中小企業支援策、特許・商標の 基礎知識

ベンチャー法律講座
中小企業支援策、特許・商標の
基礎知識
着々と進む中小企業支援策の見直し
「もともと日本は企業の創業・廃業率が米国に比べて低いという特
徴がありました。新規創業の機会を増やして経済の活性化を促す
という目的で、中小企業支援のための法律の整備を進めていると
ころです」
(溝口氏)
こう語るのは通商産業省産業政策局新規産業課の溝口俊徳氏
である。その一つ「新事業創出促進法」はまさに読んで字のごとし。
99年2月に施行されたこの法律は、金融支援やストックオプションの
特例などを盛り込み、将来性のある事業プランを持ちながら資本力
が充分とはいえないベンチャーをバックアップするために作られた。
「全国52ヶ所の信用保証協会は、企業が民間の金融機関からお金
を借りやすくするために設けられていますが、従来は少なくとも1年
以上の営業実績を求められていました。同法では、これを開業前の
個人に適用することで、よりスピーディーに事業を展開できるように
しています。また、商法ではストックオプションの上限を発行株式の
10分の1と定めていますが、企業の成長発展をにらみ、3分の1まで
付与することもできるようになりました。この保証もベンチャーの後
押しになるでしょう」
(溝口氏)
これらのメリットは法制上の中小企業支援の一例に過ぎない。他
にも中小企業向けの低利融資や税制での特別待遇を盛り込んだ
「中小企業経営革新支援法」や「産業活力再生特別措置法」
といっ
た、ベンチャー支援の法律が次々と誕生している。こうした法律を知
っているのと知らないのとでは大きな差がでるといっても過言ではな
い。
多くの起業家は法律面での勉強をしているだろうが、何重にも用
意されている支援政策を見逃していないかどうか、再度検討してみ
る必要がありそうだ。
「都道府県、あるいは市町村の単位でもさまざまなバックアップが
用意されています。ただし誰にでも一様にメリットがあるわけではあ
りません。しっかりとしたビジネスプランがある人ならば、積極的に
各種機関を利用してみるといいでしょう」
(溝口氏)
特許・商標について学ぶことは
起業家の必須作業だ
商売のノウハウが特許になる!――「ユーザーがワンクリックでネッ
ト通販ができる仕組み」
を特許としてライバルの追い落としを画策し
たアメリカ某社を筆頭に、いくつものビジネスモデル特許のモデルケー
新事業創出にあたっての税制優遇などの国の制度
制度名
目的
概要
新事業創出促進法
(1999年2月施行)
新たな事業の創出を促進し、個人による
創業および新たに企業を設立して行なう事
業の直接支援
①創業者全般について、中小企業総合事業団により助成金が交付され、中
小企業信用保険の特別枠、ストックオプション制度の特例、産業基盤整
備基金による債務保証制度および出資制度が創設
②新技術を利用した新たな事業への創出を支援するため、政府研究開発費
の中小ベンチャーへの重点投資
中小企業経営革新支援法
(1999年7月施行)
①経営革新計画
中小企業の新製品の開発・生産、商品の新しい生産方式
といった事業活動の導入による経営向上の支援
②経営基盤強化計画
競争条件の著しい変化、環境または安全に係る規制の著
しい変化等により業況の悪化が見られる中小企業の経営
基盤を強化する
①各道府県知事または各大臣が承認した場合、補助金・低利融資・中小
企業信用保険の特例・機械設備投資減税・税制優遇等を受けることが
できる
②各大臣により承認されると、低利融資・中小企業信用保険の特例・税制
優遇を受けることができる
産業活力再生特別措置法
(1999年10月施行)
創業者および中小企業者の新事業の開
拓、および経営資源の効率的な活用を通
じての生産性の向上を支援
個人創業する人、会社設立を行なう人、創業後5年以内の人、および事業
構造の変更、または新事業の開拓を行なう中小企業で都道府県知事の認
定を受けた人に、中小企業近代化資金助成法による無利子の設備資金貸
付、中小企業信用保険法による債務保証制度の拡充
中小企業創造活動促進法
(1995年4月施行、96・97年
一部改正)
創業や研究開発・事業化を通じて、新製
品・新サービス等の創造を支援する
エンジェル税制を通じた資金供給の円滑化、ベンチャー財団を通じた直接金
融支援、債務保証制度の拡充、地域活性化創造技術研究開発費補助金
の適用、低利融資制度の充実など
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●●●ITベンチャー@21●●●
スが報道されてきた。しかし、そんなうまい話が本当にあるのだろう
か? 創英国際特許法律事務所の弁理士、寺崎史朗氏は次のよう
に語る。
「特許が守るべきものは技術をベースにしたもの。つまりビジネス
の“方法”自体は特許にならないんですよ」
小資本のベンチャーが急激な成長を遂げる背景に“誰も考えつか
なかったアイデア”があるのは常識だが、そのアイデア自体が売り物に
なるわけではない。しかし、米国発のエキセントリックなケースが多
くの誤解を生じているのが実状なのだ。なかにはそんな実状を説
明せずに、
「ビジネスモデルで特許を取ろう」
と起業家たちを焚き付
ける商売をしているところもあるという。
「実際に各分野の専門家が集まって、ビジネスモデルが特許と成り
得るかどうかを検証したことがあります。しかし、豊富な経験と知識
を持つ専門家たちでも、それはムリだという結論が出てしまったの
です。なかにはビジネスモデル特許に似たものもあると思いますが、
そこには必ずコンピュータの技術など理論的に説明できるノウハウ
があるのです。そうした技術をいかに応用しているか、ということが
問題なのです」
(寺崎氏)
「ビジネスモデル特許の誤解を解くことが先決」
という寺崎氏だが、そ
の一方で弁理士からすれば「どうしてこんなことを知らなかったの
か」
と驚いてしまうこともあるという。それが「商標」に対する認識の
甘さだ。
「ベンチャー起業家の方は“いい名前”を考えついたら即座に商標
登録の出願手続きをとるべきです。なかには「この名称で営業を続
けてきました。かなり知名度が上がったので商標登録をしようと思
って」などとおっしゃる経営者の方がいますが、ドキッとするんです。
知名度が高まってからでは遅いんですよ」
(寺崎氏)
「ITベンチャーはアイデア一つで一攫千金」
と言われる。それはある
部分では正しいが、別の一面ではまったくの間違いであると言うこ
とができる。アイデアを守る手助けをしてくれるのが弁理士の役どこ
ろなのだ。
「ベンチャー起業家の方は、コンサルタントあるいはホームドクター
的につきあえる弁理士を探してみてください。これからの時代、守る
べきものは確実に守っていくことが、勝負を左右するといっても過
言ではありません」
(寺崎氏)
効率的な技術開発を行なうためにも、最先端の技術開発動向を
把握し、あわせて特許の権利情報を把握しておくことが大切であ
る。
-------------------【参考】
・中小企業庁 ベンチャー企業支援
http://www.chusho.miti.go.jp/
・特許庁
http://www.jpo-miti.go.jp/home.htm
・特許庁 特許電子図書館
http://www.jpdl.jpo-miti.go.jp/homepq.ipdl
ベンチャービジネス必須 知的財産権
知的財産権
(知的所有権)
人間の幅広い知的創造活動について、その創作者に権利保護を与えるもの。
独創的なアイデアである
「発明」や「考案」
、ユニークなデザインである
「意匠」
、音
楽・小説などの「著作物」
などがあり、それぞれ特許法、実用新案法、意匠法、著
作権法により保護されている。
これら知的財産の中でも、バイオテクノロジー、エレクトロニクス・情報通信など、
いわゆるハイテク分野での技術開発では、コンピュータプログラム
(著作権法)
、半
導体集積回路
(半導体チップ保護法)
など、新たに保護されるようになった分野も
ある。
知的財産権の種別
種別
知
的
財
産
権
工
業
所
有
権
︱
特許権
実用新案権
意匠権
商標権
半導体回路配線
利用権
不正競争の防止
著作権
所轄
通産産業省
特許庁
通産産業省
文部省
文化庁
権利期間
目的
①新技術、新しいデザイン、商
標などについて独占権を与
え、模倣防止のために保護
し、研究開発へのインセン
ティブを付与したり、取り引
き上の信用を維持する
②特許庁に出願された発明の
登録から10年
内容を広く一般に公開する
ことで、他人が同じ研究を
するムダを省いたり、新しい
研究のヒントを与えたり、す
著作者の死亡から
でにある技術をさらに発展さ
50年
せるための情報を発信する
出願から20年
出願から6年
登録から15年
登録から10年
(更新登録可能)
【特許権】
特許法により保護される。
<保護対象>
自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度なものを保護対象とする。した
がって、金融保険制度・課税方法などの人為的な取り決めや計算方法、暗号など
自然法則の利用がないものは保護の対象外。
また、技術的思想の創作なので、発見そのものは保護対象外。
※技術水準が高度な創作が対象
(実用新案よりも高度である必要がある)
【実用新案権】
実用新案法により保護される。
<保護対象>
自然法則を利用した技術的思想の創作であり、物品の形状、構造または組合せ
に係るものを保護対象とする。特許に比べて技術が高度でなくても良い。
※方法のアイデアは対象外
【意匠権】
意匠法で保護される。
<保護対象>
物品
(物品の部分を含む)
の形状、模様、色彩などの物の概観としてのデザインを
保護対象とする。
特許法、実用新案法が技術的思想の保護法であるのに対し、意匠法は美観の
面からの創作を保護する。
※単なる絵や図柄は対象外
【商標権】
商標法で保護される。
<保護対象>
商品やサービスについて、自他の識別力を有する文字、図形、記号、立体的形状
(色彩)
を保護対象とする。
また、サービス取り引きの発展にともない、広告、金融等のサービスの取り引きに
おいて、自己の提供するサービスを同種のサービスと識別するために、サービスにつ
いて使用するマークを、商品に係る商標と同様に商標法の下で保護する。
ビジネスモデル特許
ラ
イ
タ
ー
一般的に、
コンピュータネットワークを用いたビジネスの手法に関する特許を指す。
インターネット上での商取引
(電子商取引)
が拡大するなか、米国を中心にビジネス
特許に関する係争が表面化しており、日本における早急な対応が求められている。
(事例:書籍の広告販売システム、航空券の予約システムなど)
●●●ITベンチャー@21●●●
田
中
裕
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