原子力人材育成ネットワーク事業 タイ、ベトナム、マレーシア訪問調査報告書 出張期間:平成 23 年 2 月 28 日(月)~3 月 9 日(水) 訪問者: 10 日間 1)日本原子力研究開発機構 村上博幸 2) (財)原子力国際協力センター 持田貴顕 3)東京工業大学 齊藤正樹 4)京都大学 横峯健彦 5)日立 GE ニュークリアエナジー(株) 浜本雅啓 6)東芝(株) (ハノイ駐在) 藤田真也 [自費参加] 各国訪問先及び主な対応者(訪問順) : [タイ] 1)タイ原子力技術研究所(TINT)オンカラック研究所:Monta Punnachaiya 原子力技 術移行ユニット長 2)在タイ日本国大使館:大鷹正人経済部公使、坂入倫之一等書記官、積田北辰二等書記 官 3)タイ原子力技術研究所(TINT) :Sakda Charoen(TINT 副所長)他 15 名(タイ原子 力平和庁、シナワトラ大学、チェラロンコン大学、カセサート大学、EGAT、国立研究協議 会など、各機関の関係者が全員 TINT のオフィスに集合し、そこで一括して会合を実施。) [ベトナム] 1)教育訓練省 :Ta Duc Thinh 科学技術環境局長 他 5 名 2)ハノイ工科大学(HUST) :Pham Hoang Luong 副学長 他 6 名 3)ベトナム放射線原子力安全庁(VARANS) :Le Chi Dung 副長官 他 1 名 4)ハノイ電力大学(EPU) :Ha Van Thong 副学長 他 7 名 5)ベトナム原子力研究所(VAEI) :Vuong Huu Tan 長官 他 4 名 [マレーシア] 1)マレーシア原子力庁(MNA) :Mohd Noor Mohd Yunus 副長官 他多数 2)マレーシア原子力規制庁(AELB) :Abdul Aziz Raja Adnan 長官 他 5 名 3)国立電力大学(UNITEN) :Norshah Hafeez Shuaib 工学部副学部長 他 4 名 4)在マレーシア日本国大使館:高橋美佐子参事官(経済部長) 、福地真美経済アタッセ 5)マレーシア原子力公社(MNPC) :Mohd Zamzam Bin Jaafar CEO 他 1 名 6)マレーシア国民大学(UKM) :Muhamad Samudi Yasir 応用物理専攻長 他 5 名 訪問調査結果の概要: 原子力人材育成ネットワーク事業(文部科学省補助金事業)の一環としてタイ、ベトナ ム、マレーシアの原子力関係機関を訪問し、我が国の「原子力人材育成ネットワーク」事 業・活動及び大学連合による活動を紹介し、それを基に各機関の原子力人材育成活動の現 状調査、我が国からの協力に係る可能性等に関する意見交換を行った。 タイでは、研究機関と大学等の R&D に関する協力は進んでいるが、今後電力会社などを 含めたより広範なネットワーク化が必要である。また、現状の大きな関心事は PA 問題であ り、地域住民に対する理解の拡大に関し、我が国の協力に期待している。 ベトナムはすでに原子力発電所の計画が具体化している国であり、人材育成についても 喫緊の課題としてとらえている。訪問した各機関とも、我が国に研修生や学生を派遣して 育成することを望んでいる他、専門家(特にシニア)の派遣、大学での教育プログラムの 開発など幅広い支援に期待を持っている。現行の我が国の各種の育成プログラムへの期待 も大きいが、受入人数については不満を持っているようである。また、発電所建設の前に ハノイに新しい試験研究炉や加速器を建設して新たな研究センターを立ち上げる計画であ り、我が国にもこの研究センターへの寄与を期待している。基礎的分野だけでなく、原発 建設・運転等の実務に係る技術系人材の不足が原子力関係者共通の課題として認識されて おり、広い分野での我が国の人材育成協力が期待されている。 マレーシアでは、原子力発電の導入は近い将来のターゲットとして組み込まれているよ うで、各機関とも人材育成についても熱心に取り組んでいる様子であった。我が国への期 待としては、専門家の長期派遣、学生や研究者等の受入枠の拡大強化、実務者訓練などを 望んでいる。ただ、協力相手国を一国に絞った訳ではなく、どの国に対しても門戸を広げ て期待している状況である。原子力人材育成に関しては基本的に欧米に対する期待が大き いようであるが、韓国の積極性が垣間見えた。今後我が国も本ネットワーク活動等を通じ 協力活動を強化していくことが必要と考えられる。また、他の国と同様、基礎分野だけで なく、原発建設・運転等に係る技術系人材の育成が原子力関係者共通の問題として認識さ れており、広い分野での我が国の人材育成協力に対する期待は大きい。 また、今回の出張では、各国の日本大使館を訪問(但し、ベトナムについては、事前の 連絡調整がうまく行かず、タイとマレーシアの 2 カ国のみの大使館の訪問となった)し、 「原 子力人材育成ネットワーク」の紹介を行った。タイでは、具体的な人材育成のメニューの 提示(できれば PA を入れる)をタイ側に行うこと、大使館とも情報共有を密に行うことな どが要望された。マレーシアでは、人材育成協力を進める上での“学位”の重要性につい ての指摘、また情報発信という意味でのネットワークのホームページの英語化の促進など の要望があった。 以上、タイ、ベトナム、マレーシア 3 カ国の原子力関係機関を訪問することによる「原 子力人材育成ネットワーク」とその活動や窓口機能の周知等については、各国の各機関関 係者ともその有用性について十分に理解を示すなど、一定の成果を上げた。今後は具体的 な協力内容について、先方のニーズと我が国の体制を考慮しつつ、ネットワークにおいて 個別に検討を行っていく必要がある。 今回の訪問を通じ、我が国と各国の原子力関係機関との間の原子力人材育成分野におけ る相互理解の促進と協力関係の強化に寄与することができたと考えている。 以上 各訪問機関の調査結果(個別の内容等) [タイ] ①タイ原子力技術研究所(Thailand Institute of Nuclear Technology:TINT) (訪問日)平成 23 年 3 月 1 日(オンカラック) 、3 月 2 日(バンコック) (対応者)下記報告内で記載。 1 日目は、オンカラックサイトの研究施設を訪問し、TINT 原子力技術移行ユニット長 Monta Punnachaiya 氏より、同サイトにおける TINT の人材育成活動(主に放射線関係の 研修事業)の説明を受けた。 2 日目は、TINT の計らいで、関係機関の担当者が TINT のバンコック事務所の会議室に 集合し、一括して会合(タイ側出席者 16 名)を行った。参集した関係機関は、TINT の他、 タイ原子力平和庁(OAP)、国立研究協議会(NRCT)、シナワトラ大学、チュラロンコン 大学、カセサート大学、タイ電力公社(EGAT) 、国立開発管理機構(NIDA)である。各 機関からの参加者(対応者)は以下の通り。 TINT Sakda Charoen(副所長) 他 3 名 タイ原子力平和庁原子力安全規制局 Tounporn Angwongtrakool 氏 他 3 名 シナワトラ大学 Vutthi Bhanthumnavin 氏 チュラロンコン大学原子力工学科 Sunchai Nilsuwankosit 氏 カセサート大学 Pannee Parkong 氏 他 1 名 タイ電力公社 Nateekaol Kriangehaiporn 氏 他 1 名 タイ国立研究協議会 Duangduen Bhanthumnavin 氏 国立開発管理機構社会環境開発大学院 Ducheduen Bhanthumnavin 氏 タイでは、10 年後を目指した原子力発電の導入が計画されており、人材育成もその計画 に合わせて実施することが必要となっている。現在は、研究機関と大学等の R&D に関する 協力は進んでいるが、今後電力会社(産業界)などを含めたより広範な原子力関係機関の ネットワーク化が必要である。また、現状の大きな関心事は PA 問題であり、地域住民に対 する理解の拡大に関しても我が国の協力に期待している。さらに我が国からの人材育成に 係る協力としては、学位取得ができるシステム、保障措置や核不拡散に関する内容の人材 育成にも期待が高い。今後、発電炉関連の実務レベルでの協力を促進するためには、政府 間の MOC(協力覚書)を結ぶことが望まれる。 ②在タイ日本国大使館 (訪問日)平成 23 年 3 月 1 日 (対応者)大鷹正人経済部公使、坂入倫之一等書記官、積田北辰二等書記官 大使館では、我が国における原子力人材育成の現状の例として JAEA の人材育成の取り 組みを紹介し、続いて原子力人材育成ネットワーク活動の説明を行った。その後、大使館 側との意見交換を行った。 大鷹大使によれば、 「原子力教育の面では、毎年タイの学生を一定人数受け入れる制度等 が望まれる。他国はそのような取り組みを実施して来ており、今後、このネットワークを 通じてどのような仕組みを作るか、またどのようなメニューをタイ側に提示できるかが課 題である。原子力に関しては、現在のタイにおける重大な関心事は PA であり、人材育成協 力の中に PA も含めて考えていくことが重要と思われる。 」とのことであった。 今後、タイ側と接触した場合など、先方の反応を大使館にも是非知らせて欲しいという ことで、了解した。 [ベトナム] ①教育訓練省(Ministry of Education and Training:MOET) (訪問日)平成 23 年 3 月 3 日 (対応者)科学技術環境局長 Ta Duc Thinh 氏 他 5 名 原発導入ではロシアに続き日本と協力することになったが、人材育成は重要な課題と捉 えており、準備に 1 億 5 千万 US$の予算を組んだということであった。第 1 次のロシアに ついては、70 人を研修派遣する(ロシアは奨学金つきで留学生を受け入れてくれている) 。 ベトナムでは 5 つの大学で原子力プログラムを持っているが、今後第 2 次の原子力発電プ ラントのために日本にも学生を出して行きたいと考えているとのこと。 日本の学生受入のしくみとしては、例えば学部か専門課程で学位を取得することが目的 か、希望する分野は何か等、選択肢はいろいろある。現行の限定された予算では、奨学金 による受け入れ枠は少ないのが現状であるが、一方で、近々日本の産業界のスポンサーに よる東工大とハノイ工科大、電力大学との提携による協力などが始まる予定である。また、 今回説明した大学連合ネットワークでもアジア7カ国への出張講座などでベトナムにおけ る人材育成に貢献していくことなどを説明した。 ②ハノイ工科大学 (Hanoi University of Science & Technology:HUST) (訪問日)平成 23 年 3 月 3 日 (対応者)副学長 Pham Hoang-Luong 氏 他 6 名 ベトナムでは電力需要が 14-15%/年の伸び、都市部では 18%/年の伸びと急増してい るため原子力発電が必要との認識を持っており、原子力発電プラントに対しての包括的な 人材育成プログラムが必要と考えているとのこと。 ハノイ工科大(HUST)は 1956 年に設立(職員、学生数、学科体系を PPT で紹介) 、原 子核物理学部は 1970 年に設立された。2008 年に学部と大学院で再編を実施した。現在学 生は約 20 人/年であるが、40-50 人に増えていく予定である。学科は原子力工学と応用原 子核工学の二つであるが、今後ベトナムの原子力発電に必要な様々な人材育成の要求を満 たしていくため、機械、電気、化学、材料、熱工学、科学工学などの学科と SNEEP(School of Nuclear Engineering & Environmental Physics)を組み合わせる新しいコースを計画し ている。 原子力教育のためのテキスト、関係書籍、実験設備、講師育成のためのトレーニングコ ースなど全てが不足している。分野では、炉設計、運転制御技術、燃料、システム工学、 安全設計など全ての分野を希望している。ただ、ベトナムの学生は IT などの分野への興味 が強く、どうやって原子力に学生の目を向けさせるかが課題となっているということであ った。 日本の原子力関係者でリタイアした方の協力を得ることはできないか、という要望があ り、シニアネットワークなどの活動が役に立つかもしれないということで、後日情報が得 られたら送ることとなった。 ③ベトナム放射線原子力安全庁(Vietnam Agency for Radiation and Nuclear Safety: VARANS) (訪問日)平成 23 年 3 月 3 日 (対応者)副長官 Le Chi Dung 氏 他 1 名 人材育成については、原子力発電所建設に向けて、R&D だけでなく実際のプロジェクト に沿った長期的な協力(例えば Organization Management や実プラントの安全評価、検査 手法など)が欲しいということであった。 学生は原子核物理専攻者ばかりで、規制関係の実務につながるものがないので、新しい スタッフを VARANS としてどのようにリクルートしてくるかが課題となっている。 VARANS スタッフに対しては、アカデミックなトレーニングばかりでなく、実務的なト レーニングが必要と考えられており、以下のような3つのトレーニングプログラムが独自 に開発されている。 1)新人職業研修:2ヶ月間のコースで講師は海外から招聘 2)プロジェクト毎の研修:安全解析や運転に係る許認可、検査業務など実務に即したコ ース 3)長期訓練プログラム:テーマ研究などでスペシャリストを育成するもの VARANS には現在約 80 人の職員がいるが、50 人/ユニットで 4 ユニットを想定して人 を増やし、280 人体制としていく計画である。 ベトナムから日本に研修で派遣し、JNES や JAEA で学んで学位をとらせることが可能 かという質問があった。これに対し、学位付与は大学のみでの権限であるが、大学と研究 機関、原子力関連機関との共同研究などのコラボレーションは考えられると回答した。ま た、スカラシップや研修の人数枠が日本はあまりに少ないので、ロシアと同様に大勢を受 け入れて欲しいということであった。原発建設のために短期間で多くの人を育てる必要が あり、特別のしくみを検討してもらいたいという要望があった。 ④電力大学(Electric Power University:EPU) (訪問日)平成 23 年 3 月 4 日 (対応者)副学長 Ha Van Thong 氏 他 7 名 日本の原子力人材育成ネットワークについて、内容を検討した上で質問や要望を送りた いのでそれに答えていただきたいということで、了解した。特にロシアと日本の二ヶ国に 関し、人材育成分野の協力で何を期待するか整理したいということであった。現在問題と 考えていることは、 ・講師人材の不足。講師のトレーニング ・研修訓練のための実験器具や装置、教材などが不足 ・原発運転のための人材のインターンシップ訓練 ・日本の原発建設でのトレーニング(ベーシックな学問はあるが、原発建設・運転に 関するエンジニアリングや運転について具体的なトレーニングが不足とのこと) 等である。 教育用教材リストは JICC が作成しているので、それを教えることになった。また、体系 的に原子力を教えるためのカリキュラム(各大学におけるシラバス)について教えて欲し いという要望があり、京大で検討することになった。 ⑤ベトナム原子力研究所(Vietnam Atomic Energy Institute:VAEI) (訪問日)平成 23 年 3 月 4 日 (対応者)長官 Vuong Huu Tan 氏 他 4 名 VAEI は 3 つの分野の人材育成を重要視している。 ①実プラント建設・運転のための技術 ②安全評価、環境評価などの分野 ③海外への派遣や海外からの招聘による人材育成 ベトナムではハノイ工科大、ホーチミン市立大、電力大学などで原子力を教えているが、 VAEI はこれらの大学と連携して、①VAEI からの講師の派遣、②施設の提供、③奨学金の 提供などを行っている。研究者を日本やロシアに派遣しているが、まだまだ数が足りない と考えており、即戦力として、日本の原子力関係者で退職した方などを招聘するようなこ とも考えている。 また、新しい話題として、原発建設の前に新しい研究炉を建設することが承認されたと いうことであった。これは新しい研究センター(ハノイ)のなかに作られる予定で、計画 はロスアトムがサポートしているが、日本も新しい研究センターへの寄与を検討してもら いたいということであった。 さらに、原子力人材育成ネットワークに関連し、人材育成は重要であり、同ネットに期 待することを早急に提案するということであった。 [マレーシア] ①マレーシア原子力庁(Malaysian Nuclear Agency:MNA) (訪問日)平成 23 年 3 月 7 日 (対応者)副長官 Mohd Noor Mohd Yunus 氏 他多数 マレーシアでは、原子力発電所初号機建設に関するアクティビティを集中化するための 機関として MNPC(Malaysia Nuclear Power Corporation)を設立した。現在はまだ組織 を立ち上げ中であり、 6月くらいまでは MNA が対外的な実務窓口を続けることになるとい うことであった。また人材育成に関しては、IAEA に対しては MNA が単一窓口となってお り、今後もそれは変わらない。 人材育成ネットワークでのトレーニングはどのようなものを提供する計画であるのか、 という質問があり、国ごとのニーズも異なると考えられるので、内容については関係者間 で協議して検討すると回答した。日本側の実行組織は一般的なものについては JAEA が行 う場合が多いが、専門的な内容については、 (ネットワークメンバーの)産業界や大学など の専門機関に JAEA より照会する。また、JICC が原子力発電関係の政府間協力の日本側窓 口を行うことになるということ等を説明した。 マレーシアでの人材育成ネットワーク状況の説明があったが、産業界のネットワークへ の参画が今後の課題の一つであると考えられる。マレーシアでは、原子力人材育成に関し てこれまでは IAEA との連携を主体でやってきている他、韓国と近々政府間の合意をする ような計画も有るが、どの国もウェルカムであるというのが現在の立場であるとの説明が あった。また、アカデミックな分野だけでなく、原子力発電プラント建設に必要なプロジ ェクトマネージメント等のトレーニングも重要であると考えているとのことであり、設 計・製作・建設を行うプラントメーカの視点から見たものや、運転・保守といった電力会 社の視点から見たものなど多様であるので、マレーシア側のニーズを明確にして JICC に伝 えてもらいたいとの趣旨を伝えた。 また他の国と同様に、マレーシアの学生の日本での受け入れや専門家の長期派遣につい ての要望が出された。 ②原子力規制庁(Atomic Energy Licensing Board:AELB) (訪問日)平成 23 年 3 月 7 日 (対応者)長官 Abdul Aziz Raja Adnan 氏 他 5 名 始めにビデオにて AELB の紹介を受けた。安全、セキュリティ、医療、農業、放射線化 学まで幅広く原子力に係る規制全て、さらには輸出管理までも AELB が所管している。 2011 年 1 月に設立された MNPC が、原子力発電推進について包括的に推進する機関で あり、迅速な意思決定を行うことを目的としている。FS も通常2年はかかると聞いている が、MNPC がコンサルタントを雇い加速する。7 月には初号機のためのサイト選定を行う 予定とのこと。2013 年に契約先を決定、2021 年に初号機運開を計画している。 (Adnan 長官より) 「AELB としてはこの 8 月に原発規制関係の法整備の準備を完了し、 年内には議会での承認を得たいと進めている。また、建設・運転・廃炉関連の法規制も 3 年以内を目標に行う計画である。原子力発電の安全性についてマレーシアの特に若い人た ちに理解と興味を持たせることが人材育成の大きなテーマの一つだと考えている。AELB は、日本では安全への要求が高く、原発は安全を確保するために停止されるように設計さ れていることを理解しているが、日本の原子炉は止まってばかりで危ないと誤解している 人もいる。 初めの 2 基の原発のタイムスケジュールでは規制・評価について教育する時間が足りな い。3、4 号機までには人材育成も行うにしても、1、2 号機は海外から安全評価やライセン シングについての技術サポートを得ることを主体で考えている。日本とマレーシアの原子 力関係の協力については、段階的に進めて欲しい。特に、人材育成の協力については早く 進めることが必要だ。AELB の日本側のカウンターパートは JNES になるということで、 同機関と協力を進めたい。 」 AELB の職員は現在 163 名だが、今年は 10 人採用(内 4 人はエンジニア、2 人は法律関 係)したということであった。 ③国立電力大学(Universiti Tenaga Nasional:UNITEN) (訪問日)平成 23 年 3 月 7 日 (対応者)工学部副学部長 Norshah Hafeez Shuaib 氏 他 4 名 TENAGA グループおよび UNITEN について紹介を受けた。人材育成については、原子 力発電所建設に向けて、基礎技術だけでなく、実務レベルの技術移転、スキルのトレーニ ングも検討してもらいたいと要望があった。 マレーシア学生の日本の大学での受入れを希望しているが、派遣のための予算が課題で ある。日本政府の奨学制度はあるが、枠は少ない。マレーシア側が出すというのであれば 歓迎であり、何を学びたいのかにより適切な大学・先生を紹介することが可能。 大学連合のグローバルヤングエリートコースについての質問では、詳細内容はまだ検討 中であるが、2-3週間くらいの集中的なセミナー形式を考えている旨回答した。 日本では初期の原子力技術は米国から導入した - 研究機関から米国の研究所へ派遣し たり、産業界からも大勢が米国の産業界に研修に行った。同じように日本もマレーシアか らのこのような受入れも含めて人材育成で協力をしていく意志があることを伝えた。 ④在マレーシア日本国大使館 (訪問日)平成 23 年 3 月 7 日 (対応者)高橋美佐子参事官(経済部長)、福地真美経済アタッシェ 人材育成ネットワーク等について説明した。また質問に対応し、JAEA の国際研修では、 短期は技術研修コースで、長期は講師となる人材の育成を行っている旨説明した。 今まで訪問した機関では、 「日本からベテランを長期に派遣してくれという要望が多かっ た。また、 (日本側からの派遣だけでなく)日本でのトレーニング受入れについても要望が 多かった。双方向の活動を可能とするような検討が必要。」等の内容を説明した。 (高橋参事官より) 「マレーシアの原子力人材についての国際協力ということだが、マレ ーシアでは 2021 年の原子力発電導入に向けて、急速に人材育成をやらなくてはならないの で、ニーズにうまく合えばマレーシア側は乗ってくると思う。考慮すべき点は、①マレー シアでは学位取得が重要(少なくとも MD か PhD でないとトップになれない社会構造)で あり、留学や研修でも学位が取れないというのは、魅力という面で致命的といえる。一方 で、②この 10 年の間に 2 基の原子力発電所を建設・運転するための人材を揃えなくてはな らない。原子力発電には運転管理などいろいろな仕事があり、必要な資格もあると思う。 この研修を受けると、この分野の人が何人養成できるというマトリックスが見えるような メニューを準備すると、マレーシア側の関心を高めることができると思う。 人材育成について日本側に一元的に話ができる相手はいないのかと聞かれていたので、 今回の原子力人材育成ネットワークの設立はこの受け皿ができたものと受け止めている。 特に、ネットワークのホームページの英語化をできるだけ早く進めてもらいたい。 」 さらに、遠からず FS の実施が決まる。日本からどんどん来て、マレーシアでの日本の原 子力の存在感を高めていただきたい、等の発言があった。 ⑤マレーシア原子力公社(Malaysia Nuclear Power Corporation:MNPC) (訪問日)平成 23 年 3 月 8 日 (対応者)CEO Mohd Zamzam Bin Jaafar 氏 他 1 名 2011 年 1 月 11 日に設立(宣言)された MNPC は、原子力発電推進について包括的に推 進する機関である。メンバーは今日(3/8)現在で Zamzam 氏、Jamal 氏(MNA)と AELB からの 1 名の 3 人しか正式には任命されておらず、これからメンバーの選定を進めていく という状況であった。 原子力人材育成ネットワークについて、これまでに日本でやって来ているいろいろな人 材交流協力をこのネットワークに引き継いでいくのかという質問があり、このネットワー クは以前から実施している活動をこれに代えていくというものではなく、これまでの活動 の統括的なまとめおよびプラスアルファの位置づけと考えていると回答した。 大学連合ネットのグローバルヤングエリートコースは、 (韓国の KEPCO でも同じような 名前のものをやっているが、)どのようなものを考えているのかという質問に対し、WNU のようなものをイメージしていると回答。 日本に行くとまず日本語を覚えるために 2-3 年をロスしてしまうので、米英が主な派遣先 と考えている - また規制などに係るコンサルティングについても欧米が主と考えている とのことであった。これに対し、東工大など日本でも英語で講義をしている大学院がある ので、検討してもらいたいとの返答をした。 MNPC では、 (原子力発電建設に当たっての)国内コミュニケーションチーム(PA や政 治関連などの専門チーム)の設置を考えている。台湾では政治が原子力に対して安定でな かったので失敗したが、マレーシアでは全ての政党が推進賛成という状態に持って行きた いとのことであった。 ⑥マレーシア国民大学(Universiti Kebangsaan Malaysia:UKM) (訪問日)平成 23 年 3 月 8 日 (対応者)応用物理専攻長 Muhamad Samudi Yasir 氏 他 5 名 原子力人材育成ネットワークの初等中等教育支援とはどのようなことかという質問があ り、一例として小・中学校の先生に原子力の基礎的な知識を学んでもらい、PA 活動等に役 立てることなどが期待される旨回答した。また、日本原子力学会の同ネットワークでの位 置づけについて、学会ではシニアネットワークなどの活動実績があり、 (今後協力して)原 子力業界を定年退職したベテランに人材育成の講師人材として活動してもらうことなどが 考えられることを説明した。 UKM からは、日本への期待もこめて、韓国の KAIST が 3 人の教授を派遣して実施した 2 週間のショートコースの紹介があった。マレーシアでは原子核物理等の科学分野は 1970 年ごろからと歴史が長いが、原子核“工学”については学位を与えるコースがなく課題と 捉えているようで、原子力発電実施のためには工学的分野の強化が必要との認識を持って いる。 日本では、PA において誰が重要な役割を果たしているのかとの質問があり、PA におけ る女性の果たす役割の重要性、また原子力発電所の立地地域・地元への PA の実施主体は、 電力会社であるという内容の説明を実施した。さらに、PA はいつの時点から取り組めばよ いのかという質問に対しては、今すぐ始めるべきで、かつ長期的に継続して行うことが重 要と回答した。 写真 1 タイ TINT における原子力人材育成関係者合同会合 写真 2 ベトナム訓練教育省における関係者会合 写真 3 マレーシア原子力庁における関係者会合
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