10.野外調査・観測、海外での活動

10.野外調査・観測・海外での活動における注意
10.野外調査・観測、海外での活動
10.
10.1 はじめに
野外での調査・観測は多岐にわたっている。また、屋内実験と比較して活動範囲、活動
の時間帯もまちまちである。従って予想される事故の種類も、往復の交通事故、現地での
遭難事故、けが等、多岐にわたる。これらの事故を未然に防止するためには調査・観測者
自身の心掛けが大切であることはいうまでもないが、教官が現場に同伴して的確な指示を
与え注意を喚起することも肝要である。また事故が起こった場合の対処法についても事前
に検討しておく必要がある。工学部では調査・観測中の万一の事故に備え、保険加入を極
力勧めている(学生教育研究災害傷害保険については、入学時加入としているが、入学時
に加入しなかった者および保険期間の切れたときは、4 月または 10 月に加入できる。詳し
くは学生便覧を参照または工学部事務部学部運営グループに問い合わせること)
。
また近年は岩手大学教員の国際的活動の活発化に伴い、学会活動、調査活動、海外貢献
活動、国際交流活動等で教職員・学生が海外に出る機会が増えている。さらには工学部に
は「国際研修」
「海外インターンシップ」など海外での語学研修や技術研修を前提とするも
のも正規のカリキュラムの中に含まれている。海外に出るに際しては国内とは異なる様々
な注意が必要であり、派遣先の様々な状況の把握や連絡手段の確保なども必須となる。本
項では海外渡航に不可欠な「海外旅行保険」について簡単に説明をし、併せて海外での活
動におけるいくつかの注意事項を紹介する。
10.
10.2 野外調査・観測における安全確保
野外調査・観測における安全確保
(1)野外調査・観測では、調査地・観測地の選定,調査・観測計画の立案は安全を第
一に考えて行い、時間、人数に余裕をもたせるよう配慮する。
(2)調査・観測にあたっては、作業服、作業靴、軍手など作業にふさわしい装備を心
がける。野外地質調査等で丘陵地や山岳地帯を踏査する場合には,夏期であって
も手袋、帽子(安全帽・ヘルメット)、登山靴(沢登りの際には地下足袋などがよい
場合がある)等を着用し、通常の登山で必要とされる所持品(医薬品、懐中電灯、
行動食など)を携行する。
」雪氷関係の調査では寒さに対する十分な装備でのぞみ、
予備の手袋、防寒着、作業靴などを用意する。
(3)調査・観測は複数で行うことを基本とし、十分に安全と判断できる場合を除いて
単独での調査・観測は控える。
(4)調査・観測地への章での移動は、余裕を持った行程をたて、交通安全に十分留意
する。雪道・山道や移動距離が長い場合には安全運転に特に留意する。
(5)調査・観測中の連絡先はあらかじめ決定しておき、調査.観測者や指導教官に周
知する。
(6)天気予報や気象の変化、特に雷や雪崩等には十分留意し、無理な行動は控える。
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(7)予想外の事態が発生した場合には、速やかに指導教官に連絡し、指示を受ける。
又、調査現場には、できるだけ携帯電話を携行し、随時研究室と連絡がとれる体
制を維持する。
(8)橋梁の現場実験など、高所での作業は転落防止に侍に留意する。
(9)深夜の野外観測においては、当該地域の住民の了解、警備関係への連絡などを徹
底しトラブルの発生のないようにする。
(10)水中での作業,船上での作業などは作業条件が悪いので監視人を配置して事故防
止に努める。特に海上での作業では現場管理者の作業規定の範囲内で行い事故防
止に努める。
(11)津波、洪水等の災書時の調査では行政機関などの指示を遵守し
て行う。
10.
10.3 海外旅行保険について
海外出張等では滞在中万一の事故・事件等に遭遇すると大変である。従って海外に
出る教職員学生は必ず「海外障害保険」に加入して貰う。
「海外障害保険」には団体取
り扱いはないので、各人が個別に保険を掛けることになる。保険期間の設定は原則と
して盛岡の自宅出発時から盛岡の自宅到着日までである。
(1) 海外障害保険加入申込書に各人は必要事項を記入する。保障タイプは各保険会社と
も多様なものを用意しているから、各人はその中から適当なものを選べばよい。な
お海外旅行保険の申込書類の中には「死亡時保険金受取人」の指定項目がある。特
に指定しなければ法定相続人(教職員の場合にはおそらく配偶者、学生の場合には
おそらく両親)が保険金受取人になるので、保険加入申込に先だって必ずそれらの
人々の同意を得ておくことが必要である。
(2) 生協の TUO カードにも海外旅行保険が付随しているようだが、保障内容が極めて貧
弱であり 2〜3 日程度の海外旅行までが対象と考えるべきである。それ以上の長期に
わたる海外渡航・滞在をする場合には別途に海外障害保険に加入するべきである。
(3) 海外旅行保険の保障対象外となる事柄を事前に把握しておく。
(a) 契約している海外旅行保険の支払い対象とならない病気、ケガ、事故の場合
・いわゆる「持病」
「既往症」等、旅行前に発生している疾病
・妊娠・出産、または流産およびこれらに基づく疾病
・「虫歯」「歯槽膿漏」等の歯科疾病
・自殺行為、闘争行為、または犯罪行為によるケガ、死亡
・酒酔い運転または無資格運転によるケガ、死亡
・自動車・バイクの所有、使用または管理に起因する損害保険責任
・携行品の欠陥、瑕疵、故障または自然の消耗による損害
・携行品の紛失または置き忘れによる損害
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携行品損害については品物 1 点あたり 10 万円限度および減価償却の適用があ
る。また、契約内容によっては、盗難、強盗、航空会社等への寄託手荷物の不着
による携行品の損害に対しては保険期間を通じて 30 万円が支払い限度となる。
なお、現金、小切手、商品、商売道具などは保険の対象にならない。
(b) 支払い対象となる特約条項のついていない場合
・病気になったが、治療・救援費用担保特約または疾病治療費用担保特約条項のな
い場合には、病院の案内等はできない
・救援者費用等担保特約条項または治療・救援費用担保特約条項のない場合には、
遺体の日本への移送手配、救援者の渡航手続き、ホテルの手配等はなされない。
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10.4 海外での活動における一般的注意事項
海外では「自分の身は自分で守る」が鉄則となる。渡航前に外務省のホームページの
中の「海外安全ホームページ」、およびその中の渡航先の部に予め目を通しておき、現
地の衛生状態、治安、戦争・テロの可能性などの項目に目を通しておくことが望ましい。
外務省「海外安全ホームページ」:http://www.pubanzen.mofa.go.jp/
本項では実際に海外で多発している犯罪や、発生する可能性が高いと思われる犯罪の
いくつかの事例を場所や状況に応じて取り上げ、それぞれに対する具体的な注意事項を
列挙した。
[空港、ホテル・ロビー等における置き引き]
・チェックイン・アウトの際や、荷物の入れ換えの際などに、携行品に対する注意や
警戒を怠らない。
・鞄などを床やカウンター上に置いたまま、手続きに夢中にならない。
[繁華街の路上や人込みでのスリ、引ったくりなど]
・外出に際しては、できるだけ旅券、航空券、多額の現金や貴重品を持ち歩かない。
・やむを得ず旅券、航空券などを持ち歩く場合も、バッグなどには入れずに数カ所に
分散して身に付ける。
・なるべく車道から離れて歩き、携帯品などは車道側に持たない。
・ショルダーバッグの肩紐はたすき掛けにし、バッグを体の前面で必ず片手あるいは
両手を添えて保持する。
・人前で不用意に財布を出し入れしない。
・不意に話しかけられても、持ち物から注意をそらさない。
・クレジットカードで支払いをする際は、伝票の金額を必ず確認してから署名し、領
収書を必ず受け取って決済が終わるまで保管する。
[飲食店での置き引き]
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・友人など同行者が一緒の場合は、必ず誰かが席に残る。
・やむを得ず一人で食事を取りに行く場合でも、席を離れる際は必ず貴重品を持って
移動する。
・食事中でも、椅子の背もたれに貴重品や財布の入った上着やバッグなどを掛けたま
まにしない。
[海岸での置き引きなど]
・所持品を浜辺や車の中に置いたままで海水浴をしない。
・特に、車でサーフィンや海水浴に行く際に、車内の見えるところに鞄などを放置し
たまま車を離れない。
[ゴルフ場での盗難]
・ゴルフプレー中、ゴルフバッグのサイドポケットには貴重品を入れない。
(カート
に置いてあるバッグから目を離した間に金品を盗まれるケースが多発している。
)
[車上狙い]
・車内は安全と考えるのは大きな間違いである。車を離れた間に車内に置いていた貴
重品を盗まれる事例が多く報告されている。特に車外から見える場所に鞄や荷物
を放置して車から離れない。
・車のトランクの中も決して安全ではない。一度扉を破られれば車内もトランク内も
同じ。
・路上駐車は、たとえパーキングメーターのある場所でもできる限り避ける。路上駐
車は、誰が車に近寄っても、また車から物を運び出していても不審ではないこと
から危険である。
・給油ステーションなどで、ほんの数十秒車を離れた間に盗難が起こった例もある。
[車の盗難]
・車を駐車する際は、できる限り出入りが規制された、管理人が常駐する駐車場を利
用する。
・駐車場に駐車する場合も、管理人室から見える場所を選ぶ。
・警報装置やハンドルロックなどの追加的な防犯手段の導入も検討する。
[女性に対する暴行]
・夜間の独り歩きは避ける。(短い距離でも、タクシーなどの移動手段を考える。
)
・たとえ昼間でも、人通りのない場所や地域への立ち入りは十分注意する。
・知り合いに対してでも、否定する場合ははっきり No と意思表示する。
(甘言を用
いて住宅や室内に連れ込まれ性的被害に遭った例もあります。)
[ヒッチハイク]
・見知らぬ人の車に同乗しない。見知らぬ人を同乗させない。
[いかさま賭博]
・「以前、日本で生活していた。」
「兄弟が日本に住んでいる。日本のことをもっと知
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10.野外調査・観測・海外での活動における注意
りたい。」
「カジノのディーラーをしている。必ず勝てる方法を知っている。
」など
と親しげに話しかけてくる人を軽々しく信用しない。
・知り合ってすぐに住所や電話番号、宿泊先などを教えない。
[長距離バスや列車内での犯罪]
・車中では貴重品を放置しない。
・特に夜行便を利用する場合、所持品の管理には特に注意する。
(眠れないからとい
って睡眠薬やアルコールを摂取することは危険。友人などの同行者がいる場合は
睡眠を交互にとり、常にどちらかが荷物の見張りをできるようにすることも必
要。)
[ホテルなど宿泊先での盗難]
・貴重品は客室内にある金庫あるいはホテルのセーフティーボックスに保管する。
(但
し、ホテルのセーフティーボックス保管中の盗難も皆無ではなく、ホテルの管理
体制に問題があると思われる場合は、自ら管理せざるを得ないこともある。
)
・部屋に残すスーツケースなどは、必ず複数の鍵をかける。
・ロビーや人前で自分の部屋番号や行動予定をあまり話さない。
・客室内にいるときは、必ず出入り口の施錠とドアチェーンを掛けておき、来訪者が
あった場合は、まず扉を閉めたまま応対し、次にドアチェーンを掛けたまま相手
を確認する。
・外から帰ってきた際は、不審な人が後を尾行していないか、あるいは部屋の付近に
見知らぬ人がいないか注意し、不審な人物がいる場合は部屋へは帰らずにフロン
トに連絡する。
[バックパッカー向けの宿泊施設での盗難]
・比較的廉価な宿泊施設では、貴重品は常時いかなる時も身に付ける。
・貴重品は、たとえシャワー中でもシャワー室内の手の届く範囲で常時見える場所に
置いておく。
・部屋を空ける際はほんの数分でも必ず鍵を掛け、貴重品は肌身から離さずに持ち歩
く。
・ドミトリー形式で、他人と相部屋になる場合は特に所持品や貴重品の保管に注意す
る。
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10.5 海外で特に注意すべき事柄
(1) まず渡航先の治安状態や衛生状況を事前によく調べておくべきである。治安が良い
とされる国でも特に夜間は犯罪が多発することが多い。慣れない土地に滞在するの
だから、いろいろな点で注意深い日常の行動が求められる。また開発途上国への渡
航の場合には事前に何種類かの予防接種をしておいた方がよい場合もある。
(2) 現地の天候や気温等も是非事前に調べておき、対応した服装を持参するべきである。
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10.野外調査・観測・海外での活動における注意
(3) 世界的には自国の農業保護の観点から海外から動植物を持ち込むことを禁じている
国が極めて多い。従って日本から海外に動植物を持ち込むことは不可であり、土壌、
肉製品、植物の種、生鮮食品(野菜・果物など)も一切不可と考えるべきである。
(4) 海外の国に滞在する場合は、常に自分のパスポートを持参するのが原則である。た
だし日本人のパスポートは犯罪者に狙われやすいから、紛失や盗難には充分に注意
して欲しい。
(5) 普段はあまり高額のお金を持ち歩いてはいけない。日本人の感覚では小銭でも海外
では大金である場合が多い。また、人前では自分の財布(お金)やクレジットカー
ドなどをできるだけ出さないように心がける。
(6) ポケット電子辞書やノートパッドなどは外国ではしばしば人目を引きやすい。人前
に見せるようなことはできるだけ避けることが望ましい。
(7) 治安の良し悪しに関わらず、また男女や年齢を問わず、夜間の一人歩きは絶対に避
ける。どんなに治安の良い国でも午後 5 時を過ぎると町の気配が変わるようなこと
はよくある。特にアメリカ合衆国は銃社会であり、拳銃を持っている人が周囲にい
ることを認識しなければならない。夜間にホテルの近くで銃声が聞こえるなどとい
うこともしばしばあるようである。
(8) 日本の交通規則は海外では通用しない。また交通事故の加害者になると国によって
はかなり重い犯罪者扱いをされる場合もある。従って仮に日本の自動車免許を持っ
ていても、滞在先で軽い気持ちで自動車を運転するのはあまり勧められない。また
海外には自転車に対しても自動車と全く同じ交通規則を適用する国が多いので、自
転車の利用もできるだけ避けたい。
(9) 生活用品の大半は滞在先の近所の商店、スーパー、ショッピングセンター等で購入
できる。長期滞在の場合には日本から物品を持ち込むよりも現地で購入する方が割
安である場合が多い。
(10) どこの国でも麻薬・覚醒剤などの薬物の購入・使用、売春・買春などは重犯罪であ
る。決して現地の人の怪しげな誘いに乗ってはいけない。また自分の所有物が盗難
にあった場合には速やかに警察に連絡する。特にスーツケースやバッグなどが紛失
した場合に、「代わりにこれを使いなさい」というような現地の人の代用品提供の
申し出があっても断固として断ること。仮に自分が本当に知らなかったとしても、
麻薬の運び屋をして逮捕されたら重犯罪の扱いとなり最低 20 年程度の刑務所行き
は確実である(「死刑」という国もある)。
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