1 2016 年 5 月 2 日(5 月 7 日) 第 3 部:完備情報下の動学ゲーム 第 6 章:完備情報下の動学ゲーム 静学ゲーム: 同時手番(Simultaneous Moves) 動学ゲーム: 逐次手番(Sequential Moves): プレーヤーは順番に行動選択(先手後手など) 完全情報、不完全情報: プレーヤーは過去の相手の選択や自然現象について どの程度知っているか 1 2 標準形ゲーム: 三種の神器 ( N , S , u) (プレーヤー集合、戦略プロファイル集合、利得関数プロファイル) 静学ゲームには適している表現形式 しかし動学ゲームには不十分: 逐次手番と情報について詳しい内容を盛り込んだ表現形式が必要 ∴ 「展開形ゲーム」 プレーヤーはいつ何時でも「(逐次)合理的」 動学ゲームのメインテーマ: 展開形ゲーム(Extensive-Form Game): 逐次合理性(Sequential Rationality): 本章 次章 2 3 6.1. 展開形ゲーム:例による解説 Battle of Sexes:同時手番 女性 ラブコメ(L) ホラー(H) 男性 ラブコメ(L) 2 1 0 0 ホラー(H) 0 0 1 2 二つの純粋戦略ナッシュ均衡: (L、L)(H、H) 3 4 Battle of Sexes の動学ヴァージョン: 逐次手番 女性先手、男性後手: 女性が先に映画館に赴き、携帯で男性に居場所を知らせる 女性は場所にコミットメント (「ゲームのルール」は変わった!) L 男性 (2, 1) H L (0, 0) 女性 H (0, 0) L 男性 H (1, 2) 女性の手番はひとつ、男性の手番はふたつ 女性の戦略: 2 通り: L or H 男性の戦略: 4 通り: Why? 4 5 戦略とは「行動の計画(Complete Contingent Plan of Action Choices)」のこと 男性の戦略: 「女性が L を選択したならば 「女性が H を選択したならば L or H」 L or H」 ∴ 2×2=4通りある! 5 6 動学ゲームを標準形ゲームに還元する 女性 L H (L、L) 2 1 0 0 (L、H) 2 1 1 2 男性 (H、L) 0 0 0 0 (H、H) 0 0 1 2 純粋戦略ナッシュ均衡は三つある: (L、(L、L)):ラブコメ映画へ (L、(L、H)):ラブコメ映画へ (H、(H、H)) :ホラー映画へ しかし (L、(L、H))のみが「理にかなった」ナッシュ均衡といえる:Why? 6 7 逐次合理性(Sequential Rationality) プレーヤーは「どの時点においても」常に合理的にふるまうとする仮定 L 男性 (2, 1) H L (0, 0) 女性 H (0, 0) L 男性 H (1, 2) 男性の戦略は(L、H)である場合にのみ逐次合理性をみたす: (L、L): (H、H): (H、L): 女性が H を選んだのに L を選ぶのは非合理的 女性が L を選んだのに H を選ぶのは非合理的 女性が L を選んだのに H、さらに女性が H を選んだのに L、を選ぶのは非合理的 7 8 逐次合理性をみたす唯一のナッシュ均衡は(L、(L、H)) L 男性 (2, 1) H L (0, 0) 女性 H (0, 0) L 男性 H (1, 2) 8 9 逐次合理性をみたすナッシュ均衡を導く案: 後方帰納法(Backward Induction、「後ろから解け」) あるいは 二つの「部分ゲーム(Subgames)」:部分ゲームから解け L 男性 (2, 1) H (0, 0) (0, 0) L 男性 H (1, 2) 9 10 逐次合理性は 「からおどし(Incredible Threat)」を排除する (H、(H、H)) : ナッシュ均衡だが逐次合理性をみたさない 男性のおどし: 「ラブコメ」を選ぶと「ホラー」を選ぶぞ しかしこれは「からおどし(Incredible Threat, 実行されないおどし)」 逐次合理性をみたさない 時間非整合性(Time Inconsistency):前もって計画したことがその場に なると実行されない 逐次合理性: 「実行力ある脅し(Credible Threat)」だけを考慮 時間整合性(Time Consistency) 10 11 問1:前述の Hawk-Dove Game の例について、プレーヤー1が先手である場合の逐次合理性 をみたすナッシュ均衡を、同様にしてもとめよ。 問 2:前述の Stag-Hunt Game の例について、プレーヤー1が先手である場合の逐次合理性を みたすナッシュ均衡を、同様にしてもとめよ。 11 12 完全情報と不完全情報 完全情報(Perfect Information): 女性がどっちの映画館に行ったかが男性に伝わる 不完全情報(Imperfect Information): 伝わらない(携帯がつながらない) L 男性 (2, 1) H L (0, 0) 女性 H (0, 0) L 男性 H (1, 2) 情報集合(Information Set): 男の手番ではどちらの Nodes(節)にいるか区別できない どちらの Node でも同じ選択(どっちも L、どっちも H) にならざるを得ない 12 13 不完全情報の動学ゲームを標準形ゲームに還元する 女性 L H 男性 L 2 1 0 0 H 0 1 0 2 この場合は静学ゲーム(同時手番)と同じ標準形ゲーム 「同時手番」 「女性先手男性後手の不完全情報ゲーム」 「男性先手女性後手の不完全情報ゲーム」 みな同じ標準形ゲーム:区別しない 先に「ラブコメ映画館」にいっても、男性にそれが伝わらなければ効果がない!(ゲームの ルールは変わらない) 13 14 偶然手番(Chance Move, Nature’s Move)がある展開形ゲーム 確率 p [0,1] 携帯がつながる 携帯がつながらない 確率 1 p [0,1] 女性は携帯がつながるかどうか知らない 男性の手番では、男性は携帯がつながるかどうか知ることができる: L 男 女 H L 確率 p H L 男 H Nature 確率 1-p L 男 H L Think why. (2, 1) (0, 0) (0, 0) (1, 2) (2, 1) (0, 0) 女 (0, 0) H L 男 H (1, 2) 14 15 戦略プロファイル:女性 L、男性(L,H,L) (必ずラブコメが実現)は 確率 p に関係なく逐次合理性をみたすナッシュ均衡 L 男 女 H L 確率 p H L 男 H Nature 確率 1-p L 男 H L (2, 1) (0, 0) (0, 0) (1, 2) (2, 1) (0, 0) 女 (0, 0) H L 男 H (1, 2) 15 16 戦略プロファイル:女性 H、男性(L,H,H) (必ずホラーが実現)は 確率 p 1 2 ならば逐次合理性をみたすナッシュ均衡:Think why L 男 女 H L 確率 p H L 男 H Nature 確率 1-p L 男 H L (2, 1) (0, 0) (0, 0) (1, 2) (2, 1) (0, 0) 女 (0, 0) H L 男 H (1, 2) p 1 なら「ラブコメ」の均衡だけが逐次合理的になる 2 女性に有利にゲームのルールを変更できた! 16 17 問 3:前述の Hawk-Dove Game の例について、プレーヤー1が先手である場合の完全情報動 学ゲームと不完全情報動学ゲームに偶然手番のあるケースについて、逐次合理性をみたすナ ッシュ均衡を、同様にしてもとめよ。 問 4:前述の Stag-Hunt Game の例について、プレーヤー1が先手である場合の完全情報動学 ゲームと不完全情報動学ゲームに偶然手番のあるケースについて、逐次合理性をみたすナッ シュ均衡を、同様にしてもとめよ。 17 18 展開形ゲームは様々な動学ゲームの状況をあまねく記述できる 表現形式である 次節にて「一般的かつ数学的な、展開形ゲームの表現形式」を解説する ただし 標準形ゲームに比べて複雑: 数学的表現にこだわりすぎるのは実用的でない(後述) 18 19 宿題6: 問1,2,3,4をもとめよ。 19
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