C146-0283 No. Gas Chromatograph Mass Spectrometer GC/MS 8 GCMS-QP2010 Ultraにおける環境負荷低減技術の開発 株 式 会 社 島 津 製 作 所 分 析 計 測 事 業 部 ライフサイエンス事 業 統 括 部 MSビジネスユニット 川名修一 宮川治彦 Abstract: ガスクロマトグラフ質量分析計(GC-MS)は、食品、環境、法医、 ライフサイエンス等幅広い分野で使用されている。 一方、GC-MSに対するランニングコストの削減や環境負荷への配慮に対する関心が高まっている。 これらの社会情勢 を考慮し、キャリアガスと電力の消費量を節減する技術開発を行った。分析時の省エネルギー対応として、分析時間を 短縮するFast-GC/MS法に必要な高速スキャン制御技術を開発した。本技術を用いたFast-GC/MS法を尿中の有機酸 分析に適用することにより、分析の質を保ち、かつヘリウムガスと消費電力をそれぞれ従来比で90%、66%削減できる ことを確認した。一方、分析待機時の省エネルギー対応として、分析待機時に不要な電力とキャリアガスをセーブする エコロジーモードを開発した。本機能により、分析待機時のキャリアガスと消費電力をそれぞれ従来比60%、36.5%削 減できることを確認した。 本稿では、 ランニングコスト削減と環境負荷低減を実現する高速スキャン制御技術とエコロジーモードについて紹 介し、それらの技術による省エネルギー効果について報告する。 K ey w o rds : Ecology mode, Running cost, Fast-GC/MS, High speed scan, GC-MS, Green technologies はじめに: ガスクロマトグラフ質量分析計(GC-MS)は、ガスクロ 装置に高い安定状態が要求され、分析時以外も連 続 運 マトグ ラフ( G C )と質 量 分 析 計( M S )で 構 成 さ れ る 転 することが 多 い 。した がって、G C - M S による分 析 業 (Fig.1)。GC部で複数の成分が含まれる混合物試料を 務 は 、多くの ヘリウムガスと電 力を消 費 する。一 方 、経 気化し、そのガスをカラムに通すことにより各成分を分 済・社会活動における環境負荷の低減は地球規模での 離する。次に分離された各成分をMS部でイオン化し、質量 課題となっており、GC-MSを含む分析機器においてもグ 分離されたものを測定する装置である。GC-MSは数ナノグ リーンケミストリーの12原則 2)に含まれる環境と経費への ラムから数フェムトグラムの微量成分を測定できるため、 これ 負担を考えた省エネルギー対応が求められている3)。 食品メーカの品質管理部門、医薬品・化学メーカの開発部 らの 社 会 情 勢 を 考 慮し、著 者らは 、分 析 時と分 析 待 機 門など、 環境や食品、 化学などあらゆる分野において用いら 時それぞ れ に お いて、ヘリウムガスと電力の消費量を れている。特に近年では、食品や環境中の有害化合物の測 節減する技術を開発した。分析時の省エネルギー対応 定に加え、病気の診断マーカや機能性食品の研究分野に 策として、分析時間の短縮を検討し、そこで必要となる高 おける代謝成分解析(メタボロミクス)など、人の健康、安 速スキャン 制 御 技 術( A d v a n c e d S c a n n i n g S p e e d 心・安全にかかわる分野への応用も広がっている。 Protocol,ASSP TM)4)を開発した。一方、分析待機時の省エ GC-MSは、広範囲な線速度において高いクロマト分離 ネルギー対応として、分析待機時に不要なGC、MS、PCの 能を有するヘリウムガスをキャリアガスとして用いる。 し 電力を自動的に節電し、なおかつ、ヘリウムガスの消費量 かし、貴重な資源であるヘリウムガスの供給不足により、 を節約する技術(エコロジーモード)を開発した。 1) ランニングコストに占める割合が高 年々価格が上昇し 、 本稿では、省エネルギーを実現するために開発された まっている。 また、GCの注入口部、オーブン部等の加熱や GCMS-QP2010 Ultra(Fig.2)に搭載されているASSPTMとエ 質量分析部を真空に保つため、多くの消費電力が必要と コロジーモードおよびそれらの技術による環境負荷低減効 なる。さらに、測定対象化合物が非常に微量であるため、 果について報告する。 GCMS-QP2010 Ultra における環境負荷低減技術の開発 1 Gas Chromatograph Mass Spectrometer GC/MS 制御部、記録部 データシステム 試料気化室 流量調整部 GC MS カラムオーブン 検出部 質量分離部 イオン化部 キャピラリ カラム He インターフェイス 排気システム キャリアガス Fig.1: ガスクロマトグラフ質量分析計の概念図 Table 1 従来法とFast-GC/MS法における分析時間、 ピーク幅、測定周期 分析時間 ピーク幅 測定周期* 従来法 > 10 min > 4s > 0.4s Fast-GC/MS法 1 - 10 min 0.5 - 3s 0.05 - 0.3s *) 1ピークあたり10ポイント以上の測定が必要 Fig.2: ガスクロマトグラフ質量分析計 GCMS-QP2010 Ultra 分析時における環境負荷低減技術 2 Fast-GC/MS法と四重極型質量分析計について Fast-GC/MS法を用いて測定されたクロマトグラムのピー 分析時のヘリウムガスと電力の消費量削減により環境 ク幅とデータサンプリングレートの関係をFig.3に示す。 負荷低減を実現するため、 分析時間短縮による環境負荷低 著者らが開発を行った四重極型質量分析計(以下、 減の可能性について検討を行った。分析時間短縮の手段 QMS)は、イオン源で生成されたイオンが特定のAC電圧 としてFast-GC/MS法5)∼7)を用いた。Fast-GC/MS法は、主 とDC電圧が印加された4本のロッドの間を振動しながら に 内 径 が 細く短 い カラ ム( 例 えば 、長 さ 1 0 m 、内 径 m/z をもつイオンのみが四重 進み、特定の質量電荷比( ) 0.10mm)を用い、注入口部に高いキャリアガス圧力(数 m/z 極を透過し、 検出される (Fig.1) 。 Scan法では、ある の 百kPa以上)を加え、カラムオーブン温度を急速に昇温し 範囲を連続的に測定するため、四重極に印加するAC電 (30℃/min以上) 、 分析を行う。 本手法は、 従来の分析法 (従 圧とD C 電 圧 を 連 続 的 に 変 化 さ せ る 必 要 が ある 。 来法) と比較してサンプルの溶出時間が早く、 かつピークが Fast-GC/MS法では、データサンプリング周期が従来法 シャープなため、 クロマト分離能を損なうことなく、分析時 より短くなるため、四重極に印加されるAC電圧とDC電圧 しかしながら、Fast-GC/MS法 間を短縮できる (Table 1)8)。 の時間あたりの変化が大きくなる。 その結果、 イオンの透 はピークが非常にシャープなため、再現性良くクロマトグ 過率が低下し、感度が低下するという問題があった。 した ラムを描画するには、 従来のデータサンプリング周期より がって、 高速Scanが求められるFast-GC/MS法では、 飛行時 短い周期での測定が必要となる 9)。例として、従来法と 間型質量分析計のGC-MSが用いられていた10)、11)。 GCMS-QP2010 Ultra における環境負荷低減技術の開発 (x100,000) (x100,000) TIC (a) 3.0 TIC (b) 4.0 2.5 3.0 2.0 1.5 2.0 1.0 1.0 0.5 7.675 7.700 7.725 7.750 (a)従来法;ピーク幅:6s,測定周期:0.5s 3.000 3.025 3.050 3.075 3.100 (b)Fast-GC/MS法;ピーク幅 1.5s,測定周期:0.15s,0.50s(破線) Fig.3: データサンプリング周期とトータルイオンクロマトグラム 1.00 (x10,000) 237 0.75 73 252 0.50 0.25 56 84 135 223 178 0.00 50 100 (x10,000) 1.00 73 150 200 250 237 0.75 252 0.50 0.25 84 135 58 0.00 50 100 (x10,000) 1.00 73 150 178 223 200 250 0.75 0.50 0.25 58 84 237 252 135 Fig.5: Fast-GC/MS法による医薬品類の分析 上段:ASSP TM ONのトータルイオンクロマトグラム 下段:ASSP TM OFFのトータルイオンクロマトグラム 0.00 50 100 150 200 250 Fig.4: Theophyline-TMSのマススペクトル 上段:NIST マススペクトル 中段:ASSP TM ONによるマススペクトル(新技術) 下段:ASSP TM OFFによるマススペクトル(従来法) Fast-GC/MS法に対応したQMSの開発 QMSを分析時の省エネルギー化が可能なFast-GC/MS 20000u/sec( QMSでは世界最高速度)に対応した高速 法に用いるため、高速データサンプリング技術と高速ス な演算処理プラットホームを新規に設計した。また、高速 キャン測定時における感度低下を改善する技術の開発 スキャン時の感度低下を改善するため、高速スキャン測 を行った。従 来 の 技 術で は 、装 置 の デ ータ処 理 速 度 が 定において四重極を透過するイオンを加速する高速ス 遅 い た め、高速データサンプリングが不可能であった。 キャン制御技術『ASSP TM』を開発し、イオンの透過率を改 また、高速スキャン測定時には、四重極部におけるイオ 善した。その結果、高速スキャン測定における感度が従 ンの 透 過 率 が 低 下 する。特 に、透 過 速 度 の 遅 い の m/z 来 装 置と比 較して5 倍 以上 向 上した(Fig.5)。特 に、本 大きなイオンの 透 過 率 が 著しく低 下 するた め、 の m/z 技術は高速スキャン測定における の大 きい イオン m/z 低いイオンに対する相対強度が低下し、マススペクトル の 透 過 率 を 顕 著 に 改 善 する た め 、マ ス ス ペクトル パ パターン が 変 化してい た( F i g . 4 )。これらの 課 題 を 解 ターンが改善され、ライブラリサーチの類似度が向上し 決するため、データサンプリング周期を0.01秒(1秒間に た(Fig.4)。 これらの技術開発により、QMSをFast-GC/MS 100回測定)、最高スキャンスピードを従来の2倍である 法へ適用することが可能になった。 GCMS-QP2010 Ultra における環境負荷低減技術の開発 3 Gas Chromatograph Mass Spectrometer GC/MS Fast-GC/MS法を用いた尿中有機酸分析における省エネルギー効果 Fast-GC/MS法による環境負荷低減効果を、 先天性代謝異 法を用いることによりヘリウムガスの消費量が従来法の 常症の診断やバイオマーカ探索等で行なわれている尿中有 1/10になることが分かった。一方、1検体あたりの消費 機酸分析で評価した。 従来法とFast-GC/MS法の分析条件を 電力は、従来法:945Wh、Fast-GC/MS法:324Whとなり、 Table 2に、 測定したクロマトグラムをFig.6に示す。 Fast-GC/MS法は、621Wh消費電力を削減可能であること Fast-GC/MS法を用いることにより、 分析時間が60分から12 が分かった。 分に短縮されたにも関わらず、 クロマト分離能を損なうこと 以上の結果より、 Fast-GC/MS法に高速な演算処理プラット なく高感度に分析できることが分かる。 また、 1分析あたりの ホームとASSPTMを搭載した四重極型のGCMS-QP2010 Ultra ヘリウムガス消費量は、 従来法:1200mL (20mL/分×60分) 、 を用いることにより、 分析に求められる質を保ち、 かつヘリウ Fast-GC/MS法:120mL (10mL/分×12分) であり、 Fast-GC/MS ムガスと電力の消費量を削減できることが証明された。 Table 2 尿中有機酸分析における分析条件 従来法 分析時間 キャリアガス圧力 Fast-GC/MS法 60min 12min 83.7kPa 642.1kPa キャリアガス全流量 20mL/min 10mL/min カラムオーブン温度 100℃(4min)−4℃/min 80℃(0min)−30℃/min −280℃(11.0min) −325℃(3.83min) 0.5s 0.15s プログラム データ測定周期 (a)従来法 (b)Fast-GC/MS法 Fig.6: 尿中有機酸分析のトータルイオンクロマトグラム 1 : oxalic-2, 2 : methylmalonic-2, 3 : succinic-2, 4 : 4-hydroxyphenylacetic-2, 5 : aconitic-3, 6 : citric-4, 7 : uric-4, TA : tropic-2, MGA : margaric-1, C24 : tetracosane (-1 : -TMS, -2 : -diTMS, -3 : -triTMS, -4 : -tetraTMS) 4 GCMS-QP2010 Ultra における環境負荷低減技術の開発 分析待機時における省エネルギー技術 エコロジーモードについて 微量成分を測定するGC-MSは、装置を起動してから安 容量を超える、 あるいはキャリアガス制御が不能になる場 定するまでしばらく待ち、 分析を開始しなければならない。 合がある。 エラーが発生しないことを確認した後、 ガス制御 そのため、装置を使用しない週末等においてもヘリウム モードを圧力一定モードに設定し、 パージガス流量を含む ガスを流し、かつGC各部の温度とMS部の真空を保つた キャリアガスの総流量を絞る。キャリアガス圧力、各部流 めに電力が消費されている。著者らは、分析待機時に不 量が設定値に達した後、 カラムオーブン温度を50℃に冷 要なガスと電力の削減により、ランニングコスト削減と 却し、オーブンのヒータと冷却ファンを停止する。最後に、 環境負荷の低減を検討した。従来の装置では、ヘリウム 質量分析計の高真空領域を測定するイオンゲージをオフ ガス使用量と消費電力を削減するため、オペレータが分 にし、エコロジーモード状態になる (Fig.8)。なお、PCのス 析待機時専用メソッドを作成し、運用していた。 しかしな リープモードを併用すれば、 装置がエコロジーモード状態 がら、使用しているカラムや分析条件等によっては、キャ になった時、 スリープモードが起動され、PCの消費電力も リアガスの制御エラーや質量分析部に導入されるヘリウ 節電できる。一方、エコロジーモード状態から復帰する際 ムガスが許容量を超える場合がある。 これらの問題を解 には、 PCのスリープモードを解除し、 エコロジーモード解除 決するため、分析条件等を気にすることなく、分析待機 ボタン (Fig.8) をクリックする。 これにより、 エコロジーモード 時のヘリウムガスと電力の消費量を自動的に削減する 起動時に記録した装置状態および制御パラメータが自動的 エコロジーモードを世界で初めて開発した。 に装置にダウンロードされ、 エコロジーモード以前の状態に 本機能のフローチャートをFig.7に示す。本機能を起動 復帰する。 なお、 バッチ処理による連続分析後、 自動的にエ すると、起動時のGC-MS各部の状態および制御パラメー コロジーモードを起動させることも可能である。 タを復帰時情報として記録する。次に、エコロジーモード 本機能により、 オペレータは使用しているカラムや分析 状態に入った時のカラム流量等を計算し、エラーが発生 条件を気にすることなく、分析待機時のガスと電力の消費 しないかを確認する。エコロジーモード起動時の装置構 量を削減することが可能になった。 成や状態によっては、MS部に導入されるカラム流量が許 エコロジーモード 起動開始 オペレータがエコロジーモード時の システム構成と制御パラメータを パラメータを変更 PCに記録 エコモード時にエラーが発生しないか N エコモード時のパラメータを変更を オペレータに要求 を計算 Y キャリアガス制御モードを圧力制御に 設定後、キャリアガスの全流域を低流 域に設定 カラムオーブン温度を50℃以下に 冷却後、オーブンヒータ・ファンを停止 質量分析部のイオンゲージオフ エコロジーモード状態 PCスリープモード実行 Fig.7 エコロジーモードのフローチャート Fig.8: エコロジーモード時のソフトウェア画面 GCMS-QP2010 Ultra における環境負荷低減技術の開発 5 Gas Chromatograph Mass Spectrometer GC/MS エコロジーモードによる省エネルギー効果について 従 来 法とエコロジーモードによる分 析 待 機 電 力を とし、残りの18時間を分析待機とした。キャリアガス(ヘリ Table 3に示す。エコロジーモードにより、760W必要だっ ウムガス)消費量は、分析時:50mL/min、分析待機時: た分析待機電力を483Wに低下させることに成功した。 50mL/min(従来法)or 20mL/min(エコロジーモード) と 節電された電力277Wの内訳は、オーブンヒータと冷却 した。消費電力は、 分析時:1.5kW、 分析待機時はTable 3の ファンをオフにしたGC部200W、 イオンゲージをオフにし 値を用いた。上記条件で1年間装置を稼働した時のヘリウ たMS部20W、 スリープモードによるPC部57Wである。一 ムガスの消費量、電力の消費量、その消費電力により排出 方、分析待機時のキャリアガス消費量は、最後に分析し されるCO2量とそれらにかかる費用をTable 4に示す。エコ た時の条件が適用される。一般的な分析に使用されるカ ロジーモードを使用することにより、 ヘリウムガス消費量は ラム、 スプリットライン、パージラインに流れるキャリアガ 年間25926Lから12963Lと12963L削減される。 この削減量 スの総流量は30∼100mL/minであり、カラム保護に必 は7m 3 の ボン ベ 約 1 . 8 5 本 に 相 当し、経 費 が 7 4 , 0 7 4 円 要な量より多く消費されている。分析待機時にエコロ (40,000円/本と仮定)削減される。年間の消費電力にお ジーモードを使用することにより、分析待機時のキャリア いては、7639kWhから5638kWhと2001kWh節電される。 ガス総流量を20mL/min以下(カラム長や装置構成に依 経費に換算すると46,037円(23円/kWhと仮定)の削減で 存)に抑えることが可能になった。 ある。また、削減した2001kWhの消費電力は、CO 2排出量 次に、エコロジーモードを用いた年間におけるランニ 12) すると1123kgに相当 に換算 (代替値:0.561kg-CO2/kWh) ングコスト削減と環境負荷低減の効果について検討を する。以上の結果より、 エコロジーモードは環境負荷の低減 行った。GC-MSの稼働条件は、1ヶ月あたり20日分析、残り に貢献するとともに、 ランニングコストの削減にも有効な機 の10日間を分析待機とした。 また、分析は1日あたり6時間 能であることが明らかになった。 Table 3 分析待機時の消費電力 GC部 MS部 PC部 合計 従来法(W) 300 400 60 760 エコロジーモード(W) 100 380 3 483 *) 注入口温度:250℃,インターフェース温度:250℃,オーブン温度:100℃ Table 4 年間に消費されるキャリアガスと電力量 従来法 エコロジーモード 削減量 キャリアガス消費量(L) 25926 12963 12963 消費電力(kWh) 7639 5638 2001 CO 2排出量(kg)* 4286 3163 1123 *) 消費電力を基にCO 2排出量を算出 GC-MS生産における環境負荷低減の取り組み 微量成分を測定するGC-MSは、生産時の調整・検査工 コロジーモードを取り入れた生産方式を採用した。その 程において装置内をクリーンにする必要があるため、分 結果、装置1台を生産するのに必要なヘリウムガスと消費 析待機状態でしばらく運転する。 そのため、生産工程にお 電力をそれぞれ従来比50%、30%削減することに成功し、 いて多くのヘリウムガスと電力が消費されている。生産時 環境にやさしい生産方式を確立した。 の環境負荷を低減するため、GCMS-QP2010 Ultraよりエ 6 GCMS-QP2010 Ultra における環境負荷低減技術の開発 まとめ 本稿では、GCMS-QP2010 Ultraに搭載されたヘリウム きることが明らかになった。なお、GC-MS運用による ガス・電力の消費量を削減する技術とその技術によって 年間のヘリウムガスや電力消費量およびそれらのコ 得られるランニングコスト削減と環境負荷低減の効果に ストとC O 2 排出 量を簡便 に見積もれるW e bサイトを ついて報告した。分析時において、Fast-GC/MS法を用い 運 営 し て い る の で 、是 非 訪 れ て い た だ き た い た省エネルギー分析を実現するため、 『高速な演算プラッ (http://www.an.shimadzu.co.jp/gcms/ultra/eco/eco. これらの技術 トホーム』 と 『ASSP TM』の開発を行なった。 htm) 。 により、データの質を損なうことなく分析時間の短縮を可 近年、 クロマト分離能がヘリウムガスより優れ、分析時 能にし、ヘリウムガスと電力の消費量をそれぞれ90%、66 間の短縮が可能であり、なおかつ低価格な水素ガスを用 %削減できることを示した。一方、分析待機時は、分析待 いたFast-GC/MS法が注目されている13)、14)。水素ガスは、 機に不要なヘリウムガスと電力を削減するエコロジー 分析時間短縮に寄与するだけでなく、水から生成される モードを開発することにより、分析待機時のヘリウムガ 再生可能な資源であることから、環境負荷の少ない分析 スと消費電力をそれぞれ60%、36.5%削減した。エコロ 手法として期待されている。今後、GCMS-QP2010 Ultraと ジーモードを用いると、一般的な稼働条件では年間の 水素ガスを用いたFast-GC/MS法の開発に取り組み、更 ヘリウムガス消費量を12963L(7m のボンベ1.85本相 なるランニングコストの削減と環境負荷低減について検 当)、消費電力を2001kWh(CO 2:1123kg相当)削減で 討していく予定である。 3 参考文献 1) (社)ロシアNIS貿易会編:日露技術ニュースレター, No.3 (6) (2008) 2) P.T. 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Ross, Wayne:A New Method for Simultaneous Determination of Cyclic Antidepressants and their Metabolites in Urine Using Enzymatic Hydrolysis and Fast GC-MS, Journal of Analytical Toxicology, Volume 32, (5), 355 ∼363 (2008) 本テクニカルレポートは、島津評論 Vol.67[3-4](2010) 『GCMS-QP2010 Ultraにおける環境負荷低減技術の開発』を基に作成しました。 GCMS-QP2010 Ultra における環境負荷低減技術の開発 7 Gas Chromatograph Mass Spectrometer GC/MS U l t r a F a s t 高速演算プロセッサーと A SSP 技 術 を 新 た に 搭 載 Fast-GC/MS法を利用した生産性の向上、スキャンとSIMの同時測定による正確な化合物の定性と定量解析、包括的2次元ガスクロマト グラフィー(GC×GC)による超高分離分析、これらは、ラボの効率性の向上や、より高度なデータ解析を実現するための方法として期待 されており、これまで以上に高速な質量分析計の性能が求められています。 GCMS-QP2010 Ultra では、高速サンプリングを実現するデータ演算処理プラットフォームを新設計し、最高スキャン速度を従来の 2 倍 の 20,000u/sec に向上させました。また、10,000u/sec 以上の高速スキャンでの感度低下を抑える特許技術、Advanced Scanning Speed Protocol (ASSP) により、高速データ採取での感度向上を実現しました。 Diazinon 従来法 特許法 (ASSP) Propyzamide 黒: 1,111u/sec 赤: 5,000u/sec 青:10,000u/sec 各スキャンスピードでのクロマトグラムの強度変化 10,000u/sec 以上のスキャン速度では、ASSP機能によりイオンが最適な電圧で加速され、 広い範囲のm/z において信号強度低下が抑制されます。 ラ ボ の 生 産 性を高める各種機能を搭 載 ダブルジェット クーリングシステム GCオーブンを急速に冷却する ダブルジェットクーリングシステム により、 350℃→50℃の冷却時間が約5.3分から約2.7分と短縮され、分析サイクルタイム カラムオーブンファンにより 熱風を急速に排気 を短縮します。例えば、VOC分析ではGCオーブンの初期温度が低いため到達 小型ファンの追加により 効率良く冷却用空気を吸気 時間が長くなる傾向がありますが、冷却効率の高いGCオーブンの採用により 待機時間が短くなり、サンプル処理の効率が高まります。Fast-GC/MSメソッ ドとの組み合わせにより、分析サイクルタイムを1/2にすることも可能です。 その他、GC注入口のメンテナンス作業にともなう装置のダウンタイム(停止時 間)を最小限にとどめるための Easy sTop 機能、2本の異なるカラムの出口側を MSに同時に取り付け、MSの真空を停止することなく異なるカラムでのアプリ ケーションデータ採取が可能となる Twin Line MS システム(オプション)な どがご利用可能です。 ラ ボ の ラ ン ニングコスト低減と環境 負 荷 の 低 減 を 配 慮 PC エコロジーモードを起動すると、GC、MS、PCのそれ ・消費電力36%削減 リアガスの消費も自動的に少なくします。連続分析の 後でも自動的にエコロジーモードを起動することが できるため、夜間分析の後においても自動的に電力、 エコロジーモードソフトウェア画面 キャリアガスを節約することができます。 消費電力( W ) ぞれの不要な電力を自動的に節電します。更にはキャ GC PC GC MS MS 通常待機時(W)エコロジーモード待機時(W) 760W 483W ・このデータ集は弊社が得た情報および内容のままにご提供するものであり、その正確性および特定の目的における有用性について保証するものではありません。 弊社は、このデータ集の使用により直接的または間接的に生じたいかなる損害に対しても責任を負えないものであり、その使用により生じた結果および現象に ついてはお客様の責任とします。 このデータ集の著作権は、株式会社島津製作所が所有しています。当社の許可なく内容の一部または全部を転載・複製すること はできません。 このデータ集の内容は将来予告なしに変更することがあります。 このデータ集の内容は作成にあたり万全を期しておりますが、万一、誤りや記載 もれなどが発見されても、ただちに修正できないことがあります。 分析計測事業部 http://www.an.shimadzu.co.jp/ JQA-0376 本社地区事業所認証取得 8 GCMS-QP2010 Ultra における環境負荷低減技術の開発 3218-07101-20ANS
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