2014. 1.12 説教メモ 山口道征 創世記9章18~29節 「ノアの子供たち」 ●ノアの子供たちについては、すでに、5:32、6:10、7:13に、セム、ハム、ヤフェト三兄弟として登場して おります。本日の箇所には、18,19「箱舟から出たノアの息子は、セム、ハム、ヤフェトであった。ハムはカナンの 父である。この三人がノアの息子で、全世界の人々は彼らから出て広がったのである。」と記 されております。ノアの子供たちこそ、人々の先祖だということでしょう。主の言葉が聞こえ て参ります。「産めよ、増えよ、地に満ちて地を従わせよ。」(1:28)、「産めよ、増えよ、地に満 ちよ。」(9:1)、「あなたたちは産めよ、増えよ 地に群がり、地に増えよ。」(9:7) ●三人の子供たちについてはそのまま、ある注解者の記述を引用させていただきます。"セム は父ノアの信仰を継承した。セムとは「名」、「名声」、「名声ある」、「有名な」の意で、いわゆるセム族 の祖とされる。セム族は古代世界の歴史を支えるアッスリア、アラビア、ヘブル、アラブなどの諸民族で、宗 教的天分に恵まれており、彼らの中からユダヤ教、キリスト教、イスラム教が出た。ハムとは、「暑い」に関 連する語とされ、「熟しやすい人」とも解される。ハムはカナン人の祖として記されている。彼は 生ける神に対する正しい信仰を受け入れず、カナン人の頽廃的な酒神祭儀に自己の熱心を傾 けた。ヤペテ(ヤフェト)とは「彼を広くさせよ」の意で、27節では「ヤペテを大いならしめ(ヤプテ);新 共同訳:ヤフェトの土地を広げ(ヤフェト)」との語呂合わせがなされている。ヤペテは第10章1-2節、歴 代志上第1章4-5節では、いわゆるインド、ヨーロッパ語族の祖となったわけで、ユダヤ人から見た異 邦人をさす。" ●20「さて、ノアは農夫となり、ぶどう畑を作った。」とあります。「農夫」とは、直訳すると土の人 で、「ぶどう畑を作った」のは、21節によりますとぶどう酒醸造のためであったようです。そ して、ある時、ノアは自分が発明したぶどう酒を飲んで酔い、天幕の中で裸になるという醜態 を演じてしまったのです。「ノアは神に従う無垢な人であった。ノアは神と共に歩んだ。」(6:9)と あるノアにしてこの醜態と思わされる出来事です。 ●この出来事から、旧約聖書に登場するある人物を思わされます。イスラエル統一王国第二代目 の王ダビデです。彼は、その信仰の素直さの故に神に愛された王で、多くの詩編の作者でも あり、信仰の人でした。しかし、その信仰の人ダビデが部下ウリヤの妻バト・シェバを強引に奪って しまうのです。(サムエル記下11章)「ダビデのしたことは主の御心に適わなかった。」(サムエル下11: 27)と記されております。 ●酒におぼれたノア、女性の美しさにおぼれたダビデ、神に義(ただ)しい人と認められていた 人でさえ、その欠陥を露呈する様は、正に人間、罪人の姿だと言えるのではないでしょうか。 ●さて、ハムはこの父の醜態を22「二人の兄弟に告げた。」というのです。どうして、彼は、信仰心 の熱い父をおとしめるような行為をしたのでしょうか。正しい信仰心を持った父への反抗 心であったとしか思えません。信仰者ノアへの挑戦でもあり、神への挑戦でもあったと言うこ とでしょうか。 ●一方、父の醜態を告げられたセムとヤフェトは自分たちの着物で、23「父の裸を覆」い 23「父の裸を 見」ることはいたしませんでした。彼らは父の恥を覆い、その弱さに同情し、その愛の行為を -1- 示したのです。彼らは、ハムの罪に巻き込まれることを回避したのです。ところで、24節にはハム は「末の息子」であると記されており、ノアの子供たちはセム、ハム、ヤフェトの順に誕生したのではな いことが示唆されているようです。 ●ノアは酔いからさめて、目覚め、ハムのしたことを知って、25「呪われよ」と、本来、ハムは呪われ よ、というべき所を、その子孫である「カナンは呪われよ」と言うのでした。呪いの言葉で思い出 されますのは、エバをだました蛇に向かって、「呪われるものとなった。」(3:14)と主なる神が 言われたことです。呪いは交わりの拒絶、共同体からの排斥を意味しております。相手に不 幸や害をもたらす効果のある言葉であると信じられていたようです。父の犯した罪はその 子にも及ぶと言うことなのでしょうか。 ●25~27節に三回、ノアによる呪いの言葉が記されております。 25「奴隷の奴隷となり、兄たち に仕えよ。」、26「セムの奴隷となれ。」、27「その(ヤフェトの)奴隷となれ。」また、セムとヤフェトの行為が讃 えられるのではなく、26「セムの神、主をたたえよ。」となっております。「たたえよ」は、祝福され よとも、訳すことが出来る言葉だそうで、祝福の対象は、あくまでも、主なる神なのです。 ●28,29「ノアは、洪水の後三百五十年生きた。ノアは九百五十歳になって、死んだ。」 ●お祈りいたします。 以上 -2-
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