死亡率は、日本人平均の約1200倍
に上った。
化学物質による健康障害の種類
化学物質による障害の型
コラム: 肉食生活とガン
(
○炭火焼ステーキ1kgにはタバコ600本分のベンゾピレン(強い発癌物質)が含まれる。
○肉製品に添加される亜硝酸塩は,人体内で他の物質と化合し,ニトロソアミン(非常に強
力な発ガン物質)を形成する。
○肉の多い食事は性的成熟年齢を
50
引き下げ乳癌の危険性を増大させる。 大
NZ
○ベジタリアンは,肉食の人と異なった 腸
40
組成の胆汁酸を持つことが知られてお
USA
NETH
り,これはガン細胞の発達抑制に深く
患
DEN
CAN
影響している。
者 30
○ベジタリアンの免疫システムは,肉食 数
GB
SWE
の人よりも強い。
W.GER
20
○ベジタリアンは大量のビタミンAを
NOR
ICE
万
JAM
ISR
ベータカロチンの形で植物食品から
人
E.GER
とる。ベータカロチンは,各種のガン
10
当
日本
HUNG
から人を守ると考えられている。
)
発ガンに閾値は無い
0
0
NIG COL
80
160
240
320
肉摂取量(グラム / 日)
400
( Cancer and diet from NIH.PNG )
労働安全衛生法の規定する有害物質とその有害性
化学物質によって,有害性の強さには差がある。~許容濃度という考え方~
許容濃度: 人が1 日8 時間,週間40 時間程度,肉体的に激しくない作業強度で
有害物質に曝露される場合に,その物質の平均曝露濃度が,この数値以下であ
れば,ほとんどすべての人に健康上の悪い影響が見られないと判断される濃度。
☆労働衛生についての十分な知識と経験をもった人々が利用すべきもの。
物質名
エチレングリコール
モノメチルエーテル
酢酸エチル
シアン化水素
ジクロロメタン
クロロホルム
N,N -ジメチルホル
ムアミド
四塩化炭素
n -ヘキサン
ベンゼン
ホルムアルデヒド
硫化水素
許容濃度
ppm
0.1
経皮吸収 発ガン分類 提案 年度
皮
2009
200
5
50
3
皮
皮
皮
2B
2B
1995
1990
1999
2005
10
皮
2B
1974
5
40
0.1
0.1
5
皮
皮
皮
2B
1991
1985
1997
2007
2001
1
2A
1
「皮」: 経皮吸収される量が健康影響からみて無視できない程度に達することがあると考えられる。
許容濃度は,経皮吸収がないことを前提として提案されている数値である。
化学物質の有害性の判断基準・・・衛生管理に生かすこと
化学物質によって,有害性の強さには差がある。 ~管理濃度という考え方~
管理濃度: 作業環境測定の結果から作業環境管理の良否を判断する際の管理
区分を決定するための指標。
有機溶剤,特定化学物質
管理濃度
アセトン 500ppm
エチルエーテル エチレングリコールモノメ
チルエーテル
クロロホルム 400ppm
ジクロルメタン
有機溶剤,特定化学物質
N, N­‐ジメチルホルムアミド
トルエン 5ppm
二硫化炭素 3ppm
n -ヘキサン
シアン化水素 50ppm
四塩化炭素 5ppm
酢酸エチル 200ppm
ニッケルカルボニル ベンゼン 1,4­‐ジオキサン 10ppm
ホルムアルデヒド 1,2­‐ジクロルエタン
10ppm
ヨー化メチル 1,2­‐ジクロルエチレン
150ppm
硫化水素 管理濃度
10ppm
20ppm
1ppm
40ppm
3ppm
0.001ppm
1ppm
0.1ppm
2ppm
1 5ppm
低管理濃度物質(10 ppm 以下): 絶対に蒸気を漏らさない・・・廃液からも
中管理濃度物質(100 ppm 以下): 長時間蒸気を漏らさない
低管理濃度の物質は慢性中毒を引き起こす
労働安全衛生法の規定する管理濃度管理濃度
有機溶剤、特化物
ニッケルカルボニル
1,1-ジメチルヒドラジン
ニトログリコール
ホルムアルデヒド
硫酸ジメチル
エチレングリコールモノメ
チルエーテル(メチルセ
ロソルブ)
塩素
フッ化水素
ベータープロビオラクトン
エチレンオキシド
ベンゼン
硫化水素
1,1,2,2-テトラクロルエタ
ン
二硫化炭素
アクリロニトリル
塩化ビニル
ヨウ化メチル
シアン化水素
クロロホルム
エチレングリコールモノ
エチルエーテル(セロソ
ルブ)
ppm
0.001
0.01
0.05
0.1
0.1
0.1
0.5
0.5
0.5
1
1
1
1
1
2
2
2
3
3
5
クレゾール
四塩化炭素
メチルブチルケトン
クロルベンゼン
1,4-ジオキサン
1,2-ジクロルエタン
5
5
5
10
10
10
N,N-ジメチルホルムアミド
10
トリクロルエチレン
シクロヘキサノン
トルエン
メチルイソブチルケトン
エチレングリコールモノブ
チルエーテル
o-ジクロルベンゼン
シクロヘキサノール
ブタノール
ヘキサン
イソブチルアルコール
キシレン
酢酸イソペンチル
酢酸ペンチル
ジクロルメタン
テトラクロルエチレン
テトラヒドロフラン
10
20
20
20
25
25
25
25
40
50
50
50
50
50
50
50
イソペンチルアルコール
酢酸イソプロピル
2-ブタノール
酢酸イソブチル
酢酸ブチル
1,2-ジクロルエチレン
メタノール
イソプロピルアルコール
酢酸エチル
酢酸プロピル
1,1,1-トリクロルエタン
メチルエチルケトン
エチルエーテル
アセトン
特化物
100
100
100
150
150
150
200
200
200
200
200
200
400
500
アルキル水銀化合物(アル
水銀として
キル基がメチル基又はエ
0.01(mg/m3)
チル基)
アクリルアミド
0.1(mg/m3)
管理濃度の改正に留意する
例えば、ベンゼン、クロロホルムを使う以下の作業などはドラフト内でしか行わない
溶剤ビンの保管
濃縮
分液
カラムクロマト
TLC
廃液の保管
ベンゼンやクロロホルムは必ず局排の中に置く!
予算があれば出来る
工夫すれば出来る
製作時間2時間
減圧ポンプの排気管
遠心式排風機
約5万円
常時稼働する卓上
局排の中へ排気
ドラフトの吸い込み気流は弱い・・・適切な使用が重要
人がドラフトの前を歩いた時の
吸い込み気流の変化
フード内の空気が外に出ている
ドラフトの吸い込み気流は弱い・・・適切な使用が重要
フード内に物を置いた時の吸い込み気流
吸い込み気流が
妨害されている
労働衛生の三管理
困難な敵,慢性中毒に立向う労働衛生の三管理
労働衛生保護具
呼吸用保護具・・国家検定合格品を用いる
○酸素濃度が18%以下になるおそれがあるときには,供給式保護具を使用する。
○空気中の有害物質濃度が不明な場合,あるいは有害性が高く短時間ばく露で生命や
健康に危険がある場合には,供給式保護具を使用する。
○保護具を着用しても,作業環境空気の侵入を完全に遮断できるとはいえないことを考
慮する必要がある。
○防毒マスクを使用するときは,対応する吸収缶を使用する。また吸収缶の中のろ過剤
の寿命(破過時間)に達する前に交換しなければならない。
○使用前に点検すると共に,面体と顔面との密着性を確認する。
○作業主任者等は,保護具の管理,着用者の教育,着用訓練等を行う必要がある。
労働衛生の三管理
困難な敵,慢性中毒に立向う労働衛生の三管理
ろ過式防毒マスク
対応する吸収缶を使用する。
吸収缶の中のろ過剤の寿命(破過時間)に達する前に交換する。
吸収缶
対応ガスの
色分け
吸収缶の種類と色
ろ過剤の性能の例
ハロゲンガス
灰/黒
有機ガス
黒
酸性ガス
灰
有機ガス
アンモニア
緑
硫化水素
亜硫酸ガス
種類
最高許容
濃度
直結式小型
試験濃度
破過時間
5 ppm
0.03%
260 分 (>50分)
ハロゲン
1 ppm
0.02%
250 分 (>40分)
黄
酸性ガス
1 ppm
0.03%
430 分 (>80分)
黄赤
アンモニア
50 ppm
0.1%
140 分 (>40分)
☆保護具の使用と選択等は,取り扱う物質やその濃度による。
☆適切な保護具の使用を作業標準の中に記載するのが正しい作業管理である。
安全設備・装置・情報と保護具
それでも起こる事故への備え
地震対策
東日本大震災による化学系の被害
実験台上の器具
や薬品が転倒し
たり,落下した。
ボトルプロテクター
自作の卓上局排
の囲いのために
薬品の落下を免
れた。
薬品の転倒防止
に有効である。
安全設備・装置・情報と保護具
それでも起こる事故への備え
落下防止板
第3類危険物を使用
中に大地震が起こっ
た時に備える
各自、対策せよ!!!
化学実験室で火災を起こすと
周辺の人にも迷惑をかける
ヒューマンエラーの防止について
事故の原因はほとんどヒューマンエラーである
観察力の不足・・・ 見落とし
錯誤・・・・・・・・・・ 思い違い
失念・・・・・・・・・・・・ 物忘れ
判断力の不足・・・・・・ 迷い
技術力の不足・・ 出来ない
遵守違反・・・・・ 面倒くさい
ヒューマンエラー
どこでも起こりうる
防ぎにくい
1. やりずらい作業をなくせ。物理的に、機器・器具・設備の改善でなくせ。
スタンドにクランプを固定しずらい。
トラップ管に耐圧ゴム管を抜き差ししずらい。
2. 注意事項、禁止事項などをなくせ。物理的に、機器・器具・設備の改善でなくせ。
第3類危険物を完全に無害化せず廃液タンクに投入しない。
第3類危険物の使用時は湿気に注意する。
3. 疲れているとき、急いでいるとき、集中力を欠いているときに、ヒューマンエラーが
起こる。
廃棄物管理の問題事例について〜多分ヒューマンエラー〜
事故の状況
水銀とクロムを含有していた無機系廃液タンクを再利用しようとして、実験流しに
共洗いをした洗浄液を廃棄した。
原因
水銀の排除基準が厳しいことは知っていたが、意図せず排水を流しに廃棄した
(ヒューマンエラーと言える)。 複数の作業を同時進行していたこと、日々の作業の疲れがたまっていたことやそ
の日の内に新しい実験を始めたいと急いでいたことから、1つの作業への注意力
が散漫となっていた。 無機系廃液タンクに重金属Cr・Hgと明記されていたにもかかわらず、深く考えず
に排水してしまった。 また、洗浄液が薄緑色であったのでおかしいとは思ったが、洗浄液を流しに廃棄
した後、すぐに別の作業に移ったため、水銀を廃棄したことはあまり気に留めるこ
とが無かった。 対策
つくば市下水道条例での水銀の排除基準は0.0005mg/Lと厳しい。 水銀含有廃液や水銀を使用した器具類の取扱は特別の注意を払って行う。 水銀の取扱場所を制限し、使用する器具類をその場所から移動しない。 器具類の洗浄は、まず扱った水銀化合物をよく溶かす溶剤を使用する(通常、酸
洗浄)。 水銀を含有する廃液タンクには水銀廃水の注意に関する朱書や警告書を添付
する。 廃液タンクを洗浄する場合、洗液の廃棄先は別の廃液タンクである。 こぼれた廃液等を拭いた雑巾等は、有害固形廃棄物として処理申請する。 【ヒューマンエラーの防止策は常に多角的に実行していなければならない】 時間に余裕をもった無理のない実験計画を立てる。 疲労がたまっているときには実験を行わない。 注意を要する作業場所には警告書を貼る。 無意識に水銀廃液タンクを
洗って流しに廃棄 事故の原因の要素の分析
作業の段階
事故防止策の要素
原因
作業計画
危険有害性の調査
×
作業方法の策定
事故の想定と対策
×
設備・装置の構築 安全確認、整理整頓
作業の実施
作業標準の履行
×
慎重な作業
×
作業効果の確認
事故の兆候の観察
不測の事態への対応
×
廃棄物管理の問題事例について
廃棄物管理の問題事例について〜多分ヒューマンエラー??〜
化学域が原因の問題事例
ヨー化ベンゼンを60%以上入っ
た廃液タンクに内容物を不記載
で処理依頼した。
処理費用の見積もりに必要
です。
記述間違いで問題が発生し
ます。
特に含ハロゲン物質は含有
量を確実に記入する。
想定される問題例
処理申込票に記載されていない
物質が入ったタンクを業者が焼却 ⇒ 排ガス処理能力を超えて有害
ガスが発生 ⇒ 周辺住民に健康被害 ⇒ 業者が追加処理費用を請求、
あるいは住民が業者を告訴次に
業者が本学を告訴
事故の防止のために有効な手段
再確認のために
作業標準の作成
特定の作業あるいは特定の物質や設備を使用する作業について,作業条件,
作業方法,管理方法,使用設備その他の注意事項などに関する基準を集めた
もの。
○物質や作業の危険性,有害性の調査や文献等に記載されている作業標準の調査の
他に,想定した事故に対する安全策の策定(安全確認の方法,使用する安全装置,保護
具等)なども含まれるべきである。
○作業場と作業者独自の作業標準の作成が,望ましい。
○作業標準の履行に当たっては,記憶に頼ることはヒューマンエラーの原因となりうるの
で,ポイントを記載したチェックリストを作成して作業中にチェックが行いやすくすることが
有効である。
有害性・危険性の高い作業を行う前に手順書を作れ!
手順書を確認しながら作業せよ!
安全確認を怠るな!
事故の防止のために有効な手段
再確認のために
小規模の予備実験
作業標準の十分確立されていない危険物質や危険作業を行う前に,事故が起
きても被害のないような小さいスケールで予備的に行う試験的作業。
○小規模な予備実験を行うことによって,独自の作業標準を作成できる。
○必要に応じて様々な作業条件で予備実験を行うことによって,安全の限界を知る。
○危険性の大きい作業では,徐々に大きいスケールに移行してゆくことも必要である。
二重の安全装置
安全装置: 誤操作や故障による事故の発生を予防するための装置,器具,道具。
○一箇所の危険箇所に対して,事故を防止する,あるいは事故が起きたときの人的,設備
的被害を防止するための安全装置を,二重に備えた安全策を取る。
○危険性が大きい作業では,さらに多重化することが望ましい。
☆薬品を混合して発生させたガスを利用するような場合,誤って発生量が大きくなりすぎた
場合に備えて,一定以上の圧力を逃がす圧抜きの安全弁を装置に組み込む必要がある。
☆爆発の危険のある作業は,ドラフトチャンバー内で行い,装置と作業者の間に安全衝立を
置いた上に,作業者は皮手袋などで防護する。
危険物質取扱は、小規模の予備実験を必ずやれ!
安全措置を二重にかけよ!
事故の防止のために有効な手段
再確認のために
チーム作業
危険作業は必ずチームでやれ!
危険性が大きい作業では,作業者の他に監視者を置く。
監視者は,安全確認,作業標準の履行などのダブルチェックを行い,また非常
事態の鎮圧を行う。
○監視者は,作業者より客観的な作業状況の把握ができるため,作業の効果(反応の進行
など)の観察,確認作業対象の事故の兆候の観察,作業環境の事故の要因の観察などを
効果的に行える。
○監視者は,作業者の作業ミスの防止に有効である。
○監視者は,作業者より落ち着いているため,不慮の出来事への対応を効果的に行える。
技術力・判断力の研鑽
なんでもいいから技術を磨け!
危険性が大きい作業は,高度な判断や熟練の技術が要求されることが多い。ま
た微妙な力加減が必要な作業も多い。
○熟練の技術や加減(程よく調節すること。また,その状態。「広辞苑」)を知ること(身に付
けること)は,重要であるが,一朝一夕には身に付かない。
○習得することに時間がかかり十分な訓練が必要な何らかの技術を,日ごろから訓練す
ることは,技術力・判断力の研鑽の意味でも重要である。
○ガラス細工の技術の習得は,技術力,集中力,判断力等の研鑽の目的に良く一致する。
事故の防止のために有効な手段
再確認のために
整理整頓されたマージンスペースの確保
事故は作業中に起こるので,作業中にこそ作業場は整理整頓されていなけれ
ばならない。
この目的のためには,作業に必要な最低限度の1.5倍程度のスペースを使用し
て作業を行うべきである。
作業時間を通して,常に整理整頓していなければならない。
○マージンスペースを利用して,作業で使い終わった器具類を整理整頓する。
○化学薬品の付着した使用済みの器具類などを,収納する容器をあらかじめ用意して
マージンスペースに置く。
○マージンスペースは,不慮の出来事への対応のためにも有用である。
整理整頓された余裕あるスペースで実験せよ!
日々の自己研鑽こそが就職活動
である