PDF資料 - サービス/ソリューション

Project Report
USER
PROFILE
シスメックス株式会社
本 社:兵庫県神戸市中央区脇浜海岸通1丁目5番1号
創 立:1968年2月20日
資 本 金:86億5,100万円(2008年3月31日現在)
オープンソースベースのビジネス・プロセス・マネジメント・システムを
ワークフローに導入。低コスト、高品質を実現。
事業内容:臨床検査機器、検査用試薬、粒子分析機器、関連
ソフトウェアなどの開発・製造・販売・輸出入
従業員数:1,871名(2008年5月31日現在)
シスメックス株式会社は、職場や学校で行われる健康診断や体調が悪くなったときに病院などで行う「検体検査」を事業領域とする医
U R L:http://www.sysmex.co.jp
療用検査機器・試薬メーカーで、世界各地の医療機関に機器、試薬をはじめ、検査情報システムやサービス、サポートを提供してい
ます。
今回、ワークフローシステム構築にあたり、老朽化した既存システムから、国内ではまだ事例が多くないオープンソース・ソフトウェ
ア(OSS)による大規模なビジネス・プロセス・マネジメント(BPM)システムを採用。TISはその当初からプロジェクトの中心として
貢献しました。
基幹系ワークフローシステムの刷新
シスメックスに行ってきたが、パッケージそのものが高額であ
として、OSSならではの自由度の高さが挙げられる。パッケー
常に安心しました。もちろんコストメリットも大きかったです
るうえ、独自の拡張性やカスタマイズ機能に限界があり、また
ジ製品にあるようなブラックボックス化された部分がないため、
ね。その他の要求にも応えてもらえそうでしたので、導入を決
シスメックス株式会社は、神戸に本社がある医療関連メー
継続的なメンテナンスコストも導入の大きなハードルとなって
システム構築後の機能追加や改修が非常に容易になる。さらに
断しました」
(井上氏)
。こうしてプロジェクトは2007年7月、正
カーで、血液や尿などを調べるために必要な機器や試薬などの
いた。そこでTISは、オープンソース領域で実績のある日本
決定打となったのはアプリケーションがライトウェイトで動作
式にスタートした。
開発から販売サービスまでを一貫して行っている。シスメック
ヒューレット・パッカード社とオープンソース・ソフトウェア
が高レスポンスであること。これらのメリットはすべてシス
スの製品は、世界各国に展開する同社の販売サービスネット
(OSS)によるBPMシステム分野で協業し、業界標準サーバであ
ワークにより150カ国以上の医療機関に届けられ、各国の医療
るHP ProLiant上で稼働するOSS「JBoss jBPM」をベースとした
メンテナンス・サポートへの不安、アプリケーション不足へ
を支えている。
オリジナルのフレームワーク「e-ProcessManager」を開発。こ
の懸念といったOSSに対するネガティブなイメージは、ひとつ
スタートから2ヶ月は要件定義にあてられた。ここで問題に
れを核としたソリューションをシスメックスに提案した。
ずつ解消していったが、唯一のネックはワークフローシステム
なったのは稼働時のイメージをどのようにシスメックス側に伝
への導入実績の少なさだった。そこでTISは、2006年春の時点
えるか、だった。OSSベースであるe-ProcessManagerは、従
現在、シスメックスは検体検査領域で世界トップ10に数え
メックスの要望に応えるものだった。
新フローシステムへの信頼
られ、近年ではがんや糖尿病にフォーカスしたライフサイエン
このソリューションの強みは、第一にOSSであることによる
ス領域へと事業を拡大。患者の一人ひとりに最適な医療を提
初期投資額の低さ。そしてJavaベースであるため将来的に保
で既にこのシステムを導入済みだった顧客企業の協力を得て、
来のBPMシステムパッケージ製品とは違い画面サンプルを持た
供するために必要な、新しい検査・診断技術の創出に取り組
守、開発を自社で行えるなど、保守費用の安さも大きなコスト
e-ProcessManagerによるシステム構築の事例調査をシスメッ
ないため、実際の運用の際のイメージがつかみにくい。
「ワー
んでいる。
メリットになっている。そしてパッケージ製品との大きな違い
クスに提案。2007年4月にこれを実施し、シスメックスの不安
クフローの実際の動きが分からないので苦労しました。そこが
を払拭した。
「実際に稼働している現場を見せていただいて非
パッケージ製品との大きな違いですね」
(近藤氏)
。そこでTISは
シスメックスのワークフローは2000年に構築されたが、運用
が進むにつれ、サーバへの負荷増大によるシステムのレスポン
ス低下に悩まされてきた。また既存システムでは、アプリケー
システム概要
C o m m e n t s
ション自体の拡張性の乏しさも障壁となって、他業務への拡大
やグループ関係会社への展開が困難な状況になっていた。
パフォーマンスと将来性の高さに
非常に満足
私たちの要望にきめ細かく対処い
ただきました
全く新しいワークフローシステムの構築に取り組むことと
申請系の伝票だけでなく、基幹系シ
今回の新システム導入における最大
なった。
ステム(ERP)と一体となったシステ
の懸案事項はパフォーマンスでした。
ムとしての活用、グループへの展開
従来のシステムのレスポンスを少し
に柔軟に対応できるワークフローシ
でも向上させたかったのですが、そ
ステムソリューションを探していた
の点は想定以上の結果が出て、喜ん
ところ、TISさんからオープンソース
でいます。システム全体としてのク
そこでシステムのバージョンのサポート期限切れを契機に、
社内LAN
Web/APサーバ
オープンソースベースのBPMシステム構築
新ワークフローシステムに求められた要件は、まず既存シス
テムよりレスポンスが改善されること。またグループ展開に対
DBサーバ
e-ProcessManager
帳票サーバ
Apache
Struts
SVF
jBPM
Weblogic
申請書データ
マスタデータ
jBPMデータ
応できる自由度の高いシステムであること。そして低コスト、
高品質を実現すること。2004年以降、競合プレゼンテーション
を経て何度かプロジェクトが立ち上がりかけたが、既存環境か
シングル
サインオン
データ
連携
らのリプレースの難しさとそれに伴う高額の費用などが障壁と
なり、本格的なプロジェクト稼働には至らなかった。
TISは従来、ビジネス・プロセス・マネジメント(BPM)ソ
リューションとして商用パッケージ製品をベースとした提案を
06 │
│2008 Vol.22
であるJBoss jBPMをベースとしたe-
オリティも全く問題ありません。ま
ロー構築のご提案をいただきました。
シスメックス株式会社
情報ソリューション部
システム開発課 課長
基幹系フロントとしての実績があま
井上 雅勝氏
ProcessManagerによるワークフ
り多くなく、当初少なからず不安は
象的で、我々の細かなオーダーにも
シスメックス株式会社
情報ソリューション部
システム開発課 主任
的確に応えていただきました。
近藤 直樹氏
たTISさんの技術力の高さも大変印
今後はオープンソースベースの強み
ありましたが、実稼働後はコストメリットだけではなく、そのパ
を活かして、関連会社にこのワークフローシステムをどんどん導入し
フォーマンスと将来性の高さに非常に満足しています。今後は関連会
ていきたいですね。
社への導入を進めていきます。
TISさんにはこれからも我々情報ソリューション部だけでなく、経理、
人事、総務といったユーザ部門にも先を見越したご提案をいただける
ActiveDirectoryサーバ
基幹系システム(SAP)
よう、期待しています。
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│ 07
Project Report シスメックス株式会社
システム構成
Web/APサーバ
DBサーバ
EAIサーバ
CPU :3.0GHz×2
メモリ :4.0GB
HDD :36GB×2
(RAID5、実効36GB)
OS
:Windows Server 2003 R2
CPU :3.0GHz×2
メモリ :4.0GB
HDD :146GB×6
(RAID5、実効685GB)
バックアップ:
Ultrium(400GB)
BackupExec11d
OS
:Windows Server 2003 R2
CPU :3.0GHz×1
メモリ :4.0GB
HDD :36GB×3
(RAID5、実効36GB)
OS
:Windows Server 2003 R2
ソフトウェア:
Apache2.0.61
Weblogic Express 9.2
JP1
メールサーバ
SMTP対応MTA
ソフトウェア:
Data Spider Servista
SVF for Web/PDF Java
Edition
ソフトウェア:
Oracle 10g Standard
ハードウェアは4機すべて
HP ProLiant DL 360 5G を利用
クスと同じERPを導入済みの国内関連会社から先行導入する方
50万伝票を超える規模でも安定稼働できるという大きなハード
針で、既に具体的な導入計画が検討されており、同システムは
ルを越えたことで、今後JBoss jBPMとe-ProcessManagerに
企業マネジメントの中核として展開されていく。
よる基幹系システムインテグレーションは、TISの新しい強力
またTISにとっても、自社開発のe-ProcessManagerが年間
な戦略商品となるだろう。
M e s s a g e s
ステージング用サーバ
ワークフローシステム用サーバ
クライアントPC
LAN
本社
他拠点
CPU :Pentium Ⅲ以上
メモリ :128MB以上(256MB以上推奨)
OS
:Windows 2000/XP/Vista
関連会社
関連会社
ソフトウェア:
Internet Explorer6.0 SP2
Internet Explorer7.0(Vista)
メールソフト
TIS株式会社
産業事業統括本部産業第2事業部
産業システム営業部
主任
TIS株式会社
産業事業統括本部産業第2事業部
産業システム第2部
統括マネジャー
河端 厚
岡本 俊之
OSSへのお客様のご理解が推進力に
プロジェクトを通してお客様との関係を深化
今回のOSSベースのソリューション提案は、シスメックス様にとって
このプロジェクトはTISにとっても大きなチャレンジでしたが、お客様
全く新しいものでしたから、その信頼性、品質を認めていただくのが
の期待を超える成果を出せたと思っています。おかげさまでシスメッ
大変重要でした。OSSベースの自由度の高さ、将来性、メンテナンス
クス社内でも高い評価をいただきました。このプロジェクトを契機に、
コストの低さといったところをご理解いただけたのが大きかったです。
情報ソリューション部以外の部署との関係も作ることができました。
これを機会に継続的なお取引ができることを願っています。
今後は、各部署に向けて新たな提案をどんどん出していきたいと考え
ています。
運用の感覚をつかんでもらうため、運用イメージに合わせた
をかけたが、レスポンスの劣化は見られず、安定した高いパ
ワークフロー全体のHTML画面を個別の申請書画面(経理の旅
フォーマンスを見せた。これによって新しいワークフローシス
費精算、経費精算、支払依頼申請など)と合わせて作り、それ
テムに対する信頼は盤石のものとなった。
を元に説明を繰り返すことでこの問題に対処した。
シスメックスからは前記要件に加え、シングルサインオンの
稼働後の評価と今後の展開
実現、基幹系システムとの申請データ連携やマスタデータ連携、
監査対応のためのデータ保存、帳票の追加などが要望として挙
げられ、それらはすべて要件定義に盛り込まれた。
こうして2008年2月に経理システム、4月に総務システムと人
事システム(の一部)の実稼働が始まったが、システムの安定性
TIS株式会社
産業事業統括本部産業第2事業部
産業システム第2部 主査
TIS株式会社
産業事業統括本部産業第2事業部
産業システム第2部 主任
TIS株式会社
産業事業統括本部産業第2事業部
産業システム第2部
西垣内 健司
永田 兆
田畑 博光
9月から本格的な設計・開発作業に入った。現場部門からは
と格段に速くなったアプリケーション動作に高い評価が集まっ
作業の間にも何度か仕様の追加や変更の依頼が発生したが、情
た。
「やはりレスポンスの大幅な向上が大きい。日々の申請が
報ソリューション部の担当者とTIS間で協力しあい、開発作業
出しやすくなったという声を聞きます」
(近藤氏)
。
「パッケージ
プロジェクトの経験を活かし次のステップに
e-ProcessManagerの要望実現に苦心
初めてのフルスケールプロジェクト
自体はきわめて順調に進んだ。3ヶ月間で主要な開発作業は終
製品と違い、一から自分たちで手作りをした、という感覚です
シスメックス様にOSSを使ったフレームワー
今回のプロジェクトは、TISとe-Process
私にとって要件定義から始まるフルスケール
わり、続いて12月からは統合テストとシステムテストに入った。
ね。導入後の品質にも非常に満足しています」
(井上氏)
。
クのメリットを、ご理解いただくところから
Managerに対してお客様がどのような期待を
の開発プロジェクトは初めてで、良い経験に
このプロジェクトはスタートしました。無事
されているかを知る良い機会になりました。
なりました。勤怠機能に関しては全仕様を統
に稼働することができ、ほっとしたというの
お客様のご要望を、e-ProcessManager全体
括するサブリーダーという立場でしたから、
また将来シスメックス自身の手で保守、拡張を行うための技術
移転として、教育活動も同時に進められた。
最優先課題とされたシステムのレスポンスについては、実稼
働前にシスメックスの現場の協力による大掛かりなテストが行
われた。200∼300名の社員が一斉に新システムにアクセスし伝
票を記入するというもので、従来のピーク時の20倍ほどの負荷
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│2008 Vol.22
6月には人事・勤怠システムも稼働が開始し、本プロジェク
トの第一フェーズと位置づけられた既存システムの置換作業は
が正直な気持ちです。私たちメンバーが持つ
のバランスを考えながら実現していく部分が
苦労もありました。また、このプロジェクト
ほぼ90%が完了した。現在は人事採用系、情報システム系の開
経理、人事、総務に関する知識を活かして、
一番苦心したところです。おかげさまで高い
ではお客様から要件や仕様をいかに聞き出す
発および移行作業に取りかかっている。
今後さらにe-ProcessManagerを成熟させ、
評価をいただきましたから、その甲斐はあり
かということを学びました。今後もこの経験
デプロイメント型の開発を進めていきたいと
ました。
今後の第二フェーズとしては、シスメックスの関連会社への
同システム導入が大きな目標として挙げられている。シスメッ
思っています。
を活かし、e-ProcessManagerの開発に取り
組んでいきたいと思います。
2008 Vol.22│
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