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府監委告示第1号
平成28年5月10日
平成28年3月15日付けで受け付けた住民監査請求書について、地方自治法第
242条第4項の規定により監査を行ったので、その結果を別紙のとおり公表しま
す。
府中町監査委員
土
井
精
二
同
小
菅
巻
子
住民監査請求に係る監査結果
1
請求人
社会福祉法人FIG福祉会
2
3
理事長
石田晃司
請求の提出日
平成28年3月15日
請求の受理
本件請求については、法第242条第1項に規定する要件を備えているものと
認め、平成28年3月24日付けで受理した。
4 請求の内容(以下、原文のとおり記載)
(1)違法な怠る事実
ア 府中町普通財産(不動産)貸付事務処理要領によれば、貸付料を納入させ
るよう定めているにもかかわらず、府中町長が、社会福祉法人昭和愛育会に
対し、府中町の所有する別紙1及び2記載の土地について、無償で貸与を行
っている。
イ 府中町普通財産(不動産)貸付事務処理要領によれば、普通財産の新規貸
付は原則として行わないとされているところ、更新はさらに5年間の新規貸
付と同視されるので、府中町長が、社会福祉法人昭和愛育会に対して府中町
の所有する別紙1記載の土地について、平成28年3月末日が更新時期であ
り、期間満了の6か月前である平成27年9月末日までに更新を拒絶する旨
の意思表示をなすべきであったにもかかわらず、これを怠った。
ウ 府中町普通財産(不動産)貸付事務処理要領により、売り払い処分を推進
するものとされているところ、府中町長が、社会福祉法人昭和愛育会に対し
て府中町の所有する別紙1及び2記載の土地について、継続して貸し付けて
いるものであるから、昭和51年及び平成11年からという長期間にわたる
貸し付けを行っているにもかかわらず、売り払い処分を全く行っていないこ
と。
エ 平成17年に第二府中ひかり保育園事務室改築の助成に関する補助金を
支出したが、その後申請通りの改築及び使用が行われているか否かについて、
何らの確認を行っていない。
オ 前記アの違法な契約締結により、またイの更新拒絶の通知の懈怠により、
本来町が取得すべきであった貸付料相当額が納入されず、府中町に損害が生
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じることとなる。
カ また、前記ウの怠る事実により、本来府中町が取得すべきである売り払い
代金が納入されず、相当額の損害が府中町に生じている。
(2)理由
上記のとおり、長期間にわたり、本来行うべきでない無償貸付契約が更新され
ることにより、府中町には損害が発生しているところである。ことに、普通財産
(不動産)貸付事務処理要領によれば、継続貸付けの場合は、将来町において必
要と認められるものその他特別な事情があるものを除き、その売払い処分を推進
するものと定められ、現に別紙7に記載のように平成23年には、社会福祉法人
FIG 福祉会に対しては、継続的貸付けがなされていたチェリーゴードの敷地につ
いて、売払い処分がなされているところである。しかるに、本件貸付に関して、
長期間にわたり売払い処分を行っていないことは、事務要領に反する違法なもの
である。
なお、貸付契約においては、児童福祉施設として用途の指定がなされており、
また平成17年には前記のとおり保育園事務室改築の助成に関する補助金の支
出がなされているものの、その後申請通りの改築及び使用が行われているか否か
について、何らの確認も行われていない。これについては、別紙6記載のように
登記上、事務所及び倉庫とされているのに、ホームページでは和室、お茶室とな
っているのはその証左であり、また、請求者が聞き及んでいるところでは、当該
改築部分2階については、いわゆる開かずの間として、職員も立ち入りが規制さ
れているものである。申請通り改築及び使用がなされず、契約上の用途違反があ
るとすれば、補助金の支出根拠もなく、また契約違反による解除もなされるべき
ものであり、改築及び使用の状況を確認し、上記のような事情が存するか否かに
ついて確認がなされなければならないことは明らかである。
以上の状況に鑑みれば、府中町長が貸付事務要領に違反する契約を締結し、本
来行うべき行為を怠り、さらには補助金の支出を行っているものと判断せざるを
えないところである。
(3)求める措置
監査委員は府中町長に対し、次の措置を講ずるよう、勧告することを求める。
別紙1及び2記載の公有財産(土地)について、売り払い処分を行うこと。
別紙3記載の建物につき、申請通りの改築及び使用がなされているか確認を行
うこと
以上の通り、地方自治法242条1項に基づき、事実証明書を付して監査委員
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に対し、本請求をする次第である。
(事実証明書として、次の書類が添付されているが記載を省略する。)
証拠1番 公有財産無償貸付契約書
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証拠2番
証拠3番
公有財産無償貸付契約書
第二ひかり保育園施設整備(改築)にかかる補助金についての稟議
証拠4番
書及び添付書類
情報公開請求書及び公開拒否通知書
証拠5番
証拠6番
情報公開請求書及び公開拒否通知書
安芸郡府中町本町二丁目320番地6の全部事項証明書
監査対象課
福祉保健部子育て支援課
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監査の方法
関係書類の監査を行い、関係職員から事情を聴取した。
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請求人の陳述
法第242条第6項の規定に基づき、平成28年4月11日に請求人に証拠の
追加提出及び陳述の機会を設け、請求人が陳述を行った。
請求人からは、提出したものがすべてで追加の資料はないこと。
また、提出された事実証明書では平成17年の保育園事務所棟整備について昭
和愛育会の独自財源で行う旨の記載があったため、使用状況の確認を求める理由
について確認したところ、貸付契約書の用途指定を根拠とするとの陳述があった。
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監査対象事項
当該土地を社会福祉法人昭和愛育会に無償貸与し、売払い処分を行わないこと
が、財務会計上、違法で町の利益を損なうことに当たるのかを監査の対象とした。
なお、事務所棟2階の使用実態については、平成28年4月12日、子育て支
援課が第二ひかり保育園を実地調査し、園長室として、使用されている旨の報告
があったため監査対象としない。
9 監査結果
(1)事実関係の確認
ア 府中町普通財産である本町二丁目320-6ほか2筆の土地は、昭和51
年4月1日から、第二府中ひかり保育園用地として社会福祉法人昭和愛育会
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に無償貸与されている。
同じく本町二丁目320-5ほか1筆も平成11年4月1日から、第二ひ
かり保育園用地として無償貸与されている。
これらの土地は、町と社会福祉法人昭和愛育会が締結した「公有財産無償
貸付契約書」において、貸付期間10年間の後、期間の満了の日の6か月前
までに町が特段の意思表示をしない場合には、更に5年間更新するものとさ
れており、現在まで無償貸付が継続されている。
イ 第二府中ひかり保育園は、平成28年度において、耐震化と定員を160
人から180人に増やす増改築が予定されており、町はその施設整備費の一
部助成を予算化している。
(2)違法性及び不当性の検討
地方自治法第237条第2項は、条例又は議会の議決による場合でなければ、
普通地方公共団体の財産を適正な対価なくして譲渡し、又は貸付けてはならな
い旨規定している。一方、同法第96条第1項第6号は、条例で定める場合を
除くほか、財産を適正な対価なくして譲渡し、又は貸付けることを議会の議決
事項として定めている。
「条例で定める場合」を除いているのは、当該条例に財産の交換等についての
一般的取り扱い基準が定められている場合においては、改めて個々の行為につ
いて個別議決を要しないとした趣旨からであり、「公益上の必要がある一定の
場合においては、普通財産を譲与し、又は無償で貸付けることができるものと
する」とされている。
府中町は財産の無償貸付等に関して、「財産の交換、譲与、無償貸付等に関
する条例(昭和 39 年条例第 11 号)」、「普通財産(不動産)貸付事務処理要領
(昭和 62 年訓令第 10 号)を制定し、その取扱いを定めている。
この条例は、国が地方自治体等に示した(昭和 38 年 10 月 30 日 自治丁行
発第 68 号)、法第96条第6号及び法第237条で示す「条例で定める場合」
に該当する条例モデル(準則)を基に制定されたものである。
この条例第4条には、貸付の相手方が「他の地方公共団体その他公共団体又
は公共的団体」であり、しかも、これらの団体において「公用若しくは公共用
又は公益事業の用に供するとき」とした二つの要件を満たせば、普通財産の無
償貸付又は減額貸付できるとした一般的取り扱いが規定されている。
昭和愛育会は、社会福祉法に基づき社会福祉事業を行うことを目的として設
立された法人であることから、公共的団体と認められる。また、児童福祉法(昭
和 22 年法律第 164 号)第24条では、保育所における保育は市町村の義務と
されているが、第二ひかり保育園はこの保育を府中町から受託して行うもので
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あり、その公共性は高いと言える。
貸付事務処理要領は、制定時、現に継続して貸付けている普通財産は、将来
町において必要と認められるものその他特別な事情があるものを除き、売払い
処分を推進するものとしている。
また、堅固な建物の所有を目的として土地又は土地の定着物(建物を除く。)
を貸付ける期間を30年とし、貸付期間の更新もこれを超えない範囲としてい
る。
ただし、調整措置として、公用、公共用又は公益事業その他特別な事情によ
り、この要領の規定を適用することが不適当と認められる場合は、町長の裁量
により更新できる。
町は、当該土地を貸付けている昭和愛育会は、町北部の拠点保育所を運営し
ており、現在、保育が必要な児童の3割強を委託している状況にある。また、
将来的にも保育が必要な児童の3~4割を委ねていかなければならない状況
にあることから、「将来町において必要と認められるものその他特別な事情が
あるもの」として売却処分は推進していない。
貸付事務処理要領に定める30年を超えて貸付けていることについては、建
物所有目的の土地賃貸借の場合は、借地借家法が適用されることにより、借地
権の存続期間が30年と規定されているためと考えられるが、(借地借家法は
平成 4 年 8 月 1 日施行。それ以前の契約には借地法が適用される。)その趣旨
は、借主保護のための規定と考えられる。町が明渡しを求めていない状況にお
いては30年を超えて貸付契約を更新しても違法、不当とはいえない。
地方公共団体の行う寄付又は補助に公益上の必要があるかどうかの判断に
当たっては、様々な行政目的を斟酌した政策的な考慮が認められるから、この
点についての各地方公共団体の判断は、特に社会通念上不合理な点がある場合
又は特に不公正な点がある場合でない限りはこれを尊重することが必要であ
り、これを地方公共団体の長の権限という面からみると、長にその裁量権が付
与されており、その行使に逸脱・濫用がある場合に限り、当該寄付又は補助が
公益上の必要を欠くものとして違法となるものとされており、普通財産の無償
貸付についても同様と考えられる。
請求人が、平成23年にその運営する高齢者福祉施設の土地を町の要請に応
じて買い取ったとしても、本件以外にも町が保育所用地や障害者福祉施設用地
として無償貸付けを行っている事例もあり、著しく不公正とはいえない。
以上のことから、町が無償貸付契約を更新し、売り払い処分を行わなかった
ことは、条例及び貸付事務処理要領の規定による範囲内であると認められるた
め、違法性、不当性があるとは認められない。
5
10 結論
上記のことから、本件請求には理由がないと認め、請求を棄却する。
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意見
平成27年4月には、子ども・子育て支援法が施行され、市町村責任による措
置保育と直接契約による保育が併存する仕組みとなっている。
また、国は平成27年1月付けで総務大臣通知を出し、複式簿記の導入を前提
とした固定資産台帳の整備等を求める動きもある。
普通財産については、こうした社会状況の変化に応じて、必要な見直しを行い、
有効に利用されていないものがないか継続的に検証することが必要である。
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