スタジオ 10 07 2) ス 訪問日:2010 年 9 月 27 日(月)12:00 0~12:45 者:Studioss107 対応者 Direccteur Generral Jean-F François DE ELANDE 氏 氏(写真の男 男性) le pôle Directrice e Malika A Aït Gherbi 氏(写真の の女性) 者:萩原雅也 也 記録者 《施設 設概要説明》 》 スタ タジオ 107 は、レンガ造 は 造りの旧倉庫 庫をスタジオ オとして再生したもの。同 同じような倉 倉庫を 再生 生した競合ス スタジオも隣 隣接し、映像 像関係の産業 業はこのあたりに集積して ている。 10 年前までは、 、このような なテレビ撮影 影の技術・機 機材を提供で できる業者が が 10 社あったが、 廃合され、現 現在では 2 社しか残って 社 ていない。 統廃 スタ タジオ 107 は 15,000 ㎡の の敷地にテレ レビ番組撮影 影可能な7つ つのスタジオ オを設置しており、 年間 間の総売上は は約1千万ユ ユーロである る。 スタ タジオ 107 はフランスで は ではよく知ら られており、ここで制作し したテレビ番 番組でも必ず ずスタ ジオ オ名が表示さ される。 46 タジオ 107 が専門とし、 が ナンバーワ ワンとして評 評価されているのが移動 中継車(ビデ デオ・ スタ モー ービル)によ よる出張撮影 影である。今 今年のサッカー・ワールドカップでは はソニー製カ カメラ を使 使った 3D 放送を行った 放 た。 これ れからのプロ ロジェクトと として、新し しい3つのス ステージがつくられるこ とになっている。 タジオ内見学 学》 《スタ スタジ ジオ 1 この のスタジオは は、ジュスト トプリ Juste Prix(Justt Price)とい いう値段を当 当てるクイズ ズ番組 のセ セットを設置 置している。このスタジ オでは撮影す する番組が替 替わるごとに に内部の装置 置を入 れ替 替える。ジュ ュストプリが が2週間で終 終わるので、その後全装置を交換する る。 スタジ ジオ 2 こち ちらはテレシ ショップのス スタジオでそ そのステージ ジが用意されている。屋外 外の場所は6 6台分 の駐 駐車場があっ ったところを を庭に変え、ガーデニング、庭木など どのテレショ ョップ撮影で で使用 47 ている。 して スタジ ジオ 3 空の の状態のスタ タジオである る。ここで一 一日5回の撮影が行われる。明日から ら装置の設置 置を始 める る。特に視聴 聴者参加の番 番組は装置の の移動・転換が非常に速く行われる。 。視聴者を受 受け入 れる るための安全 全上の規制が があり、こち ちらもそれを遵守できるスタジオであ ある。 スタ タジオは照明 明によって温 温度が上がる るために空調 調による暖房 房はあまり心 心配しないで でもよ い。これからの のシーズンで でも暖房はほ ほとんど不要 要である。 疑応答》 《質疑 ①: 質問① 旧倉庫 庫の外壁は残 残したのか 回答① ①: 残した たところがあ あるのでそれ れを見学して てもらう。業 業務上重要な なのはスタジ ジオと しての の機能を維持 持することな なので外壁に にはこだわっ っていない。 質問② ②: フラン ンスでは社内 内スタジオで ではなくこの のような貸し しスタジオが が一般的なのか。 回答② ②: 現在、 、貸しスタジ ジオであるが が、2005 年までは TF1(1 チャンネ ネル)傘下の のスタ ジオで であった。業 業績悪化のた ため売却され れ、スタジオ オ 107 として て完全な外部 部組織になっ った。 フランスの場合、 、番組は委託 託制作が一般 般的である。テレビ局は は都市の中心 心部にあり、大規 スタジオを設 設置することは物理的に に無理なため め、局内部に には小規模な なスタジオし しか持 模なス ってい いない。パリ市内にこの のように 15 ,000 ㎡を要 要するスタジ ジオをつくる ことはできない。 回答② ②-2: テレ レビ局がスタ タジオをもた たないことは は外部に関連業種を成長 させ、下流を を豊か にするという効果 果ももたらし している。 ③: 質問③ ここで では何人が働 働いているの のか。 48 回答③: 恒常的には 20 人、アンテルミタン(intermittent)という季節、期限付き雇用 が 500 人である。アンテルミタンは一日だけ雇用してもよいという法律があるので必要に 応じて雇用している。これはスペクタクル、エンターテイメントの分野では一般的である。 番組制作として年 35 週しか使用されないので恒常的な従業員雇用を増やすのは難しい。 質問④: アンテルミタンはスタジオ 107 が直接募集するのか。 回答④: 人材派遣業者を使うこともあったが、それよりも従業員やアンテルミタンから の紹介や推薦の方が好ましいと思っている。なぜなら、推薦した人はその人に責任を持ち、 何かあれば責任の所在がはっきりしているので。特にフランスのスペクタクル、エンター テイメントではそのような口コミによる雇用が普通である。 質問⑤: このスタジオはテレビだけで映画は制作していないのか。 回答⑤: このスタジオは、テレビ局に直結し、番組放映することを前提につくられてお り、テレビ撮影に特化したスタジオである。映像制作だけでは利益が上がらず、テレビに 放映できることがビジネスモデルとして必要である。20 世紀にはパリ市内隣接地にスタジ オがあったが全て移転している。現在はパリ市に近接する高速道環状線上にテレビ、その 外側に映画撮影所が立地している。映画監督リュック・ベッソンの主唱によって、2012 年 に 6 つの撮影所を備えたシテ・ドゥ・シネマ(映画の街)を開発する計画が進んでいる。 49 3) IICADE 訪問日:2010 年 9 月 27 日(月) 応対者 者:ジャンル ル・パリゾー ー氏(セーヌ ・サンドニ県 県議会 経済 済開発・雇用・職業訓練局 局長) ジェロー ーム・コルデ ディエ(セー ヌ・サンドニ ニ県経済開発 発所長) オリヴィ ィア・ギルエ エ(ICADE 都市計画家、大プロジェクト開発責 責任者) 者:土野茂賢 賢(ティグレ理 理事・関西中 中小企業研究 究所専務理事 事) 記録者 13:00 0 スタジ ジオ 107 の視察を終え の え、赤レンガ のデザインに象徴される る街並みを徒 徒歩で移動す する。 マルチ チメディア関 関連のオフィ ィス、デザイ インの KOOK KAÏ などを縫 縫うように歩 歩く。中心部 部には ICAD DE 事務所が がある。オフィ ィスの間は公 公園のように に整備されて て美しい街並 並みになっている。 13:30 0~14:00 ワークショップ会 会場に着き昼 昼食。歓迎ぶ ぶりが察せら られるおしゃ ゃれで高価そ そうなバスケ ケット である。 14:00 0 クショップ開 ワーク 開始。 ※ そ その前に、セ セーヌ・サン ンドニ県の基 基礎データ(パ パンフ レ レットから地 地図を掲載) パ パリ市の北東 東部に位置す する重要な県 県。面積は 236k ㎡。 50 人 人口 150 万人 人。日本の基 基礎自治体に にあたるコミ ミューンは 40 4 に分かれる る。そのうち ちの 1 つ つがサンドニ ニ地区(12 k ㎡)。このよ うなコミュー ーンが複数集 集まって都市 市共同体を形 形成し て ており、現在 在これが 5 つある。その つ うちの 1 つがサンドニ地 地区を含むプ プレーン・コ コミュ ー ーン(43 k ㎡)である。 ※ ま また、日本と とは違い、県 県議会議長は はセーヌ・サ サンドニ県の行政のトップ プである。 《プレゼンテーシ ション/サン ン・ドニ地域 域におけるク クラスター政 政策について て》 パリゾー氏(セーヌ・サ サンドニ県議 議会議長) ① パ ようこそセーヌ ヌ・サンドニ ニ県にいらっ っしゃいまし した。セーヌ ヌ・サンドニ ニ県は若い地 地域で 。イルドフラ ランスの中で でも都市スペ ペースは狭い いがパリに近 近接して人口 は 100 万以 以上と ある。 多い。 。数年前から県議会もパ パリ地域開発 発局と連携を をして経済発 発展に力を入 入れている。パリ 地域開 開発局を川上 上とすると川 川下はプレー ーン・コミュ ューンや北東 東部の都市圏 圏が川下である。 皆様 様方の訪問の の目的を聞く くと私たちの の経験と同じ じだと痛感す する。20 年前 前、1980 年から 年 90 年 年にかけて、地域は 8 万の雇用を失 万 った。経済変 変化に対応し し、自治体と として積極的 的に関 与して て新しい経済 済の開発をめ めざして一体 体となって取 取り組んでい いる。20 年前 前に栄えてい いた工 場は衰 衰退したが、 、20 年間の の努力が実り 同規模の雇用 用を取り戻し している。し しかし、内容 容は以 前と異 異なり第 3 次産業が多 多くなってい る。皆さんが移動してこ こられた地域 域が経済再開 開発の 象徴的 的地域で、新 新しい経済が が生まれてい いく中心地で である。今朝 朝の日刊のラ ラ・クロワ紙 紙にも セーヌ ヌ・サンドニ ニ県の経済再 再生について ての多くの記 記事が出てい いる。 県として何をしたかというと、新しい い組織を多く くつくった。この後発表 表する県経済 済開発 エ氏、オーデ ディオビジュ ュアルのマリ リカ氏、財政 政支援をして てくれる組織 織など 所長の のコルディエ 51 をつくることによって経済再開発にあたりました。 雇用創出ということでは、若い企業が多く、年間 9,000 の企業が創業していることにな る。それはすべて小規模のサービス業、商業、あるいは零細企業も入るが職人的雇用、そ ういう企業ができている。 クラスターということで政策を展開する上では、若い企業、若いイノベーションを支援 している。分野でいくとイメージ・映像産業や健康、航空業の 3 種のクラスターがある。 パリ首都圏の中で雇用創出ではセーヌ・サンドニ県は第 3 位に位置する。自治体の規模 からいうと大きな意味がある。しかし、現在のフランスの景況では予算編成は難しいが、 今までの予算編成を維持していきたい。新しい経済開発を支援するためにともに努力し、 予算編成を維持していきたい。 ② コルディエ氏(セーヌ・サンドニ県経済開発所長)18 よくおいでいただきました。書類の中に記事が入っている。地域のプロモーションと企 業誘致が私の仕事である。 歴史を手短に振り返ると、この地域は中世から 19 世紀半ばまで野菜を中心とした農業地 帯だった。19 世紀半ばの産業革命で工業地域になった。パリの企業が用地を求めて北に出 てきたが、パリを通過しなくても西からも来やすいという地の利があった。1960 年代まで は工場に勤める工員が住民の 80%を占めた。70 年代になると、皆さんのいるここピレンヌ サンドニ地域は面積、人口ともに一番大きな工業地域になった。70 年代から用地確保が重 要になった。こちらの地域では工業が産業遺産であり、今後の発展の要でもある。 この地域の強みは強みはパリに一番近いということ。70~80 年代に用地が開拓されたが、 その中にはシャルル・ドゴール空港もある。シャルル・ドゴール空港では 28 万人が働いて いる。ヨーロッパに来る時に重要な空港としての役割をもっている。 (セーヌ・サンドニ県の新旧の写真がある。)左がその昔、右が現在である。昔のどのよ うな建物が新しい経済に対応する建物に変わっていったか。ここは印刷所だったが今は大 学になっている。19 世紀の製粉所は 2009 年 12 月に 3,000 人の雇用を抱えるパリバ証券に なった。ガス工場はご存知スタドルフランスになった。元の電気・ガス工場はリュクベソ ンが音頭を取ることになっているシネマシティーのこれからのプロジェクトになる。開発 の余地はまだある。100 ヘクタールのドックの跡を今後、オフィスや住宅にするプロジェク トがある。誘致の際の力点は道路、高速道路、鉄道の幹線を政府が整備すること。鉄道は 工業の発展にに大きな役割を果たしている。また空港に向かっては高速道路 2 本が通って いる。上がシャルル・ドゴール空港。こちらはすでに開発された地域、今後さらに隣接部を 開発していく。その面積は 40ha ある。 こちらの地域の強みとしては、パリ首都圏で 2 番目の大学の密集度を誇っていること。 若い住民が多く、20 歳以下で 30%を占めている。3 つの大学と 10 以上の高等教育機関が 18 彼は都市計画、都市建築家で、76 ヘクタールの建築をしている。 52 。テクノロジ ジー、理科系 系だけでなく く、国際的に にも有名な高 高等養育機関 関がある。 ある。 これ れは交通網。 。 経済 済開発にはす すべてのこと とを最適にお おこなう必要 要があり、業 業種の開発で では3つの業 業種を 優先している。そ その 1 つが今 今朝のイメー ージ、映像関 関係である。2 つ目は航空 空業。ブルジ ジュ空 シャルル・ドゴール空港 港がある。 港とシ こち 一言で言うと と、人口 160 0 万、企業数 数 59,000、イ イメージ産業 業が 65%を占 占める ちらの県を一 ほど発 発達している る。2008~9 9 年の経済危 危機が訪れる るまでの 3 年間は、毎年 年 8%以上の成 成長を 遂げて ていた。 経済 済発展を遂げ げてきた地域 域であるが、 、すべてがイ イージーでは はない。今求 求められてい いるの は高度 度な雇用であ ある。それが がここに住ん んでいる住民 民の程度と合 合っていない い。企業が求 求める レベル ルの能力に届 届くように教 教育、研修に に力を入れな なくてはなら らない。難し しい問題であ ある。 主に県 県議会がこれ れにあたるが が、各自治体 体も努力をし している。 ③ フ フィリップ・ ・ムーシェ氏 氏(プレイヌ ヌ・コミュー ーン連合の経済担当) 県が が若い県であ あると紹介さ されたが、プ プレイヌコミ ミューン市は はさらに若い い。まだ 10 年しか 年 経って ていない。経 経済開発、土 土地整備が私 私たちの担当 当である。 お配 配りしている る資料は、こ この町ができ きてから 10 年来の歴史で 年 です。市とい いうより 1 つの都 つ 市圏で である。80 年代にオーベルビリエ とセーヌ・サ サンドニとい いう 2 つの市 市が協力して て新し い経済 済開発にふさ さわしい都市 市圏という単 単位を作った た。 なぜ ぜそのような な形が考えら られたかと言 言うと、セー ーヌ・サンド ドニでは経済 済変貌の中で で大半 の企業 業が撤退し、 、大半の従業 業員が失業し した。当時と としては残さ された用地の の再利用の問 問題に 直面した。この工 工場用地は将 将来性がある るということ とで、上の政 政策決定者に にむけて再開 開発の についてロビ ビー活動が行 行われた。 必要に 53 当時の市長はビジョンの大転換を図った。ここに新しい企業を誘致する、さらにまった く新しい発想で住宅、公共施設を誘致した。以前には通過するに過ぎなかった道路などの インフラを住民のために整備した。大転換だった。市長は地域整備の考え方を対県、対地 方、対国にアピールしていった。 それが功を奏し、1990 年代になって将来性が認められた。1993 年にスタドゥドフランス が建設されることになったのは発展の大きなきっかけとなった。この大プロジェクトを自 治体の議員たちは受け身ではなく、積極的に同伴(協調?)する立場に立ったことが大き かった。10 億ユーロの予算が投入された。高速道路などのインフラ整備も進み、企業誘致 ができるようになった。 99 年に都市圏としてプレイヌコミューンができ、当時 5 つの自治体が入っていたが、今 は 8 つの自治体となっている。規模は大きくなったが根本の精神は当時と変わらない。経 済開発ということで 10 年来務めてきたが、特徴は多様性をもった経済開発であるというこ と。第 3 次産業、サービス業だけではなく、業種を多様化することをめざしている。業種 の開発では、今朝見られたオーディオビジュアルもその1つ。2 年半前からはエコ、環境関 連の産業を県と推進している。3 つ目は国からも出てくるが創造的な業種のクラスターをめ ざしている。 私たちのテーマは、公的、私的な研究所を企業につなげていくこと。雇用関連では企業 の研修付加も求めている。 10 年の歩みから言えることは、過去の清算でなく、企業の雇用が10年間で 30%アップ したことが大きい。イルドフランスの雇用が 7%増だったのと比べてもわかる。 次に、歩いてこられた地域、用地について、どのように変わってきたのか、今後のプロ ジェクトがどうなるのかを話していただきます。 ④オリヴィア・ギルエ氏(ICADE 都市計画家、大プロジェクト開発責任者) 今私たちがいるのはここプレイヌコミューンです。都市計画に携わっているのは公益団 体、非営利組織です。下はパリです。ここが対象エリア。ここがスタジオ 107。先ほど用地 の半分を歩いてきました。 フランスの歴史を手短かにご紹介します。ここの用地は 2 つの小高い丘に挟まれた地域 です。私たちがいるところはすべての物が通って行く通路になります。戦略的用地である と言えます。それが都市になったのは最近のことです。長い間、建設することができない 用地でした。何故かと言うと、サンドニ大寺院があり、フランス王家の墓がありました。 それがフランス大革命を経て、他人の手に渡ってもよいというように変わった。それが大 革命後の 1860 年のことです。 その頃から企業が入ってくるのですが、最初の企業はパリを立ち退かされた企業でした。 当時の環境問題からしてパリを立ち退いたのです。こちらの土地にはサンドニ運河が通っ ておりますし、また鉄道があります。それで倉庫群が発展した。そこに工業が起き、重工 54 業が起きた。 1945 年頃、TV の登場によって大きな変化が起きた。企業は広い用地を探していた。TV が発達すると派生的な業種も入ってきた。それは映像関連の学校や機器のリース業、卸売 業などが入ってきた。鉄道は今も昔も変わっていない。北の方から入ってくる鉄道の幹線 は南で3つの支線に分かれます。 2 番目の変化は卸売業が入ってきたことです。どう用地や建物をリサイクルするかが問題 になるのですが、過去のイメージを大切にしながらということです。 それと並行して開発が進められますが、赤は私企業です。それ以外はパリ地方であると か公的な開発用地です。それらの公私の開発の一貫性が重要です。競争関係になったりす る。特にブルーのアクセスは厳しい。 用地の開発についてこちら ICADE のビジョンをお示しします。ここは特殊な地域でなく てはならないというのが私たち ICADE の本音です。1 つの目的ではなく、多くの目的をも った開発でなくてはなりません。それが外に出ていくための要素でもあると思います。 グリーンのところがショッピングセンターです。99,000 平米あります。水路によって隔 てられているのが欠点です。一方ではそれがかえって有利?との声もある。ダイナミック な商業活動を左側の地域に移動させていくということが目標になっている。他の地域で成 功したやり方を導入したい。今通ってこられた地域の景観は、パリのベルシで同じように 成功した方法です。リズム感のある景観です。それから地下鉄延伸もインパクトになる。 サービス業の充実につながる。 3 番目のビジョンは Grand パリ(大パリ構想)。2 つの構想が論争中である。大統領が推 進する方ではない方の大パリ構想を展開し、クラスター等を持ってきたい。左には既存の TV などの産業、イメージ産業を持ってきたい。赤い地域は民間ですがサービス、第 3 次産 業を発展させたい。中央は相関性のあるプロジェクト。 トラムは紫です。左と右、西と東を結び付ける。赤はリサイクルですが、土地の部分は 昔のまま、上乗せする部分に新しいものを持ってきます。今はこの部分にいます。これは 今後のビジョンで、このままいくかどうかわわからないが…。茶色はすべて保存されるか リサイクルされる。面積が広く負担が大きいが、サービス業、オフィス、住宅も取り入れ ていきたい。開発は電力、水、建物自体も環境に配慮する。交通では歩道を作り、車の駐 車スペースも考えている。自転車、EV の利用も考えている。中心部分には自然空間を考え ている。 コルディエ氏 デジタルの 3 次元をテーマにするインターナショナルフォーラムは30ヶ国、3,500 人が 集まり話題になっている。映像、メディア、航空業も関連している。地域開発所がパート ナーシップで立ち上げた。行政単位では県、地方、先程の映像関係のポールノー?、業界 ではソニー、その他もフォーラムに入っている。世界初の 3D フォーラム。来年 5 月には 2 55 回目を開催する。ご来場をお願いする。 オリヴィア・ギルエ氏 ICADE は土地所有者なのでテナントを探している。変貌を遂げる地域において、経済だ けでなく、都市を考慮すること。倉庫やその次の工場、TV、新しくは卸売業というように 単一産業でなく多様性を重視しようと苦慮をしている。 《質疑応答》 質問①(三浦): すばらしいお話やスタジオ 107 の見学は感動をした。1 つは広い区域の 再開発、2 つ目に州や県やコミューンや商工会議所がかかわる事業、3 つ目に都市計画と産 業の再生というハード、ソフトの組み合わせで活力を高める取組である。日本ではこれだ け広い地域だと所有者と住民、企業の間の問題が起きる。行政が入ってもなかなかうまく いかない。地域の合意はどうなのか? 回答①: まず、この用地は特殊な例で所有者は 1 人であるということ。しかし、それだ けでは済まない。買収にせよ、転換にせよ、公益を前面に出した権利の行使はできるが、 やはりいろんな経過、ステップをクリアしないといけない。各プロジェクトが各段階で検 証されないと建設許可は下りないので、そういう利害のぶつかり合いはある。 回答①-2: フランスの場合は市長がプロジェクトを推進していく権限を持っているという ことが特徴的である。ここの地域について言うと、交渉はやさしくない。行政ではここを 経済活動と住宅の混在する地域として発展させたいと考えている。しかし、ICADE はデベ ロッパーで経済優先である。ネゴは厳しい。全体は混在している。 回答①-3: ショッピングセンターでも時間がかかっている。建設許可を得ることの難しさ。 関与する人々の意見交換もある。とりわけ大規模商業店舗ということで許可を得ることが 難しい。公的機関、民間が入り組んで PJ が策定されてきた。ショッピングセンターひとつ でも 16 年間かかっている。ハイクォリティでなければ同意できない。住民からの苦情では なく、既存の商業単位、商店からクレームが出てゴタついた。 回答①-4: ICADE が所有者で、その他フランス国鉄、フランス電力会社、ガス会社など 国を代表する組織が持っていたこと。住民の住宅については古くなって密集しており、そ のコンセンサスは容易かった。シネマシティーはフランス電力会社が持っていた。用地の 問題よりも土壌汚染の問題が大きかった。この洗浄がリクベソンと売り手との紛争になっ た。 質問②~④(立見): 3 点質問があります。②なぜ産業遺産を重視するのか?③産業の多 様性を重視するのはなぜか?④クラスターはミクロで、地域のネットワークとしてどう進 んでいるか?どう進むか? 56 ②: 経済が が変貌して 回答② いく中で、建物は は消滅した ある。全部を を保存した 例もあ いわ けではない いわけです なぜ既存の建 建物を保存 が、な しな がらという ことにこ と、地域経 だわるかと言うと 発展していく く中で、過 済が発 去を シンボルと して残す あると思う こと に意義があ です。できる るだけ残し からで たいと思っていま ます。パリ 地方 という大き な地域の 、すべてが同 同じような発 発展をすると とどこにも特 特殊性はなく くなります。 過去の遺産 産を残 中で、 すことによって地 地域の特性を をアピールす することが重 重要です。 ②-2: 回答② 公的 的な立場の考 考えに対して て民間 ICAD DE としては はそんなこと はどうでもいい。 ただ、 、アイデンテ ティティを打 打ち出すこと とは重要であ ある。正直、既存の建物 物は崩壊状態 態で再 利用で できるもので ではない。だ だから、残せ せるものは景 景観のリズム ムや色など。 そういうも ものが 過去の の伝統をアピールできる る。それは他 他の面から言 言うと、過去 去の物を残す すことは収益 益性か らも良 良くない。だ だから ICAD DE としては は過去の物に にこだわらない。 回答② ②-3: それ れから言える ることは、古 いものを新しくすること とは優秀なシ ショーウイン ンドー 効果を持つこと。 。古き良き新 新しき、環境 境規制をクリ リアしたもの のとしてのウ ウインドーに になり 。フランス全 全土にあるそ そのような近 近代的な建物 物の 1/4 は当地にある。 うる。 回答③ ③: 業種の の多様性につ ついては、フ フランスの古 古い諺に「す すべてを1つ つのかごに入 入れて しまってはいけな ない」というのがありま ます。こちら らでは優秀業 業種というこ ことで、3つ つの業 映画、健康、 、航空)をあ あげている。 。が、特化し して力を入れ れるというこ ことではない い。他 種(映 の業種 種をないがしろにはして ていない。 1つに特化す すると将来は はない。過去 去の苦い経験 験を経 て結論 論付けている る。単一では はだめで、で できれば4つ つか 5 つの業 業種を展開す ることで、1 1 つが 死んで でも次の物を を取りだせる る。サービス ス、第3セクター、マルチメディア、 、テレビ、音 音楽、 等々。 。5つ、さら らに次の展開 開を頭に置い いている。特 特に第3次産 産業というこ ことである。 回答③ ③-2: ARD D(パリ/イルドフランス ス地域開発局 局)でも今朝 朝、10 の業種 種を紹介いた たしま したが が、同じような論理です す。アイデン ンティティを を前面に出す すこと、カル ルチャーを守 守るこ となど。多様性を をもった業種 種展開は地方 方でも同じよ ように重要で です。専門の のテレビ、映 映像で よそへの移転 転が容易い。テレビでも も映画でも付 付加価値の高 高い、 もやはり低クオリティではよ 業種を確保し したい。 移転されにくい業 ④: 回答④ ③航空 空産業ではシ シャルル・ ドゴール空港 港を生かした たその他の航 航空産業を発 発達さ 57 べきである。 。 せるべ 回答④ ④-2: クラ ラスター政策 策が導入され れる前に、すで でにこちらに には強いネッ ットワークが があっ た。そ その上にクラ ラスターが付 付け加えられ れた。私の担 担当するイメージ産業で でも、ICADE E も私 どもの のポールのメ メンバーに入 入っている。 回答④ ④-3:トップ プダウン式の の管理運営で ではなくて、関与する人 人たちが coop pération、協 協力す るような運営方法 法が取り入れ れられている る。考え方の の違いを仲裁 裁しながら発 発展させてい いくと やり方につと とめている。自治体が企 企業の聞く耳 耳を持たない いと企業は出 出て行ってしまう。 いうや 都市計 計画は長期的 的であるが、企業は短時 時間の勝負を をする。調整 整は難しいこ ことがある。 質問⑤ ⑤(三浦):ARD と各レ レベルの行政 政のかかわり りはどうか?(朝に出し していた質問) 回答⑤ ⑤: 朝の質 質問にこの場 場を借りて答 答える。各レ レベルが確固 固とした権能 能を持ってい いる。 効果を出すために にはそれぞれ れの責任をも もってコーデ ディネーショ ョンをはかる ること。クラ ラスタ 例で言うと、 、国から出た た政策である るが、県、地 地方それぞれ れが兼ね合い いをもって参 参画し ーの例 なけれ ればならない い。 回答⑤ ⑤-2: 今現 現在の状況を を言うと、レ レベルごとの権能も議論中である。改 改革があるか かもし れない い敏感な問題 題である。例 例をあげると と、ここ数年 年、国からの の政策が下り りてくる、ト トップ が地方 方、その他の の行政と組み み合わさって て推進されて ている。各レ レベルのクラ ラスターの動 動きは うまくいっている。国はオー ーケストラの の指揮者の役 役割、地方、イルドフラ ランスは首都 都圏整 本大綱を打ち ち出し、下の の 備基本 行政 単位はそれ れに沿って機 機 実行する。そ それぞれが基 基 関で実 本大 綱に合って ているかを検 検 れる。 証され 回答⑤ ⑤-3: 悲観 観論を言うと と フラ ンスはこう ういう大綱が が に追加するの の でき るとそれに 意な国で、決 決して削除し し が得意 ない。 。実際に運営 営する側では は 大きくなっていく く。言葉の遊 遊 入るが、千(ミル)の書 書 びが入 類を作 作り、さらに に付け加える る .. と、お お菓子のミル ルフィーユの の ように においしいく くなる(つま ま り屋上 上屋にも、そ それだけの意 意 味があ あるというこ こと)。 58 ORA 4) DATAGO 訪問日:9 月 27 日(月)PM4 時~ 者:Florentt Bosseur 氏、Anne 氏 Beaavvais 氏 応対者 記録者 者:宮川 晃 (1)パ パンフレット トの抜粋 ヴァ ァル・ド・ワーズ県は、医療、デジタ タル、複合シ システム&ソフトウェア、 、自動車、航 航空、 金融な などの産業に に及ぶ、 国際 際的または国 内的水準の 6 つの産業ク クラスターに に関わってい いる。 県は、 、環境保護の の行き届いた た土地での良 良好な生活環 環境に結びつ つく、競争力 力のある経済 済基盤 として てのバイタリティーを提 提供している る。パリ郊外 外に位置する る同県は、ロ ロワシー・シ シャル ルドゴール空港の の存在により り経済的な利 利益を得てい いる。 ズ経済振興委 員会)は、19 973 年以来、 、当県への進 進出を望む企 企業の CEEEVO(ヴァル・ド・ワーズ ための の活動を行っ っている。当 当委員会の役 役割は、以下 下に挙げる 4 つの重要方 方針に基づい いてい る。① ①ヴァル・ド ド・ワーズ県 県および県の 企業に、国際 際社会への扉 扉を開く。② ②当県の産業 業的特 性を強 強化する。③ ③企業家。研 研究者、教師 師間のネットワークを向 向上させる。 ④県内の各 各地域 をさらに多様化す する。そして てこれら全て ては、ひとつ つの方針に基 基づいている る。当県にす すでに する、または はこれから進 進出する全て ての企業のた ために、その の活動を簡素 素化すること と・企 存在す 業活動 動をシンプル ルに・企業の の受け入れと と、企業への のアドバイス スや支援・経 経済情報の管 管理・ 県の経 経済推進活動 動・企業の進 進出に対する る支援・輸出 出支援などを を行う。テク クノポリスの の認証 を受けた経済活動 動地区である る。(パンフ フレット「ヴ ヴァル・ド・ワ ワーズ、その の技術的特性 性と世 開かれた扉」 」より) 界に開 59 ダータゴーラ ラの概要 (2)ダ 非営 営利(NPO)の の資格をもっている。5 つの関係団体 体がパートナ ナーシップ公 公的な情報を を提供 してい いる。空港周 周辺の産業を をとりまく地 地域の環境、国際的位置 置をしめてい いる。パリの の北西 に位置 置している。 。パリ地域は は 8 つの県 があるパリもその中の県 県。空港は、 ロワシー・ ・シャ ルルドゴール空港 港、ブルジャ ャー空港、経 経済活動専用 用のシェルポ ポトリ空港の の 3 つある。こち 地域の若い県 県で、人口 116 1 万 5000 人うち、25 歳以下が 36 6%を占めてい いる。 らの地 経済 済再生計画地 地域、生活地 地域、2 つの の自然公園、自然公園は面積の 60%を をしめている る。 3 ヶ所 所の経済活動 動地域がある る。パリに近 近い周辺地域 域、シャルルドゴール空港 港は、利用は はヨー ロッパ パ第 2 位、商 商業活動は第 第 1 位、新幹 幹線の駅 2 つあり、3 つ つの の高速道路が が入っている る。交 通インフラが発展 展して利便性 性ある。 済活動は、工 工業地域では は中小企業・ ・零細企業が が多い。国際 際空港周辺は は 850 社ある る。こ 経済 ちらの のインフラは は国際化と関 関係しており り、大阪とも も 25 年前から ら経済交流が がある。テク クノ・ ポリタ タンの活動が がある。 今後 後、130hha の経済活 活動地域の開発 発が計画され れており、従 従業員がどれ れくらい占め めてい るのか か(地図)をも もとに説明。国際企業は は多くあり、輸出企業は は、2000 あり り、日本企業 業も 65 社あり 3 位。合 合衆国、ドイツ、日本、 ベルギー、中国の順。県 県内のいろん んな所に、日 日本進 ートナシップ プを取って行 行きたい。 出する企業とパー 論から、もう少し経済活 活動、県の再 再生計画につ ついての報告 告をしたい。 総論 (3) )ヴァル・ド・ワーズ県 県の経済開発 発 2つ つの県、パリ リを中心に近 近い方の県、センタニーズ県、パリ県 県、さらに大 大きな構成の の地域 に入る。県の南の の方が経済活 活動が多い。 の方の県の経 経済開発地域 域を立ててい いる。経済開 開発のエイジ ジェントの役 役割は、進出 出して 私の くる企 企業に対して てアドバイス ス、自治体の のアドバイス ス、戦略的と という経済計 計画に対して て県と して説 説明する権限 限を持ってい いる。 60 に、経済再生 生政策を立て た。工業が専 専用していた た古い工業地 地域に、新し しい経 県も 10 年前に 境を整備した た。今までの の古い産業を を新しい力に にしていく。1998 年に経 経済再生政策 策を立 済環境 て、新 新しい経済活 活動をする。この 10 年 年計画、2 つの の段階がある る。第 1 は、 診断。第 2 は、 再生プ プログラムを を実行して行 行く。1ha に 1 万 5500 ユーロ、全体 体の 75%を県 県が支援する る。地 方は全 全体の 25%(1 坪 100 万円 円)を支援す る。こうした公的な支援 援を非営利団 団体、自治体 体、公 的機関 関が進める。 。 経済 済活動の運営 営は初めての の制度。4 つ つの点につい いて基準で検 検討する。① ①経済活動を再生。 ②経済 済環境の評価 価。③地域経 経済活動の新 新しい戦略に になるか。④ ④経済活動の の運営・効果 果。こ の検討 討を基に整理 理・分析する る・診断の内 内容・対策となっている。経済環境で では、公的道 道路、 標識、 、廃棄物の処 処理も重要な な検討材料に になっている る。 新しく再生され れるような開 開発では、通 通信、公的な な連絡なとも も検討される る。最終的に には、 取得できるこ と。 ISO(99001・140000・18000)取 再生 生計画は、第 第 1 段階で診 診断を完成。 。第 2 段階で で再生計画工 工程表を作成 成し、必要な な費用 を調査 査して進める る。費用は、県・地方が が負担する。 経済 済再生地域は は、県の東部 部の空港周辺 辺と南地域に に再生地域は は多い。北部 部も少しある る。都 市化している地域 域で経済活動 動が活発。大 大きな自然公 公園が占めて ている地域も もある。経済 済再生 は 60 の経済 済活動が完了 了している。 10 年間で、診断 47 万ユ ユーロ、工事 事 700 万ユー ーロを 政策は 負担した。県・自治体の負担 担は大きいが が数年間の予 予算計画で、経済活動に にアクセスし してい る。 動。新しいガ ガバナンス、企業 20009 年から 20019 年の 10 年間に、よ り競争力のある経済活動 の参画 画をすすめて ている。これ れからの 10 年 年間は、企業 業に運営に参 参加し、具体 体化、安全、環 環境・ 廃棄物 物処理、食堂 堂、託児所設 設備などで、 企業に運営 営に参加を求 求めている。 10 年計画の成功は、入って てこの 10 年 年計画では、入ってくる企 企業、大企業 業・中小零細 細企業 公平な態度で で診断を行う。この再生 生計画は、斬 斬新で、新し しいものづく くりとすでに にある にも公 企業を再生する。 。非常に大き きなプロジェ ェクトと違っ って、日常的 的・働く人に に必要なもの の。人 活に実際に必 必要な計画を を進めている る。この政策 策では、企業 業のネットワ ワークも有効 効に活 の生活 用して ている。 経済 済再生活動地 地域では、入 入ってく る企業 業がより力を強めていくように 高め る相乗効果を進めている。企業 協力も一つのアソションである。 間の協 整備 された地域に入れる環境 境、廃棄 パーキングなど。他方では、テ 物、パ クノ ポリタンの表 表示(ラベル ル)を求め って自治体も も来る。 て入っ 61 《質疑応答》 質問①(三浦): 若い人が多いことが強調されていたが、雇用・住宅政策・保育所設備が あるのか。 回答①: 非常に難しい長期の雇用計画。若い人が住んでいるが、社会住宅の設立、各種 のサービスが必要。空港・東部の経済活動地域はあるが、雇用に必要な資格をもっていな い。研修制度、公共交通機関など長くしんどい進めでいる。研修制度、高等教育、託児所 設備はある。パリに次いで高等教育が進んでいる。大阪への学者・学生視察も計画されて いる。 回答①-2: この地域は、すでに再生整備も工事も完了した地域です。鉄道のアクセスは 非常によい。パリの 2 つの駅に 20 分でいける。住むことに必要な住宅、社会住宅、学校、 託児所など生活に欠かせないものはある。 質問②(大貝): 回答②: 経済活動と環境対策については 企業に新しい環境を提供する。企業と雇用を守る。新しい経済活動、県内・県 外も含めて出て行かないように対応している。エコについては、廃棄物処理、より環境保 護、公的道路整備している。 回答②-2: 今日一日は、経済変化の大きな例を取り上げた。2 つの再生計画を挙げた。① ロワシー地域、労働環境改善し、新しいものを創りながら、既存のものを再生していく。 ②セーヌ・サンドニ地域、今まで、そこで住んでいて空洞化した経済再生地域では、新し い工業団地に着目していく。日本でも経済変化で大きなテーマーになっているのではと思 っている。 質問③(三浦) : 1980 年代に衰退した工業の業種はなにか。また新しく起こった業種は衰 退した業種の中から生まれたのか。 回答③: 機械工業が衰退した。新しい機械工業ができた。この地域は、単一ではなく多 面的な業種構成であったので、非工業化の影響はあまり受けなかった。 回答③-2: クラスターは 9 件ある。医療、デジタル、複合システム&ソフトウェア、自動 車、航空、金融。ゴムなどある。いろんな研究、教育、実験期間もある。 62 体国際化協会 会パリ事務所 所 5) (財)自治体 1 :00 訪問日:2010 年 9 月 29 日 10:00~12: 者:所長・鳴 鳴田謙二氏、所長補佐・ ・安藤洋行氏 氏、次長・関 関 清一氏 応対者 記録者 者:三浦純一 一 (財 財)自治体国 国際化協会パ パリ事務所に には、リール ル広域圏大都 都市共同体の の視察をセッ ットし ていた ただいた。ま またこの日午 午前中、クレ レア・パリ事 事務所でフラ ランスの地方 方制度につい いてレ クチャーを受け、 、リール広域 域都市圏の概 概要について ても説明いた ただいた。そ その内容は以 以下の の中に取り込 込んで報告に に替えたい。 記録の 63 都市圏大都市 市共同体 6) リール広域都 1 0 訪問日:2010 年 9 月 29 日 14:30~17:2 者:リール広 広域都市圏大 大都市共同体 体 応対者 Ludivine DEREUMAUX(CChef de service,Intelligeence et Strattégie économiques) ROSA(Chef dee service adjooint, Intelligence et Straatégie économiques) Pierre LAR 他1名 首都圏国際開 開発局 リール首 Agencce pour la Promotion International dde Lille Métropole Hiromi AD DANT-ARAÏ(C hargée de Mission M Jap pan) Thomas KI IMMERLIN(In génieur Pro ojets) 記録者 者:三浦純一 一 1.リール側プレ レゼン概要 )あいさつ (1) ne DEREUMAU X 氏) (Ludivin リー ール広域都市 市圏大都市共 共同体19(以 下、 「リー ル広域 域都市圏共同 同体」と略記 記)を訪問い いただき感 謝申し上げる。私 私たちからリ リール広域都 都市圏共同 概要、産業・取引状況、テキスタイ イルのこと 体の概 につい いて説明する る。同席する るのはリール ル広域都市 圏共同 同体から 3 人、外国企業 人 業の誘致を担 担当してい る略称 称アピム APPIM(Agence e pour la PPromotion Interrnationale de Lille Métropole)か から 2 人、 繊維の の専門担当が が 1 人である る(彼は途中 中から参加 する) )。 )リール広域 域都市圏大都 都市共同体の の概要説明 (Ludivine e DEREUMAUXX 氏) (2) リー ール広域都市 市圏共同体は は 1966 年 122 月 31 日法に基づいて設 設立された200。首長は 20 008 年 85 のコミューン の ンで構成。総 総人口 110 万 万人(大阪市 市の約 0.4 倍) 倍 、総面積 6 611 平方 km m(大阪市の の約 3 倍)。人 人口規模では は、パ リ、リ リヨン、マル ルセイユに次 次ぐ4番目に に大規模な共 共同体であり、ベルギー国 国境まで約 10km という立地から、 、ベルギーの の諸都市と共 共に国境を越 越えたリール生 生活圏(人口 180 万人)を を構成 してい いる。(クレ レア・パリ提供 供資料より) 20 大 大都市共同体 Commuauté urbaine は 1966 年 12 月 31 日法で ではじめて制 制定された。コミ ューン間広域行政 政組織の中で で最も統合力 力の強い形態 態。都市計画 画、居住区及 及び経済活動 動区の 整備、 、教育施設、 、都市交通、 、下水設備、 、家庭ゴミ、道路及び駐 駐車場など多 多岐にわたる る権限 を持つ つ。都市化し したコミュー ーンを対象と とし、共同対 対内に 50 面人 人を超える人 人口を有する ること 19ノー ール・パ・ド ド・・カレ州ノ ノール県リー ール市を中心 心とした 64 のマルチーヌ ヌ・オーブリ リーMme Mart tine Aubry である。共同 で 同体の議会に には構 からリール市長の 会から選出さ された 170 名 名の議員がお おり、内 10 名が筆頭助 役をしている21。 成コミューン議会 体の職員は約 約 2300 名で で、その内 800 名が経済担 担当である。予算は約 144 億ユーロ、財源 共同体 は半分 分が企業から らの職業税、他に交通関 関係の税もあ ある。 共同 同体の権限は は多岐にわた たっている (注 2 参照) から 2014 年に にかけた計画 画で優 。2008 年か 先して ているのは交 交通、都市計 計画、住宅、 、経済開発で である。経済 済開発は新し しく加わった た権限 の一つ つで、2002 年から取組 組が始まった 。ここ数年厳 厳しい経済環 環境にあるも もとで、関係 係者す べてが が力を合わせ せて対策を行 行うべきだと というポリシ シーでやって ている。 リー ール広域都市 市圏共同体、自治体、商 商工会議所、大学、企業 業、労働組合 合など 9 者が が参与 して広 広域都市圏経 経済開発計画 画を策定した た(2009 年) 。そこではリールが地域 域経済発展の の機関 車にな なり、国際的 的で、魅力的 的で、革新的 的で、責任あ ある大都市に になることを を展望している。 その のために4つ つの重点戦略 略を定めた。 。第1は、広 広域都市圏の の企業にグロ ローバルなサ サービ スを行 行うこと。第 第 2 は、企 企業が必要と する土地や施 施設を量・質 質において適 適切に供給す するこ と。第 第 3 に、6 つの重点業種 つ 。①情報通信 信技術、②物 物流、遠距離 離販売、③バイ イオ・ を指定した。 衛生・医学、④第 第三次産業、 、⑤環境・エ エコロジー、⑥テキスタ タイル(私た たちの地方で では忘 はいけない産 産業)である る。第 4 は、 、工業も農業 業も第 3 次産 産業もバラン ンス良く発展 展させ れては るとい いうことであ ある。 では は次に 4 大戦 戦略がどのよ ように進んで でいるか、お お話しする。 を主な な設立用件とする。財源 源は単一職業 業税方式を原 原則とするが が、権限に対 対応した清掃 掃税等 を賦課 課できる。2 2010 年 1 月現在 16 団体 体を数える。 (クレア・パ パリ事務所 「フランス地 地方行 政事情 情」より) 21 共 共同体の執行 行部は議員によって構成 され、リール ルの場合は議 議長(マルテ ティーヌ・オ オブリ ー女史 史)と 10 名の筆頭助役 名 役、22 名の助 助役、14 名の の執行委員と となっている る。 65 (3)リール広域都市圏国際開発局(APIM)の事業説明 リール広域都市圏国際開発局(APIM)22は (Hiromi ADANT-ARAÏ 氏) 1980 年代にこの地方の産業が衰退し、復興 を取り組みはじめたときに設置された。企業誘致を行っている。公共の団体であるから、 サービスは無料で、次のようなことを行っている。ⅰフィジビリティ調査と現地経済環境 の説明、ⅱオフィス、工場、倉庫などの斡旋、ⅲ(行政支援の申請など)諸官庁への手続 き、ⅳ資金調達の斡旋、ⅴ従業員募集、研修についてのアドバイス、ⅵ関連業界のコンタ クト先の紹介、ⅶ現地への家族受入のためのアドバイス、である。 事業の財源はリール広域都市圏共同体が 50%、あとの 50%23がグラン・リール商工会議 所24からである。 リール広域都市圏は非常に地の利がいい。パリから 60 分、EU 本部のあるブリュッセル まで 35 分、ケルンまで 2 時間 35 分、アムステルダムまで 2 時間 40 分、そしてロンドンま では 80 分である。 リール市は CO2 の削減に成功しており、第3次産業の投資拠点に最適であるという調査 結果が出されている25。列車、バスで移動する人が多いが、電気は原子力、バスの燃料はバ イオ・ガス26ということで CO2 の使用が少ない。 我々は「競争力が強い経済の中心である」「動きつづける大都市圏である」「人に優しい大 都市圏である」という 3 点を企業誘致のセールス・ポイントにしている。以下それぞれのポ イントに沿って説明する。 ①ポイント1 -競争力の強い経済の中心- ヨーロッパで 15 番目の広域都市圏である。人口はフランスとベルギーにまたがって 220 万人をかかえる27。労働人口は 90 万人28。15 の国際的グループの本社所在地であり、社員 1985 年の設置。実質的な運営は 9 人の専門スタッフ(フランス人 8 人、日本人 1 人)が 担当地域に分かれて行っている。APIM の理事会は、地方議員および企業代表者各 12 人の 計 24 人体制であり、リール市の助役(経済開発担当)が同理事会に入っていることで、リ ール市と APIM の関係をより強固なものとしている。(1995 年クレア調査より) 23 提供資料によるとノール県議会からも出資があると記載されている。 (そうすると商工会 議所と県で 50%か)。クレアの 1995 年調査によると、当時の予算は、リール商工会議所 (45%)、リール都市共同体(45%) 、北フランス経営者連盟(10%)から出資され、年間 総額は 800 万フ ラン(1 億 6000 万円)前後であった。 24 1966 年にリール、ルーベー、トゥルコアンの三つの商工会議所が合併した。2000 年時 点で約 2 万 8000 社の会員企業を擁する。(2000 年クレア調査による) 25 アンストアンドヤング社による研究報告(2008 年 11 月) 。カーボン・フットプリントを 基準にして、第3次産業のヨーロッパ・センター進出にどの都市が適しているかを比較し たもの。アムステルダム、ブリュッセル、ケルン、リール、ロンドン、パリが選ばれた。 26 市内運行の約 100 台のバスがバイオ・ガスで走行している。 27 フランスからベルギーにまたがって、両国共同の運営・調整機関をもつ「リール・コルト レイク・トゥルネ・ヨーロッパ広域都市圏」が形成されている。リールは隣接するベルギー 側の都市とともに、12 世紀から 17 世紀にかけて、ネーデルランドのフランドル都市群の一 員であった。現在でも国境を越えて都市が連担する「コナベーション」の典型例とされる。 22 66 500 人以上の企業の本社が 80 ある。また 1 億人の消費者が半径 300 ㎞以内(ロンドン、ア ムステルダムなど)にいる。 ①-1 富と付加価値の生産地である 50 万人がリール広域都市圏で働いている。フランス第 3 の工業地帯であり、パリを除い て対仏投資でフランス第 2 の都市である。国際的に知られるフランス第 2 の広域都市圏で あり、国内外の国際的大企業が多数ある。貿易ではフランス第 3 の地方である。 ①-2 5 つの政府認定クラスターがある フランスでは約 70 のクラスターが国に認定されているが、その内の 5 つがこの都市圏に ある。 第 1 はトレードインダストリー( PICOM ) このクラスターはフランスとヨーロッパの巨大流通企業の意思決定センターを設置する ことが目標である。ここは昔、テキスタイルで興隆したが、地の利がいいということで流 通業に業種転換した。 リール広域都市圏にはこのセクターに属する40社の本社があり、これらの企業は世界中 の1万ヶ所以上に出店し、約30万人を雇用している。たとえば持続可能な発展を目指すホー ムセンターのケバンKbane、創造的レジャーのアトリュームArtrium、食品電子商取引のク ロノドライブChronodrive.comといったところが創造的ビジネスをしている。また、農場だ が食品を販売しているデュ・サLa Ferme du Sart、食品販売のカレデアールCarre des Halles など、新しい流通コンセプトが実験されている。 また通信販売ではヨーロッパの中心になった。219社が集まり2万人を雇用しているが、 これはフランスの通信販売業の雇用全体の70%である。どんな会社があるかというとトゥ ワ・スイス 3 Suisses International(衣類一般)、シリウスCyrillus – Groupe Redcats (非常に上質の女性・子供服)、 ダマールDamart Serviposte( 保温下着)などである。 それからいくつかの大型流通企業がある。ハイパーマーケットのオーシャンAuchan、カ ストラマCastorama(ホームセンター)、ダマールテックスDamartex(衣類)、デカタロン Décathlon – Groupe(スポーツ用品)、キアビィKiabi(衣類)、女性用衣類としてはピン キーPimkie、プロモードPromodがある。 これまで述べたような産業が、新しい関連産業を生み出している。たとえば、印刷産業 の重要拠点になった。フランス最大の郵便センターもできた。170のコールセンターに1万 2000人が就業し、顧客関係でフランス第2の地方になった。ダイレクト・マーケティングで 唯一の専門拠点があり、関連した養成センターができている。 第2はアイ-トランス(I-Trans) 革新的な陸上輸送システムのクラスターである。鉄道、自動車、物流、インテリジェン ト交通システムの分野で未来の持続可能輸送システムの創造という大きな目標をめぐって 製造業と研究、教育関係者を結集している。 28 日本から見れば少ないが、ヨーロッパでは多いと注あり。 67 この地方は鉄道でフランス第 1 の地方中心地になっている。活躍するパートナーとして は、鉄道テストセンター(CEF)、鉄道産業協会(AIF)、欧州鉄道機関(AFE)がある。ヨ ーロッパにおける高速鉄道促進の 7 社連合であるレール・チーム Railteam の拠点もある。 パリ以外では、TGV 便数が 1 位で、乗客数は年間 900 万人。TGV 停車駅はリール・フランド ル駅(利用者数 5 万人/日)とリール・ヨーロッパ駅(この駅から TGV でフランス各地、 またはユーロスターで英国に行く利用者は年間で 575 万人)の 2 つがある。 また皆さんご存じだが、1983 年に自動運転軽量車両のバル VAL が運行を開始した。自動 運転メトロとして世界の基準となるもので、大阪市も視察に来た。ただ大阪の利用客数か らすると「車体がスリム」ということであった。それからヨーロッパ最大の TGV 運転士養 成センターなど、養成施設が整っている。 第3はアップ-テクス(UP-tex) 伝統産業であるテキスタイルのクラスターである。先端繊維材料、多感覚性、マスカス タマイゼーション-これは後ほど説明があるので省略するが、地方レベル、全国レベル、 国際レベルで、科学的、技術的な研究を進めている。たとえばルーベーにある国立高等繊 維技術・産業大学ENSAITはフランスの繊維分野のエンジニアの80%を養成しており、日本 の信州大学とも提携している。 第4は栄養摂取-健康-高齢化(Nutrition-Santé-Longévité) このクラスターは研究界とバイオ・健康・農産物加工セクターの産業界が歩み寄った成 果である。リール近辺には健康食品と機能食品の処方を考える研究者が650人いる。フラン ス第1のジャガイモ生産地であり、食品の質と安全でヨーロッパ唯一のクラスターというこ とで注目を集めている。リール・パストゥール研究所は微生物学、品質、食品衛生、栄養 摂取で活躍している。 国際的な企業ではボンジュエルBonduelle( 野菜の加工と缶詰)、マッケインMc Cain(ジ ャガイモ加工)、ロケット Roquette Frères(でんぷん質食品)、世界の4分の1の酵母を 扱うルサーフル社 Société Industrielle Lesaffre(酵母、添加剤)などがある。 またこの地方には医療関係企業が800社あり、その内の80%がリール広域都市圏にある。 リール地方大学病院は職員数12,500人でヨーロッパ最大の大学病院である。リール・パス トゥール研究所は職員数1,100人で、ノーベル賞受賞者が何人も出ている16の医療研究チー ムを有している。リーダー企業としてはアニオス研究所Anios laboratoires(消毒剤、殺 菌剤)、バイエルシェリング社 Bayer Schering Pharma(製薬)、ジェンフィGenfit(バ イオ医薬品)などがある。 第5はモード(MAUD) 持続可能な使用のための材料と応用のクラスターである。企業数は270社(従業者9,500 人)である。テーブルウェア、印刷産業、包装・容器を3つのターゲット市場にしている。 その他 この地方はフランス第2の物流センターである。サービス業の企業数は1,200社。この地 68 方で5万6000人を雇用している。河川港であるリール港はパリまでつながっているが、ロッ テルダム、アントワープなど北ヨーロッパの大港湾施設の後方基地といわれ、フランス第3 の位置にある。また英仏海峡トンネルのアクセスもよい。英国、日本向けのエビアン、ボ ルヴィックといったミネラルウォーターはここの物流センターから出ている。 また未来の情報通信技術に力を入れている。企業研究所はⅰ情報システムの安全、ⅱ非 接触テクノロジー、ⅲマルチチャンネル通信、ⅳ知のエンジニアリング、ⅴ汎用プログラ ムの設計、インテグレーション、編集、ⅵヴァーチャルリアリティ、強化現実、3Dといっ た専門分野を担っている。リーダー企業としては、アンカマAnkama(ビデオゲーム制作) などがある。ここはマンガの出版ではフランス第1で、30人の規模から300人に成長した。 さらに第3次産業ではヨーロッパ規模の中心地である。消費信用とリモート金融サービス でヨーロッパ第1位。金融業で6万2620人を雇用するフランス第3の地方クラスターとなって いる( 出典:European cluster Observatory 2007)。 会議産業では、リール広域都市圏には会議・セミナー会場が126、会議室が532ある。国 際レベルのホテルが114、室数6,927(4つ星と4つ星デラックスホテル6:室数463、3つ星ホ テル20:室数1 725)である。2004年のアテネオリンピックに立候補したが、ホテル数が足 りないということで落選し、それから力を入れるようになった。またこうした施設を背景 に、リール・コンベンション・ビューローが、イベントの運営者に無料アドバイスサービ スを行っている。 ①-3 国際的レベルの研究、巨大経済部門のパートナー 国際的にレベルの高い3つの研究テーマである情報通信科学技術、生命科学技術、材料と 化学を軸に、技術革新プラットフォームをつくっている。パリから1時間で来られるので、 同レベルのノウハウを提供できるし、物が集まるので材料を扱うのに適している。 ①-4 すべての学問分野が揃った質の高い教育 リール広域都市圏はフランス第2の大学区である。エンジニア、繊維と化学、商業・マー ケティング・経営、視聴覚・建築・ジャーナリズム・政治学といった分野で人材を育成してい る。また子どもに対する多言語教育も充実している。 ②ポイント2 -動きつづける大都市圏- ビッグ・プロジェクト この地域にはたくさんのビッグ・プロジェクトがある。いくつか例をあげると、ヴィルヌ ーブ・ダスクVilleneuve-d'Ascq29とルゼンヌLezennes30にまたがる大競技場が2012年から使 えるようになる。アール・ブリュットArt Brut(生の芸術)31のコレクションではフランス 人口 6.2 万人(2004 年)。 人口 3300 人(1999 年)。 31 1945 年にフランスの画家ジャン・デュビュッフェが提唱したカテゴリー。芸術 Art とワ インなどが生のままであることを表すブリュット Brut という語を組み合わせたもので、正 規の美術教育を受けていない人が創作した絵画や造形をさす。障害者の芸術作品を含むが、 29 30 69 1番のラ・エムLaMが2010年の9月から拡張・再開した。 フランス第3位のオフィスビル市場 リール広域都市圏では第3次産業や情報通信技術、医療関連、科学技術など、産業ごとに 5つのオフィスビル地域を供給している。その総面積は350万~400万㎡になり、セクター間 の配置は地理的にも建築的にも補完的になっている。 ③ポイント3 -人に優しい大都市圏- 絶えず見直される生活の術 20の美術館、その内6つは文化省が直接管理、15の劇場とコンサートホール、80の映画 館がある。リール広域都市圏が管理する1200㌶の緑地を一般に開放し、湖、植物公園など の憩いの場所にしている。したがって、休日には家族揃って美術館に行く、演劇に行く、 リール国立管弦楽団に行く、あるいは昔のプールを美術館にしたラ・ピシンヌに行くなど、 家庭を大事にできるといった、人に優しい街である。また日本人が設計したルーヴル美術 館のランス分館32もできる。 またブラッドリーといって、9月の第1週にリールの町中が露天市になるイベントがある。 この日はムール貝を食べるのだが、北フランス、ベルギー、オランダ、パリから200万もの 人々がいるモノいらないモノを持って集まる。このようにみんなが生活を楽しむというこ とをしている。 -日本企業の進出- 以上のような取り組みの中で、たくさんの日本企業が進出してきた。YKKは 1960 年代 末から来て、最初は言葉に不自由したが頑張った。次いでブリジストン、カルソニック、 オグラ、食品関係では味の素、最近ではトヨタの進出によってマルヤス工業、インターネ ットを見て進出を決めた青山眼鏡(鯖江市)など。この地方には約 40 社の日本企業が進出 し、7000 人の雇用がつくられている。 日本企業の受入のために、日本人学校も1988年に開設している。10年にわたって運動を つづけてきた。現在、リールと北フランス在留の日本人は日本人会をつくって、フランス 人との経済的・社会的・文化的興隆を行っている。 リールはパリやリヨンより低コストで質の高い生活を手に入れることができる。多様な 可能性の街である。 それに限定されたものではない。英語でアウトサイダー・アートともいう。 32 2003 年にフランス政府は地方分権の一環としてルーヴル美術館の分館をつくることを 決定。立候補した 6 都市の中から、リールにほど近いランスが選ばれた。昔の炭鉱の跡地 に 2012 年オープンする。ちなみに元からあるリール美術館はフランス第2の規模。 70 )輸出入の状 状況(Thoma as KIMMERLINN氏) (4) 輸出入につい いてキーにな なる リール地方の輸 。経済環境は は数年前より り厳し 数字を説明する。 で、今までの の活況ぶりと とは異 くなっているので に断っておく くがこれはリ リール なっている。先に してのデータ タで 広域都市圏よりも広い州とし はノール・パ・ド・カレといい、 ある。州の名前は リール広域都市圏はその40 %を占めている。 ール・パ・ド ド・カレ州の の輸出 最初に、ⅰノー 位であること と、ⅱEUが多いが、 はフランス第3位 について、ⅲ ⅲ医薬品が工 工業製 貿易の国別比率に 品の輸 輸出減少を補 補っているこ こと、④輸入 入は2009年に に急減したこ ことを説明す する。 ール・パ・ド ド・カレ州の の輸出はフラ ンス第3位 ①ノー ノー ール・パ・ド・カレ州の の輸出はパリ リ地方のイル ル・ド・フラン ンス州、リヨ ンを中心とする ローヌ ヌ・アルプ州 州に次いでフランス第3位 位である33。2009年の輸出額は282億 億ユーロであ あった 3 が、前 前年比-17.66%という急 急激な落ち込 みであった34 。しかしそ それはフラン ンス全体の-1 17.7% と同程 程度である。 。 20008年から20009年の輸出の の変化を、フ フランスの上 上位10州につ ついてみると 、最も減少幅が 小さか かったのは航 航空機産業355が盛んなミ ディ・ピレネ ネー州でマイ イナス3%台、 、次がイル・ド・フ ランス ス州でマイナ ナス13%弱、サントル州 州、アルザス ス州、ノール ル・パ・ド・ カレ州、オ オート・ ノルマ マンディ州が がマイナス1 18%前後であ ある。 易の国別比率 率 ②貿易 20009年の輸出で ではEUがトッ ップになる。 アジアは5. .1%しかない いが、その中 中心は中国で であっ た。上 上位10カ国を を見ると、1 1位ベルギー ー(4.7%)、2位ドイツ(3.8%)、3位 位中国(2.5%)、 4位イ イギリス(1.7%)、5位ス スペイン(1.66%)、6位オ オランダ(1.5 5%)、7位イタ タリア(1.4%)、 それか から日本が88位で1.3%、9位ノルウ ェー(1.0% %)、10位ロシ シア(0.9% %)である。 輸入 入では1位ベ ベルギー(6.2%)、2位ド ドイツ(3.7% %)、3位イギ ギリス(2.22%)、4位イタリ ア(22.1%)、5位 位スペイン( (2.0%)、6位 位オランダ(1.5%)、7位 位スウェーデ デン(1.0%)、8 位アメ メリカ(0.99%)、9位ポ ポーランド( 0.6%)、10位 位中国(0.4 4%)と近い い国が多くなって いる。 。 リー ール地方の対 対日貿易は、2007年が輸 輸出2億738万 万ユーロ・輸 輸入15億93111万ユーロ、2009 33 34 35 第 4 位はミデ ディ・ピレネー ー州。 ちなみにノール・パ・ド・カレ州の 2009 年輸入 入額は、前年 年比-18.3%で であった。 エ エアバス社がある。 71 年が輸出1億7163万ユーロ・輸入13億448万ユーロであり、およそ10億ユーロ以上の輸入超 過になっている。 ③医薬品が工業製品の輸出減少を補っている 医薬品がノール・パ・ド・カレ州の輸出産業のトップだが、他にも4つの主要な産業があ る。2009年には、輸送用機械が20.3%、金属および金属製品が16.2%、農産物と加工食品 が16.2%、化学薬品・香水・化粧品が12.9%であった。 ④輸入は2009年に急減した この地方は輸入に関してもフランス第3だが、2008年から2009年にかけて20.3%減少した。 金額にすると38.4億ユーロから30.6億ユーロである。 2009年の地域別輸入は、EUが89.6%、アジアが18.7%、EU以外のヨーロッパが8.9%、ア メリカが6.4%となっている。 2番目に、日仏貿易について、かいつまんで説明する。日本はフランスにとって12番目の 輸出国である。2009年から2010年にかけて、フランスから日本への輸出は20%増加した。 それに対してフランスは日本にとって21番目の国である。フランスの輸出では消費財が 40%を占めて多いが、日本に対しては17%でしかない。それに対して日本から輸入されて くるのは、機械、電気製品、情報関連になる。 3番目に、リール地方、リール広域都市圏に対する外国からの投資をお話ししたい。ノー ル・パ・ド・カレ州はイル・ド・フランス州、ローヌ・アルプ州、プロヴァンス・アルプ・コ ート・ダジュール州、ミディ・ピレネー州についで5番目の位置にある。2000年から2008年の 平均では、年間46社が進出し、2730人の雇用がつくられている。州の雇用全体に占める外 国企業の比率は1.2%である。 リール広域都市圏には500の外資系企業が入り、3万5000人の雇用がつくられた。日本と いうことに絞れば、16の企業(州では40)と900人の雇用(州では7000人)となっている。 トヨタの自動車工場はここから40㎞のところだが、3000人の雇用と9億ユーロの投資で、州 としては大変大きな力を得ている。日本企業の進出分野は、商業、自動車産業、製造業、 情報産業といったところである。先ほどの紹介にもあったが、最初に進出してきた日本企 業はYKKであった。以上で私の説明を終わる。 (5)リール広域都市圏共同体の雇用動向と繊維産業の状況(Ludivine DEREUMAUX氏) 私からは、まずリール広域都市圏の産業別雇用動向をお話しする。その後に繊維産業に ついて少し話す。 ①減少する製造業と伸びる3次産業 2007年現在で、リール広域都市圏の民間部門で働いているのは37万6666人である。いろ いろな産業があるが、自動車工業が突出している。 72 2000年から2007年にかけて雇用は増えた。増えた中心は第3次産業である。2007年には、 第3次産業の比率は2000年から6ポイント上昇し79%になった。企業に対する全般的サービ ス、コンサルティングなどが活発になり、29万8112人を雇用する。建設も1ポイント上がっ た。全体の7%を占め、2万7418人を雇用している。 減ったのは製造業で、2000年から2007年にかけて、工場の閉鎖、アウトソーシング(ア ウトソーシングという点では情報産業や金融産業で最も大きな影響をもたらした)、工場 の広域都市圏外への移転などによって、2万403人の雇用が失われた。その結果、比率は7 ポイント下がって14%に、雇用数は5万1055人になった。製造業の雇用は42%が紙とかテキ スタイルで占められており、大きなものではない(中小企業が多い)。2000年から2007年 にかけて消費財の製造はマイナス5%であった。 リール広域都市圏では優良な9つの産業で雇用の半分を占めている。2006年のデータで は、1位・企業関連サービス(6万9464人)、2位・商業・流通(3万8578人)、3位・金融・ 証券(1万8808人)、4位・物流(1万4585人)、5位・バイオ・健康(1万1489人)、6位・テ キスタイル・アパレル(8829人)、7位・農産物加工(7383人)、8位・印刷(5435人)、9 位・文化産業(1192人)となっている。1番大きな変化は、1999年から2006年にかけてテ キスタイル・アパレル産業の雇用が9%減少したことである。 ②大転換期の繊維産業 こちらでは繊維産業が雇用の2.4%を占めている。しかし繊維産業は変化の真っ最中であ り、いろいろな問題を抱えている。たとえば、紡績・製織・仕上げ部門の雇用は繊維産業の 45%を占めるが(4009人の従業員と88の事業所)、1999年から2006年にかけて10%ダウン している。創業が少なく企業の消失数が高い。繊維製品製造業、アパレル・毛皮産業も同様 の傾向である。伝統的な産業であるのだが、中国からの繊維産業の進出、ハイテク産業重 視によるテキスタイルの軽視(それはヨーロッパのテキスタイルについても同じことが言 われるが)が背景にある。 それに追い打ちをかけるように2008年からの金融危機が拍車をかけた。対策としてはa: 教育・研修を強化すること、b:イノベーションを進めること、c:テキスタイルのターゲット を変えていくこと、d:特に付加価値をもった生産を進めること、を戦略として企業ともど も追求している。 先ほど繊維産業は弱くなってきたと言ったが、まだ伸びる力は持っている。フランスで の繊維産業市場は40億ユーロある。そこで、リール広域都市圏ではハイテクのテキスタイ ルをめざして、画期的なプロジェクトにするためにR&D(研究・開発)を推進している。そ の力はこの地域にある。すなわち、a:地理的な条件がいい、b:テキスタイル研究の77%を 担っているテクニカル・バレーがある、c:60社が集まっている企業団体も強みの一つであ る、d:伝統産業であったことから蓄積されたノウハウがある、e:テキスタイルに対する技 術性・創造性が高い、f:テキスタイルに関する研究所・教育施設が多く教育環境に優れて 73 いる、といったことである。以上のことから研究・開発に関して優れた環境にあるといえる。 ここまで、繊維産業の状況についてかいつまんで話してきたが、次にリール広域都市圏 が繊維産業に対してどのような支援を行っているのかについて話してもらうことにする。 (6)繊維産業に対する支援策(カストラン氏) 私はカストランと言う。リール広域都市圏でテキスタイルを担当している。 我々の支援は2つの軸から成り立っている。それはイノベーションとクリエイションで ある。我々はイノベーションとクリエイションに関するツールを開発した。 まずイノベーションであるが、ヨーロッパ革新的繊維センター(CETI)のような、基盤 整備の大プロジェクトを支援している。繊維・アパレル業界の開発能力を強化するために、 ①イノベーションと創業を支援するインキュベーション(Innotex)、②戦略的開発をする ためのユーラディットの組織化(Euradit)、③企業と研究者の連携を促進するために、ク ラスターの一つであるアップテックスとヨーロッパ単位のフュテックスの活用(Up-texと Futex)、④テキスタイルに対する世間の見方を変えるための先端領域の見本市ヒューロテ キスタイルの開催(Futurotextiles)、を行っている。見本市は3年おきで、次は2012年に 開催する。非常にハイテクなノウハウを展示することを目標にしている。 次にクリエイティブという点では、リールに創業する若い人のために、かれらのブラン ドが発展するように支援している。再整備地区に設立されることが必要で、生地や製法開 発のためのアトリエや工場を紹介している。再整備地区はメゾン・ド・モードと呼んでいる が、支援している若い企業は現在20~25である。 以上のようなことを、意図して、全てタテ割36の活動で展開している。つまり行政団体が 引き受けるのではなく、NPO37などの外部組織に機能や運営を委託することでクリエイティ ブな戦略が実現できるようにしている。 それから投資に向けて支援するのもリール広域都市圏の特徴である。第1に、個別企業に 対しては、設備投資したり、新しいプロジェクトを行うときに支援している。 第2に、拠点をつくって新しいゾーンを整備している。ゾーンはリール市北方のルーべ Roubaix38とトゥルコアンTourcoing39の間にある。広さは70㌶で経済活動と住宅がミックス されている。二つの町が選ばれたのは、100年以上にわたって栄えていた伝統的な繊維産業 が衰退したことによって雇用が大きな痛手をうけたからである。この拠点の中にはハイテ 36 日本での「タテ割」はヨコの連携がない弊害の代名詞であるが、ここで言う「タテ割」 は共通の課題で官民や国・地方が連携する意味で使われている。 37 アソシアシオン法にもとづくアソシエーションのことである。任意の民間ボランティア 的なものから日本でいう外郭団体的な法人まである。ここでいうケースは、後者に近い。 なお、準行政団体的アソシアンに対しては、公的資金に多くを依拠しながら会計検査の対 象外になることから、批判も出ている。 38 人口 9.6 万人(1999 年)。 39 人口 9.3 万人(1999 年)。 74 ク繊維企業も入っている。また先ほど話したヨーロッパ革新的繊維センター(CETI)もここ にある。 このセンターに対しては、財政負担がかなり大きいが、床面積1万2500㎡の建物に約2200 万ユーロの不動産投資をした。また2050万ユーロの設備投資を行っている。これは不織布 に対する設備支援で、ヨーロッパ最大級の一つである。現在工事中で、2012年春にオープ ンする予定になっている。以上で報告を終わる。質問があったらどうぞ。 《質疑応答》 質問①~③(宮川): 3点の質問をしたい。①バスに使っているバイオ燃料とはメタンガス のことであるのか?②また、こちらでは経営学を教えているということだが、経営学は本 来アメリカのものであって、ヨーロッパにはないと思っていた。その辺はどうなっている のか?③銀行や証券が多いということだが、リーマンショックの影響はどうだったのか? 回答①: パンフレットの9ページにあるが、有機物有効利用センターで有機廃棄物をバイ オ・メタンガス化して使っている。 回答②: フランスではエンジニアの学校が国際的にも強いのだが、商業関係のグランゼ コールGrandes Écoles40と呼ばれるエリート校等で経営学を教えている。またリールにはフ ランスのトップ5に数えられるエリート校41がある。 経営学ということではフランスの学校もヨーロッパ又は他の国に門戸を開いている。ま た国際的な競争力をつけるということでいくつかの学校が一緒にやっている。こうした商 業関係のエリート校は全て私立であるが、フランスでは公的教育機関である大学でも経営 学や商業関係の学問を学べるようにしている。 フランス政府の政策として、リール第1、リール第2といったように分散している大学を 総合化する方針が出ている。 回答③: 金融業が6つの重点業種に入っているのは、リールがこの地方の中心地である ことから、金融・証券企業が多いからである。しかし2008年の金融ショックの影響は、こ れまでのところ打撃的ではない。 リールに発達している大規模流通産業は消費者用のクレジットを開発している。このク レジットが購買力の低下を防いでいる面がある。金融とくに保険業はリール地区の中でも 40エリート養成高等専門教育機関である。フランスの高等教育機関は大学とグランゼコール の 2 種類ある。大学はバカロレアという資格試験に合格すれば希望の大学に進学できるが、 グランゼコールは、名門中高一貫校等にあるグランゼコール準備学級(2 年間)に属さなけ れば受験できない。したがって大学を卒業した後で準備学級に入り直す者も多い。合格す れば、国家公務員待遇(聴講官)となって俸給が払われ、卒業後は政・官・財・学のエリ ートとしての待遇が保障される。 41 1906 年にリール・カトリック大学内に設立された EDHEC 経営大学院 EDHEC Business School のこと。ヨーロッパのトップクラスのビジネススクールとされる。 75 主要な稼ぎ頭になっている。 リールの特徴であるが、家族経営の企業が多い。したがってパリや他の地区とちがって、 株式市場の影響を受けにくい構造になっている。 質問④(萩原): 持続的発展のカギは地域の中でいかにイノベーションやクリエイション を起こしていくかということである。そのためには企業自体がクリエイティブにならない といけない。先ほど旧歴史地区を案内していただいたが、素晴らしい文化・歴史が残って いる。(今さっきの)パンフの説明では「生活を楽しむ」ということがあったが、文化・芸 術の持つクリエイティブな部分を産業に結びつけるという政策を行っているのか? 回答④: おっしゃることはよく分かる。リール地方は数年前から文化振興に大きな投資 をしてきた。文化振興は経済に好影響をもたらす。第2のルーヴルを造るということ、ま た2004年の欧州文化首都42のとりくみも、もそうした背景から考えたことである。 特に欧州文化首都の取り組みではリールの都市イメージが大きく変わった。魅力的な都 市としてのリールのイメージを力として、より外に出て行きたいと考えている。上海万博 でもリールは独自のパビリオンを建てた。 テキスタイルという点では、植物性のものを使うとか、デザイン性の優れたものを使う とか、大衆向けの新材料を使うとかいったことが考えられている。先ほど2012年にあると 言った(見本市の)「ヒューロテキスタイル」は上海万博でも展示された。この見本市はブ ラジル、イスタンブールなど世界各地を巡回している。来年はバルセロナである。 先ほどリールの企業特質として株式資本主義よりも家族経営が多いと申し上げたが、 2004年の欧州文化首都を開催するためのNPOが設立されたときに、そうした業界団体か ら7000万ユーロが提供された。そうしたことからも(文化振興が経済活動に好影響をもた らすという考え方が支持されていると)分かっていただけると思う。 文化活動の振興としては芸術に力を入れている。2007年にはフランスアピヌ(聞き取り 不鮮明)という展示会をした。昔の産業跡地を新しい文化振興に活用しているのがリール 広域都市圏の特色である。 質問⑤(宮川):日本は湿気があるので、染色技術が世界一だと言われている。ここもそ れほどの乾燥地帯ではないように感じたので、高い染色技術があるのではないか? フランス語では capitale européenne de la culture。1 年間にわたり文化行事を展開する 事業。EU 加盟国の文化交流を目的にして、1985 年のアテネから始まった。2000 年からは 複数都市が選ばれるようになり、意識的な文化による都市再生事業の要素が強まった。2004 年はリールとイタリアのジェノバが選ばれている。 EU・ジャパンフェスト日本委員会によると、2004 年のリールには日本人アーティスト も多数参加している。施設ではなくソフトに力を入れたのが特徴で、 「『メゾン・フォリ』と 名付けられた文化施設が相次いで誕生したが、そのほとんどは過去の繊維工場や倉庫を改造した もので、それらはアーティストの創作の場となり、子どもから大人までが自由にワークショップ を楽しむ拠点として、再活用されるようになった」と報告されている。 42 76 回答⑤:リールは染色を得意としていなかった。繊維産業でも機織りや紡績(チッサージ ュTissageやフィラチュールFilature)という分野が発達していた。染色は大企業の下請け でやっていた程度である。 質問⑥(立見):興味ぶかい報告に感謝する。私たちは大阪からきたが、大阪も元々工業 都市の伝統があり、どのように工業都市を再生するのかを考えている。さきほど萩原さん が指摘したように、新しい知識創造をどのようにしたらいいのかということもその一つだ。 もう一方では、新しい産業を育成した場合に、既存の産業と地域の労働市場でミスマッチ ングをどうするのかという問題がある。たとえば今まで工場で働いてきた人が、新しいハ イテクやバイオの分野に仕事を移れるかというと、なかなかうまくいかない。また、ハイ テク産業は一般的に生産性が高いので雇用力が少ない。こうした問題をどのように捉えて 対応されているのか? 回答⑥:言われるように、こちらでも非工業化にともなって、アウトソーシングが強まり、 製造業の雇用が失業に直結した。そこで失われた雇用はサービス業に向かった。対人サー ビスであったり、対企業のサービスであったりするが、そこではおっしゃることと同じよ うな傾向が生じている。 失われた雇用が最も多く吸収されたのは大流通産業である。資格を有していなくても通 用する仕事、たとえば荷物を運んだり、商品を選別したりといった仕事が対象である。た だし雇用の質という点では低い。 とはいえ、そうした低い質の雇用が流通産業に吸収されるサイクルは現在終わりつつあ る。第2の対応になっているのは、より専門的な能力を開発して企業のニーズにこたえると いうことである。テキスタイルの場合だと、ベースになる撚糸や機織りだけでなく、現在 めざしている化学系やソフトのエンジニアを養成するために、教育や研修を充実させてい る。 重要なことは、テキスタイルの場合は特殊性があって、決してハイテクばかりをめざし てはいけないということである。織ったり撚ったりという基本のノウハウを消滅させない ように保存しながら、企業のニーズにこたえるようにしなければならい。フランスでは30 年間の工業成長の後、ものづくりに対する若者の就職希望が減っている。戦後ベビーブー ムの後の世代がちょうど世代交代に直面しており、フランスの産業政策の上で彼らの態度 が大変重要である。 質問⑦(大貝):今の繊維のことに関連しての感想です。京都は西陣織が有名ですが、そ こでも伝統産業としての技術を残すということと、ハイテクの分野で生糸を手術用の糸と して開発することが模索されている。 回答⑦:同じようなことは、リール地方でも行われている。企業内の既存ノウハウをイノ ベーションして、新しい医療用の繊維を開発するなどである。そういうことは、先ほどの 77 かわってくる る。糸をつく くるという土 土台になる伝 伝統技術を保 保ちながら、分子 教育・研修にかか を高める必要 要があるから らである。 学などの専門性を ール地方では は、テキスタ タイルと医療 療の二つのク クラスターが がタイアップ プして、医療用繊 リー 維の分 分野でもイノ ノベーション ンは進んでい いる。 ル側質問:こ こちらから一 一つ質問させ せてください い。なぜリー ールを選ばれ れたのでしょう。 リール 視察団 団(立見):我 我々は大阪を を中心とする る関西の研究 究者と中小企 企業支援者で である。先ほども 少しふ ふれたが、大 大阪では元々 々工業都市の の伝統がある る。それが知 知識経済化と 呼ばれる状 状況の 中で、 、どのように に再生してい いくのかとい いうことが大 大きな課題に になっている る。その点でリー ルは、 、元々は石炭 炭や繊維とい いう伝統産業 業がありなが がら、最近で では非常に多 多様な知識経 経済化 に対応 応した部門を を含んで、経 経済の活性化 化に成功して ているように に見える。そ そこを学びたいと 考え、 、訪問させて ていただいた た。 双方:メルシー 以上 78 PICF とのセ セッション 7) P 訪問日:2010 年 9 月 30 日 10 時 30 分 分~ 訪問先 先:シェール ル県商工会議 議所 応対者 者:PICF メンバー(以 メ 以下に記載) 記録者 者:大貝健二 二 《PICF 参加メン ンバー紹介》 ットファン氏 氏(PICF の の会長) ・ドミニク・ガッ ガ ガットファン ン氏の企業は は、精密機械 械器具製造業 業(日本の工 工業統計分類 類)に該当す する。 当日の午後訪 訪問。会社の の社長である るとともに、PICF という中小企業グ グループの会 会長で もある。 ・モンテック氏(PICF の副 副会長) 企 企業は、鋼の の切断、絞り り機の製造を を行っている る。PICF の会 会計を担当し しており、氏 氏の企 業 業は、機械の のコンサルタ タント、販売 売、ネゴシエ エーションを を行っている る。 ・モロー氏(PIC CF の副会計 計) 従 従業員規模 10 名の企業 業の経営者。製造・加工しているもの のは、精密機 機械、暖房関 関係機 器 器でも大きな なサイズのも ものである。 ・ベル ルトゥーロ氏 氏(第 1 期の の PICF 会長 長) 父 父親が 47 年前に開始し 年 した、精密機 機械製造業。当日の 16 時ごろ訪問予 時 予定 ・モンテック氏 氏 氏と副会長は は、夫婦であ ある。企業の の業務内容も も同様である る。 ・ジェルネ氏:精 精密機械製造 造業を経営し している。 79 《プレゼンテーション/PICF の活動内容》 1.組織概要 中小企業、零細企業によるグループ組織である。非営利団体の NPO 組織であり、2006 年設立し、会員企業数は現時点で 29 社である。設立の目的は、仕事の困難に対処するため に、お互いに協力して働くということが共通の理解となっている。中小零細規模企業は、 お互いに競争関係にあることから、常に競合性ということが問題になる。だから、必ずし も簡単な組織構成ではなかったが、この新しい構想を打ち上げてから様々な問題をクリア しながら、時間を経るとともに、「相互的に働くということがお互いにとって利益がある」 という結論に至っている。PICF の考え方は、共同で、集団で仕事をするということが基に なっている。集団でもって仕事をすること、また必要に応じて互いの共通点を見つけなが ら、タイアップして働くということである。 2.具体的な活動内容 いろいろな問題について、共同で対処することによって、企業が単独では解決しきれな い問題に、共同して対処するということである。このことから、対処する際の優先順位を 会員企業の中で決めている。 PICF が、どのような活動をしているかというと、第 1 に営業活動である。会社に利益を もたらす仕事を見つけてくるということがこの営業活動になる。この PICF をけん引してい る基となる力は、「共同で営業活動を展開する」ということである。それは同時に、困難に もつながる。多くの人が集まれば非常に大きな力になることはもちろんだが、相互間の利 害調整も複雑になってくる。補足をすれば、PICF は中小零細企業の集団である。中小零細 規模企業にとって、今日の市場に参入することが非常に困難になっている。お互いの力を 合わせることによって、しかも企業集団としては力強く、かつ企業本体としては、中小零 細規模として柔軟性がある。この2つの強みを活かしながら、営業活動を展開している。 第 2 番目は、相互的に活動することによって得られるものである。それは、共同買入の ほか、社員・従業員の研修の実施、様々な資格認定を得るための相互的な活動である。共 同で活動することによって、全体的なコストダウンにつながるからである。 第 3 にロビー活動があるが、これは全員で力を合わせれば、強い力となって対外的にア ピールできるからである。 また、共同で活動していることの一つとして、若い人への「感化運動」(啓蒙活動)とい うものを繰り広げている。これには、すでに企業内で働いている従業員に対しての研修と いうこともあるが、特に、これから労働市場に参入しようとする若い人たちに対して、若 者が機械産業をけん引しているということがあり、彼らに対して、PICF 会員企業が従事し ている機械産業の魅力を訴えるということを、教育や研修を通じて行っている。 第4に、PICF のなかだけでも、お互いの企業同士を知り合いにさせるということが必要 80 になってくる。というのも、1県のみで PICF が構成されているのではなく、地域4県にま たがっており、PICF 会員企業の立地範囲は、とても広いことがある。この広い範囲に立地 している企業間の情報を内部で伝達することが必要である。 第5に、PICF の活動分野の最後の点として、イノベーションが挙げられる。今日、イノ ベーションなくして企業の成長はあり得ないのであって、将来的にも企業、グループが発 展していくためにも、研究分野において、また、サービス分野においてイノベーションを 展開することを共同活動で追求している。 2-1.PICF 活動の上記 5 項目の詳細 第1に、営業活動の具体的方法としては、展示会やサロン等に参加することである。展 示会等を通じて、市場ではどのようなことが求められているのかを察知するとともに、そ れに対して PICF の展示をすることがある。2009 年に参加した展示会には、フランス国内 で開催されたもの、国外で開催されたもの、さまざまである。フランス国内の下請企業を 中心としたものにも参加し、海外の展示会では、ドイツで開催されたもの、地中海地方で 開催されたものにも参加をしている。参加することによって、自分たちの存在を知らせる ということに重きを置いている。 第 2 の活動「相互的に活動することにえられるもの」については、品質管理などに関し てのラベルを獲得することが、具体的な事柄として挙げられる。これにはクオリティにつ いての認証もあるが、環境問題をクリアする認定、安全基準を満たすものなどもある。い ろいろな種類の国際的な認定があるが、これらの認定を受けることは、中小零細企業にと っては、非常にコストがかかることである。しかし、これらの認定(例えば ISO9001 など) を共同で求めることによって、少しでもコストを低く抑えようと努力している。 相互活動ということでは、企業が数社一緒になることによって、経済的な利益を共通に するグループを立ち上げている。具体的には、GIE と書いているが、これは経済協力グル ープといって、PICF 会員企業 4 社によって構成されている。 2-2.補足的内容 PICF は、共同グループで活動を展開しているが、共同で取り組むには、あるテーマを決 めて一緒にそれに取り組む、あるいは問題解決に挑むということがあるが、企業対企業と いうことになると、非常に困難な側面も出てくるが、各企業が共同で対処することによっ て、得るものがあると分かれば、対応はとても容易になり、PICF の活動としても発展して いくことになる。 《質疑応答》 質問①(宮川): ISO18000 の内容は? 81 回答①: 総合的な認定システムであり、クオリティ、安全、エコをグローバルに審査す るものである。獲得の困難さでいうと、9001 から 18000 へ向かうにつれて難易度は上がる が、対社員の安心、社内における全ての質がクリアされないと認定されない。中小零細企 業が認定を獲得するのは当初は非常に難しいことだったが、力を合わせることによって、 獲得が可能になったという PICF の事例である。認定をとることによって、相乗効果が生ま れてくることもある。認定を受けることは、決して PICF 内の義務ではないが、認定を受け ることによって、市場に参入することが容易になってきていることも事実である。一人で は難しいが共同で対処することによって可能になっているのである。 質問②(宮川): 回答②: ISO を取得していなければ、受注できない仕事もあるのか? 会員企業の事業からすると、営業上はそういうことはないが…。 質問③(三浦): 大企業と中小企業の関係について、大阪でも中小企業が共同しながら活 動している例がある。大きく分けると、自分たちで大企業に頼らずに、仕事を獲得し、販 路を開拓するというケース、もう一つは、大企業の受注をとりやすくするために、中小企 業が共同するというケースである(例えばユニット受注など)。PICF の場合、大企業との 関係はどのようになっているのか? 回答③: 中小企業がなぜグループを作るのか、ということに関しては三浦氏の話にあっ た事例と同様である。PICF に関しては、エアバスの事例を挙げてみると分かりやすい。大 企業は、下請け先を減らしてきている、すなわち納入先を選別してきている。だから、GIE という略語で紹介したように、数社で1つの経済利益グループを構成して、1社ではなく より力を発揮できる数社で納入先になりたいという、そういう意図がある。ただし、数社 で1つの共同経済効果を上げるということには、裏側もある。大企業としては、中小企業 が一緒になるよりも、単独でいてくれたほうが楽である。中小企業が共同することを嫌が る大企業と、GIE を作った PICF との間でミスマッチが生じることもある。 質問④(立見): 回答④: ミスマッチは、価格面で生じるのか? 特に入札などを展開するときに、大企業は中小企業が共同することを嫌う傾向 がある。反対の効果もあるが、戦略としてアライアンスを組むことは必要である。PICF は 地域的なアライアンスであるが、こういったことがほかの地域でも生じてくることが必要 であると考えている。グループの歴史を振り返ってみても、2005 年に共同体を作ろうとい う意見が出てきて、06 年に発足したわけであるが、競合会社であるところの企業同士がグ ループ化することは、中小企業の精神ではなかった。 一緒になって一つのグループにはいることを嫌う中小企業も存在する。しかし、グルー プ化する方向性については、今現在では間違っていないと自信を持っていうことができる。 たとえ共同体を作ったとしても 1 企業の活動が失われるわけではない。だから、共同で問 題を対処すること、クライアント、行政、国に対して、様々なレベルでの問題に共同で対 82 処することができる。 精密機械を取り上げると、1 社で国に対して訴えても相手にされないが、グループで訴え ることによって、力を持つことができる。国に対して、政治家に対して、言いたいことを 伝えたいが、大企業の話ばかりが彼らに伝わり、中小企業である私たちの話は、グループ を組まないことには届かない。そのためにも、共同体は必要であると確信している。 回答④-2(商工会議所からのコメント): 当該地域の中小企業は非常に安定した実力を有 している。大企業は、中小企業とは異なり、工場進出してきたかと思うと、急に出ていく ことがある。そういう事態になると、地域での雇用が失われてしまうことになるが、それ に比べると、この地域の中小企業は、資金的にも、対人間、すなわち雇用に対しても非常 に安定している。近い距離にある企業というものが非常に重要な役割を果たしている。商 工会議所の立場としても、特に若い人に対して、これら中小企業の存在を宣伝していくこ とが重要であると考えている。 《プレゼンテーション/八尾市の事例紹介》 1.趣旨説明(立見) 大阪はみなさんご存知のように、日本で東京に次ぐ 2 番目の都市である。大阪というの は、非常に多くの製造業、特に中小企業を抱えている地域である。PICF の会員企業と同様 に、金属加工に携わる企業が多く存在していることが特徴である。東京の大田区と、大阪 の中小企業による集積が、日本製造業を支えてきた伝統がある。 今回訪問しているメンバーは、中小企業の支援に関わっているメンバー、あるいはそう いった中小企業を研究しているメンバーで構成されている。これから、大阪の経験を報告 する宮川氏もその一人である。 2.八尾市の金属加工グループ(宮川) 日本の中小企業が使用している機械、例えば印刷機械などは、かつてはほとんどがフラ ンス製であった。今では日本製が増えてきているが、フランスの製造業は技術力があると 感じている。また、環境活動にもかかわっているが、そこでは二酸化炭素の削減に向けた 機械、例えばバイオ資源を活用した、木質ペレットを製造する機械はす大半がフランス製 である。そういう意味では、非常に高い技術力を有している、PICF 会員企業の前で、報告 できることを光栄に思っている。 大阪・八尾の金属加工グループの一つに、経営技術交流会、マテック八尾というものが ある。これは、2001 年に結成し、中小企業 35 社に加え、大学、高等専門学校、八尾市中 小企業サポートセンターが加入するグループである。産官学の異業種交流会である。会員 の企業規模は、従業員数名から 60 名程度であり、中小零細規模企業が多く参加している。 メンバー間での技術や情報を、「教えあう、使いあう、つくりあう」をモットーに、モノ 83 づくりの相互応援をすることが基本スタンスである。中小企業は単独では弱くても、集ま って技術、ノウハウを結集すれば大企業にも対抗できる、大きな力を発揮できるというこ とである。まずは日常の仕事で連携をとることを目標としているグループである。 活動では、八尾の中小企業の技術を目指すロボット分科会、環境認証である KES(ISO は 中小企業にとって取得することが困難であり、京都が出しているもの)の取得支援、そのほ か、海外展示会、商談会、講習会、見学会、産学連携、親睦・社会貢献活動などの取り組 みを進めている。 2 つ目のグループとして、ウィズグループがある。これは 1995 年に結成されている。当 時の時代背景として、1990 年代のバブル経済ののち、仕事が激減し、倒産・廃業が相次ぎ、 大企業と比べて中小企業の不利(研究開発、一貫生産、販路、資金など)を事業連携、企 業間ネットワークの形成により、中小企業の仕事おこしを目的としている。現在の会員企 業は 17 社である。 共同開発の成果としては、バレル研磨機のほか、一発深絞り機などがある。販売機能、 メンテナンスの面ではなかなかない。大阪圏の中小企業は、もともと問屋などの下請け仕 事を分業することによって始まっている。また、大企業の下請け化が高度経済成長期に進 んだこともあり、中小企業の販売機能が非常に弱いことが特徴である。企業間ネットワー クで新製品を開発しても販売できないという弱点を有している。その点では、マテック八 尾のように、技術研修や情報交流を行って、共同で制作するということのほうが、最近は 活動も多くなっているといえる。 最後に自治体の支援についてであるが、マテック八尾のロボット開発については、市が 200 万円の補助をするということを決定した。いいものはさらに大阪府などの支援につなぐ ようにしている。中小企業サポートセンターなどもそのような活動を進めている。こうし た中小企業グループは小零細規模企業が多く、政策的な支援もなかなか行き届いていない のが現状である。 報告で割愛した八尾市の概要紹介 大阪府・八尾市は、大阪府の東部中央に位置し、西は大阪市、北は東大阪市、東は奈良県 に接し、古くから産業や交通の要衝として栄えてきた。人口 273,883 人、面積 41.71K ㎡、 住宅地域・工業集積地域・農業地域が存在する調和の取れたまちである。 2007 年現在の事業所数は 12,976(卸・小売・飲食業・・34.2%)(製造業・・29.1%)(サービ ス業・・14.0%) (建設業・・6.7%)(医療・福祉・・4.9%)(その他・・11.1%)。 従業員数 は 105,128 人(製造業・・40.8%)(卸・小売・飲食業・・25.6%)(サービス・・9.2%) (医療・福祉・・8.6%)(建設・・5.4%)(その他・・10.4%)である。 工業の業種構成は、(金属製造 11.6%)、(電気機械装置 27.8%)、(一般機械器具 5.9%)、(パルプ・紙・紙加工品 ている。 84 18.5%)、(プラスチック製造 3.6%)、(その他 32.6%)となっ 疑応答-2》 》 《質疑 質問① ①(立見): 異なる企業間 の調整、協力 力に到達する るまでの困難 難、具体的に にどの 利害が異 ような なことがあっ ったのか? 回答① ①: 要するに一つのマ マヨネーズを を作り上げる ることを考え えると分かり りやすい。い いろん な材料 料(企業)を持 持ち寄って、それを混ぜ ぜ合わさなければならない い。そうしな ないとマヨネ ネーズ はできない。この の混ぜる役割 割を果たした たのがアニメ メーターであ ある。マヨネ ネーズを作る るとい の り方だが、具 体的にどのようにしたの のか、という ことに関しては、 うことが PICF の組織の在り 会議所のアニ ニメーターに に聞いたほう うがわかりや やすいだろう。 商工会 回答① ①-2(アニメ メーター): アニメー ターとは、企 企業同士を引 引き合わせる るということ とが大 きな仕 仕事である。 。このアニメ メーターとい いうのは、ヨーロッパでは、一つの職 職種として認 認定、 確立している仕事 事である。企 企業としては は、企業間は はお互いに知 知らないし、 知っていた たとし お互いが競争 争相手である る。そういう う間柄を、ア アニメーター ーを通じて企 企業同士が知 知り合 てもお いにな なり、関係を を変化させて て、新たに発 発展させるというのが、ア アニメーター ーの役割であ ある。 シェー ール県の商工 工会議所で、 、アニメーシ ションの方法 法を確立して ている。これ れは独自の方 方法論 として て発表してい いる。まず、3つの Keey がある。第 第 1 に、すべ べての決定者 者は企業であ あるこ と、ア アニメーター ーは中立を守 守るというこ ことである。第 2 に、会 会合を持つと ときには、ア アニメ ーター ーが主導権を を握るのでは はなく、必ず ず企業が場所 所や条件を設 設定すること とである。ア アニメ ータ ーは企業の 言うことに に従うことで で 。第 3 に、アニ ニメーターと となる人は、 ある。 調停役 役の力を持 持っていなけ ければならな な いとい いうことであ ある。トラブ ブルが生じた た ときは は、対人であ あれ、対企業 業であれ、両 両 方の言 言い分を中立に聞くことができる、 、 プロ の仲裁役に にならなくて てはならない い る。 ということである ①-3:PICF F を立ち上げ げる話は、シ シ 回答① ェー ル県の商工 工会議所から ら出てきたも も あるが、最初 初は誰も相手 手にしなかっ っ のであ た。 しかし、アニメーターの質の良さ、 、 会議所の熱意 意によって、今日まで至 至 商工会 左から 2 人目の女性がアニ ニメーター ってい いるというこ ことである。 質問② ②(萩原): は、アニメー ションをするときに、人 人というより りも場が持っ ってい 日本では る機能 能に対して重 重きを置いて ているのだが が。 (ここで時間にな なったので、 、ランチを通 通じながら、具体的にど どのような調 調整を行った たのか た。) 話すことになった 85 業の訪問》 《PICF 会員企業 ブールジュ市と ブ とガットファン ン社の位置関係 係 シェー ール県商工 会議所 所のあるブ ールジ ジュ市 ガットフ ガ ァン社 ァ 商工会 議所 86 GATTEFIN N社 1.G ・1977 年創業:当初は 80 ㎡の倉庫から ㎡ らスタート 在の敷地は、 、空き地も含 含めて約 1 ヘ ヘクタール、7 つの建物 物からなって おり、建物ごと 現在 に、 、行っている る仕事は異な なる。企業の の発展に伴っ って、建物も も拡張を続け けている。 ・現在の従 従業員数は、85 名だが昨 昨年は 100 人以上 上いたという う。 ・主な事業 業内容 精密製作 作であり、溶 溶接、組み立 立て、 塗装などが があるが、す すべてをクラ ライア ントに提供 供で きるようにしている る。 が、敷地内に に 50、建物内 内部に ・余談だが 50 の監視 視カメラがつ いている。 2.B Berthelot 社 ・1882 年に土地 地を購入した たが、当時は農 農場だった。 。 けては、氏の の弟が社長だ だったが、事 事故で他界、 氏が社長に に ・1998 年から 2005 年にかけ この企業には、MAZAK K 社製の機械 械が導 入されている 入 。一人の従業 業員で 2 台の の機械 ベルト ーレ社 を扱うように を なっている。 。 ・年 年間売上高は は、200 万ユ ユーロ前後である。 ・年間の投資額 年 額は、20-30 万 万ユーロであ あり、 銀行からの借 銀 借入れは 50% %以内にとど どめて 商工会 議所 「ようこそ そ」と垂れ幕の のかかった ベル ルトーレ社の工 工場 87 。 いる。 ・その のほか、スラ ラッジの処理 理に関しては は、周辺が住宅地であるた ため、特に気 気を使ってい いる。 ・労働 働者の中には は、1970-80 0 年代の、ラ ラオスからの のボートピー ープルの子供 供が含まれている。 彼らは、機械の の扱いに対し して、とても も優れている るという。 製品の説明 明をするベルトゥーロ氏 ベル ルトーレ社でつ つくっている製 製品 ざわ わざ来てくれた たオービニー= =シェル=ネー ール市 の市長兼国 国会議員(右)と県 県議会議員(左 左) 88 レセプシ ション会場にな なった自宅の一 一室。 日本の茶器も もあった。 7. おわりに 今回、大都市圏産業政策研究会でフランスの地域産業政策視察が企画され実行されるに 至った経緯は、はじめにで述べられている通りである。きっかけは半ば偶然に始まった企 画であったが、結果的には非常に内容の濃いバランスのとれた視察になったのではないか と考えている。たとえば、初日に訪問したイル・ド・フランスは中央集権の国フランスに おいてまさに欠くことのできない存在であって、極めて多様な要素が凝縮された地域であ る。また、リールは古い工業地域の産業政策による産業構造転換の事例であるし、シェー ル県の中小企業グループ PICF は、農業も盛んな、いわばフランスの平均的な地方における 人と人との地域的ネットワークづくりの事例である。詳細な説明は本文に譲るが、これら 3 つの事例が置かれている条件は大きく異なっており、その意味で、様々な角度から地域産 業の再生に向けた取り組み手法と人々の姿勢を学ぶことができたのは貴重であった。 しかし、こうした事例のバラエティの豊かさにもかかわらず、いくつかの共通点も感じ ざるを得なかった。第一に、常に地域の雇用を意識していることである。もちろんこれに は、これらの地域が高い失業率を一度は経験しているがために、雇用の問題を意識せざる を得ないという面もあろう。また、日本に比べると労働者としての権利意識が高く、労働 運動も活発であるというフランスならではの事情もおそらく影響していよう。しかし―― もちろん産業競争力の構築と分けて論じることはできないが――、地域産業政策の目的と して雇用の確保という非常に基本的な問題を再認識させられたのも事実である。 第二に、企業戦略しだいですぐに移転してしまう可能性の高い産業や企業の誘致は極力 避け、地域に根付き安定した雇用提供先となりうるような産業の選択的な育成に配慮して いる点である。ARD の企業誘致の方針にみられるように、首都圏のイル・ド・フランスで さえこの点を意識した政策をとっているのは興味深い。また、中小企業グループ PICF の立 ち上げを推進したシェール県商工会議所についても、大企業は移転するリスクが高いとい う基本認識があった。 第三に、特定産業の支援に偏ることなく、産業の多様性を重視し、バランスよく産業政 策を展開しようとしていることである。これは、過去の経験から学んだ姿勢であるとして、 イル・ド・フランスとリールでともに強調されていた点である。産業の多様性が担保され ていれば、一つの産業あるいは一つの大企業が衰退もしくは撤退したとしても、地域経済 が被るダメージは低く抑えられるであろうし、新たな発展の方向性も見つけやすい。実際 にリールでは、石炭や繊維といった旧来の産業が衰退し、新産業の育成に力を入れていっ たわけであるが、その際に物流業の発展が単純労働の受け皿となることで失業の発生が部 分的に抑制されたということがあった。新産業として期待されるような業種は労働者に高 い技能・コンピテンス(能力)を要求する場合が少なくないが、たとえば工場労働者が容 易にそうした産業に参入できるわけではない。業種構成のバランスだけではなく、労働者 に求められる資質(高度な知識生産から単純労働まで)という点も含めて、産業の多様性 89 を維持することが、できることなら必要なのであろう。 以上、視察全般について感じた印象を簡単に述べた。参加メンバーによって感じ方は様々 でありうるが、それについてはメンバーの感想がすでに記述されているのでここで繰り返 す必要はなかろう。 最後に、すべての訪問先で時間をかけた丁寧な準備をしていただき、また当日は暖かく あるいは情熱的に迎え入れていただけたことを、この場を借りて深く御礼申し上げたい。 了 90
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